(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】香味野菜ミックス及び香味野菜ミックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 19/00 20160101AFI20231122BHJP
A23L 27/10 20160101ALI20231122BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20231122BHJP
【FI】
A23L19/00 C
A23L27/10 F
A23L27/00 C
(21)【出願番号】P 2019158796
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和志
(72)【発明者】
【氏名】平田 武士
(72)【発明者】
【氏名】池田 佳奈
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】新玉ねぎのピクルス,日本発酵文化協会,2016年05月17日,[2023年6月27日検索],インターネット<URL:https://hakkou.or.jp/blog/8753/>
【文献】今井 真介,調理研究から始まった、涙の出ないタマネギの開発,日本調理科学会誌,2017年,Vol.50, No.3,p.114-117
【文献】A.A. Carbonell-Barrachina ら,Development of a High Sensory Quality Garlic Paste,Journal of Food Science,2003年,Vol.68, Nr.7,p.2351-2355
【文献】Jin-Sook Cho ら,Effects of Heating, pH, Salts and Organic Acids on Color Changes of Ground Garlic,Korean Journal of Food Science Technology,1999年,Vol.31, No.2,p.399-403
【文献】山崎 賀久,ニンニク加工食品緑変色の原因と対策設定に関する研究,岩手大学リポジトリ,岩手大学,2017年03月22日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
にんにくの粉砕物と、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物とを、前記にんにくの粉砕物の緑変防止処理を施して混合し、pH3.5~4.3に調整することを特徴とする香味野菜ミックスの製造方法
であって、前記緑変防止処理は、前記にんにくの粉砕物を、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合する前に、pH4.3未満になるように低pH処理を施すことである、香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項2】
前記低pH処理は、前記にんにくの粉砕物を、前記香味野菜ミックスよりも低いpHになるように行う、請求項
1記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項3】
前記にんにくの粉砕物の含有量を10質量部としたとき、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の含有量を3.8質量部以下とすることである、請求項
1又は2記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項4】
前記にんにくの粉砕物の含有量が10~94質量%、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の含有量が1~85質量%、前記にんにくの粉砕物、及び前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の合計含有量が11~95質量%となるように混合する、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項5】
前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物は、長ねぎの粉砕物である、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項6】
前記香味野菜ミックスに、更に、しょうがの粉砕物を含有せしめる、請求項1~5のいずれか1項に記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【請求項7】
更に、絞り出しチューブ容器に充填する工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の香味野菜ミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味野菜ミックス及び香味野菜ミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
にんにく、しょうが等の香味野菜類は、調理の際には、みじん切りにしたり、すりおろしたりして用いるので、不便を感じる消費者も多く、その加工の手間を省くために、予めみじん切りやすりおろしなどの加工を施したものを絞り出しチューブ容器に包装した製品も上市されている。
【0003】
一方、長ねぎやたまねぎ等の葱類は、にんにく等とひとしく調理に汎用される香味野菜類であり、それらを合わせて配合した調理品も多いが、にんにくと葱類とを合わせて製品とした場合に、にんにくの色調が緑色に変色する緑変の現象が知られていた(例えば非特許文献1参照)。この緑変の現象は、風味や健康に影響はないが、見た目の悪さが消費意欲にかかわるという問題があった。
【0004】
にんにくの緑変防止については、特許文献1,2には、ペースト状のにんにく製品を提供するに際しては、にんにくの風味の保存性等の観点からpHを5.0以下に調製することが望まれるところ、pH5.0以下のペースト状に調製されたにんにく自体にも緑変の問題があり、その緑変を防止するには休眠期のにんにく粒を利用するのがよいことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】今井真介著「調理研究から始まった、涙の出ないタマネギの開発」日本調理科学会誌(2017)、Vol. 50, No. 3, pp114-117
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭53-107443号公報
【文献】特開昭53-113051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2記載の技術では、ペースト状のにんにく製品のそのにんにく自体の緑変の防止には一定の効果を示すものの、更に葱類と合わせて製品とした場合に生じる緑変については、効果的に防止することができないという問題があった。また、より確実な緑変防止のためには加熱処理によらなければならず(上記特許文献2)、その加熱処理により、にんにくの風味に影響が出てしまうという問題があった。
【0008】
よって、本発明の目的は、にんにくと、葱類等のにんにくの緑変を引き起こす香味野菜類とを合わせて製品とする場合であっても、そのにんにくの色調が緑色に変色する緑変を防止することにより、すぐれた品質の製品となすことができる、香味野菜ミックス及び香味野菜ミックスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意研究した結果、にんにくの粉砕物を適切に処理することにより、にんにくの緑変を引き起こす香味野菜類と合わせて製品とする場合であっても、そのにんにくの色調が緑色に変色する緑変の問題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、その第1の観点では、にんにくの粉砕物と、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物とを含有し、pH3.5~4.3に調整され、前記にんにくの粉砕物の緑変が防止されていることを特徴とする香味野菜ミックスを提供するものである。
【0011】
上記香味野菜ミックスにおいては、前記にんにくの粉砕物を10~94質量%含有し、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物を1~85質量%含有し、前記にんにくの粉砕物、及び前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物を合計で11~95質量%含有することが好ましい。
【0012】
また、上記香味野菜ミックスにおいては、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物は、長ねぎの粉砕物であることが好ましい。
【0013】
また、上記香味野菜ミックスにおいては、更に、しょうがの粉砕物を含有することが好ましい。
【0014】
また、上記香味野菜ミックスにおいては、絞り出しチューブ容器に充填されていることが好ましい。
【0015】
一方、本発明は、その第2の観点では、にんにくの粉砕物と、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物とを、前記にんにくの粉砕物の緑変防止処理を施して混合し、pH3.5~4.3に調整することを特徴とする香味野菜ミックスの製造方法を提供するものである。
【0016】
上記香味野菜ミックスの製造方法においては、前記緑変防止処理は、前記にんにくの粉砕物を、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合する前に、pH4.3未満になるように低pH処理を施すことであることが好ましい。また、この場合、前記低pH処理は、前記にんにくの粉砕物を、前記香味野菜ミックスよりも低いpHになるように行うことが好ましい。
【0017】
また、上記香味野菜ミックスの製造方法においては、前記緑変防止処理は、前記にんにくの粉砕物の含有量を10質量部としたとき、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の含有量を3.8質量部以下とすることであることが好ましい。
【0018】
また、上記香味野菜ミックスの製造方法においては、前記にんにくの粉砕物の含有量が10~94質量%、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の含有量が1~85質量%、前記にんにくの粉砕物、及び前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の合計含有量が11~95質量%となるように混合することが好ましい。
【0019】
また、上記香味野菜ミックスの製造方法においては、前記にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物は、長ねぎの粉砕物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、にんにくと、葱類等のにんにくの緑変を引き起こす香味野菜類を含有する香味野菜ミックスにおいて、そのにんにくの色調が緑色に変色する緑変を防止することにより、すぐれた品質の製品となすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】試験例1における実施例1に相当するサンプルと比較例1に相当するサンプルの当該色調変化の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかる香味野菜ミックスは、にんにくの粉砕物と、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物とを含有するものである。そしてそのにんにくの粉砕物の緑変が防止されていることを特徴とするものである。
【0023】
本明細書において「粉砕物」とは香味野菜の通常の調理加工形態であればよく、みじん切り状、おろし状、破砕状、ペースト状等の形態に特に制限はない。
【0024】
本明細書において「緑変」とは、通常、にんにくの粉砕物が乳白色~黄色を呈するところ、緑色の色調に変化すること、あるいは変化していることをいう。
【0025】
乳白色~黄色かどうかは、一例として、マンセル色立体にて、色相Yにおいて明度が9から10の全ての彩度のいずれかであるか、明度8における彩度が4から14のいずれかであるか、明度7の彩度6から12のいずれかまたは、近似する色を示すことで確認することができる。
【0026】
緑色かどうかは、一例として、マンセル色立体にて、色相GYにおいて明度が8における4から10の全ての彩度のいずれかであるか、明度7における彩度が4から12のいずれかであるか、明度6における彩度が4から10のいずれかであるか、明度5における彩度が4から8のいずれかであるか、明度4における彩度が4から6のいずれかであるか、色相Gにおいて明度が8における4から6の全ての彩度のいずれかであるか、明度7における彩度が4から8のいずれかであるか、明度6における彩度が4から10のいずれかであるか、明度5における彩度が2から10のいずれかであるか、明度4における彩度が4から10のいずれかであるか、明度3における彩度が4から8のいずれかであるか、色相BGにおいて明度が8における4から6の全ての彩度のいずれかであるか、明度7における彩度が4から8のいずれかであるか、明度6における彩度が2から8のいずれかであるか、明度5における彩度が2から8のいずれかであるか、明度4における彩度が4から8のいずれかであるか、明度3における彩度が4から6のいずれかまたは、近似する色を示すことで確認することができる。
【0027】
緑変確認方法の一例としては、香味野菜ミックスを包装容器に入れ40℃、湿度80%で保存し、24時間以内で色調が緑色に変化することにより確認でき、この緑変を経た後、緑色は退色し褐変が促進される。その緑変は光学測定することもできる。
【0028】
本発明にかかる香味野菜ミックスには、にんにくの粉砕物を10~94質量%含有せしめることが好ましく、好ましくは15~40質量%、更に20~30質量%含有せしめることがより好ましい。また、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物を、1~85質量%含有せしめることが好ましく、好ましくは10~40質量%、更に10~20質量%含有せしめることがより好ましい。また、そのにんにくの粉砕物とにんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物との合計で11~95質量%含有せしめることが好ましく、好ましくは25~80質量%、更に30~50質量%含有せしめることがより好ましい。上記範囲未満であると、各香味野菜をミックスして調理品にその風味等を付与する効果に乏しくなる場合がある。また、上記範囲を超えると、他の素材を含有せしめることが困難になる場合がある。
【0029】
本発明において、にんにく以外のヒガンバナ科植物としては、それと合わせるにんにくに緑変を引き起こす可食植物であればよく、特に制限はないが、例えば長ねぎ、あさつき、たまねぎ、西洋ねぎ、エシャロット、にら等の葱類が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記香味野菜ミックスには、限定されない任意の態様において、しょうが、大根、みょうが、しそ、みつ葉、セロリ、パセリ、わさび、ごま、松の実、くるみ、桜えび、ちりめんじゃこ等を加えることができる。具体的にはしょうがを含有せしめてもよい。この場合、しょうがの粉砕物を10~65質量%含有せしめることが好ましく、好ましくは10~40質量%、更に15~30質量%含有せしめることがより好ましい。また、そのにんにくの粉砕物とにんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物としょうがの粉砕物の合計で40~95質量%含有せしめることが好ましく、好ましくは50~80質量%、更に60~70質量%含有せしめることがより好ましい。上記範囲未満であると、各香味野菜をミックスして調理品にその風味等を付与する効果に乏しくなる場合がある。また、上記範囲を超えると、他の素材を含有せしめることが困難になる場合がある。
【0031】
なお、上記香味野菜の粉砕物の好ましい含有量は、その香味野菜としてホール、フレーク、パウダー状等の乾燥物の状態に調製された素材等を用いた場合には、湿重量、すなわち当該香味野菜の生鮮換算の値であるものとする。具体的には、例えば、日本食品標準成分表によれば、にんにくは水分が63.9%であり、根深ねぎは水分が89.6%であるので、このような値を用いて生鮮換算され得る。
【0032】
本発明においては、上記した素材以外にも、他の素材を適宜含有せしめてもよい。酸味料、糖類、加工デンプン、食塩、調味料、増粘剤、アルコール製剤、糖アルコール、野菜、果実、香辛料、ハーブ、香料等が挙げられる。
【0033】
本発明においては、上記にんにくの粉砕物には、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合する際、緑変防止処理を施す必要がある。すなわち、にんにくの粉砕物が葱類等と合わされるとにんにくの色調が緑色に変化する緑変が生じるところ、その際に緑変防止処理を施すことにより、製品としたときにも色調変化が防止される。以下、その緑変防止処理について説明する。
【0034】
(低pH処理)
限定されない任意の態様において、緑変防止処理は、にんにくの粉砕物を、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合する前に、pH4.3未満になるようにする処理である。この低pH処理は、にんにくの風味維持の観点からは、pH2.7以上pH4.3未満で行うことが好ましい。また、緑変防止効果を高める観点ではpH2.7以上pH3.2以下で行うことが好ましい。その際、得られる香味野菜ミックスよりも低いpH、より具体的にはpHの値にして0.3~1.1分低い値のpHになるように行うことを目安に、緑変抑制のための低pH処理を行ってもよい。
【0035】
低pH処理は、にんにくの粉砕物が所定のpHになるようにすればよく、その処理は、例えば酸味料の添加により行なうことができる。この低pH処理を効率よく行なうには、混合、攪拌、浸漬等の処理をすればよく、装置や処理量により一概にはいえないが、例えば攪拌又は浸漬であれば、1分間以上撹拌又は浸漬する処理であることが好ましい。酸味料としては、通常食用に用いられるものを使用すればよく、特に制限はない。例えばクエン酸、酢酸、フィチン酸、グルコン酸、発酵乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸、アジピン酸等が挙げられる。酸味料は2種以上を併用してもよい。このとき酸味料による低pH処理の効果を妨げない範囲であれば、適宜他の素材とともに低pH処理を行ってもよい。例えば、ソルビトール等の糖アルコール類は、にんにくの粉砕物に酸味料による低pH化の効果を万遍なく付与するのに、効果的である場合がある。
【0036】
上記した低pH処理の後には、にんにくの粉砕物は、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合されてよい。その際、必要に応じて他の原料を共に混合してもよい。ただし、本発明にかかる香味野菜ミックスは、最終pHがpH3.5~4.3となるように調製される。これにより、緑変防止の効果を効果的に維持することができる。また、風味の維持にも問題がない。なお、pH3.5未満では、風味が酸っぱくなりやすい。
【0037】
(配合調整)
限定されない任意の別の態様において、緑変防止処理は、にんにくの粉砕物を、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物と混合する際に、配合を調整する処理である。より具体的には、にんにくの粉砕物の含有量を10質量部としたとき、にんにく以外のヒガンバナ科植物の可食部の粉砕物の含有量を3.8質量部以下とする処理である。その際、必要に応じて、任意のタイミングで他の原料を共に混合してもよい。ただし、本発明にかかる香味野菜ミックスは、上述したとおり最終pHがpH3.5~4.3となるように調製される。これにより、緑変防止の効果を効果的に維持することができる。また、風味の維持にも問題がない。なお、pH3.5未満では、風味が酸っぱくなりやすい。
【0038】
本発明にかかる香味野菜ミックスは、ビンや小袋、パウチ、チューブ等の容器に充填し包装することが好ましい。これによれば、内容物の新鮮さを、より長期にわたって保つことができる。更には、絞り出しチューブ容器に充填し、包装することが好ましい。これによれば、調理の際等の使用時には、容器の側面を圧迫することにより内容物を押出して適量排出させることができ、その使用者に煩わしさを感じさせることがない。
【実施例】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。ただし、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
<試験例1>
(比較例1)
表1に示す原料を使用して、比較例1の香味野菜ミックスを調製した。具体的には、休眠期おろしにんにく(解凍)と水、ソルビトールを高速攪拌装置にて1.5分間攪拌し、その後加工デンプン、食塩、増粘剤、アルコール製剤、おろししょうが(解凍)、みじん切り長ねぎ(解凍)、酸味料を更に加え、高速攪拌装置にて2分攪拌した。撹拌を完了した粉砕物を、絞り出しチューブ容器に充填した。
【0041】
(参考例1)
表1に示す原料を使用して、長ねぎを配合しない以外は比較例1の調製と同様にして、参考例1の香味野菜ミックスを調製した。
【0042】
(実施例1,2)
表1に示す原料を使用して、実施例1,2の香味野菜ミックスを調製した。具体的には、休眠期おろしにんにく(解凍)と水、酸味料、ソルビトールを高速攪拌装置にて1.5分間攪拌した。このときpHはpH2.7~3.3であった。その後加工デンプン、食塩、増粘剤、アルコール製剤、おろししょうが(解凍)、みじん切り長ねぎ(解凍)を更に加え、高速攪拌装置にて2分間攪拌した。混合を完了した粉砕物を、絞り出しチューブ容器に充填した。
【0043】
(実施例3,4)
表1に示す原料を使用して、実施例3,4の香味野菜ミックスを調製した。具体的には、すべての原料を混合して高速攪拌装置にて2分間攪拌し、撹拌を完了した粉砕物を絞り出しチューブ容器に充填した。
【0044】
【0045】
得られた各香味野菜ミックスについて、包装容器に充填した状態で、55℃、湿度80%で、24時間保存したときの色調変化を、それぞれ下記基準により評価した。また、比較例1以外の香味野菜ミックスについては、風味についても官能評価を行い、パネラー5人による香りと味の評価を集約することによる評価結果を得た。
【0046】
なお、
図1に、実施例1に相当するサンプルの当該色調変化と、比較例1に相当するサンプルの当該色調変化とを、写真で示す。
【0047】
(評価基準)
○:緑変なし
△:わずかな色調変化を認める
×:緑変あり
××:大きく緑変あり
結果を表2に示す。
【0048】
【0049】
その結果、以下のことが明らかとなった。
【0050】
(1)比較例1にみられるように、にんにく10質量部に対して、長ねぎ7.9質量部を配合し、にんにくに対して低pH処理を施さないで調製した香味野菜ミックスでは、緑変が顕著であった。
【0051】
(2)参考例1にみられるように、長ねぎを配合しない参考例の香味野菜ミックスでは、緑変は起こらなかった。
【0052】
(3)実施例1,2にみられるように、にんにくに対して低pH処理を施したうえ、長ねぎと混合して調製した香味野菜ミックスでは、上記保存条件で緑変がなく、風味も問題がないという評価であった。
【0053】
(4)実施例3,4にみられるように、にんにく10質量部に対して、長ねぎ3.8質量部を配合して調製した香味野菜ミックスでは、にんにくに対して低pH処理を施さないで調製しても、緑変は起こらなかった。また、風味も問題がないという評価であった。
【0054】
以上から、にんにくを含有する香味野菜ミックスでは、長ねぎの配合により緑変が起こり、にんにくに予め低pH処理を施すことにより、その緑変を防げることが明らかとなった。また、長ねぎの配合割合が所定量以下の場合には、最終pHをpH4.3以下に調整することのみで、緑変を防げることが明らかとなった。
【0055】
<試験例2>
(実施例5~10)
表3に示す原料を使用して、実施例5~10の香味野菜ミックスを調製した。具体的には、酸味料として発酵乳酸、グルコン酸、クエン酸、酢酸、及びフィチン酸からなる各種のものを用いた以外は、実施例1,2と同様にして香味野菜ミックスを調製し、絞り出しチューブ容器に充填した。
【0056】
【0057】
得られた各香味野菜ミックスについて、包装容器に充填した状態で、40℃、湿度80%で、24時間保存したときの色調変化と風味について、試験例1と同様にして評価した。
【0058】
結果を表4に示す。
【0059】
【0060】
その結果、実施例5~10にみられるように、各種の酸味料を用い、にんにくに予め低pH処理を施して調製した香味野菜ミックスでは、上記保存条件で緑変がなく、風味も問題がないという評価であった。
【0061】
よって、酸味料の種類によらずに緑変防止効果が得られることが明らかとなった。
【0062】
(実施例11)
生の休眠期にんにく片29質量部と水5.8質量部、酸味料1.7質量部、ソルビトール9質量部を高速攪拌装置にて1.5分間粉砕・攪拌し、おろし状に粉砕した。このときpHはpH2.7~3.3であった。その後加工デンプン5質量部、食塩3質量部、増粘剤0.5質量部、アルコール製剤10質量部、生しょうが片25質量部、生長ねぎ11質量部を更に加え、高速攪拌装置にて2分間粉砕・攪拌した。混合を完了した粉砕物を、絞り出しチューブ容器に充填し香味野菜ミックス(最終pH3.82)を得た。得られた各香味野菜ミックスを、包装容器に充填した状態で、40℃、湿度80%で、24時間保存し確認したところ、緑変は発生せず風味もよい香味野菜ミックスであった。
【0063】
(実施例12)
乾燥休眠期にんにくフレーク10.15質量部と水24.65質量部、酸味料1.7質量部、ソルビトール9質量部を高速攪拌装置にて1.5分間攪拌し、おろし状に粉砕した。このときpHはpH2.7~3.3であった。その後加工デンプン5質量部、食塩3質量部、増粘剤0.5質量部、アルコール製剤10質量部、おろししょうが(解凍)25質量部、きざみ長ねぎ11質量部を更に加え、高速攪拌装置にて2分間攪拌した。混合を完了した粉砕物を、絞り出しチューブ容器に充填し香味野菜ミックス(最終pH3.82)を得た。得られた各香味野菜ミックスを、包装容器に充填した状態で、40℃、湿度80%で、24時間保存し確認したところ、緑変は発生せず風味もよい香味野菜ミックスであった。