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特許7389573プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20231122BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20231122BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/44 J
H05H1/46 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019118704
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021005629
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】大竹 文人
(72)【発明者】
【氏名】太田 淳
(72)【発明者】
【氏名】菊池 亨
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 宏紀
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-214618(JP,A)
【文献】特開平09-129709(JP,A)
【文献】特開平06-326036(JP,A)
【文献】特開2000-150394(JP,A)
【文献】特開2011-187934(JP,A)
【文献】特開2000-355767(JP,A)
【文献】特開2003-124198(JP,A)
【文献】特開2016-040409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/44
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理方法であって、
ガラス基板を交換するための搬送手段を内在する第一チャンバ、反応室として機能する第三チャンバ、及び、前記第一チャンバと前記第三チャンバの内部空間同士を連通する内部空間を備えた第二チャンバを少なくとも備え、前記第三チャンバの内部空間には、微細孔を通して成膜ガスを供給するシャワープレートからなる上部電極と、前記ガラス基板を載置する支持台からなる下部電極とが、所定の離間距離をもって対向配置されており、前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されているプラズマ処理装置を用い、
前記第三チャンバの内部空間へ前記シャワープレートから成膜ガスを導入する工程S1と、
前記上部電極に対して前記手段Aから交流電力を印加するプラズマ成膜工程S2と、 前記手段Aから前記上部電極に印加していた交流電力を停止する工程S3と、
前記工程S2と前記工程S3との間に行われ前記上部電極に前記手段Bから直流電力を印可して、成膜時に発生したパーティクルを前記上部電極の下面に付着した状態としてパーティクルの落下を抑制する工程SP1と、
前記シャワープレートから前記成膜ガスの導入を停止した後、不活性ガスを導入する工程S4と、
前記上部電極に交流電力を印加することにより、前記上部電極の近傍に前記不活性ガスによるプラズマを生起させて前記ガラス基板に対して除電放電を行う工程S5と、
前記上部電極に印可する交流電力を停止して前記不活性ガスによるプラズマを消滅させる工程S6と、
前記不活性ガスの導入を停止する工程S7と、
前記第一チャンバと前記第三チャンバと前記第二チャンバとを連通し前記ガラス基板を前記第一チャンバへ移動する工程S8と、
前記工程S8後に前記第一チャンバを前記第三チャンバから分離する工程S9と、
前記ガラス基板の移動が終わった後の前記第三チャンバにおいて前記シャワープレートの前記微細孔を通して前記不活性ガスを前記支持台に向けて噴出させ、前記上部電極に付着した状態にあるパーティクルの除去を促す工程S10と、
前記工程S9と前記工程S10との間に前記手段Bから前記上部電極に対する直流電力の印加を停止してパーティクルを前記上部電極から落下させる工程SP2と、
を備え、
前記工程SP1から前記工程SP2まで、前記上部電極に対して前記手段Bから直流を印可し続ける
ことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記工程S10により前記第三チャンバにおいてパーティクルが除去された環境を回復する工程S11を備える
ことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記工程S11後に新たなガラス基板を導入して、次のバッチ処理を繰り返す
ことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板(被処理体)に付着するパーティクルを防止することが可能な、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シャワープレートの微細孔を通して成膜ガスを基板(被処理体)上の成膜空間に導入し、プラズマを生起することにより、基板上に所望の被膜を形成するプラズマ処理装置が知られている。このような構成を備えたプラズマ処理装置は、Siやガラス、セラミックスなどの基板表面に各種の被膜をCVD法などにより形成する際に多用されている。
中でも、効率的に半導体膜、たとえばSiOやSiNを成膜するために、枚葉式でかつ複数チャンバから構成される、マルチチャンバ型のプラズマ処理装置が広く利用されている。
【0003】
このようなプラズマ処理が行われるチャンバ(処理室)内では、プロセス(たとえば成膜)中にパーティクルが発生し、このパーティクルが基板上に落下すると、基板上に形成されたデバイスの歩留まりを大きく低下させることが知られている。
その対策として、アノード電極周辺に集塵用電極を配置する方法(特許文献1)や、基板上にカバーを設ける方法(特許文献2)など、様々な手法が提案されている。
【0004】
ところが、FPD用途や太陽電池用途においては、プラズマ処理する対象物としてガラス基板が用いられ、さらなる大型化(大面積化)が進む傾向にある。たとえば、第6世代ガラス基板に対応するプラズマ処理装置においては、上述した特許文献1や特許文献2に開示された方法では、発生するパーティクルの殆どを除去することが困難である。
【0005】
特許文献1の方法により、基板の外周近傍に設置した集塵用電極へパーティクルを集塵させようとしても、基板が大型化した場合は、基板の中央域まで、その効力を発揮させることは困難である。
【0006】
特許文献2の方法により、基板全域を覆うようなシャッターを用いたとしても、基板が大型化した場合には、その基板を覆うためのシャッターも大型化したものを用いる必要がある。このため、プラズマ処理装置はその内部空間が大きなチャンバが必須となり、ひいてはプラズマ処理装置のフットプリントが大きくなる問題が生じる。更に実際には、大型の基板に対してユニットを構築するのは、大きさ、重量の観点に加え、それに伴いプラズマ形成が困難になる事が予想される。
【0007】
したがって、基板が大型化した場合でも、基板に付着するパーティクルを防止することが可能な、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の開発が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-230240号公報
【文献】特開2000-3902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、基板が大型化した場合でも、基板に付着するパーティクルを防止することが可能な、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、
プラズマ処理方法であって、
ガラス基板を交換するための搬送手段を内在する第一チャンバ、反応室として機能する第三チャンバ、及び、前記第一チャンバと前記第三チャンバの内部空間同士を連通する内部空間を備えた第二チャンバを少なくとも備え、前記第三チャンバの内部空間には、微細孔を通して成膜ガスを供給するシャワープレートからなる上部電極と、前記ガラス基板を載置する支持台からなる下部電極とが、所定の離間距離をもって対向配置されており、前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されているプラズマ処理装置を用い、
前記第三チャンバの内部空間へ前記シャワープレートから成膜ガスを導入する工程S1と、
前記上部電極に対して前記手段Aから交流電力を印加するプラズマ成膜工程S2と、
前記手段Aから前記上部電極に印加していた交流電力を停止する工程S3と、
前記工程S2と前記工程S3との間に行われ前記上部電極に前記手段Bから直流電力を印可して、成膜時に発生したパーティクルを前記上部電極の下面に付着した状態としてパーティクルの落下を抑制する工程SP1と、
前記シャワープレートから前記成膜ガスの導入を停止した後、不活性ガスを導入する工程S4と、
前記上部電極に交流電力を印加することにより、前記上部電極の近傍に前記不活性ガスによるプラズマを生起させて前記ガラス基板に対して除電放電を行う工程S5と、
前記上部電極に印可する交流電力を停止して前記不活性ガスによるプラズマを消滅させる工程S6と、
前記不活性ガスの導入を停止する工程S7と、
前記第一チャンバと前記第三チャンバと前記第二チャンバとを連通し前記ガラス基板を前記第一チャンバへ移動する工程S8と、
前記工程S8後に前記第一チャンバを前記第三チャンバから分離する工程S9と、
前記ガラス基板の移動が終わった後の前記第三チャンバにおいて前記シャワープレートの前記微細孔を通して前記不活性ガスを前記支持台に向けて噴出させ、前記上部電極に付着した状態にあるパーティクルの除去を促す工程S10と、
前記工程S9と前記工程S10との間に前記手段Bから前記上部電極に対する直流電力の印加を停止してパーティクルを前記上部電極から落下させる工程SP2と、
を備え、
前記工程SP1から前記工程SP2まで、前記上部電極に対して前記手段Bから直流を印可し続ける
ことを特徴とする。
本発明は、前記工程S10により前記第三チャンバにおいてパーティクルが除去された環境を回復する工程S11を備えることができる。
本発明は、前記工程S11後に新たなガラス基板を導入して、次のバッチ処理を繰り返すことができる。
本発明は、
プラズマ処理装置であって、
基板を交換するための搬送手段を内在する第一チャンバ、反応室として機能する第三チャンバ、及び、前記第一チャンバと前記第三チャンバの内部空間同士を連通する内部空間を備えた第二チャンバを少なくとも備え、
前記第三チャンバの内部空間には、微細孔を通して成膜ガスを供給するシャワープレートからなる上部電極と、基板を載置する支持台からなる下部電極とが、所定の離間距離をもって対向配置されており、
前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されていることができる。
【0011】
上記構成としたプラズマ処理装置において、前記第一チャンバの内部空間と前記第二チャンバの内部空間とを仕切るための第一ドアバルブ、及び、前記第二チャンバの内部空間と前記第三チャンバの内部空間とを仕切るための第二ドアバルブをさらに備えることが好ましい。
【0012】
上記構成としたプラズマ処理装置において、前記下部電極をなす支持台は、上下動を可能とする機構を有することが好ましい。
【0013】
発明は、
プラズマ処理方法であって、
基板を交換するための搬送手段を内在する第一チャンバ、反応室として機能する第三チャンバ、及び、前記第一チャンバと前記第三チャンバの内部空間同士を連通する内部空間を備えた第二チャンバを少なくとも備え、前記第三チャンバの内部空間には、微細孔を通して成膜ガスを供給するシャワープレートからなる上部電極と、基板を載置する支持台からなる下部電極とが、所定の離間距離をもって対向配置されており、前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されているプラズマ処理装置を用い、
プラズマ処理中は、前記上部電極に対して前記手段Aから交流電力を印可するとともに、前記手段Bから直流電力を印可し、
プラズマ処理後は、基板が前記第三チャンバから前記第一チャンバへ退避完了するまで、前記上部電極に対して前記手段Bから直流電力を印可し続けることができる。
【0014】
上記構成としたプラズマ処理方法において、
前記基板が前記第三チャンバから前記第一チャンバへ退避完了した後、
前記手段Bは前記上部電極に対する直流電力の印可を停止することが好ましい。
【0015】
上記構成としたプラズマ処理方法において、
前記手段Bが前記上部電極に対する直流電力の印可を停止した後、
前記下部電極をなす前記支持台に向けて、前記上部電極をなす前記シャワープレートの微細孔を通して不活性ガスを吹き付けることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
発明(プラズマ処理装置)によれば、前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されている。 上部電極が手段Bを備えることにより、基板サイズに依存せず、大型(大面積)の基板であっても、成膜時に発生するパーティクルを上部電極がその全域に亘って面内均一に吸着することが可能となる。これにより、基板へのパーティクル落下が防止される、すなわち、基板に対するパーティクルの付着が抑制される。ゆえに、本発明は、歩留まりを大きく改善できるプラズマ処理装置をもたらす。
【0017】
発明(プラズマ処理方法)によれば、前記上部電極には、交流電力を印可する手段Aと、直流電力を印可する手段Bとが、電気的に独立して連結されているプラズマ処理装置を用い、プラズマ処理中は、前記上部電極に対して前記手段Aから交流を印可するとともに、前記手段Bから直流電力を印可し、プラズマ処理後は、基板が前記第三チャンバから前記第一チャンバへ退避完了するまで、前記上部電極に対して前記手段Bから直流電力を印可し続ける。
ゆえに、プラズマ処理中はもとより、プラズマ処理後にあっても、基板サイズに依存せず、大型(大面積)の基板であっても、成膜時に発生するパーティクルを上部電極がその全域に亘って面内均一に吸着することが可能となる。これにより、本発明は、基板へのパーティクル付着が抑制されるプラズマ処理方法をもたらす。
【0018】
したがって、本発明は、基板へのパーティクル落下を防止することが可能な、従来の方法とは異なる大型電極に対応した、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法の提供に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のプラズマ処理方法を示すフローチャート。
図2】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。成膜の終了間際に、上部電極に対して直流電力を印可した状態を表す。
図3】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。成膜後に除電放電を行っている状態を表す。
図4】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。除電放電後、基板を搬出する前の状態を表す。
図5】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。基板を搬出するため、搬出手段のアーム部が第三チャンバにある基板の下方まで、延伸された状態を表す。
図6】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。搬出手段のアーム部が基板の下方まで延伸された状態において、基板を載置した状態を表す。
図7】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。基板を載置した搬出手段が第一チャンバへ戻った状態を表す。
図8】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。上部電極に対する直流電力の印可を停止した状態を表す。
図9】本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図。上部電極から不活性ガスを流し、下部電極に吹き付けている状態を表す。
図10】従来のプラズマ処理方法を示すフローチャート。
図11】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。成膜前に第一チャンバから第三チャンバへ基板を搬入した状態を表す。
図12】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。第三チャンバへ搬入された基板をピン上に乗せた状態を表す。
図13】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。第一チャンバまで搬送手段が戻った状態を表す。
図14】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。第三チャンバにおいて基板が支持体に載置された状態を表す。
図15】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。第三チャンバにおいて成膜中の状態を表す。
図16】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。成膜後に除電放電を行っている状態を表す。
図17】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。成膜後に基板を搬出する前の状態を表す。
図18】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。基板を搬出するため、搬出手段のアーム部が第三チャンバにある基板の下方まで、延伸された状態を表す。
図19】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。搬出手段のアーム部が基板の下方まで延伸された状態において、基板を載置した状態を表す。
図20】従来のプラズマ処理装置を示す概略断面図。基板を載置した搬出手段が第一チャンバへ戻った状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(本発明のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法)
以下では、本発明のプラズマ処理装置とプラズマ処理方法について、図面に基づき説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0021】
図1は、本発明のプラズマ処理方法を示すフローチャートである。
図1に示すとおり、本発明のプラズマ処理方法は、工程S1から工程S11へ順に行われる。ただし、工程S2と工程S3との間の段階で工程SP1が、工程S9と工程S10との間の段階で工程SP2が、それぞれ実行される。
以下に詳述するが、本発明のプラズマ処理方法は、工程SP1と工程SP2と工程S10を備えている点が特徴である。
図2図9は何れも、本発明のプラズマ処理装置を示す概略断面図であり、上記工程S1~S11、SP1及びSP2の何れかに相当する状態を表している。
【0022】
本発明のプラズマ処理方法において好適なプラズマ処理装置の一構成例について、図2図9を用いて説明する。
本発明のプラズマ処理装置10は、基板(ガラス基板)Wを交換するための搬送手段(R1、R2)を内在する第一チャンバ20、反応室として機能する第三チャンバ40、及び、第一チャンバ20の内部空間20Sと第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)同士を連通する内部空間30Sを備えた第二チャンバ30を少なくとも備える。
【0023】
第一チャンバ20に内在する搬送手段(R1、R2)は、基板搬送用のロボットであり、本体部R1とアーム部R2から構成される。本体部R1は、支持部21に載置される。支持部21の下面側は、上下および回転可能な軸部22の上端に接続され、軸部22の下端は駆動部23に連結されている。本体部R1は支持部21の上面に対してスライド可能とされており、かつ、アーム部R2は一端が本体部R1に接続されており、他端が延伸可能な構造とされている。これにより、搬送手段(R1、R2)は、基板を載置した状態で、第一チャンバ20の内部空間20Sから、第二チャンバ30の内部空間30Sを通して、第三チャンバ40の内部空間40Sまで、基板Wを移動可能とされている。
なお、第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)は、排気口40eを通じて排気手段(不図示)により減圧可能に構成されている。
【0024】
第二チャンバ30の内部空間30Sから見て、第一チャンバ20側には、開口部S20と開口部S30aが設けられており、第一チャンバ20の内部空間20Sと第二チャンバ30の内部空間30Sとを仕切るための第一ドアバルブDV1が配置されている。
第二チャンバ30の内部空間30Sから見て、第三チャンバ40側には、開口部S30bと開口部S40が設けられており、第二チャンバ30の内部空間30Sと第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)とを仕切るための第二ドアバルブDV2が配置されている。
【0025】
つまり、第一ドアバルブDV1と第二ドアバルブDV2を開状態にすることにより、第一チャンバ20の内部空間20Sと、第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)とは、第二チャンバ30の内部空間30Sを介して、連通した状態となる。
また、第一ドアバルブDV1と第二ドアバルブDV2を閉状態にすることにより、第一チャンバ20の内部空間20S、第二チャンバ30の内部空間30S、及び、第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)は、おのおの孤立した状態となる。
【0026】
第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)には、微細孔(不図示)を通して成膜ガスを供給するシャワープレートからなる上部電極45と、基板Wを載置する支持台からなる下部電極41aとが、所定の離間距離をもって対向配置されている。符号41bは、下部電極41aを上下動する機構を内在した支持部である。
上部電極45には、交流電力を印可する手段A(46、47a、47b)と、直流電力を印可する手段B(48a、48b)とが、電気的に独立して連結されている。
【0027】
上部電極45に接続された交流電力を印可する手段A(46、47a、47b)は、上部電極45と下部電極41aに挟まれた空間40S1に、プロセスガス(成膜ガス)からなるプラズマを生起するために用いられる。プロセスガス(成膜ガス)としては、たとえば、SiH、NH、Arなどが挙げられる。
プロセスガスは、不図示の導入部から、シャワープレート(上部電極)45の下面に開口部を有する微細孔(不図示)を経て、空間40S1に放出される。ここで、符号46は、シャワープレート(上部電極)45に対して交流電力を印可する導入部である。符号47aはマッチングボックス(M.BOX)であり、符号47bは高周波電源(RF)である。
【0028】
図2に示すように、上部電極45に接続された「交流電力を印可する手段A」を構成する導入部46は、交流電力が印加されている場合(Power ON)は、「ハッチングあり」として表示した。交流電力が印加されていない場合(Power OFF)は、「ハッチングなし(白ヌキ)」として表示した。
【0029】
上部電極45に接続された直流電力を印可する手段B(48a、48b)は、交流電力を印可する手段A(46、47a、47b)と電気的に独立して連結されている。符号48aはローパスフィルタ(LPF)であり、符号48bは直流電源(DC)である。直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加することにより、成膜時に発生したパーティクルDを上部電極45の下面に付着させた状態を保つ。
【0030】
図3に示すように、直流電力を印可する手段B(48a、48b)によって、上部電極(シャワープレート)45に直流電力が印加されている場合(DC ON状態)は、「ハッチングあり」として表示した。直流電力が印加されていない場合(DC OFF状態)は、「ハッチングなし(白ヌキ)」として表示した。
【0031】
成膜を終了するために、シャワープレート(上部電極)45に対する交流電力の印可を停止し、プラズマを消滅させた場合でも、直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加し続けることにより、パーティクルDは上部電極45の下面に付着させた状態が維持される。
【0032】
直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加した状態を停止することにより、パーティクルDは上部電極45の下面に付着させた状態が解除される。すなわち、パーティクルDは自重により下部電極41aの方向へ落下する動きが始まる。上部電極45に対する直流電力を印可する手段Bによる直流電力の印加の停止により、上部電極45の下面に付着していたパーティクルDの落下を促す。
【0033】
その(直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加した状態を停止した)際に、シャワープレート(上部電極)45の下面に開口部を有する微細孔(不図示)から、たとえば不活性ガス(Nガスなど)を噴出させることにより、第三チャンバ40の上方空間40S1において、パーティクルDの落下を強く誘導する。
【0034】
このような不活性ガスの噴出は、第三チャンバ40の上方空間40S1から下方空間(40S2)へ向けて、落下したパーティクルDの移動を促す。その結果、第三チャンバ40の底部に設けられた排気口40eを通じて、パーティクルDは排気手段(不図示)に吸引される。これにより、第三チャンバ40の内部空間(40S1、40S2)は、清浄な状態が回復される。
【0035】
また、その(直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加した状態を停止した)際に、支持部41bを上下動させて、シャワープレート(上部電極)45の下面と下部電極41aの上面との離間距離を制御することにより、パーティクルDの落下をさらに促すこともできる。
【0036】
また、この離間距離の制御と連動させて、シャワープレート(上部電極)45と下部電極41aとの間に、成膜時のプラズマより弱いプラズマを励起させることにより、パーティクルDの落下をさらに促してもよい。弱いプラズマの形成には、Arガスなどが好適に用いられる。
【0037】
下部電極をなす支持台41aは、上下動を可能とする機構41bを有する。これにより、下部電極は上部電極との離間距離を、各工程において適切な数値に調整できる。この調整により、たとえば図8に示す工程において、上部電極に保持されたパーティクルの落下を促すこともできる。
また、支持台41aは、基板Wの温度を制御する手段(不図示)を内在しており、基板Wの温度は適宜、調整可能とされている。
【0038】
(本発明のプラズマ処理方法)
本発明のプラズマ処理方法は、図2図9を参照して説明した上記のプラズマ処理装置を用い、プラズマ処理中は、前記上部電極に対して前記手段Aから交流を印可するとともに、前記手段Bから直流を印可し、プラズマ処理後は、基板が前記第三チャンバから前記第一チャンバへ退避完了するまで、前記上部電極に対して前記手段Bから直流を印可し続けることを特徴とする。これにより、第一チャンバへ基板を退避するまで、手段Bは上部電極に対して直流を印可し続けることにより、プラズマによって生起されたパーティクルは上部電極に付着した状態が維持されるので、基板上へのパーティクル落下を防ぐことが可能となる。
【0039】
また、本発明のプラズマ処理方法は、前記基板が前記第三チャンバから前記第一チャンバへ退避完了した後、前記手段Bは前記上部電極に対する直流電力の印可を停止することが好ましい。これにより、成膜後の第三チャンバの内部空間において、上部電極に付着したパーティクルを、下部電極側に落下させることができる。落下したパーティクルは、第三チャンバ40の底部に設けられた排気口40eを通じて、排気手段(不図示)によって吸引される。その結果、成膜後の第三チャンバの内部空間は、次回の成膜バッチにおいて清浄な雰囲気にリカバリーすることができる。
【0040】
さらに、本発明のプラズマ処理方法は、前記手段Bが前記上部電極に対する直流電力の印可を停止した後、前記下部電極をなす前記支持台に向けて、前記上部電極をなす前記シャワープレートの微細孔を通して不活性ガス(Nガスなど)を吹き付けることが好ましい。これにより、第三チャンバ40の上方空間40S1において、パーティクルDの落下を強く誘導することができる。
【0041】
以下、図1に示したフローチャートに基づき、工程1~工程11、工程SP1、工程SP2について説明する。
工程S1(Process Gas In)は、第三チャンバの内部空間へプロセスガス(成膜ガス)を導入する工程である。プロセスガスは、上部電極(シャワープレート)45と下部電極41aの間に位置する上方空間40S1に向けて、上部電極(シャワープレート)45の微細孔から放出される。
【0042】
工程S2(RF ON)は、上部電極(シャワープレート)45に対して交流電力を印加する工程である[図2]。
その際、シャワープレートの微細孔からプロセスガス(成膜ガス)が導入された、上部電極(シャワープレート)45と下部電極41aの間に位置する上方空間40S1にプラズマ(不図示)が生起させる。これにより、基板Wの表面に所望の被膜が形成される。
【0043】
工程S3(RF OFF / Depo. Finish)は、上部電極(シャワープレート)45に印加していた交流電力を停止する工程である。これにより、上部電極(シャワープレート)45と下部電極41aの間に位置する上方空間40S1に発生していたプラズマ(不図示)が消滅し、成膜が終了する。
【0044】
工程SP1(DC ON)は、上述した工程S2と工程S3との間に行われ、直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対して適切な直流電力を印加する工程である[図2]。これにより、成膜時に上部電極45の下面に発生したパーティクルDが、上部電極45の下面に付着した状態となり、パーティクルDの落下が抑制される。
【0045】
工程S4(Process Gas Ex. / Power Lift Ar In)は、プロセスガス(成膜ガス)の導入を停止した後、不活性ガス(Ar)を導入する工程である。
【0046】
工程S5(RF ON)は、上部電極(シャワープレート)45に交流電力を印加することにより、上部電極(シャワープレート)45の近傍に、不活性ガス(Ar)による弱いプラズマを生起させる。これにより、基板に対して除電放電が行われる[図3]。
【0047】
工程S6(RF OFF / Power Lift Finish)は、上部電極(シャワープレート)45に印可する交流電力を停止する工程である。これにより、上部電極(シャワープレート)45の近傍に発生させた、不活性ガス(Ar)による弱いプラズマを消滅させる。
【0048】
工程S7(Power Lift Ar Ex.)は、不活性ガス(Ar)の導入を停止する工程である。これにより、第三チャンバ40の内部空間40Sは、高真空排気された状態となる。上部電極(シャワープレート)45に印可する直流電力は維持されている。これにより、プラズマは停止したが、パーティクルDは上部電極(シャワープレート)45に付着した状態が維持される。ゆえに、パーティクルDの落下は発生しない。
【0049】
工程S8(Substrate Out)は、ドアバルブDV1とDV2を開いて、第一チャンバ20と第二チャンバ30と第三チャンバ40の内部空間20S、30S、40Sを連通した状態とし、搬送手段(R1、R2)を用い、プラズマ処理(成膜)を終えた基板を、第三チャンバ40の内部空間40Sから、第一チャンバ20の内部空間20Sへ移動させる工程である[図5図6]。
図5は、基板Wを搬出するため、搬出手段のアーム部R2が第三チャンバにある基板の下方まで、延伸された状態を表している。図6は、搬出手段のアーム部R2が基板Wの下方まで延伸された状態において、基板Wを載置した状態を表している。
これにより、第三チャンバ40の内部空間40Sにおいて、パーティクルDの落下がない環境で、プラズマ処理(成膜)を終えた基板は、第一チャンバ20の内部空間20Sへ回収される。
【0050】
工程S9(DV Close)は、第一チャンバ20の内部空間20Sへ基板を移動した後、ドアバルブDV1とDV2を閉じることにより、第一チャンバ20の内部空間20Sは、第三チャンバ40の内部空間40Sから分離される。これにより、パーティクルの付着がない基板が、第一チャンバ20の内部空間20Sに回収される。
【0051】
工程SP2(DC OFF)は、上述した工程S9と次の工程S10との間に行われ、直流電力を印可する手段Bが上部電極45に対する直流電力の印加を停止する工程である。これにより、成膜時に上部電極45の下面に発生し、上部電極45の下面に付着した状態にあるパーティクルDが、上部電極45の下面から自重により離脱し、下部電極41aの方向へ落下する。
【0052】
工程S10(N2 In / Chamber Flash)は、基板の移動が終わった後の第三チャンバ40において行われる工程である。上部電極(シャワープレート)45の微細孔を通して、不活性ガス(たとえば、He、N、Arから選択されるガス)を噴出させる。これにより、上部電極45に付着した状態にあるパーティクルの除去を促す。その際、不活性ガスの流量は10~100slmの範囲が好ましく、第三チャンバ40内の圧力は0~100Paの範囲が好適である。
【0053】
工程S11(Finish)は、上述した工程S10により、第三チャンバ40の内部空間40SはパーティクルDが除去されたクリーンな環境が回復される。これにより、新たな基板を導入して、次のバッチ処理(プラズマ処理)を繰り返すことが可能となる。
換言すると、本発明のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法は、量産プロセスの構築に寄与する。
【0054】
(従来のプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法)
図10は、従来のプラズマ処理方法を示すフローチャートである。
図10に示す従来のプラズマ処理方法における工程J1~J10は、上述した本発明のプラズマ処理方法における工程S1~S9と工程11に相当する。
すなわち、従来のプラズマ処理方法には、上述した本発明のプラズマ処理方法における工程SP1、工程SP2、工程S10が含まれていない。
【0055】
ゆえに、従来のプラズマ処理方法では、プラズマ(成膜)を停止した途端、プラズマ処理(成膜)を終えた基板Wの表面上に、上部電極85に付着していたパーティクルDが落下するという不具合が発生する[図16]。ここで、図16は、図10における工程J3(RF OFF / Depo. Finish)の段階である。
【0056】
その結果、従来のプラズマ処理方法では、プラズマ処理(成膜)を終えた基板Wの表面上に落下したパーティクルDは、取り除くことができず、第一チャンバ20の内部空間20aに回収される[図20]。
このため、従来のプラズマ処理方法においては、シャワープレートの微細孔を通して成膜ガスを供給し、プラズマCVD法により基板(被処理体)に成膜する際に、シャワープレート上に発生するパーティクルが、基板に及ぼす影響を回避することが困難であった。
【0057】
したがって、本発明(プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法)によれば、大型基板におけるプラズマCVD成膜において、成膜時に大型基板から発生するパーティクルを面内均一に電極で吸着する事が可能となる。
ゆえに、本発明は、基板へのパーティクル付着を解消し、歩留まりを大きく改善できるプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法をもたらす。
【0058】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な材料や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、基板サイズに依存せず、特に大型(大面積)の基板に対するプラズマ処理(成膜処理)に有効な、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
DV1 第一ドアバルブ、DV2 第二ドアバルブ、R1 本体部(搬送手段)、R2 アーム部(搬送手段)、S20、S30a、S30b、S40 開口部、W 基板(ガラス基板)、10 プラズマ処理装置、20 第一チャンバ、20S 第一チャンバの内部空間、21 支持部、22 軸部、30 第二チャンバ、30S 第二チャンバの内部空間、40 第三チャンバ、40e 排気口、40S1、40S2 第三チャンバの内部空間、41a 下部電極、41b 支持部、41S1、41S2 空間、45 上部電極(シャワープレート)、46 交流電力を印可する導入部(交流電力を印可する手段A)、47a マッチングボックス(M.BOX)(交流電力を印可する手段A)、47b 高周波電源(RF)(交流電力を印可する手段A)、48a ローパスフィルタ(LPF)(直流電力を印可する手段B)、48b 直流電源(DC)(直流電力を印可する手段B)。
図1
図2
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