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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】スイッチング電源
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
H02M3/155 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020017934
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021125963
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源であって、
前記スイッチング電源の出力電圧を制御するためのトランジスタと、
前記トランジスタのオンオフを制御する制御回路と、
前記トランジスタを流れる電流を検出する電流検出回路と、
前記電流が閾値電流以上である過電流である場合、前記トランジスタの出力電圧がフィードバックされたフィードバック電圧に基づいて、前記過電流から前記スイッチング電源を保護するための過電流保護動作を開始するまでの移行時間を切り替えて、前記過電流保護動作を実行する保護回路と、
を備えるスイッチング電源。
【請求項2】
前記保護回路は、前記電流が閾値電流以上である過電流である場合、前記トランジスタの出力電圧がフィードバックされたフィードバック電圧に基づいて、前記過電流から前記スイッチング電源を保護するための過電流保護動作の動作モードをさらに切り替える、
請求項1に記載のスイッチング電源。
【請求項3】
前記保護回路は、前記トランジスタのオンオフの制御を停止して前記トランジスタをオフの状態にする前記過電流保護動作を実行する、
請求項1又は2に記載のスイッチング電源。
【請求項4】
前記フィードバック電圧が高い程、前記移行時間が長く、
前記フィードバック電圧が低い程、前記移行時間が短い、
請求項に記載のスイッチング電源。
【請求項5】
前記保護回路は、
前記フィードバック電圧が第1の閾値電圧未満且つ前記第1の閾値電圧よりも小さい第2の閾値電圧以上である場合、前記移行時間を第1の時間に設定し、
前記フィードバック電圧が前記第2の閾値電圧未満である場合、前記移行時間を前記第1の時間よりも短い第2の時間に設定する、
請求項3又は4に記載のスイッチング電源。
【請求項6】
前記保護回路は、前記フィードバック電圧が第2の閾値電圧以上前記第1の閾値電圧未満であり、且つ前記第1の時間の経過前に、前記フィードバック電圧が前記第2の閾値電圧未満となった場合、前記第2の時間の経過に応じて、前記第2の時間に対応する過電流保護動作を行う、
請求項に記載のスイッチング電源。
【請求項7】
前記移行時間は、前記トランジスタのオンオフ制御を行うためのパルスのパルス数に応じて定まる、
請求項3~6のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項8】
前記保護回路は、
前記フィードバック電圧に基づいて、前記移行時間を切り替え、
前記移行時間の経過後にヒカップ動作を実行する、
請求項1、3~6のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【請求項9】
前記保護回路は、前記フィードバック電圧に基づいて、ヒカップ動作とラッチ動作とを切り替える、
請求項に記載のスイッチング電源。
【請求項10】
前記制御回路は、前記電流が前記過電流である場合、前記トランジスタのオンオフ制御を行うためのパルスのうち前記過電流であったパルスの周期内において前記トランジスタをオフに制御する、
請求項1~のいずれか1項に記載のスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過電流保護機能を有するスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過電流保護機能を有するスイッチング電源装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1のスイッチング電源装置301は、駆動回路11、帰還回路12、及びスイッチング制御用IC202を備える。スイッチング制御用IC202は、そのOUT端子から駆動回路11へ矩形波信号を出力する。帰還回路12は出力端子PO(+)-PO(G)間の電圧の分圧値と基準電圧との比較によって帰還信号を発生し、スイッチング制御用IC202のフィードバック端子FBへ入力する。フィードバック端子FBとグランド端子GNDとの間にはキャパシタC4及びツェナーダイオードD4が接続されている。ツェナーダイオードD4は選択的に接続され、ツェナーダイオードD4の有無によってフィードバック端子FBの電圧が変化する。この電圧の検出によって過電流保護動作をラッチ方式とするか、ヒカップ方式とするかを選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-182537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、過電流保護動作を行うまでの時間が考慮されていない。そのため、出力短絡時などの出力電流が過大である場合にヒカップ動作への移行時間が長い場合、過電流による発熱を考慮したインダクタを選択する必要がある。そのため、インダクタが大型化し、スイッチング電源装置が大型化し得る。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであって、過電流による発熱を加味して、スイッチング電源が備えるインダクタを小型化できるスイッチング電源を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、スイッチング電源であって、前記スイッチング電源の出力電圧を制御するためのトランジスタと、前記トランジスタのオンオフを制御する制御回路と、前記トランジスタを流れる電流を検出する電流検出回路と、前記電流が閾値電流以上である過電流である場合、前記トランジスタの出力電圧がフィードバックされたフィードバック電圧に基づいて、前記過電流から前記スイッチング電源を保護するための過電流保護動作を開始するまでの移行時間を切り替えて、前記過電流保護動作を実行する保護回路と、を備えるスイッチング電源である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、過電流による発熱を加味して、スイッチング電源が備えるインダクタを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態におけるスイッチング電源の一例を示す構成図
図2】第1保護制御回路の第1構成例を示すブロック図
図3】第1保護制御回路の第1動作例を説明するための波形図
図4】第1保護制御回路の第2動作例を説明するための波形図
図5】第1保護制御回路の第2構成例を示すブロック図
図6】第1保護制御回路の第3動作例を説明するための波形図
図7】第1保護制御回路の第4動作例を説明するための波形図
図8】第1保護制御回路の第3構成例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、適宜図面を参照しながら、本開示に係るスイッチング電源を具体的に開示した実施形態(以下、「本実施形態」という)を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1は、本開示の実施形態におけるスイッチング電源の一例を示す構成図である。
【0011】
スイッチング電源1は、電源IC5に、コイルL1、ショットキーバリアダイオードSBD1及びコンデンサCOUTが外付けで接続された降圧型のスイッチング電源である。降圧型のスイッチング電源1では、コイルL1及びコンデンサCOUTが端子SW1に直列に接続される。コイルL1及びコンデンサCOUTの間には、抵抗RESRが接続される。コイルL1には、負荷3が接続される。コイルL1には、負荷3と並列に、抵抗RB1,RB2が直列接続される。抵抗RB1と抵抗RB2との接続点は、電源IC5のフィードバック端子としての端子FB1を介して、エラーアンプ20に接続される。負荷3は、ランプ等の無誘導負荷であってもよいし、モータ等の誘導負荷であってもよい。
【0012】
スイッチング電源1では、直流電源2から入力電圧VINが電力ラインLNを介して電源IC5の端子VIN1に供給される。電力ラインLNには、バイパスコンデンサCINが電源IC5と並列に接続される。
【0013】
スイッチング電源1は、電圧を変換する。スイッチング電源1の電源IC5は、例えば、トランジスタMPと、ソフトスタート回路10と、エラーアンプ20と、PWM比較器30と、FF(Flip-Flop)回路40と、第1保護制御回路50と、ロジック回路60と、電流検出回路70と、第2保護制御回路80と、スロープ補償回路90と、加算器95と、を備える。電源IC5は、集積回路の一例である。第1保護制御回路50及びロジック回路60は、過電流保護動作に関する情報を決定し、過電流保護動作を実行する保護回路を構成する。ソフトスタート回路10、エラーアンプ20、PWM比較器30、FF回路40、及びロジック回路60は、トランジスタMPのオンオフを制御する制御回路を構成する。
【0014】
トランジスタMPは、例えばPMOSトランジスタ(単に「PMOS」とも称する)である。トランジスタMPには、ロジック回路60の出力電圧がゲート電圧として印加される。トランジスタMPは、ソースが端子VIN1に接続され、ドレインが端子SW1に接続される。トランジスタMPのソースがバックゲートに接続される。トランジスタMPがオンした場合、直流電源2からの電流がトランジスタMP、コイルL1、コンデンサCOUTに流れて、コンデンサCOUTが充電される。
【0015】
ソフトスタート回路10は、スイッチング電源1の起動後、PWM比較器30の制御により徐々に出力電圧VOUTを上げるよう制御する。スイッチング電源1の動作期間は、ソフトスタート回路10の出力に応じて、ソフトスタート期間と、ソフトスタート期間終了後に継続する定常期間と、に区分される。定常期間では、定常のPWM制御が実施される。ソフトスタート回路10は、ソフトスタート期間において、PWM比較器30における電圧を変換するためのデューティ比を制限する。ソフトスタート回路10は、エラーアンプ20の非反転入力端子に接続される。
【0016】
エラーアンプ20は、非反転入力端子に入力される基準電圧VREFと、反転入力端子に入力される端子FB1のフィードバック電圧VFBとの差分を増幅する差動増幅器である。よって、エラーアンプ20の出力電圧は、基準電圧VREFとフィードバック電圧VFBとの差分に比例する。基準電圧VREFは、設定電圧よりも低い電圧とする。基準電圧VREFとフィードバック電圧VFBとの差分が大きい程(つまり出力電圧VOUTが値0に近い程)、エラーアンプ20の出力電圧が大きくなる。基準電圧VREFとフィードバック電圧VFBとの差分が小さい程(つまり出力電圧VOUTが設定電圧に近い程)、エラーアンプ20の出力電圧が小さくなる。エラーアンプ20は、負帰還回路として動作するので、フィードバック電圧VFBを基準電圧VREFに維持するように、つまり出力電圧VOUTを設定電圧に維持するように電圧を制御する。また、エラーアンプ20は、ソフトスタート期間では、ソフトスタート回路10からのSST信号の電圧を基準電圧VREFとすることで、エラーアンプ20の出力電圧を制限する。SST信号は、ソフトスタート期間においてPWMで用いられるデューティを制御するための信号である。
【0017】
また、エラーアンプ20の反転入力端子と出力端子との間に、位相補償回路が配置されてよい。位相補償回路は、例えば位相補償コンデンサ21と抵抗22が直列に接続された回路である。位相補償回路によって、電圧フィードバックループの安定性を図る。
【0018】
PWM比較器30は、非反転入力端子に加算器95の出力電圧を入力し、反転入力端子にエラーアンプ20の出力電圧を入力する。PWM比較器30は、加算器95の出力電圧及びエラーアンプ20の出力電圧に基づいて、電圧を変換するためのデューティ比を決定する。PWM比較器30は、決定されたデューティ比を含む出力電圧をFF回路40へ出力する。
【0019】
FF回路40は、発振回路(OSC:Oscillator)からのクロック信号OSCと、PWM比較器30の出力電圧とを入力する。クロック信号は、PWM信号の周期の決定に用いられる。PWM信号は、Highの電圧及びLowの電圧により示される。PWM信号のHigh電圧とLow電圧とは、PWM信号の周期及びデューティ比に基づく。FF回路40は、発振回路の出力電圧(クロック信号OSCの電圧)によりセットされ、PWM比較器30の出力電圧によりリセットされ、PWM信号をロジック回路60に出力する。FF回路40は、例えばRSフリップフロップである。例えば、エラーアンプ20の出力電圧が高い程、PWM信号のデューティ比が大きくなり、スイッチング電源1の出力電圧VOUTが大きくなる。エラーアンプ20の出力電圧が低い程、PWM信号のデューティ比が小さくなり、出力電圧VOUTが小さくなる。PWM信号は、例えばパルス信号である。
【0020】
第1保護制御回路50は、過電流保護に関する処理を行う。第1保護制御回路50は、フィードバック電圧VFBを入力し、フィードバック電圧VFBに基づいて各種の過電流保護動作を行う。この過電流保護動作は、ヒカップ動作、ラッチ動作、等を含む。第1保護制御回路50は、過電流保護動作を行うための第1保護制御信号をロジック回路60に出力する。第1保護制御信号は、Highの電圧及びLowの電圧により示される。第1保護制御信号がHighの電圧であることは、ロジック回路60にトランジスタMPのオンオフ制御の停止を指示することに相当する。
【0021】
ヒカップ動作は、過電流に対応する過小なフィードバック電圧VFB(閾値電圧th1以下の電圧)が検出された場合に、トランジスタMPのオンオフ制御を停止してトランジスタMPをオフの状態とし、一定時間後にトランジスタMPのオンオフ制御を再開して電圧供給を再開する動作である。ヒカップ動作は反復して行われてよく、つまりトランジスタMPのオンオフ制御の停止と再開を反復して実施されてよい。ラッチ動作は、トランジスタMPのオンオフ制御を停止してトランジスタMPをオフの状態とし、一定時間経過してもトランジスタMPのオンオフ制御を再開しない動作である。
【0022】
また、第1保護制御回路50は、ヒカップ動作やラッチ動作に関する詳細な方式を決定する。この詳細な方式では、過電流保護動作としてヒカップ動作を選択するかラッチ動作を選択するか、過電流保護動作としてのヒカップ動作又はラッチ動作に移行するまでの移行時間、ヒカップ動作の後にラッチ動作に移行するか否か、等を決定する。移行時間は、パルス信号としてのPWM信号のカウント数で代用されてもよい。第1保護制御回路50は、時間を計測する際、FF回路40からのPWM信号を取得し、PWM信号の状態を参照してカウントしてよい。第1保護制御回路50の詳細については後述する。
【0023】
ロジック回路60は、レベルシフト動作、保護動作、停止動作、等を行う。ロジック回路60は、レベルシフト動作では、ロジック回路60に入力されたPWM信号を、トランジスタMPを駆動するレベルの信号に変換し、レベルシフトされたPWM信号をトランジスタMPに出力する。ロジック回路60は、保護動作では、デバイス(例えばトランジスタMP)への加熱等を抑制して、デバイスを保護する。ロジック回路60は、停止動作では、トランジスタMPを駆動するドライバを停止させ、レベルシフトされたPWM信号をトランジスタMPへ伝達しない。つまり、ロジック回路60は、停止動作では、トランジスタMPのオンオフ制御を停止し、トランジスタMPをオフの状態にする。
【0024】
また、ロジック回路60は、保護動作又は停止動作では、第1保護制御回路50の出力信号及び第2保護制御回路80の出力信号に基づいて、過電流保護動作を行う。過電流保護動作では、トランジスタMPのオンオフ制御が停止され、トランジスタMPがオフの状態とされる。この過電流保護動作は、ヒカップ動作、ラッチ動作、を含んでよい。ロジック回路60は、第2保護制御回路80の出力信号が過電流であることを示す場合、第1保護制御回路50が出力する第1保護制御信号に基づいて、ヒカップ動作又はラッチ動作を行ってよい。
【0025】
電流検出回路70は、トランジスタMPを流れるドレイン電流に相当するセンス電流を検出し、この検出結果を示す電流検出信号を第2保護制御回路80及び加算器95に出力する。
【0026】
第2保護制御回路80は、過電流の有無を示すOCP信号をロジック回路60に出力する。OCP信号は、Highの電圧及びLowの電圧により示される。第2保護制御回路80によりセンス電流が過電流であることが検出(単に過電流検出ともいう)された場合、つまり電流検出回路70により検出された検出電流が過電流を検出するための閾値電流Ith以上である場合、第2保護制御回路80は、OCP信号の電圧をHighとする。センス電流が過電流でないことを第2保護制御回路80が検出した場合、第2保護制御回路80は、OCP信号の電圧をLowとする。また、OCP信号の電圧がHighとなった後に、ヒカップ動作においてトランジスタMPのオンオフ制御が再開されると、第2保護制御回路80は、OCP信号の電圧をLowとする(図3等参照)。
【0027】
また、第2保護制御回路80は、センス電流が過電流であることを検出した場合、センス電流に基づいて、パルスバイパルス動作の実施をロジック回路60に指示する。パルスバイパルス動作は、PWM制御を行うためのパルスのうち、過電流であったパルスの周期内においてトランジスタMPをオフに制御する動作である。そして、クロック信号に従ったPWM信号のオンタイミングとなると、再度トランジスタMPをオンにする。ロジック回路60は、ロジック回路60からの指示に応じて、パルスバイパルス動作を行うよう、トランジスタMPのオンオフ制御を制限する。
【0028】
また、第2保護制御回路80は、過電流を検出したことを、第1保護制御回路50に通知する。これにより、第1保護制御回路50は、例えば過電流検出からの経過時間を計測可能となる。
【0029】
スロープ補償回路90は、スロープ補償を行うためのスロープ補償信号を加算器95に出力する。スロープ補償信号は、例えば所定のランプ波形の信号である。加算器95は、スロープ補償回路90からのスロープ補償信号と電流検出回路70からの電流検出信号を加算し、加算信号をPWM比較器30の非反転入力端子に出力する。スロープ補償信号に基づく加算信号を加味することで、PWM制御の安定化を図ることができる。
【0030】
次に、第1保護制御回路50の具体的な構成例及びその動作例について説明する。ここでは、第1構成例の第1保護制御回路50を第1保護制御回路50Aとも記載し、第2構成例の第1保護制御回路50を第1保護制御回路50Bとも記載し、第3構成例の第1保護制御回路50を第1保護制御回路50Cとも記載する。なお、各構成例及び各構成例による各動作の少なくとも一部が組み合わされてもよい。
【0031】
図2は、第1保護制御回路50Aの構成例を示すブロック図である。図3は、第1保護制御回路50Aの第1動作例を説明するための波形図である。図4は、第1保護制御回路50Aの第2動作例を説明するための波形図である。
【0032】
第1保護制御回路50Aは、過電流保護動作として、ヒカップ動作を行う。第1保護制御回路50Aは、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作に移行するまでの移行時間を変更する。ここでは、フィードバック電圧VFBの電圧範囲に応じて、過電流保護動作の動作領域が異なっている。例えば、第1過電流保護動作領域(図3では1st OCP area)は、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref1未満且つ基準電圧Vref2以上の場合の動作領域である。基準電圧Vref1は基準電圧Vref2よりも高い。第2過電流保護動作領域(図4では2nd OCP area)は、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2未満の動作領域である。第1過電流保護動作領域では、センス電流が過電流であることを検出してからヒカップ動作に移行するまでの移行時間が、移行時間T1に設定される。よって、移行時間は、過電流検出時からの経過時間とも言える。第2過電流保護動作領域では、上記の移行時間が移行時間T2に設定される。移行時間T2は、移行時間T1よりも短い。
【0033】
第1保護制御回路50Aは、比較器51、比較器52、及びカウント数制御回路53を備える。カウント数は、過電流検出してから過電流保護動作(ヒカップ動作又はラッチ動作)するまでのPWM信号のパルスのカウント数である。
【0034】
比較器51は、フィードバック電圧VFBと基準電圧Vref1とを比較し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref1以上の場合にはHigh電圧を出力し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref1未満の場合にはLow電圧を出力する。比較器52は、フィードバック電圧VFBと基準電圧Vref2とを比較し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2以上の場合にはHigh電圧を出力し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2未満の場合にはLow電圧を出力する。
【0035】
カウント数制御回路53は、比較器51,52の出力電圧を入力する。カウント数制御回路53は、比較器51,52の出力電圧に基づいて、ヒカップ動作に移行するまでの移行時間に相当するPWM信号のカウント数を決定する。
【0036】
カウント数制御回路53は、過電流検出からの経過時間を計測する。この場合、カウント数制御回路53は、過電流検出からの経過時間に対応するPWM信号のパルス数をカウントする。カウント数制御回路53は、移行時間が経過しているか否かに応じて、ロジック回路60へ送られる第1保護制御信号の電圧を決定し、第1保護制御信号をロジック回路60に出力する。第1保護制御信号は、移行時間が経過するまではLowの電圧となり、移行時間が経過するとHighの電圧になる。つまり、PWM信号のパルスのカウント数が所定カウント数(移行時間に対応するカウント数)になると、カウント数制御回路53は、第1保護制御信号の電圧をLowからHighに変更する。
【0037】
ロジック回路60は、取得した第1保護制御信号がHighの電圧であり、取得したOCP信号がHighの電圧である場合、ロジック信号をHighの電圧にする。ここでのロジック信号は、過電流保護動作のために停止動作を行うか否かを示す。ロジック信号の電圧がHighの場合、ロジック回路60が停止動作する。ロジック信号の電圧がLowの場合、ロジック回路60が停止動作しない。
【0038】
また、ここでは過電流保護動作がヒカップ動作であるので、カウント数制御回路53は、停止動作の指示からの時間経過を計測し、停止動作の開始から所定時間が経過すると、第1保護制御信号の電圧をHighからLowに変更してロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、第1保護制御信号の電圧がLowであることを検出すると、ロジック信号の電圧をHighからLowに切り替える。そして、ロジック回路60は、トランジスタMPのオンオフ制御を再開すべく、レベルシフトされたPWM信号のトランジスタMPへの伝達を再開する再開動作を行う。
【0039】
一方、ロジック回路60は、取得した第1保護制御信号と取得したOCP信号の少なくとも一方の電圧がLowの電圧である場合、ロジック信号の電圧をLowにする。この場合、ロジック回路60は、トランジスタMPのオンオフ制御を行い、レベルシフトされたPWM信号を出力する。
【0040】
具体的には、カウント数制御回路53は、比較器51の出力電圧がHigh電圧であり比較器52の出力電圧がHigh電圧である場合、第1保護制御信号をLowの電圧にしてロジック回路60へ送る。この場合、ロジック回路60は、過電流保護動作を行わず、レベルシフトされたPWM信号を出力する。
【0041】
また、カウント数制御回路53は、比較器51の出力電圧がLow電圧であり比較器52の出力電圧がHigh電圧である場合、第1過電流保護動作領域のヒカップ動作を行うよう指示する。つまり、過電流検出から移行時間T1の後にヒカップ動作を行うよう指示する。この場合、カウント数制御回路53は、過電流検出から移行時間T1の後に第1保護制御信号の電圧をHighにしてロジック回路60に送る。第1過電流保護動作領域に含まれる電圧の範囲では、電圧によらず移行時間T1が一定でよい。この場合、ロジック回路60は、移行時間T1が経過するまでレベルシフトされたPWM信号を出力し、その後停止動作を行い、その後再開動作を行う。
【0042】
また、カウント数制御回路53は、比較器51の出力電圧がLow電圧であり比較器52の出力電圧がLow電圧である場合、第2過電流保護動作領域のヒカップ動作を行うよう指示する。つまり、過電流検出から移行時間T2の後にヒカップ動作を行うよう指示する。この場合、カウント数制御回路53は、過電流検出から移行時間T2の後に第1保護制御信号の電圧をHighにしてロジック回路60に送る。第2過電流保護動作領域に含まれる電圧の範囲では、電圧によらず移行時間T2が一定でよい。この場合、ロジック回路60は、移行時間T2が経過するまでレベルシフトされたPWM信号を出力し、動作を行い、その後停止動作を行い、その後再開動作を行う。
【0043】
ヒカップ動作において、再開時には、例えばソフトスタートする。ヒカップ動作では、ロジック回路60の停止動作と再開動作、つまりトランジスタMPのオンオフ制御の停止と再開を所定回数反復した後、トランジスタMPのオンオフ制御を終了してトランジスタMPをオフの状態としてよい。
【0044】
なお、第1保護制御回路50Aでは、ヒカップ動作ではなくラッチ動作を加味してもよい。つまり、フィードバック電圧VFBに基づいて段階的にヒカップ動作を開始するまでの移行時間を設定することを例示したが、フィードバック電圧VFBに基づいて段階的にラッチ動作を開始するまでの移行時間を設定してもよい。
【0045】
なお、移行時間は、2段階でなく、3段階以上存在してもよい。この場合、比較器が3つ以上設けられてよい。
【0046】
図3では、フィードバック電圧VFBが第1過電流保護動作領域となる第1の電圧範囲に含まれ、フィードバック電圧VFBが第2過電流保護動作領域となる第2の電圧範囲まで下がらない場合について示されている。なお、「VFB」は、端子FB1の電圧を示し、フィードバック電圧VFBに相当する。「VSW」は端子SW1の電圧を示す。「ISW」は、端子SW1を流れる電流を示し、センス電流に相当する。このことは、後述する図4図6図7においても同様である。
【0047】
図3では、第2保護制御回路80が、センス電流に対応する電流ISWが閾値電流Ith以上の過電流であることを検出し、OCP信号をHighの電圧にしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、OCP信号がHighの電圧であることに従って、パルスバイパルス動作を行う。また、過電流に伴ってフィードバック電圧VFBが低下し始めた時点(第1過電流保護動作領域の開始時点)と電流検出回路70により過電流が検出され始めた時点とは、同じタイミングであることを想定している。なお、これらの時点は同じタイミングでなくてもよい。パルスバイパルス動作によっても、PWM信号のLow電圧期間が長くなるため、スイッチング電源1の出力電圧VOUTつまりフィードバック電圧VFBが低下することが期待できる。
【0048】
第1保護制御回路50Aは、第1過電流保護動作領域で用いられる移行時間T1を計測し、移行時間T1の経過後、第1保護制御信号をHighの電圧にしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、第1保護制御信号がHighであることを検出すると、ロジック信号をHighの電圧にしてヒカップ動作を開始し、つまりトランジスタMPのオンオフ制御を一旦停止させ、トランジスタMPを一定時間オフにさせる。
【0049】
第1保護制御回路50Aは、ヒカップ動作の開始時点からの経過時間を計測し、トランジスタMPを一定時間オフとした後、第1保護制御信号をLowの電圧にしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、第1保護制御信号がLowであることを検出すると、ロジック信号をLowの電圧にして、トランジスタMPのオンオフ制御をソフトスタートにより再開させる。
【0050】
移行時間T1は、例えば、クロック信号の20周期分の時間、つまりPWM信号のパルスのカウント20個分の時間(1/fsoc×20)に相当する。図3では、移行時間T1内にフィードバック電圧VFBが更に低下して第2過電流保護動作領域に達してはいない。そのため、第1保護制御回路50Aのカウント数制御回路53は、PWM信号のパルスのカウンタリセットや、移行時間T1から移行時間T2への変更(カウント数変更)を行っていない。
【0051】
移行時間T2は、例えば従来のヒカップ動作までの移行時間に相当する。移行時間T1は、移行時間T2よりも長く設定されている。そのため、例えば負荷3の過渡応答の場合には、移行時間T1内でフィードバック電圧VFBの低下が解消すると考えられる。この場合、スイッチング電源1は、過電流保護を実現しつつ、負荷過渡応答の度にヒカップ動作が実行されることを抑制できる。
【0052】
図4では、フィードバック電圧VFBが第1過電流保護動作領域となる第1の電圧範囲に含まれ、フィードバック電圧VFBが第2過電流保護動作領域となる第2の電圧範囲まで下がる場合について示されている。なお、図4において、図3と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0053】
第1保護制御回路50Aは、第1過電流保護動作領域で用いられる移行時間T1が経過する前に、第2の電圧範囲までフィードバック電圧VFBが低下していることを検出する。この場合、比較器51の出力電圧がLow電圧であり、比較器52の出力電圧がLow電圧であるので、カウント数制御回路53は、ヒカップ動作までの移行時間を移行時間T1から移行時間T2へ変更する。つまり、カウント数制御回路53は、移行時間T1のカウント途中であっても、フィードバック電圧VFBに応じて移行時間T2に変更する。第1保護制御回路50Aは、変更された移行時間T2の経過後、ヒカップ動作を開始し、つまりトランジスタMPのオンオフ制御を一旦停止させ、トランジスタMPを一定時間オフにさせる。
【0054】
第1保護制御回路50Aは、ヒカップ動作の開始時点からの経過時間を計測し、トランジスタMPが一定時間オフとされた後、第1保護制御信号をLowの電圧にしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、第1保護制御信号がLowであることを検出すると、ロジック信号をLowの電圧にして、トランジスタMPのオンオフ制御をソフトスタートにより再開させる。
【0055】
移行時間T1は、図3の場合と同様に、例えば、PWM信号のパルスのカウント20個分の時間に相当する。移行時間T2は、例えば、クロック信号の15周期分の時間、つまりPWM信号のパルスのカウント15個分の時間(1/fsoc×15)に相当する。なお、移行時間T1から移行時間T2への変更は、カウンタリセットでもカウント数変更でもよい。つまり、カウント数制御回路53は、移行時間の切り替え時までにカウントしたカウント数を考慮して、変更後の移行時間T2に至るまで継続してカウントしてもよいし、移行時間の切り替え時までのカウント数を考慮せずにリセットして、変更後の移行時間T2を値0からカウントしてもよい。
【0056】
このように、段階的にヒカップ動作までの移行時間を変更(ここでは短縮)することで、フィードバック電圧VFBの低下が比較的小さい場合には過電流の程度が比較的小さいため、コイルL1の発熱量があまり大きくならない。そのため、ヒカップ動作の開始までの多少時間があっても、過電流保護を実現し得る。一方、フィードバック電圧VFBの低下が比較的大きくなった場合には、過電流の程度が比較的大きいため、コイルL1の発熱量が大きくなる。そのため、スイッチング電源1は、ヒカップ動作の開始までの時間を短くすることで、過電流保護を実現できる。このように、スイッチング電源1は、時間に応じて変化し得るフィードバック電圧VFBが属する電圧範囲に応じて、過電流保護動作の方式を柔軟に変更できる。
【0057】
なお、スイッチング電源1は、ヒカップ動作までの移行時間を短縮するのではなく、移行時間を延長してもよい。例えば、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBの低下が小さくなった場合には、移行時間を延長してもよい。
【0058】
図5は、第1保護制御回路50Bの構成例を示すブロック図である。図6は、第1保護制御回路50Bの第1動作例を説明するための波形図である。図7は、第1保護制御回路50Bの第2動作例を説明するための波形図である。なお、図5図7において、図2図4と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0059】
第1保護制御回路50Bは、過電流保護動作として、ヒカップ動作及びラッチ動作を行う。第1保護制御回路50Bは、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作又はラッチ動作を選択する。第1保護制御回路50Bは、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作とラッチ動作とを切り替えてもよい。なお、第1過電流保護動作領域(OCP area)では、ヒカップ動作が選択され、第2過電流保護動作領域(Latch area)では、ラッチ動作が選択される。また、第1過電流保護動作領域では、移行時間T3に設定され、第2過電流保護動作領域では、移行時間T4に設定される。移行時間T3は、移行時間T4よりも短い。なお、移行時間T3,T4は、同じ長さでもよい。移行時間T3は移行時間T1の一例である。移行時間T4は移行時間T2の一例である。
【0060】
第1保護制御回路50Bは、比較器54、比較器55、及びモード選択回路56を備える。
【0061】
比較器54は、フィードバック電圧VFBと基準電圧Vref3とを比較し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref3以上の場合にはHigh電圧を出力し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref3未満の場合にはLow電圧を出力する。比較器55は、フィードバック電圧VFBと基準電圧Vref4とを比較し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref4以上の場合にはHigh電圧を出力し、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref4未満の場合にはLow電圧を出力する。なお、基準電圧Vref3は基準電圧Vref4よりも高い。なお、基準電圧Vref1と基準電圧Vref3とは同じでもよく、基準電圧Vref2と基準電圧Vref4とは同じでもよい。
【0062】
モード選択回路56は、比較器54,55の出力電圧を入力する。モード選択回路56は、比較器54,55の出力電圧に基づいて、過電流保護動作の動作モードを選択し、決定する。動作モードは、ヒカップ動作のモードとラッチ動作のモードを含んでよい。
【0063】
具体的には、モード選択回路56は、比較器54の出力電圧がHigh電圧であり比較器55の出力電圧がHigh電圧である場合、過電流保護動作としてヒカップ動作及びラッチ動作のいずれも行わないように指示する。この場合、モード選択回路56は、第1保護制御信号をLowの電圧にしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、第1保護制御信号がLowの電圧であるので、停止動作を行わず、レベルシフトされたPWM信号を出力する。
【0064】
また、モード選択回路56は、比較器54の出力電圧がLow電圧であり比較器55の出力電圧がHigh電圧である場合、第1過電流保護動作領域の過電流保護動作としてヒカップ動作を行うように指示する。この場合、モード選択回路56は、過電流検出から移行時間T3の後にヒカップ動作を行うよう指示する。つまり、モード選択回路56は、過電流検出から移行時間T3の後に第1保護制御信号の電圧をHighにしてロジック回路60に送る。第1過電流保護動作領域に含まれる電圧の範囲では、電圧によらず移行時間T3が一定でよい。この場合、ロジック回路60は、移行時間T3が経過するまでレベルシフトされたPWM信号を出力し、その後停止動作を行い、その後再開動作を行う。
【0065】
また、モード選択回路56は、比較器54の出力電圧がLow電圧であり比較器55の出力電圧がLow電圧である場合、第2過電流保護動作領域の過電流保護動作としてラッチ動作を行うよう指示する。つまり、モード選択回路56は、過電流検出から移行時間T4の後にヒカップ動作を行うよう指示する。つまり、モード選択回路56は、過電流検出から移行時間T4の後に第1保護制御信号の電圧をHighにしてロジック回路60に送る。第2過電流保護動作領域に含まれる電圧の範囲では、電圧によらず移行時間T4が一定でよい。この場合、ロジック回路60は、移行時間T4が経過するまでレベルシフトされたPWM信号を出力し、その後停止動作を行う。
【0066】
図6では、フィードバック電圧VFBが第1過電流保護動作領域となる第1の電圧範囲に含まれ、フィードバック電圧VFBが第2過電流保護動作領域となる第2の電圧範囲まで下がる場合について示されている。また、移行時間T4がある程度の長さを有する。なお、図6において、図3図4と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0067】
第1保護制御回路50Bは、第1過電流保護動作領域で用いられる移行時間T3が経過する前に、第2の電圧範囲までフィードバック電圧VFBが低下していることを検出する。この場合、比較器54の出力電圧がLow電圧であり、比較器55の出力電圧がLow電圧であるので、モード選択回路56は、ヒカップ動作までの移行時間を移行時間T3から移行時間T4へ変更する。また、モード選択回路56は、ヒカップ動作からラッチ動作に動作モードを変更する。つまり、モード選択回路56は、移行時間T3のカウント途中であっても、フィードバック電圧VFBに応じて移行時間T4に変更し、動作モードも変更する。第1保護制御回路50Bは、変更された移行時間T4の経過後、ラッチ動作を開始し、つまりトランジスタMPのオンオフ制御を停止させ、トランジスタMPをオフにさせる。
【0068】
移行時間T3は、例えば、PWM信号のパルスのカウント20個分の時間に相当する。移行時間T4は、例えば、クロック信号の5周期分の時間、つまりPWM信号のパルスのカウント5個分の時間(1/fsoc×5)に相当する。なお、移行時間T3から移行時間T4への変更は、カウンタリセットでもカウント数変更でもよい。
【0069】
フィードバック電圧VFBの低下が比較的小さい場合には過電流の程度が比較的小さいため、コイルL1の発熱量があまり大きくならない。そのため、スイッチング電源1は、ヒカップ動作によってトランジスタMPのオンオフ制御の停止及び再開を反復しても、過電流を抑制できる。一方、フィードバック電圧VFBの低下が比較的大きくなった場合には、過電流の程度が比較的大きいため、コイルL1の発熱量が大きくなる。そのため、スイッチング電源1は、ヒカップ動作からラッチ動作に変更することで、トランジスタMPのオンオフ制御の再開を行わないので、過電流を一層抑制できる。このように、スイッチング電源1は、時間に応じて変化し得るフィードバック電圧VFBが属する電圧範囲に応じて、過電流保護動作の方式として過電流保護動作の種類を柔軟に変更できる。
【0070】
なお、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作の動作モードからラッチ動作の動作モードに切り替えるのではなく、ラッチ動作の動作モードからヒカップ動作の動作モードに切り替えてもよい。
【0071】
図7では、フィードバック電圧VFBが第1過電流保護動作領域となる第1の電圧範囲に含まれ、フィードバック電圧VFBが第2過電流保護動作領域となる第2の電圧範囲まで下がる場合について示されている。また、移行時間T4が値0である。なお、図6において、図3図4図6と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0072】
第1保護制御回路50Bは、第1過電流保護動作領域で用いられる移行時間T3が経過する前に、第2の電圧範囲までフィードバック電圧VFBが低下していることを検出する。この場合、比較器54の出力電圧がLow電圧であり、比較器55の出力電圧がLow電圧であるので、モード選択回路56は、ヒカップ動作までの移行時間を移行時間T3から移行時間T4へ変更し、ヒカップ動作からラッチ動作に動作モードを変更する。ここで、移行時間T4は値0であるので、ラッチ動作に動作モードが変更されて直ぐに、第1保護制御信号の電圧をHighにしてロジック回路60に出力する。ロジック回路60は、取得された第1保護制御信号に従って、停止動作する。
【0073】
このように、過電流に伴ってフィードバック電圧VFBが大きく低下した場合には、移行時間T4=0であることで、スイッチング電源1は、迅速にトランジスタMPをオフに維持でき、過電流保護の効果が向上することを期待できる。
【0074】
図8は、第1保護制御回路50Cの構成例を示すブロック図である。なお、図8において、図2図7と同様の事項については、その説明を省略又は簡略化する。
【0075】
第1保護制御回路50Cは、タイマ57を備える。タイマ57は、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作に移行するまでの移行時間T5を設定する。第1保護制御回路50Cでは、第1保護制御回路50Aとは異なり、閾値電圧を設けて段階的に移行時間T5を変更するのではなく、閾値電圧を設けずにスムーズに移行時間T5を変更する。よって、タイマ57は、フィードバック電圧VFBが高い程、移行時間T5を長く設定し、フィードバック電圧VFBが低い程、移行時間T5を短く設定する。移行時間T5は、PWM信号のパルス数によって設定されてもよい。
【0076】
タイマ57は、過電流検出からの経過時間(例えばPWM信号のパルス数)を計測し、設定された移行時間T5の経過後にヒカップ動作を行うよう指示する。この場合、ロジック回路60は、移行時間T5が経過するまでレベルシフトされたPWM信号を出力し、その後停止動作を行い、その後再開動作を行う。なお、フィードバック電圧VFBが高く、例えば設定電圧と等しい場合、移行時間T5が最大となる。移行時間T5が最大には、ヒカップ動作に移行しないことが含まれてよい。移行時間T5が最小には、移行時間T5が値0でヒカップ動作に遷移することが含まれてよい。
【0077】
このように、スイッチング電源1は、例えば第1保護制御回路50が第1構成例の構成を有する場合において、フィードバック電圧VFBの低下量が小さい場合、つまり過電流の度合いが小さい場合には、ヒカップ動作における停止までの時間を長くする。また、フィードバック電圧VFBの低下量が大きい場合、つまり過電流の度合いが大きい場合には、ヒカップ動作における停止までの時間を短くする。そのため、過電流に応じたコイルL1の発熱量を小さくでき、コイルL1のサイズを小さくできる。また、ノイズのような小さな過電流が発生した場合には、移行時間を長くすることで、ヒカップ動作における停止動作を行わなくて済む可能性がある。よって、出力電圧VOUTが不必要に低下する期間を低減でき、出力電圧VOUTを負荷3へ安定して供給できる。
【0078】
なお、タイマ57を用いてヒカップ動作へ移行する場合に限らず、タイマ57を用いてラッチ動作へ移行する場合にも適用可能である。
【0079】
以上のように、本実施形態のスイッチング電源1は、スイッチング電源1の出力電圧を制御するためのトランジスタMPと、トランジスタMPのオンオフを制御する制御回路と、トランジスタMPを流れる電流を検出する電流検出回路70と、保護回路と、を備える。保護回路は、電流が閾値電流Ith以上である過電流である場合、トランジスタMPの出力電圧がフィードバックされたフィードバック電圧VFBに基づいて、トランジスタMPを流れる過電流からスイッチング電源1を保護するための過電流保護動作を開始するまでの移行時間、又は、過電流保護動作の動作モードを切り替えて、過電流保護動作を実行する。保護回路は、例えば、第1保護制御回路50、第2保護制御回路80及びロジック回路60を含む。制御回路は、例えば、ソフトスタート回路10、エラーアンプ20、PWM比較器30、FF回路40、及びロジック回路60を含む。
【0080】
トランジスタMPに過電流が発生すると、フィードバック電圧VFBが低下し得る。スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBが低下した場合、過電流から保護するために、過電流保護動作を実施し、トランジスタMPのオンの状態を制限する。この際、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBに応じて、トランジスタMPのオンオフ制御の停止までの時間を調整できる。または、スイッチング電源1は、過電流保護動作の動作モードを切り替えることで、出力電圧VOUTに対応した過電流保護動作を実施でき、過電流を抑制できる。よって、スイッチング電源1は、過電流によるコイルL1(インダクタ)の発熱量を抑制でき、コイルL1のサイズを小さくでき、スイッチング電源1は基板などに実装した場合に小型化できる。
【0081】
また、保護回路は、トランジスタMPのオンオフの制御を停止してトランジスタMPをオフの状態にする過電流保護動作を実行してよい。
【0082】
これにより、スイッチング電源1は、トランジスタMPを強制的にオフの状態にでき、過電流を抑制できる。
【0083】
また、フィードバック電圧VFBが高い程、移行時間が長くてよい。フィードバック電圧VFBが低い程、移行時間が短くてよい。
【0084】
これにより、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBの設定電圧からの低下量が小さい場合には、例えばノイズ等が過電流と擬制されて、トランジスタMPのオンオフ制御が停止されることを抑制できる。つまり、不要な過電流保護動作が行われることを抑制できる。また、フィードバック電圧VFBの設定電圧からの低下量が大きい場合には、過電流が大きいことが想定され、危険性が高い状態である。この場合、スイッチング電源1は、迅速にPWM制御を制限することで、危険性の高い状態を迅速に脱却できる。よって、スイッチング電源1は、時間を加味した過電流の量が例えば一定になるように調整でき、コイルL1のサイズを小さくできる。
【0085】
また、保護回路は、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref1(第1の閾値電圧の一例)未満且つ基準電圧Vref2(第2の閾値電圧の一例)以上である場合、移行時間を移行時間T1(第1の時間の一例)に設定してよい。制御回路は、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2未満である場合、移行時間を移行時間T2(第2の時間の一例)に設定してよい。なお、基準電圧Vref2は、基準電圧Vref1よりも小さい。移行時間T2は、移行時間T1より短い。
【0086】
これにより、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBに応じて、段階的に、トランジスタMPのオンオフ制御を停止するまでの移行時間を調整できる。
【0087】
また、保護回路は、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2以上且つ基準電圧Vref1未満であり、且つ、移行時間T1の経過前に、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vref2未満となった場合、移行時間T2の経過に応じて、移行時間T2に対応する過電流保護動作を行ってよい。
【0088】
これにより、スイッチング電源1は、フィードバック電圧VFBが時間経過とともに変化した場合には、各タイミングにおけるフィードバック電圧VFBに応じて柔軟に移行時間を変更できる。よって、スイッチング電源1は、各タイミングにおいて適した過電流保護動作を実施できる。
【0089】
また、移行時間は、トランジスタMPのオンオフ制御を行うためのパルスのパルス数に応じて定まってよい。
【0090】
これにより、スイッチング電源1は、パルス数のカウントを行うための比較器51,52のような簡易な構成を有することで、容易に移行時間の経過を測定可能である。
【0091】
また、保護回路は、フィードバック電圧に基づいて、移行時間を切り替え、移行時間の経過後にヒカップ動作を実行してよい。
【0092】
これにより、スイッチング電源1は、スイッチング電源1を完全に停止させずに、トランジスタMPのオンオフ制御の停止と再開を繰り返しながら、トランジスタMPを流れる過電流を抑制できる。これにより、例えば、過電流を加味しつつ、小さな電力で動作可能な装置(例えばマイコン等)の動作を継続できる。よって、例えば、マイコンを通じて通信機能や表示機能を確保し、監視を継続できるメリットがある。このことは、パルスバイパルス動作を実施する場合にも言える。
【0093】
また、保護回路は、フィードバック電圧VFBに基づいて、ヒカップ動作とラッチ動作とを切り替えてよい。
【0094】
これにより、スイッチング電源1は、トランジスタMPのオンオフ制御の停止の後に再開するかどうかを決定できる。よって、例えば、過電流によるフィードバック電圧VFBの低下量が小さい場合には、スイッチング電源1を完全に停止させずに、停止と再開を繰り返しながら、トランジスタMPを流れる過電流を抑制できる。一方、過電流によるフィードバック電圧VFBの低下量が大きい場合には、スイッチング電源1は、スイッチング電源1は、トランジスタMPのオンオフの制御を完全に停止させることで、スイッチング電源1内の部品や負荷3の故障を抑制できる。よって、スイッチング電源1のメンテナンスが容易になる。
【0095】
また、制御回路は、電流が過電流である場合、トランジスタMPのオンオフ制御を行うためのパルスのうち過電流であったパルスの周期内においてトランジスタMPをオフに制御してよい。
【0096】
これにより、スイッチング電源1は、過電流が検出された場合には、パルス毎にPWM信号のオン期間を短縮することで、つまりデューティ比を小さくすることで、過電流を抑制できる。また、スイッチング電源1は、パルスバイパルス動作を過電流保護動作(ヒカップ動作やラッチ動作)と組み合わせることで、過電流を効率良く抑制できる。
【0097】
以上、図面を参照して本開示に係るスイッチッグ電源の実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0098】
上記実施形態では、第1保護制御回路50が、過電流保護動作を行うための移行時間を決定し、時間を計測して移行時間が経過したか否かを判定し、ロジック回路60による停止動作を指示することを例示したが、これに限られない。例えば、第1保護制御回路50が、移行時間を決定し、決定した移行時間をロジック回路60に通知し、ロジック回路60が時間を計測して移行時間が経過したか否かを判定し、停止動作するようにしてもよい。同様に、ヒカップ動作において、第1保護制御回路50が停止動作の指示後の時間を計測して所定時間が経過したか否かを判定し、ロジック回路60による再開動作を指示することを例示したが、これに限られない。例えば、ヒカップ動作において、ロジック回路60が、停止動作後の時間を計測して所定時間が経過したか否かを判定し、再開動作するようにしてもよい。
【0099】
上記実施形態では、フィードバック電圧VFBがフィードバック電圧VFBの検出開始時から第2過電流保護動作領域となる第2の電圧範囲の電圧である場合、第1過電流保護動作領域に対応する過電流保護動作を行うことなく、最初から第2過電流保護動作領域に対応する過電流保護動作を行ってよい。
【0100】
上記実施形態では、トランジスタMPがPMOSトランジスタにて生成されることを例示したが、これに限られない。実施形態の機能を実現できれば、PMOSがNMOSでもよく、その他のトランジスタで構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示は、過電流による発熱を加味して、スイッチング電源が備えるインダクタを小型化できるスイッチング電源等に有用である。
【符号の説明】
【0102】
1 スイッチング電源
2 直流電源
3 負荷
10 ソフトスタート回路
20 エラーアンプ
21 位相補償コンデンサ
22 抵抗
30 PWM比較器
40 FF回路
50,50A,50B,50C 第1保護制御回路
51,52,54,55 比較器
53 カウント数制御回路
56 モード選択回路
57 タイマ
60 ロジック回路
70 電流検出回路
80 第2保護制御回路
90 スロープ補償回路
95 加算器
OUT コンデンサ
L1 コイル
MP トランジスタ
ESR,RB1,RB2 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8