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特許7389076基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法
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  • 特許-基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20231121BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20231121BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20231121BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/205
C23C16/44 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021046984
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146161
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】山中 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】山岡 優哉
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/148629(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/151996(WO,A1)
【文献】特開2013-115215(JP,A)
【文献】特開2012-212771(JP,A)
【文献】特開2013-219217(JP,A)
【文献】特開2016-66767(JP,A)
【文献】特開2016-76610(JP,A)
【文献】特開2019-91848(JP,A)
【文献】特開2011-44732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063957(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/205
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相成長用の反応炉室に隣接する搬送室内に設けられ、前記反応炉室に対して基板支持部材の収納又は取り出し動作を行う搬送用ロボットと、該搬送用ロボットに付設される基板入替装置とを備えている基板搬送機構において、
前記基板支持部材は、基板が載置されるトレイと、該トレイを周方向に複数並べて配置した円盤状のサセプタカバーとを有し、
前記サセプタカバーは、前記トレイの外形に対応する開口形状のトレイ保持部を有するとともに、該トレイ保持部に前記トレイを保持してなり、
前記搬送用ロボットは、前記トレイ保持部に保持したトレイを前記サセプタカバーの径方向に移動させる多関節アームと、前記トレイを前記サセプタカバーの周方向に移動させる回転装置とを備えていることを特徴とする基板搬送機構。
【請求項2】
前記基板入替装置は、前記サセプタカバーに対して基板を昇降させる昇降装置を備え、
前記搬送用ロボットは、前記回転装置に作動指令を与えて、複数の前記トレイ保持部にそれぞれ保持したトレイを、順次、間欠的に前記昇降装置と上下重なり合う位置に移動させる回転位相角制御手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の基板搬送機構。
【請求項3】
前記昇降装置は、上動位置で前記基板を載置する上下出没可能な突き上げピンを備えていることを特徴とする請求項2記載の基板搬送機構。
【請求項4】
請求項3記載の基板搬送機構を用いた基板搬送方法であって、
前記回転位相角制御手段により前記トレイを前記昇降装置と上下重なり合う位置に移動する位置だし工程と、
前記昇降装置を作動させて前記突き上げピンを上動位置に移動するピン上昇工程と、
基板を前記突き上げピン上に載置するピン上載置工程と、
前記突き上げピンを下動位置に戻して前記トレイに基板を載置するトレイ上載置工程と、を順に行うことを特徴とする基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法に関し、詳しくは、気相成長装置において基板を搬送するための基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体膜を製造するための気相成長装置は、複数の基板上に均一に薄膜を形成する必要があるため、成膜中の基板を自公転させる機構を備えており、こうした自公転機構によって、成膜処理の精度と生産性との両立が図られている。薄膜の製造プロセスにおいては、気相成長装置内に、基板に対して処理を行うモジュールが複数設けられ、これらモジュール間を、搬送用アームや搬送用ロボットなどと呼ばれる基板搬送機構を作動させて基板を順次搬送することにより、所定の処理が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-76610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された気相成長装置は、基板搬送経路における各種モジュールの配置に工夫を凝らし、基板の交換作業を反応炉室外で行うようにしたことから、生産性の向上や基板の汚染防止に資するものである。しかしながら、回転支持台などの専用装置を設置すると、隣接する室の容積がそれぞれ大きくなって装置が大型になるという問題があった。装置が大型になれば、それだけ搬送経路も長くなり、基板授受などの機構や制御システムが複雑になってしまう。また、近年、ニーズが高まってきている大口径基板への対応も困難になる。
【0005】
そこで本発明は、コンパクトな構成で、基板の搬送効率を高めることが可能な基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の基板搬送機構は、気相成長用の反応炉室に隣接する搬送室内に設けられ、前記反応炉室に対して基板支持部材の収納又は取り出し動作を行う搬送用ロボットと、該搬送用ロボットに付設される基板入替装置とを備えている基板搬送機構において、前記基板支持部材は、基板が載置されるトレイと、該トレイを周方向に複数並べて配置した円盤状のサセプタカバーとを有し、前記サセプタカバーは、前記トレイの外形に対応する開口形状のトレイ保持部を有するとともに、該トレイ保持部に前記トレイを保持してなり、前記搬送用ロボットは、前記トレイ保持部に保持したトレイを前記サセプタカバーの径方向に移動させる多関節アームと、前記トレイを前記サセプタカバーの周方向に移動させる回転装置とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記基板入替装置は、前記サセプタカバーに対して基板を昇降させる昇降装置を備え、前記搬送用ロボットは、前記回転装置に作動指令を与えて、複数の前記トレイ保持部にそれぞれ保持したトレイを、順次、間欠的に前記昇降装置と上下重なり合う位置に移動させる回転位相角制御手段を備えていることを特徴としている。さらに、前記昇降装置は、上動位置で前記基板を載置する上下出没可能な突き上げピンを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の基板搬送方法は、前記基板搬送機構を用いた基板搬送方法であって、前記回転位相角制御手段により前記トレイを前記昇降装置と上下重なり合う位置に移動する位置だし工程と、前記昇降装置を作動させて前記突き上げピンを上動位置に移動するピン上昇工程と、基板を前記突き上げピン上に載置するピン上載置工程と、前記突き上げピンを下動位置に戻して前記トレイに基板を載置するトレイ上載置工程と、を順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板搬送機構に備わる搬送用ロボットが、トレイ保持部に保持したトレイをサセプタカバーの径方向に移動させる多関節アームと、トレイをサセプタカバーの周方向に移動させる回転装置とを備えているので、反応炉室に対して複数の基板を一括で収納したり、取り出したりする作業の流れが滞りなく行え、また、基板の入替作業を反応炉室から取り出して即座に行えることから、作業効率はもとより、入替作業に伴う専用スペースをなくして装置の一層の小型化を図ることができる。すなわち、気相成長における生産性や品質の向上を図り、もって、大口径基板のニーズに応えることが可能な搬送用ロボットを備えた基板搬送機構が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示す基板搬送機構の平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】同じく基板を載置するトレイの回転位相角を調整する説明図である。
図4】同じく突き上げピンを上動位置に移動させる説明図である。
図5】同じく搬送用アームにより突き上げピン上に基板を載置する説明図である。
図6】同じく突き上げピンを下動位置に戻してトレイに基板を載置する説明図である。
図7】同じく基板を周状に並べてトレイに載置する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図7は、本発明の基板搬送機構の一形態例を示すものである。基板搬送機構11は、半導体薄膜を成膜する気相成長装置の一要素であって、図1及び図2に示すように、気相成長用の反応炉室(図示せず)に隣接する搬送室12内に設けられ、反応炉室に対して基板支持部材13の収納又は取り出し動作を行う搬送用ロボット14と、該搬送用ロボット14に付設される基板入替装置15とを備えている。これらの各装置は、センシングによって位置調整しながら実際の移動を行うように多軸制御され、基板搬送に適合した駆動精度を有している。
【0012】
搬送室12は、直方体状の内部空間に各種装置を収容したものであって、1枚の隔壁16によって第1の空間17と第2の空間18との2室が並んで区画されている。両空間17,18は、隔壁16に設けられたゲートバルブ19を介して互いに接続されている。第1の空間17には、前記基板入替装置15の一部として機能する搬送用アーム20と、基板の向きを調節するためのオリエンタ21とが設置されており、搬送用アーム20の基板ピックアップ部20aで保持した基板を搬入搬出する際にゲートバルブ19が開閉するようになっている。
【0013】
一方、第2の空間18は、基板支持部材13が収まる程度に幅寸法や奥行き寸法が小さく抑えられており、この空間には前記搬送用ロボット14と、基板入替装置15の一部として機能する昇降装置22とが設置されている。
【0014】
基板支持部材13は、基板23が載置される円環形状のトレイ24と、該トレイ24を周方向に複数並べて配置した円盤状のサセプタカバー25とを有している。トレイ24には、基板23の円形状に対応した基板載置部(係合凹部)24aが設けられている。サセプタカバー25には、トレイ24の外形状(外径)に対応する円形開口形状のトレイ保持部(係合凹部)25aが設けられており、このトレイ保持部25aは、サセプタカバー25と同心の円周上に等間隔で6箇所設けられている。トレイ保持部25aにトレイ24を嵌め込むと係合状態で保持され、これにより、6つのトレイ24が、つまり6枚の基板23が円周状に並んで安定的に配置される。
【0015】
搬送用ロボット14は、複数のアーム部材26a,26b同士を水平回動自在に連結した多関節アーム26を備え、これらアーム部材26a,26bを回動して、トレイ保持部25aに保持したトレイ24をサセプタカバー25の中心軸Cを通る径方向に移動させる。すなわち、トレイ24上の基板23は、搬送用ロボット14の動作に従って直線移動(図1の左右方向に移動)し、反応炉室内の収納位置と、反応炉室内から搬送室12の第2の空間18に取り出した基板入替位置(図1)との間で移動可能になっている。
【0016】
多関節アーム26は、前記基板入替位置においてサセプタカバー25の略真下に位置し、図示は省略するが、台座部やこれに連結されるアーム基部材を含む各部(アーム部材23a,23b)がまとまった形で設けられている。各関節には、モータなどのアクチュエータが取り付けられ、アクチュエータの駆動はコントローラ(制御装置)からの制御信号により制御される。
【0017】
また、多関節アーム26における最も先端側のアーム部材26bには、サセプタカバー25をその中心軸Cまわりに回転可能に支持する回転装置(回転テーブル)27が設けられている(図2)。回転装置27は、サセプタカバー25に回転を与えてトレイ24をサセプタカバー25の周方向に移動させるもので、中央部に回転駆動ユニットを内蔵したフレーム体からなり、一端側がアーム部材26bに回動可能に連結されてサセプタカバー25の中心軸Cを通る径方向に延び、他端側にはトレイ保持部25aの位置(回転半径)に対応した開口部(図示せず)が設けられている。
【0018】
昇降装置22は、トレイ24上の基板23を入れ替えるときに作動するもので、前記回転装置27の開口部直下に1台設けられ、その固定は、例えば、室内の床に据え付けて固定する構成や、取付ブラケットを介して回転装置27に固定する構成などが挙げられる。昇降装置22の本体には、図4などに示すように、上下方向に出没可能な突き上げピン22aが設けられ、この突き上げピン22aを本体から出没させることで、基板入替位置にあるサセプタカバー25に対して基板23を単独で、あるいは、アタッチメントを介して基板23をトレイ24と一体で昇降させる。
【0019】
定位置に設けた昇降装置22を作動して基板入替作業を行う場合、回転位相角制御手段として機能する前記コントローラから作動指令が出され、これを受けて回転装置27の回転駆動ユニットでは、サセプタカバー25を右回転又は左回転のどちらか一方向に回転させ、6箇所のトレイ保持部25aにそれぞれ保持したトレイ24を、順次、間欠的に昇降装置22と上下重なり合う位置、つまり、突き上げピン22aが機能する位置に周方向移動(円弧移動)させる。
【0020】
このように構成された基板搬送機構11を用いて、例えば、未処理の基板を炉内に設置する場合、以下の順で進行する基板搬送機構11の自動制御がなされる。まず、図3に示すように、サセプタカバー25を基板入替位置に保持した状態で、搬送用アーム20により基板23が搬送室12の第2の空間18に搬入される。そして、基板23を載置する基準トレイ24を特定し、このトレイ24の回転位相角を調整する(位置だし工程)。これにより、トレイ24と昇降装置22とが上下重なり合う位置で対応付けられる。
【0021】
次いで、図4に示すように、昇降装置22を作動させて突き上げピン22aを上動位置に移動する(ピン上昇工程)。次いで、図5に示すように、搬送用アーム20による基板保持を解除して、基板23を突き上げピン22a上に載置する(ピン上載置工程)。次いで、図6に示すように、突き上げピン22aを下動位置に戻してトレイ24に基板23を載置し(トレイ上載置工程)、搬送用アーム20を搬送室12の第1の空間17に退室させる。これにより、基板23は、基板載置部24aに係合して保持され、安定状態となる。
【0022】
ここで、前記各工程を一巡した後、二巡目以降のそれぞれの開始前に、基板23を載置するトレイ24の回転位相角が調整される。したがって、本実施形態のように基板23を6枚載置するならば、サセプタカバー25の回転サイクル(一周期)の中で、基準トレイ24を特定した位置から60度ずつ回転位相角が調整され、各トレイ24は、サセプタカバー25の周方向に順次、間欠的に移動される。こうして、6枚の基板23の全てが周状に並んで各トレイ24に載置された状態になる。最後に、搬送用ロボット14の多関節アーム26を作動させて、サセプタカバー25及びトレイ24を反応炉室に収納する(炉内収納工程)。
【0023】
このように、本発明によれば、基板搬送機構11に備わる搬送用ロボット14が、トレイ保持部25aに保持したトレイ24をサセプタカバー25の径方向に移動させる多関節アーム26と、トレイ24をサセプタカバー25の周方向に移動させる回転装置27とを備えているので、反応炉室に対して複数の基板23を一括で収納したり、取り出したりする作業の流れが滞りなく行え、また、基板23の入替作業を反応炉室から取り出して即座に行えることから、作業効率はもとより、入替作業に伴う専用スペースをなくして装置の一層の小型化を図ることができる。すなわち、気相成長における生産性や品質の向上を図り、もって、大口径基板のニーズに応えることが可能な搬送用ロボット14を備えた基板搬送機構11が達成される。
【0024】
さらに、搬送用ロボット14が、複数のトレイ保持部25aにそれぞれ保持したトレイ24を、順次、間欠的に昇降装置22と上下重なり合う位置に移動させる回転位相角制御手段を備えているので、複数枚の基板23を入れ替える作業が精度よく安定して行え、これにより、昇降装置22に備わる突き上げピン22aの機能を最大限に活用可能な基板搬送機構及びこれを用いた基板搬送方法が達成される。
【0025】
なお、基板搬送について、成膜がなされた処理済の基板に対して行う場合、基板は、反応炉室から取り出された後、基板入替位置において設置時と逆の手順で回収されて、次工程に引き継がれる。また、搬送用ロボットは、回転装置とこれを円滑に作動させるシステムとを備えていればよく、必要に応じて適宜変更を加えることができる。さらに、基板支持部材の構成についても基板のサイズなどに応じて最適化が図れ、例えば、基板をトレイと一体的に取り扱うような使用態様にも柔軟に応じることができる。
【符号の説明】
【0026】
11…基板搬送機構、12…搬送室、13…基板支持部材、14…搬送用ロボット、15…基板入替装置、16…隔壁、17…第1の空間、18…第2の空間、19…ゲートバルブ、20…搬送用アーム、20a…基板ピックアップ部、21…オリエンタ、22…昇降装置、22a…突き上げピン、23…基板、24…トレイ、24a…基板載置部、25…サセプタカバー、25a…トレイ保持部、26…多関節アーム、26a,26b…アーム部材、27…回転装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7