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特許7388865付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、及び半導体装置
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  • 特許-付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231121BHJP
   C08L 83/14 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20231121BHJP
   H01L 33/56 20100101ALI20231121BHJP
   C08G 77/52 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/14
H01L23/30 C
H01L23/30 F
H01L33/56
C08G77/52
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019185533
(22)【出願日】2019-10-08
(65)【公開番号】P2021059685
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-231003(JP,A)
【文献】特開2020-026502(JP,A)
【文献】特開2021-059684(JP,A)
【文献】特開2021-059682(JP,A)
【文献】特表2021-534294(JP,A)
【文献】特開2014-098146(JP,A)
【文献】特開2013-108063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08G 77/00- 77/62
H01L 23/28- 23/31
H01L 33/52- 33/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)及び(C)を含む付加硬化型シリコーン組成物。
(A)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び下記式(3)で表される三次元網状シロキサンとの付加反応物であって、1分子中にSiH基を2個以上有し、
【化1】
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1~12の2価炭化水素基である。)
【化2】
(式中、R、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に単結合または非置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。aは1~3の整数であり、bは0~100の整数である。)
(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2(XO1/2 (3)
(式中、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、但し、Rの全数のうち0.1~40%はアルケニル基であり、かつ、10~99.9%はアリール基である。Xは水素原子またはアルキル基であり、cは0.1~0.5の数であり、dは0.1~0.6の数であり、eは0.2~0.8の数であり、fは0~0.2の数であり、c+d+e+f=1である。)
上記式(1)で表される前記有機ケイ素化合物が、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンであり、
上記式(2)で表される前記直鎖状シロキサンが、MΦVi で表されるジシロキサンであり、
上記式(3)で表される前記三次元網状シロキサンが、MΦVi 0.252Φ 0.30.45で表される分岐状オルガノポリシロキサンであり、
ΦViが、(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2であり、
2Φが、(CSiO2/2であり、
Qが、SiO4/2である、付加反応物、
(B)アルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物であって、
ΦVi 2Φ で表される直鎖状オルガノポリシロキサン、又は
ΦVi 2Φ で表される直鎖状オルガノポリシロキサンとM ΦVi 0.25 2Φ 0.3 0.45 で表される三次元網状オルガノポリシロキサンとの混合物
ΦVi が、(CH =CH)(C )(CH )SiO 1/2 であり、D 2Φ が、(C SiO 2/2 であり、Qが、SiO 4/2 である)
(C)ヒドロシリル化反応触媒
【請求項2】
請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項3】
180℃で1,000時間静置後、厚さ2mmにおける波長400nmの光透過率(25℃)が60%以上であることを特徴とする請求項2に記載の硬化物。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の硬化物により半導体素子が被覆されたものであることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物、その硬化物、及び該硬化物を用いた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
付加硬化型シリコーン組成物は、付加反応性炭素-炭素二重結合を含有するオルガノポリシロキサンおよびケイ素に結合した水素原子を有する有機ケイ素化合物を含み、ヒドロシリル化反応によって硬化して硬化物を与える。このようにして得られる硬化物は、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性に優れ、また、透明であるため、発光ダイオード(LED)の封止材などの各種光学用途に用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、一般的にシリコーンからなる光学素子封止材はガスバリア性が低く、外部からの腐食性ガスの侵入により銀電極が変色する結果、LEDの輝度が低下してしまう場合がある。
【0004】
そこで、多環式炭化水素骨格を含有する付加硬化型シリコーン組成物を用いた光学素子封止材が提案されている(特許文献3、4)。このような組成物から得られる封止材は高いガスバリア性を有するため、外部からの腐食性ガスの侵入を防ぎ、銀電極の変色を抑えることが可能である。また、該組成物からなる硬化物は非常に優れた靱性を有しており、これによって熱衝撃等の外的影響によるクラック等を抑制できる。しかしながら、これらの多環式炭化水素骨格を含有する付加硬化型シリコーン組成物は熱により変色しやすいという欠点があるため、特にハイパワーのLEDには使用できないといった問題が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-186168号公報
【文献】特開2004-143361号公報
【文献】特開2008-069210号公報
【文献】特開2012-046604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明では、下記(A)、(B)及び(C)を含む付加硬化型シリコーン組成物を提供する。
(A)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び下記式(3)で表される三次元網状シロキサンとの付加反応物であって、1分子中にSiH基を2個以上有する付加反応物、
【化1】
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1~12の2価炭化水素基である。)
【化2】
(式中、R、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に単結合または非置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。aは1~3の整数であり、bは0~100の整数である。)
(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2(XO1/2 (3)
(式中、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、但し、Rの全数のうち0.1~40%はアルケニル基であり、かつ、10~99.9%はアリール基である。Xは水素原子またはアルキル基であり、cは0.1~0.5の数であり、dは0.1~0.6の数であり、eは0.2~0.8の数であり、fは0~0.2の数であり、c+d+e+f=1である。)
(B)アルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物、
(C)ヒドロシリル化反応触媒
【0008】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物であれば、透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物を提供できる。
【0009】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、上記Rがフェニレン基であり、R、Rが独立にメチル基またはフェニル基であり、Rが単結合であることが好ましい。
【0010】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、さらに前記直鎖状シロキサンが、下記式(4)で表される直鎖状シロキサンを含むことが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2 (4)
(式中、bは前記のとおりである。)
【0011】
また、前記三次元網状シロキサンが、下記式(5)で表される三次元網状シロキサンを含むことが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2[SiO4/2 (5)
(式中、c、d、eは前記のとおりであり、c+d+e=1である。)
【0012】
さらに、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、前記(B)が下記式(6)で表されるシロキサンを含むことが好ましい。
【化3】
(式中、Rは独立にメチル基又はフェニル基であり、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、gは0~50の整数であり、hは0~100の整数である。ただし、gが0のときRはフェニル基であり、かつ、hは1~100の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0013】
また、前記(B)が下記式(7)で表されるシロキサンを含むことが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2 (7)
(式中、iは1~50の整数である。)
【0014】
前記(B)は前記式(3)で表される三次元網状シロキサンを含んでもよい。
【0015】
さらに、前記(B)が、下記式(5)で表される三次元網状シロキサンを含むことが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2[SiO4/2 (5)
(式中、c、d、eは前記のとおりであり、c+d+e=1である。)
【0016】
本発明において、前記Rや、前記直鎖状シロキサン、前記三次元網状シロキサン、(B)成分等が上記のようなものであると、より確実に本発明の効果を発揮できる。
【0017】
また本発明は、前記付加硬化型シリコーン組成物を硬化してなる硬化物を提供する。
【0018】
本発明の硬化物であれば、透明性、耐熱変色性、靱性に優れる。
【0019】
本発明の硬化物は、180℃で1,000時間静置後、厚さ2mmにおける波長400nmの光透過率(25℃)が60%以上であることが好ましい。
【0020】
このような光透過率を有する硬化物であれば、発光ダイオード素子の保護、封止もしくは接着、波長変更もしくは調整またはレンズ等の用途に好適に使用できるほか、レンズ材料、光学デバイスもしくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学部品用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、更にはコーティング材料としても有用な材料となる。
【0021】
さらに本発明は、前記硬化物により半導体素子が被覆されたものである半導体装置を提供する。
【0022】
使用する本発明の付加硬化型シリコーン組成物が透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を形成するため、この付加硬化型シリコーン組成物を用いた本発明の半導体装置は、信頼性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を与えることができる。従って、発光ダイオード素子の保護、封止もしくは接着、波長変更もしくは調整またはレンズ等の用途に好適に使用できる。このため、本発明の付加硬化型シリコーン組成物から得られる硬化物は、発光ダイオード素子の保護、封止もしくは接着、波長変更もしくは調整またはレンズ等の用途に好適に使用できる。また、レンズ材料、光学デバイスもしくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学部品用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、更にはコーティング材料としても有用である。さらに、このような硬化物を用いた本発明の半導体装置は、信頼性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物を用いた光半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように、透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を与える付加硬化型シリコーン組成物の開発が求められていた。
【0026】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含む付加硬化型シリコーン組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0027】
即ち、本発明は、下記(A)、(B)及び(C)を含む付加硬化型シリコーン組成物である。
(A)下記式(1)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び下記式(3)で表される三次元網状シロキサンとの付加反応物であって、1分子中にSiH基を2個以上有する付加反応物、
【化4】
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1~12の2価炭化水素基である。)
【化5】
(式中、R、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に単結合または非置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。aは1~3の整数であり、bは0~100の整数である。)
(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2(XO1/2 (3)
(式中、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、但し、Rの全数のうち0.1~40%はアルケニル基であり、かつ、10~99.9%はアリール基である。Xは水素原子またはアルキル基であり、cは0.1~0.5の数であり、dは0.1~0.6の数であり、eは0.2~0.8の数であり、fは0~0.2の数であり、c+d+e+f=1である。)
(B)アルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物、
(C)ヒドロシリル化反応触媒
【0028】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
[付加硬化型シリコーン組成物]
[(A)成分]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物における(A)成分は、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び下記式(3)で表される三次元網状シロキサンとの付加反応物であって、1分子中にSiH基を2個以上有する付加反応物である。
【化6】
(式中、Rは置換または非置換の炭素原子数1~12の2価炭化水素基である。)
【化7】
(式中、R、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、Rは独立に単結合または非置換の炭素数1~4の2価炭化水素基である。aは1~3の整数であり、bは0~100の整数である。)
(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2(XO1/2 (3)
(式中、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、但し、Rの全数のうち0.1~40%はアルケニル基であり、かつ、10~99.9%はアリール基である。Xは水素原子またはアルキル基であり、cは0.1~0.5の数であり、dは0.1~0.6の数であり、eは0.2~0.8の数であり、fは0~0.2の数であり、c+d+e+f=1である。)
【0030】
上記式(1)において、Rで表される炭素原子数1~12の2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、シクロヘキシレン基、n-オクチレン基等のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基等や、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換されたものが挙げられ、Rとしては、フェニレン基が特に好ましい。
【0031】
上記式(1)で表される有機ケイ素化合物の好適な具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。また、上記式(1)で表される有機ケイ素化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【化8】
【0032】
上記式(2)において、RおよびRで表される炭素原子数1~12の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換されたものが挙げられ、メチル又はフェニル基が好ましい。
【0033】
で表される非置換の炭素原子数1~4の2価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基等のアルキレン基が挙げられる。Rが単結合である場合は、ケイ素原子にビニル基が直接結合している有機ケイ素化合物を表す。Rとしては単結合が特に好ましい。
【0034】
aは1~3の整数であり、1であることが好ましい。bは0~100の整数であり、0~10が好ましく、0がより好ましい。bが100を超えると、硬化物の硬度が不充分なものとなる場合がある。
【0035】
上記式(2)で表される直鎖状シロキサンの具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。また、上記式(2)で表される直鎖状シロキサンは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【化9】
【0036】
このような直鎖状シロキサンの中でも、下記式(4)で表されるものが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2 (4)
(式中、bは前記のとおりである。)
【0037】
上記式(3)において、Rは独立に置換もしくは非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、但し、Rの全数のうち0.1~40%はアルケニル基であり、好ましくは0.1~20%、さらに好ましくは0.1~10%である。アルケニル基が40%を超えると、硬化物が脆くなり靭性に劣るものとなる場合がある。
かつ、Rの全数のうち10~99.9%はアリール基であり、好ましくは30~99.9%、さらに好ましくは50~99.9%である。アリール基が10%未満であると、他の成分との相溶性が劣る場合がある。
【0038】
のうち、アルケニル基およびアリール基以外の非置換または置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の炭素原子数1~6のアルキル基;クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1~4のハロアルキル基が挙げられる。中でも、炭素原子数1~6のアルキル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。
【0039】
cは0.1~0.5、dは0.1~0.6、eは0.2~0.8、fは0~0.2の数であり、c+d+e+f=1.0である。好ましくはcは0.1~0.4、dは0.1~0.5、eは0.3~0.8、fは0~0.1の数であり、さらに好ましくは、cは0.15~0.4、dは0.2~0.5、eは0.3~0.65の数であり、fは0である。cが0.1未満であると(A)成分の架橋剤としての機能が不足し、cが0.5を超えると、硬化物が脆くなり靭性に劣るものとなる場合がある。dが0.1未満であると硬化物が靭性に劣るものとなる場合があり、dが0.6を超えると硬化物の硬度が不充分なものとなる場合がある。eが0.2未満であると硬化物の硬度が不充分なものとなる場合があり、eが0.8を超えると硬化物が脆くなり靭性に劣るものとなる場合がある。fが0.2を超えると組成物の保存安定性が悪化したり、組成物中の他の成分との相溶性が低下することにより透明性が損なわれる場合がある。
【0040】
上記式(3)で表される三次元網状シロキサンは、例えばジクロロジフェニルシランやジアルコキシジフェニルシラン等の二官能性シランとテトラクロロシランやテトラアルコキシシラン等を加水分解・縮合させた後、または加水分解・縮合と同時に、アルケニル基を含有するシロキサン単位で末端を封鎖することにより得ることができる。
【0041】
上記式(3)で表される三次元網状シロキサンの具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。また、上記式(3)で表される化合物は1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/20.25[(CSiO2/20.3[SiO4/20.45
[(CH=CH)(CHSiO1/20.25[(CSiO2/20.3[SiO4/20.45
【0042】
このような三次元網状シロキサンの中でも、下記式(5)で表されるものが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2[SiO4/2 (5)
(式中、c、d、eは前記のとおりであり、c+d+e=1である。)
【0043】
[(A)成分の調製]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物における(A)成分は、上記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び上記式(3)で表される三次元網状シロキサン中に含まれるアルケニル基1モルに対して、上記式(1)で表される化合物を、過剰量、好ましくは1モルを越え10モル以下、より好ましくは1.5モルを越え5モル以下混合して両者の存在下でヒドロシリル化反応を行う事により得ることができる。
【0044】
(A)成分中に、上記式(2)で表される直鎖状シロキサン及び上記式(3)で表される三次元網状シロキサンに由来する未反応のアルケニル基が存在していてもよいが、全てのアルケニル基がヒドロシリル化反応していることが好ましい。
【0045】
前記ヒドロシリル化反応に用いる触媒としては、公知のものを使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。また、付加反応条件、精製条件、溶媒の使用等については特に限定されず、公知の方法を用いればよい。
【0046】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物における(A)成分は、1種の化合物からなるものでも、2種以上の化合物の組み合わせ(混合物)からなるものでもよい。
【0047】
(A)成分を構成する化合物1分子中にSiH基を2個以上有することは適切な測定手段を選択することにより確認できる。(A)成分を構成する化合物が2種以上である場合には、適切な測定手段の組み合わせ(例えば、H-NMRとGPCなど)を選択することにより化合物ごとに1分子中にSiH基を2個以上有することを確認できる。
【0048】
[(B)成分]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物における(B)成分は、アルケニル基を1分子中に2個以上有する化合物である。
【0049】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基等の直鎖状アルケニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基が挙げられ、ビニル基、アリル基が好ましい。
【0050】
(B)成分の具体例としては、特に限定されないが、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0051】
また、シロキサン以外のものとしては下記式で表される化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化10】
【0052】
(B)成分は、下記式(6)で表される直鎖状のオルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。
【化11】
(式中、Rは独立にメチル基又はフェニル基であり、Rは独立に置換または非置換の炭素原子数1~12の1価炭化水素基であり、gは0~50の整数であり、hは0~100の整数である。ただし、gが0のときRはフェニル基であり、かつ、hは1~100の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列は任意であってよい。)
【0053】
で表される炭素原子数1~12の1価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等や、これらの基の水素原子の一部又は全部がフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子等で置換されたものが挙げられ、中でも、炭素原子数1~6のアルキル基、フェニル基、ビニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0054】
上記式(6)において、gは0~50の整数とすることができ、1~10であることが好ましく、1~7であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましい。hは0~100の整数とすることができ、0~50であることが好ましく、0~10であることがより好ましく、0~4であることが更に好ましい。
【0055】
式(6)で表されるオルガノポリシロキサンは、例えば、ジクロロジフェニルシランやジアルコキシジフェニルシラン等の二官能性シランを加水分解・縮合させた後、または加水分解・縮合と同時に、アルケニル基を含有するシロキサン単位で末端を封鎖することにより得られる。
【0056】
式(6)で表されるオルガノポリシロキサンは、下記式(7)としても表すことができる。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2 (7)
(式中、iは1~50の整数である。)
【0057】
式(6)、(7)で表されるオルガノポリシロキサンの好適な具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2
[(CH=CH)(CHSiO1/2[(CSiO2/2
【0058】
また、(B)成分は下記式(3)で表される三次元網状オルガノポリシロキサンを含有してもよい。
(R SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2(XO1/2 (3)
(式中、R、X、c、d、e、およびfは上記のとおりであり、c+d+e+f=1である。)
【0059】
三次元網状シロキサンとしては、上記(A)成分において例示されたものと同様のものが挙げられ、下記式(5)で表されるものが好ましい。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2[(CSiO2/2[SiO4/2 (5)
(式中、c、d、eは上記のとおりであり、c+d+e=1である。)
【0060】
三次元網状シロキサンの具体例を下記に示すが、これらに限定されるものではない。
[(CH=CH)(C)(CH)SiO1/20.25[(CSiO2/20.3[SiO4/20.45
[(CH=CH)(CHSiO1/20.25[(CSiO2/20.3[SiO4/20.45
【0061】
(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0062】
(B)成分の配合量は、組成物中のアルケニル基に対するSiH基のモル比(SiH基/アルケニル基)が0.5以上5以下となる量が好ましく、より好ましくは0.8以上2以下となる量である。前記モル比(SiH基/脂肪族不飽和基)が0.5以上5以下であれば、本発明の組成物を十分に硬化させることができる。
【0063】
[(C)成分]
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化反応触媒は、上記(A)成分の調製に用いられるものと同様のものが使用できる。
【0064】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物への(C)成分の配合量は、触媒としての有効量であればよく、特に制限されないが、組成物全体の質量に対して、白金族金属原子として、好ましくは1~500ppm、より好ましくは1~100ppm、さらに好ましくは2~12ppmとなる量を配合することが好ましい。前記範囲内の配合量とすることで、硬化反応に要する時間が適度のものとなり、硬化物の着色を抑制できる。
【0065】
[その他の成分]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、上記(A)~(C)成分に加え、必要に応じて酸化防止剤、無機充填剤、接着性向上剤等の成分を配合してもよい。
【0066】
[酸化防止剤]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物中には、上記(B)成分中の付加反応性炭素-炭素二重結合が未反応のまま残存している場合があり、それが大気中の酸素により酸化されることで硬化物が着色する原因となり得る。そこで、必要に応じ、本発明の付加硬化型シリコーン組成物に酸化防止剤を配合することにより、このような着色を未然に防止することができる。
【0067】
酸化防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、4,4‘-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2‘-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0068】
なお、この酸化防止剤を使用する場合、その配合量は特に制限されないが、上記(A)成分と(B)成分との合計質量に対して、通常、1~10,000ppm、特に10~1,000ppm程度配合することが好ましい。前記範囲内の配合量とすることによって、酸化防止能力が十分発揮され、着色、白濁、酸化劣化等の発生がなく光学的特性に優れた硬化物が得られる。
【0069】
[無機充填剤]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物の粘度や、本発明の付加硬化型シリコーン組成物から得られる硬化物の硬度等を調整したり、強度を向上させたり、蛍光体の分散を良くするために、ナノシリカや、溶融シリカ、結晶性シリカ、酸化チタン、ナノアルミナ、アルミナ等の無機充填剤を添加しても良い。
【0070】
[接着性向上剤]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、接着性向上剤を配合してもよい。接着性向上剤としては、シランカップリング剤やそのオリゴマー、シランカップリング剤と同様の反応性基を有するポリシロキサン等が例示される。
【0071】
接着性向上剤は、本発明の付加硬化型シリコーン組成物及びその硬化物の基材に対する接着性を向上させるために組成物に配合される任意成分である。ここで、基材とは、金、銀、銅、ニッケルなどの金属材料、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタンなどのセラミック材料、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの高分子材料を指す。接着性向上剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0072】
接着性向上剤を使用する場合の配合量は、上記(A)成分と(B)の合計100質量部に対し、好ましくは1~30質量部であり、より好ましくは、1~10質量部である。このような配合量であると、本発明の熱硬化性シリコーン組成物及びその硬化物は、基材に対する接着性が効果的に向上し、また、着色が起こりにくい。
【0073】
接着性向上剤の好適な具体例としては、下記式で表されるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化12】
【0074】
[その他]
また、ポットライフを確保するために、1-エチニルシクロヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等の付加反応制御剤を配合することができる。
【0075】
更に、太陽光線、蛍光灯等の光エネルギーによる光劣化に抵抗性を付与するため光安定剤を用いることも可能である。この光安定剤としては、光酸化劣化で生成するラジカルを補足するヒンダードアミン系安定剤が適しており、酸化防止剤と併用することで、酸化防止効果はより向上する。光安定剤の具体例としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0076】
また、本発明組成物を封止材料として用いる場合には、基材との接着性を向上させるためにシランカップリング剤を配合してもよいし、クラック防止のため可塑剤を添加してもよい。
【0077】
[硬化物]
本発明の付加硬化型シリコーン組成物を硬化して本発明の硬化物とする。前記硬化物は、硬度、靭性が高く、短波長領域の光透過性、透明性、耐熱変色性に優れる。なお、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化条件については、特に制限されないが、60~180℃、5~180分の条件とすることが好ましい。
【0078】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物から得られる硬化物は、厚さ2mmにおける波長400nmの初期の光透過率(25℃)が80%以上であることが好ましい。
【0079】
さらに、本発明の硬化物は、180℃で1,000時間静置後、厚さ2mmにおける波長400nmの光透過率(25℃)は60%以上であることが好ましい。本発明は、このような耐熱変色性を有することができる。
【0080】
このような光学特性を有する本発明の硬化物であれば、発光ダイオード素子の保護、封止もしくは接着、波長変更もしくは調整またはレンズ等の用途に好適に使用できるほか、レンズ材料、光学デバイスもしくは光学部品用封止材、ディスプレイ材料等の各種の光学部品用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、更にはコーティング材料としても有用な材料となる。
【0081】
[半導体装置]
本発明では更に、上記の付加硬化型シリコーン組成物から得られる硬化物により半導体素子が被覆された半導体装置を提供する。
【0082】
以下、図1を参照して、本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物を用いた半導体装置(以下、「本発明の半導体装置」ともいう)について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
図1は、本発明の半導体装置の一例を示す概略断面図である。本発明の半導体装置1は、銀メッキ基板2が形成されたパッケージ3上に、半導体チップ4がダイボンドされており、この半導体チップ4は、ボンディングワイヤ5によりワイヤボンディングされている。そして、上述した本発明の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物6により、半導体チップ4が被覆されている。半導体チップ4の被覆は、上述した本発明の付加硬化型シリコーン組成物(硬化性組成物)を塗布し、加熱により付加硬化型シリコーン組成物を硬化させることにより行われる。なお、その他公知の硬化条件下で公知の硬化方法により硬化させても良い。
【0084】
この場合、外部応力の影響を受け難くし、又ゴミ等の付着を極力抑えるという観点から、上記付加硬化型シリコーン組成物は、硬化により、JISやASTM D 2240に規定の硬さがデュロメータDで30以上の硬化物を形成するものであることが好ましい。
【0085】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、透明性、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を形成するため、この付加硬化型シリコーン組成物を用いた本発明の半導体装置は、信頼性に優れたものとなる。
【実施例
【0086】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
また、実施例において、H-NMR測定はブルカー・バイオスピン社製AVANCE IIIを使用した。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定は、東ソー(株)製HLC-8320GPCを用い、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)を使用し、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0088】
下記の例において、オルガノポリシロキサンの構成単位を表す記号は以下のとおりである。
ΦVi:(CH=CH)(C)(CH)SiO1/2
2Φ:(CSiO2/2
Q:SiO4/2
【0089】
[合成例1]付加反応物(A-1)の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(北興化学工業株式会社製)94g(0.5 モル)、5%Ptカーボン粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)0.07gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これを撹拌しながらMΦVi で表されるジシロキサン(北興化学工業株式会社製)47g(0.15モル)と、MΦVi 0.252Φ 0.30.45で表される分岐状オルガノポリシロキサン(ビニル基:0.2モル/100g)の75%キシレン溶液31g(ビニル基:0.047モル)との混合液を滴下した。滴下終了後、90~100℃の間で3時間撹拌した。撹拌終了後25℃に戻し、H-NMRスペクトル測定にてビニル基のピーク消失を確認した。活性炭を1.7g加え1時間撹拌後、Ptカーボン粉末、及び活性炭を濾別し、減圧濃縮により余剰の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを除去することで、付加反応物(A-1)(無色透明、23℃における粘度:13Pa・s、Mw:3,050、SiH基の含有割合:0.00166モル/g)を得た。
【0090】
[合成例2]付加反応物(A-2)の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(北興化学工業株式会社製)105g(0.54モル)、5%Ptカーボン粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)0.09gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これを撹拌しながらMΦVi で表されるジシロキサン(北興化学工業株式会社製)47g(0.15モル)と、MΦVi 0.252Φ 0.30.45で表される分岐状オルガノポリシロキサン(ビニル基:0.2モル/100g)の75%キシレン溶液62g(ビニル基:0.09モル)との混合液を滴下した。滴下終了後、90~100℃の間で3時間撹拌した。撹拌終了後25℃に戻し、H-NMRスペクトル測定にてビニル基のピーク消失を確認した。活性炭を1.7g加え1時間撹拌後、Ptカーボン粉末、及び活性炭を濾別し、減圧濃縮により余剰の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを除去することで、付加反応物(A-2)(無色透明、23℃における粘度:42Pa・s、Mw:4,370、SiH基の含有割合:0.00157モル/g)を得た。
【0091】
[合成例3]付加反応物(A-3)の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(北興化学工業株式会社製)122g(0.63モル)、5%Ptカーボン粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)0.10gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これを撹拌しながらMΦVi で表されるジシロキサン(北興化学工業株式会社製)47g(0.15モル)と、MΦVi 0.252Φ 0.30.45で表される分岐状オルガノポリシロキサン(ビニル基:0.2モル/100g)の75%キシレン溶液93g(ビニル基:0.135モル)の混合液を滴下した。滴下終了後、90~100℃の間で3時間撹拌した。撹拌終了後25℃に戻し、H-NMRスペクトル測定にてビニル基のピーク消失を確認した。活性炭を2.6g加え1時間撹拌後、Ptカーボン粉末、及び活性炭を濾別し、減圧濃縮により余剰の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを除去することで、付加反応物(A-3)(無色透明、23℃における粘度:140Pa・s、Mw:5,000、SiH基の含有割合:0.00145モル/g)を得た。
【0092】
[比較合成例1]付加反応物(A-4)の調製
攪拌装置、冷却管、滴下ロートおよび温度計を備えた1Lの4つ口フラスコに、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン(信越化学工業株式会社製)262.8g(1.35モル)、5%Ptカーボン粉末(エヌ・イーケムキャット株式会社製)0.12gを加え、オイルバスを用いて85℃に加熱した。これを撹拌しながらトリビニルフェニルシラン(信越化学工業株式会社製)を28.0g(0.15モル)滴下した。滴下終了後、90~100℃の間で5時間撹拌した。撹拌終了後25℃に戻し、H-NMRスペクトル測定にてビニル基のピーク消失を確認した。活性炭を2.9g加え1時間撹拌後、Ptカーボン粉末、及び活性炭を濾別し、減圧濃縮により余剰の1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンを除去することで、付加反応物(A-4)99.7g(無色透明、25℃における粘度:30Pa・s、Mw:1,500、SiH基の含有割合:0.0035モル/g、下記式で表される構成単位比を有するオリゴマーの混合物)を得た。
【0093】
【化13】
(式中、nは1以上の整数であり、破線は結合手を表す。)
【0094】
[実施例1~4、比較例1、2]
表1に示す組成比(数値は質量部を表す)で下記の各成分を混合し、組成物中のアルケニル基に対するSiH基のモル比([SiH基]/[アルケニル基])が0.9となるように付加硬化型シリコーン組成物を調製した。混合後の外観を目視にて確認した結果を表1に示す。
【0095】
(A)成分
(A-1)上記合成例1で得られた付加反応物
(A-2)上記合成例2で得られた付加反応物
(A-3)上記合成例3で得られた付加反応物
比較成分
(A-4)上記比較合成例1で得られた付加反応物
【0096】
(B)成分
(B-1)MΦVi 2Φ で表される直鎖状オルガノポリシロキサン
(B-2)MΦVi 0.252Φ 0.30.45で表される三次元網状オルガノポリシロキサン(ビニル基:0.2モル/100g)
【0097】
(C)成分
白金1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のポリシロキサン希釈品(白金含有量:1重量%)
【0098】
(D)成分
下記構造式で表される接着性向上剤
【化14】
【0099】
(E)成分
酸化防止剤:2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール
【0100】
(F)成分
付加反応制御剤:1-エチニルシクロヘキサノール
【0101】
【表1】
【0102】
[性能評価手法]
上記実施例および比較例で得られた付加硬化型シリコーン組成物について、下記手法に従い、その硬化物の性能を評価した。なお、比較例2については組成物が相溶せず、硬化物を得ることが出来なかった。
【0103】
(1)硬度
ガラス板で組んだ型の中に付加硬化型シリコーン組成物を流し込み、150℃で4時間硬化を行い、6mm厚の硬化物を得た。ASTM D 2240に準じて、各硬化物のShore D硬度を23℃で測定した結果を表2に示す。
【0104】
(2)光透過率(耐熱変色性)
上記硬度測定と同様に調製した2mm厚の硬化物について、作成直後(初期)および180℃のオーブン内に1,000時間置いた後における各硬化物の400nm光透過率を分光光度計を用いて測定した。測定結果を表2に示す。
【0105】
(3)靭性評価
上記硬度測定と同様に、2mm厚の硬化物を作成し、それぞれの硬化物を直径1mmの金属棒に沿って23℃で直角に折り曲げた時の状態を、〇(割れずに曲がる)、×(割れる)で評価した。
【0106】
【表2】
【0107】
表1および表2に示されるように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は(A)成分及び(B)成分の相溶性が良好なものであり、透明性、硬度、耐熱変色性、靱性に優れた硬化物を与えた。
【0108】
一方、本発明の(A)成分に代えてトリビニルフェニルシランと1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンとの付加反応物を用いた組成物は耐熱変色性に劣り(比較例1)、更に(B)成分として三次元網状オルガノポリシロキサンを含む場合の相溶性が不十分であった(比較例2)。
【0109】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
1…半導体装置、 2…銀メッキ基板、 3…パッケージ、 4…半導体チップ、
5…ボンディングワイヤ、 6…付加硬化型シリコーン組成物の硬化物。
図1