(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】容器及び容器の組立方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/20 20060101AFI20231121BHJP
B65D 25/10 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
B65D85/20 Z
B65D25/10
(21)【出願番号】P 2019236298
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高橋 侃佑
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-047550(JP,A)
【文献】実開昭51-021691(JP,U)
【文献】実開昭48-099382(JP,U)
【文献】登録実用新案第3080895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/20-85/28
B65D 25/10
A47G 21/00-21/12
B43K 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重心が長手方向の中央より一端部側に位置
し、前記重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心している複数の長尺物を収容
した容器であって、
一方が開口した有底筒状の容器本体と、
前記容器本体に収容された複数の前記長尺物と、
前記容器本体の前記開口を覆う蓋と、を備え、
前記容器本体の内底面は、複数の前記長尺物の他端部が当接する凹状曲面で構成されている容器。
【請求項2】
前記長尺物の前記重心は、前記蓋及び前記容器本体で囲まれた内部空間の中心に対して前記容器本体の側壁側に位置している請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記長尺物の前記他端部は、前記長尺物が前記容器本体の内側面に当接したとき、先端が前記内底面から離間している請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記長尺物の前記他端部は、前記内底面に当接する円弧状の当接面を有しており、
前記容器本体の前記内底面は、前記当接面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する断面円弧状で形成されている請求項1から3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
重心が長手方向の中央より一端部側に位置
し、前記重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心している複数の長尺物を収容した容器の組立方法であって、
前記容器は、重力方向と反対側が開口され、前記重力方向側の内底面が複数の前記長尺物の他端部が当接可能な凹状曲面で構成されている有底筒状の容器本体と、
前記容器本体に収容された複数の前記長尺物と、前記容器本体の前記開口を覆う蓋と、を備えており、
複数の前記長尺物の前記他端部を前記重力方向に向けて束にした長尺物群を、前記他端部が前記内底面に当接するように前記容器本体の内部に入れ、前記蓋を前記容器本体に装着する容器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の長尺物を収容する容器及び容器の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間清掃具等で構成される複数の長尺物を収容する容器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の容器は、台紙に透明樹脂製のブリスターシートが重ねられた吊り下げ式のブリスター容器である。このブリスターシートは、吊り下げた状態の正面から見てブラシ部が左下となる姿勢で複数(文献では15本)の歯間清掃具(文献では歯間ブラシ)が上下方向に並列して収容されたブリスタードームで構成されている。ブリスターシートには、吊り下げた状態の正面から見て右側に蓋部が形成されており、使用者は、蓋部を開操作し、歯間清掃具のハンドルの後端を摘まんで右斜め上向きに抜き出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の容器は、ブリスターシートの形状が複雑であり、且つ部品点数も多いため、製造コストが増大してしまう。また、複数の歯間清掃具が密に並列しているため、ハンドルが掴みにくく、歯間清掃具が取り出しにくいものであった。
【0006】
そこで、長尺物を取り出しやすい簡便な構成の容器及び容器の組立方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る容器は、重心が長手方向の中央より一端部側に位置し、前記重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心している複数の長尺物を収容した容器であって、一方が開口した有底筒状の容器本体と、前記容器本体に収容された複数の前記長尺物と、前記容器本体の前記開口を覆う蓋と、を備え、前記容器本体の内底面は、複数の前記長尺物の他端部が当接する凹状曲面で構成されていることを特徴とする。
【0008】
本容器では、容器本体の内底面を凹状曲面で構成し、重心が長手方向の中央より一端部側に位置し、重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心している複数の長尺物の他端部を該凹状曲面に当接させている。この容器本体に収容される長尺物は、重心が長手方向の中央より一端部側に位置し、前記重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心しているので、中央より他端部側に比べて中央より一端部側が重たく、容器本体の開口側の内側面に凭れかかるように傾倒する。このとき、長尺物の他端部を容器本体の底面である凹状曲面に当接させているため、長尺物が傾倒しながら他端部が凹状曲面の中央部分に向かって滑り移動する。
【0009】
このように、容器本体に収容される複数の長尺物の夫々は、一端部側の部位が容器本体の開口側の内側面に凭れかかり、他端部が凹状曲面の中央部分に向かって滑り移動する。その結果、夫々の長尺物の他端部を支点として、夫々の長尺物の一端部側の部位が不規則に開口側の内側面に凭れかかる。このため、蓋を外した容器本体の開口側には、長尺物の一端部が分散した状態で配置されることとなり、長尺物の一端部を摘まんで取り出しやすい。
【0010】
しかも、容器本体の内底面を凹状曲面に加工するだけで良いので、容器の構成が極めて簡便であり、加工コストを抑制することができる。このように、長尺物を取り出しやすい簡便な構成の容器を提供できた。
【0011】
他の構成として、前記容器本体に前記長尺物を収容したとき、前記長尺物の前記重心は、前記蓋及び前記容器本体で囲まれた内部空間の中心に対して前記容器本体の側壁側に位置していることが好ましい。
【0012】
このように、容器本体に収容された長尺物の重心位置が内部空間の中心よりも容器本体の側壁側であれば、長尺物が容器本体の側壁側に傾倒している。つまり、容器本体の内底面が凹状曲面であるため、長尺物を容器本体に入れたときに他端部が凹状曲面の中心に集まって、一端部が遠心力により拡がることとなる。その結果、長尺物の一端部側の部位が容器本体の内側面に当接し、他端部が容器本体の内底面に当接して安定的に支持される。また、容器本体を揺さぶったときには、偏心した重心により長尺物の一端部が四方八方に分散し、長尺物の一端部を摘まんで取り出しやすくなる。
【0013】
他の構成として、前記長尺物の前記他端部は、前記長尺物が前記容器本体の内側面に当接したとき、先端が前記内底面から離間していることが好ましい。
【0014】
このように、長尺物が容器本体の内側面に当接したときに長尺物の先端を内底面から離間させれば、長尺物の先端が内底面に当接して破損するといった不都合を防止できる。
【0015】
他の構成として、前記長尺物の前記他端部は、前記内底面に当接する円弧状の当接面を有しており、前記容器本体の前記内底面は、前記当接面の曲率半径よりも大きい曲率半径を有する断面円弧状で形成されていることが好ましい。
【0016】
このように、容器本体の内底面の曲率半径を長尺物の当接面の曲率半径よりも大きく構成すれば、長尺物の先端が内底面から常に離間した状態を維持できる。その結果、容器本体を揺さぶって長尺物の他端部を内底面に沿って滑り移動させたとしても、長尺物の破損を確実に防止することができる。しかも、容器本体の内底面を断面円弧状に構成し、長尺物の他端部も円弧状に構成しているため、長尺物の他端部を内底面に沿って円滑に滑り移動させることができる。
【0017】
本発明の一態様に係る容器の組立方法は、重心が長手方向の中央より一端部側に位置し、前記重心が長手方向に直交する平面における最両端部の中央に対して一方側に偏心している複数の長尺物を収容した容器の組立方法であって、前記容器は、重力方向と反対側が開口され、前記重力方向側の内底面が複数の前記長尺物の他端部が当接可能な凹状曲面で構成されている有底筒状の容器本体と、前記容器本体に収容された複数の前記長尺物と、前記容器本体の前記開口を覆う蓋と、を備えており、複数の前記長尺物の前記他端部を前記重力方向に向けて束にした長尺物群を、前記他端部が前記内底面に当接するように前記容器本体の内部に入れ、前記蓋を前記容器本体に装着することを特徴としている。
【0018】
本組立方法のように、複数の長尺物の他端部を重力方向に向けて束にした長尺物群を、長尺物の他端部が容器本体の内底面に当接するように容器本体の内部に入れれば、複数の長尺物を容器本体に速やかに収容することができる。また、容器本体に収容される複数の長尺物の夫々は、一端部側の部位が容器本体の開口側の内側面に凭れかかり、他端部が凹状曲面の中央部分に向かって滑り移動する。その結果、夫々の長尺物の他端部を支点として、夫々の長尺物の一端部側の部位が不規則に開口側の内側面に凭れかかる。このため、蓋を取り外したとき、容器本体の開口側には長尺物の一端部が分散した状態で配置されており、長尺物の一端部を摘まんで取り出しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】歯間清掃具が収容された容器を示す斜視図である。
【
図3】容器の底面と歯間清掃具の他端部との当接状態を示す断面図である。
【
図6】別実施形態に係る歯間清掃具が収容された容器を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る容器及び容器の組立方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、複数の長尺物を収容する容器の一例として、歯間清掃具を収容する容器として説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0021】
図1には、本実施形態に係る容器Cが示されている。容器Cは、複数(図示では5本だが通常20本)の長尺状の歯間清掃具Dを収容することができる。容器Cは、樹脂製の容器本体1と樹脂製の蓋2とを備えており、全体的に内部が視認できるように透明又は半透明で構成されている。
【0022】
容器本体1は、有底円筒状(有底筒状の一例)で構成されており、一方が開口した開口部11と、他方が閉塞された底部12と、開口部11と底部12とを接続する側壁13とを有している。以下、容器本体1のうち、開口部11を上、底部12を下として説明する。本実施形態における容器Cは、底部12を重力方向(下方向)に向けて使用される。
【0023】
開口部11には、蓋2を係止する円環状の環状突起11aが形成されており、この環状突起11aに包囲される内側空間が開口となっている。
【0024】
底部12は、載置面が先端部に形成された円環状の環状脚部12aが形成されており、この環状脚部12aに包囲される空間上側に、底面視において凸状曲面の外底面12bを有している。また、底部12は、外底面12bの反対側に内底面12cを有しており、この内底面12cは、曲率中心が上側(蓋側)にある球面(凹状曲面の一例、正確には球面の一部を切り取った形状)で構成されている。球面とは、球面上の全ての点が1つの定点(曲率中心)から同一の距離にある曲面のことである。つまり、本実施形態における内底面12cは、曲率半径が一定の曲面で構成されている。内底面12cの曲率半径は、容器本体1の内部における円筒半径rよりも大きく、好ましくは円筒半径rの1.05倍以上3.0倍以下であり、より好ましくは円筒半径rの1.2倍以上2.3倍以下であり、更に好ましくは円筒半径rの1.4倍以上1.8倍以下である。
【0025】
側壁13は、内底面12cの外周から開口部11に向けて立設した円筒壁で構成されている。側壁13の内側面13aは、内底面12cの外周と連なっており、側壁13の外側面13bは、環状脚部12aの外面と面一となっている。
【0026】
蓋2は、有底円筒状で構成されており、一方が開口した蓋開口部21と、他方が閉塞された蓋底部22と、蓋開口部21と蓋底部22とを接続する蓋側壁23とを有している。蓋2は、蓋開口部21が容器本体1の開口部11に係合することにより、容器本体1を密閉状態で閉塞する。なお、蓋2は、容器本体1の開口を覆っていれば良く、蓋側壁23の一部に貫通孔が形成されている形状、又は蓋底部22や蓋側壁23に開閉口が設けられている形状等で構成されていても良い。
【0027】
図1及び
図3に示すように、蓋開口部21は、蓋側壁23から外側に円環状に膨出した膨出円環部21aを有しており、膨出円環部21aと蓋側壁23の内面との境界部分に段差部21bが形成されている。膨出円環部21aの内周面には、容器本体1の開口部11に形成された環状突起11aと係合する係合突起21a1が、周方向に沿った横長棒状に突出している。蓋2を容器本体1に装着したとき、係合突起21a1が環状突起11aを乗り越えた後、環状突起11aが段差部21bと係合突起21a1との間に挟まれて、蓋2が容器本体1に固定される。
【0028】
蓋底部22の外面には、不図示の台紙に設けられたワイヤー等の吊り下げ部材が挿入される孔部22a1を有する吊り下げ耳部22aが突出形成されている。蓋側壁23は、蓋底部22の外周から蓋開口部21に向けて立設した円筒壁で構成されている。
【0029】
図2には、容器Cに収容される長尺物の一例としての歯間清掃具Dが示されている。以下、紙面に示される歯間清掃具Dを平面視における歯間清掃具Dとして説明する。
【0030】
歯間清掃具Dは、重心Xが長手方向Yの中央Oより一端部31A側に位置している。また、重心Xは、長手方向Yに直交する平面における最両側端(図中の一点鎖線)の中央O´に対して一方側に偏心している。歯間清掃具Dがこのような重心Xを有しており、且つ、容器本体1の内底面12cが球面であるため、容器本体1に歯間清掃具Dを収容したとき、歯間清掃具Dの他端部31Bが内底面12cの中心に集まって、一端部31Aが遠心力により拡がることとなる。その結果、歯間清掃具Dの重心Xは、蓋2及び容器本体1で囲まれた内部空間の中心Pに対して容器本体1の側壁13側に位置している(
図1参照)。
【0031】
歯間清掃具Dは、ポリスチレン等の樹脂製の清掃具本体3と、清掃具本体3の一端に固定された束状の線材4とを備えている。本実施形態における歯間清掃具Dは、線材4を歯間に挿入して往復移動させることにより、歯間にある異物(歯垢や食べカス)を除去することができる。以下、また、紙面左側となる清掃具本体3の線材4が設けられた側を腹側、紙面右側となる腹側とは反対側を背側として説明する。
【0032】
清掃具本体3は、長手方向Yに沿って棒状に延出したハンドル部31とハンドル部31から長手方向Yに対して直交する方向に突出した一対の突出部32とを有している。一対の突出部32には、夫々線材4の端部が固定されている。
【0033】
ハンドル部31は、平面視の幅が厚みよりも大きい扁平形状で構成されており、長手方向Yに沿って延在している。ハンドル部31の一端部31Aには、長手方向Yに対して直交する方向に沿って一対の突出部32が一体的に延出している。ハンドル部31の他端部31Bは、背側に屈曲してから腹側に屈曲する屈曲部31aと、屈曲部31aから左斜め下方(腹側斜め下方)に向かって延出する延出部31bと、先端31c1が尖るように延出部31bから次第に幅が小さくなる先細部31cと、を有している。
【0034】
屈曲部31aは、背側に向かって屈曲する第一屈曲部31a1と、腹側に向かって屈曲する第二屈曲部31a2とで構成されている。第一屈曲部31a1は、腹側の腹面及び背側の背面が、背側に曲率中心を有する断面円弧状に形成されている。第二屈曲部31a2は、腹側の腹面及び背側の背面が、腹側に曲率中心を有する断面円弧状に形成されている。第一屈曲部31a1の幅が第二屈曲部31a2の幅より大きくなるように、腹面及び背面の曲率が設定されている。また、屈曲部31aの腹面及び背面は、厚み方向(紙面垂直方向)に丸みを帯びて形成されている。
【0035】
延出部31bは、第二屈曲部31a2の幅と略同一の幅で第二屈曲部31a2から腹側(突出部32の突出方向側)の斜め下方に向かって延出している。また、延出部31bの背面と腹面との間にある側面31b1が、腹側から背側に向かって次第に厚みが小さくなるように滑らかに傾斜している。
【0036】
先細部31cは、延出部31bから突出部32の突出方向側に行くほど幅が小さくなるように延出している。また、先細部31cは、背面と腹面との間にある側面31c2が、延出部31bの側面31b1と連続するように腹側から背側に向かって次第に厚みが小さくなるように滑らかに傾斜している。この構成により、先細部31c(清掃具本体3の他端部31B)の先端31c1が尖っており、この先端31c1により、歯の裏側にある除去し難い異物(歯垢や食べカス)を取り除くことができる。
【0037】
延出部31bと先細部31cとの境界部分の背面には、容器本体1の内底面12cに当接する円弧状の当接面33が形成されている。この当接面33は、腹側に曲率中心を有しており、球面で構成される容器本体1の内底面12cの曲率半径よりも小さい曲率半径を有している(
図3も参照)。換言すると、容器本体1の内底面12cの曲率半径は、当接面33の曲率半径よりも大きい。
【0038】
図3には、容器Cと歯間清掃具Dの寸法規定の説明図が示されている。同図の点Aは、容器本体1の内底面12cと清掃具本体3の当接面33との接点を示している。同図のdは、点Aから歯間清掃具Dの先端31c1までの距離を示している。同図のLは、点Aから容器Cの天面(蓋底部22の内面)までの距離を示している。同図のLyは、点Aから清掃具本体3の最上部までの距離を示している。同図のLmaxは、容器Cの底部12の最深部(容器本体1の内底面12cの中央)から容器Cの天面(蓋底部22の内面)までの距離を示している。同図のLminは、容器Cの底部12の最浅部(容器本体1の内底面12cの外周)から容器Cの天面(蓋底部22の内面)までの距離を示している。
【0039】
本実施形態では、歯間清掃具Dの先端31c1が破損しないように、下記のように容器Cと歯間清掃具Dの寸法を規定している。なお、長尺状の歯間清掃具Dを収容するため、容器Cの寸法は、円筒半径r×2<Lmaxであり、好ましくはr×2<0.8Lmaxであり、更に好ましくはr×2<0.6Lmaxである。
(1)Ly≦L、且つ、Ly>Lminであること
(2)点A付近における歯間清掃具Dの当接面33の曲率半径<容器Cの内底面12cの曲率半径であること
(3)d>0であること
【0040】
規定(1)では、歯間清掃具Dの当接面33が、容器Cの側壁13に向かって内底面12cを滑り移動し、歯間清掃具Dの一端部31Aが側壁13の内側面13aに接触した任意の位置で移動が停止する。そのため、Ly>Lminであれば、歯間清掃具Dの先端31c1が容器Cの側壁13の内側面13aに接触しない。また、Ly≦Lであれば、蓋2を閉めることにより容器本体1の密閉が可能である。規定(2)では、歯間清掃具Dの先端31c1が容器Cの内底面12cから常に離間した状態を維持できる。ただし、規定(3)により、点Aと歯間清掃具Dの先端31c1とが一致していないことが必要である。なぜなら、d=0となったとき、歯間清掃具Dの先端31c1が容器Cの内底面12cに接触して、折れ曲がりが発生するおそれがあるためである。これらの規定により、容器本体1を揺さぶって歯間清掃具Dの他端部31Bを内底面12cに沿って滑り移動させたとしても、歯間清掃具Dの先端31c1の破損を確実に防止することができる。
【0041】
また、
図2に示すように、本実施形態では、歯間清掃具Dの重心Xが、長手方向Yの中央Oより一端部31A側に位置し、最両側端の中央O´より偏心しているので、重心位置が中央O,O´より容器本体1の内側面13a側となる。その結果、
図1及び
図3に示すように、歯間清掃具Dが容器本体1の開口側の内側面13aに凭れかかるように傾倒しやすく、歯間清掃具Dの一端部31A側の部位が容器本体1の内側面13aに当接し、他端部31Bが容器本体1の内底面12cに当接して安定的に支持される。また、容器本体1を揺さぶったときには、偏心した重心Xにより歯間清掃具Dの一端部31Aが四方八方に分散し、歯間清掃具Dの一端部31Aを摘まんで取り出しやすくなる。
【0042】
図4には、容器Cの組立方法が示されている。本実施形態における容器Cの組立方法は、複数の歯間清掃具Dの他端部31Bを重力方向(下方向)に向けて束にした歯間清掃具群(長尺物群の一例)を、歯間清掃具Dの他端部31Bが容器本体1の内底面12cに当接するように容器本体1の内部に入れ、蓋2を容器本体1に装着する。その結果、
図1に示すように、容器Cと複数の歯間清掃具Dとを備えた容器アセンブリが形成される。
【0043】
このように、複数の歯間清掃具Dの他端部31Bを重力方向に向けて束にした歯間清掃具群を、歯間清掃具Dの他端部31Bが容器本体1の内底面12cに当接するように容器本体1の内部に入れれば、複数の歯間清掃具Dを容器本体1に速やかに収容することができる。また、容器本体1に歯間清掃具Dを収容したとき、歯間清掃具Dの他端部31Bが内底面12cの中心に集まって、一端部31Aが遠心力により拡がることとなる。つまり、
図1に示すように、容器本体1に収容される複数の歯間清掃具Dの夫々は、一端部31A側の部位が容器本体1の開口側の内側面13aに凭れかかり、他端部31Bが球面状の内底面12cの中央部分に向かって滑り移動する。その結果、夫々の歯間清掃具Dの他端部31Bを支点として、夫々の歯間清掃具Dの一端部31A側の部位が不規則に開口側の内側面13aに凭れかかる。このため、蓋2を取り外したとき、容器本体1の開口側には歯間清掃具Dの一端部31Aが分散した状態で配置されており、歯間清掃具Dの一端部31Aを摘まんで取り出しやすい。
【実施例】
【0044】
図5には、歯間清掃具Dの先端31c1に関する折れ曲がり試験結果が示されている。折れ曲がり試験として、歯間清掃具Dを20本入れた容器を150cmの高さから1回落下させて、歯間清掃具Dの先端31c1における折れ曲がりの有無を目視により確認した。この試験を5回行った合計が同図に示されている。また、同図には、容器の内底面を平坦面として、その上にクッション材を敷いた比較例1と、クッション材を敷かない比較例2と、上述した実施形態にかかる容器Cの球面状の内底面12c上にクッション材を敷かない本実施例との比較結果が示されている。
【0045】
比較例1では、クッション材があるため、折れ曲がり発生率が4%であったが、比較例2では、クッション材がないため、折れ曲がり発生率が27%と極端に悪化した。一方、本実施例では、クッション材がないにも関わらず、折れ曲がり発生率が1%となり、クッション材がある比較例1よりも良好な結果となった。これにより、容器本体1の内底面12cを凹状曲面とすることで、歯間清掃具Dの先端31c1の破損を防止できることが理解される。
【0046】
[その他の実施形態]
(1)
図6に示すように、歯間清掃具Dのハンドル部31を直線棒状に構成しても良い。また、容器本体1の内底面12cを断面楕円状の凹状曲面で構成しても良い。この場合でも、歯間清掃具Dの重心Xが、長手方向Yの中央Oより一端部31A側に位置し、最両側端の中央O´より偏心しているので、歯間清掃具Dが容器本体1の開口側の内側面13aに凭れかかるように傾倒しやすい。この偏心した重心Xにより歯間清掃具Dの一端部31Aが四方八方に分散し、歯間清掃具Dの一端部31Aを摘まんで取り出しやすくなる。
(2)上述した実施形態における歯間清掃具Dは、屈曲部31aや先細部31cを省略しても良い。この場合、尖った先端31c1を設けないこととなるため、先端31c1が折れ曲がることがない。また、先細部31cの当接面33を円弧状ではなく、歯間清掃具Dの先端31c1が容器Cの内底面12cから離間する凸状の屈曲部で構成しても良い。
(3)容器Cの凹状曲面は、外周から中央に向かうに連れて曲率半径が大きくなる断面楕円状であっても良いし、外周から中央に向かうに連れて曲率半径が小さくなる断面楕円状であっても良い。また、容器Cの外形は、円柱状以外に、楕円筒状や角筒状に構成しても良い。
(4)容器Cに収容される長尺物は、歯間清掃具Dの重心Xが、長手方向Yの中央Oより一端部31A側に位置していれば、どのような物体であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、複数の長尺物を収容する容器及び容器の組立方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 :容器本体
2 :蓋
12c :内底面
13 :側壁
13a :内側面
31A :一端部
31B :他端部
31b1 :側面
31c1 :先端
31c2 :側面
33 :当接面
C :容器
D :歯間清掃具(長尺物)
O :長手方向の中央
P :蓋及び容器本体で囲まれた内部空間の中心
X :重心
Y :長手方向