(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】金属元素含有粉及び成形体
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20231121BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231121BHJP
H01F 1/22 20060101ALI20231121BHJP
H01F 1/24 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B22F1/102 100
B22F1/00 Y
H01F1/22
H01F1/24
(21)【出願番号】P 2022136125
(22)【出願日】2022-08-29
(62)【分割の表示】P 2017237139の分割
【原出願日】2017-12-11
【審査請求日】2022-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田村 遼
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一雅
(72)【発明者】
【氏名】石原 千生
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】相場 高平
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-106861(JP,A)
【文献】特開2001-308584(JP,A)
【文献】特開2014-072367(JP,A)
【文献】特開2016-201484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,1/102
H01F 1/20,1/22,1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素含有粒子及び前記金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物のみからなり、
前記金属元素含有粒子が、金属単体又は合金のみからなる軟磁性粉であり、
前記コーティング化合物(ただし、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物を除く。)が、シラノール基を有する化合物(ただし、テトラエトキシシランを除く。)、及び有機リン酸化合
物のみからな
り、
前記シラノール基を有する化合物が、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、1,6-(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
磁芯に用いられる、
金属元素含有粉。
【請求項2】
金属元素含有粒子及び前記金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物のみからなり、
前記金属元素含有粒子が、金属単体又は合金のみからなる軟磁性粉であり、
前記コーティング化合物(ただし、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物を除く。)が、シラノール基を有する化合物(ただし、テトラエトキシシランを除く。)、及び有機リン酸化合
物のみからな
り、
前記有機リン酸化合物が、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、及びジブチルホスフェートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
磁芯に用いられる、
金属元素含有粉。
【請求項3】
前記シラノール基を有する化合物が、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、1,6-(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、
請求項2に記載の金属元素含有粉。
【請求項4】
金属元素含有粒子及び前記金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物のみからなり、
前記金属元素含有粒子が、金属単体又は合金のみからなる軟磁性粉であり、
前記コーティング化合物が、シラノール基を有する化合物のみ、又は有機リン酸化合物のみからな
り、
前記シラノール基を有する化合物が、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、オクテニルトリメトキシシラン、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、1,6-(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、及びヘキサメチルジシラザンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
前記有機リン酸化合物が、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、及びジブチルホスフェートからなる群より選ばれる少なくとも一種を含み、
磁芯に用いられる、
金属元素含有粉。
【請求項5】
前記コーティング化合物の含有量が、0.001質量%以上1.00質量%以下である、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の金属元素含有粉。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の金属元素含有粉を備える、
成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属元素含有粉及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉末を含む金属元素含有粉は、金属粉末の諸物性に応じて、例えば、インダクタ、電磁波シールド、又はボンド磁石等の多様な工業製品の原材料として利用される(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁性粉は、例えば、高周波用変圧器、リアクトル、サイリスタバルブ、ノイズフィルタ、チョークコイル等の高周波用コイルが備える磁芯に用いられる。交流磁束が流れている磁性材料中で失われるエネルギーを磁気損失という。高周波用コイルが備える磁芯には、高周波領域においても、磁気損失が小さく、磁束密度が高いことが求められる。
【0005】
磁気損失は、主に渦電流損とヒステリシス損とからなる。渦電流損は、磁芯の固有抵抗と大きく関係する。ヒステリシス損は、磁性粉の製造過程及びその後のプロセスで生じる磁性粉内の歪みに大きく影響を受ける。渦電流損は、交流電気信号の周波数の二乗に比例する。したがって、高周波領域における磁気損失を小さくするためには、渦電流損を小さくすることが重要である。渦電流損を小さくするためには、渦電流を小さな領域に閉じ込める必要がある。渦電流を小さな領域に閉じ込めるためには、微細な磁性粉を圧縮することにより磁芯を形成し、かつ、磁性粉を構成する個々の粒子が互いに絶縁されている必要がある。
【0006】
磁性粉を構成する個々の粒子間の絶縁が不十分である場合、渦電流損は大きい。絶縁性を向上するためには、磁性粉を構成する個々の粒子を絶縁層で被覆することが考えられる。しかし、絶縁層が厚いと、磁芯に占める磁性粉の割合が小さくなる。その結果、磁芯の磁束密度が低下してしまう。また、磁束密度を高くするために、高圧力での磁性粉の圧縮成形によって磁芯に占める磁性粉の割合を大きくすると、成形時に磁性粉に生じる歪みが大きくなる。その結果、ヒステリシス損が大きくなり、磁気損失が大きくなってしまう。
【0007】
以上のように、磁気損失が小さい磁芯の作製には、磁芯に占める磁性粉の割合を小さくすることなく、磁芯の固有抵抗を大きくすることが重要である。磁芯の固有抵抗を大きくするためには、薄くて、かつ、絶縁性に優れる絶縁層で磁性粉を覆うことが必要である。
【0008】
本発明は、磁気損失が小さい成形体の作製に適した金属元素含有粉、及び当該金属元素含有粉を備える成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る金属元素含有粉は、金属元素含有粒子と、金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物と、を備え、コーティング化合物が、シラノール基を有する化合物、及び有機リン酸化合物のうちの少なくとも一種を含む。
例えば、金属元素含有粉は、金属元素含有粒子及び金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物のみからなり、金属元素含有粒子が、金属単体又は合金のみからなる軟磁性粉であり、コーティング化合物(ただし、金属アルコキシドおよび有機リン酸またはその塩を含む混合物のゾル-ゲル反応生成物を除く。)が、シラノール基を有する化合物(ただし、テトラエトキシシランを除く。)、及び有機リン酸化合物のうちの少なくとも一種のみからなる。
または、金属元素含有粉は、金属元素含有粒子及び金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物のみからなり、金属元素含有粒子が、金属単体又は合金のみからなる軟磁性粉であり、コーティング化合物が、シラノール基を有する化合物のみ、又は有機リン酸化合物のみからなる。
【0010】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、シラノール基を有する化合物が、アルコキシシランの加水分解物であってよい。
【0011】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、有機リン酸化合物が、アルキル基を有してよい。
【0012】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、シラノール基を有する化合物が、グリシジル基を有してよい。
【0013】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、シラノール基を有する化合物が、アルキル基を有してよい。
【0014】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、シラノール基を有する化合物が、メタクリロイル基を有してよい。
【0015】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、シラノール基を有する化合物が、アミノ基を有してよい。
【0016】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉では、コーティング化合物の含有量が、0.001質量%以上1.00質量%以下であってよい。
【0017】
本発明の一側面に係る上記金属元素含有粉は、磁芯に用いられてよい。
【0018】
本発明の一側面に係る成形体は、上記金属元素含有粉を備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁気損失が小さい成形体の作製に適した金属元素含有粉、及び当該金属元素含有粉を備える成形体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0021】
<金属元素含有粉の概要>
本実施形態に係る金属元素含有粉は、複数(多数)の金属元素含有粒子と、個々の金属元素含有粒子を覆うコーティング化合物と、を備える。つまり、金属元素含有粉を構成する複数の粒子其々が、金属元素含有粒子と、金属元素含有粒子の表面を覆うコーティング化合物と、を有している。例えば、コーティング化合物を含む層(コーティング化合物からなる層等)が金属元素含有粒子の表面を覆っていてよい。コーティング化合物は、シラノール基を有する化合物、及び有機リン酸化合物のうちの少なくとも一種を含む。コーティング化合物は、金属元素含有粒子の表面に化学的に吸着又は結合していてよい。
【0022】
シラノール基を有する化合物、及び有機リン酸化合物は、金属用の一般的な表面処理剤(例えば、無機リン酸塩等)に比べて、いずれも絶縁性に優れるので、これらを含むコーティング化合物も絶縁性に優れる。金属元素含有粒子がコーティング化合物で覆われていることにより、金属元素含有粉を構成する個々の金属元素含有粒子が、コーティング化合物により互いに絶縁される。その結果、当該金属元素含有粉から構成される成形体の渦電流損は小さく、成形体の磁気損失は小さい。また、コーティング化合物は絶縁性に優れるため、コーティング化合物の層の厚さが薄い場合であっても、金属元素含有粒子同士をコーティング化合物の薄層で十分に絶縁することができる。その結果、成形体に占めるコーティング化合物の割合を小さくして、成形体における金属元素含有粒子の含有量を多くすることができ、成形体の磁束密度を高くすることができる。
【0023】
コーティング化合物は、金属元素含有粒子の表面の少なくとも一部又は全体を覆っていてよい。金属元素含有粉におけるコーティング化合物の含有量は、0.001質量%以上1.00質量%以下であってよい。コーティング化合物の含有量が上記の範囲内である場合、成形体における金属元素含有粒子の含有量が多くなり易く、成形体の磁束密度が高くなり易い。
【0024】
金属元素含有粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上300μm以下であってよい。平均粒子径は、例えば、粒度分布計によって測定されてよい。金属元素含有粉を構成する個々の粒子の形状は限定されないが、例えば、球状、扁平形状、角柱状又は針状であってよい。コーティング化合物の厚みは、金属元素含有粒子の粒子径に比べて非常に小さいので、コーティング化合物で覆われた金属元素含有粒子全体の平均粒子径は、コーティング化合物で覆われていない金属元素含有粒子の平均粒子径とほぼ等しい。
【0025】
金属元素含有粉に含まれる金属元素含有粒子の組成又は組合せに応じて、金属元素含有粉の電磁気的特性又は熱伝導性等の諸物性を自在に制御し、金属元素含有粉を様々な工業製品又はそれらの原材料に利用することができる。金属元素含有粉を用いて製造される工業製品は、例えば、自動車、医療機器、電子機器、電気機器、情報通信機器、家電製品、音響機器、及び一般産業機器であってよい。金属元素含有粉は、例えば、磁芯に用いられてよい。金属元素含有粉が金属元素含有粒子としてFe‐Si‐Cr系合金又はフェライト等の軟磁性粉を含む場合、金属元素含有粉は、上述のインダクタ(例えばEMIフィルタ)又はトランスの材料(例えば磁芯)として利用されてよい。金属元素含有粉が金属元素含有粒子として永久磁石を含む場合、金属元素含有粉はボンド磁石の原材料として利用されてよい。金属元素含有粉が金属元素含有粒子として鉄と銅とを含む場合、金属元素含有粉から形成された成形体(例えばシート)は、電磁波シールドとして利用されてよい。
【0026】
<金属元素含有粉の組成>
(コーティング化合物)
コーティング化合物は、シラノール基を有する化合物を含んでよい。コーティング化合物は、有機リン酸化合物を含んでよい。コーティング化合物は、シラノール基を有する化合物、及び有機リン酸化合物を含んでよい。
【0027】
[シラノール基を有する化合物]
シラノール基を有する化合物は、例えば、アルキルシラン系化合物、エポキシシラン系化合物、アミノシラン系化合物、カチオニックシラン系化合物、ビニルシラン系化合物、アクリルシラン系化合物、メルカプトシラン系化合物、及びこれらの複合系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シラノール基を有する化合物は、アルコキシシランの加水分解物であってよい。
【0028】
シラノール基を有する化合物は、当該化合物(分子)の末端に、グリシジル基、アルキル基、メタクリロイル基、及びアミノ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有してよい。化合物の末端とは、分子鎖の末端であってよく、分子が有する側鎖の末端であってもよい。
【0029】
シラノール基を有する化合物がグリシジル基を有する場合、金属元素含有粉と樹脂との混合物(コンパウンド)から成形体を形成する際に、シラノール基を有する化合物が、グリシジル基を介して、成形体に含まれる樹脂と結合し易い。その結果、成形体の機械的強度が高くなり易い。
【0030】
シラノール基を有する化合物がアルキル基を有する場合、金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに結合し難く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに結合し難い。つまり、金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに滑り易く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに滑り易い。そのため、成形体を形成する際に、成形体中に金属元素含有粉が密に充填され易く、成形体における金属元素含有粉の含有量が多くなり易い。その結果、成形体の磁束密度が高くなり易い。また、金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに結合し難いことにより、金属元素含有粉を用いて調製されたペーストの流動性が高くなり易い。金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに結合し難く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに結合し難い場合、金属元素含有粉と樹脂との混合物(コンパウンド)中において、個々の金属元素含有粒子が外部磁場に沿って配向し易いので、磁気特性に優れたボンド磁石をコンパウンドから作製し易い。
【0031】
シラノール基を有する化合物がメタクリロイル基を有する場合、成形体を形成する際に、シラノール基を有する化合物が、メタクリロイル基を介して、成形体に含まれる樹脂と結合し易い。その結果、成形体の機械的強度が高くなり易い。
【0032】
シラノール基を有する化合物がアミノ基を有する場合、成形体を形成する際に、シラノール基を有する化合物が、アミノ基を介して、成形体に含まれる樹脂と結合し易い。その結果、成形体の機械的強度が高くなり易い。
【0033】
シラノール基を有する化合物は、例えば、ビニルトリメトキシシラン(KBM-1003)、ビニルトリエトキシシラン(KBE-1003)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303)、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-402)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)、p-スチリルトリメトキシシラン(KBM-1403)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503)、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(KBE-502)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE-503)、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-602)、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-603)、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE-903)、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン(KBE-9103)、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)、N-ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩(KBM-575)、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(KBM-9659)、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン(KBE-585)、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-802)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBM-9007)、オクテニルトリメトキシシラン(KBM-1083)、グリシドキシオクチルトリメトキシシラン(KBM-4803)、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(KBM-5803)、メチルトリメトキシシラン(KBM-13)、メチルトリエトキシシラン(KBE-13)、ジメチルジメトキシシラン(KBM-22)、ジメチルジエトキシシラン(KBE-22)、フェニルトリメトキシシラン(KBM-103)、フェニルトリエトキシシラン(KBE-103)、n-プロピルトリメトキシシラン(KBM-3033)、n-プロピルトリエトキシシラン(KBE-3033)、ヘキシルトリメトキシシラン(KBM-3063)、ヘキシルトリエトキシシラン(KBE-3063)、オクチルトリエトキシシラン(KBE-3083)、デシルトリメトキシシラン(KBM-3103C)、1,6-(トリメトキシシリル)ヘキサン(KBM-3066)、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(KBM-7103)、ヘキサメチルジシラザン(SZ-31)、及び加水分解性基含有シロキサン(KPN-3504)(以上、信越化学工業株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シラノール基を有する化合物は、シリコーンアルコキシオリゴマー(アルコキシ基を有するシリコーンオリゴマー)であってよい。シリコーンアルコキシオリゴマーは、メトキシ基及びエトキシ基のうちの少なくとも一種のアルコキシ基を有してよい。シリコーンアルコキシオリゴマーは、エポキシ基、メチル基、メルカプト基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、及びフェニル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機置換基を有してよい。シリコーンアルコキシオリゴマーは、例えば、KR-517、X-41-1059A、X-24-9590、KR-516、X-41-1805、X-41-1818、X-41-1810、KR-513、X-40-9296、KR-511、KC-89S、KR-515、KR-500、X-40-9225、X-40-9246、X-40-9250、KR-401N、X-40-9227、KR-510、KR-9218、及びKR-213(以上、信越化学工業株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0034】
コーティング化合物は、シラノール基を有する化合物として、上記の化合物のうちの一種を含んでよい。コーティング化合物は、シラノール基を有する化合物として、上記の化合物のうちの複数種を含んでもよい。
【0035】
[有機リン酸化合物]
有機リン酸化合物は、例えば、酸性リン酸エステル類であってよい。有機リン酸化合物は、アルキル基を有してよい。有機リン酸化合物がアルキル基を有する場合、金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに結合し難く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに結合し難い。つまり、金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに滑り易く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに滑り易い。そのため、成形体を形成する際に、成形体中に金属元素含有粉が密に充填され易く、成形体における金属元素含有粉の含有量が多くなり易い。その結果、成形体の磁束密度が高くなり易い。金属元素含有粉を構成する個々の粒子が互いに結合し難く、成形体を構成する金属元素含有粉と樹脂とが互いに結合し難い場合、金属元素含有粉と樹脂との混合物(コンパウンド)中において、個々の金属元素含有粒子が外部磁場に沿って配向し易いので、磁気特性に優れたボンド磁石をコンパウンドから作製し易い。
【0036】
有機リン酸化合物は、例えば、エチルアシッドホスフェート(JP-502)、ブチルアシッドホスフェート(JP-504)、ジブチルピロホスフェート(JP-504A)、ブトキシエチルアシッドホスフェート(JP-506AH)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(JP-508)、アルキル(C12,C14,C16,C18)アシッドホスフェート(JP-512)、イソトリデシルアシッドホスフェート(JP-513)、オレイルアシッドホスフェート(JP-518-O)、テトラコシルアシッドホスフェート(JP-524R)、エチレングリコールアシッドホスフェート(EGAP)、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート(JPA-514)、ジブチルホスフェート(DBP)、及びビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート(LB-58)(以上、城北化学工業株式会社製)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0037】
コーティング化合物は、上記のうち一種の有機リン酸化合物を含んでよい。コーティング化合物は、上記のうち複数種の有機リン酸化合物を含んでもよい。
【0038】
(金属元素含有粒子)
金属元素含有粒子は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有してよい。金属元素含有粒子は、例えば、金属単体、合金及び金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種からなっていてよい。合金は、固溶体、共晶及び金属間化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。合金とは、例えば、ステンレス鋼(Fe‐Cr系合金、Fe‐Ni‐Cr系合金等)であってよい。金属化合物とは、例えば、フェライト等の酸化物であってよい。金属元素含有粒子は、一種の金属元素又は複数種の金属元素を含んでよい。金属元素含有粒子に含まれる金属元素は、例えば、卑金属元素、貴金属元素、遷移金属元素、又は希土類元素であってよい。金属元素含有粉に含まれる金属元素は、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、クロム(Cr)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、鉛(Pb)、銀(Ag)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びジスプロシウム(Dy)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。金属元素含有粒子は、金属元素以外の元素を含んでもよい。金属元素含有粒子は、例えば、酸素(О)、ベリリウム(Be)、リン(P)、ホウ素(B)、又はケイ素(Si)を含んでもよい。金属元素含有粒子は、磁性粉であってよい。金属元素含有粒子は、軟磁性合金、又は強磁性合金であってよい。金属元素含有粒子は、例えば、Fe‐Si系合金、Fe‐Si‐Al系合金(センダスト)、Fe‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Cu‐Ni系合金(パーマロイ)、Fe‐Co系合金(パーメンジュール)、Fe‐Cr‐Si系合金(電磁ステンレス鋼)、Nd‐Fe‐B系合金(希土類磁石)、Sm‐Fe‐N系合金(希土類磁石)、Al‐Ni‐Co系合金(アルニコ磁石)及びフェライトからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェライトは、例えば、スピネルフェライト、六方晶フェライト、又はガーネットフェライトであってよい。金属元素含有粒子は、Cu‐Sn系合金、Cu‐Sn‐P系合金、Cu-Ni系合金、又はCu‐Be系合金等の銅合金であってもよい。金属元素含有粒子は、上記の元素及び組成物のうち一種を含んでよく、上記の元素及び組成物のうち複数種を含んでもよい。
【0039】
金属元素含有粒子は、Fe単体であってもよい。金属元素含有粒子は、鉄を含む合金(Fe系合金)であってもよい。Fe系合金は、例えば、Fe‐Si‐Cr系合金、又はNd‐Fe‐B系合金であってよい。金属元素含有粉が、金属元素含有粒子としてFe単体及びFe系合金のうち少なくともいずれかを含む場合、高い占積率を有し、且つ磁気特性に優れる成形体を金属元素含有粉から作製し易い。金属元素含有粒子は、Feアモルファス合金であってもよい。Feアモルファス合金粉の市販品としては、例えば、AW2‐08、KUAMET‐6B2(以上、エプソンアトミックス株式会社製の商品名)、DAP MS3、DAP MS7、DAP MSA10、DAP PB、DAP PC、DAP MKV49、DAP 410L、DAP 430L、DAP HYBシリーズ(以上、大同特殊鋼株式会社製の商品名)、MH45D、MH28D、MH25D、及びMH20D(以上、株式会社 神戸製鋼所製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種が用いられてよい。
【0040】
金属元素含有粒子の形状は、特に限定されない。個々の金属元素含有粒子は、例えば、球状、扁平形状、又は針状であってよい。金属元素含有粉は、平均粒子径が異なる複数種の金属元素含有粒子を含んでよい。
【0041】
<金属元素含有粉の製造方法>
金属元素含有粉の製造方法は、金属元素含有粒子の表面の少なくとも一部又は全体をコーティング化合物で覆うことができる方法であれば、特に限定されない。金属元素含有粉は、例えば、以下の方法により製造されてよい。
【0042】
まず、コーティング化合物を溶媒に溶解させることで、表面処理液を得る。溶媒は、コーティング化合物を溶解する液体であればよく、特に限定されない。溶媒は、水及びエタノールのうちの少なくとも一種であってよい。
【0043】
続いて、金属元素含有粒子と上記表面処理液とを混合することで、混合物を得る。混合物における表面処理液の含有量は、混合物に含まれる金属元素含有粒子の全質量(100質量部)に対して、5質量部以上10質量部以下であってよい。表面処理液の含有量が5質量部未満である場合、金属元素含有粒子の表面がコーティング化合物で十分に覆われ難い。表面処理液の含有量が10質量部を超える場合、金属元素含有粒子と表面処理液とを混合した際に、金属元素含有粒子の凝集物が発生し易い。その結果、金属元素含有粒子の表面がコーティング化合物で均一に覆われ難い。表面処理液の含有量が上記の範囲内である場合、金属元素含有粒子の表面がコーティング化合物で十分に且つ均一に覆われ易い。その結果、金属元素含有粉の絶縁性が向上し易い。
【0044】
上記混合物から溶媒を十分に除去することにより、金属元素含有粉を得る。溶媒の除去に伴って、表面処理液に含まれるコーティング化合物が金属元素含有粒子の表面に付着する。コーティング化合物は、金属元素含有粒子の表面の全体に付着してもよく、金属元素含有粒子の表面の一部のみに付着してもよい。混合物から溶媒を除去する方法は、特に限定されない。例えば、混合物を乾燥することにより、混合物から溶媒を除去することができる。乾燥温度は、50℃以上200℃以下であってよい。乾燥温度が50℃未満である場合、乾燥が不十分となり易く、コーティング化合物が金属元素含有粒子の表面に付着し難い。乾燥温度が200℃を超える場合、金属元素含有粉が酸化し易い。乾燥温度が上記の範囲内である場合、コーティング化合物が金属元素含有粒子の表面に十分に付着し易く、金属元素含有粉が酸化し難い。その結果、金属元素含有粉の絶縁性が向上し易い。コーティング化合物が有機リン酸化合物を含む場合、混合物を150℃以上の乾燥温度で乾燥することにより、金属元素含有粒子の表面に付着した有機リン酸化合物が無機被膜になる。その結果、金属元素含有粉の絶縁性が向上し易く、成形体の耐電圧性が向上し易い。
【0045】
金属元素含有粉は、金属元素含有粒子とコーティング化合物とを直接混合して、金属元素含有粒子の表面にコーティング化合物を付着させることにより、製造されてもよい。
【0046】
<コンパウンド>
本実施形態に係るコンパウンドは、上記金属元素含有粉と、樹脂組成物と、を備える。樹脂組成物は、金属元素含有粉を構成する個々の粒子の少なくとも一部又は全体を覆っていてよい。樹脂組成物は、金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に付着してよい。樹脂組成物は、当該粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。コンパウンドは、未硬化の樹脂組成物と、金属元素含有粉と、を備えてよい。コンパウンドは、樹脂組成物の半硬化物(例えばBステージの樹脂組成物)と、金属元素含有粉と、を備えてよい。コンパウンドは、粉末(コンパウンド粉)であってよい。
【0047】
(樹脂組成物)
樹脂組成物は少なくとも樹脂を含有する。樹脂組成物は、樹脂、硬化剤、硬化促進剤及び添加剤を包含し得る成分であって、有機溶媒と金属元素含有粉(金属元素含有粒子及びコーティング化合物)とを除く残りの成分(不揮発性成分)であってよい。添加剤とは、樹脂組成物のうち、樹脂、硬化剤及び硬化促進剤を除く残部の成分である。添加剤とは、例えば、カップリング剤又は難燃剤等である。樹脂組成物が添加剤としてワックスを含んでいてもよい。以下の通り、コンパウンドは、金属元素含有粉と樹脂組成物とから形成されてよい。
【0048】
樹脂組成物は金属元素含有粉の結合剤(バインダー)としての機能を有し、コンパウンドから形成される成形体に機械的強度を付与する。例えば、コンパウンドに含まれる樹脂組成物は、金型を用いてコンパウンドが高圧で成形される際に、金属元素含有粉を構成する粒子の間に充填され、当該粒子を互いに結着する。成形体中の樹脂組成物を硬化させることにより、樹脂組成物の硬化物が、金属元素含有粉を構成する粒子同士をより強固に結着して、成形体の機械的強度が向上する。
【0049】
樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含有してよい。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びポリアミドイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物がエポキシ樹脂及びフェノール樹脂の両方を含む場合、フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として機能してもよい。樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びポリエチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。樹脂組成物は、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の両方を含んでよい。樹脂組成物は、シリコーン樹脂を含んでもよい。
【0050】
コンパウンドにおける樹脂組成物の含有量は、コンパウンド全体の質量(金属元素含有粉及び樹脂組成物の質量の合計)に対して、0.2~10質量%であってよく、より好ましくは4~6質量%であってよい。
【0051】
エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂の中でも流動性に優れているので、樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は、例えば、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であってよい。エポキシ樹脂の中でも、結晶性のエポキシ樹脂が好ましい。結晶性のエポキシ樹脂の分子量は比較的低いにもかかわらず、結晶性のエポキシ樹脂は比較的高い融点を有し、且つ流動性に優れる。
【0052】
エポキシ樹脂は、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、ナフトール類とフェノール類との共重合型エポキシ樹脂、アラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ビスフェノール型エポキシ樹脂、アルコール類のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、シクロペンタジエン型エポキシ樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジル型又はメチルグリシジル型のエポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、及びオレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0053】
結晶性のエポキシ樹脂(結晶性の高いエポキシ樹脂)は、例えば、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、チオエーテル型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。結晶性のエポキシ樹脂の市販品は、例えば、エピクロン860、エピクロン1050、エピクロン1055、エピクロン2050、エピクロン3050、エピクロン4050、エピクロン7050、エピクロンHM-091、エピクロンHM-101、エピクロンN-730A、エピクロンN-740、エピクロンN-770、エピクロンN-775、エピクロンN-865、エピクロンHP-4032D、エピクロンHP-7200L、エピクロンHP-7200、エピクロンHP-7200H、エピクロンHP-7200HH、エピクロンHP-7200HHH、エピクロンHP-4700、エピクロンHP-4710、エピクロンHP-4770、エピクロンHP-5000、エピクロンHP-6000、及びN500P-2(以上、DIC株式会社製の商品名)、NC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3100、CER-3000-L、NC-2000-L、XD-1000、NC-7000-L、NC-7300-L、EPPN-501H、EPPN-501HY、EPPN-502H、EOCN-1020、EOCN-102S、EOCN-103S、EOCN-104S、CER-1020、EPPN-201、BREN-S、BREN-10S(以上、日本化薬株式会社製の商品名)、YX-4000、YX-4000H、YL4121H、及びYX-8800(以上、三菱ケミカル株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0054】
樹脂組成物は、上記のうち一種のエポキシ樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のエポキシ樹脂を含有してもよい。樹脂組成物は、上記のエポキシ樹脂の中でも、ビフェニル型エポキシ樹脂(YX-4000H)及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(N500P-2)の両方を含有することが好ましい。
【0055】
硬化剤は、低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤と、加熱に伴ってエポキシ樹脂を硬化させる加熱硬化型硬化剤と、に分類される。低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤は、例えば、脂肪族ポリアミン、ポリアミノアミド、及びポリメルカプタン等である。加熱硬化型硬化剤は、例えば、芳香族ポリアミン、酸無水物、フェノールノボラック樹脂、及びジシアンジアミド(DICY)等である。
【0056】
低温から室温の範囲でエポキシ樹脂を硬化させる硬化剤を用いた場合、エポキシ樹脂の硬化物のガラス転移点は低く、エポキシ樹脂の硬化物は軟らかい傾向がある。その結果、コンパウンドから形成された成形体も軟らかくなり易い。一方、成形体の耐熱性を向上させる観点から、硬化剤は、好ましくは加熱硬化型の硬化剤、より好ましくはフェノール樹脂、さらに好ましくはフェノールノボラック樹脂であってよい。特に硬化剤としてフェノールノボラック樹脂を用いることで、ガラス転移点が高いエポキシ樹脂の硬化物が得られ易い。その結果、成形体の耐熱性及び機械的強度が向上し易い。
【0057】
フェノール樹脂は、例えば、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノールとアラルキル型フェノールとの共重合型フェノール樹脂、パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂、シクロペンタジエン変性フェノール樹脂、多環芳香環変性フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、及びトリフェニルメタン型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノール樹脂は、上記のうちの2種以上から構成される共重合体であってもよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、荒川化学工業株式会社製のタマノル758、又は日立化成株式会社製のHP-850N等を用いてもよい。
【0058】
フェノールノボラック樹脂は、例えば、フェノール類及び/又はナフトール類と、アルデヒド類と、を酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られる樹脂であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するフェノール類は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール及びアミノフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するナフトール類は、例えば、α‐ナフトール、β‐ナフトール及びジヒドロキシナフタレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。フェノールノボラック樹脂を構成するアルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びサリチルアルデヒドからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0059】
硬化剤は、例えば、1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物であってもよい。1分子中に2個のフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及び置換又は非置換のビフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0060】
樹脂組成物は、上記のうち一種のフェノール樹脂を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種のフェノール樹脂を備えてもよい。樹脂組成物は、上記のうち一種の硬化剤を含有してよい。樹脂組成物は、上記のうち複数種の硬化剤を含有してもよい。
【0061】
エポキシ樹脂中のエポキシ基と反応する硬化剤中の活性基(フェノール性OH基)の比率は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、好ましくは0.5~1.5当量、より好ましくは0.9~1.4当量、さらに好ましくは1.0~1.2当量であってよい。硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、硬化後のエポキシ樹脂の単位重量当たりのOH量が少なくなり、樹脂組成物(エポキシ樹脂)の硬化速度が低下する。また硬化剤中の活性基の比率が0.5当量未満である場合、得られる硬化物のガラス転移温度が低くなったり、硬化物の充分な弾性率が得られなかったりする。一方、硬化剤中の活性基の比率が1.5当量を超える場合、コンパウンドから形成された成形体の硬化後の機械的強度が低下する傾向がある。ただし、硬化剤中の活性基の比率が上記の範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0062】
硬化促進剤は、例えば、エポキシ樹脂と反応してエポキシ樹脂の硬化を促進させる組成物であれば限定されない。硬化促進剤は、例えば、アルキル基置換イミダゾール、又はベンゾイミダゾール等のイミダゾール類であってよい。樹脂組成物は、一種の硬化促進剤を備えてよい。樹脂組成物は、複数種の硬化促進剤を備えてもよい。樹脂組成物の成分として、硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドの成形性及び離型性が向上し易い。また樹脂組成物の成分として硬化促進剤を含有することにより、コンパウンドを用いて製造された成形体(例えば、電子部品)の機械的強度が向上したり、高温・高湿な環境下におけるコンパウンドの保存安定性が向上したりする。
【0063】
硬化促進剤の配合量は、硬化促進効果が得られる量であればよく、特に限定されない。ただし、樹脂組成物の吸湿時の硬化性及び流動性を改善する観点からは、硬化促進剤の配合量は、100質量部のエポキシ樹脂に対して、好ましくは0.1~30質量部、より好ましくは1~15質量部であってよい。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂及び硬化剤(例えばフェノール樹脂)の質量の合計に対して0.001質量部以上5質量部以下であることが好ましい。硬化促進剤の配合量が0.1質量部未満である場合、十分な硬化促進効果が得られ難い。硬化促進剤の配合量が30質量部を超える場合、コンパウンドの保存安定性が低下し易い。ただし、硬化促進剤の配合量及び含有量が上記の範囲外である場合であっても、本発明に係る効果は得られる。
【0064】
カップリング剤は、樹脂組成物と、金属元素含有粉を構成する粒子との密着性を向上させ、コンパウンドから形成される成形体の可撓性及び機械的強度を向上させる。カップリング剤は、例えば、シラン系化合物(シランカップリング剤)、チタン系化合物、アルミニウム化合物(アルミニウムキレート類)、及びアルミニウム/ジルコニウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、酸無水物系シラン及びビニルシランからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。特に、アミノフェニル系のシランカップリング剤が好ましい。コンパウンドは、上記のうち一種のカップリング剤を備えてよく、上記のうち複数種のカップリング剤を備えてもよい。
【0065】
コンパウンドの環境安全性、リサイクル性、成形加工性及び低コストのために、コンパウンドは難燃剤を含んでよい。難燃剤は、例えば、臭素系難燃剤、鱗茎難燃剤、水和金属化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤、窒素含有化合物、ヒンダードアミン化合物、有機金属化合物及び芳香族エンプラからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。コンパウンドは、上記のうち一種の難燃剤を備えてよく、上記のうち複数種の難燃剤を備えてもよい。
【0066】
ワックスは、高級脂肪酸等の脂肪酸、及び脂肪酸エステルのうち少なくともいずれか一つであってよい。コンパウンドは複数種のワックスを含んでよい。コンパウンドの流動性が向上し易い観点において、ワックスは、脂肪酸を含有することが好ましい。
【0067】
ワックスは、例えば、モンタン酸、ステアリン酸、12-オキシステアリン酸、ラウリン酸等の脂肪酸類又はこれらのエステル;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアエン酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2-エチルヘキソイン酸亜鉛等の脂肪酸塩;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N-ステアリルステアリン酸アミド、N-オレイルステアリン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等の脂肪酸アミド;ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの変性物からなるポリエーテル類;シリコーンオイル、シリコングリース等のポリシロキサン類;フッ素系オイル、フッ素系グリース、含フッ素樹脂粉末等のフッ素化合物;並びに、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバ、マイクロワックス等のワックス類;からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。
【0068】
モンタン酸ワックスの市販品としては、リコワックスE、リコワックスOP、リコルブE及びリコルブWE40(以上、クラリアントケミカルズ株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いてもよい。ステアリン酸ワックスの市販品としては、花王株式会社製のルナックS‐50V(タイター:56℃)及びルナックS‐90V(融点:68℃)のうち少なくともいずれかを用いてもよい。ポリエチレンワックスの市販品としては、リコルブH12、リコワックスPE520、及びリコワックスPED191(以上、クラリアントケミカルズ株式会社製の商品名)からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いてよい。アマイドワックスの市販品としては、リコルブFA1(クラリアントケミカルズ株式会社製の商品名)、及びDISPARLON6650(楠本化成株式会社製の商品名)のうち少なくともいずれかを用いてよい。コンパウンドの流動性、離型性、成形時の温度及び圧力、並びにワックスの融点、滴点及び溶融粘度等、コンパウンドの設計において要求される事項に応じて、コンパウンドに含まれるワックスが適宜選択されてよい。コンパウンドの流動性、離型性、成形時の温度及び圧力、並びにワックスの融点の観点において、ルナックS‐50V及びルナックS‐90Vのうち少なくともいずれかがコンパウンドに含まれることが特に好ましい。
【0069】
<コンパウンドの製造方法>
コンパウンドの製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の通りであってよい。まず、樹脂、金属元素含有粉及び有機溶媒を均一に撹拌・混合することにより、樹脂溶液を調製する。換言すれば、上述の樹脂組成物、金属元素含有粉及び有機溶媒を混合することにより、樹脂溶液を調製する。樹脂溶液は、硬化剤を含んでもよい。樹脂溶液は、硬化促進剤を含んでもよい。樹脂溶液は、カップリング剤、流動助剤、難燃剤、及び潤滑剤等の添加剤を含んでもよい。有機溶媒は、樹脂組成物を溶解する液体であればよく、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、アセトン、N-メチルピロリジノン(N-メチル-2-ピロリドン)、γ-ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン及びキシレンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。続いて、樹脂溶液から有機溶媒を十分に除去することにより、コンパウンドが得られる。有機溶媒の除去に伴って、樹脂組成物が金属元素含有粉を構成する個々の粒子の表面に付着する。樹脂組成物は、当該粒子の表面の全体に付着してもよく、当該粒子の表面の一部のみに付着してもよい。樹脂溶液から有機溶媒を除去する方法は、特に限定されない。例えば、樹脂溶液を乾燥することにより、樹脂溶液から有機溶媒を除去することができる。樹脂溶液を乾燥する方法は、例えば、真空乾燥であってよい。後述される第二工程における金型の損傷を低減するために、上記で得られたコンパウンドに潤滑剤を添加してもよい。潤滑剤は、特に限定されない。潤滑剤は、例えば、金属石鹸及びワックス系潤滑剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。また、第二工程における金型の損傷を低減するために、潤滑剤を適当な分散媒に分散して分散液を調製し、この分散液を金型ダイス内の壁面(パンチと接触する壁面)に塗布し、塗布された分散液を乾燥してもよい。以上の方法により、粉末状のコンパウンドが得られる。
【0070】
<成形体>
本実施形態に係る成形体は、上記金属元素含有粉を備える。成形体は、金属元素含有粉のみからなっていてよく、金属元素含有粉に加えて他の成分を備えてもよい。成形体は、金属元素含有粉と、上記樹脂組成物と、を備えてよい。成形体は、未硬化の樹脂組成物、樹脂組成物の半硬化物(Bステージの樹脂組成物)、及び樹脂組成物の硬化物(Cステージの樹脂組成物)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてよい。成形体は、上記コンパウンドの硬化物であってよい。コンパウンドの硬化物から構成される成形体は、金属元素含有粉と、金属元素含有粉を互いに結着する樹脂組成物の硬化物と、を備えてよい。
【0071】
<成形体の製造方法>
本実施形態に係る金属元素含有粉を備える成形体の製造方法は、金属元素含有粉を金型中で加圧する工程を備えてよい。成形体の製造方法は、金属元素含有粉を金型中で加圧する工程のみを備えてよく、当該工程に加えてその他の工程を備えてもよい。上記コンパウンドの硬化物から構成される成形体の製造方法は、第一工程、第二工程及び第三工程を備えてもよい。以下では、各工程の詳細を説明する。
【0072】
第一工程では、上記の方法でコンパウンドを作製する。
【0073】
第二工程では、コンパウンドを金型中で加圧することにより、成形体(Bステージの成形体)を得る。ここで、樹脂組成物が、金属元素含有粉を構成する個々の粒子間に充填される。そして樹脂組成物は、結合剤(バインダー)として機能し、金属元素含有粉を構成する粒子同士を互いに結着する。コンパウンドに及ぼす圧力が高いほど、成形体の密度が高くなり易く、成形体の機械的強度が高くなり易い。ボンド磁石を製造する場合、コンパウンドに及ぼす圧力が高いほど、ボンド磁石の磁束密度が高くなり易く、ボンド磁石の機械的強度が高くなり易い。コンパウンドに及ぼす圧力は、例えば、好ましくは500MPa以上2500MPa以下、より好ましくは1400MPa以上2000MPa以下であってよい。コンパウンドに及ぼす圧力が上記の範囲内である場合、成形体の量産性が向上し易く、金型の寿命が延び易い。
【0074】
第三工程では、成形体を熱処理によって硬化させ、Cステージの成形体を得る。熱処理の温度は、成形体中の樹脂組成物が十分に硬化する温度であればよい。熱処理の温度は、例えば、好ましくは150℃以上300℃以下、より好ましくは175℃以上250℃以下であってよい。成形体中の金属元素含有粉(金属元素含有粒子)の酸化を抑制するために、熱処理を不活性雰囲気下で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃を超える合、熱処理の雰囲気に不可避的に含まれる微量の酸素によって金属元素含有粉が酸化されたり、樹脂硬化物が劣化したりする。金属元素含有粉の酸化、及び樹脂硬化物の劣化を抑制しながら樹脂組成物を十分に硬化させるためには、熱処理温度の保持時間は、好ましくは数分以上4時間以下、より好ましくは5分以上1時間以下であってよい。
【実施例】
【0075】
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0076】
(表面処理液の調製)
[表面処理液1]
50mLのポリビン(ポリエチレンビン)に、純水19.4g、及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)19.4gを入れた。ポリビンを振って、ポリビン内の液体を混合した。ポリビン内の液体をスポイトで攪拌しながら、コーティング化合物として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.20gをポリビン内の液体に滴下した。3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとしては、信越化学工業株式会社製のKBM-403を用いた。以上の方法により、コーティング化合物溶液を得た。
【0077】
50mLのポリカップ(ポリプロピレンカップ)に、酢酸(和光純薬工業株式会社製)1.0g、純水4.5g、及びエタノール(和光純薬工業株式会社製)4.5gを入れた。ポリカップ内の液体を混合することにより、希釈酢酸溶液を得た。
【0078】
50mLのポリビンに上記コーティング化合物溶液30gを入れた。ポリビン内のコーティング化合物溶液に、上記希釈酢酸溶液を滴下して、コーティング化合物溶液のpHを4.5に調整した。ポリビンを振って、ポリビン内の溶液を混合した。その後、ポリビンを30分間静置した。以上の方法により、表面処理液1を得た。表面処理液1に含まれるコーティング化合物、純水及びエタノール其々の質量(単位:g)、表面処理液1のpH、及び、表面処理液1におけるコーティング化合物の含有量(単位:質量%)は、下記表1に示される。表1において、「溶液濃度」は、表面処理液におけるコーティング化合物の含有量を意味する。
【0079】
[表面処理液2~11]
表面処理液2~6及び10其々の調製では、下記表1に示されるコーティング化合物を用いた。表面処理液2~6及び10其々の調製では、表面処理液に含まれる純水、エタノール及びコーティング化合物其々の質量は、下記表1に示される値(単位:g)に調整された。以上の事項を除いて表面処理液1と同様の方法により、表面処理液2~6及び10を個別に調製した。
表面処理液7~9及び11其々の調製では、下記表1に示されるコーティング化合物を用いた。表面処理液7~9及び11其々の調製では、表面処理液に含まれる純水、エタノール及びコーティング化合物其々の質量は、下記表1に示される値(単位:g)に調整された。表面処理液7~9及び11其々の調製では、希釈酢酸溶液を用いなかった。つまり、表面処理液7~9及び11其々の調製では、コーティング化合物溶液のpHの調整を行わなかった。以上の事項を除いて表面処理液1と同様の方法により、表面処理液7~9及び11を個別に調製した。
【0080】
下記表1中のKBM-503は、信越化学工業株式会社製の3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のKBM-5803は、信越化学工業株式会社製のメタクリロキシオクチルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のKBM-13は、信越化学工業株式会社製のメチルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のKBM-3063は、信越化学工業株式会社製のヘキシルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のKBM-7103は、信越化学工業株式会社製のトリフルオロプロピルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のKBM-903は、信越化学工業株式会社製の3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シラノール基を有する化合物)である。
下記表1中のJP-504は、城北化学工業株式会社製のブチルアシッドホスフェート(有機リン酸化合物)である。
下記表1中のJP-513は、城北化学工業株式会社製のイソトリデシルアシッドホスフェート(有機リン酸化合物)である。
【0081】
(実施例1)
[金属元素含有粉の作製]
50mLのポリビンに、金属元素含有粒子として、カルボニル鉄粉(純鉄粉)400.0gを入れた。カルボニル鉄粉としては、BASFジャパン株式会社製のSQを用いた。ポリビンに、上記表面処理液1を20.0g入れた。ポリビンを10分間振って、金属元素含有粒子と表面処理液1とを混合して、混合物を得た。ポリビン内の混合物を、金属製のバットに移し、予め100℃に加熱したオーブンに入れた。混合物をオーブンで加熱することにより、混合物を乾燥させた。乾燥温度は100℃であった。乾燥時間は1時間であった。以上の方法により、金属元素含有粉を得た。金属元素含有粉は、金属元素含有粒子と、個々の金属元素含有粒子の表面を覆うコーティング化合物と、を備えていた。
【0082】
[安息角の測定]
安息角測定装置を用いて、実施例1の金属元素含有粉の安息角を測定した。安息角測定装置としては、筒井理化学機器株式会社製のFSA-100を用いた。実施例1の安息角(単位:°)は、下記表2に示される。
【0083】
[コーティング化合物の含有量の測定]
炭素・硫黄分析装置を用いて、金属元素含有粉に含まれる炭素の質量m1を測定した。炭素・硫黄分析装置としては、LECOジャパン合同会社製のCS744を用いた。上記と同様の方法により、表面処理液と混ぜる前の金属元素含有粒子に含まれる炭素の質量m0を測定した。m1とm0との差m1-m0を算出した。m1-m0は、金属元素含有粒子の表面に付着していたコーティング化合物に含まれる炭素の質量mAに相当する。mAを、測定に用いた金属元素含有粉全体の質量Mで除することにより、金属元素含有粉全体における炭素の含有量MA(単位:質量%)を算出した。MAは、100×mA/Mに等しい。コーティング化合物の分子量をMCと表記する場合、コーティング化合物の分子構造に基づいて、コーティング化合物の1分子中の炭素の質量mCの割合MBを求めた。MBは、mC/MCに等しい。MAをMBで除することにより、金属元素含有粉に含まれるコーティング化合物の含有量[C](単位:質量%)を算出した。[C]は、MA/MBに等しい。実施例1の[C]は、下記表2に示される。
【0084】
[トロイダルの作製]
実施例1の金属元素含有粉を金型に装填した。金型中の金属元素含有粉を、油圧式プレスを用いて加圧することにより、トロイダル(成形体)を得た。金属元素含有粉に加えた圧力は300MPa(3ton/cm2)であった。トロイダルの形状は、外形20mm、内径12mm、長さ2mmであった。
【0085】
[磁気損失の測定]
B-Hアナライザを用いて、実施例1のトロイダルの磁気損失を測定した。B-Hアナライザとしては、岩崎通信機株式会社製のSY-8258を用いた。トロイダルには、励起側に直径0.4mmの銅線を5ターン巻き、検出側に0.26mmの銅線を5ターン巻いた。励起磁束密度10mTで周波数1000kHzにおける磁気損失を測定した。実施例1の磁気損失Pcv(単位:kW/m3)は、下記表2に示される。
【0086】
[トロイダルの密度の測定]
アルキメデス法により、実施例1のトロイダルの密度を測定した。実施例1の密度(単位:Mg/m3=106g/m3)は、下記表2に示される。
【0087】
[ペーストの作製]
650mLの軟膏容器に、エポキシ樹脂9.9g、フェノール樹脂17.4g、及び酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)22.7gを入れた。エポキシ樹脂としては、DIC株式会社製のEPICLON 860を用いた。エポキシ樹脂のエポキシ当量は240g/eqであった。フェノール樹脂としては、DIC株式会社製のTD-2090を用いた。フェノール樹脂の水酸基当量は105g/eqであり、フェノール樹脂の軟化点は120℃であった。軟膏容器内の原料を、自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで5分間攪拌することにより、エポキシ樹脂液を得た。自公転撹拌機としては、株式会社シンキー製のARE-500を用いた。
【0088】
650mLの軟膏容器に、実施例1の金属元素含有粉50.0g、上記エポキシ樹脂液5.3g、酢酸ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業株式会社製)2.0gを入れた。軟膏容器内の原料を、上記自公転撹拌機を用いて公転速度1000rpmで40秒間攪拌することにより、ペーストを得た。
【0089】
[粘度の測定]
粘度計を用いて、実施例1のペーストの25℃における粘度を測定した。粘度計としては、東機産業株式会社製のTV-33型粘度計(TV-33型粘度計コーンプレートタイプ、ロータコード:04(3°×R14))を用いた。ロータの回転速度は、0.5rpmであった。実施例1の粘度(単位:Pa・s)は、下記表2に示される。
【0090】
(実施例2~9)
実施例2~9其々の金属元素含有粉の作製では、下記表2に示される表面処理液を用いた。以上の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々の金属元素含有粉を個別に作製した。
【0091】
実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々の安息角及び[C]を測定した。実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々のトロイダルを個別に作製した。実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々の磁気損失及びトロイダルの密度を測定した。実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々のペーストを作製した。実施例1と同様の方法で、実施例2~9其々の粘度を測定した。各測定結果は、下記表2に示される。
【0092】
(比較例1)
比較例1の金属元素含有粉として、実施例1で用いた金属元素含有粒子と同じものを用意した。つまり、比較例1の金属元素含有粉は、金属元素含有粒子のみからなり、コーティング化合物を備えていなかった。
【0093】
実施例1と同様の方法で、比較例1の安息角及び[C]を測定した。実施例1と同様の方法で、比較例1のトロイダルを作製した。実施例1と同様の方法で、比較例1の磁気損失及びトロイダルの密度を測定した。実施例1と同様の方法で、比較例1のペーストを作製した。実施例1と同様の方法で、比較例1の粘度を測定した。各測定結果は、下記表2に示される。
【0094】
(実施例10)
実施例10の金属元素含有粉の作製では、下記表3に示される表面処理液を用いた。また、実施例10の金属元素含有粉の作製では、金属元素含有粒子として、日亜化学工業株式会社製のSm‐Fe‐N合金を用いた。実施例10の金属元素含有粉の作製では、ポリビン内の混合物に含まれる金属元素含有粒子及び表面処理液其々の質量は、下記表3に示される値(単位:g)に調整された。以上の事項を除いて実施例1と同様の方法で、実施例10の金属元素含有粉を作製した。
【0095】
実施例1と同様の方法により、実施例10の[C]を測定した。実施例10の[C]は、下記表3に示される。
【0096】
[コンパウンドの作製]
50mLのポリカップに、エポキシ樹脂2.8g、フェノール樹脂1.8g、硬化促進剤0.1g、及びアセトン(和光純薬工業株式会社製)14.0gを入れた。エポキシ樹脂としては、日本化薬株式会社製のEPPN-502Hを用いた。エポキシ樹脂のエポキシ当量は180g/eqであり、エポキシ樹脂の軟化点は90℃であった。フェノール樹脂としては、日立化成株式会社製のHP-850Nを用いた。硬化促進剤としては、日本化学工業株式会社製のヒシコーリンPX-4PBを用いた。ポリカップ内の原料を10分間攪拌することにより、エポキシ樹脂溶液を得た。
【0097】
50mLのポリビンに、実施例10の金属元素含有粉10.7g、上記エポキシ樹脂溶液1.4gを入れた。ポリビンを10分間振って、ポリビン内の原料を混合して、混合物を得た。ポリビン内の混合物を、金属製のバットに移して、30分間乾燥させた。乾燥方法は風乾であった。その後、乾燥させた混合物を真空炉に入れ、常温、減圧下で3時間乾燥させることにより、コンパウンドを得た。
【0098】
[トロイダルの作製]
実施例10のコンパウンドを、予め200℃に加熱した金型に装填した。金型中のコンパウンドを、油圧式プレスを用いて3分間加圧することにより、トロイダルを得た。コンパウンドに加えた圧力は300MPa(3ton/cm2)であった。トロイダルの形状は、外形20mm、内径12mm、長さ2mmであった。
【0099】
[磁気損失の測定]
上記B-Hアナライザを用いて、実施例10のトロイダルの磁気損失を測定した。トロイダルには、励起側に直径0.4mmの銅線を5ターン巻き、検出側に0.26mmの銅線を5ターン巻いた。励起磁束密度10mTで周波数1000kHzにおける磁気損失を測定した。実施例10の磁気損失Pcv(単位:kW/m3)は、下記表3に示される。
【0100】
[成形体の作製]
実施例10のコンパウンドを、金型に充填した。金型の寸法は、幅7mm×奥行き7mmであった。油圧プレス機を用いて、金型中のコンパウンドに高さ方向から圧力を加えることにより、圧縮成形体を得た。コンパウンドに加えた圧力は100MPa(1ton/cm2)であった。圧縮成形体を乾燥機に入れた。乾燥機内の温度を常温から5℃/minで昇温した。乾燥機内の温度が200℃に達してから10分間保持した。その後、圧縮成形体を乾燥機から取り出し、圧縮成形体の温度を常温に戻した。以上の方法により、成形体を得た。
【0101】
[成形体の密度の測定]
マイクロメーターを用いて、実施例10の成形体の寸法(幅、奥行き、高さ)を測定し、成形体の体積Vを求めた。電子天秤を用いて、実施例10の成形体の質量Wを測定した。WをVで除することにより、実施例10の成形体の密度W/Vを算出した。実施例10の密度(単位:Mg/m3)は、下記表3に示される。
【0102】
[圧壊強度試験]
万能圧縮試験機を用いて、実施例10の成形体に高さ方向から圧縮圧力を加えた。万能圧縮試験機としては、株式会社島津製作所製のAG-10TBRを用いた。圧縮圧力によって成形体が破壊されたときの圧縮圧力の最大値を、圧壊強度(単位:MPa)として算出した。実施例10の成形体の圧壊強度(単位:MPa)は、下記表3に示される。
【0103】
(実施例11~23)
実施例11~23其々の金属元素含有粉の作製では、下記表4に示される表面処理液を用いた。以上の事項を除いて実施例10と同様の方法で、実施例11~23其々の金属元素含有粉を個別に作製した。
【0104】
実施例10と同様の方法で、実施例11~23其々の[C]を測定した。実施例10と同様の方法で、実施例11~23其々のコンパウンドを個別に作製した。実施例10と同様の方法で、実施例11~23其々のトロイダルを個別に作製した。
実施例10と同様の方法で、実施例11~16其々の磁気損失を測定した。
実施例10と同様の方法で、実施例11~16其々の成形体を作製した。
実施例17~23其々の成形体の作製では、コンパウンドに加えた圧力は2500MPa(25ton/cm2)であった。以上の事項を除いて実施例10と同様の方法で、実施例17~23其々の成形体を個別に作製した。
実施例10と同様の方法で、実施例11~23其々の成形体の密度、及び圧壊強度を測定した。
各測定結果は、下記表3及び4に示される。
【0105】
(比較例2、3)
比較例2及び3其々の金属元素含有粉として、実施例10で用いた金属元素含有粒子と同じものを用意した。つまり、比較例2及び3其々の金属元素含有粉は、金属元素含有粒子のみからなり、コーティング化合物を備えていなかった。
【0106】
実施例10と同様の方法で、比較例2及び3其々の[C]を測定した。実施例10と同様の方法で、比較例2及び3其々のコンパウンドを個別に作製した。実施例10と同様の方法で、比較例2及び3其々のトロイダルを個別に作製した。
実施例10と同様の方法で、比較例2の磁気損失を測定した。
実施例10と同様の方法で、比較例2の成形体を作製した。
実施例17と同様の方法で、比較例3の成形体を作製した。
実施例10と同様の方法で、比較例2及び3其々の成形体の密度、及び圧壊強度を測定した。
各測定結果は、下記表3及び4に示される。
【0107】
表2に示されるように、実施例1~9其々のトロイダルの密度は、比較例1に比べて高く、実施例1~9其々の磁気損失は、比較例1に比べて小さかった。実施例1、2及び4~9其々の安息角は、比較例1に比べて小さかった。一方、実施例3の安息角は、比較例1に比べて大きかった。実施例2、3、5、6、8、及び9其々の粘度は、比較例1に比べて低かった。一方、実施例1、4及び7其々の粘度は、比較例1に比べて高かった。
【0108】
表3及び4に示されるように、実施例10~16其々の成形体の密度は、比較例2の密度以上であり、実施例10~16其々の磁気損失は、比較例2に比べて小さかった。実施例12~16其々の成形体の密度は、比較例2に比べて高かった。実施例17、18、20、22及び23其々の圧壊強度は、比較例3に比べて高かった。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る金属元素含有粉は、磁気損失が小さい成形体の作製の材料に適しているため、高い工業的な価値を有している。