(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-20
(45)【発行日】2023-11-29
(54)【発明の名称】内視鏡システム及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/045 20060101AFI20231121BHJP
【FI】
A61B1/045 619
A61B1/045 618
A61B1/045 622
(21)【出願番号】P 2022536123
(86)(22)【出願日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2021005202
(87)【国際公開番号】W WO2022014077
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020121680
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出村 崇徳
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-301968(JP,A)
【文献】国際公開第2020/017212(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216617(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/220848(WO,A1)
【文献】特開平06-181885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32
G02B 23/24 -23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイと、
画像制御用プロセッサとを備え、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行い、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記ディスプレイに自動で新たに子画面を展開し、前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像を、前記子画面に自動で表示する内視鏡システム。
【請求項2】
観察画像を表示するメイン画面及び前記メイン画面と別の位置に設けられた子画面を有するディスプレイと、
画像制御用プロセッサとを備え、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行い、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記ディスプレイの前記子画面に、前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像を、自動で表示する内視鏡システム。
【請求項3】
観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイと、
画像制御用プロセッサとを備え、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行い、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記メイン画面の表示を前記観察画像から前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像に自動で切り替える内視鏡システム。
【請求項4】
前記画像制御用プロセッサは、前記病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記病変候補領域の位置情報を前記メイン画面で表示する請求項1ないし3いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記画像制御用プロセッサは、前記病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記病変候補領域の方向を示すガイドを前記メイン画面で表示する請求項1ないし4いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項6】
波長特性が異なる通常光と、特殊光とを発する光源装置と、
通常光を発光する通常照明期間と、特殊光を発光する特殊照明期間とを自動的に切り替える場合において、通常光を第1発光パターンで発光し、特殊光を第2発光パターンで発光する光源用画像制御用プロセッサと、
通常光によって照明された観察対象を撮像して得られる通常画像信号と、特殊光によって照明された観察対象を撮像して
得られる特殊画像信号とを出力する撮像センサとを備え、
表示制御部は、前記通常画像信号に基づく前記観察画像に対して、前記特殊画像信号に基づく解析処理により得られた解析結果を表示する解析結果付き観察画像を前記ディスプレイに表示し、
検出部は、前記解析結果に基づいて、前記病変候補領域を検出した場合に、前記自動キャプチャを行う請求項1ないし5いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項7】
第1発光パターンは、前記通常照明期間のフレーム数が、それぞれの前記通常照明期間において同じである第1A発光パターンと、前記通常照明期間のフレーム数が、それぞれの通常照明期間において異なっている第1B発光パターンとのうちのいずれか1つのパターンである請求項6記載の内視鏡システム。
【請求項8】
第2発光パターンは、前記特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの前記特殊照明期間において同じであり、且つ、前記特殊光の発光スペクトルが、それぞれの前記特殊照明期間において同じである第2A発光パターン、
前記特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの前記特殊照明期間において同じであり、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの前記特殊照明期間において異なっている第2B発光パターン、
前記特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの前記特殊照明期間において異なっており、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの前記特殊照明期間において同じである第2C発光パターン及び、
前記特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの前記特殊照明期間において異なっており、且つ、前記特殊光の発光スペクトルが、それぞれの前記特殊照明期間において異なっている第2D発光パターンのうちのいずれか1つのパターンである請求項6または7記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記病変候補領域は、前記第2発光パターンの照明によって観察対象を撮像して検出する請求項6ないし8いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記第2発光パターンの照明によって観察対象を撮像して取得した前記特殊画像信号は、画像表示には使用しない請求項6ないし8いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項11】
観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記ディスプレイに自動で新たに子画面を展開し、前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像を、前記子画面に自動で表示するステップとを有する内視鏡システムの作動方法。
【請求項12】
観察画像を表示するメイン画面及び前記メイン画面と別の位置に設けられた子画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記ディスプレイの前記子画面に、前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像を、自動で表示するステップとを有する内視鏡システムの作動方法。
【請求項13】
観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、
前記画像制御用プロセッサは、
内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、前記第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、前記内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、前記第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、
前記自動キャプチャにより得られた前記第1病変候補画像及び前記第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、
前記第1位置情報と前記第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、前記第1位置情報と前記第2位置情報とがマッチングした場合に、前記第1病変候補画像と、前記第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、
前記画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、前記メイン画面の表示を前記観察画像から前記キャプチャ画像保存用メモリに保存した前記第1病変候補画像に自動で切り替えるステップとを有する内視鏡システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理によって、病変部に代表される所定の病変候補領域のAIによる自動検出を行う内視鏡システム及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、光源装置、内視鏡、及びプロセッサ装置を備える内視鏡システムを用いた診断が広く行われている。内視鏡システムは、光源装置が発する照明光を、内視鏡を介して観察対象に照射し、その照明光で照明中の観察対象を撮像して得た画像信号に基づいて、プロセッサ装置が観察対象の画像を生成する。この画像をディスプレイに表示することにより、医師は、ディスプレイ上の画像を見ながら診断を行うことができる。
【0003】
内視鏡検査では、内視鏡挿入部の挿入時は通常光照射で観察を行い、抜去時は特殊光で観察するという医師がいるが、通常光しか使用しない挿入時の病変は、見落としてしまうと抜去時に再度発見することが難しい。そのため、内視鏡スコープ挿入時に医師がフリーズ、キャプチャをしないが病変の疑いがある、病変候補領域について、通常光及び特殊光でキャプチャしておき、必要に応じてAI処理も実施する技術が開発されつつある。例えば、内視鏡診断時にコンピュータが医師に代わって特殊光照射により得た病変候補領域の情報を、通常光照射により得た画像に重ねて表示し報知することは、医師による病変候補領域の見落としを防ぐことができるため、内視鏡診断の確度を上げるものとして期待されている。
【0004】
具体的には、特許文献1では、内視鏡において、第1診断時に検出した画像的特徴量を含む第1識別情報と、第2診断時に検出した画像的特徴量を含む第2識別情報の比較処理を行い、差異があると判定された場合に、通常光診断画像上に記号の付与や音による見落としの報知を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ユーザーは、ディスプレイに表示された観察画像に注目して観察を行っている。そのため、ユーザーは、観察画像に対して注意を払っているものの、それ以外、例えば、見落とし報知時に発する特許文献1の「記号の付与や音」に対して注意をあまり払わない場合がある。このような場合には、特許文献1の「記号の付与や音」のアラートに気が付かない場合があった。そこで、特許文献1の「記号の付与や音」に代えて、観察画像に注目して観察を行うユーザーが、見落としのアラートに気付きやすくすることが求められていた。
【0007】
本発明は、病変候補領域の見落としを警告する場合において、ディスプレイ上の観察画像に注目して観察を行うユーザーが気付きやすい、見落とし防止のアラートを行うことができる内視鏡システム及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡システムは、観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイと、画像制御用プロセッサとを備え、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行い、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、ディスプレイに自動で新たに子画面を展開し、キャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像を、子画面に自動で表示する。
【0009】
また、本発明の内視鏡システムは、観察画像を表示するメイン画面及びメイン画面と別の位置に設けられた子画面を有するディスプレイと、画像制御用プロセッサとを備え、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行い、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、ディスプレイの子画面に、キャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像を、自動で表示する。
【0010】
また、本発明の内視鏡システムは、観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイと、画像制御用プロセッサとを備え、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存し、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行い、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、メイン画面の表示を観察画像からキャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像に自動で切り替える。
【0011】
画像制御用プロセッサは、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、病変候補領域の位置情報をメイン画面で表示することが好ましい。
【0012】
画像制御用プロセッサは、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、病変候補領域の方向を示すガイドをメイン画面で表示することが好ましい。
【0013】
波長特性が異なる通常光と、特殊光とを発する光源装置と、通常光を発光する通常照明期間と、特殊光を発光する特殊照明期間とを自動的に切り替える場合において、通常光を第1発光パターンで発光し、特殊光を第2発光パターンで発光する光源用画像制御用プロセッサと、通常光によって照明された観察対象を撮像して得られる通常画像信号と、特殊光によって照明された観察対象を撮像して得られる特殊画像信号とを出力する撮像センサとを備え、表示制御部は、通常画像信号に基づく観察画像に対して、特殊画像信号に基づく解析処理により得られた解析結果を表示する解析結果付き観察画像をディスプレイに表示し、検出部は、解析結果に基づいて、病変候補領域を検出した場合に、自動キャプチャを行うことが好ましい。
【0014】
第1発光パターンは、通常照明期間のフレーム数が、それぞれの通常照明期間において同じである第1A発光パターンと、通常照明期間のフレーム数が、それぞれの通常照明期間において異なっている第1B発光パターンとのうちのいずれか1つのパターンであることが好ましい。
【0015】
第2発光パターンは、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において同じであり、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において同じである第2A発光パターン、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において同じであり、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において異なっている第2B発光パターン、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において異なっており、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において同じである第2C発光パターン、及び、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において異なっており、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において異なっている第2D発光パターンのうちのいずれか1つのパターンであることが好ましい。
【0016】
病変候補領域は、第2発光パターンの照明によって観察対象を撮像して検出することが好ましい。
【0017】
第2発光パターンの照明によって観察対象を撮像して取得した特殊画像信号は、画像表示には使用しないことが好ましい。
【0018】
本発明の内視鏡システムの作動方法は、観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、ディスプレイに自動で新たに子画面を展開し、キャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像を、子画面に自動で表示するステップとを有する。
【0019】
また、本発明の内視鏡システムの作動方法は、観察画像を表示するメイン画面及び前記メイン画面と別の位置に設けられた子画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、ディスプレイの子画面に、キャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像を、自動で表示するステップとを有する。
【0020】
また、本発明の内視鏡システムの作動方法は、観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイ、及び画像制御用プロセッサを備える内視鏡システムの作動方法において、画像制御用プロセッサは、内視鏡挿入部が管腔内の挿入口から観察可能範囲の終端位置まで移動する第1観察時に第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像を第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行い、内視鏡挿入部が管腔内の観察可能範囲の終端位置から挿入口まで移動する第2観察時に第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像を第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行うステップと、自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報をキャプチャ画像保存用メモリに保存するステップと、第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行うステップと、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、メイン画面の表示を観察画像からキャプチャ画像保存用メモリに保存した第1病変候補画像に自動で切り替えるステップとを有する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、病変候補領域の自動検出機能を用いる場合において、病変候補領域の見落としを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの発光スペクトルを示すグラフである。
【
図4】アラートモード時の第1A発光パターン及び第2A発光パターンを示す説明図である。
【
図5】アラートモード時の第1B発光パターンを示す説明図である。
【
図6】アラートモード時の第2B発光パターンを示す説明図である。
【
図7】アラートモード時の第2C発光パターンを示す説明図である。
【
図8】アラートモード時の第2D発光パターンを示す説明図である。
【
図9】撮像センサの各カラーフィルタの分光透過率を示すグラフである。
【
図10】通常撮像期間及び特殊撮像期間を示す説明図である。
【
図11】アラートモード時の照明制御、解析処理、及び画像表示を時系列順で示す説明図である。
【
図12】解析処理部の機能を示すブロック図である。
【
図13】内視鏡先端部の位置情報の算出方法を示す説明図である。
【
図14】位置情報と病変候補画像の検出における具体例を示す説明図である。
【
図15】位置情報比較処理と画像比較処理の結果に基づく判定を示す表である。
【
図16】第1実施形態の見落とし防止アラートを行う1台のディスプレイの画像図である。
【
図17】観察画像における病変候補領域の位置情報表示の画像図である。
【
図18】観察画像における病変候補領域のガイド表示の画像図である。
【
図19】アラートモードの一連の流れを示すフローチャートである。
【
図20】第2実施形態の見落とし防止アラートを行う1台のディスプレイの画像図である。
【
図21】第3実施形態の見落とし防止アラートを行う1台のディスプレイの画像図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、ディスプレイ18と、ユーザーインターフェース19とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続し、かつ、プロセッサ装置16と電気的に接続する。内視鏡12は、被検体内に挿入する挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けた湾曲部12c及び先端部12dを有している。操作部12bのアングルノブ13aを操作することにより、湾曲部12cが湾曲動作する。この湾曲動作によって、先端部12dが所望の方向に向けられる。
【0024】
また、操作部12bには、アングルノブ13aの他、画像の手動による取得操作に用いるキャプチャ画像取得指示部13b、観察モードの切り替え操作に用いるモード切替スイッチ13c、ズーム倍率の変更操作に用いるズーム操作部13d、位置情報のパターンを切り替える位置情報切替部13eを設けている。キャプチャ画像取得指示部13bは、手動で、観察対象の画像を取得する手動キャプチャを行うために用いられる。ユーザーがキャプチャ画像取得指示部13bを操作することによって、画像を取得した場合には、取得した画像は、キャプチャ画像保存用メモリ70(
図2参照)に保存される。なお、画像の保存制御には、手動キャプチャの他、病変候補画像を検出した場合に、位置情報と関連付けて病変候補画像を自動的にキャプチャする自動キャプチャが含まれる。
【0025】
内視鏡システム10は、観察モードとして、通常観察モード、特殊観察モード及びアラートモードとを有している。観察モードが通常観察モードである場合、複数色の光を通常観察モード用の光量比Lcで合波した通常光を発光するとともに、この通常光で照明中の観察対象を撮像して得られた通常画像信号に基づき、通常観察画像をディスプレイ18に表示する。また、観察モードが特殊観察モードである場合、複数色の光を特殊観察モード用の光量比Lsで合波した特殊光を発光するとともに、この特殊光で照明中の観察対象を撮像して得られた特殊画像信号に基づき、特殊観察画像をディスプレイ18に表示する。
【0026】
また、観察モードがアラートモードである場合、通常光と特殊光を交互に発光する。そして、通常光で照明中の観察対象を撮像して得られる観察画像を、ディスプレイ18のメイン画面18aに表示する。また、アラートモードでは、第1観察時に病変候補領域を検出した場合、通常光では通常画像信号から画像を第1病変候補画像として取得し、特殊光では特殊画像信号から解析結果を取得し、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存する。第2観察時において、先端部12dが第1観察時に病変候補領域を検出した位置を算出した際に、病変候補領域の見落としがあった場合、ディスプレイ18に自動で新たに子画面18bを展開し、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存した第1病変候補画像の表示を行う。
【0027】
プロセッサ装置16は、ディスプレイ18及びユーザーインターフェース19と電気的に接続する。ディスプレイ18は、観察対象の画像や、画像に付帯する情報等を出力表示する。ユーザーインターフェース19は、機能設定等の入力操作を受け付ける。
【0028】
図2において、光源装置14は、光源部20と、光源部20を制御する光源用プロセッサ21とを備えている。光源部20は、複数の半導体光源を有し、これらをそれぞれ点灯または消灯し、点灯する場合には各半導体光源の発光量を制御することにより、観察対象を照明する照明光を発する。本実施形態では、光源部20は、V-LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B-LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G-LED(Green Light Emitting Diode)20c、及びR-LED(Red Light Emitting Diode)20dの4色のLEDを有する。
【0029】
図3に示すように、V-LED20aは、中心波長405±10nm、波長範囲380~420nmの紫色光Vを発生する。B-LED20bは、中心波長450±10nm、波長範囲420~500nmの青色光Bを発生する。G-LED20cは、波長範囲が480~600nmに及ぶ緑色光Gを発生する。R-LED20dは、中心波長620~630nmで、波長範囲が600~650nmに及ぶ赤色光Rを発生する。
【0030】
光源用プロセッサ21は、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、及びR-LED20dを制御する。光源用プロセッサ21は、各LED20a~20dをそれぞれ独立に制御することで、紫色光V、青色光B、緑色光G、又は赤色光Rをそれぞれ独立に光量を変えて発光可能である。また、光源用プロセッサ21は、通常観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光量比がVc:Bc:Gc:Rcとなる白色光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。なお、Vc、Bc、Gc、Rc>0である。
【0031】
また、光源用プロセッサ21は、特殊観察モード時には、短波長の狭帯域光としての紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rとの光量比がVs:Bs:Gs:Rsとなる特殊光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。光量比Vs:Bs:Gs:Rsは、通常観察モード時に使用する光量比Vc:Bc:Gc:Rcと異なっており、観察目的に応じて適宜定められる。例えば、表層血管を強調する場合には、Vsを、他のBs、Gs、Rsよりも大きくすることが好ましく、中深層血管を強調する場合には、Gsを、他のVs、Gs、Rsよりも大きくすることが好ましい。
【0032】
また、光源用プロセッサ21は、アラートモード時に、通常光と特殊光とを自動的に切り替えて発光する場合において、通常光を第1発光パターンで発光し、特殊光を第2発光パターンで発光する。具体的には、第1発光パターンは、
図4に示すように、通常照明期間のフレーム数が、それぞれの通常照明期間において同じである第1A発光パターンと、
図5に示すように、通常照明期間のフレーム数が、それぞれの通常照明期間において異なっている第1B発光パターンとのうちのいずれかであることが好ましい。
【0033】
第2発光パターンは、
図4に示すように、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において同じであり、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において同じである第2A発光パターン、
図6に示すように、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において同じであり、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において異なっている第2B発光パターン、
図7に示すように、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において異なっており、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において同じである第2C発光パターン、
図8に示すように、特殊照明期間のフレーム数が、それぞれの特殊照明期間において異なっており、且つ、特殊光の発光スペクトルが、それぞれの特殊照明期間において異なっている第2D発光パターンのうちのいずれかであることが好ましい。なお、通常光の発光スペクトルは、それぞれの通常照明期間において同じであってもよく、異なってもよい。
【0034】
ここで、通常照明期間は特殊照明期間よりも長くすることが好ましく、通常照明期間は2フレーム以上とすることが好ましい。例えば、
図4では、第1発光パターンを第1A発光パターンとし、第2発光パターンを第2A発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:同じ)とする場合において、通常照明期間を2フレームとし、特殊照明期間を1フレームとしている。通常光は、ディスプレイ18に表示する観察画像の生成に用いられることから、通常光を観察対象に照明することによって、明るい画像が得られることが好ましい。
【0035】
通常光は、白色光であることが好ましい。一方、特殊光は、解析処理に用いることから、特殊光を観察対象に照明することによって、解析処理に適した画像が得られることが好ましい。例えば、血管深さが異なる複数の血管の形状情報に基づいて、解析処理を行う場合には、特殊光として、紫色光V、青色光B、緑色光G、赤色光Rを用いることが好ましい。この場合、第2発光パターンを第2A発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:同じ)又は第2C発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:異なる、特殊光の発光スペクトル:同じ)とする場合には、紫色光V、青色光B、緑色光G、赤色光Rのうちのいずれか1つの光を用いることが好ましい。一方、第2発光パターンを第2B発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:異なる)又は第2D発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:異なる、特殊光の発光スペクトル:異なる)とする場合には、特殊照明期間において、紫色光V、青色光B、緑色光G、赤色光Rのうち少なくとも2つの光を特定の順番で切り替えて発光することが好ましい。
【0036】
なお、通常照明期間と特殊照明期間の切替パターンである第1、第2発光パターンの詳細については、撮像用プロセッサ45による撮像センサ44の撮像制御に基づいて定められることから、後述する。また、フレームとは、撮像センサ44において特定タイミングから信号読み出し完了までの間の期間を少なくとも含む期間の単位のことをいう。
【0037】
例えば、粘膜表面からの深さが50μmの範囲内にある表層血管、粘膜表面からの深さが200μmの範囲内にある中層血管、及び、粘膜表面からの深さが600μmの範囲内にある深層血管に関する血管の形状情報を取得し、これら表層、中層、深層の血管の形状情報に基づいて解析処理を行う場合には、表層血管を強調する紫色光V、中層血管を強調する緑色光G、深層血管を強調する赤色光Rを用いることが好ましい。
【0038】
なお、本明細書において、光量比は、少なくとも1つの半導体光源の比率が0(ゼロ)の場合を含む。したがって、各半導体光源のいずれか1つ又は2つ以上が点灯しない場合を含む。例えば、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光量比が1:0:0:0の場合のように、半導体光源の1つのみを点灯し、他の3つは点灯しない場合も、光量比を有するものとする。
【0039】
図2に示すように、各LED20a~20dが発する光は、ミラーやレンズなどで構成される光路結合部23を介して、ライトガイド25に入射される。ライトガイド25は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と、光源装置14及びプロセッサ装置16を接続するコード)に内蔵されている。ライトガイド25は、光路結合部23からの光を、内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。
【0040】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ32を有しており、ライトガイド25によって伝搬した照明光は照明レンズ32を介して観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ42、撮像センサ44を有している。照明光を照射したことによる観察対象からの光は、対物レンズ42及びズームレンズ43を介して撮像センサ44に入射する。これにより、撮像センサ44に観察対象の像が結像される。ズームレンズ43は観察対象を拡大するためのレンズであり、ズーム操作部13dを操作することによって、テレ端とワイド端との間を移動する。
【0041】
撮像センサ44は、原色系のカラーセンサであり、青色カラーフィルタを有するB画素(青色画素)、緑色カラーフィルタを有するG画素(緑色画素)、及び、赤色カラーフィルタを有するR画素(赤色画素)の3種類の画素を備える。
図9に示すように、青色カラーフィルタBFは、主として青色帯域の光、具体的には380~560nmの波長帯域の光を透過する。青色カラーフィルタBFの透過率は、波長460~470nm付近においてピークになる。緑色カラーフィルタ
GFは、主として緑色帯域の光、具体的には、460~620nmの波長帯域の光を透過する。赤色カラーフィルタRFは、主として赤色帯域の光、具体的には、580~760nmの波長帯域の光を透過する。
【0042】
また、撮像センサ44は、CCD(Charge-Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)であることが好ましい。撮像用プロセッサ45は、撮像センサ44を制御する。具体的には、撮像用プロセッサ45により撮像センサ44の信号読み出しを行うことによって、撮像センサ44からカラー画像信号が出力される。通常観察モードでは、通常光が撮像センサ44に露光された状態で、撮像用プロセッサ45が信号読み出しを行うことにより、撮像センサ44のB画素からBc画像信号が、G画素からGc画像信号が、R画素からRc画像信号が、それぞれ出力される。特殊観察モードでは、特殊光が撮像センサ44に露光された状態で、撮像用プロセッサ45が信号読み出しを行うことにより、撮像センサ44のB画素からBs画像信号が、G画素からGs画像信号が、R画素からRs画像信号が、それぞれ出力される。
【0043】
アラートモードでは、撮像用プロセッサ45は、
図10に示すように、通常照明期間において通常光を撮像センサ44に露光させた状態で、信号読み出しを行うことにより、撮像センサ44から通常画像信号を出力させる。通常画像信号を出力する期間を通常撮像期間とする。通常画像信号には、B画素から出力されるB1画像信号、G画素から出力されるG1画像信号、及び、R画素から出力されるR1画像信号が含まれる。また、撮像用プロセッサ45は、特殊照明期間において特殊光を撮像センサ44に露光させた状態で、信号読み出しを行うことにより、撮像センサ44から特殊画像信号を出力させる。特殊画像信号を出力する期間を特殊撮像期間とする。特殊画像信号には、B画素から出力されるB2画像信号、G画素から出力されるG2画像信号、及び、R画素から出力されるR2画像信号が含まれる。
【0044】
図2に示すように、CDS/AGC(Correlated Double Sampling/Automatic Gain Control)回路46は、撮像センサ44から得られるアナログのカラー画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路46を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)コンバータ48により、デジタルのカラー画像信号に変換され、プロセッサ装置16に入力される。
【0045】
プロセッサ装置16には、画像処理などの処理に関するプログラムがプログラム用メモリ(図示しない)に格納されている。プロセッサ装置16においては、画像制御用プロセッサによって構成される中央制御部68により、プログラム用メモリ内のプログラムが動作することによって、画像信号取得部50と、DSP(Digital Signal Processor)52と、ノイズ低減部54と、画像処理切替部56と、画像処理部58と、表示制御部60の機能が実現される。また、画像処理部58の機能実現に伴って、通常観察画像生成部62と、特殊観察画像生成部64と、解析処理部66との機能が実現される。
【0046】
画像信号取得部50は、内視鏡12から入力されるカラー画像信号を取得する。カラー画像信号には、撮像センサ44のB画素、G画素、R画素から出力される青色信号(B画像信号)、緑色信号(G画像信号)、赤色信号(R画像信号)が含まれている。取得したカラー画像信号はDSP52に送信され、DSP52では、受信したカラー画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、マトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理、及びYC変換処理等の各種信号処理を行われる。
【0047】
DSP52は、YC変換処理後の各種信号をノイズ低減部54に出力し、ノイズ低減部54によりノイズを低減したカラー画像信号は、画像処理切替部56に入力される。
【0048】
画像処理切替部56は、モード切替スイッチ13cによって設定されている観察モードに従って、ノイズ低減部54からのカラー画像信号の送信先を切り替える。具体的には、通常観察モードに設定されている場合には、カラー画像信号を通常観察画像生成部62に入力する。特殊観察モードに設定されている場合には、カラー画像信号を特殊観察画像生成部64に入力する。アラートモードに設定されている場合には、カラー画像信号を解析処理部66に入力する。
【0049】
通常観察画像生成部62は、入力した1フレーム分のRc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号に対して、通常観察画像用画像処理を施す。通常観察画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT(Look Up Table)処理等の色変換処理、色彩強調処理、空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。通常観察画像用画像処理が施されたRc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号は、通常観察画像として表示制御部60に送信される。
【0050】
特殊観察画像生成部64は、入力した1フレーム分のRs画像信号、Gs画像信号、Bs画像信号に対して、特殊観察画像用画像処理を施す。特殊観察画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT(Look Up Table)処理等の色変換処理、色彩強調処理、空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。特殊観察画像用画像処理が施されたRs画像信号、Gs画像信号、Bs画像信号は、特殊観察画像として表示制御部60に送信される。
【0051】
解析処理部66は、入力した1フレーム分のR1画像信号、G1画像信号、B1画像信号に対して上述
と同様の通常観察画像用画像処理を施し、観察画像として表示制御部60に送信する。また、解析処理部66は、入力した特定フレームのR2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に対して解析処理を行い、取得した解析結果を表示制御部60に送信する。取得した解析結果は病変候補領域の検出に用いられる。なお、入力した特定フレームのR2画像信号、G2画像信号、B2画像信号は、画面表示には使用しない。
【0052】
表示制御部60は、入力された画像信号をディスプレイ18に表示するための制御を行う。具体的には、表示制御部60は、通常観察画像、特殊観察画像、観察画像又は解析結果付き観察画像を、ディスプレイ18においてフルカラーで表示可能にする映像信号に変換する。変換済みの映像信号はディスプレイ18に入力される。観察画像には解析結果を組み合わせる。これにより、ディスプレイ18には通常観察画像、特殊観察画像、観察画像、又は解析結果付き観察画像が表示される。
【0053】
なお、アラートモードにおける表示制御には、病変候補領域の見落としが発生していない場合に、観察画像をディスプレイ18に表示する見落とし未発生時の表示制御と、病変候補領域の見落とし発生時に、観察画像の他に、病変候補領域に関する画像をディスプレイ18に表示する見落とし発生時の表示制御がある。
【0054】
アラートモードにおける見落とし未発生時の表示制御では、
図11に示すように、例えば、第1発光パターンを第1A発光パターンとし、第2発光パターンを第2A発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:同じ)とする場合において、通常光を2フレーム分、特殊光を通常光の発光の間に、それぞれ1フレーム分だけ観察対象に照明する場合には、通常光の照明により得られる通常画像信号に対して通常観察画像用画像処理を施し、観察画像として表示制御部60に入力される。
【0055】
一方、特殊光の照明により得られる特殊画像信号に対して解析処理を行って、解析結果を得る。解析結果は、表示制御部60に送信され、それぞれ単独で観察画像と組み合わせて解析結果付き観察画像を得る。2フレーム分の観察画像を表示した後に2フレーム分の観察画像と解析結果に基づく1フレーム分の解析結果付き観察画像が表示される。解析結果付き観察画像に使用する観察画像はよりブレが小さい観察画像となる。
【0056】
特殊画像信号の解析処理としては、例えば、血管の形状情報を抽出する血管抽出処理、抽出した血管の形状情報に基づいて、血管に関する指標値を算出する指標値算出処理が含まれる。
【0057】
解析処理部66は、
図12に示すように、位置情報算出部72と、病変判定部74と、検出部76と、比較部78とを備える。
【0058】
位置情報算出部72は、目盛り検出センサ82での結果に基づいて管腔内における先端部12dの位置情報を算出する。
図13に示すように、内視鏡12の挿入部12aの外周面には、体内への挿入部12aの挿入長を測定するための測定用目盛り80が設けられている。測定用目盛り80は、挿入部12aの長手方向に沿って所定ピッチ(例えば、1cm刻み)で設けられた点から構成される。測定用目盛り80は、患者の口(上部内視鏡の場合)や肛門(下部内視鏡の場合)に設けられた目盛り検出センサ82で検出され、検出結果は、プロセッサ装置16の位置情報算出部72に送信される。なお、
図13では、目盛り検出センサ82が、患者が口に咥えているマウスピース84に設けられていることを示している。
【0059】
病変判定部74は、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号のうち少なくとも1つの特殊画像信号から得た解析結果に対して、病変候補領域の有無の判定を自動で行う。
【0060】
検出部76は、病変判定部74が、病変候補領域を有すると判定した時点の位置情報及び病変候補画像を検出し、自動キャプチャを行う。自動キャプチャによってキャプチャ画像取得指示が発せられ、画像の保存制御が行われる。なお、自動キャプチャに代わり、キャプチャ画像取得指示部13bを操作し、手動でキャプチャすることもできる。病変候補画像と位置情報は、第1観察時に得られる第1病変候補画像及び第1位置情報、第1観察時と異なる第2観察時に得られる第2病変候補画像及び第2位置情報がある。第1観察時と、第2観察時との切替操作は、位置情報切替部13eにより行われる。
【0061】
比較部78は、自動キャプチャにより得られた第1位置情報と第2位置情報との位置情報比較処理を行い、且つ、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1病変候補画像と、第2病変候補画像との画像比較処理を行い、画像比較処理の結果、病変候補領域の見落としの有無を判定する。比較処理の結果は表示制御部60に送信される。
【0062】
表示制御部60は、比較部78での比較処理の結果により、病変候補領域の見落とし有りと判定された場合には、ディスプレイ18に自動で新たに子画面18b(
図16参照)を展開し、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存した第1病変候補画像を、子画面18bに自動で表示する。第1病変候補画像の自動表示の詳細は、後述する。
【0063】
アラートモードにおける見落とし発生時の表示制御について、
図14に示す場合を例として、説明する。内視鏡12の挿入部12aが胃、食道、大腸などの管腔内の同一経路を往復する場合において、往路を第1観察時とし、復路を第2観察時とする。往路の第1観察時では、位置情報切替部13eにより「第1観察」と設定する。そして、この往路の第1観察時において、例えば、検出部76が、病変候補領域K、病変候補領域L、病変候補領域M、病変候補領域Nの4つの第1病変候補画像および第1位置情報を取得し、キャプチャ画像保存用メモリ70に記憶する。ここで、病変候補領域Kは、第1位置情報XK、第1病変候補画像YKを検出している。病変候補領域Lは、第1位置情報XL、第1病変候補画像YLを検出している。病変候補領域Mは、第1位置情報XM、第1病変候補画像YMを検出している。病変候補領域Nは、第1位置情報XN、第1病変候補画像YNを検出している。なお、
図14において、「ST」は、消化管などの管腔内の挿入口を示しており、「EN」は、管腔内において、観察可能範囲の終端位置を示している。
【0064】
挿入部12aの先端部12dが往路の観察可能範囲の終端位置まで達したら、位置情報切替部13eを操作して、設定を「第2観察」に切り替えて、第2観察を行う。復路の第2観察時では、往路と同じ経路に沿って、挿入部12aを引き返させる。
【0065】
位置情報比較処理と画像比較処理に関する記載をする。
図15に示すように、例えば、復路の第2観察時に第2位置情報XMを取得し、且つ、その位置において第2病変候補画像YMが検出されたときには、比較処理において、第1位置情報XMと第2位置情報XMのマッチング、及び第1病変候補画像YMと第2病変候補画像YMのマッチングとなり、この場合には、比較部78は「病変候補領域の見落とし無し」との判定を行う。同様にして、復路の第2観察時に第2位置情報XKを取得し、且つその位置において第2病変候補画像YKが検出されたときにも、比較部78は、「病変候補領域の見落とし無し」との判定を行う。
【0066】
これに対して、復路の第2観察時に第2位置情報XNを取得し、その位置において病変候補領域Nの第2病変候補画像YNが検出されなかった場合には、比較処理において、位置情報がマッチングし、病変候補画像がマッチングしないことになる。この場合には、第1観察時に検出した病変候補領域Nを第2観察時に見落としていることから、比較部78は、「病変候補領域の見落とし有り」との判定を行う。また、復路の第2観察時に第2位置情報XLを取得し、その位置において病変候補領域Lの第2病変候補画像YLが検出されなかった場合には、第1観察時に検出した病変候補領域Lを第2観察時に見落としていることから、比較部78は、「病変候補領域の見落とし有り」との判定を行う。
【0067】
第1観察時と第2観察時の比較処理の結果より、見落とし防止のアラートを画面表示によって行う。
図16に示すように、ディスプレイ18のメイン画面18aにおいて観察画像(又は解析結果付き観察画像)を表示する場合において、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、メイン画面18aと別の位置に設けられた子画面18bが自動で展開する。展開された子画面18bに、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存した第1病変候補画像を自動で表示する。例えば、第2位置情報XNにおける病変候補領域N(
図14参照)の見落としがあると判定された場合には、第1病変候補画像YNを子画面18bに表示する。これにより、第2観察時における病変候補領域の存在を喚起し、見落とし防止のアラートとする。
【0068】
なお、
図16では、観察画像をメイン画面18aに、第1病変候補画像を子画面18bに表示しているが、反対に第1病変候補画像をメイン画面18aに、観察画像を子画面18bに表示してもよい。また、第1病変候補画像を1つのみ表示しているが、これに限らず、2以上の第1病変候補画像を表示するようにしてもよい。なお、1つのディスプレイ18に、メイン画面18aと子画面18bを表示しているが、複数のディスプレイにメイン画面18aを表示させ、残りのディスプレイ18に子画面18bを表示してもよい。例えば、2つのディスプレイ18を用いる場合には、第1ディスプレイ18の画面全体に観察画像のみを表示させる一方で、第2ディスプレイ18には、第1病変候補画像と病変候補領域の関連情報だけを表示させてもよい。
【0069】
図17のように、表示制御部60は、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、見落とした病変候補領域の位置情報DPをメイン画面18aに表示することが好ましい。病変候補領域の位置情報DPは、第1位置情報又は第2位置情報などから算出することが好ましい。例えば、第2位置情報XNにおける病変候補領域
N(
図14参照)の見落としがあると判定された場合には、第2位置情報XNに基づいて、病変候補領域の位置情報DPを算出し、算出した位置情報DPをメイン画面18aに表示する。これにより、ユーザーは、病変候補領域の位置を認識することが可能である、位置情報DPに、四角形(□)、丸(○)、矢印などのインジケータとして表示することが好ましい。
図17では、インジケータとして丸(〇)を表示する。なお、見落としをせずに、第2観察時に検出した病変候補領域がある場合には、検出済み病変候補領域としてメイン画面18aにインジケータ表示をすることが好ましい。
図17では、点線の矩形状領域90としてインジケータ表示される。
【0070】
また、インジケータによる表示は画像上のみではなく、動画表示時にも、一度検出した病変候補領域の画像的特徴を頼りとして、移動中に病変候補領域を自動追従し、それに合わせて表示するようにしてもよい。
【0071】
また、表示制御部60は、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、
図18に示すように、病変候補領域の方向を示すガイドDGをメイン画面18aに表示することが好ましい。ガイドDGは、メイン画面18aに病変候補領域が表示されていない場合に、表示することが好ましい。また、ガイドDGは、第1位置情報又は第2位置情報などから決定することが好ましい。例えば、第2位置情報XNにおける病変候補領域
N(
図14参照)の見落としがあると判定された場合には、第2位置情報XNに基づいて、病変候補領域の方向を示すガイドDGを決定し、算出したガイドDGをメイン画面18aに表示する。
【0072】
なお、上記実施形態では、1回の病変診断において、内視鏡12の先端部12dを、胃、大腸、食道など管腔内に沿って、往復させる場合を想定し、往路を第1観察時とし、往路と同一経路を引き返す復路を、第2観察時としている。第1観察時と第2観察時については、1回の病変診断の往路、復路に限られず、第2観察時は第1観察時よりも時間的に後のタイミングであって、第1観察時と第2観察時において同一経路で病変候補領域の検出を行う場合であれば、その他のケースにも適用可能である。例えば、第1観察時と第2観察時は、日を跨いで病変診断を行う場合にも適用できる。この場合、初期診断など第1の診断日を第1観察時とし、経過観察などの第1の診断日よりも後の第2の診断日を第2観察時とすることが考えられる。このような場合には、位置情報切替部13eを操作することなく、「第1観察」から「第2観察」に自動的に切り替えることが好ましい。
【0073】
なお、本実施形態では、位置情報と病変候補画像の両方を用いて、第1観察時と第2観察時で病変候補領域の見落としがあるか否かの判定を行っているが、病変候補画像のみを用いて、病変候補領域の見落とし判定を行ってもよい。この場合には、第1病変候補画像と第2病変候補画像の比較処理を行い、その比較処理の結果に従って、病変候補領域の見落とし判定を行うことになる。
【0074】
なお、第1観察時における画像については、以下の保存制御がある。アラートモードにおいては、自動キャプチャの際に、キャプチャ画像取得指示が発せられ、通常撮像期間で複数のフレームから得られる第1病変候補画像と、特殊撮像期間で特殊画像信号から取得される解析結果を取得する。取得した第1病変候補画像及びその第1位置情報は関連付けられ、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存される。
【0075】
例えば、第1発光パターンを第1A発光パターンとし、第2発光パターンを第2A発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:同じ)とする場合において、キャプチャ画像取得指示が行われた場合には、通常光の画像信号取得期間は、キャプチャ画像取得指示が行われたタイミングのフレームを含む直近の通常撮像期間の全フレームとする。また、特殊撮像期間でもキャプチャ画像取得指示が行われたタイミングの直近のフレームで特殊画像信号を取得する。そして、特殊画像信号から取得した解析結果はキャプチャ画像保存用メモリ70に保存される。
【0076】
一方、第1発光パターンを第1A発光パターンとし、第2発光パターンを第2B発光パターン(特殊照明期間のフレーム数:同じ、特殊光の発光スペクトル:異なる)とする場合において、キャプチャ画像取得指示が行われた場合には、通常光の画像信号取得期間は、キャプチャ画像取得指示が行われたタイミングのフレームを含む直近の通常撮像期間の全フレームとする。また、特殊撮像期間でもキャプチャ画像取得指示が行われたタイミングの直近のフレームの他、残り全ての種類の発光スペクトルに対応する直近の特殊撮像期間のフレームも含まれる。例えば、特殊光が、紫色光V、緑色光G、赤色光Rである場合には、キャプチャ画像取得指示が紫色光Vの特殊撮像期間に行われた場合には、画像信号取得期間は、紫色光Vに対応する特殊撮像期間のフレームの他、緑色光Gに対応する特殊撮像期間のフレーム、及び、赤色光Rに対応する特殊撮像期間のフレームが含まれる。したがって、キャプチャ画像取得指示が行われることにより、紫色光Vに対応する特殊画像信号、緑色光Gに対応する特殊画像信号、及び、赤色光Rに対応する特殊画像信号が取得され、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存される。
【0077】
アラートモードにおける見落とし防止のアラートの一連の流れについて、
図19のフローチャートに沿って、説明する。まず、モード切替スイッチ13cを操作して、観察モードを「アラートモード」に切り替えるとともに、位置情報切替部13eを操作し、設定を「第1観察」に切り替える。アラートモードに切り替えられると、通常光を発光する第1発光パターンと、特殊光を発光する第2発光パターンに自動的に切り替えられる。このように通常光と特殊光とが第1、第2発光パターンにて自動的に交互に発光し、観察対象に対して照明される。そして、内視鏡12の先端部12dを管腔内に挿入し、挿入口から観察可能範囲の終端位置まで先端部12dを移動させ、第1観察を行う。
【0078】
第1観察において、検出部76が、第1病変候補画像を検出した場合には、第1病変候補画像をその時点での第1位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行う。自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像及び第1位置情報は、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存する。
【0079】
内視鏡の先端部12dが、管腔の観察可能範囲の終端位置に達したら、位置情報切替部13eを操作し、設定を「第2観察」に切り替え、第2観察を始める。第2観察時では、第1観察時と同じ経路を引き返すように、内視鏡12の先端部12dを観察可能範囲の終端位置から挿入口まで先端部12dを移動させ、第2病変候補画像を検出する。
【0080】
第2観察において、検出部76が、第2病変候補画像を検出した場合には、第2病変候補画像をその時点での第2位置情報と関連付けて自動的にキャプチャする自動キャプチャを行う。自動キャプチャが行われた場合には、比較部78は、キャプチャ画像保存用メモリ70に保存された第1位置情報と、第2観察時に自動キャプチャにより得られた第2位置情報との位置情報比較処理を行う。位置情報比較処理の結果、第1位置情報と第2位置情報とがマッチングした場合に、第1位置情報に関連付けられた第1病変候補画像と、自動キャプチャにより得られた第2病変候補画像との画像比較処理を行う。
【0081】
画像比較処理の結果、第1病変候補画像と第2病変候補画像とがマッチングせず、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、ディスプレイ18に自動で新たに子画面18bを展開する。そして、子画面18bにおいて、第1位置情報に関連付けられた第1病変候補画像を、自動で表示する。これにより、第2観察時における病変候補領域の存在を喚起し、見落とし防止のアラートとする。
【0082】
[第2実施形態]
図20に示すように、第2実施形態の内視鏡システムでは、ディスプレイ18にメイン画面18a及び子画面18bを観察開始時から並べて表示する。以下においては、第1実施形態と異なる部分のみ説明を行い、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
【0083】
アラートモードの第2観察時において、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、メイン画面18aと別の位置に設けられた子画面18bにおいて、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された第1病変候補画像を、自動で表示する。これにより、第2観察時における病変候補領域の存在を喚起し、見落とし防止のアラートとする。
【0084】
また、見落とし防止の表示とは別に、第1観察時においては自動キャプチャにより得られた第1病変候補画像を取得する毎に、子画面18bに表示してもよい。第1観察時に第1病変候補画像を子画面18bに表示することで第2観察時の同位置における見落としを更に防止できる。この場合、ディスプレイ18に子画面18bを複数設けておき、第1観察時で第1病変候補画像を新たに取得した場合には、前に取得した第1病変候補画像を表示する子画面18bとは別の子画面18bに対して、新たに取得した第1病変候補画像を表示するようにしてもよい。
【0085】
[第3実施形態]
図21に示すように、第3実施形態の内視鏡システムでは、ディスプレイ18は子画面18bの表示はせず、メイン画面18aのみ表示する。以下においては、第1実施形態と異なる部分のみ説明を行い、第1実施形態と同様の部分については、説明を省略する。
【0086】
アラートモードの第2観察時において、通常は、メイン画面18aに観察画像を表示し、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合には、メイン画面18aの表示を、観察画像から、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された第1病変候補画像に自動で切り替えるようにする。切り替え後の第1病変候補画像には、
図21に示すように、見落とした病変候補領域の位置情報DPをインジケータとして表示することが好ましい。インジケータとして太線の丸(〇)を表示する。
【0087】
なお、第3実施形態では、第1病変候補画像への切り替え表示による見落としのアラートは、観察中の他、観察終了後に行ってもよい。この場合には、観察中においては、自動キャプチャによる第1、第2病変候補画像の取得のみ行い、位置情報比較処理、画像比較処理は観察中に行わない。そして、観察終了後に、ユーザーインターフェース19を操作することにより、位置情報比較処理及び画像比較処理を行う。そして、画像比較処理の結果、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された場合に、メイン画面18aの表示を、「病変候補領域の見落とし有り」と判定された第1病変候補画像に切り替えるようにする。
【0088】
なお、上記各実施形態においては、通常光に基づく通常画像信号は観察画像に、特殊光に基づく特殊画像信号は解析処理のみに用いているが、通常画像信号についても、解析処理を行い、病変候補画像を検出してもよい。この場合には、通常画像信号に基づく病変候補画像と、特殊画像信号に基づく病変候補画像を切り替えて使用することになる。通常画像信号に基づく病変候補画像の検出もしくは非検出については、ユーザーインターフェース19によって適宜設定できるようにすることが好ましい。
【0089】
上記実施形態において、画像信号取得部50、ノイズ低減部54、画像処理切替部56、通常観察画像生成部62、特殊観察画像生成部64、解析処理部66、位置情報算出部72、病変判定部74、検出部76、比較部78といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0090】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0091】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(Circuitry)である。また、記憶部のハードウェア的な構造はHDD(Hard Disc Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0092】
なお、本発明の別実施形態として以下が挙げられる。請求項1、2において「第1、第2観察時」の要件と「位置情報マッチング」の要件を外す。即ち、病変候補画像を検出した場合に、自動キャプチャを行い、即座に子画面表示等を行う。
【0093】
以上の説明から以下の付記項1、2の示す発明を把握することができる。
【0094】
[付記項1]
観察画像を表示するメイン画面を有するディスプレイと、
画像制御用プロセッサとを備え、
前記画像制御用プロセッサは、
病変候補画像を検出した場合には、自動的にキャプチャ画像保存用メモリに前記病変候補画像を保存する自動キャプチャを行い、且つ、前記ディスプレイに自動で新たに子画面を展開し、検出した前記病変候補画像を、即座に前記子画面に表示する内視鏡システム。
【0095】
[付記項2]
観察画像を表示するメイン画面及び前記メイン画面と別の位置に設けられた子画面を有するディスプレイと、
画像制御用プロセッサとを備え、
前記画像制御用プロセッサは、
病変候補画像を検出した場合には、自動的にキャプチャ画像保存用メモリに前記病変候補画像を保存する自動キャプチャを行い、且つ、検出した前記病変候補画像を、即座に前記子画面に表示する内視鏡システム。
【符号の説明】
【0096】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
12a 挿入部
12b 操作部
12c 湾曲部
12d 先端部
13a アングルノブ
13b キャプチャ画像取得指示部
13c モード切替スイッチ
13d ズーム操作部
13e 位置情報切替部
14 光源装置
16 プロセッサ装置
18 ディスプレイ
18a メイン画面
18b 子画面
19 ユーザーインターフェース
20 光源部
20a V-LED
20b B-LED
20c G-LED
20d R-LED
21 光源用プロセッサ
23 光路結合部
25 ライトガイド
30a 照明光学系
30b 撮像光学系
32 照明レンズ
42 対物レンズ
43 ズームレンズ
44 撮像センサ
45 撮像用プロセッサ
46 CDS/AGC回路
48 A/Dコンバータ
50 画像信号取得部
52 DSP
54 ノイズ低減部
56 画像処理切替部
58 画像処理部
60 表示制御部
62 通常観察画像生成部
64 特殊観察画像生成部
66 解析処理部
68 中央制御部
70 キャプチャ画像保存用メモリ
72 位置情報算出部
74 病変判定部
76 検出部
78 比較部
80 測定用目盛り
82 目盛り検出センサ
84 マウスピース
90 点線の矩形状領域
BF 青色カラーフィルタ
GF 緑色カラーフィルタ
RF 赤色カラーフィルタ
ST 観察開始位置
EN 観察終了位置
XK 病変候補領域Kの位置情報
YK 病変候補領域Kの病変候補画像
XL 病変候補領域Lの位置情報
YL 病変候補領域Lの病変候補画像
XM 病変候補領域Mの位置情報
YM 病変候補領域Mの病変候補画像
XN 病変候補領域Nの位置情報
YN 病変候補領域Nの病変候補画像
DP 病変候補領域の位置情報
DG ガイド