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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20231122BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20231122BHJP
   H01L 33/20 20100101ALI20231122BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
H01L33/20
F21S2/00 482
F21S2/00 250
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022160629
(22)【出願日】2022-10-05
(62)【分割の表示】P 2018232286の分割
【原出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2023002592
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2017250606
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山田 元量
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-008754(JP,A)
【文献】特開2011-243730(JP,A)
【文献】国際公開第2011/090024(WO,A1)
【文献】特開2017-216326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0349445(US,A1)
【文献】特開2006-059851(JP,A)
【文献】特開平10-135576(JP,A)
【文献】特開2012-089572(JP,A)
【文献】特開2012-203111(JP,A)
【文献】特開2008-109098(JP,A)
【文献】特開平10-074978(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137406(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146435(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0162755(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0125589(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
F21S 2/00
F21V 8/00
G09F 9/00 - 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線を有する配線基板と、
下面に対して傾斜した一対の第1側面と、前記下面に対して垂直な一対の第2側面とを有するサファイア基板と、前記サファイア基板の下面に設けられた窒化物系半導体を含む半導体積層体と、前記半導体積層体の下面側に正負の電極とを有し、前記配線基板の上面に行列状にフリップチップ実装された複数の発光素子と、を備え、
前記複数の発光素子のうち所定の領域内に配置された複数の発光素子は、行方向および列方向のうち少なくとも一方の方向に互いに隣接する発光素子の前記第1側面と前記第2側面とが向かい合って配置され、かつ、前記発光素子の上面側から見て、隣接する前記発光素子は、前記一対の第1側面のうち一方の側面に着目すると、行方向および列方向のうち少なくとも一方に、右回り又は左回りに45°又は90°ずつ回転するように配置されていることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
行方向および列方向のそれぞれの方向に互いに隣接する発光素子の前記第1側面と前記第2側面とが向かい合って配置されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記サファイア基板の下面と前記一対の第1側面とを通る一断面において、前記一対の第1側面の一方は前記下面と鋭角をなし、前記一対の第1側面の他方は前記下面と鈍角をなす請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記所定の領域は、前記複数の発光素子のすべてを含む領域である請求項1~3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子の上面に光反射膜を備え、該発光素子は、それぞれ、バットウイング配光特性を有する請求項1~4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記発光素子が行方向および列方向のうち少なくとも一方に90°ずつ回転するように配置されている場合、前記発光素子の一つを挟んで向かい合う前記第1側面同士が反対方向に傾斜している請求項1~5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
直下型のバックライト光源用に用いられる請求項1~5のいずれか1つに記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDアレイパネルにおいて、同じ構造のLED素子が規則的に配置された場合
、パネルに搭載されているLED素子から出射される光の強度分布に一定のパターンがあ
ると、集光した際に一定のパターンがそろったまま重ね合わされ、照度ムラが生じ、さら
に、スクリーンに照度ムラを持った映像が投影されることがある。
これに対して、光照射面における光の強度分布を均一にするために、発光素子をその光
軸の回りに90°異なる角度で配置し、個々の発光素子から出力される一定のパターンの
強度分布をもつ光を重ね合わせて平均化する方法が提案されている(例えば、特許文献1
)。
【0003】
【文献】特開2002-374004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、直下型バックライト光源では、発光素子が等ピッチで多数行列状に配列されてい
ることから、1つの発光素子の周辺で輝度ムラが発生すると、それが行又は列状に連続し
て続くため、バックライト光源の光出射面においてその輝度ムラが視認されることがあっ
た。このバックライト光源の光出射面に視認される輝度ムラは、液晶パネルなどの光照射
面に引き継がれる傾向にある。
本願発明は、特定の立体形状を有し、特定の配光特性を有する発光素子が等ピッチで複
数行列状に配列された発光装置において、連続した輝度ムラが視認されない又は視認され
にくい発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は以下の発明を含む。
配線を有し、光反射性を有する配線基板と、
下面に対して傾斜した一対の第1側面と、前記下面に対して垂直な一対の第2側面とを
有するサファイア基板と、前記サファイア基板の下面に設けられた半導体積層体とを有し
、前記配線基板の上面に行列状に実装された複数の発光素子と、
該発光素子の上面に配置された光反射膜と、
前記複数の発光素子の上方に配置された光拡散部材とを備え、
前記複数の発光素子のうち所定の領域内に配置された複数の発光素子は、行方向および
列方向のうち少なくとも一方の方向に互いに近接する発光素子の前記第1側面と前記第2
側面とが向かい合って配置されている発光装置。
【発明の効果】
【0006】
本願発明の発光装置によれば、発光素子における電極パターンにかかわらず、特定の立
体形状を有する特定の配光特性を有する発光素子が等ピッチで複数行列状に配列された発
光装置において、連続した輝度ムラの視認を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A】一実施形態の発光装置を示す概略平面図である。
図1B】一実施形態の発光装置の領域Mにおける発光素子の配列を説明するための概略平面図である。
図1C】一実施形態の発光装置の図1BのA-A'線に相当する位置での発光素子の概略断面図である。
図2A】光反射膜の光透過特性を示すグラフである。
図2B図1BのX方向における発光素子12Tの配光特性を示すグラフである。
図2C図1BのX方向に直交する方向における発光素子12Tの配光特性を示すグラフである。
図3】別の実施形態の発光装置の領域Mにおける発光素子の配列を説明するための概略平面図である。
図4】さらに別の実施形態の発光装置の領域Mにおける発光素子の配列を説明するための概略平面図である。
図5】さらに別の実施形態の発光装置の領域Mにおける発光素子の配列を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に示す形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明を以下
に限定するものではない。また、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確
にするために誇張していることがある。さらに、同一の名称、符号については、原則とし
て同一もしくは同質の部材を示しており、重複した説明は適宜省略する。
【0009】
〔発光装置〕
本願における一実施形態の発光装置10は、図1Aに示すように、複数の発光素子12
が配線基板11の上面に行列状に配置されて構成される。この発光装置10では、図1B
及び図1Cに示すように、配線基板11は、基板11b上に配線11aを有し、光反射性
を有する。発光素子12の上面には、光反射膜13が配置されており、複数の発光素子1
2の上方に光拡散部材14が配置されている。発光素子12は、サファイア基板21と、
半導体積層体22とを有し、サファイア基板21は、その下面21cに対して傾斜した一
対の第1側面21aと、下面21cに対して垂直な一対の第2側面21bとを有する。そ
して、複数の発光素子12のうち所定の領域内、例えば、図1における領域Mに配置され
た複数の発光素子12は、行方向および列方向のうち少なくとも一方の方向に互いに近接
する発光素子12のサファイア基板21の第1側面21aと第2側面21bとが向かい合
って配置されている。ここで、向かい合ってとは、側面が互いに実質的に平行に対面する
状態でもよいし、一方の側面が他方の側面に対して傾斜して対向していてもよい(例えば
図4等参照)ことを含む。
このような構成を有することにより、サファイア基板の劈開面に起因する傾斜する一対
の第1側面によって影響を受ける発光素子の出射光の光の向きを、行又は列方向に隣接す
る発光素子において異ならせることができる。これによって、上方から見て相対的に明る
い又は暗い辺を有する1つの発光素子を、複数規則正しく並べる場合に表れる、発光装置
の光出射面における連続する明るい又は暗いパターンを効果的に回避することができる。
その結果、発光装置において、光出射面における光の強度分布を均一とすることができ、
輝度ムラの視認をなくすことができる。このような効果は、特に発光素子の上面に光反射
膜を有することで、その上面に対して垂直方向にはほとんど光を通さない発光素子を大量
に配置する用途、特に直下型のバックライト光源として用いる場合に顕著である。
【0010】
(配線基板11)
配線基板11は、少なくともその一面(例えば、上面)に配線11aを有する。配線1
1aは、発光素子の正負電極に対応した一対のパターンを複数含む。これらの正負電極に
対応したパターンは、それぞれ、配線基板11の一面、内部及び/又は一面とは反対側の
他面(例えば、下面)において、それぞれ電気的に接続され、外部からの電流(電力)を
供給することができる。
【0011】
(配線11a)
配線11aは、基板11bとして用いられる材料、その製造方法等によって適宜選択す
ることができる。例えば、基板11bの材料としてセラミックスを用いる場合は、配線1
1aは、セラミックスシートの焼成温度に耐え得る高融点を有する材料が好ましく、例え
ば、タングステン、モリブデンのような高融点の金属が挙げられる。また、その上に鍍金
、スパッタリング、蒸着などにより、ニッケル、金、銀など他の金属材料が被覆されたも
のでもよい。
【0012】
基板11bの材料としてガラスエポキシ樹脂等の樹脂を用いる場合は、配線11aは、
加工し易い材料が好ましい。配線11aは、基板の一面又は両面に、蒸着、スパッタ、め
っき等の方法によって形成することができる。プレスにより金属箔を貼着してもよいし、
印刷法又はフォトリソグラフィー等を用いてマスキングし、エッチング工程によって、所
定の形状にパターニングしてもよい。例えば、銅、銀、金、ニッケル等の金属又は合金等
が挙げられる。
【0013】
(基板11b)
基板11bは、例えば、セラミックス、ガラスエポキシ樹脂、フェノール樹脂、エポキ
シ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエチレンテレ
フタレート(PET)等の樹脂、金属等によって形成することができる。
基板11bの厚さは適宜選択することができる。
【0014】
セラミックスとしては、例えば、アルミナ、ムライト、フォルステライト、ガラスセラ
ミックス、窒化物系(例えば、AlN)、炭化物系(例えば、SiC)、LTCC等が挙
げられる。
樹脂を用いる場合は、ガラス繊維、SiO2、TiO2、Al23等の無機フィラーを樹
脂に混合し、機械的強度の向上、熱膨張率の低減、光反射率の向上等を図ることもできる

金属としては、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、銀、金、チタン又はこれら
の合金等が挙げられる。
【0015】
(被覆層11c)
配線基板11は、光反射性を有するが、この光反射性は、配線基板11に形成された配
線11aによって付与されるものであってもよいし、基板11b自体を構成する材料が光
反射性を有するものであってもよいし、発光素子と電気的に接続される配線以外の配線基
板11の上面における領域が、光反射性の被覆層11cによって被覆されたものであって
もよい。なかでも、光反射性の被覆層11cによって被覆されたものが好ましい。
【0016】
配線基板11を被覆する被覆層11cの材料としては、上述した樹脂に、光反射材が含
まれたもの、絶縁性を有するレジスト等を用いることが好ましい。光反射材としては、酸
化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸
カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、チタン酸バリウム
、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の白色顔
料が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる
。樹脂における光反射材の含有量は、光反射性及び流動状態における粘度などの観点から
、10~70wt%が好ましく、30~60wt%がより好ましい。
【0017】
(発光素子12及び光反射膜13)
発光素子12は、図1Cに示すように、サファイア基板21と、その下面21cに積層
された半導体積層体22とを有する。半導体積層体22の下面には、一対の正負の電極2
3、24が形成されている。また、サファイア基板21の下面21cとは反対側の面に光
反射膜13が配置されている。
発光素子12は、平面視、四角形又はこの四角形の角が丸みを帯びるなどの四角形に近
似した形状であるものが挙げられるが、その他の種々の平面形状とすることができる。
【0018】
(サファイア基板21)
サファイア基板21は、その下面21cに対して傾斜した一対の第1側面21aと、下
面21cに対して垂直な一対の第2側面21bとを有する。つまり、下面21aと一対の
第1側面21aとを通る断面において、一対の第1側面21aの一方は下面21aと鋭角
をなし、他方は下面21aと鈍角をなす。これらの側面を有する限り、例えば、六方晶の
Al23からなる基板、つまり、C面、A面、R面、M面のいずれか又はこれらの面から
±5°でオフ角を有する面を主面とするサファイアによる基板を用いることができる。例
えば、下面21cは、C面(0001)又はC面に対して±5°のオフ角を有する面であ
るものが挙げられる。なお、サファイアは完全には六方晶ではないが、近似的に六方晶(
六方晶系)として理解されている。
【0019】
下面21cをC面(0001)とする場合、第1側面21aは、例えば、(1-100
)面、(01-10)面、(-1010)面等とすることができ、[0001]方向のC
面側からみて、それぞれ[-1100]方向、[-1100]方向、[0-110]方向
に傾斜したものが挙げられる。第1側面21aの傾斜は、例えば、1~20°であるもの
が挙げられ、2~10°であるものが好ましい。図1Cにおいては、第1側面21aは、
例えば、下面21cに対して90±7°傾斜しており、一対の第1側面21aは、互いに
略平行である。つまり、一方の第1側面21aは、下面21cに対して鋭角(例えば、8
3°)で交わり、他方の第1側面21aは、下面21cに対して鈍角(例えば、97°)
で交わっている。
【0020】
(半導体積層体22)
半導体積層体22は、任意の波長のものを選択することができる。例えば、青色、緑色
の発光素子としては、窒化物系半導体(InxAlyGa1-x-yN、0≦X、0≦Y、X+
Y≦1)を用いることができる。用いる発光素子の大きさ、個数などは目的に応じて適宜
選択することができる。
【0021】
一対の電極23、24はアノード及びカソードに対応するものであり、それぞれ1つの
みでもよいし、複数配置されていてもよい。図1Bにおいては、1つの発光素子12にお
いて、アノード及びカソードに対応する電極23、24がそれぞれ1つずつ配置されてい
る。
電極23、24は、導電材料によって任意の形状で形成することができる。
一対の電極23、24は、図1Cに示すように、接合部材を介して配線基板11の上面
の配線11aに接続されている。つまり、発光素子12が、一対の配線11aに跨るよう
にフリップチップ実装されている。
接合部材としては、金、銀、銅などのバンプ、これらの金属粉末と樹脂バインダを含む
金属ペースト、錫-ビスマス系、錫-銅系等の半田、低融点金属等のろう材等を用いるこ
とができる。
【0022】
(光反射膜13)
光反射膜13は、発光素子12において、サファイア基板21の下面21cとは反対側
の上面に形成されている。光反射膜13は、発光素子12から出射される光に対して、光
透過率が入射角依存性を有する膜であることが好ましい。この光反射膜13の光透過率の
入射角依存特性は、図2Aに示すように、発光素子12の上面に対して垂直方向には殆ど
光を通さないが、垂直方向から傾斜した光は、その透過率が増加する。例えば、光の入射
角が、-30°~30°の範囲内では透過率が10%程度であるのに対して、光の入射角
が-30°より小さくなると徐々に透過率が大きくなり、-50°より小さくなると急激
に透過率が大きくなる。同様に、光の入射角が30°より大きくなると徐々に透過率が大
きくなり、50°より大きくなると急激に透過率が大きくなる。つまり、光反射膜13の
発光素子12からの光に対する光透過率は、入射角の絶対値が大きくなるにしたがって高
くなる。従って、光反射膜13を備える発光素子12のサファイア基板21の第2側面2
1bに実質的に平行な方向(図1Cの発光素子12Tの紙面に実質的に平行な方向)にお
いては、図2Bに示すようなバットウイング配光特性を有し、第2側面21bに垂直な方
向(図1Cの発光素子12Qの紙面に実質的に平行な方向)においては、図2Cに示すよ
うな、バットウイング配光特性を有する。
【0023】
図2Bでは、サファイア基板21の第1側面21aの傾斜に伴い、視野角0°の左右に
おいて、非対称な配光特性が得られる。一方、図2Cでは、サファイア基板21の第2側
面21bが垂直であるために、視野角0°の左右において、対称な配光特性が得られる。
なお、バットウイング配光特性とは、配光角が90°以下の第1領域に配光角が90°
のときの強度より大きい強度の第1ピークを有し、配光角が90°以上の第2領域に配光
角が90°のときの強度より大きい強度の第2ピークを有するような配光特性を指す。
このようなバットウイング配光特性の光を採用することにより、発光装置における発光
素子の行列方向のピッチを大きくすることができ、用いる発光素子数を低減等することが
できる。
【0024】
光反射膜13は、少なくとも発光素子12から出射される光を反射する材料であればよ
く、例えば、金属、白色フィラー含有樹脂、誘電体多層膜等によって形成することができ
る。
誘電体多層膜を用いる場合には、吸収の少ない反射膜を得ることができ、膜の設計で反
射率を任意に調整することが容易となる。また、光の入射角度により反射率を精度よく制
御することができる。特に、光取り出し面に垂直方向(光軸方向ともいう)の反射率を上
げ、光軸に対して角度が大きくなるところで反射率を下げる、すなわち透過率を上げるこ
とにより、上述したバットウイング配光特性を制御よく得ることができる。
【0025】
この実施形態における発光素子12は、上述したようにサファイア基板21に第1側面
21a及び第2側面21bを有する。つまり、サファイア基板21の劈開面に起因する傾
斜した一対の第1側面21aによって出射光の配光特性が影響を受け、これによって、上
方から見て相対的に明るい辺と暗い辺とを有することとなる。
このような発光素子12は、図1Aに示すように、配線基板11の上面に、複数行及び
/又は列状に実装されているが、複数の発光素子12のうち所定の領域内(例えば、領域
M内)に配置された複数の発光素子12は、行方向および列方向のうち少なくとも一方の
方向に互いに近接する発光素子12のサファイア基板21の第1側面21aと第2側面2
1bとが向かい合って配置されている。特に、行方向および列方向の双方向に互いに近接
する発光素子のサファイア基板の第1側面21aと第2側面21bとが向かい合って配置
されていることが好ましい。
【0026】
例えば、図1B及び1Cに示すように、複数の発光素子12が行列方向に規則的に配置
されており、そのうちの所定の領域M内において、例えば、発光素子12Tのサファイア
基板21の第1側面21aは、それに対して行方向(図1BのX方向)に隣接する発光素
子12Qのサファイア基板21の第2側面21bと向かい合って配置されている。また、
発光素子12Qのサファイア基板21の第2側面21bは、それに対して行方向に隣接す
る発光素子12Wのサファイア基板21の第1側面21aと向かい合って配置されている
。ただし、発光素子12Tと発光素子12Wとは、サファイア基板21の一対の第1側面
21aが同じ方向に傾斜するのではなく、反対の方向に傾斜している(図1C参照)。言
い換えると、行方向に隣接する発光素子12は、一対の第1側面21aのうち一方の側面
に着目すると、例えば、右回りに90°ずつ回転するように配置されている。
【0027】
同様に、発光素子12Pのサファイア基板21の第1側面21aは、それに対して列方
向に隣接する発光素子12Rのサファイア基板21の第2側面21bと向かい合って配置
されている。また、発光素子12Rサファイア基板21の第2側面21bは、それに対し
て列方向に隣接する発光素子12Sのサファイア基板の第1側面21aと向かい合って配
置されている。発光素子12Sのサファイア基板21の第1側面21aは、それに対して
列方向に隣接する発光素子12Tのサファイア基板21の第2側面21bと向かい合って
配置されている。ただし、発光素子12Pと発光素子12Sとは、サファイア基板の第1
側面21aが同じ方向に傾斜するのではなく、反対の方向に傾斜している。言い換えると
、列方向に隣接する発光素子12は、一対の第1側面21aのうち一方の側面に着目する
と、例えば、左回りに90°ずつ回転するように配置されている。
【0028】
このような配置によって、上述したような、上方から見て相対的に明るい辺及び暗い辺
を有する1つの発光素子を複数規則正しく並べる場合に表れる、発光装置の光出射面にお
ける連続する明るい又は暗いパターンを効果的に回避することができる。その結果、光出
射面における光の強度分布を均一とすることができ、輝度ムラの視認をなくすことができ
る。
特に、特定の領域内の発光素子のみでなく、配線基板11上に配置される全領域の発光
素子が上述したような配置により、より顕著に、光出射面における光の強度分布を均一と
することができ、輝度ムラの視認をなくすことが可能となる。
【0029】
なお、複数の発光素子12の配置は、図3に示すように、行方向に隣接する発光素子1
2は、第1側面21aの一方に着目すると、例えば、左回りに90°ずつ回転するように
配置され、列方向に隣接する発光素子12は、第1側面21aの一方に着目すると、例え
ば、右回りに90°ずつ回転するように配置されていてもよい。
【0030】
また、複数の発光素子12の配置は、図4に示すように、行方向に隣接する発光素子1
2は、一対の第1側面21aのうち一方の側面に着目すると、例えば、右回りに45°ず
つ回転するように配置され、列方向に隣接する発光素子12は、一対の第1側面21aの
うち一方の側面に着目すると、例えば、左回りに45°ずつ回転するように配置されてい
てもよい。同様に列方向が右回り、行方向が左回りでもよい。
【0031】
さらに、複数の発光素子12の配置は、図5に示すように、行方向に隣接する発光素子
12は、一対の第1側面21aのうち一方の側面に着目すると、例えば、右回りに45°
ずつ回転するように配置され、列方向に隣接する発光素子12は、一対の第1側面21a
のうち一方の側面に着目すると、例えば、左回り又は右回りに180°ずつ回転するよう
に配置されていてもよい。この場合、行方向にのみ、隣接する発光素子の第1側面21a
と第2側面21bとが向かい合って配置される。
【0032】
図4及び5には図示しないが、このような発光素子12の配列に応じて、配線基板11
における配線11aを配線基板の上面、内部及び/又は下面において任意に配置すればよ
い。
また、45°、90°、180°等の発光素子の回転に限らず、任意の角度で回転させ
て規則的に又はランダムに配置してもよい。
【0033】
これらの配置によっても、連続する明るい又は暗いパターンを効果的に回避することが
でき、光出射面における光の強度分布を均一とすることができ、輝度ムラの視認をなくす
ことができる。
【0034】
(アンダーフィル材料15)
配線基板11の上面に実装された発光素子12は、その周辺及び/又は発光素子12と
配線基板11との間に、アンダーフィル材料15が形成されていることが好ましい。アン
ダーフィル材料15は、熱膨張率を発光素子に近づけることと、発光素子12からの光が
配線基板11で散乱反射することを防止すること、発光素子12からの光を配線基板11
とは反対側に効率的に取り出すことを目的として、フィラー、色素、光反射材等が含有さ
れていてもよい。
アンダーフィル材料15は、発光素子からの光による劣化が少ない材料であればよい。
例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタ
ン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる
。フィラー及び色素としては、発光波長の光を吸収するものであれば光がより反射されに
くくなり、光の散乱を防ぐことができる。また、光による劣化を防ぐため、光吸収材料に
は無機化合物を用いるのが好ましい。
【0035】
(封止部材16)
配線基板11の上面に実装された発光素子12は、封止部材16によって封止されてい
ることが好ましい。
封止部材16は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はそれらを混合させた樹脂
、ガラスなどの透光性材料を用いて形成することができる。なかでも、耐光性及び成形の
しやすさを考慮して、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0036】
封止部材16の形状は、ドーム型又は椀型等でもよいし、これらの形状において、発光
素子12の中心部分が凹んだ形状としてもよい。いわゆるバットウイング配向特性を有す
るレンズの形状としてもよい。また、その配線基板11上における形状は円形であっても
よいし、六角形又は八角形等であってもよい。
封止部材16は、発光素子12を被覆するように圧縮成型、射出成型等によって形成す
ることができる。また、封止部材16の材料の粘度を最適化して、発光素子12の上に滴
下又は描画するなどして、材料自体の表面張力によって、形状を制御することもできる。
【0037】
(光拡散部材14)
複数の発光素子12の上方には、光拡散部材14が配置されている。光拡散部材14は
、例えば、複数の発光素子12群ごとに複数配置されてもよいし、発光装置を構成する全
ての発光素子12の上方に1つのみ配置されていてもよい。光拡散部材14は、発光素子
12の上面と略平行に配置することが好ましい。このような光拡散部材により、複数の発
光素子12から出射された光を、より拡散させながら透過させ、輝度ムラを低減すること
ができる。
特に、上述した第1側面21aを有するサファイア基板を備えた発光素子12を用いた
場合には、光拡散部材14を用いると、発光素子を上方から見て相対的に明るい辺と暗い
辺とのコントラストが強調される傾向があるが、この実施形態では、行列状の発光素子の
配置を、隣接する発光素子において、第1側面21aと第2側面21bとが向かい合うよ
うに配置されることにより、発光装置の光出射面における連続する明るい又は暗いパター
ンを均一として、効果的に回避することができる。
光拡散部材14は、例えば、ポリカーボネイト樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂
、ポリエチレン樹脂等、可視光に対して光吸収の少ない材料であればよい。光を拡散させ
る方法としては、光拡散部材14中に屈折率の異なる材料を含有させる方法、表面の形状
を加工して光を散乱させる方法等を採用することができる。
【0038】
この実施形態における発光装置では、発光素子12から出射される光に対して、光拡散
部材14の前又は後に、波長変換部材が配置されていてもよい。波長変換部材は、例えば
、公知の蛍光体の何れかが含有された透光性の樹脂によって形成されたものでもよいし、
蛍光体が焼結されたもの等でもよい。
【0039】
このように、サファイア基板21の下面21cに対して傾斜した一対の第1側面21a
と、垂直な一対の第2側面21bとを有する発光素子を、光反射性を有する基板上に行列
方向に配置し、反射膜13及び光拡散部材14とを組み合わせて用いた場合においても、
一般に、強調される連続する明るい又は暗いパターンを、発光素子の行列方向の配置を変
更するという簡便な方法によって、効果的に回避することができる。その結果、光出射面
における光の強度分布を均一とすることができ、輝度ムラの視認をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の発光装置は、各種表示装置、照明器具、ディスプレイ、液晶ディスプレイのバ
ックライト光源、さらには、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ
装置、レーザディスプレイ、内視鏡、車載用ヘッドライト、バーコードスキャナ等に好適
に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 発光装置
11 配線基板
11a 配線
11b 基板
11c 被覆層
12、12P、12Q、12R、12S、12T、12W、12V 発光素子
13 光反射膜
14 光拡散部材
15 アンダーフィル材料
16 封止部材
21 サファイア基板
21a 第1側面
21b 第2側面
21c 下面
22 半導体積層体
23、24 電極
M 領域
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5