(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】薬剤注入器具
(51)【国際特許分類】
A61M 3/02 20060101AFI20231122BHJP
A61M 39/04 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
A61M3/02 124
A61M39/04
(21)【出願番号】P 2018247751
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕也
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-90647(JP,U)
【文献】米国特許第4230111(US,A)
【文献】実開平3-7832(JP,U)
【文献】実開昭52-167294(JP,U)
【文献】実開昭62-45040(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 3/02
A61M 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体内に流動性薬剤を注入する薬剤注入器具であって、
一方端側から体内に挿入される長尺状の挿入部と、
前記挿入部の他方端部に接続可能な口部を有し、流動性薬剤が貯留される貯留容器とを備えており、
前記挿入部は、内部に形成され、前記貯留容器から押し出された流動性薬剤が導かれる薬剤流路部と、前記薬剤流路部及び外部を連通する薬剤吐出孔とを備えており、
前記薬剤流路部は、前記挿入部の他方端部で開口する開口端部を備えており、
前記挿入部の他方端部は、前記貯留容器の口部が挿入される凹部を備えており、
前記薬剤流路部の開口端部は、少なくとも1以上の尖鋭な突起部を備え、前記貯留容器の口部に設けられる蓋部に対して刺入可能に構成されており、
前記突起部は、前記凹部内に露出する周壁を有する筒状部の先端に形成されており
前記薬剤流路部の開口端部の外周面と前記貯留容器の口部の内周面との間には所定間隔の空隙部が設けられており、前記開口端部の外周面と前記口部の内周面とは接触しないことを特徴とする薬剤注入器具。
【請求項2】
前記貯留容器の口部の外表面には、雄ネジ部が形成されており、
前記挿入部の他方端部は、前記口部の雄ネジ部が螺合される雌ネジ部が形成される凹部を備えており、
前記薬剤流路部の開口端部は、前記凹部内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の薬剤注入器具。
【請求項3】
前記薬剤流路部の開口端部は、竹槍形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤注入器具。
【請求項4】
前記挿入部の他方端部は、前記挿入部に対する前記貯留容器の接続方向に対して垂直な方向に向かって膨出する膨出部を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の薬剤注入器具。
【請求項5】
前記膨出部は、前記挿入部に対する前記貯留容器の接続方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形に形成されていることを特徴とする請求項4に記載の薬剤注入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤注入器具、特に、流動性薬剤を体内に注入する薬剤注入器具に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、様々な目的で人体内に多様な流動性薬剤を注入することが多い。たとえば、女性の性器を洗浄するための洗浄液を性器内に投与したり、避妊のための避妊薬液、痔疾・性病などの治療のための薬液を投与したりするなど、その活用態様は非常に多岐にわたる。
【0003】
人体の性器および肛門などの内側は粘膜が露出する部分であることから、外部の刺激に非常に敏感であるので、粘膜が損傷あるいは汚染しやすい。よって、上記のような様々な流動性薬剤を投与するためには、細心の注意を払う必要がある。
【0004】
従来、上記のような流動性薬剤を手作業で直接投与する不便を改善するために、人体内に流動性薬剤を投与可能な薬剤注入器具が考案されている。このような薬剤注入器具としては、例えば、特許文献1に開示されているように、先端に薬剤吐出孔が形成されたプラスチックシリンダーを備えると共に当該シリンダー内に設けた押し込み棒(ピストン)を、シリンダー先端に向かって押し込む形式を採用しており、シリンダーの先端に設けられた薬剤吐出孔から、流動性薬剤を流出させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から知られている薬剤注入器具は、上記のように、いわゆるシリンジタイプのものであり、使用者が自らの膣や肛門といった体腔に流動性薬剤を注入する際の操作性があまり良くないという問題があった。そこで、流動性薬剤が貯留される貯留容器に体内挿入用の挿入部を接続して、貯留容器の周面部を握って圧縮し、内部に貯留される流動性薬剤を搾り出すようにして挿入部32から吐出するタイプの薬剤注入器具の開発が検討されていた。
【0007】
しかしながら、このタイプの薬剤注入器具を使用する場合、貯留容器に設けられる口部を閉塞している天シール等の蓋部を使用者自らが手指で剥がした上で貯留容器と挿入部とを接続する必要があり、衛生的な面から更なる改良が望まれていた。
【0008】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであって、好ましい衛生状態で使用することができる薬剤注入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、体内に流動性薬剤を注入する薬剤注入器具であって、一方端側から体内に挿入される長尺状の挿入部と、前記挿入部の他方端部に接続可能な口部を有し、流動性薬剤が貯留される貯留容器とを備えており、前記挿入部は、内部に形成され、前記貯留容器から押し出された流動性薬剤が導かれる薬剤流路部と、前記薬剤流路部及び外部を連通する薬剤吐出孔とを備えており、前記薬剤流路部は、前記挿入部の他方端部で開口する開口端部を備えており、前記挿入部の他方端部は、前記貯留容器の口部が挿入される凹部を備えており、前記薬剤流路部の開口端部は、少なくとも1以上の尖鋭な突起部を備え、前記貯留容器の口部に設けられる蓋部に対して刺入可能に構成されており、前記突起部は、前記凹部内に露出する周壁を有する筒状部の先端に形成されており前記薬剤流路部の開口端部の外周面と前記貯留容器の口部の内周面との間には所定間隔の空隙部が設けられており、前記開口端部の外周面と前記口部の内周面とは接触しないことを特徴とする薬剤注入器具により達成される。
【0010】
この薬剤注入器具において、前記貯留容器の口部の外表面には、雄ネジ部が形成されており、前記挿入部の他方端部は、前記口部の雄ネジ部が螺合される雌ネジ部が形成される凹部を備えており、前記薬剤流路部の開口端部は、前記凹部内に配置されるように構成してもよい。
【0011】
また、前記薬剤流路部の開口端部は、竹槍形状に形成されるように構成してもよい。
【0012】
また、前記挿入部の他方端部は、前記挿入部に対する前記貯留容器の接続方向に対して垂直な方向に向かって膨出する膨出部を備えるように構成してもよい。
【0013】
また、前記膨出部は、前記挿入部に対する前記貯留容器の接続方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形に形成されるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、好ましい衛生状態で使用することができる薬剤注入器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る薬剤注入器具に関する概略斜視図である。
【
図2】本発明に係る薬剤注入器具の長手軸に沿った断面を示す概略構成断面図である。
【
図3】
図2のB-B断面を示す概略構成断面図である。
【
図4】(a)は、本発明に係る薬剤注入器具が備える貯留容器の断面図であり、(b)は、挿入部の断面図である。
【
図5】本発明に係る薬剤注入器具が備える薬剤流路部の開口端部を説明するための要部拡大断面図である。
【
図6】
図3の矢視C方向から見た薬剤注入器具の平面図である。
【
図7】本発明に係る薬剤注入器具の変形例を説明するための説明図である。
【
図8】
図7に係る薬剤注入器具の更なる変形例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る薬剤注入器具200について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る薬剤注入器具200の概略構成斜視図であり、
図2は、薬剤注入器具200の長手軸に沿った断面を示す概略構成断面図である。
図3は、
図2のB-B断面を示す概略構成断面図である。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
【0017】
本発明に係る薬剤注入器具200は、例えば、膣や肛門等の体腔内(体内)に流動性薬剤を注入するための器具である。流動性薬剤としては、多種多様な薬剤を用いることができるが、例えば、洗浄剤、避妊剤、麻酔剤、浣腸剤、解熱剤、潤滑剤等を挙げることができる。また、流動性薬剤の形態としては、ローション状、ジェル状、ゼリー状等種々の形態を採用することができる。
【0018】
この薬剤注入器具200は、
図1~
図3に示すように、貯留容器31と、挿入部32とを備え、貯留容器31の周面部を握って圧縮し、内部の流動性薬剤を搾り出すようにして挿入部32から吐出するタイプの注入器具として構成されている。
【0019】
貯留容器31は、可撓性を有する容器であり、内部に流動性薬剤が貯留される貯留部33を備えている。また、この貯留容器31は、流動性薬剤が流出する口部34を先端部に備えている。貯留容器31は、当該口部34を介して挿入部32の他方端部32bに接続可能に構成されている。また、
図4(a)の断面図に示すように、口部34には、口部34を閉塞させる天シール等の蓋部35が接着されており、挿入部32と接続していない状態においては、内部の流動性薬剤が口部34を介して外部に流出しないように構成されている。また、この口部34の外周面には、雄ネジ部36が形成されている。貯留容器31を構成する素材については、貯留容器31自身が可撓性を有し、使用者が握って圧縮変形させて、内部の流動性薬剤を口部34を介して外部に流出できるような素材であれば特に限定されない。貯留容器31としては、例えば、プラスチック樹脂原料を用いたブロー成形チューブや押し出し成形チューブを好適に使用することができる。また、上記蓋部35としては、口部34に接着される天シールに限定されるものでは無く、例えば、口部34と一体的に成型され、該口部34の開口を閉塞させる樹脂部分として構成することもできる。或いは、口部34に設けられるキャップを蓋部35として構成することもできる。
【0020】
挿入部32は、その先端側32aから人体の膣や肛門といった体腔内(体内)に挿入されるものであり、
図2や
図3、
図4(b)の断面図に示すように、体内への挿入方向に沿って伸びる長尺状に形成されている。この挿入部32の長さとしては、例えば、本薬剤注入器具200を膣内の洗浄用として構成する場合には、50mm~100mmの範囲に設定することが好ましい、挿入部32の他方端部32bには、膨出部37が形成されている。挿入部32の先端部は、体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、滑らかな曲面を有するように形成されている。また、挿入部32は、全体として曲面で形成され、横断面が楕円形となるように形成されている。ここで、挿入部32や膨出部37はプラスチック樹脂原料から形成されることが好ましい。また、挿入部32及び膨出部37は一体成型されて構成されることが好ましい。
【0021】
また、挿入部32は、貯留部33から押し出された薬剤が導かれる薬剤流路部38と、薬剤流路部38及び外部を連通する薬剤吐出孔43とを備えている。薬剤流路部38は、挿入部32の内部に形成されている。この薬剤流路部38は、挿入部32の長手方向に沿って伸びるように形成されており、挿入部32の他方端部で開口する開口端部39を備えている。なお、当該開口端部39とは反対側の薬剤流路部38の端部(挿入部32の先端部側32aの端部)は、挿入部32の内部においてその先端部近傍にまで伸びているが、挿入部32の先端部において開口しないように構成されている。この薬剤流路部38の開口端部39は、少なくとも1以上の尖鋭な突起部40を備え、貯留容器31の口部34に設けられる天シール等の蓋部35に対して刺入可能に構成されている。ここで、本実施形態においては、薬剤流路部38の軸線が、挿入部32の軸線上に重なるように薬剤流路部38を形成しているが、このような態様に限定されず、挿入部32の軸線に重ならない位置に薬剤流路部38の軸線が配置されるように薬剤流路部38を形成してもよい。
【0022】
また、上記薬剤流路部38の開口端部39が設けられる挿入部32の他方端部は、貯留容器31の口部34が挿入される凹部41を備えている。この凹部41は、その深さ方向が、挿入部32の長手方向に沿うようにして形成される。凹部41の内周面には、雌ネジ部42が形成されており、貯留容器31の口部34の外表面に設けられる雄ネジ部36と螺合可能に構成されている。なお、薬剤流路部38の開口端部39は、凹部41底面の中央位置において凹部41内に筒状形態として露出するように配置されている。
【0023】
また、薬剤流路部38の開口端部39は、上述のように、尖鋭な突起部40を備えるように構成されているが、この突起部40の形態としては、薬剤流路部38への流動性薬剤の誘導しやすさを考慮すると、
図5の要部拡大断面図に示すように、凹部41内に露出する筒状の突起部40先端を斜めに成形して構成される竹槍形状とすることが好ましい。なお、この竹槍形状の突起部40(開口端部39)は、その尖鋭方向が、挿入部32の長手方向(凹部41の深さ方向)に沿うよう構成される。また、突起部40は、その形態が竹槍形状に限定されるものでは無く、筒状の開口端部39に設けられるギザギザ状の突起物として構成してもよい。
【0024】
上述のように、薬剤流路部38の開口端部39が尖鋭な突起部40を備えることにより、貯留容器31の口部34を挿入部32の他方端側32bに形成される凹部41内に押し込んでセットするという動作だけで、薬剤流路部38の開口端部39が蓋部35(天シール等)に刺入され(開口端部39が蓋部35を突き破って)、貯留部33と薬剤流路部38とを連通させることが可能になる。また、このような構成により、使用者が、手指で貯留容器31の口部34に設けられる蓋部35を剥がす必要が無く、更に、使用者が薬剤注入器具200を実際に使用する直前まで、流動性薬剤が貯留される貯留容器31の密閉状態を維持することが可能となるため、薬剤注入器具200を衛生的に好ましい状態で使用することが可能となる。
【0025】
また、上述のように、挿入部32の他方端部には、貯留容器31の口部34が挿入される凹部41が形成され、当該凹部41の内周面には、雌ネジ部42が形成されており、貯留容器31の口部34の外表面に設けられる雄ネジ部36と螺合可能となるように構成されている。このような構成により、使用者は、貯留容器31の口部34を、挿入部32の他方端部に形成される凹部41の開口縁にあてがった後、貯留容器31を回転させて口部34と凹部41との螺合を進め、当該口部34を凹部41内に押し込んで、口部34に設けられる蓋部35を薬剤流路部38の尖鋭な開放端部にて突き破りつつ、貯留容器31と挿入部32とを連通接続することになる。このように貯留容器31と挿入部32との連通接続を、凹部41と口部34との螺合によって行うことにより、貯留容器31と挿入部32との接続状態を確実に維持することが可能になる。
【0026】
また、貯留容器31と挿入部32との連通接続を、凹部41と口部34との螺合によって行うことにより、天シール等の蓋部35に対する薬剤流路部38の尖鋭な開口端部39の刺入を緩やかに進めることができるため、開口端部39の刺入によって破れた蓋部部分(天シール部分)は、口部34周囲に接着している蓋部部分から分断されずに、貯留部33内に進入してきた開口端部39の周面に密着して垂れ下がる状態とすることができる。これにより、開口端部39の刺入によって、蓋部35の一部分が分離して貯留部33内に脱落し、薬剤流路部38の開口端部39内に侵入して薬剤流路部38を閉塞させてしまうことを防止することができる。
【0027】
また、薬剤流路部38の開口端部39の刺入によって破れた蓋部35の開口縁が、上記のように、開口端部39の周面に密着して垂れ下がる状態にできることから、この垂れ下がった蓋部部分が一種の弁体となって、貯留部33内の流動性薬剤が、薬剤流路部38の開口端部39と蓋部35の開口縁との隙間を通過して、挿入部32の他方端部に形成される凹部41内に流入してしまうことを効果的に防止することができる。
【0028】
また、挿入部32は、上述のように、薬剤流路部38及び外部を連通する薬剤吐出孔43を複数備えている。つまり、挿入部32の側面部が、薬剤流路部38に連通する複数の薬剤吐出孔43を備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔43を備えることにより、貯留容器31を握って貯留部33を圧縮することにより、流動性薬剤は、貯留容器31の口部34、薬剤流路部38、薬剤吐出孔43を介して、挿入部32の外側に導かれることとなる。なお、薬剤吐出孔43が配置される範囲は、挿入部32の長手方向にみて、当該挿入部32の先端部から中央部分までの領域に設定することが好ましい。より具体的には、例えば、本薬剤注入器具200を膣内の洗浄用として構成する場合には、挿入部32の長手方向に沿って、その先端部からの寸法が、30mm~60mm程度の範囲までの領域に複数の薬剤吐出孔43を形成することが好ましい。
【0029】
各薬剤吐出孔43は、前記挿入部32の長手方向に沿って、所定間隔をあけて配置されている。このように、挿入部32の側面部に薬剤吐出孔43を複数設けることにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、体内への流動性薬剤の注入を完了し、挿入部32を体内から抜き出す際に、この抜き出される挿入部32の表面によって、体内にある流動性薬剤をぬり拡げることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側のより広い範囲に薬剤を迅速に塗布することが可能となる。また、抜き出される挿入部32の表面は、流動性薬剤が付着して湿潤な状態となるため、挿入部32を体内から抜き出す際の使用者に与える痛みを緩和させることができる。
【0030】
また、本実施形態においては、複数の薬剤吐出孔43は、挿入部32の表面において想定される該挿入部32の長手方向に沿う第1仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔43からなる第1吐出孔群44と、第1仮想ラインとは異なり、挿入部32の表面において想定される挿入部32の長手方向に沿う第2仮想ライン上に所定間隔をあけて配置される複数の薬剤吐出孔43からなる第2吐出孔群45とを備えるように構成されている。このような薬剤吐出孔43の位置関係を構成することにより、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に効果的にかつ迅速に薬剤を塗布することが可能となる。
【0031】
また、第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43と、第2吐出孔群45における各薬剤吐出孔43とは、薬剤流路部38を挟んだ両側にそれぞれ形成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、より一層広い範囲で薬剤を膣や肛門といった体腔の内側に塗布することが可能となる。
【0032】
また、
図3に示すように、第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43と、第2吐出孔群45における各薬剤吐出孔43とは、挿入部32の長手方向に沿って互い違いの位置関係となるように配置されていることが好ましい。このような構成も、膣や肛門といった体腔の内側のより一層広い範囲での薬剤の塗布に寄与する。
【0033】
また、本実施形態においては、挿入部32は、その長手方向に対して垂直な断面形状が楕円形となるように形成されているが、このような形態の場合、少なくとも第1吐出孔群44における各薬剤吐出孔43は、楕円形の断面を有する挿入部32の短軸方向の側面部に形成されるように構成することが好ましい。このように、挿入部32の短軸方向の側面部に薬剤吐出孔43を形成する場合、この薬剤吐出孔43の長さを短く形成することができ、内部を通過する流動性薬剤が詰まることを効果的に防止することができる。更に、薬剤吐出孔43の内部に残留して外部に吐出されない流動性薬剤の量を少なくさせることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態においては、各薬剤吐出孔43の孔径が同一寸法となるように構成しているが、例えば、薬剤流路部38を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔43の孔径が段階的に大きくなるように構成してもよい。このような構成を採用する場合、本実施形態においては、挿入部32の他方端部側32bから先端部側32aに向かって流動性薬剤が薬剤流路部38を流下しつつ、各薬剤吐出孔43から吐出される構成であるため、薬剤吐出孔43a、薬剤吐出孔43b、薬剤吐出孔43c、薬剤吐出孔43dの順に、その孔径が徐々に大きくなるように構成する。全ての薬剤吐出孔43の孔径を同一に構成した場合、圧力損失の影響により、薬剤流路部38の下流側に配置される薬剤吐出孔43dから流動性薬剤が吐出されにくくなるおそれがあるが、上述のように、薬剤流路部38を流通する流動性薬剤の流下方向に向かうに従い、各薬剤吐出孔43の孔径が段階的に大きくなるように構成することにより、各薬剤吐出孔43から吐出される流動性薬剤の量を均等に維持させることが可能となり、膣や肛門といった体腔の内側の広い範囲に亘って、流動性薬剤を均等に塗布することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態においては、薬剤吐出孔43を挿入部32の先端部に設けないように構成しているが、このような構成に限定されず、薬剤吐出孔43を挿入部32の先端部に設けるように構成してもよい。
【0036】
また、挿入部32の他方端部には、上記のように膨出部37が設けられているが、この膨出部37は、挿入部32の他方端部の周囲全域に形成されている。この膨出部37の形態としては、特に限定されないが、本実施形態においては、
図3の矢視C方向から見た平面図である
図6に示すように、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形となるように形成されることが好ましい。このような膨出部37を備えることにより、使用者が挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、当該膨出部37がストッパーとしての機能を発揮し、貯留容器31が体内に挿入されることを効果的に防止することができる。また、膨出部37を備えることにより、貯留容器31を挿入部32の他方端部側32bに螺合させる際に貯留容器31或いは挿入部32を回転させやすくなり、使用者の操作性を向上させることができる。
【0037】
また、膨出部37の形態として、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が楕円形となるように形成することにより、ストッパーとしての機能を有効に発揮させつつ、使用者に与える心理的ストレスを極力小さいものとすることができる。つまり、楕円形の場合、短軸が存在するため、挿入部32の長手方向に対して垂直な方向の断面形状が円形となる膨出部37よりも、膨出部37が小さいものである認識させ易く、使用者が挿入部32を挿入する際の安心感を惹起することができる。
【0038】
また、膨出部37と挿入部32とは滑らかな曲面により接続するように構成することが好ましい。このような構成を採用することにより、使用者が挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入し、膨出部37が体腔入口に当接する際の痛みを和らげることが可能になると共に、使用者に対しては、痛みを伴わない、或いは、痛みが緩和されるという心理的な安心感を与えることができる。
【0039】
また、膨出部37の最大径は、挿入部32の他方端部に接続される貯留容器31の最大幅よりも大となるように構成することが好ましい。このような構成を採用することにより、貯留容器31が誤って体内に挿入されることをより一層効果的に防止することができる。
【0040】
また、本実施形態において、
図7(a)(b)に示すように、挿入部32の先端部に、可撓性を有するエラストマー製の被覆体46を設けるように構成してもよい。なお、
図7(a)は、挿入部32の側面図であり、
図7(b)は、その断面図である。被覆体46は、挿入部32の先端部を被嵌する部材であり、当該挿入部32の先端部を収納する収納空間を内側に有する椀状の形態を有している。このような可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー製の被覆体46を挿入部32の先端部に設けることにより、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者に対して、痛みを伴わない、或いは、痛みが緩和されるという心理的な安心感を与えることが可能となる。
【0041】
挿入部32の先端部に対する被覆体46の装着方法は特に限定されないが、例えば、
図7(b)に示すように、挿入部32の先端部表面の一部に段差部47を形成し、当該段差部47に被覆体46の収納空間の内周面を当接させるようにして装着する。また、挿入部32の先端部と、被覆体46とは、接着剤で互いに固定するように構成してもよく、或いは、段差部47と被覆体46の収納空間周りの開口縁とが互いに嵌合するような嵌合構造を設け、互いに固定してもよい。或いは、射出成型法を用いて、挿入部32の先端部に被覆体46を被嵌するようにしてもよい。
【0042】
また、この被覆体46は、挿入部32の体内への挿入時に使用者に痛みを感じさせないように、挿入部32の表面と面一となるように構成することが好ましい。
【0043】
また、被覆体46は、
図8(a)(b)(c)に示すように、挿入部32の先端部側32aから基端部側(他方端部側32b)に向けて伸びて、挿入部32の先端部近傍の側面の一部を被覆する側面被覆部48を備えるように構成してもよい。このような側面被覆部48を備えることにより、挿入部32の先端部側の広い範囲を、可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー製の被覆体46で被覆されているとの印象を使用者に与えることができ、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者が感じる“痛みを伴うのではないか”という心理的なストレスを効果的に緩和させることが可能となる。なお、このような側面被覆部48を設ける場合、挿入部32の側面に形成される薬剤吐出孔43に重ならないように構成する。ここで、
図8(a)は、挿入部32の側面図であり、
図8(b)は、
図8(a)の矢視D方向から見た側面図である。また、
図8(c)は、被覆体46を挿入部32から取り外した状態を示す説明図である。
【0044】
また、挿入部32の先端部側32aから基端部側(他方端部側32b)に向けて伸びる側面被覆部48は、
図8各図に示すように、挿入部32の軸線を挟んだ両側のそれぞれに設けるように構成することが好ましい。このような構成により、使用者が感じる上述の心理的なストレスをより一層効果的に緩和させることが可能となる。
【0045】
特に、本実施形態のように、その長手方向に対して垂直な断面形状が楕円形となる挿入部32に被覆体46を装着する場合、側面被覆部48は、当該楕円形の断面を有する挿入部32の長軸方向の側面部を被覆するように形成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、幅が太い側の先端側面部が、可撓性を有し柔軟な素材であるエラストマー素材によって広い範囲に亘って被覆されているとの印象を、使用者に強く与えることができるため、挿入部32を膣や肛門等の体腔内(体内)に挿入する際に、使用者が感じる“痛みを伴うのではないか”という心理的なストレスをより一層効果的に緩和させることが可能となる。
【符号の説明】
【0046】
200 薬剤注入器具
31 貯留容器
32 挿入部
33 貯留部
34 口部
35 蓋部
36 口部の外周面に形成される雄ネジ部
37 膨出部
38 薬剤流路部
39 薬剤流路部の開口端部
40 突起部
41 凹部
42 凹部の内周面に形成される雌ネジ部
43 薬剤吐出孔
44 第1吐出孔群
45 第2吐出孔群
46 被覆体
47 段差部
48 側面被覆部