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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】演算増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20231121BHJP
   H03F 1/30 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H03F3/45 210
H03F1/30 220
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019210368
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021082986
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 義明
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-053747(JP,A)
【文献】特開平03-016406(JP,A)
【文献】特開2002-043871(JP,A)
【文献】特開2006-314040(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/039871(JP,A1)
【文献】実開平06-081127(JP,U)
【文献】米国特許第06963244(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00- 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電流を供給する基準電流源と、差動対回路と、バイポーラトランジスタで構成され出力側が前記差動対回路のテール電流源となるカレントミラー回路と、前記差動対回路の一対の入力ノードから同相入力電圧を検出し、検出した前記同相入力電圧の変動に応じて生じる前記バイポーラトランジスタのアーリー効果により変動する電流成分を前記基準電流から減算する第1減算回路と、電源電圧の変動に応じて生じる前記バイポーラトランジスタのアーリー効果により変動する電流成分を前記基準電流から減算する第2減算回路とを備え、前記基準電流を前記第1減算回路及び前記第2減算回路により減算した電流を、前記カレントミラー回路に入力することを特徴とする演算増幅器。
【請求項2】
基準電流を供給する基準電流源と、第1導電型のバイポーラトランジスタ対からなる差動対回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第1カレントミラー回路と、該第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第2カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第3カレントミラー回路と、該第3カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電のバイポーラトランジスタからなる第4カレントミラー回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第5カレントミラー回路と、該第5カレントミラー回路の出力電流から前記第4カレントミラー回路の出力電流を差し引いた電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第6カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力側と前記第3カレントミラー回路の入力側の間に挿入され前記差動対回路に入力する同相入力電圧により前記第2カレントミラー回路の出力側の電圧が前記第6カレントミラー回路の出力側の電圧と等しくなるよう制御する制御回路とを備え、
前記第6カレントミラー回路の出力電流を前記差動対回路のテール電流として供給する
ことを特徴とする演算増幅器。
【請求項3】
請求項2に記載の演算増幅器において、
前記第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第7カレントミラー回路を備え、該第7カレントミラー回路の出力電流が前記第3カレントミラー回路の入力側に供給されることを特徴とする演算増幅器。
【請求項4】
基準電流を供給する基準電流源と、第1導電型のバイポーラトランジスタ対からなる差動対回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第1カレントミラー回路と、該第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第2カレントミラー回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第5カレントミラー回路と、該第5カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第6カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力側と前記第5カレントミラー回路の出力側の間に挿入され前記差動対回路に入力する同相入力電圧により前記第2カレントミラー回路の出力側の電圧が前記第6カレントミラー回路の出力側の電圧と等しくなるよう制御する制御回路と、前記第1カレントミラー回路の出力側にエミッタが接続され前記第2カレントミラー回路の入力側にコレクタが接続された第2導電型の第17トランジスタと、前記第5カレントミラー回路の出力側にエミッタが接続され前記第6カレントミラー回路の入力側にコレクタが接続された第2導電型の第18トランジスタと、前記第17トランジスタ及び前記第18トランジスタのベースに固定バイアスを与えるバイアス電源とを備え、該固定バイアスは前記差動対回路の同相入力電圧の範囲に対し前記制御回路と前記第5カレントミラー回路と前記第17トランジスタ及び前記第18トランジスタが動作する電圧とし、
前記第6カレントミラー回路の出力電流を前記差動対回路のテール電流として供給することを特徴とする演算増幅器。
【請求項5】
請求項4に記載の演算増幅器において、
前記第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を前記第5カレントミラー回路の出力側に出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第7カレントミラー回路を備えることを特徴とする演算増幅器。
【請求項6】
請求項3又は5に記載の演算増幅器において、
前記第5カレントミラー回路および前記第7カレントミラー回路のミラー比は、電源電圧の変動に応じて生じる前記基準電流の変動に対応して設定されることを特徴とする演算増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイポーラトランジスタを使用した演算増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
<第1従来例>
図13に第1従来例の演算増幅器の回路を示す(例えば、非特許文献1の図4.29、特許文献1の第1図参照)。1はPNPトランジスタQ12,Q13からなる差動対回路、Q11はその差動対回路1のテール電流源としてのPNPトランジスタである。このトランジスタQ11には、電流源3の基準電流IREFをNPNトランジスタQ1,Q2からなるカレントミラー回路でミラーした電流を、さらにPNPトランジスタQ10,Q11からなるカレントミラー回路でミラーしたテール電流It1が流れる。トランジスタQ12,Q13のコレクタに流れる電流は、負荷抵抗R1,R2によって電流/電圧変換されて、差動増幅器7に入力する。
【0003】
ところで、バイポーラトランジスタのコレクタ電流は、プロセスにより決定されるアーリー効果により変動する。つまり、コレクタ・エミッタ間電圧の変動によってコレクタ電流が変動する。図13の演算増幅器では、テール電流It1が流れるトランジスタQ11は、電源電圧VCCと同相入力電圧の変動が、コレクタ・エミッタ間電圧の変動に直結するため、テール電流It1は電源電圧VCCや同相入力電圧の影響を受けてしまう。
【0004】
テール電流It1が増大すると、差動対回路1のトランジスタQ12,Q13のトランスコンダクタンスが増大することで、周波数に対する位相特性がほぼ変化せずに初段の利得が上昇するため、演算増幅器の安定性が悪化してしまう。
【0005】
<第2従来例>
そこで、電源電圧VCCと同相入力電圧の変動に対するテール電流源の影響を低減するために、出力抵抗を上げる公知の手法として、図14に示すようなトランジスタQ10,Q11にPNPトランジスタQ21,Q22を追加したカスコードカレントミラー回路、トランジスタQ1,Q2にNPNトランジスタQ23,Q24を追加したカスコードカレントミラー回路を採用した第2従来例の演算増幅器がある(例えば、非特許文献2の図4.8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術 上」、342頁、P.R.グレイ他3名、培風館、2005年11月30日発行
【文献】「システムLSIのためのアナログ集積回路設計技術 上」、305頁、P.R.グレイ他3名、培風館、2005年11月30日発行
【文献】特開昭58-075910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、図14の第2従来例の構成では、差動対回路1のトランジスタQ12,Q13のエミッタ電圧が、図13の第1従来例の場合よりもさらに電源電圧VCCから1VBE分だけ低下してしまうため、電源電圧VCCが低い場合の動作が難しくなる上、そのトランジスタQ12,Q13のエミッタ側の入力範囲が狭まってしまう。
【0008】
さらに、公知の技術として差動対トランジスタQ12,Q13のエミッタに抵抗を直列に接続して出力抵抗を上げる構成があるが、その場合も抵抗の電圧降下分だけ入力範囲が狭まる上、アーリー効果による影響を完全に打ち消すことはできない。
【0009】
本発明は上記問題点を解消し、低電圧からの動作が可能で且つアーリー効果の影響を打ち消すことできる演算増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明は、基準電流を供給する基準電流源と、差動対回路と、バイポーラトランジスタで構成され出力側が前記差動対回路のテール電流源となるカレントミラー回路と、前記差動対回路の一対の入力ノードから同相入力電圧を検出し、検出した前記同相入力電圧の変動に応じて生じる前記バイポーラトランジスタのアーリー効果により変動する電流成分を前記基準電流から減算する第1減算回路と、電源電圧の変動に応じて生じる前記バイポーラトランジスタのアーリー効果により変動する電流成分を前記基準電流から減算する第2減算回路とを備え、前記基準電流を前記第1減算回路及び前記第2減算回路により減算した電流を、前記カレントミラー回路に入力することを特徴とする。
【0011】
請求項2にかかる発明は、基準電流を供給する基準電流源と、第1導電型のバイポーラトランジスタ対からなる差動対回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第1カレントミラー回路と、該第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第2カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第3カレントミラー回路と、該第3カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電のバイポーラトランジスタからなる第4カレントミラー回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第5カレントミラー回路と、該第5カレントミラー回路の出力電流から前記第4カレントミラー回路の出力電流を差し引いた電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第6カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力側と前記第3カレントミラー回路の入力側の間に挿入され前記差動対回路に入力する同相入力電圧により前記第2カレントミラー回路の出力側の電圧が前記第6カレントミラー回路の出力側の電圧と等しくなるよう制御する制御回路とを備え、前記第6カレントミラー回路の出力電流を前記差動対回路のテール電流として供給することを特徴とする。
【0012】
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載の演算増幅器において、前記第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第7カレントミラー回路を備え、該第7カレントミラー回路の出力電流が前記第3カレントミラー回路の入力側に供給されることを特徴とする。
【0013】
請求項4にかかる発明は、基準電流を供給する基準電流源と、第1導電型のバイポーラトランジスタ対からなる差動対回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第1カレントミラー回路と、該第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第2カレントミラー回路と、前記基準電流をミラーした電流を出力する第2導電型のバイポーラトランジスタからなる第5カレントミラー回路と、該第5カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第6カレントミラー回路と、前記第2カレントミラー回路の出力側と前記第5カレントミラー回路の出力側の間に挿入され前記差動対回路に入力する同相入力電圧により前記第2カレントミラー回路の出力側の電圧が前記第6カレントミラー回路の出力側の電圧と等しくなるよう制御する制御回路と、前記第1カレントミラー回路の出力側にエミッタが接続され前記第2カレントミラー回路の入力側にコレクタが接続された第2導電型の第17トランジスタと、前記第5カレントミラー回路の出力側にエミッタが接続され前記第6カレントミラー回路の入力側にコレクタが接続された第2導電型の第18トランジスタと、前記第17トランジスタ及び前記第18トランジスタのベースに固定バイアスを与えるバイアス電源とを備え、該固定バイアスは前記差動対回路の同相入力電圧の範囲に対し前記制御回路と前記第5カレントミラー回路と前記第17トランジスタ及び前記第18トランジスタが動作する電圧とし、前記第6カレントミラー回路の出力電流を前記差動対回路のテール電流として供給することを特徴とする。
【0014】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の演算増幅器において、前記第1カレントミラー回路の出力電流をミラーした電流を前記第5カレントミラー回路の出力側に出力する第1導電型のバイポーラトランジスタからなる第7カレントミラー回路を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項6にかかる発明は、請求項3又は5に記載の演算増幅器において、前記第5カレントミラー回路および前記第7カレントミラー回路のミラー比は、電源電圧の変動に応じて生じる前記基準電流の変動に対応して設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電源電圧の変動によるアーリー効果の影響及び差動対回路の同相入力電圧によるアーリー効果の影響を検出して、差動対回路のテール電流を調整するので、電源電圧や同相入力電圧の変動によるテール電流源のアーリー効果による影響を打ち消すことができる。また、テール電流源はトランジスタ1つで構成できるため、低電圧の電源で動作可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の演算増幅器の原理説明用の回路図である。
図2】本発明の第1実施例の演算増幅器の原理説明用の回路図である。
図3】本発明の第1実施例の演算増幅器の具体例の回路図である。
図4】本発明の第1実施例の演算増幅器の基準電流とテール電流の特性図である。
図5】本発明の第2実施例の演算増幅器の原理説明用の回路図である。
図6】本発明の第2実施例の演算増幅器の具体例の回路図である。
図7】本発明の第2実施例の演算増幅器の基準電流とテール電流の特性図である。
図8】本発明の第3実施例の演算増幅器の原理説明用の回路図である。
図9】本発明の第3実施例の演算増幅器の具体例の回路図である。
図10】本発明の第3実施例の演算増幅器の基準電流とテール電流の特性図である。
図11】本発明の第4実施例の演算増幅器の原理説明用の回路図である。
図12】本発明の第4実施例の演算増幅器の具体例の回路図である。
図13】第1従来例の演算増幅器の回路図である。
図14】第2従来例の演算増幅器の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<原理説明>
図1に本発明の演算増幅器の原理説明図を示す。1はPNPトランジスタQ12,Q13のエミッタを共通接続した差動対回路、2は基準電流源3から供給される基準電流IREFに基づき差動対回路1にテール電流を供給するPNPトランジスタQ10,Q11からなるカレントミラー回路、4は差動対回路1の同相入力電圧を検出してその検出電圧に応じてトランジスタのアーリー効果により変動する電流成分を基準電流IREFから減算する第1減算回路、5は電源電圧VCCの変動に応じたアーリー効果により変動する電流成分を基準電流IREFから減算する第2減算回路である。トランジスタQ10には、基準電流IREFから第1減算回路4と第2減算回路5の電流を減算された電流が入力する。そして、トランジスタQ11には、トランジスタQ10の電流をミラーした電流とトランジスタQ11自体でアーリー効果の影響を受けた電流が、テール電流として流れる。
【0019】
テール電流を供給するトランジスタQ11のコレクタ電圧は、アーリー効果の影響を受けるが、基準電流IREFは第1減算回路4と第2減算回路5によりアーリー効果の影響をすでに受けているので、これをトランジスタQ11にミラーすることにより、トランジスタQ11におけるアーリー効果の影響をキャンセルすることができる。つまり、トランジスタQ11に流れるテール電流は、電源電圧の変動及び同相入力電圧の変動の影響を受けない。
【0020】
<第1実施例>
図2に第1実施例の原理説明用の回路を示す。NPNトランジスタQ1,Q2と、NPNトランジスタQ1,Q3と、PNPトランジスタQ4,Q5と、NPNトランジスタQ6,Q7と、PNPトランジスタQ8,Q9は、それぞれカレントミラー回路を構成している。6は差動対回路1の同相入力電圧を検出してトランジスタQ5のコレクタ電圧とトランジスタQ11のコレクタ電圧を等しくするための制御回路である。
【0021】
請求項との関係では、第1カレントミラー回路はトランジスタQ1,Q2で構成され、第2カレントミラー回路はトランジスタQ4,Q5で構成され、第3カレントミラー回路はトランジスタQ6,Q7で構成され、第4カレントミラー回路はトランジスタQ8,Q9で構成され、第5カレントミラー回路はトランジスタQ1,Q3で構成され、第6カレントミラー回路はトランジスタQ10,Q11で構成されている。
【0022】
トランジスタQ1のコレクタ電流ICQ1は基準電流IREFとなるので、そのコレクタ電流ICQ1は、
となる。ISNはNPNトランジスタの逆方向飽和電流、Vtは熱電圧、VBEQ1はトランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧である。
【0023】
トランジスタQ1,Q2のサイズ比をQ1:Q2=1:1とすると、トランジスタQ2のコレクタ電流ICQ2は、基準電流IREFを用いて、
となる。VBEQ4はトランジスタQ4のベース・エミッタ間電圧、VANはNPNトランジスタのアーリー電圧である。
【0024】
次に、トランジスタQ4,Q5のサイズ比をQ4:Q5=1:1とし、トランジスタQ5のコレクタ・エミッタ間電圧をVとすると、トランジスタQ5のコレクタ電流ICQ5は、
となる。VAPはPNPトランジスタのアーリー電圧である。
【0025】
ここで、通常、VAN,VAP>>1であるので、
という近似を適用すると、式(3)は、
となる。
【0026】
次に、トランジスタQ6,Q7のサイズ比をQ6:Q7=1:1とすると、トランジスタQ7のコレクタ電流ICQ7は、式(5)と同様の近似を用いて、
となる。ただし、式(6)の右辺は各PNPトランジスタのベース・エミッタ間電圧VBEはほぼ等しいとして、VBEQP=VBEQ4 ≒VBEQ8としている。
【0027】
同様にトランジスタQ8,Q9のサイズ比をQ8:Q9=1:1とすると、トランジスタQ10のダイオード接続により、トランジスタQ9のコレクタ電圧はトランジスタQ8のコレクタ電圧と等しくなるため、トランジスタQ9のコレクタ電流ICQ9は、
となる。
【0028】
一方、トランジスタQ3のコレクタ電流ICQ3は、トランジスタQ1,Q3のサイズ比をQ1:Q3=1:2とすると、
となる。
【0029】
そして、トランジスタQ10のコレクタ電流ICQ10は、コレクタ電流ICQ3からICQ9を減算した値となるので、
となる。
【0030】
従って、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11は、トランジスタQ10,Q11のサイズ比をQ10:Q11=1:1とし、トランジスタQ11のコレクタ・エミッタ間電圧をV11とすると、
となる。
【0031】
ここで制御回路6の効果により、トランジスタQ5,Q11のコレクタ電圧が等しくなり、V5=V11となるので、
となり、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11、つまり差動対回路1のテール電流It3は、電源電圧VCCと同相入力電圧の変動の影響を受けなくなる。
【0032】
図3図2の演算増幅器を具体化した回路であり、制御回路6はコレクタ同士、エミッタ同士を共通接続したPNPトランジスタQ15,Q16により構成されている。また、トランジスタQ12,Q13のコレクタに現れる電圧は、負荷抵抗R1,R2によって電流/電圧変換されて、差動増幅器7に入力している。
【0033】
図4に第1実施例の演算増幅器の基準電流IREFとテール電流のシミュレーションにより得られた特性を示す。(a)は差動対回路1の同相入力電圧が変化したときの同相入力電圧依存特性、(b)は電源電圧VCCが変化したときの電源電圧依存特性である。It1は図13の第1従来例の演算増幅器の差動対回路1のテール電流、It2は図14の第2従来例の演算増幅器の差動対回路1のテール電流、It3は第1実施例の演算増幅器の差動対回路1のテール電流である。
【0034】
図4(a)においては、図14で説明した第2従来例の演算増幅器のテール電流It2では、図13で説明した第1従来例の演算増幅器のテール電流It1に比べてテール電流の同相入力電圧依存性は低下しているが、同相入力電圧を上げると電流が流れなくなってしまう。しかし、第1実施例の演算増幅器のテール電流It3では、図14の第2従来例の演算増幅器のテール電流It2と同等の低下した同相入力電圧依存性を有しながら、図13の第1従来例の演算増幅器のテール電流It1と同等の広い同相入力範囲を持っていることが確認できる。
【0035】
また、図4(b)においては、図14の第2従来例の演算増幅器のテール電流It2では、図13で説明した第1従来例の演算増幅器のテール電流It1に比べてテール電流の電源電圧依存性は低下するが、低電源電圧からの動作が不可能となっている。しかし、第1実施例の演算増幅器のテール電流It3では、図14の第2従来例の演算増幅器のテール電流It2と同等の低い電源電圧依存性を有しながら、図13の第1従来例の演算増幅器のテール電流It1と同等の低電源電圧動作特性を持っていることが確認できる。
【0036】
<第2実施例>
図2図3の第1実施例の演算増幅器では、上記のように基準電流IREFが一定の場合、電源電圧VCCの変動のテール電流への影響を打ち消すことができるが、基準電流IREFが電源電圧VCCに応じて変動する場合、その変動のテール電流への影響を打ち消すことができない。
【0037】
図5図6の第2実施例の演算増幅器はこの点を改善したものであり、図2図3で説明した第1実施例の演算増幅器に、トランジスタQ4とカレントミラー接続されるPNPトランジスタQ14を追加したものである。Q4,Q14のサイズ比はQ4:Q14=1:Nである。請求項との関係では、第7カレントミラー回路がトランジスタQ4,Q14で構成されている。
【0038】
図5図6の第2実施例の演算増幅器において、トランジスタQ5のコレクタ電流ICQ5までは図2図3の第1実施例の演算増幅器と同様となるので、そのコレクタ電流ICQ5は式(5)となる。
【0039】
一方、トランジスタQ14のコレクタ電流ICQ14は、式(3)~(5)と同様に考え、且つトランジスタQ4,Q14のサイズ比がQ4:Q14=1:Nであることから、
となる。トランジスタQ6のコレクタ電流ICQ6は、ICQ5とICQ14の合計となるので、
となる。よって、式(6)~(7)と同様に考えて計算すると、コレクタ電流ICQ9は、
となる。
【0040】
次に、トランジスタQ1,Q3のサイズ比をQ1:Q3=1:(2+N)とすると、トランジスタQ3のコレクタ電流ICQ3は、
となる。よって、トランジスタQ10のコレクタ電流ICQ10は、
となる。
【0041】
従って、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11は、トランジスタQ10,Q11のサイズ比がQ10:Q11=1:1であるので、V=V11より、
となる。
【0042】
ここで、以下の式(18)のように、基準電流IREFが電源電圧VCCの増加に比例してΔIrefだけ増加する特性を持つとする(IREF0は定数)。
【0043】
近似を用いて
とすると、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11は、
となる。
【0044】
従って、
となるようにNを設定すれば、電源電圧VCCの変動の影響を打ち消すことができる。つまり、Nの値は電源電圧VCCの変動に応じて生じる基準電流IREFの変動分ΔIrefに対応して設定すれば良い。VCCの変動とΔIrefは一定の関係にあるので、これを求めることにより、Nの値を所定の値に設定することができる。
【0045】
図7に第2実施例の演算増幅器の基準電流IREFとテール電流のシミュレーションにより得られた特性を示す。ここでは、基準電流IREFに電源電圧VCCの変動に対して正の変動特性を有する電流源を用いて、電源電圧VCCとテール電流の関係を求めた。It2は図14の第2従来例の演算増幅器のテール電流、It3は図2図3の第1実施例の演算増幅器のテール電流、It4は図5図6の第2実施例の演算増幅器のテール電流である。図7に示すように、図14の第2従来例の演算増幅器のテール電流It2や、図2図3の第1実施例の演算増幅器のテール電流It3は、基準電流IREFに依存して電源電圧VCCの変動に対して正の電流特性となる。しかし、図5図6の第2実施例の演算増幅器のテール電流It4は、基準電流IREFが電源電圧VCCの増加に応じて増加する特性を有していても、その影響を低減した電流特性となることが確認できる。
【0046】
<第3実施例>
図2図3で説明した第1実施例の演算増幅器では、同相入力電圧が0V付近でテール電流It3が増大する傾向があった。そこで、第3実施例の演算増幅器では、図8図9に示すように、図2図3におけるカレントミラー回路を構成するトランジスタQ6,Q7,Q8,Q9を削除する。そして、トランジスタQ3のコレクタを制御回路6に接続し、トランジスタQ2,Q4の間にNPNトランジスタQ17を挿入し、トランジスタQ3,Q10の間にNPNトランジスタQ18を挿入し、それらのトランジスタQ17,Q18のベースと電源電圧VEEの間に固定のバイアス電圧VBIASを印加している。本実施例では、差動対回路1と制御回路6はPNPトランジスタで構成しているため、演算増幅器の同相入力電圧の範囲はVEE以上で入力可能となる。同相入力電圧がVEEまで変動しても制御回路6とトランジスタQ3とトランジスタQ17,Q18が正常に動作するようにバイアス電圧VBIASを設定する必要がある。
【0047】
請求項との関係では、第1のカレントミラー回路はトランジスタQ1,Q2で構成され、第2カレントミラー回路はトランジスタQ4,Q5で構成され、第5カレントミラー回路はトランジスタQ1,Q3で構成され、第6カレントミラー回路はトランジスタQ10,Q11で構成されている。第17トランジスタはQ17、第18トランジスタはQ18である。
【0048】
トランジスタQ1のコレクタ電流ICQ1は前記した式(1)に示すとおりである。トランジスタQ2のコレクタ電圧は、トランジスタQ17により一定値となるためにアーリー効果が抑えられるので、Q1,Q2のサイズ比をQ1:Q2=1:1とすると、トランジスタQ2のコレクタ電流ICQ2は基準電流IREFと等しく、
となる。
【0049】
次に、トランジスタQ4,Q5のサイズ比はQ4:Q5=1:1であり、トランジスタQ5のコレクタ・エミッタ間電圧をV5とすると、トランジスタQ5のコレクタ電流ICQ5は式(3)と異なって、
となる。
【0050】
一方、トランジスタQ3については、トランジスタQ18によりアーリー効果が抑えられるため、そのコレクタ電流ICQ3は、トランジスタQ1,Q3のサイズ比をQ1:Q3=1:2とすると、
となる。
【0051】
よって、トランジスタQ18のコレクタ電流ICQ18は、ICQ3からICQ5を差し引いた値となり、トランジスタQ10にはトランジスタQ18の電流がそのまま供給されるので、トランジスタQ10のコレクタ電流ICQ10は、
となる。
【0052】
従って、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11は、トランジスタQ10,Q11のサイズ比がQ10:Q11=1:1であるので、トランジスタQ11のコレクタ・エミッタ間電圧をV11とすると、
と、式(10)と同じになる。
【0053】
ここで制御回路6の効果により、トランジスタQ5,Q11のコレクタ電圧が等しくなるため、V5=V11となるので、
と式(11)と同じになり、トランジスタQ11のコレクタ電流ICQ11、つまり差動対回路1のテール電流は、電源電圧VCCと同相入力電圧の変動の影響を受けなくなる。
【0054】
図10に第3実施例の演算増幅器の基準電流IREFとテール電流のシミュレーションにより得られた特性を示す。(a)は差動対回路1の同相入力電圧が変化したときの同相入力電圧依存特性、(b)は(a)の横軸の同相入力電圧の0V付近を拡大したグラフである。It3は第1実施例の演算増幅器のテール電流、It5は本実施例の演算増幅器のテール電流である。このように、第3実施例の演算増幅器では、0Vまで同相入力電圧依存性が低下したテール電流を得ることが確認できる。また、(c)は電源電圧VCCが変化したときの電源電圧依存特性である。このように、第3実施例の演算増幅器でも第1実施例の演算増幅器と同等の低電源電圧動作特性を持つことが確認できる。
【0055】
<第4実施例>
図11図12に第4実施例の演算増幅器の回路を示す。この第4実施例では、図8図9で説明した第3実施例において、図5図6で説明した第2実施例と同様に、トランジスタQ14を追加することで、第2実施例と同様の効果を得るようにしたものである。トランジスタQ4,Q14のサイズ比をQ4:Q14=1:Nとする。請求項との関係では、第7カレントミラー回路がトランジスタQ4,Q14で構成されている。
【0056】
トランジスタQ5のコレクタ電流ICQ5は、図9と同様となるので、そのコレクタ電流ICQ5は式(23)となる。一方、トランジスタQ14のコレクタ電流ICQ14は、トランジスタQ4,Q14のサイズ比がQ4:Q14=1:Nであることから、
となる。
【0057】
次に、トランジスタQ1,Q3のサイズ比をQ1:Q3=1:(2+N)とすると、トランジスタQ3のコレクタ電流ICQ3は、
となる。
【0058】
よって、トランジスタQ18のコレクタ電流ICQ18は、ICQ3からICQ5及びICQ14を差し引いた値となり、トランジスタQ10にはトランジスタQ18の電流がそのまま供給されるので、トランジスタQ10のコレクタ電流ICQ10は、
となる。
【0059】
以降、第2実施例と同様に計算すると、
となる。
【0060】
従って、
となるようにNを設定すれば、基準電流源3の基準電流IREFが有する電源電圧の影響を打ち消すことができる。
【0061】
なお、本実施例では第1、第2、第3、第4、第6カレントミラー回路のミラー比を1:1とし、第5カレントミラー回路のミラー比を1:2または1:2+Nとし、第7カレントミラー回路のミラー比を1:Nとして説明したが、各カレントミラー回路のミラー比は、テール電流でアーリー効果の影響をキャンセルするように設定すればよい。例えば、第1カレントミラー回路のミラー比を0.5倍とし、第4カレントミラー回路のミラー比を2倍としても、同様にアーリー効果の影響を受けないテール電流を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:差動対回路
2:カレントミラー回路
3:基準電流源
4:第1減算回路
5:第2減算回路
6:制御回路
7:差動増幅器
Q1,Q2:第1カレントミラー回路を構成するNPNトランジスタ
Q4,Q5:第2カレントミラー回路を構成するPNPトランジスタ
Q6,Q7:第3カレントミラー回路を構成するNPNトランジスタ
Q8,Q9:第4カレントミラー回路を構成するPNPトランジスタ
Q1,Q3:第5カレントミラー回路を構成するNPNトランジスタ
Q10,Q11:第6カレントミラー回路を構成するPNPトランジスタ
Q4,Q14:第7カレントミラー回路を構成するPNPトランジスタ

図1
図2
図3
図4
図5
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図8
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図10
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