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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】無線受電システム、移動体、及び車輪
(51)【国際特許分類】
   B60L 53/12 20190101AFI20231121BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20231121BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231121BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231121BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20231121BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20231121BHJP
【FI】
B60L53/12
H02J50/10
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L5/00 B
B60K7/00
B60K1/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019137267
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021022993
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-13
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「第三世代ワイヤレスインホイールモータを開発と実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】居村 岳広
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】畑 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】芥川 恵造
(72)【発明者】
【氏名】若尾 泰通
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-106136(JP,A)
【文献】特開2010-041824(JP,A)
【文献】特開2014-195350(JP,A)
【文献】特開2013-207903(JP,A)
【文献】特開2017-093113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
7/00-8/00
16/00
B60L 1/00-13/00
15/00-58/40
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が移動体の車輪に収容された、第1受電装置と、
前記移動体に設置され、前記第1受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電コイルは電力を双方向に供給可能であって、前記第1受電装置は、前記送電装置から受電した前記電力を前記車載装置に送電可能であり、且つ、前記車載装置から供給された電力を路面に設置された第2受電装置に無線により送電可能である、無線受電システム。
【請求項2】
前記車載装置には、前記電力により前記車輪を駆動させる駆動装置が含まれる、請求項1に記載の無線受電システム。
【請求項3】
前記駆動装置は、少なくとも一部が前記車輪に収容されている、インホイールモータである、請求項2に記載の無線受電システム。
【請求項4】
前記車載装置には、前記電力を蓄電する蓄電装置が含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項5】
前記第1受電装置は、所定の条件に基づいて、受電した前記電力を複数の前記車載装置の少なくとも1つに送電する、請求項1から4のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項6】
前記第1受電装置と前記車載装置とは、有線により通電可能に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項7】
前記第1受電装置と前記車載装置とは、無線により通電可能に接続されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項8】
前記移動体は、自動運転が可能である、請求項1から7のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項9】
前記車輪は、タイヤ及びホイールから成るタイヤ・ホイール組立体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項10】
前記受電コイルのコイル面の少なくとも一部は、前記車輪の前記路面との接地面と対向している、請求項1から9のいずれか一項に記載の無線受電システム。
【請求項11】
車輪と、
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が前記車輪に収容された、受電装置と、
前記受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電コイルは電力を双方向に供給可能であって、前記受電装置は、前記送電装置から受電した前記電力を前記車載装置に送電可能であり、且つ、前記車載装置から供給された電力を路面に設置された受電装置に無線により送電可能である、移動体。
【請求項12】
移動体の車輪であって、
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が当該車輪に収容された、受電装置と、
前記受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電コイルは電力を双方向に供給可能であって、前記受電装置は、前記送電装置から受電した前記電力を前記車載装置に送電可能であり、且つ、前記車載装置から供給された電力を路面に設置された受電装置に無線により送電可能である、車輪。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線受電システム、移動体、及び車輪に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路又は駐車場等の路面に設けられた送電装置が、車両に設置された受電装置に、無線で電力を供給する無線給電技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の下側に受電装置を備えることによって、路面に設けられた送電装置からの電力を受電可能な車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-068077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の無線給電技術において、道路等の路面に設けられた送電装置と、路面の上を走行する車両に設置された受電装置との距離が離れている場合、送電装置と受電装置との間の空間に、小動物又は金属等の障害物が入り込み、障害物の周囲に渦電流が発生して、受電効率が低下するおそれがあった。また、送電装置と受電装置との間に入り込んだ小動物又は金属等が加熱され、発火するおそれがあった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、無線給電における受電効率を向上させることができる、無線受電システム、移動体、及び車輪を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無線受電システムは、
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が移動体の車輪に収容された、受電装置と、
前記移動体に設置され、前記受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電装置は、受電した前記電力を前記車載装置に送電する。
本発明に係る無線受電システムによれば、路面と直接接触する車輪に、受電コイルの少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、本発明に係る無線受電システムによれば、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0007】
本発明に係る無線受電システムでは、前記車載装置には、前記電力により前記車輪を駆動させる駆動装置が含まれることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、移動体を駆動させる電力を移動体の外部から受電することができるため、移動体に設置される蓄電装置の小型化及び軽量化を可能にし、ひいては、移動体の燃費向上を可能にする。
【0008】
本発明に係る無線受電システムでは、前記駆動装置は、少なくとも一部が前記車輪に収容されている、インホイールモータであることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、駆動装置と受電装置とが共に車輪に収容されていることで、受電装置によって受電した電力の、駆動装置への送電距離に応じた送電損失を低減させることができる。
【0009】
本発明に係る無線受電システムでは、前記車載装置には、前記電力を蓄電する蓄電装置が含まれることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、蓄電装置に、移動体の外部から受電した電力を蓄電させ、送電装置が設置されていない路面を移動体が走行する際などの任意のタイミングで、他の車載装置に電力を供給させることができる。
【0010】
本発明に係る無線受電システムでは、前記受電装置は、所定の条件に基づいて、受電した前記電力を複数の前記車載装置の少なくとも1つに送電することが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、受電装置が移動体の外部から受電した電力を、移動体の走行状態等の条件に応じて、複数の車載装置の中から選択した車載装置に送信させることができる。
【0011】
本発明に係る無線受電システムでは、前記受電装置と前記車載装置とは、有線により通電可能に接続されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、受電装置と車載装置とが無線により通電可能に接続されている場合に比べて、受電装置から車載装置への送電効率を向上させることができる。
【0012】
本発明に係る無線受電システムでは、前記受電装置と前記車載装置とは、無線により通電可能に接続されていることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、受電装置と車載装置との間で送電するための送電線の配線が不要になるため、送電線が断線する恐れが低減する。
【0013】
本発明に係る無線受電システムでは、前記移動体は、自動運転が可能であることが好ましい。
かかる構成によれば、移動体は、移動体の外部からの電力の受電状況に応じて、移動体の加速、減速及び操舵等を自動で制御することができる。
【0014】
本発明に係る無線受電システムでは、前記車輪は、タイヤ及びホイールから成るタイヤ・ホイール組立体であることが好ましい。
かかる構成によれば、車輪は、タイヤの接地面が路面の形状に応じて変形することで、タイヤと路面と間に障害物が入り込む空間が生じるおそれをさらに低減させることができる。
【0015】
本発明に係る無線受電システムでは、前記受電コイルのコイル面の少なくとも一部は、前記車輪の前記路面との接地面と対向していることが好ましい。
かかる構成によれば、無線受電システムは、無線給電における受電効率を更に向上させることができる。
【0016】
本発明に係る無線受電システムでは、前記受電コイルは電力を双方向に供給可能であって、前記受電装置は、前記受電コイルから無線により電力を供給することが好ましい。
かかる構成によれば、路面と直接接触する車輪に、受電コイルの少なくとも一部が収容されることで、無線受電システムは、路面に設けられた受電装置に電力を供給する際に、受電コイルと路面に設けられた受電装置との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。
【0017】
本発明に係る移動体は、
車輪と、
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が前記車輪に収容された、受電装置と、
前記受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電装置は、受電した前記電力を前記車載装置に送電する。
本発明に係る移動体によれば、路面と直接接触する車輪に、受電コイルの少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、本発明に係る移動体によれば、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0018】
本発明に係る車輪は、
移動体の車輪であって、
路面に設置された送電装置の送電コイルから無線により供給される電力を受電する受電コイルを有し、前記受電コイルの少なくとも一部が当該車輪に収容された、受電装置と、
前記受電装置と通電可能に接続された、車載装置と、を備え、
前記受電装置は、受電した前記電力を前記車載装置に送電する。
本発明に係る車輪によれば、路面と直接接触する車輪に、受電コイルの少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイルと受電コイルとの間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、本発明に係る車輪によれば、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、無線給電における受電効率を向上させることができる、無線受電システム、移動体、及び車輪を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る無線受電システムを、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無線受電システムにおける車輪の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る無線受電システムにおける制御装置の、構成例を概略的に示す、機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態に係る無線受電システム、移動体、及び車輪について、図面を参照して説明する。各図において共通する部品・部位には同一の符号を付している。本明細書において、車輪の幅方向とは、車輪の回転軸と平行な方向をいう。車輪の径方向とは、車輪の回転軸と直交する方向をいう。
【0022】
(無線受電システムの構成)
図1には、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1を、車輪の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。無線受電システム1は、車輪3を備える移動体2が、路面に設置された送電装置4から、電力を受電するために用いられる。無線受電システム1には、受電装置5と、車載装置6と、が含まれる。受電装置5は、少なくとも一部が移動体2の車輪3に収容され、路面に設置された送電装置4から無線により供給される電力を受電する。車載装置6は、移動体2に設置され、受電装置5と通電可能に接続されている。受電装置5は、送電装置4が設置された路面上を、移動体2が走行又は停止する際に、送電装置4から無線により電力を受電する。受電装置5は、受電した電力を車載装置6に送電する。
【0023】
無線受電システム1には、更に制御装置7が含まれていてもよい。制御装置7は、CAN(Controller Area Network)等の車載ネットワークを介して、受電装置5及び車載装置6と通信可能に接続されている。制御装置7は、受電装置5及び車載装置6を制御して、受電装置5が無線により受電した電力を車載装置6に送電させることができる。図1に示される、移動体2における、車輪3、受電装置5、車載装置6、及び制御装置7の位置及び数は一例であって、それらの用途等に応じて、それぞれ任意に定めることができる。
【0024】
移動体2は、車輪3により道路等の路面を走行可能である。移動体2は、例えば自動車であるが、これに限られない。移動体2には、乗用車、トラック、バス、及び二輪車等の自動車に加え、トラクター等の農業用車両、ダンプカー等の工事用又は建設用車両、飛行機、自転車、並びに車いす等の、車輪3によって路面を走行可能な任意の車両が含まれ得る。
【0025】
車輪3は、移動体2の移動に用いられる。車輪3は、移動体2に取り付けられた状態で、道路等の路面と接する接地面を有している。本実施形態において、車輪3は、タイヤ31をホイール32に装着させたタイヤ・ホイール組立体であるが、これに限られず、上述した移動体2に取り付け可能な任意の車輪であってもよい。車輪3の「接地面」とは、車輪3がタイヤ・ホイール組立体である場合、タイヤ31の接地面、即ち、タイヤ31を適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接する、タイヤ31の表面をいう。
【0026】
本明細書において、「適用リム」とは、空気入りタイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0027】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0028】
図2には、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1における車輪3の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪3の幅方向断面を用いて概略的に示す、概略図が示されている。
【0029】
図2に示すように、タイヤ31は、一対のビード部311と、一対のサイドウォール部312と、トレッド部313とを有している。ビード部311は、タイヤ31をホイール32のリム部321に装着させたときに、その径方向内側及び幅方向外側がリム部321に接するように構成されている。サイドウォール部312は、トレッド部313とビード部311との間に延在している。サイドウォール部312は、ビード部311よりも、径方向外側に位置している。トレッド部313は、サイドウォール部312よりも径方向外側に位置し、タイヤ31の接地面を含むことができる。
【0030】
タイヤ31は、天然ゴム及び合成ゴム等のゴムで形成されており、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等、スチール等の金属で形成されている部品を含み得る。例えば、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等の部品の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、タイヤ31は、タイヤ31の強度を維持しつつ、送電装置4と受電装置5との間に金属が存在することで、後述するように、送電装置4から受電装置5に電磁誘導方式によって無線給電が行われる際に、送電装置4が発生させた磁界が受電装置5に到達するまでに減衰することを軽減し、ひいては、受電装置5の受電効率を向上させることができる。但し、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等の部品の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていなくてもよい。
【0031】
非磁性材料には、透磁率が小さい、常磁性体及び反磁性体が含まれ得る。非磁性材料として、例えば、ポリエステル及びナイロン等の熱可塑性樹脂、ビニルエステル樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂、並びにその他の合成樹脂を含む、樹脂材料を用いることができる。樹脂材料には、更に、補強繊維として、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等の繊維を含ませることができる。非磁性材料として、樹脂に限らず、ゴム、ガラス、カーボン、グラファイト、アラミド、ポリエチレン、及びセラミック等を含む、任意の非金属材料を用いることができる。さらに、非磁性材料として、アルミ等の常磁性体、又は銅等の反磁性体を含む、金属材料を用いることができる。
【0032】
ホイール32は、タイヤ31を装着するための円筒状のリム部321と、リム部321の径方向内側に設けられ、移動体2のハブ21に支持固定されるディスク部322と、を有している。
【0033】
ホイール32は、スチール等の金属で形成され得るが、これに限られない。ホイール32のリム部321の少なくとも一部は、上述した非磁性材料で形成されていてもよい。これによって、ホイール32の強度を維持しつつ、送電装置4と受電装置5との間にスチール等の金属が存在することで、送電装置4が発生させた磁界が受電装置5に到達するまでに減衰することを軽減し、ひいては、受電装置5の受電効率を向上させることができる。但し、ホイール32のリム部321の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていなくてもよい。
【0034】
再び図1を参照して、送電装置4は、送電コイル(1次コイル)41を備えている。送電装置4は、道路及び駐車場等の路面に設置されている。本実施形態では、送電装置4は、道路等に埋設されているが、少なくとも一部が路面に露出するように設置されていてもよい。図において、送電コイル41は、説明の簡略のため、模式化して示している。
【0035】
送電コイル41は、電力源から供給された交流電流に基づき、交流磁界を発生させる。本実施形態では、送電コイル41は、全体を環状に構成されている。本明細書において、環状の送電コイル41によって囲まれている平面を、送電コイル41のコイル面ともいう。送電コイル41は、路面の上方に向けて交流磁界を発生するように、送電コイル41のコイル面が路面と略水平となるように(即ち、送電コイル41の軸方向が路面と略垂直となるように)配置されている。送電装置4が備える送電コイル41は、例えば、フェライトコア等のコアに巻き回され、全体を環状に構成されるが、これに限られず、コイルばね、空芯コイル等、交流磁界を発生可能な任意のコイルとされてもよい。これによって、移動体2の走行中等に、車輪3が送電装置4の上を通過する際に、送電コイル41から受電コイル51に、電磁誘導方式によって、無線給電が行われ得る。
【0036】
受電装置5は、受電コイル(2次コイル)51を備えている。受電コイル51は、送電装置4の送電コイル41から無線により供給される電力を受電する。本実施形態では、受電コイル51は、全体を環状に構成されている。本明細書において、環状の受電コイル51によって囲まれている平面を、受電コイル51のコイル面ともいう。受電コイル51は、受電コイル51のコイル面が車輪3の接地面と略水平となるように(即ち、送電コイル41の軸方向が路面と略垂直となるように)配置されている。これによって、受電コイル51には、送電コイル41が発生した交流磁界に基づいて、電磁誘導による起電力が発生し、電流が流れる。受電装置5が備える受電コイル51は、例えば、フェライトコア等のコアに巻き回され、全体を環状に構成されたものであるが、これに限られず、コイルばね、空芯コイル等、交流磁界に基づいて起電力を発生可能な任意のコイルとすることができる。図において、受電コイル51は、説明の簡略のため、模式化して示している。
【0037】
受電コイル51の少なくとも一部は、移動体2の車輪3に収容されている。本実施形態では、受電コイル51のコイル面の少なくとも一部(好ましくは、全部)は、車輪3の接地面と対向している。これによって、受電コイル51のコイル面が車輪3の接地面と略平行に延在していない場合を含め、車輪3の接地面が送電コイル41の上に位置する場合に、受電コイル51のコイル面の少なくとも一部は、車輪3の接地面を挟んで、送電コイル41のコイル面の少なくとも一部と対向することができる。このため、送電コイル41と受電コイル51との間に障害物が入り込むおそれが低減し得るとともに、送電コイル41から発せられる磁力線を受電コイル51が適切に受けることができる。したがって、無線給電における受電効率がさらに向上し得る。
【0038】
ここで、本明細書において、例えば、面A(の少なくとも一部)が面Bと「対向している」とは、面Bが延在する範囲において面Bに対し垂直方向に延びる領域内(換言すれば、面Bを断面とする、柱状の領域内)に、面A(の少なくとも一部)が重なることをいう。
【0039】
本実施形態では、車輪3の接地面の少なくとも一部(好ましくは、全部)は、受電コイル51のコイル面と対向している。受電効率をより高める観点から、本実施形態のように、受電コイル51のコイル面の少なくとも一部(好ましくは、全部)が、車輪3の接地面と対向しており、かつ/又は、車輪3の接地面の少なくとも一部(好ましくは、全部)が、受電コイル51のコイル面と対向していることが好ましい。
【0040】
受電装置5の受電コイル51は、任意の構成によって、移動体2の車輪3に収容されることができる。例えば、受電コイル51は、図2に示すように、移動体2においてハブ21等の、車輪3の径方向内側から車輪3に取り付けられる部分に設置されてもよい。これによって、移動体2のハブ21に車輪3のホイール32が取り付けられた状態において、受電コイル51の少なくとも一部は、ホイール32の径方向内側に収容されている。
【0041】
また、受電装置5は、リム部321の内周面と受電コイル51のコイル面とが略平行となるように、ホイール32のリム部321の内周面に設置されていても、ホイール32のリム部321の外周面に設置されていてもよい。更に、受電装置5は、タイヤ31のトレッド部313の内周面に設置されていてもよく、タイヤ31のトレッド部313の内部に設置されていてもよい。このように受電装置5をよりタイヤ31の接地面に近い位置に設置することで、受電装置5の受電効率を更に向上させることができる。また、受電装置5をホイール32のリム部321の内周面に設置することで、タイヤ31がパンクした場合等に、受電装置5が破損するおそれを低減させることができる。
【0042】
受電装置5は、受電コイル51に加えて、電力変換部、蓄電部、及び計測部等を更に備えていてもよい。
【0043】
電力変換部は、受電コイル51に生じた電力を直流電力に変換する。電力変換部は、例えば、AC/DCコンバータ等を含む。
【0044】
蓄電部は、受電コイル51に生じた電力を蓄える。蓄電部は、例えば、キャパシタとすることができる。蓄電部がキャパシタである場合、蓄電池等に比べて短時間で充放電を行うことができ、高い即応性を求められる状況において、有利である。
【0045】
計測部は、受電装置5が受電する電力の強度を計測する。計測部は、例えば、電圧計又は電流計であるが、これに限られない。計測部54によって計測される電力の強度には、例えば電力、電力量、電圧、電流、磁束、又は磁束密度等の、任意の数値情報が含まれてよい。
【0046】
再び図1を参照して、車載装置6は、移動体2に設置され、受電装置5と通電可能に接続されている。受電装置5と車載装置6とは、有線により通電可能に接続されていてもよい。かかる場合、無線により接続されている場合に比べて、受電装置5から車載装置6への送電効率が向上する。また、受電装置5と車載装置6とは、無線により通電可能に接続されていてもよい。かかる場合、例えば、車輪3と離れた移動体2の本体に設置された車載装置6に、受電装置5から送電するための送電線の配線が不要になるため、車輪3の回転に伴い送電線が断線する恐れが低減する。
【0047】
車載装置6には、例えば、電力により車輪3を駆動させる駆動装置61が含まれていてもよい。かかる場合、駆動装置61は、受電装置5から供給された電力を消費して、車輪3を駆動させる。本実施形態では、駆動装置61は、少なくとも一部が車輪3に収容されている、インホイールモータであるが、これに限られない。駆動装置61は、移動体2の本体に搭載され、移動体2のシャフト22を駆動させることで、車輪3を駆動させる、オンボードモータであってもよい。
【0048】
また例えば、車載装置6には、電力を蓄電する蓄電装置62が含まれていてもよい。蓄電装置62は、受電装置5から供給された電力を蓄電し、他の車載装置6に対して電力を供給することができる。蓄電装置62は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、又はこれらの組み合わせ等の任意の蓄電池であってもよい。
【0049】
車載装置6には、上述した例に限られず、移動体2の通信装置、カーナビゲーションシステム、メディアプレイヤ、及び車載センサ等の、移動体2に設置された任意の電子装置が含まれていてもよい。車載装置6は、移動体2に一体として設置されていてもよく、或いは着脱可能に設置されていてもよい。
【0050】
制御装置7は、受電装置5及び車載装置6の少なくとも一方を制御する。制御装置7は、例えば、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)であるが、これに限られず、任意の電子機器であってもよい。制御装置7は、上述した車載装置6の1つとして、受電装置5と通電可能に接続されていてもよい。
【0051】
図3は、制御装置7の構成例を概略的に示す、機能ブロック図を示している。図3に示すように、制御装置7は、制御部71、記憶部72、通信部73、出力部74、及び入力部75を備えている。制御部71は、記憶部72、通信部73、出力部74、及び入力部75のそれぞれに、電気的に接続されている。
【0052】
制御部71は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、少なくとも1つのプロセッサを備えている。制御部71は、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU等の汎用のプロセッサ、又は各機能の処理に特化した専用のプロセッサ等とすることができる。制御部71は、後述する記憶部72、通信部73、出力部74、及び入力部75の機能を実現させるために、それぞれを制御することができる。
【0053】
記憶部72は、制御装置7の各機能を制御するための処理、処理に用いられる情報及びプログラム等を記憶する。記憶部72は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等とすることができる。記憶部72は、例えば主記憶装置又は補助記憶装置として機能することができる。記憶部72は、制御部71に含まれるキャッシュメモリ等であってもよい。また、記憶部72は、揮発性の記憶装置であってもよく、不揮発性の記憶装置であってもよい。本実施形態では、記憶部72は、例えば、詳細を後述するように、受電装置5が無線により受電した電力を送電する車載装置6を選択する際に用いられる条件等を記憶する。
【0054】
通信部73は、CAN通信モジュール、有線LAN(local area network)通信モジュール、及び無線LAN通信モジュール、並びに4G(Generation)及び5G等の移動体通信規格に対応する移動体通信モジュール等の任意の通信モジュールを含んでいる。これによって、通信部73は、移動体2に設置された他の車載装置6、或いは移動体2の外部にある電子機器等と、有線又は無線によって通信することができる。
【0055】
出力部74は、音、振動、光、又は画像等で情報を出力する。出力部74は、例えばスピーカ、振動子、ライト、及び表示デバイス等の少なくとも1つを含んでいてもよい。出力部74は、受電装置5が無線により受電している電力の情報、或いは受電装置5が電力を供給している車載装置6の情報等を出力することができる。例えば、制御部71は、受電装置5が無線により受電している場合に、表示デバイスである出力部74に情報を表示させて、無線による電力の供給を受けていることをユーザに通知することができる。
【0056】
入力部75は、ユーザからの入力操作を受け付ける。入力部75は、例えばタッチパネル等の入力デバイスであるが、これに限られない。入力部75は、ユーザによる入力操作を受け付けると、その入力操作を電子情報として制御部71に送信する。入力操作には、例えば、受電装置5が無線により受電する処理の開始指示が含まれていてもよい。
【0057】
以下に、無線受電システム1において実施される、受電装置5及び車載装置6の制御方法について、図1を参照して、詳細に説明する。本制御方法は、例えば、無線受電システム1に含まれる制御装置7によって実行されることができる。また、移動体2には、車載装置6として、少なくとも駆動装置61及び蓄電装置62が設置されているものとする。
【0058】
(例1:受電装置から車載装置への送電の制御)
制御装置7は、所定の条件に基づいて、受電装置5に、受電装置5が無線により受電した電力を、例えば駆動装置61及び蓄電装置62を含む、複数の車載装置6の少なくとも1つに送電させることができる。
【0059】
例えば、所定の条件は、受電装置5が無線により受電した電力の強度の条件とされる。制御装置7は、例えば、受電装置5の計測部によって計測された、受電装置5が無線により受電する電力の強度が、所定の基準値未満である場合には、受電装置5を制御して、駆動装置61のみに送電させてもよい。また例えば、制御装置7は、受電装置5が受電する電力の強度が所定の基準値以上である場合には、受電装置5を制御して、駆動装置61及び蓄電装置62の両方に送電させてもよい。
【0060】
また例えば、所定の条件は、移動体2の走行状態の条件とされてもよい。制御装置7は、例えば、移動体2が移動中である場合には、受電装置5を制御して、駆動装置61に送電させてもよい。また例えば、制御装置7は、移動体2が停止している場合には、受電装置5を制御して、蓄電装置62に送電させてもよい。
【0061】
また例えば、所定の条件は、蓄電装置62の充電状態の条件とされてもよい。制御装置7は、例えば、蓄電装置62の充電率が所定の基準未満である場合には、受電装置5を制御して、蓄電装置62に優先して電力を送電させてもよい。また例えば、制御装置7は、蓄電装置62の充電率が所定の基準以上である場合には、受電装置5を制御して、駆動装置61に優先して電力を送電させてもよい。
【0062】
(例2:受電量に応じた移動体の走行制御)
制御装置7がECUである場合、制御装置7は、受電装置5が無線により受電した電力の強度の条件に基づいて、移動体2の走行を制御することができる。制御装置7による移動体2の走行制御は、移動体2の運転手の操作の一部を支援する制御であってもよく、或いは運転手の操作によらない自動運転であってもよい。本明細書において、自動運転とは、移動体2が運転手を含む乗員を乗せない状態で、或いは、移動体2の乗員が移動体2の走行に関与しない状態で、制御装置7が、移動体2の加速、減速及び操舵等を実行することをいう。例えば、制御装置7は、移動体2の駆動装置61、ブレーキ、及びトランスミッション等を制御して、移動体2の加速、減速及び操舵等を実行することができる。本明細書における自動運転には、制御装置7が、制御装置7と通信可能に接続された外部機器からの制御信号に基づいて、移動体2の加速、減速及び操舵等を実行する、遠隔操作も含まれる。
【0063】
制御装置7は、例えば、受電装置5の計測部によって計測された、受電装置5が無線により受電する電力の強度が、所定の基準値未満である場合には、駆動装置61及びブレーキを制御して、移動体2の速度を落として、受電装置5が受電する時間を延ばしてもよい。また例えば、制御装置7は、受電装置5の計測部によって計測された、受電装置5が無線により受電する電力の強度が、所定の基準値未満である場合には、トランスミッションを制御して、受電装置5の受電コイル51と送電装置4の送電コイル41の対向する面積が大きくなるように、車輪3が送電装置4の上に位置するように移動体2を走行させてもよい。
【0064】
また例えば、制御装置7は、移動体2を信号機の近傍の停止位置或いは駐車場等に停車させる際に、受電装置5の計測部によって計測された、受電装置5が無線により受電する電力の強度が、所定の基準値以上となる位置に停車させてもよい。
【0065】
以下に、本開示の一実施形態に係る無線受電システム1の変形例について、説明する。
【0066】
受電装置5の受電コイル51は電力を双方向に供給可能であってもよい。換言すれば、受電装置5の受電コイル51は、受電コイルとして動作可能であるとともに、送電コイルとしても動作可能とされてもよい。受電コイル51は、送電コイルとして動作する場合、電力源から供給された交流電流に基づき、交流磁界を発生させる。例えば、電力源は、受電装置5と通電可能に接続された蓄電装置62とすることができる。これによって、受電装置5は、受電コイル51から無線により電力を供給することができる。
【0067】
変形例において、受電装置5は、路面に設置された送電装置4から無線により供給された電力を受電し、路面に設置された受電装置に対して無線により電力を供給することができる。具体的には、受電装置5は、送電装置4が設置された路面上を移動体2が走行又は停止する際には、受電装置として動作し、送電装置4から無線により電力を受電することができる。一方で、受電装置5は、受電装置が設置された路面上を移動体2が走行又は停止する際には、送電装置として動作し、路面に設置された受電装置に対して無線により電力を送電することができる。これによって、移動体2の受電装置5が送電装置として動作する場合においても、路面と直接接触する車輪3に、受電コイル51の少なくとも一部が収容されることで、受電コイル51と路面に設置された受電装置との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。
【0068】
なお、本変形例では、説明の簡便のため、路面に受電装置が設置される例を示したが、この限りではない。例えば、路面に設置された送電装置4が電力を双方向に供給可能とされてもよい。かかる場合、移動体2に設置された受電装置5は、路面に設置された送電装置4と、無線により電力を双方向に供給することができる。
【0069】
以上述べたように、本発明の一実施形態に係る無線受電システム1は、路面に設置された送電装置4の送電コイル41から無線により供給される電力を受電する受電コイル51を有し、受電コイル51の少なくとも一部が移動体2の車輪3に収容された、受電装置5と、移動体2に設置され、受電装置5と通電可能に接続された、車載装置6と、を備え、受電装置5は、受電した電力を車載装置6に送電する。かかる構成によれば、路面と直接接触する車輪3に、受電コイル51の少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイル41と受電コイル51との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、無線受電システム1は、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0070】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、車載装置6には、電力により車輪3を駆動させる駆動装置61が含まれる。かかる構成によれば、無線受電システム1は、移動体2を駆動させる電力を移動体2の外部から受電することができるため、移動体2に設置される蓄電装置62の小型化及び軽量化を可能にし、ひいては、移動体2の燃費向上を可能にする。
【0071】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、駆動装置61は、少なくとも一部が車輪3に収容されている、インホイールモータである。かかる構成によれば、無線受電システム1は、駆動装置61と受電装置5とが共に車輪3に収容されていることで、受電装置5によって受電した電力の、駆動装置61への送電距離に応じた送電損失を低減させることができる。
【0072】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、車載装置6には、電力を蓄電する蓄電装置62が含まれる。かかる構成によれば、無線受電システム1は、蓄電装置62に、移動体2の外部から受電した電力を蓄電させ、送電装置4が設置されていない路面を移動体2が走行する際などの任意のタイミングで、他の車載装置6に電力を供給させることができる。
【0073】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、受電装置5は、所定の条件に基づいて、受電した電力を複数の車載装置6の少なくとも1つに送電する。かかる構成によれば、無線受電システム1は、受電装置5が移動体2の外部から受電した電力を、移動体2の走行状態等の条件に応じて、送信対象を複数の車載装置の中から選択して送信させることができる。例えば、車載装置6に駆動装置61及び蓄電装置62が含まれる場合、無線受電システム1は、移動体2の走行状態等の条件に応じて、駆動装置61による移動体2の駆動に電力を消費させ、或いは蓄電装置62に蓄電させることができる。
【0074】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、受電装置5と車載装置6とは、有線により通電可能に接続されている。かかる構成によれば、無線受電システム1は、受電装置5と車載装置6とが無線により通電可能に接続されている場合に比べて、受電装置5から車載装置6への送電効率を向上させることができる。
【0075】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、受電装置5と車載装置6とは、無線により通電可能に接続されている。かかる構成によれば、無線受電システム1は、受電装置5と車載装置6との間で送電するための送電線の配線が不要になるため、送電線が断線する恐れが低減する。
【0076】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、移動体2は、自動運転が可能である。かかる構成によれば、移動体2は、移動体2の外部からの電力の受電状況に応じて、移動体2の加速、減速及び操舵等を自動で制御することができる。
【0077】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、車輪3は、タイヤ31及びホイール32から成るタイヤ・ホイール組立体である。かかる構成によれば、車輪3は、タイヤ31が路面の形状に応じて変形することで、タイヤ31と路面と間に障害物が入り込む空間が生じるおそれをさらに低減させることができる。
【0078】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、受電コイル51のコイル面の少なくとも一部は、車輪3の接地面と対向している。かかる構成によれば、送電装置4が設けられた路面と車輪3の接地面とが直接接触することで、送電コイル41と受電コイル51との間に障害物が入り込むおそれが低減し得るとともに、送電コイル41から発せられる磁力線を受電コイル51が適切に受けることができる。無線受電システム1は、無線給電における受電効率をさらに向上させることができる。
【0079】
本発明の一実施形態に係る無線受電システム1では、受電コイル51は電力を双方向に供給可能であって、受電装置5は、受電コイル51から無線により電力を供給する。かかる構成によれば、受電装置5は、受電コイル51を介して受電するだけでなく、送電することもできる。したがって、路面と直接接触する車輪3に、受電コイル51の少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた受電装置に電力を供給する際に、受電コイル51と路面に設けられた受電装置との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。
【0080】
本発明の一実施形態に係る移動体2は、車輪3と、路面に設置された送電装置4の送電コイル41から無線により供給される電力を受電する受電コイル51を有し、受電コイル51の少なくとも一部が車輪3に収容された、受電装置5と、受電装置5と通電可能に接続された、車載装置6と、を備え、受電装置5は、受電した電力を車載装置6に送電する。かかる構成によれば、路面と直接接触する車輪3に、受電コイル51の少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイル41と受電コイル51との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、移動体2は、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0081】
本発明の一実施形態に係る車輪3は、移動体2の車輪3であって、路面に設置された送電装置4の送電コイル41から無線により供給される電力を受電する受電コイル51を有し、受電コイル51の少なくとも一部が車輪3に収容された、受電装置5と、受電装置5と通電可能に接続された、車載装置6と、を備え、受電装置5は、受電した電力を車載装置6に送電する。かかる構成によれば、路面と直接接触する車輪3に、受電コイル51の少なくとも一部が収容されることで、路面に設けられた送電コイル41と受電コイル51との間の空間に障害物が入り込むおそれを低減させることができる。このため、車輪3は、無線給電における受電効率を向上させることができる。
【0082】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態又は各実施例に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態又は他の実施例に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0083】
例えば、上述した実施形態において、制御装置7の機能又は処理として説明された機能又は処理の全部又は一部が、受電装置5又は車載装置6の機能又は処理として実現されてもよい。例えば、実施形態に係る制御装置7の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、受電装置5又は車載装置6が備えるメモリ等に記憶させ、受電装置5又は車載装置6のプロセッサ等によって当該プログラムを読み出して実行させてもよい。
【0084】
また例えば、上述した実施形態において、受電コイル51のコイル面は、車輪3の接地面と略平行となるように配置されているものとして説明したが、この限りではない。受電コイル51のコイル面は、車輪3の接地面と0度から90度の任意の角度で配置されていてもよい。受電コイル51のコイル面と車輪3の接地面との角度は、受電装置5の用途、及び受電すべき電力量等に応じて、任意に定められてもよい。
【0085】
また例えば、上述した実施形態において、タイヤ31は、空気を充填されるものとして説明したが、この限りではない。例えば、タイヤ31には、窒素等の気体を充填することができる。また、例えば、タイヤ31には、気体に代えて又は加えて、液体、ゲル状物質、又は粉粒体等を含む、任意の流体を充填することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:無線受電システム、 2:移動体、 21:ハブ、 22:シャフト、 3:車輪、 31:タイヤ、 311:ビード部、 312:サイドウォール部、 313:トレッド部、 32:ホイール、 321:リム部、 322:ディスク部、 4:送電装置、 41:送電コイル、 5:受電装置、 51:受電コイル、 6:車載装置、 61:駆動装置、 62:蓄電装置、 7:制御装置、 71:制御部、 72:記憶部、 73:通信部、 74:出力部、 75:入力部
図1
図2
図3