(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】車両及び車両用の診断システム
(51)【国際特許分類】
G01V 3/08 20060101AFI20231122BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20231122BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G01V3/08 E
G05D1/02 J
G08G1/09 F
(21)【出願番号】P 2020562527
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2019051539
(87)【国際公開番号】W WO2020138465
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2018248435
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-132689(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225677(WO,A1)
【文献】特開2007-303950(JP,A)
【文献】国際公開第2017/187879(WO,A1)
【文献】特開2004-347443(JP,A)
【文献】特開平10-198887(JP,A)
【文献】特開2018-206106(JP,A)
【文献】特開2018-165856(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181053(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/187881(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0141483(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0343915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/08
G05D 1/02
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路に配設された磁気マーカを検出するための磁気検出部を備える車両であって、
前記磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断する診断部
と、
車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データを記憶する履歴記憶部と、を含み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の各磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の各磁気マーカのマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断するように構成されている車両。
【請求項2】
請求項1において、外部のサーバ装置から無線通信を介して前記マーカ状態情報を取得する取得部を含む車両。
【請求項3】
請求項1または2において、前記診断部は、車両における前記磁気検出部の取付高さの変化に応じた車両の地上高の変化を診断可能である車両。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記マーカ状態情報には、対応する磁気マーカを特定するためのマーカ特定情報がひも付けられており、
車両は、前記磁気マーカに保持された無線タグとの無線通信を実行し、対応する磁気マーカの特定に利用可能なマーカ特定情報を無線タグから取得するタグリーダを備え、
前記診断部は、前記磁気マーカ側から取得した前記マーカ特定情報を利用し、対応する磁気マーカの前記マーカ状態情報を特定するように構成されている車両。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項において、前記マーカ状態情報は、各磁気マーカがいずれかの車両によって検出された回数である被検出回数の統計処理の結果に基づく情報である車両。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項において、車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データ、及び前記磁気マーカの検出履歴を表す検出履歴データを記憶する履歴記憶部を含み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の磁気マーカと、前記検出履歴データが表す検出履歴に含まれる磁気マーカと、を対比する処理を実行する車両。
【請求項7】
請求項6において、前記マーカ状態情報には、前記磁気マーカの状態の良否レベルを表す情報が含まれており、
前記診断部は、当該走行ルート上の磁気マーカと、前記検出履歴データが表す検出履歴に含まれる磁気マーカと、を対比する処理において、前記磁気マーカの状態の良否レベルに応じて、前記磁気検出部の診断に用いられる指標に反映させる度合いが異なっている車両。
【請求項8】
請求項3において、前記マーカ状態情報には、前記磁気マーカの磁気レベルを表す情報が含まれ、
前記診断部は、前記マーカ状態情報に含まれる磁気マーカの磁気レベルと、前記磁気検出部が磁気マーカについて計測した磁気計測値(ピーク値)と、の相関関係を表す指標値を利用し、車両の地上高の変化を検出する診断を実行する車両。
【請求項9】
車両の走行路に配設された磁気マーカを検出するための磁気検出部を備える車両を含むシステムであって、
前記磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を記憶する記憶装置と、
前記マーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断する診断部
と、
車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データを記憶する履歴記憶部と、を含
み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の各磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の各磁気マーカのマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断するように構成されている車両用の診断システム。
【請求項10】
請求項9において、各車両による前記磁気マーカの検出情報を取得すると共に、該検出情報に基づいて各磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を生成するサーバ装置を含む車両用の診断システム。
【請求項11】
請求項
10において、前記サーバ装置が車両側から取得する前記検出情報には、少なくとも、対応する磁気マーカを一意に特定可能なマーカ特定情報が含まれている車両用の診断システム。
【請求項12】
請求項9
~11のいずれか1項において、前記診断部は、車両における前記磁気検出部の取付高さの変化に応じた車両の地上高の変化を診断可能である車両用の診断システム。
【請求項13】
請求項9~1
2のいずれか1項において、前記マーカ状態情報には、対応する磁気マーカを特定するためのマーカ特定情報がひも付けられており、
車両は、前記磁気マーカに保持された無線タグとの無線通信を実行し、対応する磁気マーカの特定に利用可能なマーカ特定情報を無線タグから取得するタグリーダを備え、
前記診断部は、前記磁気マーカ側から取得した前記マーカ特定情報を利用し、対応する磁気マーカの前記マーカ状態情報を特定するように構成されている車両用の診断システム。
【請求項14】
請求項9~1
3のいずれか1項において、前記マーカ状態情報は、各磁気マーカがいずれかの車両によって検出された回数である被検出回数の統計処理の結果に基づく情報である車両用の診断システム。
【請求項15】
請求項9~1
4のいずれか1項において、車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データ、及び前記磁気マーカの検出履歴を表す検出履歴データを記憶する履歴記憶部を含み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の磁気マーカと、前記検出履歴データが表す検出履歴に含まれる磁気マーカと、を対比する処理を実行する車両用の診断システム。
【請求項16】
請求項1
5において、前記マーカ状態情報には、前記磁気マーカの状態の良否レベルを表す情報が含まれており、
前記診断部は、当該走行ルート上の磁気マーカと、前記検出履歴データが表す検出履歴に含まれる磁気マーカと、を対比する処理において、前記磁気マーカの状態の良否レベルに応じて、前記磁気検出部の診断に用いられる指標に反映させる度合いが異なっている車両用の診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行路に敷設された磁気マーカを検出する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路に敷設された磁気マーカを利用する車両用の磁気マーカシステムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この磁気マーカシステムは、車体フロアに磁気センサが取り付けられた車両を対象として、車線に沿って敷設された磁気マーカを利用する自動操舵制御や車線逸脱警報等、各種の運転支援の提供を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のシステムでは、次のような問題がある。すなわち、車両側の磁気センサに起こり得るトラブルの未然の回避や、トラブルが発生した後の早急な対処等を可能にするため、定期的な点検作業や保守作業が必要となり維持コストが嵩むおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、車両側の磁気センサの点検や保守のコストを抑制可能な車両、及び車両用の診断システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、車両の走行路に配設された磁気マーカを検出するための磁気検出部を備える車両であって、
前記磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断する診断部と、
車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データを記憶する履歴記憶部と、を含み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の各磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の各磁気マーカのマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断するように構成されている車両にある。
【0007】
本発明の一態様は、車両の走行路に配設された磁気マーカを検出するための磁気検出部を備える車両を含むシステムであって、
前記磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を記憶する記憶装置と、
前記マーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断する診断部と、
車両が走行した走行ルートを表す走行履歴データを記憶する履歴記憶部と、を含み、
前記診断部は、前記走行履歴データが表す走行ルート上の各磁気マーカを特定すると共に、当該走行ルート上の各磁気マーカのマーカ状態情報を利用して前記磁気検出部の状態を診断するように構成されている車両用の診断システムにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両は、磁気マーカの状態を表すマーカ状態情報を利用して磁気検出部の状態を診断する。この車両によれば、磁気検出部の状態を自己診断することで、点検や保守のコストを抑制でき維持コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1における、磁気マーカシステムの構成図。
【
図2】実施例1における、磁気マーカを示す斜視図。
【
図4】実施例1における、車両が磁気マーカを検出する様子を示す説明図。
【
図5】実施例1における、車両側の構成を示すブロック図。
【
図6】実施例1における、サーバ装置の構成を示すブロック図。
【
図7】実施例1における、磁気マーカの設置データの説明図。
【
図8】実施例1における、磁気マーカの運用データの説明図。
【
図9】実施例1における、磁気マーカの状態データの説明図。
【
図10】実施例1における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
【
図11】実施例1における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布曲線を例示する説明図。
【
図12】実施例1における、診断システムの動作の流れを示すフロー図。
【
図13】実施例1における、自己診断処理の流れを示すフロー図。
【
図14】実施例1における、磁気マーカ、車両の経路Rがマッピングされた電子地図を例示する説明図。
【
図15】実施例2における、磁気マーカの状態データの説明図。
【
図16】実施例2おける、磁気マーカの磁気レベルと、磁気センサによる磁気計測値(ピーク値)と、の相関を表すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、磁気マーカ10を検出するためのセンサアレイ(磁気検出部)21の自己診断機能を備える車両5及び車両用の診断システム1に関する例である。この診断システム1を構成する車両5は、サーバ装置11から配信されたマーカ状態情報を利用して、センサアレイ21の状態を診断する。この内容について、
図1~
図14を用いて説明する。
【0011】
本例の診断システム1は、
図1のごとく、磁気マーカ10を検出可能な車両5と、磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報を配信するサーバ装置11と、の組合せにより構成されている。この診断システム1は、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ15(
図3を参照して後述する。)を一体的に保持する磁気マーカ10が敷設された道路(走行路の一例)を対象として運用される。
【0012】
以下、(1)磁気マーカ10を概説した後、診断システム1を構成する(2)車両5、及び(3)サーバ装置11について説明し、続いて(4)診断システム1の動作内容、を説明する。
【0013】
(1)磁気マーカ
磁気マーカ10は、
図2のごとく、直径20mm、高さ28mmの柱状の磁石を含み、その端面にRFIDタグ15が取り付けられた道路マーカである。この磁気マーカ10は、例えば路面に穿設された孔に収容されて敷設される。磁気マーカ10は、例えば、左右のレーンマークで区分された車線(走行路の一例)の中央に沿って10m間隔で配列される。
【0014】
磁気マーカ10では、
図2のごとく、敷設時に上面となる端面に、シート状のRFIDタグ15が貼り付けられている。無線タグの一例であるRFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、固有の識別情報であるタグID等を無線通信により外部出力する。
【0015】
RFIDタグ15は、
図3のごとく、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150の表面に、ICチップ157が実装された電子部品である。タグシート150の表面には、ループコイル151及びアンテナ153の印刷パターンが設けられている。ループコイル151は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ153は、位置データ等を無線送信するための送信アンテナである。
【0016】
(2)車両
車両5は、
図4のごとく、計測ユニット2、タグリーダ34、メインユニット32、及び無線通信機能を備える通信ユニット(図示略)を備えている。さらに、車両5は、目的地までの経路案内を実行するナビゲーション装置6を備えている。車両5は、通信ユニットを介して公衆通信回線による接続可能である。車両5は、磁気マーカ10の検出情報やマーカ位置情報やマーカ状態情報などの各種情報を、例えばインターネット19(
図1)を介して、サーバ装置11との間で送受する。
【0017】
計測ユニット2は、
図4及び
図5のごとく、磁気マーカ10を検出するセンサアレイ(磁気検出部の一例)21と、慣性航法を実現するためのIMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化されたユニットである。細長い棒状の計測ユニット2は、路面100Sと対面し、かつ、車幅方向に沿う状態で、例えば車両5のフロントバンパーの内側などに取り付けられる。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした計測ユニット2の取付け高さが200mmとなっている。なお、計測ユニット2に対して、タグリーダ34を一体的に組み込むことも良い。
【0018】
センサアレイ21は、一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数、磁気検出部の一例)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。センサアレイ21では、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。
【0019】
センサアレイ21の検出処理回路212(
図5)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などの処理を実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)や、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。検出処理回路212は、磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行し、その検出結果をメインユニット32に入力する。
【0020】
計測ユニット2に組み込まれたIMU22は、慣性航法により車両5の相対位置を推定する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221と、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223と、を備えている。IMU22は、計測した加速度や角速度などを利用し、基準となる車両位置に対する相対位置を演算する。
【0021】
車両5が備えるタグリーダ34(
図5)は、磁気マーカ10の表面に配置されたRFIDタグ15(
図3)と無線で通信するユニットである。タグリーダ34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電し、RFIDタグ15が送信する情報を受信する。なお、RFIDタグ15の送信情報には、RFIDタグ15の識別情報であるタグIDが含まれている。
【0022】
車両5が備えるメインユニット32(
図5)は、計測ユニット2やタグリーダ34を制御する機能(制御部321)、及びサーバ装置11との間で各種情報を交換する機能(取得部の一例である情報交換部323)に加え、センサアレイ(磁気センサCn)21を診断する自己診断機能を備えるユニットである。この自己診断機能は、センサアレイ21の状態を診断する診断部322、履歴データを記憶する履歴記憶部324などによって実現される。履歴データとしては、磁気マーカ10の検出履歴を表す検出履歴データ、車両5が走行した軌跡である走行ルートを表す走行履歴データ等がある。
【0023】
メインユニット32は、各種の演算を実行するCPUおよびROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。メインユニット32は、磁気マーカ10の検出情報をサーバ装置11にアップロードする一方、検出情報のアップロードに応じてサーバ装置11からマーカ位置情報の返信を受ける。さらに、メインユニット32は、各磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報をサーバ装置11から取得する。車両5側では、このマーカ状態情報を利用して、磁気センサCnの自己診断を実行可能である。
【0024】
メインユニット32がアップロードする検出情報には、磁気マーカ10を一意に特定可能なマーカID(マーカ特定情報)、車両の識別情報である車両ID等が含まれている。なお、本例の構成では、磁気マーカ10を検出した際にRFIDタグ15から読み取ったタグIDが、そのままマーカID(マーカ特定情報)として利用される。
【0025】
メインユニット32(
図5)は、サーバ装置11から受信するマーカ位置情報を利用して自車位置を特定する。磁気マーカ10を検出したとき、サーバ装置11は、マーカ位置情報が表す位置を基準として、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量の分だけずらした位置を自車位置として特定する。一方、磁気マーカ10を検出した後、新たな磁気マーカ10を検出するまでの間は、慣性航法を利用して新たな自車位置を特定する。具体的には、サーバ装置11は、直近の自車位置を基準として慣性航法により車両5の相対位置を推定する。そして、この相対位置の分だけ直近の自車位置からずらした位置を新たな自車位置として特定する。メインユニット32は、例えば目的地までの経路案内等を実行するナビゲーション装置6に自車位置を入力する。なお、ナビゲーション装置6は、地図データを格納する地図データベース(地
図DB)60を有しており、地図データに基づく電子地図上に自車位置をマッピングする処理(対応付ける処理)が可能である。地
図DB60の地図データには、磁気マーカ10の位置を表すマーカ位置データが含まれている。
【0026】
また、本例のメインユニット32は、サーバ装置11から配信されたマーカ状態情報に基づいて、磁気検出部の一例をなすセンサアレイ21及び磁気センサCnの状態を診断する自己診断処理を実行可能である。
【0027】
(3)サーバ装置
サーバ装置11は、
図6のごとく、CPUが実装された図示しない電子基板等を含む主回路110を有する演算処理装置である。サーバ装置11では、ハードディスクなどの記憶装置11Mがこの主回路110に接続されている。主回路110には、図示しないLAN(Local Area Network)に対応する通信機能を具備している。サーバ装置11は、LANポートに接続された通信ケーブルを介してインターネット19(
図1)等の公衆通信回線に接続可能である。
【0028】
主回路110に対しては、車両5から磁気マーカ10の検出情報を取得する検出情報取得部116や、検出情報の送信元の車両5に対してマーカ位置情報を提供する位置情報提供部118や、マーカ状態情報を各車両5に配信するマーカ状態情報提供部119などが接続されている。また、主回路110は、磁気マーカ10の状態を推定する状態推定部11Aや、磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報を生成するマーカ状態情報生成部11Bなどの機能を備えている。これらの機能は、ソフトウェアプログラムをCPU等で処理することで実現される。
【0029】
サーバ装置11では、主回路110に接続された記憶装置11Mの記憶領域を利用し、磁気マーカ10に関するデータを格納するマーカデータベース(マーカDB)111が設けられている。マーカDB111には、磁気マーカ10の設置データ(
図7)、磁気マーカ10の運用データ(
図8)、磁気マーカ10の状態データ(
図9)等が格納されている。
【0030】
図7の設置データは、各磁気マーカ10が設置された位置を表すマーカ位置データや、設置された道路の種別である道路種別を表すフラグデータ等を含んでいる。各磁気マーカ10のマーカ位置データ等には、磁気マーカ10の識別情報であるマーカID(マーカ特定情報)がひも付けされている。なお、本例の道路種別は、交通量の度合いによる道路の分類である。例えば「道路種別2」など、道路種別が共通している磁気マーカ10は、車両の通過台数が似通っている。
【0031】
図8の運用データは、磁気マーカ10の被検出回数など、磁気マーカ10の運用状況を表すデータであり、マーカIDがひも付けされている。磁気マーカ10の運用状況を表す指標である被検出回数は、磁気マーカ10がいずれかの車両5によって検出された回数である。この運用データは、道路種別毎、日毎に管理されている。例えば
図8は、道路種別1の日毎の運用データの一部である。運用データに基づけば、各磁気マーカ10の日毎の被検出回数を把握できる。さらに、運用データは、道路種別毎に管理されているので、磁気マーカ10の被検出回数の統計処理を道路種別毎に実行できる。
【0032】
図9の状態データは、磁気マーカ10の良否レベル(状態の一例)を表すフラグデータである。この状態データには、マーカIDがひも付けされている。
図9の例では、磁気マーカ10の良否レベルを表すフラグデータとして、例えば丸、三角、バツに対応する3種類のデータがある。丸は、良好な状態であって、トラブルの可能性の度合いが低いことを表すフラグデータである。バツは、トラブルの可能性が高く、保守作業を要することを表すフラグデータである。三角は、直ちに保守作業を実施する必要はないが、トラブルの可能性があり監視を要することを表すフラグデータである。
図9の状態データは、各磁気マーカ10の保守作業の要否を表すメンテナンス情報の元データとして利用可能である。また、同図の状態データは、各磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報として利用できる。
【0033】
(4)診断システムの動作
以上のように構成された診断システム1の動作の内容について、まず、
図10及び
図11を参照して車両5による(a)マーカ検出処理を説明する。続いて、
図12のフロー図を参照し、車両5による(b)検出情報のアップロード処理、及びサーバ装置11による(c)マーカ位置情報の配信処理について説明する。さらにサーバ装置11による(d)マーカ状態情報の生成処理を説明し、続いて
図13及び
図14を参照して(e)車両による自己診断処理、について説明する。
【0034】
(a)マーカ検出処理
車両5が道路を走行している間、計測ユニット2のセンサアレイ21(
図5)が、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理を繰り返し実行する。
上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測可能である。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図10のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、計測ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212(
図5)は、このように計測ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0035】
また例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した計測ユニット2の場合には、
図11の例の通り、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる。
【0036】
計測ユニット2の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図11の分布曲線に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを利用して磁気マーカ10の車幅方向の位置を特定可能である。隣り合う2つの磁気センサCnの中間(中央とは限らない)にゼロクロスZcが位置している場合には、ゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。あるいはいずれかの磁気センサCnの位置にゼロクロスZcが一致している場合、すなわち車幅方向の磁気計測値がゼロであって両外側の磁気センサCnの磁気計測値の正負が反転している磁気センサCnが存在する場合には、その磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、計測ユニット2の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量として計測する。例えば、
図11の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量は、車幅方向において計測ユニット2の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10=15cmとなる。
【0037】
(b)検出情報のアップロード処理
図12のごとく、車両5のセンサアレイ21が上記のマーカ検出処理P1を実行して磁気マーカ10を検出したとき(S101:YES)、タグリーダ34が、RFIDタグ15のタグIDを読み取るためのタグID読取処理を実行する(S102)。タグリーダ34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電してRFIDタグ15の動作を開始させ、RFIDタグ15の送信データ(タグIDなど)を受信する。そして、タグリーダ34は、このタグID読取処理により読み取ったタグIDをメインユニット32に入力する。メインユニット32は、このタグIDをマーカ特定情報であるマーカIDとして取り扱い、このマーカIDを含む検出情報を生成する(S103)。そして、車両5の識別情報である車両IDをひも付けてサーバ装置11に検出情報を送信する。
【0038】
(c)マーカ位置情報の配信処理
サーバ装置11は、
図12のごとく、車両5側から検出情報を取得すると(S201)、各磁気マーカ10のマーカ位置データ等を格納するマーカDB111(
図6)を参照する(S202)。そして、マーカDB111の中から、検出情報に対応する磁気マーカ10、すなわち検出情報のマーカIDに係る磁気マーカ10を選択する。
【0039】
サーバ装置11は、マーカDB111の設置データ(
図7)を参照し、選択した磁気マーカ10のマーカ位置データ等を取得する(S203)。さらに、マーカDB111の運用データ(
図8)を参照し、選択した磁気マーカ10の被検出回数(
図8参照。)を1回加算する(S204)。そして、ステップS203で取得したマーカ位置データを含むマーカ位置情報を生成し、上記のステップS201で取得した検出情報の送信元の車両5に対して、マーカ位置情報を送信する(S205)。
【0040】
車両5のメインユニット32は、マーカ位置情報を取得すると(S104)、このマーカ位置情報が表す位置を基準として車両位置を特定する(S105)。具体的には、磁気マーカ10の位置を基準として、上記のように計測ユニット2が計測した横ずれ量(相対位置の一例)の分だけオフセットさせる演算を実行して車両位置を求める。ナビゲーション装置6は、この車両位置を自車位置として取り扱い、経路案内等を実施する。
【0041】
なお、磁気マーカ10を検出した後、新たな磁気マーカ10を検出するまでの走行区間では(S101:NO)、メインユニット32は、直近の磁気マーカ検出時の車両位置を基準位置として、慣性航法により車両5の相対位置を推定する(S112)。具体的には、計測ユニット2に組み込まれたIMU22(
図5)が、2軸加速度センサ222による計測加速度を二階積分して変位量を演算し、さらに、2軸ジャイロセンサ223が計測する車両5の進行方位に沿って変位量を積算する演算を実行する。これにより、上記の基準位置に対する車両5の相対位置を推定する。そして、この相対位置の分だけ基準位置から移動させた位置を自車位置として特定する(S105)。
【0042】
(d)マーカ状態情報の生成処理
サーバ装置11は、各磁気マーカ10の被検出回数(
図8の運用データ)について、平均値や標準偏差等を算出するための統計処理を実行する。なお、本例の構成では、交通量の度合いが同程度の道路種別毎に統計処理を実施することで、統計処理の信頼性を確保している。
【0043】
サーバ装置11は、各磁気マーカ10について、被検出回数の偏差値を算出すると共に、この偏差値に関する閾値処理を実行する。サーバ装置11は、例えば、被検出回数の偏差値が所定の閾値を下回る磁気マーカ10について、トラブルのおそれが高いと判定する。このようにしてサーバ装置11は、各磁気マーカ10の状態を表す状態データ(
図9)を生成する。この状態データは、各磁気マーカ10の良否レベルを表す良否情報である。この状態データは、各磁気マーカ10の保守作業の要否を表すメンテナンス情報、各磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報の元データとして利用可能である。なお、本例では、
図9のごとく、上記の被検出回数の偏差値について2段階の閾値を設定している。そして、2段階の閾値により、磁気マーカ10の良否レベルを3段階(同図中の丸、三角、バツ)に区別している。
【0044】
図9の状態データは、そのままメンテナンス情報として利用することが可能である。状態データに基づくメンテナンス情報によれば、例えば道路の管理者等が適切なタイミングで磁気マーカ10のメンテナンスを実施できる。例えば、バツの磁気マーカについては、トラブルのおそれがあり、至急のメンテナンスを要する、等の判断が可能である。例えば、三角の磁気マーカについては、近日中のメンテナンスを要する、等の判断が可能である。なお、
図9の状態データを加工しても良い。例えば、良否が丸の磁気マーカ10については、例えばメンテナンス情報として「良好な状態を維持しています。」等の文字情報に変換、あるいは加工しても良い。また、例えば、良否がバツの磁気マーカ10については、例えば「早急な点検が必要です。」等のメンテナンス情報に変換あるいは加工することも良い。
【0045】
(e)車両による自己診断処理
サーバ装置11は、磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報として、
図9の状態データを各車両5に定期的に配信する。車両5側では、サーバ装置11から取得したマーカ状態情報を利用し、センサアレイ(磁気センサCn)21の自己診断処理が実行される。次に、この自己診断処理の内容について、
図13のフロー図を参照しながら説明する。
【0046】
メインユニット32は、まず、履歴記憶部324(
図5)の記憶領域の中から、走行履歴データと検出履歴データとを読み出す(S301)。上記の通り、走行履歴データは、車両5の走行ルートを表すデータである。検出履歴データは、車両5が走行中に検出した磁気マーカ10の履歴である。検出履歴データ中の各磁気マーカ10は、マーカ特定情報であるマーカIDによって特定されている。
【0047】
メインユニット32は、ナビゲーション装置の地
図DB60の中から、車両の走行ルートに対応する地図データを読み出す。ここで、地
図DB60の地図データには、磁気マーカ10の位置を表すマーカ位置データが含まれている。メインユニット32は、このマーカ位置データを利用し、地図データに基づく電子地図上に、各磁気マーカ10の位置をマッピングする(
図14)。
【0048】
メインユニット32は、各磁気マーカ10の位置がマッピングされた電子地図上に、走行履歴データに基づく車両5の走行ルートRをマッピングする(S302、
図14)。そして、車両5の走行ルートR上の磁気マーカ10を特定する。なお、
図14では、サーバ装置11(
図1)から配信されたマーカ状態情報に基づく良否レベルを表すプロット種別(丸、三角、バツ)によって、各磁気マーカ10の位置が示されている。
【0049】
メインユニット32は、走行ルートR上の磁気マーカ(ルートマーカという。)と、検出履歴データ中の磁気マーカ(履歴マーカという。)と、を対比する処理を実行する(S303)。この対比処理では、上記のルートマーカのうち上記の履歴マーカと一致するものが、検出ポイントに換算されて点数化され、評価点に積算される(S304)。なお、検出ポイントのポイント数は、磁気マーカ10の良否レベルに応じて異なる。例えば良否レベルが丸の磁気マーカは1点、三角の磁気マーカは2点、バツの磁気マーカはゼロ点となっている。このように本例の構成では、磁気マーカ10の状態の良否レベルに応じて、センサアレイ21の診断に用いられる指標(例えば評価点や後述する評価指標値など)に反映させる度合いが異なっている。
【0050】
メインユニット32は、上記のステップS303→S304の対比処理を、全てのルートマーカについて実行する(S305:NO)。なお、履歴マーカのうち、ルートマーカと対比できなかった余りの磁気マーカ10については、誤検出の磁気マーカ10として取り扱われ、マイナス3点の検出ポイントが評価点に積算される。
【0051】
メインユニット32は、ルートマーカのうち、良否レベルが丸か三角の磁気マーカ10の個数によって上記の評価点を除算して評価指標値を算出し(S306)、閾値処理を実行する(S307)。この閾値処理の閾値としては、例えば1点、1.5点、2点などを設定できる。
【0052】
メインユニット32は、評価指標値が閾値以上であるとき(S307:YES)、センサアレイ21を正常と判定する(S308)。一方、評価指標値が閾値に満たなければ(S307:NO)、センサアレイ21の点検を要する状態と判定し(S318、要点検判定)、車室の液晶ディスプレイによる表示等によりその旨の報知を実行する(S319、要点検表示)。このような報知があれば、修理工場等に車両を持ち込む等のユーザー側の対処が可能となり、重大なトラブルが発生する前の早期の対処が可能となる。
【0053】
以上のように本例の診断システム1における車両5は、磁気マーカ10の状態を表すマーカ状態情報を利用してセンサアレイ21の状態を自己診断できる。この車両5では、センサアレイ21の状態を自己診断できるので、点検や保守のコストを抑制でき維持コストを低減できる。
【0054】
本例では、一般の車両5から磁気マーカ10の検出情報を収集し、サーバ装置11がマーカ状態情報を生成する構成を例示している。この構成に代えて、検査車両を走行させて磁気マーカ10の検出情報を収集し、この検出情報に基づいてサーバ装置11がマーカ状態情報を生成しても良い。この構成の場合、一般の車両がアップロードする検出情報を取得しなくても、サーバ装置11がマーカ状態情報を生成できる。例えば、このマーカ状態情報を各車両に配信すれば、車両側でのセンサアレイ21の自己診断が可能になる。
なお、本例では、サーバ装置11が統計的な処理によって磁気マーカの状態データを生成する構成を例示している。磁気マーカの状態データの生成方法については、適宜変更可能である。
【0055】
(実施例2)
本例は、実施例1の診断システムに基づいて、車両の地上高の変化を診断する機能を追加した例である。この内容について、
図15及び
図16を参照して説明する。
本例の診断システムでは、磁気マーカを検出した際に車両がアップロードする検出情報に、磁気計測値(ピーク値)が追加されている。本例のサーバ装置は、磁気マーカの良否を評価するに当たって、磁気マーカの磁気強度の度合いを10段階の磁気レベルで評価する。サーバ装置は、各車両側から取得した検出情報に含まれる磁気計測値(ピーク値)の平均値を算出し、その平均値の大きさを10段階の磁気レベルのいずれかに割り当てる(
図15参照。)。この磁気レベルは、磁気マーカのマーカ状態情報の一部として良否レベル(丸、三角、バツ)の情報と共に各車両に配信される。
【0056】
例えば
図15の状態データに基づくマーカ状態情報の配信を受けた車両側では、磁気センサの状態に関する実施例1と同様の診断に加えて、車両の地上高の変化を診断する自己診断処理が実行される。車両の地上高の変化の診断は、磁気マーカの磁気レベルと、磁気センサの磁気計測値(ピーク値)と、の相関関係を表す指標値を利用し、車両の地上高の変化を検出する診断である。
【0057】
車両の診断部(
図5中の符号322)が内部的に実行する処理の内容は、例えば
図16のグラフを用いて説明できる。同図のグラフは、対象の車両が磁気マーカを検出した際の磁気計測値(ピーク値)と、その磁気マーカの磁気レベル(
図15参照。)と、の関係を表すグラフである。同図のグラフの横軸は、磁気マーカの10段階の磁気レベル(マーカ状態情報)を示し、縦軸は、磁気計測値(ピーク値)を示している。
図16のグラフ上には、対象の車両がアップロードした検出情報が順次、プロットされる。車両の診断部は、プロットされた点群について、例えば最小二乗法によって近似直線を算出する。そして、この近似直線の傾き(係数)や切片が、上記の相関関係を表す指標値となり得る。なお、切片は、近似直線と縦軸とが交わる点における値である。
【0058】
診断部は、例えば1時間、2時間、1日、1週間などの所定時間を設定し、所定時間毎のプロットの点群(例えばD1~D3)の近似直線(例えばAP1~AP3)を求める。例えば、所定時間が1時間であれば、1時間毎の近似直線が求められる。例えば、センサアレイの磁気センサ(磁気検出部)の感度に変化がなく、かつ、センサアレイの取付高さに変化がなければ、上記の近似直線(例えばAP1~AP3)の傾きや切片が時間的にほぼ一定となる。一方、例えば、磁気センサの感度には変化がないが、センサアレイの取付高さに変化が生じると、上記の近似直線の傾き等が時間的に変化する。
【0059】
このような時間的な変化を検出すれば、診断部が、車両の地上高の変化を検出できる。車両の地上高の変化を検出すれば、診断部が、例えば車両の地上高の変化の要因であるタイヤのパンクや積荷の過積載等を検知できる。上記の近似直線の傾き等の時間的な変化について閾値処理を実行し、閾値を超える変化が発生したとき、サーバ装置11が車両の地上高の変化が大きい旨の車両情報を生成することも良い。この場合、サーバ装置11は、注意を促すためにこの車両情報を対応する車両に送信することも良い。例えばディスプレイ装置やスピーカなどを利用して車両情報を乗員に提示すれば、タイヤのパンクや積荷の過積載による事故の発生を未然に防止できる。
【0060】
例えば、点群D1→点群D2に移行したケースは、切片の変化がほとんど生じていないが、近似直線の傾きが大きくなっているケースである。このケースでは、例えば、過積載やパンクなどによって車両の地上高が低くなっている等の要因を想定できる。車両の地上高が低くなれば、センサアレイ(磁気センサ)の取付高さが低くなり、これにより、センサアレイ(磁気センサ)が磁気マーカを検出する際の磁気計測値(ピーク値)が大きくなる。
【0061】
車両の地上高の変化が検出された場合、乗員に報知するのに加えて、あるいは代えて、車両の整備を担う車両ディーラ等の端末装置に対して、インターネット等の公衆通信回線を利用して車両情報を送信する等の方法がある。さらに、車両がタクシーやトラックなどの営業車両であれば、営業車両を管理する企業や会社の担当部署の端末装置に車両情報を送信しても良い。
【0062】
例えば、点群D1→点群D3に移行したケースは、近似直線の傾きの変化は少ないが、切片が変化し、近似直線AP1が上方に並行移動して近似直線AP3になっているケースである。このケースでは、磁気センサの感度が変化しているおそれがあると共に、車両の地上高の変化が発生している可能性もある。点群D1→点群D2に移行したケースと同様、車両の地上高の変化が生じている可能性がある旨の車両情報を乗員に提示すると良い。
【0063】
なお、点群の近似直線の傾きや切片の変化、あるいは点群の分布態様の変化と、発生原因との関係を機械学習等することも良い。このような機械学習によれば、人工知能的な手法によって発生原因を推定できるようになる。この場合には、発生原因を表す車両情報を乗員等に提示すると良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0064】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して上記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0065】
1 診断システム
10 磁気マーカ
11 サーバ装置
11A 状態推定部
11B マーカ状態情報生成部
11M 記憶装置
111 マーカデータベース(マーカDB)
116 検出情報取得部
118 位置情報提供部
119 マーカ状態情報提供部
15 RFIDタグ(無線タグ)
2 計測ユニット
21 センサアレイ(磁気検出部)
212 検出処理回路
32 メインユニット
322 診断部
323 情報交換部(取得部)
34 タグリーダ
5 車両
6 ナビゲーション装置