(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20231122BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231122BHJP
H01L 33/56 20100101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/50
H01L33/56
(21)【出願番号】P 2019205834
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2019141061
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 俊文
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】井上 浩希
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120923(JP,A)
【文献】特開2019-054073(JP,A)
【文献】特開2017-201666(JP,A)
【文献】特開2015-213157(JP,A)
【文献】特開2010-219324(JP,A)
【文献】特開2018-207001(JP,A)
【文献】特開2016-225515(JP,A)
【文献】特開2016-225501(JP,A)
【文献】特開2016-178236(JP,A)
【文献】特開2015-109354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0309793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光取出し面となる第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に複数の第3面と、を有し、前記第2面側に一対の電極を有する発光素子と、
前記第1面側に配置される透光性部材と、
前記発光素子と前記透光性部材との間にあって前記発光素子の前記第1面から複数の前記第3面までを覆い、前記発光素子と前記透光性部材とを接着する接着部材と、を備え、
前記複数の第3面は、前記第3面同士が隣接する角部を有し、
前記第1面を前記発光素子の上面とし、側面視において、前記第3面を覆う前記接着部材の下辺は、前記第2面に達しないように形成されると共に、前記角部から前記第3面の中央に向かって下方に凸状に湾曲し、
前記接着部材は、ナノ粒子を含有する樹脂からなり、
前記ナノ粒子の粒径は1nm以上30nm以下であり、前記ナノ粒子の含有量は10質量%以上20質量%以下である発光装置。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、
少なくとも前記凸状に湾曲している前記接着部材の下辺側の縁部に存在する
請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記接着部材の縁部の少なくとも一部
に、前記ナノ粒子が偏在
している
請求項1又は
請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子の前記第3面において、前記ナノ粒子の数が、前記接着部材の縁部よりも前記第3面側で少ない
請求項2又は
請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1面に垂直に切断する断面視において、前記第3面を覆う前記接着部材の外面は、前記透光性部材から前記第3面側に凹状に湾曲している請求項1乃至
請求項4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、
少なくとも前記凹状に湾曲している前記接着部材の外面側の縁部に存在する
請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記接着部材の縁部の少なくとも一部
に、前記ナノ粒子が偏在
している
請求項5又は
請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
前記発光素子の前記第3面において、前記ナノ粒子の数が、前記凹状に湾曲している前記接着部材の外面側よりも前記第3面側で少ない
請求項6又は
請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
光取出し面となる第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に複数の第3面と、を有し、前記第2面側に一対の電極を有する発光素子と、
前記第1面側に配置される透光性部材と、
前記発光素子と前記透光性部材との間にあって前記発光素子の前記第1面から複数の前記第3面までを覆い、前記発光素子と前記透光性部材とを接着する接着部材と、を備え、
前記複数の第3面は、前記第3面同士が隣接する角部を有し、
前記第1面を前記発光素子の上面とし、側面視において、前記第3面を覆う前記接着部材の下辺は、前記第2面に達しないように形成されると共に、前記角部から前記第3面の中央に向かって下方に凸状に湾曲し、
前記接着部材は、ナノ粒子を含有する樹脂からなり、
前記ナノ粒子の粒径は30nmを超え100nm未満であり、前記ナノ粒子の含有量は0.5質量%以上10質量%以下である発光装置。
【請求項10】
前記ナノ粒子が、
少なくとも前記凸状に湾曲している前記接着部材の縁部に存在する
請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第1面に垂直に切断する断面視において、前記第3面を覆う前記接着部材の外面は、前記透光性部材から前記第3面側に凹状に湾曲している
請求項9又は請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記接着部材と前記透光性部材とが接する面積が、前記発光素子の第1面よりも大きい請求項1乃至
請求項11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記ナノ粒子は、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンのうちの少なくとも一つである請求項1乃至
請求項12のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記接着部材の母材樹脂は、有機シリコーン樹脂からなる請求項1乃至
請求項13のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記透光性部材は、波長変換物質を含有する請求項1乃至
請求項14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記発光素子と、前記接着部材とを覆う被覆部材をさらに備える請求項1乃至
請求項15のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項17】
前記被覆部材は、反射性物質を含有する
請求項16に記載の発光装置。
【請求項18】
前記接着部材は、屈折率が1.45以上1.70以下である請求項1乃至請求項17のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオードまたはレーザーダイオードのような発光素子を用いた発光装置は、室内照明等の一般照明、車載用光源、液晶ディスプレイのバックライト等を含む多くの分野で用いられている。
発光装置としては、発光素子と、発光素子の光取出し面側に配置される透光性部材と、発光素子と透光性部材とを接着する接着部材と、を備える発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、接着部材のフィレット形状の安定性、及び、光取出し効率に優れた発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示の実施形態に係る発光装置は、光取出し面となる第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に複数の第3面と、を有し、前記第2面側に一対の電極を有する発光素子と、前記第1面側に配置される透光性部材と、前記発光素子と前記透光性部材との間にあって前記発光素子の前記第1面から複数の前記第3面までを覆い、前記発光素子と前記透光性部材とを接着する接着部材と、を備え、前記接着部材は、ナノ粒子を含有する樹脂からなり、前記ナノ粒子の粒径は1nm以上30nm以下であり、前記ナノ粒子の含有量は10質量%以上20質量%以下である。
【0006】
また、本開示の実施形態に係る発光装置は、光取出し面となる第1面と、前記第1面と対向する第2面と、前記第1面と前記第2面との間に複数の第3面と、を有し、前記第2面側に一対の電極を有する発光素子と、前記第1面側に配置される透光性部材と、前記発光素子と前記透光性部材との間にあって前記発光素子の前記第1面から複数の前記第3面までを覆い、前記発光素子と前記透光性部材とを接着する接着部材と、を備え、前記接着部材は、ナノ粒子を含有する樹脂からなり、前記ナノ粒子の粒径は30nmを超え100nm未満であり、前記ナノ粒子の含有量は0.5質量%以上10質量%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態に係る発光装置によれば、接着部材のフィレット形状の安定性、及び、光取出し効率に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1の発光装置のII方向から見た短手方向の側面図である。
【
図3A】
図1の発光装置のIIIA-IIIA線における長手方向の断面図である 。
【
図3B】
図3Aの部分拡大断面図であって、接着部材におけるナノ粒子の分布状態を模式的に示す。
【
図4】第1実施形態に係る発光装置において、接着部材がフィレットを形成している発光装置の光出射状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6A】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において、支持部材と電気的に接続された発光素子を模式的に示す断面図である。
【
図6B】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の塗布工程において、接着部材が第1面に塗布された発光素子を模式的に示す断面図である。
【
図6C】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接着工程において、第1面側に配置された透光性部材を接着部材に押圧する状態を模式的に示す断面図である。
【
図6D】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接着工程において、接着部材で第1面及び第3面が覆われると共に透光性部材と接着された発光素子を模式的に示す断面図である。
【
図6E】第1実施形態に係る発光装置の製造方法の個片化工程において、個片化された発光装置を模式的に示す断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る発光装置の構成を示し、接着部材におけるナノ粒子の分布状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
【
図8】第3実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す長手方向の断面図である。
【
図9】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。
【
図10A】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の被覆工程において、被覆部材で覆われた透光性部材が接着した発光素子を模式的に示す断面図である。
【
図10B】第3実施形態に係る発光装置の製造方法の個片化工程において、個片化された発光装置を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る発光装置及び発光装置の製造方法を、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための発光装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
[第1実施形態]
<発光装置>
第1実施形態に係る発光装置について説明する。
図1は、第1実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す平面図である。
図2は、
図1の発光装置のII方向から見た短手方向の側面図である。
図3Aは、
図1の発光装置のIIIA-IIIA線における長手方向の断面図である。
図3Bは、
図3Aの部分拡大断面図であって、接着部材におけるナノ粒子の分布状態を模式的に示す。
図4は、第1実施形態に係る発光装置において、接着部材がフィレットを形成している発光装置の光出射状態を模式的に示す断面図である。
【0011】
図1~
図3Bに示すように、発光装置1は、光取出し面となる第1面12と、第1面12と対向する第2面13と、第1面12と第2面13との間に複数の第3面14と、を有し、第2面13側に一対の電極16、17を有する発光素子10と、第1面12側に配置される透光性部材30と、発光素子10と透光性部材30との間にあって発光素子10の第1面12から複数の第3面14までを覆い、発光素子10と透光性部材30とを接着する接着部材40と、を備え、接着部材40は、ナノ粒子70を含有する樹脂からなり、ナノ粒子70の粒径は1nm以上30nm以下であり、ナノ粒子70の含有量は10質量%以上20質量%以下である。
発光装置1は、発光素子10の光取出し面となる第1面12を上面側に配置する上面発光型発光装置、あるいは、発光素子10の光取出し面となる第1面12を側面側に配置する側面発光型発光装置のいずれであってもよい。以下では、上面発光型発光装置を例にとって、各構成を説明する。
【0012】
(発光素子)
発光素子10は、光取出し面となる第1面12と、第1面12と対向する第2面13と、第1面12と第2面13との間に複数の第3面14とを有する。発光素子10の平面視形状は、第3面14同士が隣接する角部15を有する矩形、特に正方形状又は一方向に長い長方形状であることが好ましい。この発光素子10の平面視形状は、その他の形状であってもよく、例えば六角形状等の五角以上の多角形であってもよい。発光素子10の平面視形状が長方形状であれば、同じ発光面積を有する正方形状の発光素子に比べて、発光装置1を薄型化することができる。また、五角以上の多角形であれば、外形形状が正方形状である発光素子を第1面12に垂直な軸回りに45°回転して配置する場合に比べて、配置に必要な面積当たりの発光素子の面積の割合を大きくすることができ、発光効率を高めることができる。このため、発光装置1が従来と同じサイズでありながら、発光装置1を高出力化することができる。また、発光装置1の高出力化に代えて、又は加えて、発光装置1を従来よりも小型化することもできる。発光素子10の第3面14は、第1面12に対して、垂直であってもよいし、内側又は外側に傾斜していてもよい。発光素子10は、電圧を印加することで自ら発光する半導体素子であり、少なくとも半導体積層体11を備え、半導体積層体11の同一面側に一対の電極16,17を有する。発光素子10は、一対の電極16,17が形成された面を第2面13として、第2面13と対向する第1面12を光取出し面としている。発光素子10は、半導体積層体11の第1面12側に素子基板をさらに備えてもよい。
【0013】
半導体積層体11は、公知のものを利用でき、例えば、発光ダイオードやレーザーダイオードを用いるのが好ましい。また、半導体積層体11は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子10としては、窒化物系半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものを用いることができる。さらに、赤色の発光素子10としては、窒化物系半導体の他にもGaAlAs、AlInGaPなどを用いることができる。なお、発光素子10は、前記した以外の材料からなる半導体積層体11を用いることもできる。発光素子10は、組成や発光色、大きさや、個数などは目的に応じて適宜選択することができる。窒化物系半導体を用いた発光素子10の場合、400nm以上550nm以下、好ましくは440nm以上465nm以下に発光ピーク波長を有するものを好適に使用することができる。このようにすることで発光装置1の演色性を向上させることができる。
【0014】
電極16,17は、金、銀、錫、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル又はこれらの合金等で構成することができる。素子基板は、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、シリコン、炭化珪素、ガリウム砒素、ガリウム燐、インジウム燐、硫化亜鉛、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、ダイヤモンド等で構成することができる。
【0015】
(支持部材)
支持部材20は、少なくとも1つ以上の発光素子10を実装し、発光素子10と外部とを電気的に接続する。支持部材20は、平板状の基材21及び基材21の表面及び/又は内部(貫通孔)に配置された配線22を備えて構成されている。また、基材21の内部(貫通孔)は配線22の他、導電性または絶縁性の部材で充填された充填部材23を備えていてもよい。支持部材20は、配線22と発光素子10の電極16、17とを導電性接着部材50を介して接続することによって、発光素子10と電気的に接続する。なお、支持部材20の配線22は、発光素子10の電極16、17の構成、大きさに応じて形状、大きさ等の構造が設定される。
なお、後述するが、発光装置1の支持部材20を除去することにより、発光装置1を小型化することができる。
【0016】
支持部材20の基材21は、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子10から出射される光や外光などを透過しにくい材料を用いることが好ましく、ある程度の強度を有する材料を用いることが好ましい。具体的には、基材21は、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト等のセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド等の樹脂で構成することができる。
【0017】
配線22は、銅、鉄、ニッケル、タングステン、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン、パラジウム、ロジウム又はこれらの合金等で構成することができる。また、配線22の表層には、導電性接着部材50の濡れ性及び/又は光反射性等の観点から、銀、白金、アルミニウム、ロジウム、金又はこれらの合金等の層が設けられていてもよい。
【0018】
導電性接着部材50は、金、銀、銅等のバンプ、銀、金、銅、プラチナ、アルミニウム、パラジウム等の金属粉末と樹脂バインダを含む金属ペースト、錫-ビスマス系、錫-銅系、錫-銀系、金-錫系等の半田、低融点金属等のろう材のうちのいずれか1つを用いることができる。
【0019】
(透光性部材)
透光性部材30は、発光素子10の第1面12側に接着部材40を介して設けられる。透光性部材30は、発光素子10と接着していればよいが、発光素子10の第1面12を全て包含するように、発光素子10の第1面12よりも大きく形成されていることが好ましい。つまり、透光性部材30の下面周縁は、平面視において発光素子10の第1面12周縁よりも外側に位置することが好ましい。透光性部材30の下面が発光素子10の第1面12よりも大きな面積で形成されることにより、発光素子10から出射される光をロスなく透光性部材30に入射することができる。
【0020】
透光性部材30は、発光素子10から出射される光の少なくとも一部を波長変換可能な波長変換物質を含有する樹脂材料で構成されることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、TPX樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの変性樹脂若しくはハイブリッド樹脂が挙げられる。なかでも耐熱性、電気絶縁性に優れ、柔軟性のあるシリコーン樹脂を含むことが好ましい。
【0021】
波長変換物質としては、蛍光体を用いることができる。青色発光素子又は紫外線発光素子で励起可能な蛍光体としては、例えば、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG:Ce)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(LAG:Ce)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム系蛍光体(CaO-Al2O3-SiO2:Eu)、ユウロピウムで賦活されたシリケート系蛍光体((Sr,Ba)2SiO4:Eu)、βサイアロン蛍光体、CASN系蛍光体(CaAlSiN3:Eu)、SCASN系蛍光体((Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(K2SiF6:Mn)、硫化物系蛍光体、量子ドット蛍光体が挙げられる。これらの蛍光体と、青色発光素子又は紫外線発光素子とを組み合わせることにより、様々な色の発光装置1(例えば白色系の発光装置1)を製造することができる。透光性部材30に含有される蛍光体の濃度は、例えば、50質量%以上200質量%以下程度である。
【0022】
さらに、透光性部材30は、光拡散材を含有してもよい。光拡散材としては、例えば、酸化チタン、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などを用いることができる。透光性部材30において蛍光体は、透光性部材30の全体に分散されてもよいし、透光性部材30の発光素子10側あるいはその反対側に偏在していてもよい。
【0023】
(接着部材)
接着部材40は、発光素子10と透光性部材30との間にあって発光素子10の第1面12から複数の第3面14までを覆い、発光素子10と透光性部材30とを接着する。接着部材40は、第3面14だけでなく第1面12に跨って設けていればよい。接着部材40は、第1面12の全面を覆うことが好ましく、これによって、発光素子10を透光性部材30に強固に接着することができる。また、接着部材40は、図面では4つの第3面14の全てにおいて第3面14の少なくとも一部を覆っている。さらに、接着部材40は、ナノ粒子70を含有する樹脂からなる。
【0024】
図2に示すように、ナノ粒子を含有する接着部材40は、側面視において、第3面14を覆う接着部材40の下辺41が、第2面13に達しないように形成される。そして、接着部材40は、角部15から第3面14の中央に向かって下辺41が凸状に湾曲していることが好ましい。接着部材40は、第3面14同士が隣接する角部15を有する際、角部15側では発光素子10の高さ方向の中心よりも透光性部材30側に位置させる。そして、接着部材40は、第3面14の幅方向の中央側では発光素子10の高さ方向の中心よりも支持部材20側となるように位置させる。なお、凸状に湾曲しているとは、一つの弧を示すだけでなく、細かな波状が繋がって全体的に弧のような状態になっているものも含む。また、
図3Aに示すように、ナノ粒子70を含有する接着部材40は、断面視において、第3面14を覆う接着部材40の外面42が、透光性部材30から第3面14側に凹状に湾曲していることが好ましい。
【0025】
このように、ナノ粒子70を含有する接着部材40は、下辺41では凸状に湾曲する形状、及び、透光性部材30から第3面14に亘って凹状に湾曲する形状を有するため、接着部材40の樹脂垂れ等が抑制される。その結果、発光素子10と透光性部材30との間に、接着部材40の幅が透光性部材30に向かって広くなるように傾斜した外面42を有するフィレットを安定して形成することができる。また、このようなフィレットでは、接着部材40と透光性部材30とが接する面積、すなわち、接着部材40と透光性部材30の裏面(発光素子10側の面)とが接する面積が、発光素子10の第1面12よりも大きくなる。なお、
図1に示すように、接着部材40は、平面視において透光性部材30の裏面では、第3面14の中央での幅が広く、第3面14の角部15側での幅が狭くなるように設けられている。つまり、本実施形態では、平面視において発光素子10が長方形状であるため、接着部材40は楕円形になっている。
【0026】
図4に示すように、発光装置1は、発光素子10及び接着部材40が反射性物質を含有する被覆部材60で覆われることができる。
接着部材40がフィレットを形成している本実施形態に係る発光装置1では、第3面14を覆う接着部材40が発光素子10から側方に出射する光Lに対して導光性部材として機能する。そのため、接着部材40の外面42で、側方に出射する光Lが透光性部材30側に反射される。その結果、透光性部材30側に出射する光Lの光束が増加して、発光装置1での光取出し性が向上する。
【0027】
また、接着部材40の第3面14に対する被覆率は、第3面14の表面積に対して10~95%であることが好ましい。このような接着部材40により、発光素子10と透光性部材30との接着強度、及び、発光素子10から出射する光の光取出し効率が向上する。さらに、接着部材40は、第1面12が露出しないように角部15の上部を覆っていることが好ましい。このような接着部材40により、発光素子10と接着部材40との界面に生じる引っ張り応力が集中する角部15での接着部材40の剥離が防止でき、発光素子10と透光性部材30との接着強度が向上する。
【0028】
接着部材40において、ナノ粒子70の粒径は1nm以上30nm以下であり、ナノ粒子70の含有量が10質量%以上20質量%以下である。
ナノ粒子70の粒径が1nm以上、かつ、含有量が10質量%以上であると、後記する発光装置1の製造の際の接着工程S3(
図5、
図6D参照)において、接着部材40の粘度及び流動性が良好となり、接着部材40の樹脂垂れ等が抑制される。
ナノ粒子70の粒径が30nm以下、かつ、含有量が20質量%以下であると、ナノ粒子70の量が多いために生じる接着部材40の白濁、凝集したナノ粒子70(凝集体)による光散乱が抑制されるため、発光装置1での光束が増加して光取出し性が向上する。
【0029】
光学膜厚を光の波長の1/4以下としたときに、物質同士の境界面の反射が打ち消しあって反射率が最小になることが知られている。したがって、凝集体の大きさ(最大径)が、発光素子10から出射される光の波長の1/4以下となるように、ナノ粒子70の粒径を適宜選択したり、ナノ粒子70の含有量を調整したりすることによって、凝集体による不要な光散乱が抑制され、光束が増加して光取出し性が向上する。
【0030】
また、ナノ粒子70やその凝集体は、発光素子10の光を散乱させる作用を有することがある。特に、ナノ粒子70はレイリー散乱により青色光など短波長光の散乱を増大させることができる。レイリー散乱の発生により、発光素子から出射する光Lが、接着部材40と透光性部材30との接着面に広く行き届き、透光性部材30中の波長変換物質を効率良く励起して、光の取り出し効率を高めることができる。また、波長変換物質の配合量を減らして、発光装置の装置コストを削減することもできる。
【0031】
接着部材40において、含有されるナノ粒子70は特に限定されず、有機物でもよいし、無機物でもよい。ナノ粒子70は、発光装置1の光取り出し効率の観点から、透光性の物質が好ましい。ナノ粒子70は、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、セルロースのうちの少なくとも一つを用いることができる。無機物の粒子は、耐熱性、耐光性において優れており、また熱伝導性が比較的高い。なかでも、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタンは、入手しやすく、比較的安価である。特に、酸化ジルコニウムは屈折率が高く、耐熱性を有して構造が安定しているため好ましい。ナノ粒子70を含有する母材樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂を用いることができる。母材樹脂としては、シリコーン変性エポキシ樹脂、有機シリコーン樹脂が好ましく、有機シリコーン樹脂がさらに好ましい。ここで、具体的な有機シリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、フェニルシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0032】
ナノ粒子70の形状は、球状であることが好ましいが、球状以外の形状であってもよい。なお、球状以外の形状のナノ粒子70では、平均粒径を粒径として用いることが好ましい。
【0033】
母材樹脂中の成分にはそれぞれSP値(Solubility Parameter、溶解度パラメータ)があり、SP値の差が大きいと相溶性が悪いため成分が流れ出やすく、すなわち樹脂垂れとなりフィレットが正常に形成されない。この樹脂垂れは、母材樹脂の成分バランスが崩れているといえ、母材樹脂を硬化したときに、例えば流れ出た成分が樹脂硬化に対して寄与するような成分であれば、透光性部材30との接着強度であるシェア強度が低下する。母材樹脂にナノ粒子70を添加すると、このような樹脂垂れを抑制してフィレットを正常に形成できるため、シェア強度が向上する。さらに、正常に形成されたフィレットにより、光束も向上し、光取出し効率が向上する。
【0034】
接着部材40は、その屈折率が1.45以上1.70以下であることが好ましい。ここで、接着部材40の屈折率とは、ナノ粒子を含有する樹脂全体の屈折率であって、NaランプD線からの光の波長(589nm)に対する屈折率を意味する。そして、接着部材40として、ナノオーダーの酸化ジルコニウム粒子を含有するフェニルシリコーン樹脂を用いることで、接着部材40の屈折率を、前記の範囲とすることができる。このような屈折率を有する接着部材40を用いることで、発光素子10と接着部材40との境界面での全反射が少なくなるため、発光装置1での光束が増加し、光取出し性が向上できる。
【0035】
図2~
図3Bに示すように、接着部材40は、側面視において凸状に湾曲している接着部材40の下辺41側の縁部43(発光素子10側の縁部)、又は、断面視において凹状に湾曲している接着部材40の外面42側の縁部43にナノ粒子70が存在することが好ましい。また、接着部材40において、接着部材40の縁部43の少なくとも一部は、ナノ粒子70が偏在する領域であることが好ましい。ここで、縁部43の少なくとも一部は、4つの第3面14を覆う接着部材40のうちの少なくとも1つの第3面14を覆う接着部材40の一部分を意味し、4つの第3面14の全ての接着部材40に偏在領域があることが好ましい。
【0036】
このように接着部材40の縁部43にナノ粒子70が存在し、偏在することにより、縁部43のナノ粒子70同士が毛管力によって互いに引き寄せ合うため、接着部材40の樹脂垂れ、すなわち、第3面14における電極16、17側への接着部材40の濡れ広がり等を抑制でき、フィレットを安定して形成することができる。なお、接着部材40の透光性部材30側の縁部44においても、ナノ粒子70が存在し、偏在していることが好ましい。
【0037】
粒子の分散性が高いコロイド溶液では毛管力が発現しやすいため、ナノ粒子70は、凝集抑制のための表面処理(すなわち、ナノ粒子70の表面への付着物の形成)を施してもよい。また、分散剤をナノ粒子70ともに配合してもよい。このようなナノ粒子70の表面処理は、長錯脂肪族アミンとその誘導体、長錯脂肪族脂肪酸とその誘導体、シランカップリング剤、アミン基及び/又はカルボキシル基を有するシロキサン化合物、シラノール基、ハイドロジェンシラン基、アルコール基より選ばれる少なくとも1つを有するシロキサン化合物、シラノール基、アルコキシ基、ハイドロジェンシラン基より選ばれる少なくとも1つとビニルシリル基とを有するシロキサン化合物、モノグリシジルエーテル末端シロキサン化合物、モノヒドロキシエーテル末端シロキサン化合物、有機シラザン化合物、有機チタネート化合物、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、リン酸およびリン酸エステル化合物などが挙げられる。また、分散剤としては、上記表面処理剤のほか、酸性基又は塩基性基を有する高分子化合物、フッ素含有界面活性剤、ポリオール化合物、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、多価脂肪酸誘導体、シランカップリング剤の加水分解物、第4級アンモニウム塩化合物などが挙げられる。
【0038】
図2~
図3Bに示すように、発光素子10の第3面14において、ナノ粒子70の数が、側面視で凸状に湾曲している接着部材40の下辺41側の縁部43よりも第3面14側で少ないことが好ましい。また、発光素子10の第3面14において、ナノ粒子70の数が、断面視で凹状に湾曲している接着部材40の外面42側よりも第3面14側で少ないことが好ましい。このような接着部材40により、発光素子10から出射する光が、ナノ粒子70によって遮られることがないため、光束が増大して光取出し性が向上する。
【0039】
<発光装置の製造方法>
第1実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
図5は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図6Aは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の準備工程において、支持部材と電気的に接続された発光素子を模式的に示す断面図である。
図6Bは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の塗布工程において、接着部材が第1面に塗布された発光素子を模式的に示す断面図である。
図6Cは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接着工程において、第1面側に配置された透光性部材を接着部材に押圧する状態を模式的に示す断面図である。
図6Dは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の接着工程において、接着部材で第1面及び第3面が覆われると共に透光性部材と接着された発光素子を模式的に示す断面図である。
図6Eは、第1実施形態に係る発光装置の製造方法の個片化工程において、個片化された発光装置を模式的に示す断面図である。
【0040】
図5に示すように、第1実施形態に係る発光装置の製造方法は、準備工程S1と、塗布工程S2と、接着工程S3と、個片化工程S4と、を含む。なお、発光装置の構成については、
図1~
図3Bを参照する。以下、各工程について説明する。
【0041】
(準備工程)
図6Aに示すように、準備工程S1は、光取出し面となる第1面12と、第1面12と対向する第2面13と、第1面12と第2面13との間に複数の第3面14とを有し、第2面13側に一対の電極16、17を有する複数の発光素子10を、基材21の表面と内部とに配線22を有する支持部材20に電気的に接続する工程である。発光素子10と支持部材20との接続は、公知の方法で行い、例えば、半田等の導電性接着部材50を介して電極16、17と配線22とを電気的に接続する。なお、発光素子10は、第3面14同士が隣接する角部15を有してもよい。
【0042】
(塗布工程)
図6Bに示すように、塗布工程S2は、支持部材20に接続された発光素子の第1面12に、接着部材40を塗布する工程である。そして、接着部材40は、ナノ粒子を含有する樹脂からなり、ナノ粒子の粒径は1nm以上30nm以下であり、ナノ粒子の含有量は10質量%以上20質量%以下である。また、接着部材40の第1面12への塗布方法は、公知の方法で行い、例えば、ピン転写やポッティングで行う。
【0043】
(接着工程)
図6C、6Dに示すように、接着工程S3は、接着部材40に透光性部材30を押圧して、接着部材40で第1面12から複数の第3面14までを覆い、その後、接着部材40を硬化して発光素子10と透光性部材30とを接着する工程である。なお、複数の透光性部材30の各々を発光素子10の各々に押圧してもよいし、1つの透光性部材30で複数の発光素子10の各々を押圧してもよい。
【0044】
接着工程S3では、第1面12に塗布された接着部材40に透光性部材30を押圧して、その後、150℃で硬化することによって、発光素子10と透光性部材30との間の接着部材40に所定形状のフィレットが形成される。また、フィレットの所定形状は、接着部材40が含有するナノ粒子70の粒径及び含有量を前記範囲内に制御することによって、形成される。また、接着部材40が第2面13に達しないように、フィレットの大きさは、例えばピン転写であれば、スキージの開度を調節して転写する樹脂量を調節する必要がある。接着部材40の硬化については、加熱乾燥、自然乾燥等の従来公知の方法で行う。
【0045】
フィレット形状としては、側面視において、第3面14を覆う接着部材40の下辺41は、第2面13に達しないように形成されると共に、角部15から第3面14の中央に向かって凸状に湾曲している形状であることが好ましい。また、フィレット形状は、断面視において、第3面14を覆う接着部材40の外面42が、透光性部材30から第3面14側に凹状に湾曲している形状であることが好ましい。さらに、このようなフィレットを有する接着部材40は、その縁部43にナノ粒子70が偏在していることが好ましい。
【0046】
(個片化工程)
図6Eに示すように、レーザ照射あるいはブレード等の工具により発光素子10間の支持部材20を切断して発光装置1を作製する工程である。なお、接着工程において複数の発光素子に対して1つの透光性部材30を押圧する場合には、個片化工程は、透光性部材30及び支持部材20を切断して発光装置を作製する工程である。
【0047】
[第2実施形態]
<発光装置>
第2実施形態に係る発光装置について説明する。
図7は、第2実施形態に係る発光装置の構成を示し、接着部材におけるナノ粒子の分布状態を模式的に示す部分拡大断面図である。
【0048】
第2実施形態に係る発光装置1Aは、接着部材40に含有するナノ粒子70が、粒径が30nmを超え100nm未満であり、含有量が0.5質量%以上10質量%以下であること以外は、第1実施形態に係る発光装置1と同様である。
【0049】
発光装置1Aにおいても、発光素子10が隣接する第3面14同士が角部15を有する場合、ナノ粒子70の粒径及び含有量を前記範囲内に制御することによって、発光素子10と透光性部材30とを接着する接着部材40が、側面視において凸状に湾曲し、断面視において凹状に湾曲しているフィレットを形成する。詳細には、側面視において、第3面14を覆う接着部材40の下辺は、第2面13に達しないように形成されると共に、角部15から第3面14の中央に向かって凸状に湾曲している。また、ナノ粒子70が、凸状に湾曲している接着部材40の縁部に存在する。そして、断面視において、第3面14を覆う接着部材40の外面は、透光性部材30から第3面14側に凹状に湾曲している。ナノ粒子70の粒径が大きい場合、接着部材40に含有するナノ粒子70が多くなると、
図7に示すように、ナノ粒子70は、接着部材40中に均一に分散する傾向がある。発光装置1Aにおいても、接着部材40の縁部43にはナノ粒子70が存在することで、接着部材40の樹脂垂れを防止する。接着部材40中のナノ粒子70の濃度が高い場合、接着部材40に対してナノ粒子70の全体量が多いため、ナノ粒子70の濃度勾配が出にくいことが考えられる。
【0050】
<発光装置の製造方法>
第2実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
第2実施形態に係る発光装置1Aの製造方法は、ナノ粒子70の粒径と含有量範囲が異なる以外は、第1実施形態に係る発光装置1の製造方法と同様である。
【0051】
[第3実施形態]
第3実施形態に係る発光装置について説明する。
図8は、第3実施形態に係る発光装置の構成を模式的に示す長手方向の断面図である。
図8に示すように、発光装置1Bは、透光性部材30の上面に透光層31、被覆部材60を備えること以外は、第1、2実施形態に係る発光装置1、1Aの構成と同様である。
【0052】
(透光層)
発光装置1Bは、透光性部材30の上に、波長変換物質を実質的に含有しない透光層31を備える。これにより、透光層31が透光性部材30の保護層となるため、波長変換物質の劣化を抑制できる。透光層31は、例えばシリコーン樹脂からなる。
【0053】
(被覆部材)
被覆部材60は、発光素子10と、接着部材40とを覆う部材で、反射性物質を含有する光反射性の部材であることが好ましい。被覆部材60は、上方への光取出し効率の観点から、発光素子10の発光ピーク波長における光反射率が、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりいっそう好ましい。さらに、被覆部材60は、白色であることが好ましい。よって、被覆部材60は、母材樹脂中に反射性物質として白色顔料を含有してなることが好ましい。
【0054】
被覆部材60の母材樹脂は、例えばシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネイト樹脂、アクリル樹脂、又はこれらの変性樹脂が挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂は、耐熱性及び耐光性に優れ、好ましい。具体的なシリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、フェニル?メチルシリコーン樹脂、ジフェニルシリコーン樹脂が挙げられる。
【0055】
(白色顔料)
白色顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化珪素のうちの1種を単独で、又はこれらのうちの2種以上を組み合わせて用いることができる。白色顔料の形状は、適宜選択でき、不定形若しくは破砕状でもよいが、流動性の観点では球状が好ましい。また、白色顔料の粒径は、例えば0.1μm以上0.5μm以下程度が挙げられるが、光反射や被覆の効果を高めるためには小さい程好ましい。光反射性の被覆部材中の白色顔料の含有量は、適宜選択できるが、光反射性及び液状時における粘度などの観点から、例えば10質量%以上80質量%以下が好ましく、20質量%以上70質量%以下がより好ましく、30質量%以上60質量%以下がよりいっそう好ましい。
【0056】
<発光装置の製造方法>
第3実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
図9は、第3実施形態に係る発光装置の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図10Aは、第3実施形態に係る発光装置の製造方法の被覆工程において、被覆部材で覆われた透光性部材が接着した発光素子を模式的に示す断面図である。
図10Bは、第3実施形態に係る発光装置の製造方法の個片化工程において、個片化された発光装置を模式的に示す断面図である。
【0057】
図9に示すように、第3実施形態に係る発光装置の製造方法は、被覆工程S5、個片化工程S4以外は、第1実施形態に係る発光装置の製造方法と同様である。
【0058】
(被覆工程)
図10Aに示すように、被覆工程S5は、接着工程S3の後に、発光素子10と接着部材40とを覆う被覆部材60を形成する工程である。被覆工程S5は、トランスファ成形、射出成形、圧縮成形、ポッティング等により液状状態の被覆部材60を、発光素子10と接着部材40とを覆うように充填し、その後、加熱乾燥、自然乾燥等により硬化させる工程である。
【0059】
(個片化工程)
図10Bに示すように、個片化工程S4は、レーザ照射あるいはブレード等の工具により発光素子10間の支持部材20及び被覆部材60を切断して、発光装置1Bを作製する工程である。この際、1つの発光装置1Bに2つ以上の発光素子10が含まれるよう、適宜切断箇所を調整することができる。また、被覆工程S5の後かつ個片化工程S4の前において、支持部材20を例えば研削によって除去してもよい。なお、接着工程において複数の発光素子に対して1つの透光性部材30を押圧する場合には、個片化工程S4は、透光性部材、被覆部材及び支持部材20を切断して発光装置を作製する工程である。
【実施例】
【0060】
本開示の実施例に係る発光装置と比較例の発光装置を試作して、その効果を確認した。<実施例1、2>
支持部材にフェイスダウンで複数の発光素子を半田接合した。半田接合された複数の発光素子の光取出し面に接着部材を塗布し、塗布された接着部材の上に複数の透光層を上面に有する透光性部材を配置した。透光層を上面に有する透光性部材を発光素子側に押圧して実装した後、熱硬化により接着部材を硬化させて発光素子と透光性部材とを接着した。発光素子間に被覆部材を充填し、熱硬化により硬化させた。発光素子間の被覆部材及び支持部材を、1つの発光装置が2つの発光素子を備えるようにダイシングして実施例1、2に係る発光装置を作製した。発光装置の各構成要素の詳細は、以下のとおりである。
【0061】
(支持部材)
BTレジン基材の表面と内部とに配線を有する支持部材を用いた。
(発光素子)
448~450nmに発光ピーク波長を有する窒化物系半導体である青色LEDを用いた。
(透光性部材)
波長変換物質としてKSF系蛍光体、βサイアロンを含有するフェニルシリコーン樹脂を用いた。
(透光層)
透光層としてシリコーン樹脂を用いた。
(接着部材)
粒径5nmの酸化ジルコニウム粒子(ナノ粒子)を表1に示す含有量で含有するフェニルシリコーン樹脂を用いた。接着部材の屈折率は表1に示すものを使用した。なお、表1の屈折率は、NaランプD線からの光の波長(589nm)に対する屈折率である。
(被覆部材)
反射性物質として酸化チタンを含有するフェニルシリコーン樹脂を用いた。
【0062】
<参考例1及び比較例1、2>
実施例1、2に係る発光装置と比較するため、参考例1及び比較例1、2に係る発光装置を実施例1、2と同様にして作製した。接着部材としてナノ粒子を含有しないフェニルシリコーン樹脂を用いた発光装置を参考例1とした。接着部材としてナノ粒子の含有量が少ないフェニルシリコーン樹脂を用いた発光装置を比較例1とした。接着部材としてナノ粒子の含有量が多いフェニルシリコーン樹脂を用いた発光装置を比較例2とした。発光装置の各構成の詳細は、実施例と同様とした。なお、表1の屈折率はNaランプD線からの光の波長(589nm)に対する屈折率である。
【0063】
<特性の評価>
作製した発光装置について、フィレット出来栄え、光束比及びシェア強度を以下の手順で測定、評価した。
(フィレット出来栄え)
作製した発光装置について、接着部材のフィレットを目視にて観察し、樹脂垂れが観察されたものを「×:不良」、樹脂垂れ気味であるものを「△:やや不良」、樹脂垂れが観察されないものを「〇:良好」とした。その結果を表1に示す。
【0064】
(光束比)
作製した発光装置について、積分球を用いて光束を測定し、その結果を光束比として表1に示す。光束比は、参考例1の光束値を100とし、実施例1、2及び比較例1、2の光束値を参考例1の光束値に対する比率として算出した。光束比が、100%以下のものを「×:不良」、100%を超えるが、ナノ粒子を含有しない参考例1に対する向上率が0.5%未満のものを「△:やや不良」、100%を超え、かつ参考例1に対する向上率が0.5%以上のものを「〇:良好」とした。
【0065】
(シェア強度)
シェア強度は、常温で発光素子の短手方向の横から水平方向に押し、発光素子と透光性部材との間の接着部材に剥がれが生じたときの荷重として測定されたせん断強度である。この測定には、従来公知のシェア強度試験機(例えば、デイジー製シリーズ4000)が用いられる。なお、測定方法の詳細は、MIL規格(MIL-STD-883G)に準じて行った。シェア強度は、180gf以上を実使用上で問題ない強度とした。シェア強度の測定結果を表1に示す。
【0066】
【0067】
表1に示すように、実施例1、2は、接着部材に含有されるナノ粒子の粒径及び含有量が所定範囲内であるため、フィレット出来栄え、光束比及びシェア強度において優れるものであった。
【0068】
これに対し、比較例1は、接着部材に含有されるナノ粒子の含有量が少ないため、フィレット出来栄え、光束比及びシェア強度において劣っていた。比較例2は、接着部材に含有されるナノ粒子の含有量が多いため、光束比及びシェア強度において劣っていた。
【0069】
<実施例3~6>
接着部材として、粒径40nmの酸化ジルコニウム粒子(ナノ粒子)を表2に示す含有量で含有するフェニルシリコーン樹脂を用いること以外は、実施例1、2と同様とした。
【0070】
<参考例2及び比較例3、4>
実施例3~6に係る発光装置と比較するため、参考例2及び比較例3、4に係る発光装置を実施例3~6と同様にして作製した。接着部材としてナノ粒子を含有しないフェニルシリコーン樹脂を用いた発光装置を参考例2とした。接着部材としてナノ粒子の含有量が多いフェニルシリコーン樹脂を用いた発光装置を比較例3、4とした。なお、表2の屈折率はNaランプD線からの光の波長(589nm)に対する屈折率である。
【0071】
<特性の評価>
作製した発光装置について、フィレット出来栄え、光束比及びシェア強度を前記と同様にして測定、評価した。その結果を表2に示す。
なお、光束比の評価において、参考例2の光束値を100として実施例3~6及び比較例3、4の光束比を算出した。そして、光束比が、100%以下のものを「×:不良」、100%を超えるが、ナノ粒子を含有しない参考例2に対する向上率が0.5%未満のものを「△:やや不良」、100%を超え、かつ参考例2に対する向上率が0.5%以上のものを「〇:良好」とした。
【0072】
【0073】
表2に示すように、実施例3~6は、接着部材に含有されるナノ粒子の粒径及び含有量が所定範囲内であるため、フィレット出来栄え、光束比及びシェア強度において優れるものであった。
【0074】
これに対し、比較例3、4は、接着部材に含有されるナノ粒子の含有量が多いため、光束比において劣っていた。比較例3、4では、接着部材中でのナノ粒子の全体量が多くナノ粒子が凝集する。その結果、比較例3、4では、凝集体により不要な光散乱が生じるため、光束が減少する。
【0075】
また、上記実施例から、接着部材に含まれるナノ粒子が効果的に作用する含有量範囲は、ナノ粒子の粒径が関与していることがわかった。すなわち、ナノ粒子の粒径が小さければ含有量を多く、一方、ナノ粒子の粒径が大きければ含有量を少なくするといった調整を適宜行えばよい。
【符号の説明】
【0076】
1 発光装置
1A 発光装置
1B 発光装置
10 発光素子
11 半導体積層体
12 第1面
13 第2面
14 第3面
15 角部
16 電極
17 電極
20 支持部材
21 基材
22 配線
23 充填部材
30 透光性部材
31 透光層
40 接着部材
41 下辺
42 外面
43 縁部
50 導電性接着部材
60 被覆部材
70 ナノ粒子
L 光
S1 準備工程
S2 塗布工程
S3 接着工程
S4 個片化工程
S5 被覆工程