(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】含ホウ素共役ポリエン化合物及びその製造方法、並びに、共役ポリエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20231122BHJP
C07C 2/72 20060101ALI20231122BHJP
C07C 15/44 20060101ALI20231122BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20231122BHJP
C07C 69/618 20060101ALI20231122BHJP
C07F 7/08 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
C07F5/02 C
C07C2/72 CSP
C07C15/44
C07C67/343
C07C69/618
C07F7/08 S
C07F5/02 F
(21)【出願番号】P 2020548619
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036830
(87)【国際公開番号】W WO2020059824
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2018174979
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】平野 雅文
(72)【発明者】
【氏名】小峰 伸之
(72)【発明者】
【氏名】清田 小織
(72)【発明者】
【氏名】倉持 歩実
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534240(JP,A)
【文献】Chemistry - A European Journal,2018年,Vol. 24,No. 40,Pages 10044-10048,DOI: 10.1002/chem.201802084
【文献】Chemistry - A European Journal,2011年,Vol. 17,No. 49,Pages 13670-13675,DOI: 10.1002/chem.201101624
【文献】Chemical Communications,Vol.55,2019年08月,p.10527-10530
【文献】Organic Letters,2015年,Vol.17,p.948-951, Supporting Information(S1-S4)
【文献】J. Med. Chem.,2010年,Vol.53,p.7967-7978
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2017年,Vol.56,p.7525-7530
【文献】Org. Lett.,2015年,Vol.17,p.1708-1711
【文献】Nat Chem.,2014年,Vol.6, No.6,p.484-491 (pages 1-16)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
C07C 2/72
C07C 15/44
C07C 67/343
C07C 69/618
C07F 7/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、ルテニウム触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を備え、
前記第一の原料化合物が下記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(1-2-1)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(1-3-1)で表される化合物であるか、
前記第一の原料化合物が下記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(1-2-2)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(1-3-2)で表される化合物であるか、又は、
前記第一の原料化合物が下記式(2-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(2-2)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(2-3)で表される化合物である、含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【化1】
[式(1-1)中、B
1は結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基を示し、R
1は一価の基を示す。]
【化2】
[式(1-2-1)中、nは0以上の整数を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士、R
3同士、並びに、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化3】
[式(1-3-1)中、B
1、R
1、n、R
2及びR
3はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化4】
[式(1-2-2)中、n
1は0以上の整数を示し、n
2は0又は1を示し、R
2は水素原子又は一価の基を示す。n
1が1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n
1が1以上のとき、n
2は1である。R
2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化5】
[式(1-3-2)中、B
1、R
1、n
1、n
2及びR
2はそれぞれ前記と同義である。2つのB
1は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化6】
[式(2-1)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に一価の基を示す。]
【化7】
[式(2-2)中、mは0以上の整数を示し、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR
7のうち少なくとも一つは結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基である。mが1以上のとき、複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。R
6同士、R
7同士、並びに、R
6及びR
7は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化8】
[式(2-3)中、R
4、R
5、m、R
6及びR
7はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。
]
【請求項2】
前記第一の原料化合物が前記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が前記式(1-2-1)で表される化合物であり、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が前記式(1-3-1)で表される化合物である、請求項1に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(1-2-1)中の前記R
3のうち、少なくとも一つが結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基である、請求項2に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記第一の原料化合物が前記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が前記式(1-2-2)で表される化合物であり、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が前記式(1-3-2)で表される化合物である、請求項1に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項5】
前記R
1がシリル基であり、
前記含ホウ素共役ポリエン化合物における前記R
1を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備える、請求項2~4のいずれか一項に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項6】
前記第一の原料化合物が前記式(2-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が前記式(2-2)で表される化合物であり、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が前記式(2-3)で表される化合物である、請求項1に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項7】
前記R
4のHammettの置換基定数σpの値が、前記R
5のHammettの置換基定数σpの値より大きい、請求項6に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項8】
前記R
5がシリル基であり、
前記含ホウ素共役ポリエン化合物における前記R
5を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備える、請求項6又は7に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項9】
前記ルテニウム触媒が、反応系中で0価のルテニウムを形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【請求項10】
下記式(1-3-1A)、下記式(1-3-2A)又は下記式(2-3A)で表される、含ホウ素共役ポリエン化合物。
【化9】
[式(1-3-1A)中、B
1はボロノ基、ボロナト基、ジオールとボロノ基との反応により形成される基、又は、ボラート基を示し、R
11
は一価の基
(但し、メチル基を除く)を示し、nは0以上の整数を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士、R
3同士、並びに、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化10】
[式(1-3-2A)中、B
1はボロノ基、ボロナト基、ジオールとボロノ基との反応により形成される基、又は、ボラート基を示し、R
11
は一価の基
(但し、メチル基を除く)を示し、n
1は0以上の整数を示し、n
2は0又は1を示し、R
2は水素原子又は一価の基を示す。但し、n
1が1以上のとき、n
2は1である。n
1が1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのB
1は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化11】
[式(2-3A)中、R
4は一価の基を示し、R
15
は一価の基
(但し、メチル基を除く)を示し、mは0以上の整数を示し、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR
7のうち少なくとも一つはボロノ基、ボロナト基、ジオールとボロノ基との反応により形成される基、又は、ボラート基である。mが1以上のとき、複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。R
6同士、R
7同士、並びに、R
6及びR
7は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【請求項11】
前記式(1-3-1A)又は前記式(1-3-2A)で表される化合物で
ある、請求項
10に記載の含ホウ素共役ポリエン化合物。
【請求項12】
炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、金属触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を備え、
前記第一の原料化合物が下記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(1-2-2)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(1-3-2)で表される化合物である、含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【化12】
[式(1-1)中、B
1は結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基を示し、R
1は一価の基を示す。]
【化13】
[式(1-2-2)中、n
1は0以上の整数を示し、n
2は0又は1を示し、R
2は水素原子又は一価の基を示す。n
1が1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n
1が1以上のとき、n
2は1である。R
2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化14】
[式(1-3-2)中、B
1、R
1、n
1、n
2及びR
2はそれぞれ前記と同義である。2つのB
1は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【請求項13】
炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、金属触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を備え、
前記第一の原料化合物が下記式(1-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(1-2-1)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(1-3-1)で表される化合物であり、
前記含ホウ素共役ポリエン化合物におけるR
1を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備える、含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【化15】
[式(1-1)中、B
1は結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基を示し、R
1はシリル基を示す。]
【化16】
[式(1-2-1)中、nは0以上の整数を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士、R
3同士、並びに、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化17】
[式(1-3-1)中、B
1、R
1、n、R
2及びR
3はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【請求項14】
炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、ルテニウム触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を備え、
前記第一の原料化合物が下記式(2-1)で表される化合物であり、前記第二の原料化合物が下記式(2-2)で表される化合物であり、且つ、前記含ホウ素共役ポリエン化合物が下記式(2-3)で表される化合物であり、
前記含ホウ素共役ポリエン化合物におけるR
5を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備える、含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法。
【化18】
[式(2-1)中、R
4は一価の基を示し、R
5はシリル基を示す。]
【化19】
[式(2-2)中、mは0以上の整数を示し、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR
7のうち少なくとも一つは結合対象に対してホウ素原子を介して結合する含ホウ素基である。mが1以上のとき、複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。R
6同士、R
7同士、並びに、R
6及びR
7は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化20】
[式(2-3)中、R
4、R
5、m、R
6及びR
7はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ホウ素共役ポリエン化合物及びその製造方法、並びに、共役ポリエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素-炭素二重結合と単結合とが交互に繰り返される共役ポリエン骨格は、例えば抗真菌薬、ビタミン等の生理活性物質に多く見られる構造である。また、共役ポリエン骨格は、電子材料用途への適用も種々検討されている。このため、従来から、目的化合物に共役ポリエン骨格を導入する方法が検討されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、特定の保護基で保護されたハロアルケニルボロン酸を用いて、共役ポリエン骨格上にボロン酸基を有するポリエニルボロン酸を形成し、クロスカップリング反応によって当該ポリエニルボロン酸を生理活性物質の合成に利用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Journal of American Chemical Society,2008,130,p.466-468
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、共役ポリエン骨格とそれに結合する含ホウ素基とを有し、生理活性物質、電子材料物質等の合成に有用な、新規の含ホウ素共役ポリエン化合物及びその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記含ホウ素共役ポリエン化合物を用いた共役ポリエン化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法に関する。この製造方法は、炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、金属触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を備える。また、この製造方法では、上記第一の原料化合物及び上記第二の原料化合物のうち少なくとも一つは、上記三重結合又は前記共役ジ(又はポリ)エン骨格を構成する炭素原子に結合した含ホウ素基を有している。これにより、上記含ホウ素共役ポリエン化合物は、上記共役ポリエン骨格を構成する炭素原子に結合した含ホウ素基を有するものとなる。
【0007】
上記製造方法によれば、共役ポリエン骨格と、当該共役ポリエン骨格に結合した含ホウ素基と、を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を容易に得ることができる。上記含ホウ素共役ポリエン化合物によれば、含ホウ素基を起点とする反応(例えば、クロスカップリング反応)によって、共役ポリエン骨格を容易に目的化合物に導入することができる。また、上記含ホウ素共役ポリエン化合物は、含ホウ素基を有するπ共役化合物として電子材料等の用途に適用することもできる。
【0008】
一態様において、上記第一の原料化合物は、下記式(1-1)で表される化合物であってよく、上記第二の原料化合物は、下記式(1-2-1)で表される化合物であってよく、上記含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(1-3-1)で表される化合物であってよい。
【化1】
[式(1-1)中、B
1は含ホウ素基を示し、R
1は一価の基を示す。]
【化2】
[式(1-2-1)中、nは0以上の整数を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士、R
3同士、並びに、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化3】
[式(1-3-1)中、B
1、R
1、n、R
2及びR
3はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【0009】
上記態様において、上記式(1-2-1)中の上記R3のうち少なくとも一つが含ホウ素基であってよい。この場合、共役ポリエン骨格の両端に含ホウ素基を有する含ホウ素共役ポリエン化合物が得られる。この含ホウ素共役ポリエン化合物は、上述の用途以外に、クロスカップリング重合による高分子化合物の製造等に好適に利用することができる。
【0010】
他の一態様において、上記第一の原料化合物は、下記式(1-1)で表される化合物であってよく、上記第二の原料化合物は、下記式(1-2-2)で表される化合物であってよく、上記含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(1-3-2)で表される化合物であってよい。この場合、共役ポリエン骨格の両端に含ホウ素基を有する含ホウ素共役ポリエン化合物が得られる。この含ホウ素共役ポリエン化合物は、上述の用途以外に、クロスカップリング重合による高分子化合物の製造等に好適に利用することができる。
【化4】
[式(1-1)中、B
1は含ホウ素基を示し、R
1は一価の基を示す。]
【化5】
[式(1-2-2)中、n
1は0以上の整数を示し、n
2は0又は1を示し、R
2は水素原子又は一価の基を示す。n
1が1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n
1が1以上のとき、n
2は1である。R
2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化6】
[式(1-3-2)中、B
1、R
1、n
1、n
2及びR
2はそれぞれ前記と同義である。2つのB
1は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2のR
1は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【0011】
上記の各態様において、上記R1はシリル基であってよく、このとき、上記製造方法は、上記含ホウ素共役ポリエン化合物における上記R1を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備えていてよい。これにより、R1の置換位置に置換基を有しない含ホウ素共役ポリエン化合物(すなわち、R1が水素原子となった含ホウ素共役ポリエン化合物)を容易に得ることができる。
【0012】
更に他の一態様において、上記第一の原料化合物は、下記式(2-1)で表される化合物であってよく、上記第二の原料化合物は、下記式(2-2)で表される化合物であってよく、上記含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(2-3)で表される化合物であってよい。
【化7】
[式(2-1)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に一価の基を示す。]
【化8】
[式(2-2)中、mは0以上の整数を示し、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR
7のうち少なくとも一つは含ホウ素基である。mが1以上のとき、複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。R
6同士、R
7同士、並びに、R
6及びR
7は、互いに結合して環を形成していてもよい。]
【化9】
[式(2-3)中、R
4、R
5、m、R
6及びR
7はそれぞれ前記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【0013】
上記態様において、上記R4のHammettの置換基定数σpの値は、上記R5のHammettの置換基定数σpの値より大きい値であってよい。
【0014】
また、上記態様において、上記R5はシリル基であってよく、このとき、上記製造方法は、上記含ホウ素共役ポリエン化合物における上記R5を水素原子に置換して、第二の含ホウ素共役ポリエン化合物を得る工程を更に備えていてよい。これにより、R5の置換位置に置換基を有しない含ホウ素共役ポリエン化合物(すなわち、R5が水素原子となった含ホウ素共役ポリエン化合物)を容易に得ることができる。
【0015】
上記の各態様において、上記金属触媒は、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選択される少なくとも一種を含むものであってよい。
【0016】
上記の各態様において、上記金属触媒は、ルテニウム触媒であってよい。
【0017】
上記の各態様において、上記ルテニウム触媒は、反応系中で0価のルテニウムを形成していてよい。
【0018】
本発明の他の一側面は、下記式(1-3-1A)、下記式(1-3-2A)又は下記式(2-3A)で表される、含ホウ素共役ポリエン化合物に関する。
【化10】
[式(1-3-1)中、B
1は含ホウ素基を示し、R
11は水素原子又は一価の基を示し、nは0以上の整数を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR
3は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士、R
3同士、並びに、R
2及びR
3は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化11】
[式(1-3-2)中、B
1は含ホウ素基を示し、R
11は水素原子又は一価の基を示し、n
1は0以上の整数を示し、n
2は0又は1を示し、R
2は水素原子又は一価の基を示す。但し、n
1が1以上のとき、n
2は1である。n
1が1以上のとき、複数のR
2は互いに同一でも異なっていてもよい。R
2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。また、2つのB
1は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【化12】
[式(2-3)中、R
4は一価の基を示し、R
15は水素原子又は一価の基を示し、mは0以上の整数を示し、R
6及びR
7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR
7のうち少なくとも一つは含ホウ素基である。mが1以上のとき、複数のR
6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR
7は互いに同一でも異なっていてもよい。R
6同士、R
7同士、並びに、R
6及びR
7は、互いに結合して環を形成していてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。]
【0019】
本発明の更に他の一側面は、上記含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法によって、上記含ホウ素共役ポリエン化合物を含有する反応液を得る第一工程と、上記反応液に、カップリング反応触媒と、上記含ホウ素基とのカップリング反応が可能な反応性基を有する第三の原料化合物と、を添加してカップリング反応を行う第二工程と、を備える、共役ポリエン化合物の製造方法に関する。
【0020】
一態様において、上記反応性基はハロゲノ基であってよい。
【0021】
一態様において、上記第一工程は、上記金属触媒の存在下での反応の反応系中に、上記含ホウ素共役ポリエン化合物を生成させる工程であってよく、上記第二工程は、上記反応系中に、上記カップリング反応触媒と上記第三の原料化合物とを添加する工程であってよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、共役ポリエン骨格とそれに結合する含ホウ素基とを有し、生理活性物質、電子材料物質等の合成に有用な、新規の含ホウ素共役ポリエン化合物及びその製造方法が提供される。また、本発明によれば、上記含ホウ素共役ポリエン化合物を用いた共役ポリエン化合物の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0024】
<含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法>
本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法は、炭素-炭素三重結合を有する第一の原料化合物と、1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基を有し、当該基中の2つの炭素-炭素二重結合を含む共役ジ(又はポリ)エン骨格を有する第二の原料化合物とを、金属触媒の存在下で反応させて、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得るポリエン形成工程を備える。ここで、第一の原料化合物及び第二の原料化合物のうち少なくとも一つは、三重結合又は共役ジ(又はポリ)エン骨格を構成する炭素原子に結合した含ホウ素基を有しており、これにより、含ホウ素共役ポリエン化合物は、共役ポリエン骨格を構成する炭素原子に結合した含ホウ素基を有するものとなる。
【0025】
本実施形態に係る製造方法によれば、共役ポリエン骨格と、当該共役ポリエン骨格に結合した含ホウ素基と、を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を容易に得ることができる。このような含ホウ素共役ポリエン化合物によれば、含ホウ素基を起点とする反応(例えば、クロスカップリング反応)によって、共役ポリエン骨格を容易に目的化合物に導入することができる。また、含ホウ素共役ポリエン化合物は、含ホウ素基を有するπ共役化合物として電子材料等の用途に適用することもできる。
【0026】
本明細書中、含ホウ素基は、ホウ素化合物におけるホウ素原子上の官能基を1つ除去した残りの原子団であってよい。すなわち、含ホウ素基は、結合対象に対して、ホウ素原子を介して結合する一価の基であってよい。
【0027】
含ホウ素基は特に限定されず、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応が進行する範囲で適宜選択できる。含ホウ素基としては、例えば、ボリル基、ボロノ基、ボラート基、及び、これらの誘導体基が挙げられる。
【0028】
ボリル基は、-BH2で表される基を示す。ボリル基の誘導体基としては、例えば、ジオルガノボリル基が挙げられる。
【0029】
ジオルガノボリル基は、例えば、-B(R21)2で表される基であってよい。R21は一価の基を示す。2つのR21は同一でも異なっていてもよく、互いに連結してホウ素原子と共に環を形成していてもよい。R21は、例えば、一価の有機基であってよく、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。
【0030】
R21におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。R21におけるアルキル基の炭素数は特に限定されず、例えば1~8であってよい。
【0031】
R21におけるアリール基は、芳香族化合物から芳香環上の水素原子を一つ除去した残りの原子団を示す。芳香族化合物が有する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよく、複素環であってもよい。芳香族化合物としては、例えば、ベンゼン、ナフタレン、フラン、ピロール、チオフェン、ピリジン等が挙げられる。
【0032】
R21におけるアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基は、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応が進行する範囲であれば特に限定されない。当該置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、ホルミル基、ヒドロキシカルボニル基、エステル基、アミノ基、チオール基等が挙げられる。
【0033】
ジオルガノボリル基の具体例としては、例えば、ジフェニルボリル基、ジシクロへキシル基、ビシクロ[3.3.1]ノナン-1,5-ジイル基、ジシアミル基等が挙げられる。
【0034】
ボロノ基は、-B(OH)2で表される基を示す。ボロノ基の誘導体基としては、例えば、例えば、ボロナト基、保護されたボロノ基等が挙げられる。
【0035】
ボロナト基は、例えば、-B(OR22)2で表される基であってよい。R22は一価の基を示す。2つのR22は同一でも異なっていてもよく、互いに連結してホウ素原子及び酸素原子と共に環を形成していてもよい。R22は、例えば、一価の有機基であってよく、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。R22におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基としては、R21におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基と同じものが例示できる。
【0036】
ボロナト基の具体例としては、例えば、ジイソプロピルボロナト基、ジtert-ブチルボロナト基等が挙げられる。
【0037】
保護されたボロノ基は特に限定されず、例えば、ボロノ基の保護として公知の方法により保護された基であってよい。
【0038】
保護されたボロノ基としては、例えば、ジオール、ジアミン、ジカルボン酸等の2官能化合物とボロノ基との反応により形成される基が挙げられる。ジオールとしては、例えば、ピナコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、ピナンジオール、1、2―ジシクロへキシルジオール等が挙げられる。ジアミンとしては、例えば、1,8-ジアミノナフタレン等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、N-メチルイミノ二酢酸等が挙げられる。
【0039】
また、保護されたボロノ基としては、トリオールボラート基等のボラート基も例示できる。トリオールボラート基は、トリオールとボロノ基との反応により形成される。トリオールとしては、例えば、トリメチロールエタン(1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)エタン)等が挙げられる。ボラート基の対カチオンは特に限定されず、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、オルガノホスフォニウムイオン(PR4
+)等であってよい。
【0040】
ボラート基としては、上述のトリオールボラート基に加え、トリフルオロボラート基(-BF3
-)等が例示できる。ボラート基の対カチオンは特に限定されず、例えば、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、オルガノホスフォニウムイオン(PR4
+)等であってよい。
【0041】
金属触媒は、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応によって含ホウ素共役ポリエン化合物を形成できる触媒、すなわち、炭素-炭素三重結合と1,3-ブタジエン-4,4-ジイル基との反応によって共役トリエン骨格を形成できる触媒であればよい。
【0042】
金属触媒としては、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)及びニッケル(Ni)からなる群より選択される少なくとも一種を含む触媒が好ましく、ルテニウム触媒がより好ましい。
【0043】
ルテニウム触媒は、後述する反応機構によって第一の原料化合物と第二の原料化合物とを効率良く反応させることができる観点から、反応系中で0価のルテニウム(Ru(0))を形成可能な触媒であることが好ましい。すなわち、上記ポリエン形成工程は、第一の原料化合物と第二の原料化合物とをRu(0)の存在下で反応させる工程であってよい。
【0044】
ポリエン形成工程の反応機構の一例について以下に説明する。なお、以下の例では、第一の原料化合物として後述の式(1-1)で表される化合物、第二の原料化合物としてブタジエン、金属触媒として[(ナフタレン)(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(0)]を用いて反応機構を説明しているが、本発明はこれらに限定されない。また、ポリエン形成工程の反応機構は、以下の例に限定されない。
【0045】
【0046】
上記反応機構では、まず、ルテニウム錯体からナフタレンが解離し、第一の原料化合物及び第二の原料化合物がそれぞれルテニウム(0)上に配位する(上記A)。次いで、酸化的カップリング反応によって上記Bが形成され、βヒドリド脱離により上記Cが形成される。更に、還元的脱離によって、ルテニウム上に共役トリエンが配位した上記Dが形成される。上記の例では、ブタジエンが反応点を2つ有しているため、同様の機構でもう1分子の第一の原料化合物が反応して、共役テトラエンが配位した上記Eが形成される。最後に、共役テトラエンがルテニウム上から解離することで、含ホウ素共役ポリエン化合物が得られる。なお、第二の原料化合物が、反応点を1つしか有しない場合は、上記Dの段階でルテニウム上から含ホウ素共役ポリエン化合物が解離する。
【0047】
反応系中でRu(0)を形成可能な触媒としては、例えば、Ru(0)を有する0価ルテニウム錯体、Ru(II)を有する2価ルテニウム錯体等が挙げられる。
【0048】
0価ルテニウム錯体としては、例えば、[(ナフタレン)(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(0)]、[(ブタジエン)(1,5―シクロオクタジエン)(アセトニトリル)ルテニウム(0)]等が挙げられる。
【0049】
2価ルテニウム錯体としては、例えば、[ビス(アセチルアセトナト)(1,5-シクロオクタジエン)ルテニウム(II)]、[テトラクロロジ(アニソール)二ルテニウム]等が挙げられる。2価ルテニウム錯体は、反応系中で還元されてRu(0)を形成してよい。2価ルテニウム錯体は、反応基質(第一の原料化合物及び/又は第二の原料化合物)との反応によって還元されてよく、ルテニウム錯体同士の反応によって還元されてよく、別途添加された還元剤との反応によって還元されてもよい。還元剤としては、例えば、ブチルリチウム、水素化アルミニウムリチウム、ナトリウムナフタレン、炭酸ナトリウムとイソプロピルアルコールの組み合わせ等が挙げられる。
【0050】
なお、ルテニウム触媒の種類は上記のものに限定されず、メタラサイクルを形成可能な触媒であればよい。例えば、ルテニウム触媒は、メタラサイクル形成時に4価のルテニウム(Ru(IV))を形成する触媒であってもよい。すなわち、ルテニウム触媒は、反応系中で4価のルテニウム(Ru(IV))を含むメタラサイクルを形成可能な触媒であってもよい。
【0051】
また、金属属触媒としては、ロジウム触媒、コバルト触媒、ニッケル触媒等を使用することもできる。
【0052】
ロジウム触媒としては、反応系中で1価のロジウム(Rh(I))を形成可能な触媒が好ましい。このような触媒としては、例えば、Rh(I)を有する1価ロジウム錯体、Rh(III)を有する3価ロジウム錯体等が挙げられる。3価ロジウム錯体は、還元剤と併用されてよい。還元剤としては、上記と同様のものが例示できる。
【0053】
コバルト触媒としては、反応系中で1価のコバルト(Co(I))又は0価のコバルト(Co(0))を形成可能な触媒が好ましい。このような触媒としては、例えば、Co(II)を有する2価コバルト錯体等が挙げられる。2価コバルト錯体は、還元剤と併用されてよい。還元剤としては、上記と同様のものが例示できる。
【0054】
ニッケル触媒としては、反応系中で0価のニッケル(Ni(0))を形成可能な触媒が好ましい。このような触媒としては、例えば、Ni(0)を有する0価ニッケル錯体、Ni(II)を有する2価ニッケル錯体等が挙げられる。2価ニッケル錯体は、還元剤と併用されてよい。還元剤としては、上記と同様のものが例示できる。また、還元剤としては、亜鉛等も好適に用いることができる。
【0055】
金属触媒の量は特に限定されず、第一の原料化合物に対して、例えば0.1mol%以上であってよく、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上である。また、金属触媒の量は、第一の原料化合物に対して、例えば30mol%以下であってよく、好ましくは20mol%以下、より好ましくは15mol%以下である。
【0056】
ポリエン形成工程において、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応は、無溶媒で行ってよく、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒の種類は特に限定されず、第一の原料化合物及び第二の原料化合物を溶解可能な溶媒であればよい。有機溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応を阻害し難い観点からはテトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン等が好ましい。
【0057】
有機溶媒の量は特に限定されず、第一の原料化合物及び第二の原料化合物の合計100質量部に対して、例えば100質量部以上であってよく、好ましくは1000質量部以上であり、例えば100000質量部以下であってよく、好ましくは10000質量部以下である。
【0058】
ポリエン形成工程において、反応温度は特に限定されず、例えば0~100℃であってよく、室温であってもよい。また、反応時間は特に限定されず、反応基質及び触媒の種類、所望の収量等に応じて適宜調整してよい。反応時間は、例えば0.1~72時間であってよく、好ましくは1~24時間である。
【0059】
以下、本実施形態に係る製造方法の好適な態様について説明する。
【0060】
(第一の態様)
第一の態様において、第一の原料化合物は、下記式(1-1)で表される化合物(以下、化合物(1-1)ともいう。)であり、第二の原料化合物は、下記式(1-2-1)で表される化合物(以下、化合物(1-2-1)ともいう。)である。第一の態様では、このような第一の原料化合物及び第二の原料化合物を用いることで、下記式(1-3-1)で表される化合物(以下、化合物(1-3-1)ともいう。)を得ることができる。
【0061】
【0062】
式(1-1)中、B1は含ホウ素基を示し、R1は一価の基を示す。
【0063】
式(1-2-1)中、nは0以上の整数を示し、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。nが1以上のとき、複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。また、複数のR3は互いに同一でも異なっていてもよい。R2同士、R3同士、並びに、R2及びR3は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0064】
式(1-3-1)中、B1、R1、n、R2及びR3はそれぞれ上記と同義である。なお、式中の波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。すなわち、式(1-3-1)で表される化合物は、下記式(1-3-1a)で表される化合物、下記式(1-3-1b)で表される化合物、又は、これらの混合物であってよい。第一の態様では、下記の化合物のうち、式(1-3-1a)で表される化合物が多く得られる傾向がある。
【0065】
【0066】
R1における一価の基は特に限定されず、化合物(1-1)と化合物(1-2-1)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R1における一価の基は、例えば、一価の有機基であってよい。
【0067】
R1は、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、含ホウ素基、シリル基等であってよい。
【0068】
R1におけるアルキル基は、直鎖状、分岐状及び環状のいずれであってもよい。R1におけるアルキル基の炭素数は特に限定されず、例えば1~8であってよい。
【0069】
R1におけるアリール基は、芳香族化合物から芳香環上の水素原子を一つ除去した残りの原子団を示す。芳香族化合物が有する芳香環は、単環であっても縮合環であってもよく、複素環であってもよい。芳香族化合物としては、ベンゼン、ナフタレン、チオフェン等が挙げられる。
【0070】
R1におけるアルキル基及びアリール基が有していてもよい置換基は、第一の原料化合物と第二の原料化合物との反応が進行する範囲であれば特に限定されない。当該置換基としては、例えば、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシル基、ホルミル基、カルボニル基、アミノ基、ハロゲノ基等が挙げられる。
【0071】
R1におけるシリル基は、-Si(R31)3で表される基であってよい。R31は、一価の基を示す。3つのR31は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに連結してケイ素原子と共に環を形成していてもよい。R31は、例えば、一価の有機基であってよく、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってもよい。R31におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基としては、上述のR21におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基と同じものが例示できる。
【0072】
R1が含ホウ素基である場合、共役ポリエン骨格を構成する炭素原子に結合する含ホウ素基を複数有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得ることができる。
【0073】
第一の態様において、R1が水素原子であると、化合物(1-1)と化合物(1-2-1)との反応が進行し難い。一方、R1がシリル基である場合、化合物(1-1)と化合物(1-2-1)との反応性は良好であり、位置選択的に化合物(1-3-1)が得られる。そして、脱シリル化反応によって、化合物(1-3-1)中のR1が水素原子に置換された含ホウ素共役ポリエン化合物を得ることができる。なお、このとき、R2が水素原子であると、側鎖に置換基を有しない共役ポリエン骨格を形成することができる。
【0074】
脱シリル化反応は特に限定されず、公知の方法を適用してよい。例えば、脱シリル化反応は、フッ化テトラn-ブチルアンモニム(TBAF)を反応剤として用いて行うことができる。なお、反応が進行し難い場合は、触媒量のヨウ化銅(I)を添加してもよい。
【0075】
R1は、Hammettの置換基定数σpの値が、B1のHammettの置換基定数σpの値より小さい基であってよい。第一の態様では、置換基定数σpの値がより大きい置換基(B1)が、共役ポリエン骨格の末端に位置するように反応が進行しやすい傾向がある。
【0076】
nは0以上の整数であり、その上限は特に限定されない。nは、例えば0~8であってよく、好ましくは0~2である。
【0077】
R2における一価の基は、特に限定されず、化合物(1-1)と化合物(1-2-1)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R2における一価の基は、例えば、一価の有機基又はハロゲノ基であってよい。
【0078】
R2は、例えば、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アリール基、-C(=O)R41で表される基、-C(=O)OR42で表される基、含ホウ素基、シリル基等であってよく、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0079】
R2におけるハロゲノ基は、フルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)、ブロモ基(-Br)又はヨード基(-I)であってよく、好ましくはフルオロ基(-F)、クロロ基(-Cl)又はブロモ基(-Br)である。
【0080】
R2におけるアルキル基、アリール基は、及び、これらが有していてよい置換基としては、上述のR21におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基と同じものが例示できる。
【0081】
R41は水素原子又は一価の基を示す。R41は、例えば、水素原子又は一価の有機基であってよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってよい。
【0082】
R42は水素原子又は一価の基を示す。R42は、例えば、水素原子又は一価の有機基であってよく、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってよく、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基であってよい。
【0083】
R41及びR42おけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基としては、上述のR21におけるアルキル基、アリール基及びこれらが有していてよい置換基と同じものが例示できる。
【0084】
R3における一価の基は、特に限定されず、化合物(1-1)と化合物(1-2-1)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R3における一価の基は、例えば、一価の有機基又はハロゲノ基であってよい。
【0085】
R3は、例えば、水素原子、ハロゲノ基、アルキル基、アリール基、-C(=O)R41で表される基、-C(=O)OR42で表される基、含ホウ素基、シリル基等であってよく、これらの基は置換基を有していてもよい。R3における各基としては、上述のR2における各基と同じものが例示できる。
【0086】
R2及びR3のうち少なくとも一つが含ホウ素基である場合、共役ポリエン骨格を構成する炭素原子に結合する含ホウ素基を複数有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得ることができる。
【0087】
R3のうち少なくとも一つが含ホウ素基である場合、共役ポリエン骨格の両端に含ホウ素基を有する含ホウ素共役ポリエン化合物を得ることができる。このような含ホウ素共役ポリエン化合物は、クロスカップリング重合による高分子化合物の製造等に好適に利用することができる。
【0088】
(第二の態様)
第二の態様において、第一の原料化合物は、式(1-1)で表される化合物(化合物(1-1))であり、第二の原料化合物は、下記式(1-2-2)で表される化合物(以下、化合物(1-2-2)ともいう。)である。第二の態様では、化合物(1-2-2)が、化合物(1-1)との反応点を2箇所有している。このため、第二の態様では、化合物(1-1)由来の含ホウ素基を少なくとも2つ有する、下記式(1-3-2)で表される化合物(以下、化合物(1-3-2)ともいう。)を得ることができる。
【0089】
【0090】
式(1-1)中、B1は含ホウ素基を示し、R1は一価の基を示す。
【0091】
式(1-2-2)中、n1は0以上の整数を示し、n2は0又は1を示し、R2は水素原子又は一価の基を示す。n1が1以上のとき、複数のR2は互いに同一でも異なっていてもよい。但し、n1が1以上のとき、n2は1である。R2同士は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0092】
式(1-3-2)中、B1、R1、n1、n2及びR2はそれぞれ上記と同義である。2つのB1は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2のR1は互いに同一でも異なっていてもよい。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。すなわち、式(1-3-2)で表される化合物は、下記式(1-3-2a)で表される化合物、下記式(1-3-2b)で表される化合物、下記式(1-3-2c)で表される化合物、下記式(1-3-2d)で表される化合物、又は、これらの混合物であってよい。第二の態様では、下記の化合物のうち、式(1-3-2a)で表される化合物が最も多く得られる傾向がある。
【0093】
【0094】
式(1-1)中のR1は、第一の態様における式(1-1)中のR1と同様であってよい。
【0095】
式(1-2-2)中のR2は、第一の態様における式(1-2-1)中のR2と同様であってよい。
【0096】
n1は0以上の整数であり、その上限は特に限定されない。n1は、例えば0~8であってよく、好ましくは0~1である。
【0097】
n1が0のとき、n2は0又は1であり、nが1以上のとき、n2は1である。
【0098】
(第三の態様)
第三の態様において、第一の原料化合物は、下記式(2-1)で表される化合物であり、第二の原料化合物は、下記式(2-2)で表される化合物である。第三の態様では、このような第一の原料化合物及び第二の原料化合物を用いることで、下記式(2-3)で表される化合物(以下、化合物(2-3)ともいう。)を得ることができる。
【0099】
【0100】
式(2-1)中、R4及びR5はそれぞれ独立に一価の基を示す。
【0101】
式(2-2)中、mは0以上の整数を示し、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又は一価の基を示す。但し、2つのR7のうち少なくとも一つは含ホウ素基である。mが1以上のとき、複数のR6は互いに同一でも異なっていてもよい。また、2つのR7は互いに同一でも異なっていてもよい。R6同士、R7同士、並びに、R6及びR7は、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0102】
式(2-3)中、R4、R5、m、R6及びR7はそれぞれ上記と同義である。なお、波線は、波線に結合する二重結合がシス及びトランスのいずれであってもよいことを示す。すなわち、式(2-3)で表される化合物は、下記式(2-3a)で表される化合物、下記式(2-3b)で表される化合物、又は、これらの混合物であってよい。第三の態様では、下記の化合物のうち、式(2-3a)で表される化合物が多く得られる傾向がある。
【0103】
【0104】
R4及びR5における一価の基は特に限定されず、化合物(2-1)と化合物(2-2)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R4及びR5における一価の基としては、上述のR1と同じ基が例示できる。
【0105】
第三の態様において、R4のHammettの置換基定数σpの値は、R5のHammettの置換基定数σpの値より大きい。第3の態様では、置換基定数σpの値がより大きい置換基(R4)が、共役ポリエン骨格の末端に位置するように反応が進行しやすい傾向がある。
【0106】
mは0以上の整数であり、その上限は特に限定されない。mは、例えば0~8であってよく、好ましくは0~2である。
【0107】
R6における一価の基は、特に限定されず、化合物(2-1)と化合物(2-2)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R6としては、上述のR2と同じ基が例示できる。
【0108】
R7における一価の基は、特に限定されず、化合物(2-1)と化合物(2-2)との反応が進行する範囲で適宜選択できる。R7としては、上述のR3と同じ基が例示できる。但し、2つのR7のうち少なくとも一つは含ホウ素基である。
【0109】
<含ホウ素共役ポリエン化合物>
本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、上述の製造方法により製造される化合物であり、3つ以上の炭素-炭素二重結合を含む共役ポリエン骨格と、当該共役ポリエン骨格を構成する炭素原子に結合した含ホウ素基と、を有する。
【0110】
本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物の好適な態様について以下に説明する。
【0111】
(第一の態様)
第一の態様に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(1-3-1A)で表される化合物である。
【0112】
【0113】
式(1-3-1A)中、B1、n、R2及びR3は、上述の式(1-3-1)におけるB1、n、R2及びR3と同義である。また、R11は、水素原子又は一価の基を示し、R11における一価の基としては、上述のR1と同じ基が例示できる。
【0114】
R11が水素原子である化合物は、例えば、R1がシリル基である化合物(1-1)と化合物(1-2-1)とを反応させた後、R1のシリル基を脱シリル化反応によって水素原子に置換することで製造することができる。
【0115】
(第二の態様)
第二の態様に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(1-3-2A)で表される化合物である。
【0116】
【0117】
式(1-3-2A)中、B1、n1、n2及びR2は、上述の式(1-3-2)におけるB1、n1、n2及びR2と同義である。また、R11は、水素原子又は一価の基を示し、R11における一価の基としては、上述のR1と同じ基が例示できる。
【0118】
R11が水素原子である化合物は、例えば、R1がシリル基である化合物(1-1)と化合物(1-2-2)とを反応させた後、R1のシリル基を脱シリル化反応によって水素原子に置換することで製造することができる。
【0119】
(第三の態様)
第三の態様に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、下記式(2-3A)で表される化合物である。
【0120】
【0121】
式(2-3A)中、R4、m、R6及びR7は、上述の式(2-3)におけるR4、m、R6及びR7と同義である。また、R15は、水素原子又は一価の基を示し、R15における一価の基としては、上述のR5と同じ基が例示できる。
【0122】
R15が水素原子である化合物は、例えば、R5がシリル基である化合物(2-1)と化合物(2-2)とを反応させた後、R5のシリル基を脱シリル化反応によって水素原子に置換することで製造することができる。
【0123】
本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、共役ポリエン骨格と、当該共役ポリエン骨格に結合した含ホウ素基と、を有している。このため、本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物によれば、含ホウ素基を起点とする反応(例えば、クロスカップリング反応)によって、共役ポリエン骨格を容易に目的化合物に導入することができる。この用途において、含ホウ素基は、ボロノ基又はその誘導体基が好ましい。
【0124】
また、本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、含ホウ素基を有するπ共役化合物として電子材料等の用途に適用することもできる。この用途において、含ホウ素基は、ボリル基又はその誘導体基が好ましい。
【0125】
また、本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物は、含ホウ素基を2つ以上有することができ、この場合は、クロスカップリング重合(例えば、ジハロゲン化芳香族化合物との重合)による高分子化合物の製造等に好適に利用することができる。この用途において、含ホウ素基は、ボロノ基又はその誘導体基が好ましい。
【0126】
以上、本実施形態に係る含ホウ素共役ポリエン化合物及びその製造方法について記載したが、本発明はこれらに限定されない。
【0127】
例えば、本発明の一側面は、上述の含ホウ素共役ポリエン化合物を用いた、共役ポリエン化合物の製造方法に関する。
【0128】
一実施形態に係る共役ポリエンの製造方法は、上述の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法によって、含ホウ素共役ポリエン化合物を含有する反応液を得る第一工程と、上記反応液に、カップリング反応触媒と、上記含ホウ素基とのカップリング反応が可能な反応性基を有する第三の原料化合物と、を添加してカップリング反応を行う第二工程と、を備える。
【0129】
第一工程は、例えば、第一の原料化合物及び第二の原料化合物の金属触媒存在下での反応によって、反応系中に、上記含ホウ素共役ポリエン化合物を生成させる工程であってよい。そして、第二工程は、当該反応系中に、カップリング反応触媒と第三の原料化合物とを添加する工程であってよい。このようなワンポット反応によれば、目的の共役ポリエン化合物を効率良く製造することができる。
【0130】
このように、上述の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法では、反応後の反応系中から含ホウ素共役ポリエン化合物を回収することなく、ワンポットで続くカップリング反応を実施することができる。この点は、上述の含ホウ素共役ポリエン化合物の製造方法の大きな利点と言える。
【0131】
カップリング反応触媒は特に限定されず、公知のカップリング反応触媒から適宜選択して使用することができる。カップリング反応触媒の具体例としては、例えば、[Pd(PPh3)4]等の鈴木-宮浦カップリング反応に使用される公知の触媒(例えば、パラジウム触媒、ニッケル触媒、鉄錯体触媒等)、固定化触媒(例えば、固定化パラジウム触媒、固定化ニッケル触媒、固定化鉄触媒等)、金属微粒子触媒(例えば、パラジウム微粒子触媒、ニッケル微粒子触媒、鉄微粒子触媒等)などが挙げられる。
【0132】
第三の原料化合物が有する反応性基は、含ホウ素基とのカップリング反応可能な官能基であれば特に制限されないが、基質の選択性及び反応性に優れる観点からは、ハロゲノ基であることが好ましい。
【0133】
カップリング反応の反応条件は特に限定されず、公知のカップリング反応の反応条件から適宜選択できる。
【実施例】
【0134】
(実施例1-1)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-1)の合成を行った。
【化34】
【0135】
具体的には、1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピル(20.3μL,0.0884mmol)及び(E)-2,4-ペンタジエン酸メチル(10.3μL,0.0881mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、[Ru(naphthalene)(cod)](2.99mg,0.00886mmol)を更に加えた。室温で反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-1)が、反応時間4時間において収率54%で生成し、24時間後には収率89%で生成していた。なお、含ホウ素共役ポリエン化合物の生成は、1H-NMR測定により確認した。測定結果は以下のとおりであった。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.98(t,J=7.4 Hz,3H),1.13(d,J=6.2 Hz,12H),1.55(sext,J=7.7 Hz,2H),2.59(t,J=7.7 Hz,2H),3.45(s,3H),4.43(sept,J=6.2 Hz,2H),5.54(s,1H),5.91(d,J=15.6 Hz,1H),6.28(d,J=15.1 Hz,1H),6.29(dd,J=15.1,11.0 Hz,1H),7.52(dd,J=15.6,11.0 Hz,1H).
【0136】
(実施例1-2)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-1)の合成を行った。
【化35】
【0137】
具体的には、1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピル(20.5μL,0.0894mmol)及び(E)-2,4-ペンタジエン酸メチル(10.4μL,0.0895mmol)を塩化メチレン-d2(0.6mL)に溶解し、[Ru(naphthalene)(cod)](2.94mg,0.00873mmol)を更に加えた。室温で反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-1)が、反応時間7時間において収率50%で生成した。
【0138】
(実施例2)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化36】
【0139】
具体的には、1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピル(20.5μL,0.0895mmol)及び1,3-ペンタジエン(9.0μL,0.089mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、[Ru(naphthalene)(cod)](6.07mg,0.00180mmol)を更に加えた。70℃において1時間反応を行ったところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-2)が収率27%で得られた。なお、同様の反応を室温で行ったところ、28時間後に収率36%で目的物が得られた。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.94(d,J=6.0 Hz,3H),1.15(t,J=6.4 Hz,3H),1.17(d,J=6.2 Hz,12H),1.55(m,2H),2.80(t,J=7.7 Hz,2H),4.45(sept,J=6.0 Hz,2H),5.58(s,1H),5.60(dqd,J=15.8,6.0,4.4 Hz,1H),5.99(dd,J=15.2,10.4 Hz,1H),6.28(d,J=14.7 Hz,1H),6.48(ddd,J=14.7,10.6,4.4 Hz,1H).
【0140】
(実施例3)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化37】
【0141】
具体的には、3-ヘキシン(6.5μL,0.057mmol)と2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(11.5μL,0.0575mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、ここに[Ru(naphthalene)(cod)](1.93mg,0.00572mmol)を更に加えた。室温で25分後には、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-3)が収率89%で生成した。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.81(t,J=7.4 Hz,3H),0.89(t,J=7.4 Hz,3H),1.11(s,12H),1.90(quint,J=7.4 Hz,2H),2.06(q,J=7.4 Hz,2H),5.28(t,J=7.4 Hz,1H),5.93(d,J=17.8 Hz,1H),6.24(d,J=15.5 Hz,1H),6.35(dd,J=15.5,9.8 Hz,1H),7.53(dd,J=17.5,9.7 Hz,1H).
13C{1H} NMR(100MHz,[D6]benzene,r.t.):δ 13.84(s),14.14(s),21.69(s),19.94(s),24.92(s),82.99(s),120(br),127-128(obscured by overlapping with C6D6),126.01(s),137.01(s),140.64(s),151.49(s).
HRMS(APCI):m/z calcd for C16H28BO2+H+:263.2180[M+H]+;found:263.2177.
【0142】
(実施例4)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化38】
【0143】
具体的には、ジフェニルアセチレン(32.09mg,0.180mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、ここに2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(36.0μL,0.180mmol)を加え、次いで[Ru(naphthalene)(cod)](6.07mg,0.0180mmol)を更に加えた。室温で5分後には反応が完了し、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-4)が収率63%で得られた。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 1.07(s,12H),5.65(d,J=17.2 Hz,1H),6.16(dd,J=14.9,10.9 Hz,1H),6.47(s,1H),6.61(d,J=14.9 Hz,1H),7.00-7.02(m,5H),7.04-7.10(m,5H)7.50(dd,J=17,10 Hz,1H,partly obscured by overlap).
13C{1H}NMR(100MHz,C6D6,r.t.):δ 24.55(s),24.86(s),77.61(s),82.02(s),122(br),127.40(s),128(obscured by overlapping with C6D6),129.17(s),129.70(s),129.91(s),133.67(s),133.89(s),137.08(s),138.45(s),141.85(s),141.98(s,3CH),150.41(s,5-CH).
MS(EI):m/z=358(M+).
HRMS(APCI):m/z calcd for C24H27BO2+H+:359.2181[M+H]+;found:359.2183.
【0144】
(実施例5)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化39】
【0145】
具体的には、2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(40.4μL,0.2244mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、ここに1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピル(51.0μL,0.222mmol)を加え、次いで[Ru(naphthalene)(cod)](7.59mg,0.0225mmol)を更に加えた。室温で3時間反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-5)が収率38%で得られた。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.96(t,J=8 Hz,3H),1.10(s,12H),1.16(d,J=7 Hz,12H),1.56-1.61(m,2H),2.60-2.64(m,2H),4.42(sept,J=7 Hz,2H),5.51(s,1H),5.92(d,J=17 Hz,1H),6.34(d,J=15 Hz,1H),6.52(dd,J=15,11 Hz,1H),7.45(dd,J=17,11 Hz,1H).
13C{1H}NMR(100MHz,C6D6,r.t.):δ 14.46(s),23.87(s),24.86(s),24.91(s),32.78(s),65.56(s),83.05(s),122(br),126.01(s),131.45(s),142.42(s),150.92(s),156.18(s).
【0146】
(実施例6)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化40】
【0147】
具体的には、1-フェニル-1-プロピン(22.5μL,182μmol)及び2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(36.0μL,180μmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、ここに[Ru(naphthalene)(cod)](6.07mg,18.0μmol)を更に加えた。室温で1時間反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-6)が収率61%で得られた。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 1.12(s,12H),1.75(d,J=1.16 Hz,3H),5.96(d,J=17.7 Hz,1H),6.35-6.44(m,2H),6.41(s,1H),6.97-7.02(m,2H),7.10-7.15(m,3H),7.53(ddd,J=17.6,8.3,1.5 Hz,1H).
13C{1H}NMR(100MHz,C6D6,r.t.):δ 13.78(s),24.94(s),83.08(s),121(br),127.00(s),129.60(s),130.68(s),134.09(s),136.01(s),138.00(s),142.08(s,4-CH),150.96(s,5-CH).6-CH was not observed by HMQC probably due to broadening.
HRMS(APCI):m/z calcd for C19H25BO2+H+:297.2024[M+H]+;found:297.2010.
【0148】
(実施例7)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化41】
【0149】
具体的には、1-フェニル-2-トリメチルシリル-アセチレン(34.0μL,176μmol)及び2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(19.0μL,95.0μmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、ここに[Ru(naphthalene)(cod)](3.20mg,9.48μmol)を更に加えた。室温で30分間反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-7)が収率41%で得られた。なお、この反応では、1-フェニル-2-トリメチルシリル-アセチレンは位置選択的に反応して、初期生成物として末端のフェニル基の立体選択性がZ体の生成物が得られた。しかし、その後室温において溶液中で放置することで異性化が進行し、フェニル基の立体選択性がE体の生成物が得られた。
トリメチル((1Z,3E,5E)-1-フェニル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサ-1,3,5-トリエン-2-イル)シラン
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.20(s,9H),1.08(s,12H),5.91(d,J=17 Hz,1H),6.54(d,J=16 Hz,1H),6.66(dd,J=16,10 Hz,1H),6.9(s,1H,obscured by overlap),7.0-7.1(m,3H),7.2(d,J=7 Hz,12H)7.44(dd,J=17.2,10.3 Hz,1H).
13C{1H}NMR(100MHz,C6D6,r.t.):δ 0.45(s),24.88(s),83.02(s),120.92(br),128(overlapped with C6D6),129.93(s),134.85(s),137.70(s),138.14(s),140.84(s),141.78(s),142.91(s),151.33(s).
HRMS(APCI):m/z calcd for C21H31BO2Si+H+:355.2263[M+H]+;found:355.2263.
トリメチル((1E,3E,5E)-1-フェニル-6-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ヘキサ-1,3,5-トリエン-2-イル)シラン
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.21(s,9H),1.08(s,12H),5.91(d,J=18 Hz,1H),6.66(dd,J=15,10 Hz,1H),6.9(1H,obscured by overlap),7.0-7.1(m,3H),7.05(d,J=15 Hz,1H),7.44(dd,J=18,10 Hz,1H,partly obscured by overlap).
【0154】
(実施例10)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化44】
【0155】
具体的には、2-フェニルエチニルボロン酸ピナコールエステル(40.62μL,0.1781mmol)及び(E)-2,4-ペンタジエン酸メチル(21.0μL,0.180mmol)をベンゼン-d6(0.6mL)に溶解し、[Ru(naphthalene)(cod)](7.12mg,0.0211mmol)を更に加えた。30℃で反応させたところ、含ホウ素共役ポリエン化合物(A-105)が、反応時間2時間において収率47%で生成した。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 1.02(s,12H),3.45(s,3H),6.07(d,3JH,H=14.9Hz,1H),6.55(d,3JH,H=15.5Hz,1H),6.80(dd,3JH,H=15.2,10.9Hz,1H),6.80(s,1H),7.00-7.13(m,3H),7.39-7.40(m,1H),7.61(dd,3JH,H=15.2,10.9Hz,1H).
13C{1H} NMR(100MHz,C6D6,r.t.):δ 24.9(s),51.0(s),83.9(s),120.5(s),128.9(s),129.1(s),138.7(s),145.7(s),147.1(s),147.3(s),167.1(s).
HRMS(APCI):m/z calcd for C20H25BO4+H+:341.1922[M+H]+;found:341.1914.
【0160】
(実施例13)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化47】
【0161】
具体的には、25mLシュレンクに[Ru(acac)2(1,5-cod)](4.30mg,0.0106mmol)を量り入れ、窒素置換した。ヘキサン(600μL)、BuLi(6.2μL,0.0099mmol)、3-hexyne(11.5μL,0.101mmol)、(E)-1-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)butadiene(20.0μL,0.100mmol)を順に加え室温で7時間撹拌した。その後、反応液をGC-MSで測定したところ、目的物の生成が確認された。溶媒留去をし、全量benzene-d6に溶解させ、dibenzyl(1.94mg,10.6μmol)を加えた。1H NMRより目的物の収率を求めた。収率は83%であった。
【0162】
(実施例14)
下記方法により、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成を行った。
【化48】
【0163】
具体的には、25mLシュレンクにCoBr2(PPh3)2(8.5mg,0.011mmol),PPh3(9.6mg,0.037mmol),Zn(53.5mg,0.820mmol)を量りとり、窒素置換をしたのち、CH3CN(500μL)を加え、10分間攪拌した。その後、3-hexyne(12.0μL,0.107mmol),(E)-2-(buta-1,3-dienyl)-4,4,5,5-tetoramethyl-1,3,2-dioxaborolane(20.0μL,0.0990mmol)及びH2O(70.0μL)を加え、室温下で攪拌した。24時間反応させた後、反応液をGC-MSで測定したところ、目的物の生成が確認された。収率は約4%であった。
【0164】
(実施例15)
下記方法により、ワンポットで、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成とそれに続くクロスカップリング反応とを行い、共役ポリエン化合物を合成した。
【化49】
【0165】
具体的には、1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピルエステル(22.5μL,0.0982mmol)及び(E)-2,4-ペンタジエン酸メチル(11.5μL,0.0987mmol)をベンゼン中(500μL)で[Ru(naphthalene)(cod)](3.35mg,0.00993mmol)の存在下、室温で24時間反応させた。引き続き同じ溶液中にヨウ化フェニル(11.0μL,0.0987mmol),ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(120μL in methanol,0.120mmol)、及び[Pd(PPh3)4](9.28mg,0.00803mmol)をこの順番で加え、50℃で15分間反応させた。生成物はリサイクルHPLCにより精製した。収率は79%((A-110)/(A-111)=5/1)であった。
(A-110)
1H NMR(400MHz,CDCl3,r.t.):δ 0.99(t,3JH,H=7.4Hz,3H),1.56(sext,3JH,H=7.4Hz,2H),2.43(m,2H),3.74(s,3H),5.91(d,3JH,H=15.5Hz,1H),6.40(dd,3JH,H=15.4,10.9Hz,1H),6.62(s,1H),6.64(d,3JH,H=15Hz,1H),7.26-7.35(m,5H),7.38(dd,3JH,H=15.5,10.9Hz,1H).
13C{1H} NMR(100MHz,CDCl3,r.t.):δ 14.36(s),22.44(s),29.38(s),51.53(s),119.81(s),125.45(s),127.33(s),128.40(s),128.91(s),135.64(s),137.03(s),140.18(s),145.42(s),145.67(s),167.68(s).
HRMS(APCI):m/z calcd for C17H20O2+H+:257.1536[M+H]+;found:257.1528.
【0166】
(実施例16)
下記方法により、ワンポットで、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成とそれに続くクロスカップリング反応とを行い、共役ポリエン化合物を合成した。
【化50】
【0167】
3-へキシン(20.0μL,0.175mmol)及び2-{(E)-1,3-butadienyl}-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolane(36.0μL,0.180mmol)をベンゼン中(500μL)で[Ru(naphthalene)(cod)](6.03mg,0.0178mmol)の存在下、室温で5分間反応させた。引き続き、同じ溶液中にヨウ化フェニル(20.0μL,0.179mmol)、ナトリウムメトキシドのメタノール溶液(180.0μL in methanol,0.180mmol)、及び[Pd(PPh3)4](16.51mg,0.01429mmol)をこの順番で加え、50℃で2時間反応させた。生成物はリサイクルHPLCにより精製した。収率は62%であった。
1H NMR(400MHz,C6D6,r.t.):δ 0.91(t,3JH,H=7.44Hz,3H),1.05(t,3JH,H=7.48Hz,3H;10-Me),2.03(quint,3JH,H=7.44Hz,2H),2.24(q,3JH,H=7.44Hz,2H),5.45(t,3JH,H=7.44Hz,1H),6.27(d,3JH,H=15.5Hz,1H),6.39(dd,3JH,H=15.5,10.3Hz,1H),6.44(d,3JH,H=15.5Hz,1H),6.85(dd,3JH,H=15.5,10.3Hz,1H),7.05(t,1H),7.1-7.2(overlapped with solvent),7.30(d,3JH,H=7.5Hz,2H).
【0168】
(実施例17)
下記方法により、ワンポットで、含ホウ素共役ポリエン化合物の合成とそれに続くクロスカップリング反応とを行い、共役ポリエン化合物を合成した。
【化51】
【0169】
具体的には、1-ペンチニルボロン酸ジイソプロピルエステル(22.5μL,0.0982mmol)及び(E)-1-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)butadiene(22.0μL,0.110mmol)、[Ru(naphthalene)(1,5-cod)](3.34mg,0.00990mmol)をベンゼン中50℃で3時間反応させた。臭化ビニル(15.0μL,0.212mmol)、ナトリウムエトキシドのエタノール溶液(240μL in EtOH,0.240mmol)及び[Pd(PPh3)4](18.46mg,0.01597mmol)を加えて50℃で5時間反応させた。その結果、化合物(A-113)が収率46%で生成した。
1H NMR(400MHz,CDCl3,r.t.):δ 0.92(t,3JH,H=7.4Hz,3H),1.46(sext,3JH,H=7.4Hz,2H),2.33(t,3JH,H=7.4Hz,2H),5.09(ddd,3JH,H=10.3Hz,2JH,H=-1.0Hz,4JH,H=-0.9Hz,1H),5.12(ddd,3JH,H=10.3Hz,2JH,H=-3.0Hz,4JH,H=-0.5Hz,1H),5.19(dt,3JH,H=17.8,2JH,H=2.5Hz,4JH,H=2.5Hz,1H),5.23(ddd,3JH,H=17.8,2JH,H=-3.0,4JH,H=-0.5Hz,1H),6.08(ddt,3JH,H=10.5,4JH,H=-2.5,4JH,H=-1.0Hz,1H),6.19(dd,3JH,H=17.5Hz,4JH,H=-1.0Hz,1H),6.28(ddd,3JH,H=17.5,10.5Hz,4JH,H=-1.0Hz,1H),6.30(ddd,3JH,H=16.0,10.5Hz,4JH,H=-1.0Hz,1H),6.32(dd,3JH,H=17.8,10.3Hz,1H),6.38(ddddd,3JH,H=16.0,11.8,10.3Hz,4JH,H=-1.0,-0.5Hz,1H),6.60(ddd,3JH,H=17.8,11.5,10.3Hz,1H).
13C{1H} NMR(100MHz,CDCl3,r.t.):δ 14.22(s),22.70(s),28.89(s),117.00(s),117.92(s),128.21(s),132.32(s),133.05(s),133.97(s),134.04(s),137.02(s),137.13(s),140.63(s).
HRMS(APCI):m/z calcd for C13H18+H+:175.1481[M+H]+;found:175.1474.