(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】セラミックス接合体、静電チャック装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231121BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20231121BHJP
C04B 37/00 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
C04B37/00 A
(21)【出願番号】P 2022572908
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021031890
(87)【国際公開番号】W WO2022145090
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2020218678
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】有川 純
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】三浦 幸夫
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-176275(JP,A)
【文献】特開2014-093467(JP,A)
【文献】特開2016-201411(JP,A)
【文献】特開2002-261157(JP,A)
【文献】特開2021-040110(JP,A)
【文献】特開2003-124299(JP,A)
【文献】特開平11-297805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
C04B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のセラミックス板と、
前記一対のセラミックス板の間に介在する電極層と、
前記一対のセラミックス板の間において、前記電極層の周囲に配置された絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、絶縁性材料と導電性材料から構成され、
前記絶縁層は、前記一対のセラミックス板の一方と一体的に形成されて
おり、
前記電極層の外縁の相対密度は、前記電極層の中心の相対密度よりも低密度であるセラミックス接合体。
【請求項2】
前記絶縁性材料は、Al
2O
3、AlN、Si
3N
4、Y
2O
3、YAG、SmAlO
3、MgO及びSiO
2からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のセラミックス接合体。
【請求項3】
前記導電性材料は、SiC、TiO
2、TiN、TiC、W、WC、Mo、Mo
2C及びCからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載のセラミックス接合体。
【請求項4】
前記一対のセラミックス板の材料が、互いに同じである請求項1から
3のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【請求項5】
前記一対のセラミックス板が、絶縁性材料と導電性材料とから構成される請求項1から
4のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【請求項6】
セラミックスからなる静電チャック部材と、金属からなる温度調整用ベース部材とを、接着剤層を介して接合してなる静電チャック装置であって、
前記静電チャック部材は、請求項1から
5のいずれか1項に記載のセラミックス接合体からなる、静電チャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス接合体、静電チャック装置に関する。
本願は、2020年12月28日に出願された日本国特願2020-218678号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、IC、LSI、VLSI等の半導体装置を製造する半導体製造工程においては、シリコンウエハ等の板状試料は、静電チャック機能を備えた静電チャック部材に静電吸着により固定されて所定の処理が施される。
【0003】
例えば、この板状試料にプラズマ雰囲気下にてエッチング処理等を施す場合、プラズマの熱により板状試料の表面が高温になり、表面のレジスト膜が張り裂ける(バーストする)等の問題が生じる。
【0004】
そこで、この板状試料の温度を所望の一定の温度に維持するために、冷却機能を有する静電チャック装置が用いられている。このような静電チャック装置は、上記の静電チャック部材と、金属製の部材の内部に温度制御用の冷却媒体を循環させる流路が形成された温度調整用ベース部材とを備えている。静電チャック部材と温度調整用ベース部材とは、静電チャック部材の下面において、シリコーン系接着剤を介して接合・一体化している。
【0005】
この静電チャック装置では、温度調整用ベース部材の流路に温度調整用の冷却媒体を循環させて熱交換を行い、静電チャック部材の上面に固定された板状試料の温度を望ましい一定の温度に維持しつつ静電吸着できる。そのため、上記静電チャック装置を用いると、静電吸着する板状試料の温度を維持しながら、板状試料に各種のプラズマ処理を施すことができる。
【0006】
静電チャック部材としては、一対のセラミックス板と、それらの間に介在する電極層とを備えたセラミックス接合体を含む構成が知られている。このようなセラミックス接合体の製造方法としては、例えば、一方のセラミックス焼結体に溝を掘って、その溝の中に導電層を形成し、セラミックス焼結体とともに導電層を研削、鏡面研磨した後、ホットプレスにより、一方のセラミックス焼結体に他方のセラミックス焼結体を接合する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、一対のセラミックス板を貼り合わせる界面(接合界面)に、微小な空間(ボイド)が残存することがあり、この機構により静電チャック部材の耐電圧が低下する、すなわち絶縁破壊するおそれが指摘されている。このようなボイドを有する静電チャック部材は、誘電層(セラミックス板)に高い電圧を印加すると、ボイドに電荷が溜まり、放電するよりセラミックス板が絶縁破壊すると予想される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、電極層とセラミックス板の間にボイドが生じることを充分に抑制することができなかった。そのため、特許文献1に記載のセラミックス接合体では、放電によるセラミックス板の絶縁破壊を十分に防ぐことができず、改善が求められていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、高い電圧を印加した場合に、放電によりセラミックス板の絶縁破壊が発生することを抑制したセラミックス接合体、セラミックス接合体を含む静電チャック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の態様を包含する。
【0012】
[1]一対のセラミックス板と、前記一対のセラミックス板の間に介在する電極層と、前記一対のセラミックス板の間において、前記電極層の周囲に配置された絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、絶縁性材料と導電性材料から構成される、セラミックス接合体。
【0013】
[2]前記絶縁層は、前記一対のセラミックス板の一方と一体的に形成されている、[1]に記載のセラミックス接合体。
【0014】
[3]前記絶縁性材料は、Al2O3、AlN、Si3N4、Y2O3、YAG、SmAlO3、MgO及びSiO2からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]又は[2]に記載のセラミックス接合体。
【0015】
[4]前記導電性材料は、SiC、TiO2、TiN、TiC、W、WC、Mo、Mo2C及びCからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]から[3]のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【0016】
[5]前記電極層の外縁の相対密度は、前記電極層の中心の相対密度よりも低密度である[1]から[4]のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【0017】
[6]前記一対のセラミックス板の材料が、互いに同じである[1]から[5]のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【0018】
[7]前記一対のセラミックス板が、絶縁性材料と導電性材料とから構成される[1]から[6]のいずれか1項に記載のセラミックス接合体。
【0019】
[8]セラミックスからなる静電チャック部材と、金属からなる温度調整用ベース部材とを、接着剤層を介して接合してなる静電チャック装置であって、前記静電チャック部材は、[1]から[7]のいずれか1項に記載のセラミックス接合体からなる、静電チャック装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い電圧を印加した場合に、放電によりセラミックス板の絶縁破壊が発生することを抑制したセラミックス接合体、セラミックス接合体を含む静電チャック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係るセラミックス接合体を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るセラミックス接合体を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るセラミックス接合体を示す断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る静電チャック装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のセラミックス接合体、静電チャック装置の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0023】
[セラミックス接合体]
以下、
図1を参照しながら、本発明の一実施形態に係るセラミックス接合体について説明する。
図1において、紙面の左右方向(セラミックス接合体の幅方向)をX方向、紙面の上下方向(セラミックス接合体の厚さ方向)をY方向とする。
なお、以下の全ての図面においては、図面を見易くするため、各構成要素の寸法や比率等は適宜異ならせてある。
【0024】
図1は、本実施形態のセラミックス接合体を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のセラミックス接合体1は、一対のセラミックス板2,3と、一対のセラミックス板2,3の間に介在する電極層4及び絶縁層5と、を備える。
【0025】
図1に示す断面図は、平面視においてセラミックス接合体1に外接する円のうち最小の円を想定したとき、この円の中心を含む仮想面により、セラミックス接合体を切断した断面である。セラミックス接合体1が平面視で略円形である場合、上記円の中心と、平面視におけるセラミックス接合体の形状の中心とは凡そ一致する。
【0026】
なお、本明細書において「平面視」とは、セラミックス接合体の厚さ方向であるY方向から見た視野を指す。
また、本明細書において「外縁」とは、対象物を平面視したときの外周近傍の領域を指す。
【0027】
以下、セラミックス板2を第1のセラミックス板2、セラミックス板3を第2のセラミックス板3と言うことがある。
【0028】
図1に示すように、セラミックス接合体1は、第1のセラミックス板2と、電極層4及び絶縁層5と、第2のセラミックス板3とがこの順に積層されている。すなわち、セラミックス接合体1は、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3が、電極層4及び絶縁層5を介して、接合一体化されてなる接合体である。また、電極層4及び絶縁層5は、第1のセラミックス板2において第2のセラミックス板3と対向する接合面2a、及び第2のセラミックス板3において第1のセラミックス板2と対向する接合面3aに接して設けられている。
【0029】
本実施形態のセラミックス接合体1では、絶縁層5は、絶縁性材料と導電性材料から構成される。
【0030】
(セラミックス板)
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3は、その重ね合わせ面の外周の形状を同じくする。
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の厚さは、特に限定されず、セラミックス接合体1の用途に応じて適宜調整される。
【0031】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3は、同一組成又は主成分が同一である。第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3は、絶縁性材料と導電性材料の複合体からなる。
【0032】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3に含まれる絶縁性材料は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y2O3)、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)等が挙げられる。なかでも、Al2O3、AlNが好ましい。
【0033】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3に含まれる導電性材料は、特に限定されないが、例えば、炭化ケイ素(SiC)、酸化チタン(TiO2)、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、炭素材料、希土類酸化物、希土類フッ化物等が挙げられる。炭素材料としては、カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンナノファイバーが挙げられる。なかでも、SiCが好ましい。
【0034】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の材料は、体積固有抵抗値が1013Ω・cm以上1017Ω・cm以下程度であり、機械的な強度を有し、しかも腐食性ガス及びそのプラズマに対する耐久性を有する材料であれば、特に限定されない。このような材料としては、例えば、Al2O3焼結体、AlN焼結体、Al2O3-SiC複合焼結体等が挙げられる。高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性の観点から、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の材料は、Al2O3-SiC複合焼結体が好ましい。
【0035】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.7μm以上2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以上2.0μm以下がさらに好ましい。
【0036】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が0.5μm以上3.0μm以下であれば、緻密で耐電圧性が高く、耐久性の高い第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3が得られる。
【0037】
第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径の測定方法は、次の通りである。日本電子社製の電解放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM。日本電子株式会社製、JSM-7800F-Prime)で10000倍に拡大して、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の厚さ方向の切断面を観察し、インターセプト法により絶縁性材料200個の粒子径の平均を平均一次粒子径とする。
【0038】
(電極層)
電極層4は、高周波電力を通電してプラズマを発生させてプラズマ処理するためのプラズマ発生用電極、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料を固定するための静電チャック用電極、通電発熱させて板状試料を加熱するためのヒータ電極等として用いられる構成である。電極層4の形状(電極層4を平面視した場合の形状)や、大きさ(厚さや、電極層4を平面視した場合の面積)は、特に限定されず、セラミックス接合体1の用途に応じて適宜調整される。
【0039】
電極層4は、導電性材料の粒子の焼結体、又は絶縁性セラミックスの粒子と導電性材料の粒子との複合体(焼結体)から構成される。
【0040】
また、電極層4は、厚さ方向よりも厚さ方向と直交する方向に大きな広がりを有する薄型電極である。一例として、電極層4は、厚さ20μm、直径29cmの円盤状である。このような電極層4は、後述するように、電極層形成用ペーストを塗布し焼結することで形成される。焼結により電極層形成用ペーストが体積収縮する際には等方的に収縮しやすいことから、厚さ方向よりも、厚さ方向に直交する方向において相対的に収縮量が大きくなる。そのため、電極層4の外縁、すなわち電極層4と絶縁層5との界面では、構造的にボイドが発生しやすい。
【0041】
なお、本明細書において用語「ボイド」は、第1セラミックス板と電極層との界面、又は第2のセラミックス板と電極層との界面に生じる空間であって、長径が50μm未満である空間を意味する。
【0042】
電極層4が絶縁性セラミックスと導電性材料から構成される場合、これらの混合材料の体積固有抵抗値は10-6Ω・cm以上10-2Ω・cm以下程度であることが好ましい。
【0043】
電極層4が絶縁性セラミックスと導電性材料との複合体から構成される場合、電極層4において、導電性材料の含有量は、15質量%以上100質量%以下が好ましく、20質量%以上100質量%以下がより好ましい。導電性材料の含有量が上記下限値以上であれば、セラミックス板3に充分な誘電特性を発現できる。
【0044】
電極層4に含まれる導電性材料は、導電性セラミックスであってもよく、金属や炭素材料等の導電性材料であってもよい。電極層4に含まれる導電性材料は、SiC、TiO2、TiN、TiC、タングステン(W)、炭化タングステン(WC)、モリブデン(Mo)、炭化モリブデン(Mo2C)、タンタル(Ta)、炭化タンタル(TaC、Ta4C5)、炭素材料及び導電性複合焼結体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0045】
炭素材料としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0046】
導電性複合焼結体としては、例えば、Al2O3-Ta4C5、Al2O3-W、Al2O3-SiC、AlN-W、AlN-Ta等が挙げられる。
【0047】
電極層4に含まれる導電性材料が前記物質からなる群から選択される少なくとも1種であることにより、電極層の導電率を担保できる。
【0048】
電極層4に含まれる絶縁性セラミックスは、特に限定されないが、例えば、Al2O3、AlN、窒化ケイ素(Si3N4)、Y2O3、YAG、サマリウム-アルミニウム酸化物(SmAlO3)、酸化マグネシウム(MgO)及び酸化ケイ素(SiO2)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0049】
電極層4が、導電性材料と絶縁性材料からなることにより、第1のセラミックス板2及び、第2のセラミックス板3との接合強度並びに、電極としての機械的強度が強くなる。
【0050】
電極層4に含まれる絶縁性材料が、Al2O3であることにより、高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性が保たれる。
【0051】
電極層4における導電性材料と絶縁性材料の含有量の比(配合比)は、特に限定されず、セラミックス接合体1の用途に応じて適宜調整される。
【0052】
電極層4は、全体が同じ相対密度であってもよい。また、電極層4は、外縁において、電極層4の中心よりも低密度であってもよい。電極層4の密度(相対密度)は、セラミックス接合体1の断面について撮像する顕微鏡写真に基づいて求められる。
【0053】
(電極層の相対密度の測定方法)
詳しくは、
図1と同様の断面について、顕微鏡(例えば、キーエンス社製デジタルマイクロスコープ(VFX-900F))を用い、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。電極層4の外縁の相対密度を測定する場合、撮像範囲は、電極層4のX方向の端部(例えば+X方向の端部)から、電極層4のX方向内側の方向(例えば-X方向)に向けて150μmの範囲に含まれる電極層4である。当該範囲に含まれる電極層4を、以下、「密度測定領域」と称する。
【0054】
上記顕微鏡写真によれば、電極層4の断面と重なる仮想面において、電極層4を構成する導電性セラミックス及び絶縁性セラミックスが存在する領域(物質が存在する領域。領域1)と、導電性セラミックス及び絶縁性セラミックスのいずれも存在しない「気孔」の領域(領域2)とが区別可能である。
【0055】
電極層4の外縁の相対密度は、密度測定領域の外輪郭内の面積、すなわち領域1と領域2との合計面積に対する領域1の面積の割合を、百分率で表した値である。電極層4に気孔が存在しない場合には、密度測定領域の相対密度は100%である。
【0056】
また、電極層4の中心の相対密度を測定する場合、撮像範囲は、電極層4のX方向の中央を含む領域(中心)である。なお、顕微鏡写真から、電極層4の中心と同様の密度を有すると合理的に判断できる場合には、撮像範囲は、厳密に電極層4の中央を含まなくてもよい。
【0057】
得られた顕微鏡写真において、X方向に150μmの範囲に含まれる電極層4を「密度測定領域」とし、電極層4の外縁の密度を測定する場合と同様に計算することで、電極層4の中心の相対密度が求められる。
【0058】
以上のように求められる相対密度を比較することで、電極層4の外縁において、電極層4の中心よりも低密度であるか否かを判断することができる。
【0059】
電極層4の外縁が低密度である場合、電極層4の外縁の相対密度は、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。電極層4の外縁の相対密度が50%未満であると、高密度である場合と比べ抵抗発熱が生じやすく、高周波電力印加時の面内温度均一性が低下しやすい。対して、電極層4の外縁の相対密度が50%以上であるセラミックス接合体は、高周波電力印加時の面内温度均一性が保たれる。
【0060】
一例として、電極層4の相対密度が100%である領域は、X方向の中央を含み、全幅に対して95%以上であり、電極層4の相対密度が中心よりも低密度である領域は、X方向の両端部から2.5%ずつ、計5%以下である。
【0061】
(絶縁層)
絶縁層5は、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3の境界部、すなわち電極層4形成部以外の外縁部領域を接合するために設けられた構成である。絶縁層5は、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3との間(一対のセラミックス板の間)において、平面視で電極層4の周囲に配置されている。
【0062】
絶縁層5の形状(絶縁層5を平面視した場合の形状)は、特に限定されず、電極層4の形状に応じて適宜調整される。
絶縁層5の厚さ(Y方向の幅)は、電極層4の厚さと等しくなっている。
【0063】
絶縁層5は、絶縁性材料と導電性材料から構成される複合材料からなる。絶縁層5の体積固有抵抗値は、1013Ω・cm以上1017Ω・cm以下である。
絶縁層5を構成する絶縁性材料は、特に限定されないが、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の主成分と同じであることが好ましい。絶縁層5を構成する絶縁性材料は、例えば、Al2O3、AlN、Si3N4、Y2O3、YAG、SmAlO3、MgO及びSiO2からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。絶縁層5を構成する絶縁性材料は、Al2O3が好ましい。絶縁層5を構成する絶縁性材料が、Al2O3であることにより、高温での誘電特性、高耐食性、耐プラズマ性、耐熱性が保たれる。
【0064】
絶縁層5を構成する導電性材料は、特に限定されないが、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3の主成分と同じであることが好ましい。絶縁層5を構成する導電性材料は、例えば、SiC、TiO2、TiN、TiC、W、WC、Mo、Mo2C及び炭素材料からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。炭素材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等が挙げられる。絶縁層5を構成する導電性材料は、SiCが好ましい。
【0065】
絶縁層5において、絶縁性材料の含有量は、80質量%以上96質量%以下が好ましく、80質量%以上95質量%以下がより好ましく、85質量%以上95質量%以下がさらに好ましい。絶縁性材料の含有量が上記下限値以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。絶縁性材料の含有量が上記上限値以下であれば、絶縁層5に含有させる導電性材料の除電効果を充分に発現できる。
【0066】
絶縁層5において、導電性材料の含有量は、4質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましく、5質量%以上15質量%以下がさらに好ましい。導電性材料の含有量が上記下限値以上であれば、導電性材料の除電効果を充分に発現できる。導電性材料の含有量が上記上限値以下であれば、充分な耐電圧が得られる。
【0067】
絶縁層5を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径は、0.5μm以上3.0μm以下が好ましく、0.7μm以上2.0μm以下がより好ましい。
【0068】
絶縁層5を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が0.5μm以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。一方、絶縁層5を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径が3.0μm以下であれば、研削等の加工が容易である。
【0069】
絶縁層5を構成する導電性材料の平均一次粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.8μm以下がより好ましい。
絶縁層5を構成する導電性材料の平均一次粒子径が0.1μm以上であれば、充分な耐電圧性が得られる。一方、絶縁層5を構成する導電性材料の平均一次粒子径が1.0μm以下であれば、研削等の加工が容易である。
【0070】
絶縁層5を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径及び導電性材料の平均一次粒子径の測定方法は、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3を構成する絶縁性材料の平均一次粒子径及び導電性材料の平均一次粒子径の測定方法と同様である。
【0071】
本実施形態のセラミックス接合体1によれば、セラミックス接合体1に帯電した電荷を、絶縁性材料と導電性材料から構成されるセラミックス板2,3から除電できる。さらに、上述したようにセラミックス接合体1では、電極層の外縁にボイドを形成しやすく、形成されたボイドに帯電しやすい。しかし、絶縁層5が絶縁性材料と導電性材料から構成されるため、セラミックス接合体1に高い電圧を印加した場合に、電極層4及び絶縁層5の接合界面に帯電した電荷を絶縁層5に除電できる。その結果、電極層4及び絶縁層5の接合界面の帯電を抑制でき、放電によるセラミックス接合体1の絶縁破壊を抑制できる。
【0072】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0073】
例えば、
図2、
図3に示すような変形例を採用してもよい。なお、変形例では、上記の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0074】
(変形例1)
図2に示す変形例のセラミックス接合体10では、絶縁層5が、第2のセラミックス板3と一体的に形成されている。なお、本明細書において「一体的に形成されている」とは、1つの部材として形成されている(1つの部材である)ことを意味する。この意味において、本変形例の第2のセラミックス板3と絶縁層5とは、もともと2つの部材同士を1つに「一体化」した構成とは異なる。
【0075】
絶縁層5は、第2のセラミックス板3と同一の材料から構成されている。第2のセラミックス板3は、凹部3Aを有しており、凹部3Aの周囲には環状に絶縁層5が設けられている。第2のセラミックス板3の一部が絶縁層5に該当する。凹部3Aは、凹部を有さないセラミックス板に研削加工又は研磨加工を施すことで形成可能である。
【0076】
このようなセラミックス接合体10では、電極層4と絶縁層5の接合界面に帯電した電荷をセラミックス板2及びセラミックス板3だけでなく、絶縁層5にも除電できる。その結果、電極層4及び絶縁層5の接合界面の帯電を抑制でき、放電によるセラミックス接合体10の絶縁破壊を抑制できる。
【0077】
(変形例2)
図3に示す変形例のセラミックス接合体20では、絶縁層5が、第1のセラミックス板2と一体的に形成されている。絶縁層5は、第1のセラミックス板2と同一の材料から構成されている。第1のセラミックス板2は、凹部2Aを有しており、凹部2Aの周囲には環状に絶縁層5が設けられている。第1のセラミックス板2の一部が絶縁層5に該当する。凹部2Aは、凹部を有さないセラミックス板に研削加工又は研磨加工を施すことで形成可能である。
凹部2Aの内側面は、Y方向に平行であってもよく、Y方向に対して傾きを有していてもよい。内側面がY方向に対して傾きを有する場合、凹部2Aの開口径は、凹部2Aの深さ方向に漸減する。
【0078】
このようなセラミックス接合体20では、電極層4と絶縁層5の接合界面に帯電した電荷をセラミックス板2及びセラミックス板3だけでなく、絶縁層5にも除電できる。その結果、電極層4及び絶縁層5の接合界面の帯電を抑制でき、放電によるセラミックス接合体20の絶縁破壊を抑制できる。
【0079】
[セラミックス接合体の製造方法]
本実施形態のセラミックス接合体の製造方法は、第1のセラミックス板の一方の面に、電極層形成用ペーストを塗布して電極層塗膜を形成するとともに、絶縁層形成用ペーストを塗布して絶縁層塗膜を形成する工程(以下、「第1の工程」と言う。)と、前記電極層塗膜及び前記絶縁層塗膜を形成した面が内側になる姿勢で、前記一対のセラミックス板を積層する工程(以下、「第2の工程」と言う。)と、前記一対のセラミックス板、前記電極層塗及び前記絶縁層塗膜を含む積層体を、加熱しながら、厚さ方向に加圧する工程(以下、「第3の工程」と言う。)と、を有する。
【0080】
以下、
図1を参照しながら、本実施形態のセラミックス接合体の製造方法について説明する。
【0081】
第1の工程では、スクリーン印刷法等の塗工法により、例えば、第1のセラミックス板2の一方の面2aに電極層形成用ペーストを塗布し、電極層4となる塗膜(電極層塗膜)を形成する。
電極層形成用ペーストとしては、電極層4を形成する導電性材料の粒子、又は導電性材料の粒子と絶縁材料を、溶媒に分散させた分散液が用いられる。
【0082】
また、第1の工程では、スクリーン印刷法等の塗工法により、研磨加工を施した第1のセラミックス板2の一方の面2aに絶縁層形成用ペーストを塗布し、絶縁層5となる塗膜(絶縁層塗膜)を形成する。
絶縁層形成用ペーストとしては、絶縁層5を形成する絶縁性材料及び導電性材料を、溶媒に分散させた分散液が用いられる。
絶縁層形成用ペースに含まれる溶媒としては、イソプロピルアルコール等が用いられる。
【0083】
第2の工程では、電極層塗膜及び絶縁層塗膜を形成した面が内側になる姿勢で、第2のセラミックス板3の接合面3aに、第1のセラミックス板2を積層する。
【0084】
第3の工程では、第1のセラミックス板2、電極層塗膜、絶縁層塗膜及び第2のセラミックス板3を含む積層体を、加熱しながら、厚さ方向に加圧する。
積層体を、加熱しながら、厚さ方向に加圧する際の雰囲気は、真空、あるいはAr、He、N2等の不活性雰囲気が好ましい。
【0085】
前記の積層体を加熱する温度(熱処理温度)は、1400℃以上かつ1900℃以下が好ましく、1500℃以上かつ1850℃以下がより好ましい。
積層体を加熱する温度が1400℃以上かつ1900℃以下であれば、それぞれの塗膜に含まれる溶媒を揮発させて、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3の間に、電極層4を形成できる。また、電極層4を介して、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3を接合一体化することができる。
【0086】
前記の積層体を厚さ方向に加圧する圧力(加圧力)は、1.0MPa以上かつ50.0MPa以下が好ましく、5.0MPa以上かつ20.0MPa以下がより好ましい。
積層体を厚さ方向に加圧する圧力が1.0MPa以上かつ50.0MPa以下であれば、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3の間に、電極層4及び絶縁層5を形成できる。また、電極層4及び絶縁層5を介して、第1のセラミックス板2と第2のセラミックス板3を接合一体化することができる。
【0087】
本実施形態のセラミックス接合体の製造方法によれば、絶縁層5が絶縁性材料と導電性材料から構成されたセラミックス接合体1を提供できる。得られるセラミックス接合体1は、高い電圧を印加した場合に、第1のセラミックス板2及び第2のセラミックス板3と絶縁層5の接合界面における放電を抑制でき、放電による絶縁破壊を抑制できる。
【0088】
[静電チャック装置]
以下、
図4を参照しながら、本発明の一実施形態に係る静電チャック装置について説明する。
【0089】
図4は、本実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。なお、
図4において、
図1に示したセラミックス接合体と同一の構成には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態の静電チャック装置100は、円板状の静電チャック部材102と、静電チャック部材102を所望の温度に調整する円板状の温度調整用ベース部材103と、これら静電チャック部材102及び温度調整用ベース部材103を接合・一体化する接着剤層104と、を有している。本実施形態の静電チャック装置100では、静電チャック部材102が、例えば、上述の実施形態のセラミックス接合体1からなる。ここでは、静電チャック部材102がセラミックス接合体1からなる場合について説明する。
以下の説明においては、載置板111の載置面111a側を「上」、温度調整用ベース部材103側を「下」として記載し、各構成の相対位置を表すことがある。
【0090】
[静電チャック部材]
静電チャック部材102は、上面が半導体ウエハ等の板状試料を載置する載置面111aとされたセラミックスからなる載置板111と、載置板111の載置面111aとは反対の面側に設けられた支持板112と、これら載置板111と支持板112との間に挟持された静電吸着用電極113と、載置板111と支持板112とに挟持され静電吸着用電極113の周囲を囲む環状の絶縁材114と、温度調整用ベース部材103の固定孔115内に設けられ静電吸着用電極113に接する給電用端子116と、を有している。
静電チャック部材102において、載置板111が上記の第2のセラミックス板3に相当し、支持板112が上記の第1のセラミックス板2に相当し、静電吸着用電極113が上記の電極層4に相当し、絶縁材114が上記の絶縁層5に相当する。
【0091】
[載置板]
載置板111の載置面111aには、半導体ウエハ等の板状試料を支持するための多数の突起が立設され(図示略)ている。さらに、載置板111の載置面111aの周縁部には、ヘリウム(He)等の冷却ガスが漏れないように、この周縁部を一周する、断面四角形状の環状突起部が設けられていてもよい。さらに、この載置面111a上の環状突起部に囲まれた領域には、環状突起部と高さが同一であり横断面が円形状かつ縦断面が略矩形状の複数の突起部が設けられていてもよい。
【0092】
載置板111の厚さは、0.3mm以上かつ3.0mm以下が好ましく、0.5mm以上かつ1.5mm以下がより好ましい。載置板111の厚さが0.3mm以上であれば、耐電圧性に優れる。一方、載置板111の厚さが3.0mm以下であれば、静電チャック部材102の静電吸着力が低下することがなく、載置板111の載置面111aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材103との間の熱伝導性が低下することもなく、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことができる。
【0093】
[支持板]
支持板112は、載置板111と静電吸着用電極113を下側から支持している。
【0094】
支持板112の厚さは、0.3mm以上かつ3.0mm以下が好ましく、0.5mm以上かつ1.5mm以下がより好ましい。支持板112の厚さが0.3mm以上であれば、充分な耐電圧を確保できる。一方、支持板112の厚さが3.0mm以下であれば、静電チャック部材102の静電吸着力が低下することがなく、載置板111の載置面111aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材103との間の熱伝導性が低下することもなく、処理中の板状試料の温度を好ましい一定の温度に保つことができる。
【0095】
[静電吸着用電極]
静電吸着用電極113では、電圧を印加することにより、載置板111の載置面111aに板状試料を保持する静電吸着力が生じる。
【0096】
静電吸着用電極113の厚さは、5μm以上かつ200μm以下が好ましく、10μm以上かつ100μm以下がより好ましい。静電吸着用電極113の厚さが5μm以上であれば、充分な導電性を確保できる。一方、静電吸着用電極113の厚さが200μm以下であれば、載置板111の載置面111aに載置される板状試料と温度調整用ベース部材103との間の熱伝導性が低下することがなく、処理中の板状試料の温度を望ましい一定の温度に保つことができる。また、プラズマ透過性が低下することがなく、安定にプラズマを発生させることができる。
【0097】
[絶縁材]
絶縁材114は、静電吸着用電極113を囲繞して腐食性ガス及びそのプラズマから静電吸着用電極113を保護するための部材である。
絶縁材114により、載置板111と支持板112とが、静電吸着用電極113を介して接合一体化されている。
【0098】
[給電用端子]
給電用端子116は、静電吸着用電極113に電圧を印加するための部材である。
給電用端子116の数、形状等は、静電吸着用電極113の形態、すなわち単極型か、双極型かにより決定される。
【0099】
給電用端子116の材料は、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されない。給電用端子116の材料としては、熱膨張係数が静電吸着用電極113及び支持板112の熱膨張係数に近似した材料が好ましく、例えば、コバール合金、ニオブ(Nb)等の金属材料、各種の導電性セラミックスが好適に用いられる。
【0100】
[導電性接着層]
導電性接着層117は、温度調整用ベース部材103の固定孔115内及び支持板112の貫通孔118内に設けられている。また、導電性接着層117は、静電吸着用電極113と給電用端子116の間に介在して、静電吸着用電極113と給電用端子116を電気的に接続している。
【0101】
導電性接着層117を構成する導電性接着剤は、炭素繊維、金属粉等の導電性材料と樹脂を含む。
【0102】
導電性接着剤に含まれる樹脂としては、熱応力により凝集破壊を起こし難い樹脂であれば特に限定されず、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポシキ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、伸縮度が高く、熱応力の変化によって凝集破壊し難い点から、シリコーン樹脂が好ましい。
【0103】
[温度調整用ベース部材]
温度調整用ベース部材103は、金属及びセラミックスの少なくとも一方からなる厚みのある円板状の部材である。温度調整用ベース部材103の躯体は、プラズマ発生用内部電極を兼ねた構成とされている。温度調整用ベース部材103の躯体の内部には、水、Heガス、N2ガス等の冷却媒体を循環させる流路121が形成されている。
【0104】
温度調整用ベース部材103の躯体は、外部の高周波電源122に接続されている。また、温度調整用ベース部材103の固定孔115内には、その外周が絶縁材料123により囲繞された給電用端子116が、絶縁材料123を介して固定されている。給電用端子116は、外部の直流電源124に接続されている。
【0105】
温度調整用ベース部材103を構成する材料は、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、又はこれらの金属を含む複合材であれば特に制限されない。温度調整用ベース部材103を構成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ステンレス鋼(SUS)、チタン(Ti)等が好適に用いられる。
【0106】
温度調整用ベース部材103における少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理又はポリイミド系樹脂による樹脂コーティングが施されていることが好ましい。また、温度調整用ベース部材103の全面が、前記のアルマイト処理又は樹脂コーティングが施されていることがより好ましい。
【0107】
温度調整用ベース部材103にアルマイト処理又は樹脂コーティングを施すことにより、温度調整用ベース部材103の耐プラズマ性が向上するとともに、異常放電が防止される。したがって、温度調整用ベース部材103の耐プラズマ安定性が向上し、また、温度調整用ベース部材103の表面傷の発生も防止できる。
【0108】
[接着剤層]
接着剤層104は、静電チャック部材102と、温度調整用ベース部材103とを接着一体化する構成である。
【0109】
接着剤層104の厚さは、100μm以上かつ200μm以下が好ましく、130μm以上かつ170μm以下がより好ましい。
接着剤層104の厚さが上記の範囲内であれば、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103との間の接着強度を充分に保持できる。また、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103との間の熱伝導性を充分に確保できる。
【0110】
接着剤層104は、例えば、シリコーン系樹脂組成物を加熱硬化した硬化体、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等で形成されている。
シリコーン系樹脂組成物は、シロキサン結合(Si-O-Si)を有するケイ素化合物であり、耐熱性、弾性に優れた樹脂であるので、より好ましい。
【0111】
このようなシリコーン系樹脂組成物としては、特に、熱硬化温度が70℃~140℃のシリコーン樹脂が好ましい。
【0112】
ここで、熱硬化温度が70℃を下回ると、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103とを対向させた状態で接合する際に、接合過程で硬化が充分に進まず、作業性に劣るため好ましくない。一方、熱硬化温度が140℃を超えると、静電チャック部材102及び温度調整用ベース部材103との熱膨張差が大きく、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103との間の応力が増加し、これらの間で剥離が生じることがあるため好ましくない。
【0113】
すなわち、熱硬化温度が70℃以上であると、接合過程で作業性に優れ、熱硬化温度が140℃以下であると、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103との間で剥離し難いため好ましい。
【0114】
本実施形態の静電チャック装置100によれば、静電チャック部材102がセラミックス接合体1からなるため、静電チャック部材102において、絶縁破壊(放電)の発生を抑制できる。
【0115】
以下、本実施形態の静電チャック装置の製造方法について説明する。
【0116】
上述のようにして得られたセラミックス接合体1からなる静電チャック部材102を用意する。
【0117】
温度調整用ベース部材103の一主面103aの所定領域に、シリコーン系樹脂組成物からなる接着剤を塗布する。ここで、接着剤の塗布量を、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103とが接合一体化できる量に調整する。
この接着剤の塗布方法としては、ヘラ等を用いて手動で塗布する他、バーコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。
【0118】
温度調整用ベース部材103の一主面103aに接着剤を塗布した後、静電チャック部材102と、接着剤を塗布した温度調整用ベース部材103とを重ね合わせる。
また、立設した給電用端子116を、温度調整用ベース部材103中に穿孔された固定孔115に挿入し嵌め込む。
次いで、静電チャック部材102を温度調整用ベース部材103に対して所定の圧力にて押圧し、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103を接合一体化する。これにより、静電チャック部材102と温度調整用ベース部材103は、接着剤層104を介して接合一体化される。
【0119】
以上により、静電チャック部材102及び温度調整用ベース部材103は、接着剤層104を介して接合一体化された本実施形態の静電チャック装置100が得られる。
【0120】
なお、本実施形態に係る板状試料としては、半導体ウエハに限らず、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ等の平板型ディスプレイ(FPD)用ガラス基板等であってもよい。また、その基板の形状や大きさに合わせて本実施形態の静電チャック装置を設計すればよい。
【0121】
本発明は、以下の態様も包含する。
【0122】
[1-1]一対のセラミックス板と、前記一対のセラミックス板の間に介在する電極層と、前記一対のセラミックス板の間において、前記電極層の周囲に配置された絶縁層と、を備え、前記一対のセラミックス板が、それぞれ絶縁性材料と導電性材料とから構成され、前記絶縁層は、絶縁性材料と導電性材料から構成され、前記電極層は、導電性材料の粒子の焼結体、又は絶縁性セラミックスの粒子と導電性材料の粒子との焼結体からなる、セラミックス接合体。
【0123】
[1-2]前記一対のセラミックス板の材料が、互いに同じである[1-1]に記載のセラミックス接合体。
【0124】
[1-3]下記方法で求められる前記電極層の外縁の相対密度は、前記電極層の中心の相対密度よりも低い[1-2]に記載のセラミックス接合体。
(相対密度の測定方法)
前記セラミックス接合体の厚さ方向の切断面において、前記電極層の外縁の端部から電極層の内側に向けて150μmの範囲の、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。前記範囲に含まれる電極層の外輪郭内の面積に対する、物質が存在する領域の割合を電極層の外縁の相対密度とする。
前記切断面において、電極層の中央を含む幅150μmの範囲の、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。前記範囲に含まれる電極層の外輪郭内の面積に対する、物質が存在する領域の割合を電極層の中央の相対密度とする。
【0125】
[2-1]一対のセラミックス板と、前記一対のセラミックス板の間に介在する電極層と、前記一対のセラミックス板の間において、前記電極層の周囲に配置された絶縁層と、を備え、前記一対のセラミックス板が、それぞれ絶縁性材料と導電性材料とから構成され、前記絶縁層は、絶縁性材料と導電性材料から構成され、前記一対のセラミックス板の一方と一体化されており、前記電極層は、導電性材料の粒子の焼結体、又は絶縁性セラミックスの粒子と導電性材料の粒子との焼結体からなる、セラミックス接合体。
【0126】
[2-2]前記一対のセラミックス板の材料が、互いに同じである[2-1]に記載のセラミックス接合体。
【0127】
[2-3]下記方法で求められる前記電極層の外縁の相対密度は、前記電極層の中心の相対密度よりも低い[2-2]に記載のセラミックス接合体。
(相対密度の測定方法)
前記セラミックス接合体の厚さ方向の切断面において、前記電極層の外縁の端部から電極層の内側に向けて150μmの範囲の、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。前記範囲に含まれる電極層の外輪郭内の面積に対する、物質が存在する領域の割合を電極層の外縁の相対密度とする。
前記切断面において、電極層の中央を含む幅150μmの範囲の、拡大倍率1000倍の顕微鏡写真を撮像する。前記範囲に含まれる電極層の外輪郭内の面積に対する、物質が存在する領域の割合を電極層の中央の相対密度とする。
【実施例】
【0128】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0129】
[実施例1]
91質量%の酸化アルミニウム粉末(粒子)と、9質量%の炭化ケイ素粉末(粒子)との混合粉末を成型、焼結し、直径450mm、厚さ5.0mmの円盤状の酸化アルミニウム-炭化ケイ素複合焼結体からなるセラミックス板(第1のセラミックス板、第2のセラミックス板)を作製した。
【0130】
次いで、スクリーン印刷法により、第1のセラミックス板の一方の面に、導電性材料を含む電極層形成用ペーストを塗布し、電極層塗膜を形成した。
【0131】
電極層形成用ペーストとしては、酸化アルミニウム粉末と炭化モリブデン粉末を、イソプロピルアルコールに分散させた分散液を用いた。電極層形成用ペーストにおける酸化アルミニウム粉末の含有量を25質量%とし、炭化モリブデン粉末の含有量を25質量%とした。
【0132】
また、スクリーン印刷法により、第1のセラミックス板の一方の面に、絶縁性材料と導電性材料を含む絶縁層形成用ペーストを塗布し、絶縁層塗膜を形成した。
絶縁層形成用ペーストとしては、酸化アルミニウム粉末と炭化ケイ素粉末を、イソプロピルアルコールに分散させた分散液を用いた。絶縁層形成用ペーストにおける酸化アルミニウム粉末の含有量を55質量%とし、炭化ケイ素粉末の含有量を5質量%とした。
【0133】
次いで、電極層塗膜及び絶縁層塗膜を形成した面が内側になる姿勢で、第2のセラミックス板の接合面に、第1のセラミックス板を積層した。
【0134】
次いで、第1のセラミックス板、電極層塗膜、絶縁層塗膜及び第2のセラミックス板を含む積層体を、アルゴン雰囲気下、加熱しながら、厚さ方向に加圧した。熱処理温度を1700℃、加圧力を10MPa、熱処理及び加圧する時間を2時間とした。
以上の工程により、
図1に示すような実施例1のセラミックス接合体を得た。
【0135】
(絶縁性評価)
以下のようにして、セラミックス接合体の絶縁性を評価した。
セラミックス接合体の側面(セラミックス接合体の厚さ方向の側面)において、第1のセラミックス板、絶縁層及び第2のセラミックス板に接する姿勢でカーボンテープを貼付した。
【0136】
第1のセラミックス板を、その厚さ方向に貫通し、第1のセラミックス板の電極層と接する面とは反対側の面から電極層に至る貫通電極を形成した。
【0137】
カーボンテープと貫通電極を介して、セラミックス接合体に電圧を印加し、セラミックス接合体が絶縁破壊する電圧を測定した。具体的には、3000Vの電圧を印加した状態でRF電圧を印加し10分保持し、その後500Vずつ徐々に電圧を印加して、10分保持し、測定した電流値が0.1mA(ミリアンペア)を超えたところを絶縁破壊とした。結果を表1に示す。
【0138】
[比較例]
絶縁性材料のみを含む絶縁層形成用ペーストを塗布し、絶縁層塗膜を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例のセラミックス接合体を得た。
実施例1と同様にして、セラミックス接合体の絶縁性を評価した。結果を表1に示す。
【0139】
【0140】
表1の結果から、実施例1のセラミックス接合体は、比較例のセラミックス接合体よりも絶縁耐圧が高いことが分かった。
【0141】
[実施例2]
第1のセラミックス板の一方の面(第2のセラミックス板との接合面)に研削加工を施して、第1のセラミックス板の一方の面に、第1のセラミックス板の厚さ方向に対して傾く傾斜面を有する凹部を形成した。形成した凹部は、第1のセラミックス板の厚さ方向に開口径が漸減していた。
【0142】
次いで、スクリーン印刷法により、第1のセラミックス板に形成した凹部に電極層形成用ペーストを塗布し、電極層塗膜を形成した。電極層形成用ペーストとしては、実施例1と同じものを用いた。
【0143】
電極層塗膜の厚みは、凹部の最深部において深さの80%とし、他の部分電極層塗膜の厚みは、凹部の最深部における電極層塗膜の表面と、高さ位置を揃えることで調整した。
なお、「凹部の深さ」は、第1のセラミックス板の一方の面を基準面として、基準面から凹部底部に垂線を下したときの、基準面から凹部底部までの距離を指す。
【0144】
次いで、電極層塗膜を形成した面が内側になる姿勢で、第1のセラミックス板の一方の面に、第2のセラミックス板を積層した。
【0145】
次いで、第1のセラミックス板、電極層塗膜及び第2のセラミックス板を含む積層体を、アルゴン雰囲気下、加熱しながら、厚さ方向に加圧した。熱処理温度を1700℃、加圧力を10MPa、熱処理及び加圧する時間を2時間とした。
以上の工程により、
図3に示すような実施例2のセラミックス接合体を得た。
【0146】
(電極層の密度)
電極層の密度は、上記(電極層の相対密度の測定方法)に記載の方法で求めた。実施例1のセラミックス接合体において、電極層の外縁部の密度はほぼ100%であった。
【0147】
各評価結果を表2に示す。
【0148】
【0149】
電極層の中心の密度は、ほぼ100%であることを確認した。表2の結果から、実施例2のセラミックス接合体は、実施例1のセラミックス接合体と比べ電極層の外縁が相対的に低密度であるが、実施例1と遜色ない絶縁性を示し、比較例のセラミックス接合体よりも絶縁耐圧が高いことが分かった。
【0150】
なお、実施例1と実施例2とでは、絶縁層の形成の仕方が異なるが、絶縁層が有する機能が共通する。そのため、実施例1の構成において実施例2のように電極層の外縁が低密度であるとしても、比較例のセラミックス接合体よりも絶縁耐圧が高いことが想定される。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明のセラミックス接合体は、一対のセラミックス板と、前記一対のセラミックス板の間に介在する電極層及び絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、絶縁性材料と導電性材料から構成される。そのため、セラミックス板と絶縁層の接合界面において、絶縁破壊(放電)が抑制される。このようなセラミックス接合体は、静電チャック装置の静電チャック部材に好適に用いられ、その有用性は非常に大きいものである。
【符号の説明】
【0152】
1,10,20 セラミックス接合体
2 セラミックス板(第1のセラミックス板)
3 セラミックス板(第2のセラミックス板)
4 電極層
5 絶縁層
100 静電チャック装置
102 静電チャック部材
103 温度調整用ベース部材
104 接着剤層
111 載置板
112 支持板
113 静電吸着用電極
114 絶縁材
115 固定孔
116 給電用端子
117 導電性接着層
118 貫通孔
121 流路
122 高周波電源
123 絶縁材料
124 直流電源