(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02255 20210101AFI20231122BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20231122BHJP
【FI】
H01S5/02255
H01S5/02257
(21)【出願番号】P 2019084095
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山下 利章
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526192(JP,A)
【文献】特表2018-517249(JP,A)
【文献】特開2013-254889(JP,A)
【文献】国際公開第2019/061371(WO,A1)
【文献】特開2018-056160(JP,A)
【文献】国際公開第2018/073220(WO,A1)
【文献】特開2006-332042(JP,A)
【文献】特表2010-541221(JP,A)
【文献】特開2011-249732(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180658(WO,A1)
【文献】特開2018-107298(JP,A)
【文献】特開2018-037472(JP,A)
【文献】特開2018-037440(JP,A)
【文献】特開2017-199850(JP,A)
【文献】特開2017-199849(JP,A)
【文献】特開2017-188651(JP,A)
【文献】特開2017-068923(JP,A)
【文献】特開2016-213212(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035435(WO,A1)
【文献】特開2013-254689(JP,A)
【文献】特開2013-239318(JP,A)
【文献】特開2013-026162(JP,A)
【文献】特開2011-154995(JP,A)
【文献】特開2010-098118(JP,A)
【文献】特開2008-177227(JP,A)
【文献】特開2006-210887(JP,A)
【文献】特開2005-347263(JP,A)
【文献】特開昭62-280984(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014226336(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
F21K 9/00 - 9/90
F21S 2/00 - 45/70
F21V 1/00 - 99/00
F21W 102/00 -131/411
F21Y 101/00 -115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体レーザ素子と、
前記複数の半導体レーザ素子の各出射光が入射する複数の第1傾斜面と、該第1傾斜面から入射した光を出射させる下面と
、該下面の上方に位置し、波長変換された光を出射する上面と、前記第1傾斜面と異なる面であって、前記下面に隣接する第2傾斜面を有する透光性部材と、
前記透光性部材の前記下面に接触し、前記透光性部材の前記下面から出射した光の波長を変換する波長変換部材と、
該波長変換部材の下方に配置された反射膜と、
ベースと、光取り出し窓が設けられたキャップとを有する支持部材を備え、
前記複数の第1傾斜面は、それぞれ異なる面であり、
前記第1傾斜面は、前記第1傾斜面から入射した、前記半導体レーザ素子の出射光を前記下面に向かう方向に屈折させるように前記出射光の光軸に対して傾斜している面であり、
前記第2傾斜面は、前記半導体レーザ素子の出射光の光軸に対して傾斜している面であり、前記下面に対する傾斜角の角度が90度未満であり、前記第2傾斜面は、光反射膜で被覆されており、
前記半導体レーザ素子、前記透光性部材及び前記波長変換部材は、前記ベース及び前記キャップにより規定される空間内に配置されており、
前記波長変換部材は、前記支持部材と熱的に接続されている発光装置。
【請求項2】
前記透光性部材及び前記波長変換部材は、2以上の前記半導体レーザ素子に挟まれる位置に配置されている請求項
1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1傾斜面は、前記半導体レーザ素子の出射光を透過し前記波長変換部材によって波長変換された光を反射するバンドパスフィルタで被覆されている請求項1
又は2に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ素子を用いた発光装置は、得ようとする光の特性に応じて、レーザ素子の使用数、波長変換部材の種類、発光装置を構成する他の部品の種類及び配置等が適宜設定される。例えば、波長変換部材の下面側に反射部材を配置し、波長変換部材の上面を、レーザ光を入射させる面および光取り出し側の面とする発光装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ素子を用いた発光装置は、取り出す光の配光ムラをさらに低減することが求められている。
本開示は、配光ムラを低減することができる発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を含む。
複数の半導体レーザ素子と、
前記複数の半導体レーザ素子の各出射光が入射する複数の第1傾斜面と、該第1傾斜面から入射した光を出射させる下面とを有する透光性部材と、
前記透光性部材の前記下面に接触し、前記透光性部材の前記下面から出射した光の波長を変換する波長変換部材とを備える発光装置。
【発明の効果】
【0006】
上記の発光装置によれば、配光ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本発明の一実施形態の発光装置の概略平面図である。
【
図1C】
図1Aの発光装置のII-II’線概略断面図である。
【
図1D】
図1Aの発光装置からキャップを省略した状態の概略平面図である。
【
図2A】本発明の別の実施形態の発光装置の概略平面図である。
【
図2B】
図2Aの発光装置のIII-III’線概略断面図である。
【
図2C】
図2Aの発光装置からキャップを省略した状態の概略平面図である。
【
図3A】本発明のさらに別の実施形態の発光装置の概略平面図である。
【
図3B】
図3Aの発光装置のIV-IV’線概略断面図である。
【
図3C】
図3Aの発光装置からキャップを省略した状態の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下に限定するものではない。また、各図面が示す部材の大きさ及び位置関係等は、説明を明確にするために誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則として同一又は同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。
【0009】
〔発光装置〕
本開示の発光装置10は、例えば、
図1Aから1Dに示すように、複数の半導体レーザ素子1(以下「レーザ素子」と称することがある)と、透光性部材2と、波長変換部材3とを備える。透光性部材2は、各レーザ素子1の出射光が入射する複数の第1傾斜面2aと、第1傾斜面2aから入射した光を出射させる下面2bとを有する。波長変換部材3は、透光性部材2の下面2bに接触して配置されている。
このように、複数のレーザ素子1を用いることにより、透光性部材2に対して異なる方向から光を入射させることが可能となる。その結果、取り出される光の配光ムラを低減することができる。すなわち、
図1Bに示すようにレーザ素子1をその出射光が波長変換部材3の光照射面に対して斜め方向から入射するように配置すると、光照射面でレーザ素子1が出射する光の一部分が反射される。このため、レーザ素子1が1つのみである場合は、波長変換部材3の光照射面で反射された位置において、レーザ素子1の出射光の色味が相対的に強くなる。そこで、複数のレーザ素子1を用いて複数の第1傾斜面2aからそれぞれレーザ光を入射させる。これにより、レーザ素子1の出射光のうち波長変換部材3の光照射面において反射された光が向かう方向が複数となるため、発光装置10から取り出される光の配光ムラを低減することができる。なお、本明細書において、配光ムラとは、発光装置10から取り出される光の配光特性に偏りが生じていることを意味する。配光ムラは、色ムラ又は輝度ムラと言い換えてもよい。
また、波長変換部材3と透光性部材2の下面2bとが接触していることから、レーザ素子の光が照射されるところから波長変換部材3で発生した熱を透光性部材2側に排熱することが可能となる。波長変換部材3は高温になると変換効率が低下するが、本開示の発光装置10では、波長変換部材3の熱を透光性部材2側に排熱できることにより、波長変換部材3の変換効率を低下させすぎずに照射できる光の出力の上限を高くすることができる。これによって、レーザ素子1として比較的高出力のレーザ光を発するレーザ素子を採用することができ、発光装置10として高い光出力を得ることが可能となる。
【0010】
(半導体レーザ素子1)
半導体レーザ素子1は、1つの発光装置10に複数配置されている。
レーザ素子1としては、例えば、窒化物半導体(主として一般式InxAlyGa1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される)などの半導体層を備える素子が挙げられる。その組成等を調整することにより、半導体レーザ素子1の発振波長を調整することができる。例えば、400nm以上530nm以下の範囲に発振波長のピークを有する半導体レーザ素子1を用いることができる。例えば、YAG系蛍光体と組み合わせる場合は、発光装置10から取り出される光を混色により白色とすることができるので、発振するレーザ光のピーク波長が420nm以上490nm以下の範囲にあるレーザ素子1が好ましい。半導体レーザ素子1としては、上述のとおり比較的高出力のレーザ素子を用いることができ、例えば1W以上、さらには5W以上の光出力を有するレーザ素子を用いることができる。
【0011】
レーザ素子1は、レーザ光の光出射端面が、透光性部材2の第1傾斜面2aに向いて配置されることが好ましい。レーザ素子1は、透光性部材2に対して対向するように配置されているともいえる。このような配置により、レーザ素子1からの出射光を効率的に透光性部材2に導入することができる。
また、複数のレーザ素子1は、透光性部材2及び/又は波長変換部材3を挟む位置に配置されていることが好ましい。これにより、配光ムラを効果的に低減することができる。すなわち、一方のレーザ素子1の出射光のスポット及び他方のレーザ素子1の出射光のスポットの光密度の低い部分と低い部分のみを重ね合わせること、または出射光のスポットのほぼ全体を光密度の低い部分と高い部分とを互いに補うように重ね合わせること等により、配光ムラを低減することができる。例えば、
図1Dに示すように、上面視において、直線状に、1つのレーザ素子1、透光性部材2及び波長変換部材3、1つのレーザ素子1がこの順に配置されていてよい。また、このような配置においてレーザ素子1がそれぞれ2以上配置されていてもよい。例えば、透光性部材2及び/又は波長変換部材3を中心にして、互いに120度の角度の位置、つまり3方向に、レーザ素子1が3つ配置されていてもよい。また、透光性部材2及び/又は波長変換部材3を中心にして、互いに90度の角度の位置、つまり4方向に、レーザ素子1が4つ配置されていてもよい。
レーザ素子1は、後述するベース5の実装面に直接配置されていてもよいが、ベース5の実装面にサブマウント7を介して配置されていることが好ましい。これにより、レーザ素子1の光出射端面をベース5の実装面から離すことができるため、レーザ素子1が出射するレーザ光の主要部分がベース5の実装面に当たるのを回避することができる。また、サブマウント7を利用して、放熱性を向上させることができる。なお、ベース5の実装面とは、レーザ素子1等の各部品が実装される面を指す。例えば、
図1Bにおいては、ベース5は凹部を有する形状であり、その凹部の内側の表面のうちの底面が実装面である。サブマウント7は、例えば、窒化アルミニウム、炭化珪素等によって形成することができる。レーザ素子1は、サブマウント7を介する場合及びベース5の実装面に直接配置される場合のいずれにおいても、出射したレーザ光の光軸が、ベース5の実装面に対して実質的に平行な方向に進行するように実装することが好ましい。ここでの平行とは、±5度程度の変動は許容されることを意味する。以下、本明細書においては「平行」を同程度の変動が許容される意味で用いる。また、本明細書においてレーザ光の光軸とは、レーザ光の中心部の進行方向を示す軸線を意味する。出射光の光軸についても同様の意味で用いる。
【0012】
(透光性部材2)
透光性部材2は、レーザ素子1の出射光が入射する複数の第1傾斜面2aと、この第1傾斜面2aから入射した光を出射させる下面2bとを有する。透光性部材2は、レーザ素子1が出射する出射光の光軸上に、光軸に交差するように配置されている。
透光性部材2は、半導体レーザ素子1から出射される光及び波長変換部材3によって変換された光の60%以上を透過し得る部材であることが好ましく、70%以上を透過し得る部材であってもよく、80%以上を透過し得る部材であってもよく、さらには90%以上を透過し得る部材であることがより好ましい。
透光性部材2が備える複数の第1傾斜面2aは、
図1Dに示すように、透光性部材2の内側に向かって傾斜する。言い換えると、第1傾斜面2aは、透光性部材2の下面2bに対する傾斜角α(
図1B参照)の角度が90度未満である。第1傾斜面2aは、レーザ素子1からの出射光の光軸、すなわちレーザ素子1が出射する出射光の光軸に交差する面であって、出射光の光軸に対して傾斜している面である。第1傾斜面2aの傾斜角度は、後述する透光性部材2の材料における屈折率と相まって、透光性部材2に入射したレーザ素子1の出射光を透光性部材2の下方、つまり、後述する下面2bに向かう方向に屈折させることができる角度に設定されていることが好ましい。また、第1傾斜面2aの傾斜角度は、後述する透光性部材2の下面2bで、複数のレーザ素子1からの出射光が重なり得るような角度に設定されていることが好ましい。第1傾斜面2aは、例えば、レーザ素子1が出射するレーザ光の光軸に対して、数度以上90度未満の角度で交わる面であり、数十度以上80度以下の角度で交わる面とすることができ、40度以上75度以下の角度で交わる面であってもよい。なお、
図1Bの傾斜角αは、透光性部材の下面2bに対する第1傾斜面2aの傾斜角であり、透光性部材の下面2bがレーザ光の光軸に平行な場合において、傾斜角αの角度は第1傾斜面2aとレーザ光の光軸が成す角度と等しい。言い換えると、レーザ素子1からの出射光の光軸を含む平面に対して所定の傾斜角度となる傾斜面を第1傾斜面2aと称することができる。所定の傾斜角度とは、例えば数度以上90度未満であり、数十度以上80度以下とすることができ、40度以上75度以下であってもよい。詳細には、レーザ素子1からの出射光の光軸の方向をx軸とし、それと垂直且つ透光性部材の下面2bと平行な方向をy軸とし、x軸とy軸とを含むxy平面に垂直な方向をz軸とした場合、y軸とz軸を含むyz平面がy軸を回転軸として回転することにより得られる面、すなわちxy平面に対して上述した所定の傾斜角度で傾斜した面を、第1傾斜面2aと称することができる。言い換えると、レーザ素子1からの出射光の光軸を含む平面との二面角の角度が上述した所定の傾斜角度である面を第1傾斜面と称することができる。また、第1傾斜面2aは、下面2bに対して傾斜した面であるといえる。ここでの傾斜角αの角度は、上述した所定の傾斜角度の範囲内とすることができる。
【0013】
第1傾斜面2aは、例えば、
図2A~2Cに示すように、レーザ素子1からの出射光を透過し、後述する波長変換部材3によって波長変換された光を反射するバンドパスフィルタ11及び/又は反射膜9等で被覆されていることが好ましい。バンドパスフィルタ11は、レーザ素子1の出射光を透過し波長変換部材3によって波長変換された光を反射する機能を有することが好ましい。このようなバンドパスフィルタ11で第1傾斜面が被覆されていることにより、レーザ素子1からの出射光を透光性部材2に導入することができるとともに、波長変換部材3によって波長変換された光のうちレーザ素子1の側に戻る光を反射して透光性部材の光取り出し面(
図2A~2Cでは上面2d)に導くことが可能である。これにより、波長変換された光を、透光性部材2の光取り出し面から効率的に出射させることができる。
バンドパスフィルタ11としては、短波長パスフィルタ(SWPF)等が挙げられる。バンドパスフィルタ11は例えば誘電体多層膜によって構成される。
【0014】
また、透光性部材2が備える下面2bは、入射光を出射させることができる面であればよい。下面2bは、後述する発光装置の支持部材6の外に光を取り出すために、支持部材6における光取り出し窓4aに向けて、波長変換した光を取り出すことができる面でもある。特に、下面2bは、そこに照射される複数のレーザ素子1からの出射光が重なり得るような位置に配置されていることが好ましい。したがって、下面2bの位置、大きさ、第1傾斜面2aに対する角度などは、光取り出し方向、例えば、光取り出し窓4aの位置、第1傾斜面2aの傾斜角、レーザ素子1の位置等によって適宜設定することができる。例えば、
図1Bに示すような支持部材6及び光取り出し窓4aを有する場合には、下面2bは、レーザ素子1からの出射光の光軸と平行に配置されることが好ましい。下面2bは、第1傾斜面2aと、例えば、数度以上90度未満の傾斜角を構成することが好ましく、数十度以上80度以下の傾斜角であることがより好ましく、40度以上75度以下の傾斜角であることがさらに好ましい。また、下面2bは、第1傾斜面2aの下方に位置することが好ましい。下面2bは、透光性部材2の光取り出し方向と反対側に位置させることができる。下面2bは、透光性部材2の面のうちベース5の実装面と向かい合う面とすることができる。さらに、下面2bは、例えば、第1傾斜面2aに隣接する。
【0015】
透光性部材2は、さらに、第1傾斜面2aと異なる面であって、下面2bに隣接する第2傾斜面2cを有することが好ましい。第2傾斜面2cは、第1傾斜面1aと同様に、透光性部材2の内側に向かって傾斜する。言い換えると、第2傾斜面2cは、透光性部材2の下面2bに対する傾斜角β(
図1C参照)の角度が90度未満である。ここでの第2傾斜面2cとは、第1傾斜面2aと異なる面であれば、第1傾斜面2aと同じ傾斜角度を有するものであってもよいが、異なる傾斜角度を有するものが好ましい。第2傾斜面2cは、下面2bに隣接する面であって、下面2bに対して傾斜している面を指す。
図1Cに示すように、第2傾斜面2cの傾斜角βは、透光性部材の下面2bがレーザ光の出射光の光軸に平行な場合において、下面2bと平行であって光軸を含む面に対する第2傾斜面2cの傾斜角度と同じである。傾斜角β(
図1C参照)の角度は、数度以上90度未満とすることができ、数十度以上80度以下であってもよく、さらには40度以上75度以下であってもよい。第2傾斜面2cは、1つの第1傾斜面2aに隣接していてもよく、2つの第1傾斜面2aと隣接、すなわち第1傾斜面2aが両側に隣接していてもよい。第2傾斜面2cは、レーザ素子からの出射光の光軸に対して平行な面とすることができる。例えば、第2傾斜面2cは、レーザ素子1からの出射光の光軸の方向をx軸とし、それと垂直且つ透光性部材の下面2bと平行な方向をy軸とし、x軸とy軸とを含むxy平面に垂直な方向をz軸とした場合、x軸とz軸とを含むxz平面がx軸を回転軸として回転することにより得られる面、すなわちxy平面に対して傾斜した面を、第2傾斜面2cと称することができる。第2傾斜面2cとxy平面とが成す角の角度は、上述した傾斜角βと同様の角度範囲とすることができる。
第2傾斜面2cは、透光性部材2において1つ配置されるのみであってもよいし、複数配置されてもよい。
【0016】
第2傾斜面2cは、例えば、
図3A~3Cに示すように、光反射膜8で被覆されていることが好ましい。これにより、透光性部材2の内部の光のうち第2傾斜面2cから外部に出ようとする光を光反射膜8で反射することができ、そのような光を最終的に透光性部材2の光取り出し面(例えば上面2d)から取り出すことができる。すなわち、発光装置10の光取り出し効率を向上させることができる。また、光反射膜8等によって透光性部材2の内部で反射が繰り返されることにより、発光装置10Bから取り出される光の配光ムラが低減されることも期待できる。
ここでの光反射膜8は、レーザ素子1からの出射光及び波長変換部材3によって波長変換された光に対する反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。光反射膜8は、誘電体多層膜、金属膜又はこれらの積層膜によって形成することができる。光反射膜8は、第2傾斜面2cの全面を覆うことができる。
【0017】
透光性部材2は、レーザ素子1の出射光及び/又は波長変換部材3によって波長変換された光を出射する上面2dを有することができる。上面2dは、例えば、下面2bに対して平行な平面である。上面2d等の透光性部材2の光出射面は反射防止層(AR層)で被覆されていてもよい。また、透光性部材2は、第1傾斜面2a及び第2傾斜面2cとは異なる傾斜面等をさらに有していてもよい。
【0018】
透光性部材2は、例えば、四角柱、四角錐台等の傾斜面を有する形状の部材とすることができる。透光性部材2は、例えば、セラミックス、ガラス(例えば、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス等)、サファイア又はこれらの複合体等によって形成することができる。透光性部材2は、これらに該当しない金属酸化物を用いて形成してもよい。透光性部材2は、上述した第1傾斜面2aの傾斜角度によって、透光性部材2に入射したレーザ光を透光性部材2の下面2bに向かう方向に屈折させることができる屈折率を有する材料で形成することができる。透光性部材2の厚み、
図1Bにおいては下面2bから上面2dまでの最短距離は、例えば、500μm以上3000μm以下が挙げられる。透光性部材2によって波長変換部材3で発生する熱を効率良く排熱するためには、透光性部材2の材料を熱伝導率の比較的高いものとすることが好ましい。このような熱伝導率の比較的高い材料としては、例えばサファイアが挙げられる。
透光性部材2は、第1傾斜面2a、下面2b、第2傾斜面2c及び上面2dは、平らな面であることが好ましいが、表面が凹凸を有していてもよい。ここでの凹凸の程度は、平均表面粗さRaが概ね1nm以上200nm以下が挙げられる。
【0019】
(波長変換部材3)
波長変換部材3は、レーザ素子1の出射光の波長を変換する部材である。波長変換部材3は、透光性部材2の下面に接触している。ここでの接触とは、波長変換部材3が直接透光性部材2に接するものであることが好ましいが、熱的に接続されていればよく、例えば、両者の位置関係を固定又は支持するために用いる部材(例えば、接着剤等)を介して接触するものも含まれる。なかでも、波長変換部材3と透光性部材2とは密着していることが好ましい。接着剤等は、透光性部材2から波長変換部材3へ光の入射が可能であればよい。例えば、透光性を有するものが好ましく、透光性部材2からの光を70%以上透過し得るものであればよく、80%以上透過し得るものが好ましく、90%以上透過し得るものがより好ましい。このように波長変換部材3が透光性部材2の下面に接触することにより、透光性部材2の熱を、波長変換部材3側に排熱することができる。また、後述するように、波長変換部材3が、支持部材6と熱的に接続されている場合には、波長変換部材3の熱を、支持部材6側にも排熱することができる。
【0020】
波長変換部材3は、蛍光体を含む。波長変換部材3としては、蛍光体のみによって形成されていてもよく、蛍光体に加えて、半導体レーザ素子1からの光及び蛍光体からの蛍光の双方に対して光透過性を有する材料を含んでいてもよい。波長変換部材3としては、例えば、蛍光体の単結晶、蛍光体を含むセラミックス(以下、「蛍光体セラミックス」という。)等が挙げられる。波長変換部材3は無機材料のみで構成されていることが好ましい。波長変換部材3に樹脂等の有機材料が含まれていると、半導体レーザ素子1からの出射光の照射による変色や、アウトガスの半導体レーザ素子1への付着等の懸念があるためである。波長変換部材3は、単一の材料又は複数の材料によって形成することができ、単層構造又は積層構造を採用することができる。波長変換部材3を設けることによって、レーザ素子1から出射される光を波長変換することができ、レーザ素子1からの光と、波長変換された光との混色光を外部に放出することができる。
【0021】
蛍光体としては、例えば、用いる半導体レーザ素子1の出射光の波長、得ようとする光の色などを考慮して選択することができる。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN)などが挙げられる。なかでも、耐熱性に優れたYAG蛍光体を用いることが好ましい。蛍光体は、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。例えば、発光色の異なる蛍光体を所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いて、演色性や色再現性を調整することもできる。複数の種類の蛍光体を用いる場合は、単層構造の波長変換部材3に複数の種類の蛍光体を含有させてもよいし、積層構造の波長変換部材3において、異なる層それぞれに異なる蛍光体を含有させてもよい。
【0022】
蛍光体セラミックスとして蛍光体と組み合わせる材料としては、無機材料が挙げられる。このような無機材料としては、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化バリウム(BaO)、酸化イットリウム(Y2O3)等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、透光性が良好であり、融点、熱伝導性及び拡散性等も良好であることから、酸化アルミニウムを含む蛍光体セラミックスが好ましい。波長変換部材3が蛍光体セラミックスによって形成される場合には、蛍光体の割合を蛍光体セラミックスの全重量に対して10重量%以上とすることができ、50重量%以上であってもよく、60重量%以上であってもよい。蛍光体セラミックスの全重量に対する蛍光体の割合は、例えば95重量%以下とすることができ、80重量%以下であってもよい。
また、熱伝導率に優れるものを波長変換部材3の材料として用いることにより、レーザ素子1の出射光が照射されることに起因して蛍光体が発する熱を効率よく放出することができる。これによって蛍光体の発光効率の低下度合を低減させることができ、規定内の光出力を長期間維持することができる。
【0023】
波長変換部材3の形状は適宜設定することができる。特に、波長変換部材3の形状としては、上述した透光性部材2の下面2bに密着し得る面を、上面として有する形状が挙げられる。波長変換部材3は、多角柱、多角錐台であるものが好ましく、立方体又は直方体であるものがより好ましい。波長変換部材3は、光入射面と光出射面を兼ねる上面と、その上面と平行な面である下面とを有することが好ましい。これにより、支持部材6に対して、波長変換部材3及び透光性部材2を、安定的に固定することが可能となる。
波長変換部材3の大きさは、レーザ素子1からの光がその上面に適度に照射されるものであればよい。波長変換部材3の大きさは、透光性部材2から波長変換部材3の上面に向けて出射される光の全部を導入し得るものが好ましい。波長変換部材3は、例えば、透光性部材2の下面と同じまたはそれより小さい平面積の上面を有する柱状又は錐台状の部材に設定することができる。なお、波長変換部材3に導入されるレーザ素子1からの出射光は、透光性部材2に入射した後で、散乱及び/又は反射されることにより、レーザ光ではなく位相が揃っていない光になる場合があるため、波長変換部材3に導入される光は、レーザ光に限定されない。
【0024】
波長変換部材3は、光入射面と光出射面とが同じ面である。そのために、波長変換部材3は、例えば、
図2B及び3Bに示すように、下方に反射膜9を備えることが好ましい。つまり、波長変換部材3は、透光性部材2との接触面(例えば、上面)とは反対側の面(例えば、下面)に反射膜9を備えることが好ましい。このような反射膜9を備えることにより、波長変換された光を効率的に透光性部材2側に取り出すことができる。反射膜9は設けなくてもよい。この場合は、波長変換部材3が支持部材6の実装面の上に載置され、支持部材6が反射性の良好な材料から形成されていることが好ましい。
反射膜9は、波長変換部材3の波長変換光に対する反射率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。反射膜9は、レーザ素子1からの出射光に対する反射率も同様の程度とすることがより好ましい。反射膜9は、誘電体多層膜、金属膜又はこれらの積層膜によって形成することができる。
波長変換部材3における反射膜9が配置される面は、反射膜9と密着していることが好ましい。これによって、波長変換部材3で生じる熱を、反射膜9を通じて放出する経路を確保することができる。
【0025】
反射膜9は、波長変換部材3の下方に配置される。反射膜9は、波長変換部材3の透光性部材2との接触面以外の表面に配置されていてもよく、例えば、波長変換部材3の側面等に配置されていてもよい。反射膜9が設けられることで、波長変換部材3から、透光性部材2とは異なる方向への光の出射を低減することができる。これにより、波長変換部材3内に導入された光をより多く透光性部材2に取り出すことが可能となり、光取り出し効率を向上させることに寄与する。
【0026】
波長変換部材3は、光入射面及び/又は光出射面に、任意に、反射防止層(AR層)、短波長パスフィルタ(SWPF)、拡散層などの機能性膜が形成されていてもよい。ここでの機能性膜は、いずれも、当該分野で公知のもののいずれかを用いることができる。
【0027】
(支持部材6)
発光装置は、支持部材6を備えている。レーザ素子1、透光性部材2及び波長変換部材3は、支持部材6によって規定される空間内に配置されている。支持部材6は、レーザ素子1等を気密封止することができる。
支持部材6は、ベース5とキャップ4を有する。
図1B及び
図2Bに示すように、レーザ素子1、透光性部材2及び波長変換部材3は、ベース5及びキャップ4により規定される空間内に配置されている。ベース5は、主として、レーザ素子1及び波長変換部材3を載置するためのものである。ベース5は、適度な強度及び熱伝導率を有する材料によって構成することができる。このような材料としては、例えば、銅、銅合金、鉄又はコバール等の鉄合金等を含む金属、窒化アルミニウム又は酸化アルミニウム等を含むセラミックス等が挙げられる。ベース5は、複数の材料の組合せにより形成されていてもよい。
ベース5の形状は、例えば、板状、上方に向かって開口した凹部を有する形状など、種々の形状が挙げられる。ベース5は、半導体レーザ素子1が実装される実装面が平坦で、さらにその実装面に平行な下面を備えた形状とすることができる。ベース5の平面形状は、例えば、略円形、略楕円形、略多角形等の種々の形状が挙げられる。ベース5の大きさは、適宜調整することができ、例えば、ベース5の平面積は10mm
2以上が挙げられる。
ベース5の厚みは、強度、放熱性等を考慮すると、0.2mm以上であることが挙げられ、0.2mm以上1.0mm以下が好ましい。ベース5は、全領域にわたって一定の厚みを有するものであってもよいし、部分的に厚みが異なっていてもよい。
ベース5が上方に向かって開口した凹部を有する形状である場合、その高さは、例えば、700μm以上4000μm以下が挙げられ、1000μm以上3500μm以下が好ましい。
【0028】
キャップ4は、主として、ベース5と共にレーザ素子1等を気密封止するためのものである。キャップ4は、適度な強度を有する材料によって構成されることができる。このような材料としては、例えば、銅、銅合金、鉄又はコバール等の鉄合金等を含む金属、窒化アルミニウム又は酸化アルミニウム等を含むセラミックス等が挙げられる。キャップ4は、ベース5と同じ材料によって形成されていてもよいし、異なる材料によって形成されていてもよい。キャップ4は、複数の材料の組合せにより形成されていてもよい。
キャップ4は、例えば、金属接着剤等を用いて又は溶接によって、ベース5に接合されている。
キャップ4の形状は、例えば、板状、下方に向かって開口した凹部を有する形状など、種々の形状が挙げられる。キャップ4の形状は、ベース5との係合によって半導体レーザ素子1等を収容する空間を規定し得る形状である。例えば、
図1A~1Dに示すように、ベース5が上方に向かって開口した凹部を有する形状である場合には、キャップ4の形状として板状が挙げられる。あるいは、ベース5が、互いに平行な上面及び下面を備えた板状の形状である場合には、キャップ4の形状として、ベース5上に載置されたレーザ素子1等の上方に位置する天井部と、天井部を支持する側壁部とを有する下方に向かって開口した凹部を有する形状が挙げられる。また、キャップ4は、ベース5上にキャップ4を固定する等のための突出及び屈曲等の形状の部位を有していてもよい。
キャップ4の厚みは、0.2mm以上、例えば、0.2mm以上1.0mm以下とすることができる。
【0029】
キャップ4は、光を取り出すための光取り出し窓4aを有する。光取り出し窓4aとは、キャップ4のうち透光性の部分である。光取り出し窓4aから、波長変換部材3によって波長変換された光等が発光装置10の外部に取り出される。例えば、キャップ4は、貫通孔を有する遮光部材と、貫通孔を塞ぐ透光性蓋とを有することができる。この場合、透光性蓋が光取り出し窓4aである。光取り出し窓4aは、透光性部材2及び波長変換部材3が載置されるベース5の実装面に対向する位置に配置することができる。言い換えると、光取り出し窓4aの位置は、ベース5上に載置された透光性部材2及び波長変換部材3の上方に配置することができる。光取り出し窓4aは、キャップ4の上面から見て、その全部がキャップ4の外周から離間していてよい。光取り出し窓4aは、例えば、キャップ4の中央部分に配置されている。キャップ4を主として透光性の材料から構成してもよい。この場合、ベース5と接合する部分に金属膜を設けて金属接着剤との密着性を向上させてもよい。
光取り出し窓4aの大きさは、レーザ素子1からの出射光、反射光及び/又は波長変換光等を通過させることができる大きさとする。光取り出し窓4aの大きさは、例えば0.3mm2以上9mm2以下の大きさとすることができ、0.5mm2以上4mm2以下の大きさであってもよい。また、光取り出し窓4aは、キャップ4の上面から見て、透光性部材の上面2dを完全に内包する大きさ及び位置であることが好ましい。これにより、透光性部材の上面2dから出射される光の主要部分を発光装置10の外部へ取り出すことができる。光取り出し窓4aの形状は、矩形等の多角形、円形、楕円形、等の種々の形状が挙げられる。透光性部材2及び波長変換部材3を合わせたものの形状としては、例えば柱形状と錐台形状とを組み合わせた形状(例えば、四角柱と四角錐台とを組み合わせた形状)が挙げられる。この場合、光取り出し窓4aの形状は矩形等の多角形、例えば四角形とすることができる。
【0030】
実施形態1
この実施形態1の発光装置10は、
図1A~1Dに示すように、2つのレーザ素子1、透光性部材2及び波長変換部材3を備える。
これらレーザ素子1、透光性部材2及び波長変換部材3は、ベース5とキャップ4とを有する支持部材6内に配置されている。ベース5は実質的に開口を有する有底の形状であり、キャップ4は平板状であり、両者の対向により、レーザ素子1等を収容する空間を規定する。
半導体レーザ素子1は、ベース5とキャップ4とにより規定される空間内において、ベース5の実装面にサブマウント7を介して配置されている。
ベース5及びキャップ4は、それぞれコバールによって形成されている。キャップ4には、その中央に光を取り出す光取り出し窓4aが、例えば、上面視において1mm×0.5mmの長方形で設けられている。ベース5とキャップ4とは溶接によって接合されており、これによって半導体レーザ素子1が気密封止されている。
支持部材6に規定される空間内には、さらに、透光性部材2と、波長変換部材3とが収容されている。
【0031】
透光性部材2は、半導体レーザ素子1からの光を光取り出し窓4aに向かって反射させることができる位置に配置されている。透光性部材2は、四角錐台形状を有する。この四角錐台形状は、レーザ素子1に向いて、透光性部材2の内側に45度で傾斜した傾斜角αの第1傾斜面2aを2面有し、第1傾斜面2aと異なる面として、第2傾斜面2cを有する。第2傾斜面2cは、透光性部材2の第1傾斜面2a及び下面2bに隣接し、下面2bに対して、70度の傾斜角βで傾斜している。つまり、第1傾斜面2aは、レーザ素子1から出射される光の光軸に対して、α=45度の角度を有する面を向けて配置している。第2傾斜面2c、光軸に対して、平行である。透光性部材2は、例えば、サファイアによって形成されている。透光性部材2は、光が入射する面(つまり、第1傾斜面2a)とは異なる下面2bが半導体レーザ素子1の出射光が出て行く面であり、さらに、上面2dが波長変換光の出射面である。
波長変換部材3は、透光性部材2の下面2bに接触して、透光性部材2の下方に配置されている。波長変換部材3は、例えば、直方体の形状である。波長変換部材3は上面で透光性部材2と密着して、波長変換部材3と透光性部材2とが一体となって透光性部材2から入射した光を波長変換し、波長変換した光を、透光性部材2に反射させ、透光性部材2の上面2dから、光取り出し窓4aに向かって、光を取り出すことができる。
波長変換部材3は、蛍光体と酸化アルミニウムとの焼結体によって形成されており、蛍光体としてはYAG蛍光体が用いられており、YAG蛍光体は波長変換部材3の全重量に対して70重量%含有されている。
【0032】
このような構成を有することにより、2つのレーザ素子1から出射された光をそれぞれ、透光性部材2に入射させながら、一方のレーザ素子の光強度の弱い部分を、他方のレーザ素子の光強度の強い部分で互いに補償することによって、取り出す光の配光ムラを低減することができる。また、透光性部材2と波長変換部材3との接触により、互いの熱を排熱することができ、特に、波長変換部材3を支持部材6と熱的に接続させることにより、半導体レーザ素子1の出射光に起因する熱を効果的に排熱することができる。その結果、半導体レーザ素子1の出射光として比較的高出力の光を用いることができ、発光装置10の光出力を向上させることができる。
【0033】
実施形態1の変形例1
この実施形態の発光装置10Aは、
図2A~2Cに示すように、透光性部材2の第1傾斜面2aに、バンドパスフィルタ11が配置されている。このバンドパスフィルタ11は、例えば、SiO
2膜とNb
2O
5膜を複数積層した誘電体多層膜からなり、レーザ素子1の出射光における反射率が、波長変換部材3の波長変換光の波長における反射率よりも低い短波長パスフィルタである。
また、波長変換部材3の下面に、誘電体多層膜とAgによる反射膜9が配置されている。
これらの構成以外は、実質的に発光装置10と同様の構成である。
このような構成を有することにより、透光性部材2から半導体レーザ素子1側に出ようとする波長変換光をバンドパスフィルタ11で反射することができる。
したがって、この発光装置10Bは、発光装置10と同様の効果に加えて、発光装置10Bの内部における光の損失をより低減可能という効果を有する。
また、波長変換部材3によって波長変換された光を反射膜9によって透光性部材2側に反射させることができるために、より光取り出し効率を向上させることができる。さらに、反射膜9により、波長変換部材3と支持部材6との放熱経路を確保することができ、より放熱性を向上させることが可能となる。
【0034】
実施形態1の変形例2
この実施形態の発光装置10Bは、
図3A~3Cに示すように、第2傾斜面2cに、誘電体多層膜とAlによる光反射膜8を有する透光性部材2を用いた以外は、実質的に発光装置10Aと同様の構成である。
このような構成を有することにより、透光性部材2の第2傾斜面2cにおいて透光性部材2の内部から出射しようとする光を光反射膜8で反射することができる。これにより、発光装置10Bから取り出される光の配光ムラを低減することができる。また、レーザ素子1からの光の一部が光反射膜8で波長変換部材3に向かって反射されることにより、光反射膜8を設けない場合と比較して波長変換部材3に照射される励起光の量を増大させることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 半導体レーザ素子
2 透光性部材
2a 第1傾斜面
2b 下面
2c 第2傾斜面
2d 上面
3 波長変換部材
4 キャップ
4a 光取り出し窓
5 ベース
6 支持部材
7 サブマウント
8 光反射膜
9 反射膜
10、10A、10B 発光装置
11 バンドパスフィルタ