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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】誤差拡散装置及びD/A変換装置
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/08 20060101AFI20231121BHJP
   H03M 1/66 20060101ALI20231121BHJP
   H03M 3/04 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H03M1/08 B
H03M1/66 A
H03M3/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020080588
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021175158
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 淳一
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-501287(JP,A)
【文献】特表2013-505665(JP,A)
【文献】特開2004-236143(JP,A)
【文献】米国特許第06124813(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0197633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/08
H03M 1/66
H03M 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
8・2n-1(nは自然数)レベルのサーモメータコードとして構成された2・nビットの入力デジタルデータを多段に接続された複数の交換器セルを用いて誤差拡散を行い出力デジタルデータとして出力する誤差拡散装置であって、
前記出力デジタルデータを出力する終段の複数の前記交換器セル以外の前記交換器セルであって、前記入力デジタルデータの最下位ビットが入力される前記交換器セルを含み、8・2n-1・(1/4)レベル以下に相当するビットに対応する前記交換器セルについては、前記入力デジタルデータの最下位ビットが遷移する場合においてのみ前記交換器セルにおいて交換動作を行わせるように前記交換動作を制限し、
前記出力デジタルデータを出力する後段の前記交換器セル以外の前記交換器セルであって、前記入力デジタルデータの最上位ビットが入力される前記交換器セルを含み、8・2n-1・(3/4)レベル以上に相当するビットに対応する前記交換器セルについては、前記入力デジタルデータの最上位ビットが遷移する場合においてのみ前記交換器セルにおいて交換動作を行わせるように前記交換動作を制限し、
前記出力デジタルデータを出力する終段の全ての前記交換器セルについては、前記入力デジタルデータの前記最上位ビット及び前記最下位ビットが遷移しない場合においてのみ交換動作を行わせるように前記交換動作を制限する、
誤差拡散装置。
【請求項2】
前記複数の交換器セルのうち、前記交換動作が制限されている以外の前記交換器セルについては、常時前記交換動作を行わせる、
請求項1記載の誤差拡散装置。
【請求項3】
前記交換器セルは、各1ビットのデータが入力される第1入力端子及び第2入力端子と、接続切替を行うスイッチ部と、前記第1入力端子あるいは前記第2入力端子に排他的に前記スイッチ部を介して接続され、各1ビットのデータを出力する第1出力端子及び第2出力端子と、を備え、
前記交換動作を行う場合には、前記スイッチ部は、前記第1入力端子に入力されたデータを前記第2出力端子から出力し、前記第2入力端子に入力されたデータを前記第1出力端子から出力し、
前記交換動作が制限される場合には、前記スイッチ部は、前記第1入力端子に入力されたデータを前記第1出力端子から出力し、前記第2入力端子に入力されたデータを前記第2出力端子から出力する、
請求項1又は請求項2記載の誤差拡散装置。
【請求項4】
前記入力デジタルデータに基づいて前記交換器セルのそれぞれに対し、前記交換動作を行わせ、あるいは、制限するための制御信号を出力するコントローラを備えた、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の誤差拡散装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の誤差拡散装置と、
前記出力デジタルデータが入力され、前記出力デジタルデータのデジタル/アナログ変換を行ってアナログ信号として出力するD/A変換ユニットと、
を備えたD/A変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、誤差拡散装置及びD/A変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーモメータコーディングされた同じ重みをもつ変換エレメントを用いて、デジタル/アナログ変換を行う装置が提案されている。
例えば、特許文献1記載の技術(第1の従来技術)は、入力された順に、順繰りで変換エレメントを操作していくことで、入力されるデータが一定のランダム性を持つならば、選択されるエレメントは均等となり、誤差が拡散されるようになっている。
また、特許文献2及び非特許文献1記載の技術(第2の従来技術)は、2入力2出力を持つスクランブラと称される交換機セルを2bitずつの信号に割り当て、バタフライ結線したものである。それぞれのスクランブラの操作によって発生するノイズは一次のノイズシェーピングとなり、スイッチ操作は均等にスクランブル操作が行われるように結線されており、結果的に帯域内のシステム上のノイズの発生を抑えつつ誤差を拡散している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-078015号公報
【文献】特表平9-501287号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】「Sigma-Delta New algorithms and Techniques」Bob Adams著「Oversampling and Coarse Quantization for Signals April 11-April 15, 2005」資料 https://home.cscamm.umd.edu/programs/ocq05/schedule-ocq05.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、第1の従来技術では、入力されるデータパターンによっては周期性をもってしまい、必要な帯域内への周期性のある信号(トーンと呼ばれる)が発生してしまう虞があった。
また第2の従来技術では、ランダム性が非常に高まるため、常に多くの変換エレメントを動作させる必要があり、消費電力が大きくなるという虞があった。
本技術は、個別部品で構成したデジタル・アナログ変換器においても、一定の誤差拡散効果を得つつ、変換エレメントの動作を減らして低消費電力化を図ることが可能な誤差拡散装置及びD/A変換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の誤差拡散装置は、8・2n-1(nは自然数)レベルのサーモメータコードとして構成された2・nビットの入力デジタルデータを多段に接続された複数の交換器セルを用いて誤差拡散を行い出力デジタルデータとして出力する誤差拡散装置であって、出力デジタルデータを出力する終段の複数の交換器セル以外の交換器セルであって、入力デジタルデータの最下位ビットが入力される交換器セルを含み、8・2n-1・(1/4)レベル以下に相当するビットに対応する交換器セルについては、入力デジタルデータの最下位ビットが遷移する場合においてのみ交換器セルにおいて交換動作を行わせるように交換動作を制限し、出力デジタルデータを出力する後段の交換器セル以外の交換器セルであって、入力デジタルデータの最上位ビットが入力される交換器セルを含み、8・2n-1・(3/4)レベル以上に相当するビットに対応する交換器セルについては、入力デジタルデータの最上位ビットが遷移する場合においてのみ交換器セルにおいて交換動作を行わせるように交換動作を制限し、出力デジタルデータを出力する終段の全ての交換器セルについては、入力デジタルデータの最上位ビット及び最下位ビットが遷移しない場合においてのみ交換動作を行わせるように交換動作を制限する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態のD/A変換装置の概要構成ブロック図である。
図2図2は、誤差拡散装置の概要構成ブロック図である。
図3図3は、交換器セル及びコントローラの一例の要部構成説明図である。
図4図4は、第1実施形態の動作説明図である。
図5図5は、第1実施形態の特性例の説明図である。
図6図6は、振幅状態と消費電流との関係を説明する図である。
図7図7は、第2実施形態の誤差拡散装置の交換器セルユニットの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。
[1]第1実施形態
図1は、実施形態のD/A変換装置の概要構成ブロック図である。
図1においては、3ビット/8レベルのサーモメータコード入力の誤差拡散装置を備えたD/A変換装置を例として説明する。
D/A変換装置10は、サーモメータコードとしての入力データDINが入力されて、誤差拡散を行った出力データDOUTを出力する誤差拡散装置11と、誤差拡散装置11の出力データDOUTのデジタル/アナログ変換(D/A変換)を行ってアナログ出力信号SAとして出力するD/A変換ユニット12と、を備えている。
【0009】
図2は、誤差拡散装置の概要構成ブロック図である。
誤差拡散装置11は、交換器セルユニット21と、コントローラ22と、を備えている。
交換器セルユニット21は、第1交換器セル31-1~第10交換器セル31-10を備えている。
【0010】
第1交換器セル31-1は、入力データDINの最上位ビットb7及びビットb6が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C1に基づいて、いずれか一方を第7交換器セル31-7に出力し、いずれか他方を第8交換器セル31-8に出力する。
【0011】
第2交換器セル31-2は、入力データDINのビットb5及びビットb4が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C2に基づいて、いずれか一方を第5交換器セル31-5に出力し、いずれか他方を第6交換器セル31-6に出力する。
【0012】
第3交換器セル31-3は、入力データDINのビットb3及びビットb2が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C3に基づいて、いずれか一方を第5交換器セル31-5に出力し、いずれか他方を第6交換器セル31-6に出力する。
【0013】
第4交換器セル31-4は、入力データDINのビットb1及び最下位ビットb0が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C4に基づいて、いずれか一方を第9交換器セル31-9に出力し、いずれか他方を第10交換器セル31-10に出力する。
【0014】
第5交換器セル31-5は、一方の入力端子に第2交換器セル31-2からのデータが入力され、他方の入力端子に第3交換器セル31-3からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C5に基づいて、いずれか一方を第7交換器セル31-7に出力し、いずれか他方を第8交換器セル31-8に出力する。
【0015】
第6交換器セル31-6は、一方の入力端子に第2交換器セル31-2からのデータが入力され、他方の入力端子に第3交換器セル31-3からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C6に基づいて、いずれか一方を第9交換器セル31-9に出力し、いずれか他方を第10交換器セル31-10に出力する。
【0016】
第7交換器セル31-7は、一方の入力端子に第1交換器セル31-1からのデータが入力され、他方の入力端子に第5交換器セル31-5からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C7に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTの最上位ビットB7として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB6として出力する。
【0017】
第8交換器セル31-8は、一方の入力端子に第1交換器セル31-1からのデータが入力され、他方の入力端子に第5交換器セル31-5からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C8に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB5として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB4として出力する。
【0018】
第9交換器セル31-9は、一方の入力端子に第6交換器セル31-6からのデータが入力され、他方の入力端子に第4交換器セル31-4からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C9に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB3として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB2として出力する。
【0019】
第10交換器セル31-10は、一方の入力端子に第6交換器セル31-6からのデータが入力され、他方の入力端子に第4交換器セル31-4からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C10に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB1として出力し、いずれか他方を出力データDOUTの最下位ビットB0として出力する。
【0020】
図3は、交換器セル及びコントローラの一例の要部構成説明図である。
図3においては、理解の容易のため、一つの交換器セルについてのみ説明する。
交換器セル31-x(x=1~10)は、第1入力端子TI1と、第2入力端子TI2と、スイッチ部SWと、第1出力端子TO1と、第2出力端子TO2と、を備えている。
コントローラ22は、1ビットのデータをクロック信号CLKにより更新可能に記憶するレジスタ41と、一方の入力端子にレジスタ41の出力端子が接続され、他方の入力端子に第1入力端子TI1の入力データが入力され、交換制御信号Cxを出力する第1EXOR(排他論理和回路)42と、一方の入力端子に第1EXOR42の出力端子が接続され、他方の入力端子に第2入力端子TI2の入力データが入力され、出力端子がレジスタ41の入力端子に接続された第2EXOR43と、を備えている。
【0021】
上記構成において、第1交換器セル31-1は、出力デジタルデータとしての出力データDOUTを出力する後段の交換器セル(=第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10)以外の交換器セルであって、入力デジタルデータとして入力データDINの最上位ビットb7が入力され、8・2n-1・(3/4)レベル以上に相当するビットに対応する交換器セルに相当している。本第1実施形態においては、n=1である。
【0022】
そして、第1交換器セル31-1は、入力デジタルデータとしての入力データDINの最上位ビットb7が遷移する場合においてのみ交換動作を行わせるように交換動作が制限されている。
【0023】
第4交換器セル31-4は、出力デジタルデータを出力する終段の複数の交換器セル以外の交換器セルであって、前記入力デジタルデータの最下位ビットが入力され、8・2n-1・(1/4)レベル以下に相当するビットに対応する交換器セルに相当している。本第1実施形態においては、n=1である。
【0024】
そして、第4交換器セル31-4は、入力デジタルデータとしての入力データDINの最下位ビットb0が遷移する場合においてのみ交換動作を行わせるように交換動作が制限されている。
【0025】
また、第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10は、出力デジタルデータを出力する終段の全ての交換器セルに相当している。
【0026】
さらに第2交換器セル31-2、第3交換器セル31-3、第5交換器セル31-5及び第6交換器セル31-6は、交換動作が制限されている以外の交換器セルに相当し、常時交換動作を行わせることとなっている。
【0027】
図4は、第1実施形態の動作説明図である。
図4(A)は、入力データDINとして入力する8ビットのサーモメータコードとして、マルチビットデルタシグマ変調を行った8ビット9値のフルスイング信号(正の最大値から負の最大値までの信号)を示している。図4(A)においては、振幅に応じて、おおむね2bit分を使用して表現を行っている。
【0028】
したがって、入力データDINの変化に対して変化するビットは少なく、スイッチングに伴う電力消費は少ないが、誤差はこの2ビットでのみしか緩和できない。
また、図4(B)は、従来手法で誤差拡散を行った場合の説明図である。信号全域にわたって拡散動作が行われているが、常にスイッチングに伴う電力消費が発生している。
【0029】
図4(C)は、第1実施形態の誤差拡散処理を行った場合の説明図である。
本第1実施形態において、以下の説明では、入力データDINがビットb2~b5のみで表されている信号である場合(ビットb0,b1,b6,b7は、例えば、“0”であり、実質的に信号を構成していない場合)には、小振幅の信号に対応する小信号として扱うものとする。換言すれば、入力信号が最大振幅の場合に対して、振幅が半分以下の場合が小信号に相当している。
【0030】
また、入力データDINがビットb1あるいはビットb6を含んで表されている信号である場合には、中信号として扱うものとする。
さらには、入力データDINが、最下位ビットb0あるいは最上位ビットb7を含んで表されている場合には、大信号として扱うものとする。
【0031】
本第1実施形態においては、入力データDINに対応する信号が小信号、すなわち、信号ビットb2~b5のみで表されている場合においては、コントローラ22は、下位ビットb0、b1及び上位ビットb6、b7の遷移をしないように、第1交換器セル31-1及び第4交換器セル31-4のスイッチング動作を停止させる。
【0032】
すなわち、コントローラ22は、第1交換機セル31-1及び第4交換器セル31-4に対するクロック信号CLKの入力を停止し、第2交換器セル31-2、第3交換器セル31-3、第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10にクロック信号CLKの入力を継続する。
【0033】
この結果、第1交換器セル31-1及び第4交換器セル31-4によるスイッチングノイズの発生を抑えることができる。
この場合において、下位ビットb0、b1及び上位ビットb6、b7に存在する誤差成分は固定値の誤差として変動しないので小信号の成分には影響が出ない。
【0034】
また、入力データDINに対応する信号が中信号である場合には、第1交換器セル31-1及び第4交換器セル31-4は動作して交換操作を行うようにし、最後段の交換機セルである第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10は動作を停止するようにコントローラ22が制御を行っている。
【0035】
この場合においては、信号が変化する経路は上位ビット側及び下位ビット側でブロック分けがなされているので、小信号領域から大信号領域へ遷移していく過程において、変化個数は抑えつつも、不連続な点が起きないようになっている。
【0036】
さらに入力データDINに対応する信号が大信号の場合は、初段の振幅感応を持つ第1交換機セル31-1及び第4交換器セル31-4の交換操作を停止し、最後段の交換機セルである第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10は交換操作を行うようにコントローラ22が制御を行っている。
【0037】
すなわち、コントローラ22は、第1交換機セル31-1及び第4交換器セル31-4にクロック信号CLKの入力を停止し、第7交換器セル31-7~第10交換器セル31-10にクロック信号CLKの入力を継続する。
【0038】
これは、サーモメータコード入力の場合には、最上位ビットb7あるいは最下位ビットb0が遷移する状況においては、ビットb2~ビットb5は変化しないため、これらのビットb2~ビットb5に対応する第2交換器セル31-2、第3交換器セル31-3、第5交換器セル31-5、第6交換器セル31-5は、常時動作しているが、これらの出力は同一の値となるので、実効的な変換ビットは2ビットに限定される。
【0039】
したがって、誤差拡散操作は少なくなるが、この後段に接続されるアナログ増幅回路から見た場合に、大信号(大振幅)の状況で限界まで拡散操作を行ったとしても、スイッチングに伴う本来不要なノイズがアンプの誤動作を起こす虞がある。
【0040】
例えば、過大振幅時に信号反転を起こす現象などが発生する可能性がある。
すなわち、本第1実施形態においては、拡散操作で得られるメリットに対してデメリットも大きいので積極的に操作を行わないようにしているのである。
【0041】
以上の説明のように、本第1実施形態の誤差拡散装置11によれば、対応する信号の振幅に応じて、使用するエリアが拡大していくのがわかる。単純に分割した場合は、上位ビット側あるいは下位ビット側のつなぎ目が不連続になってしまうが、本第1実施形態の誤差拡散手法を採ることで、つなぎ目に入る信号も誤差拡散の対象とすることができ、ひいては、D/A変換装置10として良好なアナログ出力信号SAを得ることが可能となる。
【0042】
図5は、第1実施形態の特性例の説明図である。
第1実施形態の効果を確認するために十分マッチングをとった交換器セル(変換エレメント)31を用意し、意図的に3ビット目のみを1%ずらしたときの入力レベルに対する歪率を測定したものである。
図5においては、無補正の場合(L0)、従来手法の場合(LP)及び第1実施形態の場合(L1)の特性例を示している。
無補正の場合には極端に特性が悪化してしまう。
これに対し、従来手法及び第1実施形態の場合では、第1実施形態の場合が、最大振幅近傍で若干の歪み率の低下が認められるが、実効的には、ほぼ全域で良好な特性が得られることがわかる。
【0043】
図6は、振幅状態と消費電流との関係を説明する図である。
図6においては、フルスイング(0dBFS)から-80dBFS動作及び無信号時について、従来手法の場合及び第1実施形態の場合における誤差変換装置の消費電流を示している。
【0044】
図6に示すように、第1実施形態は、従来手法の場合と比較して、低い消費電流に抑えることができていることがわかる。
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、一定の誤差拡散効果を得つつ、誤差拡散装置11における交換器セル(エレメント)操作の消費電流を減らしつつ、総合的な性能を維持することができていることがわかる。
【0045】
[2]第2実施形態
次に第2実施形態について説明する。
本第2実施形態と異なる点は、入力データDINとして8ビットではなく、16ビット構成としている点である。
【0046】
図7は、第2実施形態の誤差拡散装置の交換器セルユニットの説明図である。
交換器セルユニット21Aは、第1交換器セル31-11~第28交換器セル31-38を備えている。
【0047】
第1交換器セル31-11は、入力データDINの最上位ビットb15及びビットb14が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C11に基づいて、いずれか一方を第9交換器セル31-19に出力し、いずれか他方を第10交換器セル31-20に出力する。
【0048】
第2交換器セル31-12は、入力データDINのビットb13及びビットb12が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C12に基づいて、いずれか一方を第9交換器セル31-19に出力し、いずれか他方を第10交換器セル31-20に出力する。
【0049】
第3交換器セル31-13は、入力データDINのビットb11及びビットb10が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C13に基づいて、いずれか一方を第11交換器セル31-21に出力し、いずれか他方を第12交換器セル31-22に出力する。
【0050】
第4交換器セル31-14は、入力データDINのビットb9及びビットb8が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C14に基づいて、いずれか一方を第11交換器セル31-21に出力し、いずれか他方を第12交換器セル31-22に出力する。
【0051】
第5交換器セル31-15は、入力データDINのビットb7及びビットb6が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C15に基づいて、いずれか一方を第13交換器セル31-23に出力し、いずれか他方を第14交換器セル31-24に出力する。
【0052】
第6交換器セル31-16は、入力データDINのビットb5及びビットb4が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C16に基づいて、いずれか一方を第13交換器セル31-23に出力し、いずれか他方を第14交換器セル31-24に出力する。
【0053】
第7交換器セル31-17は、入力データDINのビットb3及びビットb2が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C17に基づいて、いずれか一方を第15交換器セル31-25に出力し、いずれか他方を第16交換器セル31-26に出力する。
【0054】
第8交換器セル31-18は、入力データDINのビットb1及び最下位ビットb0が入力され、コントローラ22からの交換制御信号C18に基づいて、いずれか一方を第15交換器セル31-25に出力し、いずれか他方を第16交換器セル31-26に出力する。
【0055】
第9交換器セル31-19は、一方の入力端子に第1交換器セル31-11からのデータが入力され、他方の入力端子に第2交換器セル31-12からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C19に基づいて、いずれか一方を第21交換器セル31-31に出力し、いずれか他方を第23交換器セル31-33に出力する。
【0056】
第10交換器セル31-20は、一方の入力端子に第1交換器セル31-11からのデータが入力され、他方の入力端子に第2交換器セル31-12からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C20に基づいて、いずれか一方を第22交換器セル31-32に出力し、いずれか他方を第24交換器セル31-34に出力する。
【0057】
第11交換器セル31-21は、一方の入力端子に第3交換器セル31-13からのデータが入力され、他方の入力端子に第4交換器セル31-14からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C21に基づいて、いずれか一方を第17交換器セル31-27に出力し、いずれか他方を第19交換器セル31-29に出力する。
【0058】
第12交換器セル31-22は、一方の入力端子に第3交換器セル31-13からのデータが入力され、他方の入力端子に第4交換器セル31-14からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C22に基づいて、いずれか一方を第18交換器セル31-28に出力し、いずれか他方を第20交換器セル31-30に出力する。
【0059】
第13交換器セル31-23は、一方の入力端子に第5交換器セル31-15からのデータが入力され、他方の入力端子に第6交換器セル31-16からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C23に基づいて、いずれか一方を第17交換器セル31-27に出力し、いずれか他方を第19交換器セル31-29に出力する。
【0060】
第14交換器セル31-24は、一方の入力端子に第5交換器セル31-15からのデータが入力され、他方の入力端子に第6交換器セル31-16からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C24に基づいて、いずれか一方を第18交換器セル31-28に出力し、いずれか他方を第20交換器セル31-30に出力する。
【0061】
第15交換器セル31-25は、一方の入力端子に第7交換器セル31-17からのデータが入力され、他方の入力端子に第8交換器セル31-18からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C25に基づいて、いずれか一方を第25交換器セル31-35に出力し、いずれか他方を第27交換器セル31-37に出力する。
【0062】
第16交換器セル31-26は、一方の入力端子に第7交換器セル31-17からのデータが入力され、他方の入力端子に第8交換器セル31-18からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C26に基づいて、いずれか一方を第26交換器セル31-36に出力し、いずれか他方を第28交換器セル31-38に出力する。
【0063】
第17交換器セル31-27は、一方の入力端子に第11交換器セル31-21からのデータが入力され、他方の入力端子に第13交換器セル31-23からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C27に基づいて、いずれか一方を第21交換器セル31-31に出力し、いずれか他方を第23交換器セル31-33に出力する。
【0064】
第18交換器セル31-28は、一方の入力端子に第12交換器セル31-22からのデータが入力され、他方の入力端子に第14交換器セル31-24からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C28に基づいて、いずれか一方を第22交換器セル31-32に出力し、いずれか他方を第24交換器セル31-34に出力する。
【0065】
第19交換器セル31-29は、一方の入力端子に第11交換器セル31-21からのデータが入力され、他方の入力端子に第13交換器セル31-23からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C29に基づいて、いずれか一方を第25交換器セル31-35に出力し、いずれか他方を第27交換器セル31-37に出力する。
【0066】
第20交換器セル31-30は、一方の入力端子に第12交換器セル31-22からのデータが入力され、他方の入力端子に第14交換器セル31-24からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C30に基づいて、いずれか一方を第26交換器セル31-36に出力し、いずれか他方を第28交換器セル31-38に出力する。
【0067】
第21交換器セル31-31は、一方の入力端子に第9交換器セル31-19からのデータが入力され、他方の入力端子に第17交換器セル31-27からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C31に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTの最上位ビットB15として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB14として出力する。
【0068】
第22交換器セル31-32は、一方の入力端子に第10交換器セル31-20からのデータが入力され、他方の入力端子に第18交換器セル31-28からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C32に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB13として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB12として出力する。
【0069】
第23交換器セル31-33は、一方の入力端子に第9交換器セル31-19からのデータが入力され、他方の入力端子に第17交換器セル31-27からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C33に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB11として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB10として出力する。
【0070】
第24交換器セル31-34は、一方の入力端子に第10交換器セル31-20からのデータが入力され、他方の入力端子に第18交換器セル31-28からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C34に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB9として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB8として出力する。
【0071】
第25交換器セル31-35は、一方の入力端子に第19交換器セル31-29からのデータが入力され、他方の入力端子に第15交換器セル31-25からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C35に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB7として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB6として出力する。
【0072】
第26交換器セル31-36は、一方の入力端子に第16交換器セル31-26からのデータが入力され、他方の入力端子に第20交換器セル31-30からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C36に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB5として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB4として出力する。
【0073】
第27交換器セル31-37は、一方の入力端子に第15交換器セル31-25からのデータが入力され、他方の入力端子に第19交換器セル31-29からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C37に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB3として出力し、いずれか他方を出力データDOUTのビットB2として出力する。
【0074】
第28交換器セル31-38は、一方の入力端子に第16交換器セル31-26からのデータが入力され、他方の入力端子に第20交換器セル31-30からのデータが入力され、コントローラ22からの交換制御信号C38に基づいて、いずれか一方を出力データDOUTのビットB1として出力し、いずれか他方を出力データDOUTの最下位ビットB0として出力する。
【0075】
上記構成において、第1交換器セル31-11、第2交換器セル31-12、第9交換器セル31-19及び第10交換器セル31-20は、出力デジタルデータとしての出力データDOUTを出力する後段の交換器セル(=第21交換器セル31-31~第28交換器セル31-38)以外の交換器セルであって、入力デジタルデータとして入力データDINの最上位ビットb7が入力される交換器セル31-11、31-19及び31-20を含む交換器セルであって、8・2n-1・(3/4)レベル以上に相当するビットに対応する交換器セルに相当している。本第2実施形態においては、n=2である。
【0076】
そして、第1交換器セル31-11、第2交換器セル31-12、第9交換器セル31-19及び第10交換器セル31-20は、入力デジタルデータとしての入力データDINの最上位ビットb15が遷移する場合においてのみ交換動作を行わせるように交換動作が制限されている。
【0077】
第7交換器セル31-17、第8交換器セル31-18、第15交換器セル31-25及び第16交換器セル31-26は、出力デジタルデータを出力する終段の複数の交換器セル以外の交換器セルであって、前記入力デジタルデータの最下位ビットが入力される交換器セルを含む交換器セルであって、8・2n-1・(1/4)レベル以下に相当するビットに対応する交換器セルに相当している。本第2実施形態においては、n=2である。
【0078】
そして、第7交換器セル31-17、第8交換器セル31-18、第15交換器セル31-25及び第16交換器セル31-26は、入力デジタルデータとしての入力データDINの最下位ビットb0が遷移する場合においてのみ交換動作を行わせるように交換動作が制限されている。
【0079】
また、第21交換器セル31-31~第28交換器セル31-38は、出力デジタルデータを出力する終段の全ての交換器セルに相当している。
【0080】
さらに第3交換器セル31-13~第6交換器セル31-16、第11交換器セル31-21~第14交換器セル31-24及び第17交換器セル31-27~第20交換器セル31-30は、交換動作が制限されている以外の交換器セルに相当し、常時交換動作を行わせることとなっている。
【0081】
本第2実施形態の動作は、扱うデータが16ビットである点を除き、第1実施形態と同様である。
【0082】
したがって、本第2実施形態によっても、一定の誤差拡散効果を得つつ、誤差拡散装置11における交換器セル(エレメント)操作の消費電流を減らしつつ、総合的な性能を維持することができる。
【0083】
[3]実施形態の変形例
なお、本技術の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、以上の説明においては、8・2n-1(nは自然数)レベルのサーモメータコードとして構成された2・nビットの入力デジタルデータを多段に接続された複数の交換器セルを用いて誤差拡散を行い出力デジタルデータとして出力する誤差拡散装置のうち、n=1,2の場合について説明したが、3以上の場合であっても同様に適用が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 D/A変換装置
11 誤差拡散装置
12 D/A変換ユニット
21 交換器セルユニット
22 コントローラ
31-1~31-10 第1交換器セル~第10交換器セル
31-11~31-38 第1交換器セル~第28交換器セル
41 レジスタ
C1~C9 交換制御信号
TI1 第1入力端子
TI2 第2入力端子
TO1 第1出力端子
TO2 第2出力端子
b0 最下位ビット
b7 最上位ビット
b15 最上位ビット
C1~C9、C11~C38 交換制御信号
CLK クロック信号
DIN 入力データ(入力デジタルデータ)
DOUT 出力データ(出力デジタルデータ)
SA アナログ出力信号
SW スイッチ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7