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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】気管内吸引の訓練装置
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20231121BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20231121BHJP
   A61M 27/00 20060101ALN20231121BHJP
【FI】
G09B9/00 Z
G09B23/28
A61M27/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019228888
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021096413
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503420833
【氏名又は名称】学校法人常翔学園
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】コリー 紀代
(72)【発明者】
【氏名】近野 敦
(72)【発明者】
【氏名】金井 理
(72)【発明者】
【氏名】小水内 俊介
(72)【発明者】
【氏名】二宮 伸治
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120205(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0325148(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0056592(US,A1)
【文献】特開2015-018152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-9/56
G09B 17/00-19/26
G09B 23/00-29/14
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬的な気管内吸引が被訓練者によって施される模擬気管と、
前記模擬的な気管内吸引における被訓練者による操作の状態を検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力する反応出力手段と、を備えており、
前記反応出力手段が、患者の顔の画像を、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて前記顔の画像における表情及び顔色の少なくともいずれかを変更しつつ出力することを特徴とする気管内吸引の訓練装置。
【請求項2】
人工鼻が着脱可能に装着される気管カニューレが前記模擬気管に設けられており、
前記反応出力手段が、被訓練者の視覚上、前記人工鼻と前記患者の顔の画像の位置関係が前記患者の喉元からその正面に突出する関係となるように前記顔の画像を出力することを特徴とする請求項に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項3】
前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルが前記模擬気管に当たる強さを検出可能であると共に前記模擬気管と前記カテーテルの接触位置を検出可能であり、
前記反応出力手段が、前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記顔の画像における表情及び顔色の少なくともいずれかを変更することを特徴とする請求項1又は2に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項4】
前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルが前記模擬気管に当たる強さを、気管に沿った方向及び当該方向と直交する2方向からなる3方向のうちの2つ以上の方向に関して検出可能であることを特徴とする請求項に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項5】
前記反応出力手段が、患者のバイタルサインを、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて変化させつつ出力することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項6】
前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルの先端の位置を検出可能であり、
前記状態検出手段による検出結果に基づいて、あらかじめ設定された前記模擬気管内の目的位置に前記カテーテルの先端が到達したか否かを判定する判定手段を備えていることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項7】
前記反応出力手段が、前記模擬気管に挿入されたカテーテルを振動させる振動発生手段を有しており、
前記振動発生手段が、前記判定手段による判定結果に基づいて、痰を吸引する際に生じる音又は振動を模擬的に発生させることを特徴とする請求項に記載の気管内吸引の訓練装置。
【請求項8】
模擬的な気管内吸引が被訓練者によって施される模擬気管と、
前記模擬的な気管内吸引における被訓練者による操作の状態を検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力する反応出力手段と、を備えており、
人工鼻が着脱可能に装着される気管カニューレが前記模擬気管に設けられており、
前記状態検出手段が、前記操作として、前記人工鼻を前記気管カニューレに対して着脱する操作を検出し、
前記反応出力手段が、前記人工鼻が前記気管カニューレから取り外されたことを前記状態検出手段が検出してからの経過時間に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力することを特徴とする気管内吸引の訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気管内吸引の訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気管内吸引は患者に対する侵襲性が高い医療行為である。そのため、技術を習得するために看護学生等が患者に実施する機会を得ることは難しく、実施経験のないまま卒業する看護学生が多い。また、看護師免許取得後に現場で要求される技術レベルが高い。そのため、患者に実施しなくても、高いレベルの気管内吸引技術を訓練できる方法が求められている。非特許文献1は、かかる訓練に用いられる訓練装置の一例に関する。非特許文献1によると、被訓練者は、患者を模擬した人体模型に対し、気管内吸引の操作を実行できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】株式会社坂本モデル、「サカモト吸引シミュレーター」、[online][令和元年10月9日検索]、インターネット <URL:http://www.sakamoto-model.co.jp/product/suction/m175/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の訓練装置は自発的な動きがなく、訓練における臨場感に欠ける。したがって、この訓練装置を用いた気管内吸引の訓練の効果にも自ずと限界がある。より効果的な訓練のために、高い臨場感をもたらす装置が求められている。
【0005】
本発明の目的は、臨場感の高い訓練を行うことができる気管内吸引の訓練装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る気管内吸引の訓練装置は、模擬的な気管内吸引が被訓練者によって施される模擬気管と、前記模擬的な気管内吸引における被訓練者による操作の状態を検出する状態検出手段と、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力する反応出力手段と、を備えている。
【0007】
本発明の気管内吸引の訓練装置によると、模擬的な気管内吸引における被訓練者の操作に応じて患者の模擬的な反応が出力される。よって、臨場感の高い訓練を実施することができる。
【0008】
また、本発明においては、前記反応出力手段が、患者の顔の画像を、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて前記顔の画像における表情及び顔色の少なくともいずれかを変更しつつ出力することが好ましい。これによると、被訓練者は、患者の顔の画像に基づき、自らの操作が適切か否かを認識できる。なお、本発明における画像には、静止画像及び、複数の静止画像を時間の経過に伴って順に表示することにより物体の動態を表現する動画像の両方が含まれる。
【0009】
また、本発明においては、人工鼻が着脱可能に装着される気管カニューレが前記模擬気管に設けられており、前記反応出力手段が、被訓練者の視覚上、前記人工鼻と前記患者の顔の画像の位置関係が前記患者の喉元からその正面に突出する関係となるように前記顔の画像を出力することが好ましい。これによると、人工鼻の配置が実際の患者における配置と同様になるように患者の顔の画像が表示される。このため、被訓練者にとって、実際の患者に対して気管内吸引を行っているかのように訓練を実施できる。なお、「被訓練者の視覚上、前記人工鼻と前記患者の顔の画像の位置関係が前記患者の喉元からその正面に突出する関係となるように前記顔の画像を出力」する方法は、例えば、透過スクリーンに投影された画像と透過スクリーン越しの人工鼻の実物とが被訓練者に同時に視認されるように顔の画像を出力することにより実現されてもよい。また、例えば、撮像素子を用いて撮影された、被写体として人工鼻を含む撮影画像と顔の画像とが合成された画像を出力することにより実現されてもよい。
【0010】
また、本発明においては、前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルが前記模擬気管に当たる強さを検出可能であると共に前記模擬気管と前記カテーテルの接触位置を検出可能であり、前記反応出力手段が、前記状態検出手段による検出結果に基づいて前記顔の画像における表情及び顔色の少なくともいずれかを変更することが好ましい。これによると、気管内吸引における被訓練者の操作においてカテーテルが模擬気管(又はその分岐部)に当たった場合に、患者の反応が例えば苦痛の表情として模擬的に出力される。
【0011】
また、本発明においては、前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルが前記模擬気管に当たる強さを、気管に沿った方向及び当該方向と直交する2方向からなる3方向のうちの2つ以上の方向に関して検出可能であることが好ましい。これによると、カテーテルの当たりの強さが2つ以上の方向に関して検出される。このため、カテーテルの状態に適切に応じた患者の模擬的な反応が出力される。
【0012】
また、本発明においては、前記反応出力手段が、患者のバイタルサインを、前記状態検出手段が検出した前記操作の状態に基づいて変化させつつ出力することが好ましい。これによると、気管内吸引の操作に対する患者の反応がバイタルサインとして模擬的に出力される。
【0013】
また、本発明においては、前記状態検出手段が、前記模擬気管内に挿入されたカテーテルの先端の位置を検出可能であり、前記状態検出手段による検出結果に基づいて、あらかじめ設定された前記模擬気管内の目的位置に前記カテーテルの先端が到達したか否かを判定する判定手段を備えていることが好ましい。これによると、カテーテルが適切に操作されたか否かが判定可能である。
【0014】
また、本発明においては、前記反応出力手段が、前記模擬気管に挿入されたカテーテルを振動させる振動発生手段を有しており、前記振動発生手段が、前記判定手段による判定結果に基づいて、痰を吸引する際に生じる音又は振動を模擬的に発生させることが好ましい。これによると、被訓練者は、カテーテルが適切な位置に到達したことを、実際の痰の吸引時に生じる音や振動によって認識できる。なお、振動発生手段は、他の物体を振動させる振動スピーカーであってもよいし、音を発生させるための振動板を有する通常のスピーカーであってもよい。
【0015】
また、本発明においては、人工鼻が着脱可能に装着される気管カニューレが前記模擬気管に設けられており、前記状態検出手段が、前記操作として、前記人工鼻を前記気管カニューレに対して着脱する操作を検出し、前記反応出力手段が、前記人工鼻が前記気管カニューレから取り外されたことを前記状態検出手段が検出してからの経過時間に基づいて、前記操作に対する患者の模擬的な反応を被訓練者に知覚可能に出力することが好ましい。これによると、人工鼻が取り外されてからの時間経過に伴う患者の反応、例えば、患者の血中の酸素量の低下による患者の顔色やバイタルサインの変化等が模擬的に出力される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る気管内吸引の訓練装置の斜視図である。
図2図1の装置の構成を示す機能ブロック図である。
図3図1のゴーグル型ディスプレイが表示する画像の一例である。
図4図1の模擬気管の一部分に係る変形例の斜視図である。
図5図4の構成における異なる状態を示す斜視図である。
図6図1の模擬気管に係る変形例の斜視図である。
図7図6の構成における背面図(後方から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る気管内吸引の訓練装置1(以下、訓練装置1という。)について図1及び図2を参照しつつ説明する。訓練装置1は、ゴーグル型ディスプレイ10(以下、ディスプレイ10という。)、装置本体100及び制御部200を備えている。ディスプレイ10は、被訓練者の頭に装着させた状態で使用される。ディスプレイ10は、図2に示すように制御部200と接続されている。ディスプレイ10には制御部200から画像データが送信される。ディスプレイ10は、頭に装着された状態で装着者の眼前に配置される投影板と、制御部200から送信された画像データが示す画像を透過スクリーンに投影する投影器とを有している。透過スクリーンは、投影器からの画像が投影可能であると共に、投影器とは反対側からの可視光を透過させる。これにより、投影器によって透過スクリーンに投影された画像は、透過スクリーンの向こう側の情景と重なり合った像として装着者に知覚される。本実施形態では、図3に示す患者モデルMの画像が、訓練装置1が置かれた室内の実際の情景と重なり合った状態でディスプレイ10にカラー表示される。また、ディスプレイ10には撮像素子が設けられている。撮像素子は、装着者の頭部正面にある被写体を撮像する。撮像素子は被写体の像を示す撮像データを出力する。出力されたデータは、ディスプレイ10から制御部200に送信される。
【0018】
装置本体100は、模擬気管110と、気管カニューレ141と、これらを支持した支持台120とを備えている。これらはいずれも主にプラスチック製である。模擬気管110は、気管の内部を模擬した凹部110aが形成された部材であり、模擬気管の分岐部を模擬した、平面視においてY字型の概略形状を有している。模擬気管110は、硬質の素材からなる外枠111と、外枠111の内部に固定された内筒112とを有している。内筒112は、ウレタン等の柔軟性を有する素材からなり、円筒を半割した概略形状を有する、気管の内壁部を模擬した部材である。外枠111は、支持台120の上面に形成された凹部に、気管に沿った方向(以下、気管方向という。)に僅かに移動可能となるようにはめ込まれている。
【0019】
気管カニューレ141は、カニューレ支持部150によって支持されている。カニューレ支持部150は、側面視においてL字型の形状を有する箱状の部材である。カニューレ支持部150は、気管方向に関する支持台120の端部に配置されている。気管カニューレ141の一端は、気管方向に関する模擬気管110の端部に挿入されている。気管カニューレ141の他端には人工鼻142が着脱可能に装着されている。気管カニューレ141の他端付近には、人工鼻142が装着された状態か否かを検出する人工鼻着脱センサー143が設けられている。人工鼻着脱センサー143は、例えば、人工鼻142が所定の位置に存在するか否かを検出する光学式のセンサーであってもよい。人工鼻着脱センサー143は、図2に示すように制御部200と接続されている。事項鼻着脱センサー143による検出結果は制御部200に送信される。訓練開始時、被訓練者は、人工鼻142を気管カニューレ141から取り外す。その後、被訓練者は、気管カニューレ141を通じ、図1の一点鎖線の矢印に沿って模擬気管110にカテーテル20を挿入する。カテーテル20の先端には、先端であることを示すマーカー21が付されている。本実施形態では、赤い塗料が部分的に塗布されることでマーカー21が形成されている。
【0020】
装置本体100には力センサー115が設けられている。力センサー115は、歪みゲージと歪みゲージに発生する歪みを検出する電気回路とを備えている。歪みゲージは、気管方向に関して気管カニューレ141側とは反対側の外枠111の端部と支持台120との間に配置されている。力センサー115は、以下の通りにカテーテル20の先端が模擬気管110に当たる荷重とモーメントを検出する。模擬気管110にカテーテル20が挿入され、カテーテル20の先端が内筒112の内面に当たると、模擬気管110全体が気管方向に沿って支持台120に押し付けられる。これにより、外枠111の端部と支持台120との間に配置された歪みゲージには歪みが発生する。電気回路は、歪みゲージにおける歪みによる抵抗の変化を電気信号に変換し、力センサー115の検出結果として出力する。力センサー115は、図2に示すように制御部200と接続されている。力センサー115による検出結果は制御部200へと送信される。なお、力センサー115には、歪みゲージを用いたセンサーではなく、静電容量式のセンサーが用いられてもよい。
【0021】
模擬気管110の上方にはカテーテル先端追尾センサー131が設けられている。カテーテル先端追尾センサー131は、支持台120においてカニューレ支持部150が配置された側とは反対側の端部にアーム132を通じて支持されている。カテーテル先端追尾センサー131は、撮像素子を含んでおり、模擬気管110を撮影し、その撮像に対応する撮像データを生成する。カテーテル先端追尾センサー131は、図2に示すように制御部200に接続されている。カテーテル先端追尾センサー131による模擬気管110の撮像データは制御部200に送信される。この撮像データは、後述の通り、模擬気管110におけるカテーテル20の先端の位置を検出するために用いられる。
【0022】
模擬気管110付近には振動スピーカー151が設けられている。振動スピーカー151は、図2に示すように制御部200に接続されている。振動スピーカー151は、制御部200からの指示に応じた振動を発生させる。その振動はカテーテル20まで伝達され、カテーテル20を通じて被訓練者に知覚される。また、カニューレ支持部150において、模擬気管100側とは反対側の側面には、AR(Augmented Reality)マーカー152が固定されている。ARマーカー152は、六面のそれぞれに互いに異なる白黒の図形が形成された立方体の部材である。ARマーカー152は、3次元位置(X-Y-Z位置)及び3次元の角度に関して各面の図形が人工鼻142に対して所定の位置及び角度になるように配置されている。ARマーカー152は、後述の通り、ディスプレイ10の撮像素子の被写体に含まれる場合に、人工鼻142とディスプレイ10に表示される画像との位置関係を調整するために用いられる。
【0023】
制御部200は、各種の演算処理を実行する1又は複数のコンピュータを備えている。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサー、ROM(Read-Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の記憶デバイス、並びに、入出力インタフェース等の各種インタフェース等からなるハードウェアと、記憶デバイスに記録されたプログラムデータ、患者モデルMの画像データ等からなるソフトウェアとを備えている。
【0024】
記憶デバイスには、制御部200の機能を実現するために使用される各種データが格納されている。特に、記憶デバイスには、被訓練者が訓練装置1に施す操作に対する患者の反応を模擬的に出力する際に制御部200において使用されるデータが格納されている。かかるデータには、顔の表情及び顔色が異なる複数パターンの患者モデルMの画像データが含まれる。また、患者モデルMの表情を変化させる条件となる、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たる強さの閾値を示すデータ、模擬気管110内の痰の位置を示すデータ、痰が吸引される際に発生する「ジュルジュル」といった音や気管の振動を模擬気管110に発生させるための振動波形を示すデータが含まれる。上記コンピュータにおいてハードウェアがソフトウェアに従って演算処理、入出力処理等の各種の情報処理を実行する。これにより、以下において説明する制御部200における各種の機能が実現される。
【0025】
制御部200には、上記の通り、ディスプレイ10の撮像素子からの撮像データが送信される。制御部200は、この撮像データが示す画像内にARマーカー152が映り込んでいることを利用してディスプレイ10の表示面上における患者モデルMのX-Y位置及び見た目の角度を調整する。患者モデルMの画像のX-Y位置及び見た目の角度は、図3に示すように、人工鼻142が患者モデルMの喉元から患者モデルMの正面に向かって突出するように調整される。具体的には、制御部200は、まず、ディスプレイ10の撮像素子からの撮像データに画像処理を施し、撮像データ内に映り込んだARマーカー152を認識する。これにより、制御部200は、ディスプレイ10の撮像素子に対していずれの位置にどのような角度でARマーカー152が配置されているかを導出する。例えば、画像認識されたARマーカー152の画像中のX-Y位置及び大きさに基づき、撮像素子に対する3次元位置が導出される。また、ARマーカー152の六面には互いに異なる図形が形成されている。このため、画像認識された図形が、ARマーカー152の各面における正面からの見た目からどのように変形しているかに基づき、ディスプレイ10の撮像素子に対するARマーカー152の各図形の3次元の角度が導出される。次に、制御部200は、撮像素子に対するARマーカー152の各図形の3次元位置及び角度に基づき、ディスプレイ10の表示面上における患者モデルMのX-Y位置及び見た目の角度を調整する。ARマーカー152は、上記の通り、各面の図形が人工鼻142に対して所定の位置及び角度になるように配置されている。これに基づき、制御部200は、人工鼻142が患者モデルMの喉元から患者モデルMの正面に向かって突出するように患者モデルMをディスプレイ10に表示させる。
【0026】
また、制御部200には、カテーテル先端追尾センサー131からの撮像データと、力センサー115及び人工鼻着脱センサー143からの検出結果が送信される。これらのデバイスやセンサーからの送信内容は、被訓練者が本訓練装置1を用いて気管内吸引の訓練を行う際に装置本体100に対して行う操作の状態を示す。例えば、カテーテル先端追尾センサー131からの撮像データは、模擬気管110内に挿入されたカテーテル20の先端の位置を示す。制御部200は、カテーテル先端追尾センサー131からの撮像データに画像処理を施し、カテーテル20の先端に付されたマーカー21の画像内の位置を検出する。これによって、制御部200は、模擬気管110内におけるカテーテル20の先端の位置を取得する。また、制御部200は、力センサー115からの検出結果に基づき、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たる強さ(荷重及びモーメント)を取得する。また、制御部200は、力センサー115からの送信結果が示す荷重及びモーメントに基づいて、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たった位置(本発明におけるカテーテルの接触位置)を算出する。この位置は、モーメントを荷重で除することにより算出される。さらに、制御部200は、人工鼻着脱センサー143からの検出結果に基づき、訓練の開始時点における、人工鼻142が気管カニューレ141から取り外されたタイミングを取得する。また、制御部200は、人工鼻着脱センサー143からの検出結果に基づき、人工鼻142が気管カニューレ141に再び装着されたタイミングを取得する。
【0027】
制御部200は、以上のように検出された操作の状態に基づき、被訓練者が装置本体100に対して行う操作への患者の反応を模擬的に出力するように、ディスプレイ10による画像表示や振動スピーカー151による振動発生を制御する。制御部200によるこれらの制御は、記憶デバイスに格納された各種データに基づき、以下の通りに実行される。第1に、制御部200は、人工鼻着脱センサー143からの検出結果に基づき、人工鼻142が気管カニューレ141から取り外されてからの時間の経過に伴って、ディスプレイ10に表示される患者モデルMの顔色を変化させる。例えば、患者モデルMの顔色を当初は血色のよいピンク色にしておき、上記時間の経過に伴って徐々に青白い色に変化させる。これは、人工鼻142が取り外されてからの時間の経過に伴って患者の血中の酸素量が低下していく際の患者の反応を模擬的に出力するものである。
【0028】
第2に、制御部200は、力センサー115からの検出結果に基づき、ディスプレイ10に表示される患者モデルMの表情を変化させる。例えば、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たる強さが所定の閾値を超えた場合に、患者モデルMの表情や顔色を苦痛により顔をしかめた表情や青白い顔色に変化させる。これは、カテーテル20の先端が気管内に当たって苦痛を与えた場合の患者の反応を模擬的に出力するものである。なお、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たる強さが大きくなるのに応じて患者モデルMの表情の変化の程度を大きくしてもよい。また、力センサー115からの検出結果に基づき、カテーテル20が模擬気管110に当たっている時間に応じて患者モデルMの表情や顔色を変化させるように、制御部200がディスプレイ10を制御してもよい。
【0029】
第3に、制御部200は、カテーテル先端追尾センサー131からの撮像データに基づき、振動スピーカー151から振動とこれに伴う音を発生させる。制御部200は、カテーテル20の先端があらかじめ設定された模擬気管110内の痰の位置に到達したか否かを判定する。そして、カテーテル20の先端が模擬気管110内の痰の位置に到達したと判定すると、制御部200は、模擬気管110を所定の態様で振動させるような信号を振動スピーカー151に送信する。これにより、痰の吸引に対する患者の反応として、「ジュルジュル」といった音や気管の振動が模擬的に出力される。制御部200は、カテーテル20の先端が痰の位置にある状態で所定の時間が経過すると、振動スピーカー151からの振動及び音の発生を終了させる。なお、カテーテル20の先端があらかじめ設定された模擬気管110内の痰の位置に到達したか否かを判定する制御部200の機能は、本発明における判定手段の機能に対応する。
【0030】
なお、力センサー115、カテーテル先端追尾センサー131及び人工鼻着脱センサー143は、本発明における状態検出手段に対応する。また、制御部200による制御に従って、患者の模擬的な反応として患者モデルMの顔色や表情の変化をディスプレイ10に出力させる機能や、痰が吸引される際に生じる音や振動を振動スピーカー151に発生させる機能は、本発明における反応出力手段の機能に対応する。
【0031】
以下、訓練装置1を用いた気管内吸引の訓練の流れについて説明する。まず、被訓練者は、人工鼻142を気管カニューレ141から取り外す。次に、気管カニューレ141の上端の開口からカテーテル20の先端を挿入し、さらに気管カニューレ141を通過させて模擬気管110へと挿入する。次に、カテーテル20の先端が模擬気管110内の所定の位置まで到達したら、痰を吸引する音や振動が発生する。被訓練者は、この反応により、カテーテル20の先端が適切な位置に到達したことを認識できる。また、その状態で所定の時間が経過したら音や振動が発生しなくなるので、被訓練者は、吸引が完了したことを認識できる。そこで、カテーテル20を模擬気管110及び気管カニューレ141から引き抜く。そして、人工鼻142を気管カニューレ141に再び装着させる。訓練中、カテーテル20の先端が模擬気管110の内面に強く当たると苦痛の表情が表れたり、人工鼻142の取り外しからの経過時間が大きくなると顔色が悪化したりといった反応が患者モデルMに表れる。これにより、被訓練者は、行った操作が適切でないことを認識できる。
【0032】
以上説明した本実施形態によると、訓練装置1に対して被訓練者が行う操作に応じて患者の模擬的な反応が出力される。例えば、患者モデルMの顔色や表情の変化、吸引の際に発生する音や振動等が被訓練者の操作に応じて出力される。よって、臨場感の高い訓練を実施することができる。
【0033】
また、本実施形態においては、ディスプレイ10の投影板に投影された患者モデルMの画像が、透過スクリーンの向こう側の情景と共に被訓練者に視認される。患者モデルMの画像は、人工鼻142が患者モデルMの喉元から患者モデルMの正面に向かって突出するように表示される。このため、被訓練者にとって、人工鼻142を使用した実際の患者に対して気管内吸引を行っているかのように訓練を実施できる。
【0034】
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0035】
例えば、上述の実施形態において、患者の模擬的な反応は、患者モデルMの顔色や表情の変化、痰の吸引の際に発生する音や振動として出力される。しかし、その他の態様で出力されてもよい。例えば、患者のバイタルサインの変化として出力されてもよい。具体的には、バイタルサインとして脈拍数及び酸素飽和度を示す数値やグラフが患者モデルMの画像と共にディスプレイ10に表示される。制御部200が有する記憶デバイスには、心拍数及び酸素飽和度の変化の態様を示すデータが格納されている。制御部200は、かかるデータに基づき、例えば、人工鼻142が気管カニューレ141から取り外されてからの経過時間に従って所定の態様で変化させつつ心拍数及び酸素飽和度をディスプレイ10に表示させる。なお、所定のユーザ入力がなされると、そのユーザ入力に基づいてバイタルサインがすぐに変化するように訓練装置1が構成されていてもよい。これにより、例えば、患者の容体が突発的に悪化する状況等を所望のタイミングで訓練中に再現することが可能となる。
【0036】
また、上述の実施形態において、患者モデルMの画像は、ディスプレイ10の投影板に投影されることにより、透過スクリーンの向こう側の訓練装置1を含む情景と重なり合った像として、ディスプレイ10の装着者に知覚される。しかし、撮像素子で撮影された訓練装置1の撮影画像と患者モデルMの画像とが合成された画像が出力されてもよい。この場合にも、上記と同様、人工鼻142が患者モデルMの喉元から患者モデルMの正面に向かって突出するように画像が合成されるとよい。なお、この場合の画像の出力手段としては、汎用の液晶ディスプレイやプロジェクター(プロジェクションマッピング)等が用いられてよい。また、患者モデルMのみがディスプレイに表示されたり、バイタルサインのみがディスプレイに表示されたりしてもよい。また、3Dプリンター等を用いて作製された患者の頭部の立体模型上に表情や顔色を表現した画像が投影されてもよい。
【0037】
また、上述の実施形態に係るカニューレ支持部150の代わりに、図4及び図5に示すカニューレ支持部250が用いられてもよい。カニューレ支持部250は、U字型の概略形状を有する可動部251と、可動部251を支持する台座部252とを備えている。可動部251の両側壁のそれぞれには、側壁を貫通するスリット251aが形成されている。スリット251aは、上下方向に関する側壁の中央部から下端部に向かって、模擬気管110に向かって若干湾曲しつつ延びている。可動部251の上部には、気管カニューレ141が挿入される挿入孔251bが形成されている。台座部252は、直方体の概略形状を有し、両側面のそれぞれに、側方に向かって突出した突出部252aが形成されている。突出部252aは、スリット251aに沿って延びていると共に、スリット251aに嵌め込まれている。台座部252の上面には、気管カニューレ141の下端部が通る椀型の凹部252bが形成されている。気管カニューレ141は、図4の一点鎖線に沿って上方から挿入孔251bに挿入されると共に、下端部が凹部252bに沿って模擬気管110の方向へと湾曲するように配置される。可動部251は、スリット251aと嵌まり合った突出部252aによって案内されることにより、スリット251aに沿った図4のA方向に関して移動可能である。図5は、図4の状態から可動部251が図4のA方向に沿って上昇した状態を示す。
【0038】
台座部252の背後にはモーター253が設けられている。モーター253の駆動軸は、ギア等を有する伝達機構を介して可動部251と接続されている。かかる伝達機構を介してモーター253の駆動力が可動部251に伝達されると、可動部251がA方向に沿って移動する。モーター253の駆動は制御部200によって制御される。制御部200は、模擬的な気管内吸引において被訓練者が行う操作に対する患者の模擬的な反応として、モーター253に可動部251を移動させる。例えば、図4の状態から図5の状態へと可動部251が移動することにより、患者が首を折り曲げる動作に伴って気管カニューレ141がスイングする動きが模擬的に再現される。これは、患者が咳き込んで顔を俯ける動作に伴う気管カニューレ141の運動に対応する。この気管カニューレ141の運動に連動するように、ディスプレイ10に表示される患者モデルMの画像において、患者が咳き込んで顔を俯ける動作が模擬的に表現されてもよい。かかる動作の再現は、模擬気管110内におけるカテーテル20の状態に応じて実施される。例えば、力センサー115の検出結果に基づき、カテーテル20の先端が模擬気管110に当たる強さが所定の閾値を超えた場合に実施されてもよい。
【0039】
また、上述の実施形態において、模擬気管110の代わりに図6及び図7に示す模擬気管210が用いられてもよい。なお、以下の説明における前後左右上下の各方向は、図6に示す方向とする。このうち、前後方向は気管に沿った水平方向であり、左右方向は前後方向と直交する水平方向である。模擬気管210は、気管を模擬した気管本体211と、気管本体211を挟持する環状部材212及び213と、気管本体211の左右に配置されたL字型の側板214及び215と、環状部材212と側板214及び215の前端部とを繋ぐ梁部材216及び217と、環状部材213と側板214及び215の後端部とを繋ぐ梁部材218及び219とを有している。気管本体211は円筒状の概略形状を有する部材である。気管本体211の後端からカテーテル20の先端が挿入される。梁部材216~219は、いずれも、前後方向に関して薄い薄板である。また、側板215の前端部と側板215の前端部との間には、これらを左右方向に繋ぐ梁部材220が設けられている。梁部材220は、環状部材212の下方に配置された、上下方向に関して薄い薄板である。模擬気管210は、梁部材220の左右方向に中央に固定された台座229によって支持されている。
【0040】
模擬気管210には、気管本体211内に挿入されたカテーテル20の先端が気管本体211に当たる強さを検出する力センサー230が設けられている。力センサー230は、歪みゲージ231~234及びこれらの歪みゲージに発生する歪みを検出する電気回路を有している。歪みゲージ231は梁部材220の右側部分に、歪みゲージ232は梁部材220の左側部分に設けられている。歪みゲージ233及び234は梁部材218及び219にそれぞれ設けられている。電気回路は、各歪みゲージに歪みが発生することによる抵抗の変化を電気信号に変換して出力する。
【0041】
歪みゲージ231及び232の歪みは、梁部材220に発生する上下方向の撓みによって歪む。かかる撓みは、カテーテル20の先端が当たって気管本体211が上下に移動することにより発生する。したがって、歪みゲージ231及び232の歪みが検出されることで、カテーテル20が気管本体211に作用させる上下方向の力が検出される。歪みゲージ233及び234の歪みは、梁部材218及び219に発生する前後方向の撓みによって歪む。かかる撓みは、カテーテル20の先端が当たって気管本体211が前後に移動することにより発生する。したがって、歪みゲージ233及び234の歪みが検出されることで、カテーテル20が気管本体211に作用させる前後方向の力が検出される。また、カテーテル20の先端が当たって気管本体211が左右に移動すると、梁部材220の右側部分と梁部材220の左側部分とに、上下方向に関して互いに反対方向に向かう撓みがそれぞれ発生する。したがって、歪みゲージ231の歪みと歪みゲージ232の歪みとの差を検出することで、カテーテル20が気管本体211に作用させる左右方向の力が検出される。
【0042】
以上の通り、模擬気管210を用いると、カテーテル20の先端が気管本体211に作用させる上下、左右及び前後の3方向の力を検出することができる。かかる力の検出結果に基づき、検出された力の方向に応じた患者の模擬的な反応が出力されるように訓練装置1が構成されていてもよい。例えば、前後方向の力が作用する場合においては、左右方向の力が作用する場合よりも強い苦痛の表情が表れるように、患者モデルMの顔の画像がディスプレイ10に表示されてもよい。また、例えば、吸引後に体位変換を行い、側臥位のまま次の吸引をする場合にも、カテーテル20の動きを検出することができる。なお、歪みゲージ231~234のうちの一部が用いられることで2方向の力が検出されるように訓練装置1が構成されていてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態においては、カテーテル20の先端が模擬気管110内の所定の位置まで到達したら振動スピーカー151が痰を吸引する音や振動を発生させる。これにより、カテーテル20の先端が適切な位置に到達したことを被訓練者が認識できる。これに関して、振動スピーカー151から発生する振動の強さや振動時間の長さを制御することにより、被訓練者が痰の吸引量や粘度(硬さ)を振動や音に基づいて認識できるように制御部200が振動スピーカー151を制御してもよい。
【0044】
また、上述の実施形態においては、振動スピーカー151から発生する振動や音が発生しなくなったことにより被訓練者が吸引の完了を認識できる。しかし、患者モデルMの表情や顔色が変化すること(例えば苦痛の表情が和らぐこと)により被訓練者が吸引の完了を認識できるように、制御部200がディスプレイ10の表示を制御してもよい。また、ディスプレイ10にバイタルサインが表示される場合、バイタルサインの変化により被訓練者が吸引の完了を認識できるようになっていてもよい。さらに、気管内吸引中に模擬的に発生させた音や振動で吸痰量と痰の性状について認識できるように振動スピーカー151が制御されてもよい。被訓練者は、これらの反応に基づいて吸引を完了した後、カテーテル20を模擬気管110及び気管カニューレ141から引き抜く。
【0045】
また、上述の実施形態において、制御部200がディスプレイ10及び模擬気管100を制御している。これに関し、制御部200による少なくとも一部又は全部の機能が模擬気管100内やディスプレイ10内に設けられたコンピュータにおいて実現されていてもよい。例えば、上述の通り、ディスプレイ10に設けられた撮像素子による撮像中のARマーカー152が画像認識され、その認識結果に基づいてディスプレイ10の表示面上における患者モデルMのX-Y位置及び見た目の角度が調整されている。上述の実施形態では、かかる画像認識の処理及びそれに基づく患者モデルMのX-Y位置及び見た目の角度の調整処理が制御部200によって実行されている。しかし、ディスプレイ10内に設けられたコンピュータによってこれらの処理が実行されてもよい。この場合、ディスプレイ10の撮像素子が生成した撮像データはディスプレイ10外へと送信されず、ディスプレイ10内にて処理されるのみとなる。また、制御部200の全ての機能が模擬気管100内に設けられたコンピュータによって実現されてもよい。
【0046】
また、上述の実施形態においては、被訓練者が模擬気管110からカテーテル20を引き抜いた段階で訓練が完了する。しかし、模擬気管110からカテーテル20を引き抜いた後、患者の体位を側臥位等に変更し、体位ドレナージによって喀痰を太い気管支に移動させる模擬的なケアを行った上で訓練が完了するように訓練装置1が構成されていてもよい。この場合、例えば、制御部200に接続されたコントローラー等を被訓練者が操作することにより、ディスプレイ10に表示される患者モデルMの画像の体位が仰臥位から側臥位に変更されるように訓練装置1が構成されていてもよい。また、患者モデルMの胸部を含んだ立体模型が設けられており、被訓練者がこの立体模型の体位を仰臥位から側臥位に変更するように訓練装置1が構成されていてもよい。この場合、プロジェクターによって患者モデルMの顔の画像が立体模型に投影されると共に、立体模型の体位が変更された際、患者モデルMの顔の画像が立体模型に追随して、仰臥位に対応する上向きから側臥位に対応する横向きになるように、制御部200がプロジェクターを制御することが好ましい。かかる構成においては、立体模型の体位を変更する操作が本発明における被訓練者による操作に対応すると共に、これに応じて制御部200による制御に従って患者モデルMの顔の画像を立体模型に追随させる機能が本発明における反応出力手段の機能に対応する。
【符号の説明】
【0047】
M 患者モデル
1 訓練装置
10 ゴーグル型ディスプレイ
20 カテーテル
100 装置本体
110、210 模擬気管
115、230 力センサー
131 カメラ
141 気管カニューレ
142 人工鼻
143 人工鼻着脱センサー
151 振動スピーカー
200 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7