(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/14 20060101AFI20231121BHJP
H02K 21/16 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H02K1/14 A
H02K21/16 Z
(21)【出願番号】P 2023545202
(86)(22)【出願日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2022048640
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022035984
(32)【優先日】2022-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕治
(72)【発明者】
【氏名】高畑 良一
(72)【発明者】
【氏名】佐野 博久
(72)【発明者】
【氏名】丸川 泰弘
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-93890(JP,A)
【文献】特開平8-98487(JP,A)
【文献】特開平9-56133(JP,A)
【文献】特開2008-61485(JP,A)
【文献】特開2019-103295(JP,A)
【文献】国際公開第2007/010934(WO,A1)
【文献】特表2002-534044(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/14
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、前記回転子との間に径方向のギャップを介して配置された固定子と、を備える単相交流駆動の回転電機であって、
前記回転子は、周方向に配置された回転子磁極を構成する複数の磁石を有し、
前記固定子は、固定子鉄心と、前記固定子鉄心に複数配置されたティースと、前記ティースに巻き回されたコイルと、を有し、
前記ティースは、前記回転子磁極と対向する先端側が周方向に複数に分岐した分岐部を有し、
複数に分岐した前記分岐部の先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部が前記回転子磁極の1極分離れている単相交流駆動の回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記固定子鉄心は、前記ティースの突き出し方向と平行な分割面を有するように、周方向に複数に分割され、
前記ティースは、前記分割面で周方向に2分割され、
2分割された一方のティース部と他方のティース部とは、複数に分割された固定子鉄心の異なる固定子鉄心部分に設けられている単相交流駆動の回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記分岐部は、3つに分岐している単相交流駆動の回転電機。
【請求項4】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記ティースは、前記分岐部から径方向外周側に向かって形成された、前記回転子磁極の1極分より狭いスリット幅のスリットを有する単相交流駆動の回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記固定子鉄心は前記ティースの突き出し方向と平行な方向に長手方向を有する長方形形状である単相交流駆動の回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記固定子鉄心の内周面と前記コイルの外周との間に空間を有する単相交流駆動の回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
複数の前記ティースは、前記回転子を挟んで配置された、突き出し方向の長さが異なる2つのティースを有し、
前記回転子は、その中心が前記固定子の中心からずれて配置されている単相交流駆動の回転電機。
【請求項8】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
同一のスロットに格納されたコイルの間に閉塞材が設置されている単相交流駆動の回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
前記ティースは、前記分岐部の先端部が当該分岐部とは別部材で構成され、
別部材で構成された前記先端部は、前記閉塞材に形成された凹部に埋め込まれて固定される単相交流駆動の回転電機。
【請求項10】
請求項1に記載の単相交流駆動の回転電機であって、
複数の前記ティースは、前記回転子を挟んで配置された2つのティースで構成され、
前記固定子鉄心は、前記2つのティースの間に構成される周方向中間部で2つに分割され、
2つに分割された前記固定子鉄心の接合部における肉厚は、他の部位の肉厚よりも厚くなっている単相交流駆動の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転電機に係わり、特に単相交流駆動の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の段落0037及び
図3には、ステータ磁極と、ステータ磁極へ起磁力を与える巻線と、ロータの永久磁石と、を備える8極の単相交流モータが記載されている。巻線は、ステータの周方向において、磁極に対して一方の側でステータのスロット内に配置された巻線(第1巻線部分)と、磁極に対して他方の側でステータの外側の空間に配置された巻線(第2巻線部分)と、を有し、第2巻線部分が第1巻線部分の電流のリターン線として構成されている。
【0003】
さらに特許文献1の段落0040及び
図6には、2つのステータ磁極を有する第1ステータと、2つのステータ磁極を有し第1ステータに対して電気角的位相が180°異なるように配置された第2ステータと、を備える12極の単相交流モータが記載されている。
巻線は、第1巻線部分が第1ステータのスロット内に配置され、第2巻線部分が第2ステータのスロット内に配置されて構成される。この構成では、第2巻線部分は第1巻線部分の電流のリターン線として構成されることはなく、リターン線を排除することができ、巻線量を低減すると共にモータとしての銅損を低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回転電機は、隣り合うステータのスロットに収納する巻線の電流方向が互いに反対となるようにステータ磁極を配置するため、第1ステータのステータ磁極とこの第1ステータのステータ磁極に隣り合う第2ステータのステータ磁極とは、ロータ磁極の1極分だけ離して配置する必要がある。この場合、分割した第1ステータと第2ステータとがロータ磁極の1極分だけ離れ、その分だけ、スロット内の巻線を配置可能な空間が狭くなる。巻線の配置空間が狭くなると、巻線の巻き数が制限されたり、巻線の断面積が制限されて銅損が増加したりする、という課題があった。
以下、ステータ、ロータ及び巻線は、それぞれ固定子、回転子及びコイルと呼んで説明する。
【0006】
本発明の目的は、リターン用のコイル(リターン線)を排除するとともに、スロット内のコイルを配置可能な空間を広くすることができる単相交流駆動の回転電機を提供することにある。
【0007】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の単相交流駆動の回転電機は、
回転子と、前記回転子との間に径方向のギャップを介して配置された固定子と、を備える単相交流駆動の回転電機であって、
前記回転子は、周方向に配置された回転子磁極を構成する複数の磁石を有し、
前記固定子は、固定子鉄心と、前記固定子鉄心に複数配置されたティースと、前記ティースに巻き回されたコイルと、を有し、
前記ティースは、前記回転子磁極と対向する先端側が周方向に複数に分岐した分岐部を有し、
複数に分岐した前記分岐部の先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部が前記回転子磁極の1極分離れている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、リターン用のコイル(リターン線)を排除するとともに、スロット内のコイルを配置可能な空間を広くすることができる単相交流駆動の回転電機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1に係る回転電機の断面図である。
【
図2】本発明の実施例2に係る回転電機の断面図である。
【
図3】本発明の実施例3に係る回転電機の断面図である。
【
図4】本発明の実施例4に係る回転電機の断面図である。
【
図5】本発明の実施例5に係る回転電機の断面図である。
【
図6】本発明の実施例6に係る回転電機の断面図である。
【
図7】本発明の実施例7に係る回転電機の断面図である。
【
図8】本発明の実施例8に係る回転電機の断面図である。
【
図9】本発明の実施例9に係る回転電機の断面図である。
【
図10】本発明の実施例10に係る回転電機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
単相交流モータは、三相交流モータにくらべて駆動回路をシンプルに構成できるため、ハンディ掃除機などの小型軽量のモータが必要な製品に使われている。モータの出力は、駆動時の損失及び冷却性能に依存しているため、モータを高出力化するには、損失の低減及び冷却性能の向上が必要である。単相交流モータの損失低減構造として、コイルのリターン線を排除した構造がある。リターン線を排除した構造には、上述した様に特許文献1に記載されたものがある。
【0012】
本実施例では、ティース先端を回転子磁極の1極分だけ離して2本に分岐した先端を備えたティースを形成することで、各ティース先端が固定子磁極として機能をする。一方、ティース根本は回転子磁極の1極分だけ離す必要が無くなり、コイルの配置可能な空間が広くなり、かつ、コイルの渡り長が短縮するため、回転電機の銅損を低減することができる。また、ティース先端間に形成した通風路は、固定子鉄心同士を離した構造よりも通風路が狭いため、冷却風の流速が高まり、かつ、回転子に近い領域の割合が大きくなるため、回転子の影響が高まり、冷却風が回転により乱流化して、冷却性能を向上することができる。
【0013】
その結果、本実施例では、リターン用のコイル(リターン線)を排除するとともに、スロット内のコイル配置可能な空間を広くすることで、銅損を低減することができる。また、通風路の狭小化および回転の影響増大により冷却風を乱流化することで、冷却性能を向上した単相交流駆動の回転電機を提供することができる。
【0014】
以下、回転電機の実施形態について図面を用いて説明する。
【0015】
[実施例1]
図1に本発明の実施例1に係る回転電機1の断面図を示す。
回転電機1は、回転子2と、この回転子2と径方向に所定のギャップ長のギャップGを介して配置された固定子3と、を備えるラジアルギャップ型回転電機である。また回転電機1は、単相交流駆動の回転電機である。
【0016】
回転子2は、シャフト4と、その外周に配置された磁石14と、を有する。固定子3は、固定子鉄心12に複数配置されたティース11と、その外周に巻き回されたコイル13と、を有する。本実施例では、回転子2は固定子3の内周側に配置される。ティース11は固定子鉄心12の内周側に設けられ、回転子2の外周面に構成される回転子磁極と対向する。
【0017】
ティース11は、回転子磁極N,Sと対向する先端側が周方向に複数に分岐した分岐部11b、11cを有する。複数に分岐した分岐部11b、11cの先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部11bc、11ccが回転子磁極N,Sの1極分離れている。本実施例では、2本のティース11が設けられ、各ティース11は、外周側の根元部分11aが1本のティース部で形成され、先端側が回転子磁極の1極分だけ離して2本の先端部11bc、11ccに分岐する。
【0018】
固定子鉄心12には、2本のティース11の間に設けられた2つのスロットSLTa,SLTbと、2本の分岐部11b、11cの間に設けられた2つのスロット15a,15bと、により、合計4つのスロットが構成される。このため本実施例の、回転電機1は6極4スロットの回転電機となる。
【0019】
ただし、コイル13は分岐したティース11の先端間に構成される2つのスロット15a,15bには配置せず、ティース11の外周のみに配置する。その結果、各ティース11の分岐した先端部11bc、11ccが、別々の固定子磁極として機能する。本実施例では、2本のティース11により、固定子3側の磁極数は4極となる。
【0020】
2つのティース11のうち一方のティースには、コイル13aa,13abが1組(1本)のコイルとして巻回され、他方のティースには、コイル13ba,13bbが1組(1本)のコイルとして巻回される。一方のティースに対して周方向の一側端側に配置されるコイル13aaと他側端側に配置されるコイル13abとは、電流の流れる方向が逆向きとなるように、ティース11に巻回されている。また、他方のティースに対して周方向の一側端側に配置されるコイル13baと他側端側に配置されるコイル13bbとは、電流の流れる方向が逆向きとなるように、ティース11に巻回されている。
【0021】
この場合、一方のコイル13aa,13abに含まれるコイル13aaと他方のコイル13ba,13bbに含まれるコイル13baとは、同一のスロットSLTaに格納される。また、一方のコイル13aa,13abに含まれるコイル13abと他方のコイル13ba,13bbに含まれるコイル13bbとは、同一のスロットSLTbに格納される。同一のスロットSLTaに格納されたコイル13aaとコイル13baとの間には周方向の空間SPCが形成され、同一のスロットSLTbに格納されたコイル13abとコイル13bbとの間には周方向の空間SPCが形成される。
【0022】
空間SPCはコイル13が巻回されない範囲に形成される。
図1の一点鎖線及び二点鎖線は、コイル13の巻回範囲を示す。コイル13aa,13abは
図1の一点鎖線から上側に巻回され、コイル13ba,13bbは
図1の二点鎖線から下側に巻回される。これにより、コイル13aaとコイル13baとの間、およびコイル13abとコイル13bbとの間に、それぞれ空間SPCが形成される。コイル13aa,13abが一点鎖線を越えて回転子2とオーバーラップする位置まで巻回されると、あるいは、コイル13ba,13bbが二点鎖線を越えて回転子2とオーバーラップする位置まで巻回されると、コイル13aa,13abおよびコイル13ba,13bbを固定子鉄心12に巻回して固定子3を組み上げた後で回転子2を固定子鉄心12の内側に組み付けることができなくなる。このため、矢印SPCで示す距離が回転子2の直径よりも大きくなるように、空間SPCを確保する必要がある。なお回転電機1は、コイル13を巻回した固定子3を図示しないハウジングに組み付け、その後、固定子3に回転子2を組み付けて製造される。
【0023】
上述した様に、本実施例の回転電機1は、
回転子2と、回転子2との間に径方向のギャップGを介して配置された固定子3と、を備える単相交流駆動の回転電機1であって、
回転子2は、周方向に配置された回転子磁極N,Sを構成する複数の磁石14を有し、 固定子3は、固定子鉄心12と、固定子鉄心12に複数配置されたティース11と、ティース11に巻き回されたコイル13と、を有し、
ティース11は、回転子磁極N,Sと対向する先端側が周方向に複数に分岐した分岐部11b,11cを有し、
複数に分岐した分岐部11b,11cの先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部11bc,11ccが回転子磁極N,Sの1極分離れている。
つまり、周方向に隣り合う2つの先端部11bc,11ccは、先端部11bcに対向する回転磁極Sの位置から、先端部11bcに対向している回転子磁極Sの位置まで離れている。
【0024】
この場合、コイル13は、ティース11の外周側から巻き回して形成されているとよい。
【0025】
ティース11の根元部分11aは回転子磁極N,Sの1極分離す必要が無いため、根元部分11aの周方向両側に大きな空間を確保することができる。その空間にコイル13を配置する場合、コイル13の線径を大きくすることができ、銅損を低減することができる。また、ティース11の2つの先端部11bc,11cc間の空間(スロット)15(15a,15b)は、軸方向に流れる冷却風の通風路となる。本実施例では、特許文献1のように、固定子鉄心12を周方向に複数に分割し、各固定子鉄心同士を離した構造よりも、通風路15は狭く、且つ回転子2に近い領域の割合が大きくなる。このため、冷却風の流速が増大すると共に、回転の影響で冷却風が乱流化し、冷却性能を向上することができる。また、回転子鉄心12が分割されず一体となっているため、組立性が高い。
【0026】
また、コイル13をティース11の外周側から巻き回すことにより、コイル13をティース11の周りに整列させてきれいに巻くことができ、空間SPCを確保した上で、コイル13のスロット内における占積率を向上させることができる。
【0027】
[実施例2]
図2に本発明の実施例2に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1と同様な構成には実施例1と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、固定子3がティース11の根元部分11aで、ティース11に平行な方向に半分に分割された固定子鉄心12で構成されている点である。
【0028】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、
固定子鉄心12は、ティース11の突き出し方向と平行な分割面12cを有するように、周方向に複数12a,12bに分割され、
ティース11は、分割面12cで周方向に2分割され、
2分割された一方のティース部と他方のティース部とは、複数に分割された固定子鉄心の異なる固定子鉄心部分12a,12bに設けられている。
【0029】
本実施例では、固定子鉄心12は、リボン状の材料を積層し、積層方向に曲げることで形成できるため、打ち抜き加工が困難な低損失材料、例えば、アモルファス材、高Bsナノ結晶材を用いることができ、鉄損を低減することができる。また、一定の厚みの積層材を曲げて形成できるため、板材の打ち抜き加工より廃棄材料が減少し、環境への負荷を低減することができる。
【0030】
[実施例3]
図3に本発明の実施例3に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1,2と同様な構成には実施例1,2と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、ティース11の先端側が3本11b,11c,11dに分岐し、3つの先端部(固定子磁極面)11bc,11cc,11dcが構成されている点である。
【0031】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、分岐部11b,11cは、3つ11b,11c,11dに分岐している。
3つに分岐した分岐部11b,11c、11dの先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部が回転子磁極N,Sの1極分離れている。
つまり、周方向に隣り合う2つの先端部11bc,11ccは、先端部11bcに対向する回転磁極Sの位置から、先端部11bcに対向している回転子磁極Sの位置まで離れており、周方向に隣り合う2つの先端部11cc,11dcは、先端部11ccに対向する回転磁極Sの位置から、先端部11dcに対向している回転子磁極Sの位置まで離れている。
【0032】
本実施例では、回転子磁極数と固定子磁極数との比を3:2だけでなく、他の組合せで構成することができ、設計の自由度が向上する。なお本実施例は、回転子磁極数は10、固定子磁極数は6であり、回転子磁極数と固定子磁極数との比は5:3である。
【0033】
[実施例4]
図4に本発明の実施例4に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-3と同様な構成には実施例1-3と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、ティース11の先端以外は、回転子磁極N,Sの1極分より狭い距離W15cだけ離れて、ティース11が分岐している点である。
【0034】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、ティース11は、分岐部11b,11cから径方向外周側に向かって形成された、回転子磁極の1極分より狭いスリット幅W15cのスリット15cを有する。
【0035】
本実施例では、ティース11の根元部分11aの付近にも冷却風を流すことができ、ティース根部分11aの付近に配置されたコイル13の冷却性能が向上する。
【0036】
[実施例5]
図5に本発明の実施例5に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-4と同様な構成には実施例1-4と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、固定子鉄心12を、ティース11に平行な方向に長い長方形形状にした点である。
【0037】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、固定子鉄心12はティース11の突き出し方向と平行な方向に長手方向を有する長方形形状である。
【0038】
本実施例では、コイル13の渡り長が短縮し、かつ、コイル13の配置可能な空間を長方形の長手方向に拡げることで広くすることができ、銅損を低減することができる。
【0039】
[実施例6]
図6に本発明の実施例5に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-5と同様な構成には実施例1-5と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図5で説明した実施例5と略同様な構成であるが、実施例5と異なるのは、固定子鉄心12とコイル13外周間に空間20を設けて通風路が形成されている点である。
【0040】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1は、固定子鉄心12の内周面12fとコイル13の外周13dとの間に空間20を有する。
【0041】
本実施例では、コイル13の外周13dを冷却風で冷却できるため、冷却性能が向上する。
【0042】
[実施例7]
図7に本発明の実施例7に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-6と同様な構成には実施例1-6と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、回転子2の中心軸を挟んで長さが異なるティース11で固定子3が構成されている点である。
【0043】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、
複数のティース11は、回転子2を挟んで配置された、突き出し方向の長さが異なる2つのティースを有し、
回転子2は、その中心O2が固定子3の中心O3からずれて配置されている。
すなわち回転子2は、固定子3に対して偏心配置されている。
【0044】
本実施例では、組み立て時に回転子2を組み込むための、コイル13を配置できない空間SPCを狭くできる。その結果、コイル13を配置できる空間を広くでき、銅損を低減することができる。
【0045】
[実施例8]
図8に本発明の実施例8に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-7と同様な構成には実施例1-7と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、同一のスロットSLTa,SLTbに格納されたコイル13間に、非磁性材料で構成される閉塞材16を設置している点である。閉塞材16は空間SPCに設置される。
【0046】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1は、同一のスロットSLTaに格納されたコイル13aaと13baとの間、及び同一のスロットSLTbに格納されたコイル13abと13bbとの間に、閉塞材16が設置されている。
【0047】
本実施例では、同一のスロットSLTa,SLTbに格納されたコイル13間に冷却風が流れることを抑制し、通風路15を流れる冷却風の流速が高まり、冷却性能が向上する。
【0048】
[実施例9]
図9に本発明の実施例9に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-8と同様な構成には実施例1-8と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
本実施例の回転電機1は、
図8で説明した実施例8と略同様な構成であるが、実施例8と異なるのは、非磁性材料で構成される閉塞材16の回転子2側に窪み(凹部)16aを形成し、分割ティース17を閉塞材16の窪みに埋め込むことで固定している点である。
【0050】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、
ティース11は、分岐部11b,11cの先端部11bc,11ccが分岐部11b,11cとは別部材(分割ティース)17で構成され、
別部材17で構成された先端部11bc,11ccは、閉塞材16に形成された凹部16aに埋め込まれて固定される。
【0051】
本実施例では、分割ティース17をリボン状の材料の切断加工で形成できる。これにより、分割ティース17に打ち抜き加工が困難な低損失材料、例えば、アモルファス材、高Bsナノ結晶材を用いることができ、磁束の変化が大きいティース先端の鉄損を低減することができる。
【0052】
[実施例10]
図10に本発明の実施例10に係る回転電機1の断面図を示す。実施例1-9と同様な構成には実施例1-9と同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施例の回転電機1は、
図1で説明した実施例1と略同様な構成であるが、実施例1と異なるのは、固定子3がスロット開口部11eの外周側で分割された分割鉄心12b,12cで構成され、分割鉄心12b,12c同士を接合する鉄心接合部19の幅T19は、鉄心接合部19以外の部位よりも太くなっている点である。
【0053】
すなわち本実施例の単相交流駆動の回転電機1では、
複数のティース11は、回転子2を挟んで配置された2つのティース11で構成され、 固定子鉄心12は、2つのティース11の間に構成される周方向中間部で2つ12g,12hに分割され、
2つに分割された固定子鉄心12g,12hの接合部19における肉厚T19は、他の部位の肉厚T12よりも厚くなっている。
【0054】
本実施例では、固定子鉄心12が分割鉄心12g,12hで構成されるため、回転電機1の生産効率を高くできるとともに、鉄心接合部19の幅T19が太いため、固定鉄心12の分割で生じる分割鉄心12g,12h間隙間の磁気抵抗が低くなり、鉄心12の分割による回転電機1の出力特性劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…回転電機、2…回転子、3…固定子、4…シャフト、11…ティース、11b,11c,11d…ティース11の分岐部、11bc,11cc,11dc…分岐部11b,11cの先端部、12…固定子鉄心、12a,12b…分割された固定子鉄心部分、12c…固定子鉄心12の分割面、12f…固定子鉄心12の内周面、12g,12h…2つに分割された固定子鉄心、13,13aa,13ab,13ba,13bb…コイル、13d…コイル13の外周、14…磁石、15…スロット(通風路)、15c…スリット(通風路)、16…閉塞材、16a…閉塞材16に形成された凹部、17…分割ティース(別部材)、18…分割鉄心、19…固定子鉄心12の接合部、G…ギャップ、N,S…回転子磁極、O2…回転子2の中心、O3…固定子3の中心、SLTa,SLTb…スロット、T19…接合部19の肉厚、T12…固定子鉄心12の他の部位の肉厚、W15c…スリット幅。
【要約】
本発明の目的は、リターン用のコイル(リターン線)を排除するとともに、スロット内のコイルを配置可能な空間を広くすることができる単相交流駆動の回転電機を提供することにある本発明の回転電機1は、回転子2と、回転子2との間に径方向のギャップGを介して配置された固定子3と、を備える単相交流駆動の回転電機1である。回転子2は、周方向に配置された回転子磁極N,Sを構成する複数の磁石14を有する。固定子3は、固定子鉄心12と、固定子鉄心12に複数配置されたティース11と、ティース11に巻き回されたコイル13と、を有する。ティース11は、回転子磁極N,Sと対向する先端側が周方向に複数に分岐した分岐部11b,11cを有する。複数に分岐した分岐部11b,11cの先端部は、周方向に隣り合う2つの先端部11bc,11ccが回転子磁極N,Sの1極分離れている。