(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】マスクホルダ、固定装置、イオン照射方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/266 20060101AFI20231122BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01L21/265 M
H01L21/265 603D
(21)【出願番号】P 2019203723
(22)【出願日】2019-11-11
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】500216466
【氏名又は名称】住重アテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】仲田 有希
(72)【発明者】
【氏名】井上 剛
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157795(JP,A)
【文献】特開昭62-155518(JP,A)
【文献】特開2003-068621(JP,A)
【文献】特開2018-093127(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216085(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/266
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタルマスクを介してウェハにイオン照射をするために前記メタルマスクを保持するマスクホルダであって、
前記メタルマスクのマスクパターンを覆うように前記メタルマスクに対してウェハ側に配置され、樹脂材料で形成されるウェハ保護膜と、
前記メタルマスクおよび前記ウェハ保護膜を保持する保持構造と、を備え
、
前記保持構造は、前記イオン照射の際に前記メタルマスクから外部への電流経路を形成することを特徴とするマスクホルダ。
【請求項2】
前記ウェハ保護膜は、前記メタルマスクのアライメント開口も覆うように前記メタルマスクに対してウェハ側に配置され、前記アライメント開口および前記ウェハ保護膜を通じて前記ウェハのアライメントマークを観察可能とするように透明または半透明であることを特徴とする請求項1に記載のマスクホルダ。
【請求項3】
前記保持構造は、前記マスクパターンが前記ウェハ保護膜から隙間をあけて配置されるように前記メタルマスクおよび前記ウェハ保護膜を保持することを特徴とする請求項1
または2に記載のマスクホルダ。
【請求項4】
前記マスクホルダは、前記メタルマスクを備え、前記マスクパターンが前記ウェハ保護膜上に形成されていることを特徴とする請求項1
または2に記載のマスクホルダ。
【請求項5】
前記マスクパターンを覆うように前記メタルマスクに対して前記ウェハ保護膜とは反対側に配置されるもう1つの保護膜をさらに備えることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載のマスクホルダ。
【請求項6】
前記樹脂材料は、ポリイミド、ポリアミド、またはポリエーテルエーテルケトンを含むことを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載のマスクホルダ。
【請求項7】
メタルマスクを介してウェハにイオン照射をするために前記メタルマスクを前記ウェハに対して固定する固定装置であって、
請求項1から
6のいずれかに記載のマスクホルダと、
前記ウェハを保持するとともに、前記マスクホルダと結合されるウェハホルダと、を備え、
前記ウェハを収容し外界から隔てられるウェハ収容室が前記マスクホルダと前記ウェハホルダとの間に形成されることを特徴とする固定装置。
【請求項8】
メタルマスクとウェハの間にウェハ保護膜を配置した状態で前記メタルマスクと前記ウェハとを位置合わせする工程と、
前記メタルマスクおよび前記ウェハ保護膜を介して前記ウェハにイオンを照射する工程と、を備え、
前記ウェハ保護膜は、樹脂材料で形成され、前記メタルマスクに対してウェハ側で前記メタルマスクのマスクパターンを覆
っており、
イオン照射の際に前記メタルマスクから外部への電流経路が形成されることを特徴とするイオン照射方法。
【請求項9】
前記ウェハ保護膜は、透明または半透明であり、前記メタルマスクに対してウェハ側で前記メタルマスクのアライメント開口も覆い、
前記位置合わせする工程は、前記アライメント開口および前記ウェハ保護膜を通じて前記ウェハのアライメントマークを観察することを含むことを特徴とする請求項
8に記載のイオン照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン照射に用いるメタルマスクを保持するマスクホルダ、メタルマスクをウェハに対して固定する固定装置、およびイオン照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェハ等の半導体基板に様々な微細加工を施すことで、半導体集積回路が製造される。集積回路の性能を向上させるため、半導体基板にヘリウム等のイオンを照射して欠陥領域が形成されることがある。例えば、ダイオードを内蔵する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の製造工程において、マスクを使用してイオン照射することにより、ダイオードが形成される箇所に欠陥領域が選択的に形成される。ダイオード領域に選択的に欠陥を形成することで、ダイオードの逆回復特性が向上しうる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン照射に使用されるマスクには主に、レジストマスク、シリコンマスク、メタルマスクがある。レジストマスクはフォトリソグラフィを利用するのでマスクパターンを良好な精度で製作しやすいが、イオン照射のたびにウェハに形成し照射後に除去しなければならず、コストがかかる。とくに、高エネルギーのイオン照射ではイオン遮蔽のためにレジスト膜厚を大きくすることを要し、コストだけでなく技術的な困難さも増す。シリコンマスクはマスクからウェハへの重金属汚染の懸念がない点で有利であるが、外力に弱く割れやすいので、取り扱いが難しい。
【0005】
メタルマスクは、1枚のマスクを何回も繰り返し使用することができるので、コスト面で有利である。しかし、メタルマスクからウェハへの重金属汚染を避けるために、メタルマスクに適する材料と加工方法は限定され、このことがメタルマスクのマスクパターンの精度を向上するうえで制約となっている。また、メタルマスクに付着した汚染物質は洗浄により除去されうるが、実際には汚染物質を完全に除去することは容易でなく、残留する汚染物質がイオン照射中にメタルマスクからウェハに広がり、ウェハを汚染する懸念がある。
【0006】
本発明のある態様の例示的な目的のひとつは、メタルマスクを使用するイオン照射におけるウェハの汚染リスクを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、メタルマスクを介してウェハにイオン照射をするためにメタルマスクを保持するマスクホルダである。マスクホルダは、メタルマスクのマスクパターンを覆うようにメタルマスクに対してウェハ側に配置され、樹脂材料で形成されるウェハ保護膜と、メタルマスクおよびウェハ保護膜を保持する保持構造と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は、メタルマスクを介してウェハにイオン照射をするためにメタルマスクをウェハに対して固定する固定装置である。固定装置は、上記のマスクホルダと、ウェハを保持するとともに、マスクホルダと結合されるウェハホルダと、を備え、ウェハを収容し外界から隔てられるウェハ収容室がマスクホルダとウェハホルダとの間に形成される。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、イオン照射方法である。この方法は、メタルマスクとウェハの間にウェハ保護膜を配置した状態でメタルマスクとウェハとを位置合わせする工程と、メタルマスクおよびウェハ保護膜を介してウェハにイオンを照射する工程と、を備える。ウェハ保護膜は、樹脂材料で形成され、メタルマスクに対してウェハ側でメタルマスクのマスクパターンを覆う。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メタルマスクを使用するイオン照射におけるウェハの汚染リスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に係るイオン照射装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】実施の形態に係るマスクホルダとメタルマスクの概略上面図である。
【
図3】
図2に示されるマスクホルダとメタルマスクのA-A断面の一部を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】イオン照射中のマスクホルダとメタルマスクを、ウェハホルダ、ウェハとともに模式的に示す部分断面図である。
【
図5】他の実施の形態に係るマスクホルダとメタルマスクを模式的に示す部分断面図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)は、マスクパターンの例を示す概略図である。
【
図7】実施の形態に係るマスクアライナの構成を模式的に示す側面図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、
図7に示されるマスクアライナにおけるメタルマスクとウェハの位置合わせを示す模式図である。
【
図9】実施の形態に係るイオン照射方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下の説明において参照する図面において、各構成部材の大きさや厚みは説明の便宜上のものであり、必ずしも実際の寸法や比率を示すものではない。
【0014】
図1は、実施の形態に係るイオン照射装置50の構成を模式的に示す図である。イオン照射装置50は、ビーム生成装置52と、ビーム輸送装置54と、照射処理室56とを備える。ビーム生成装置52は、サイクロトロン方式やバンデグラフ方式の加速器を備えており、例えば、1MeV~100MeV程度の加速エネルギーを有するイオンビームBを生成する。ビーム輸送装置54は、ビーム生成装置52で生成されたイオンビームBを照射処理室56に輸送する。
【0015】
ビーム輸送装置54には、偏向装置60、ビームスリット62、アブソーバ64が設けられる。偏向装置60は、ビーム生成装置52からのイオンビームBを電界式または磁界式でスキャンし、ウェハ12の全体がイオンビームBにより順次走査されるようにする。スキャンされたビームBは、ビームスリット62およびアブソーバ64を通過する。照射面積を一定に保つためにビームスリット62によってビームBは成形され、成形されたビームBがアブソーバ64を通じてウェハ12に到達する。アブソーバ64は、アルミニウム(Al)等の材料で構成されるエネルギー減速板であり、アブソーバ64を通過するイオンビームBを減速させて所望のエネルギーを有するように調整する。
【0016】
イオン照射装置50においては、メタルマスク14を介してウェハ12にイオン照射をするためにメタルマスク14をウェハ12に対して固定する固定装置18が使用される。ウェハ12は、ウェハホルダ20に保持され、メタルマスク14は、マスクホルダ40に保持される。マスクホルダ40は、ウェハホルダ20とともに固定装置18を構成する。ウェハホルダ20は、たとえば適当な固定具を用いて、マスクホルダ40と結合される。固定装置18は、イオン照射中にウェハ12に対してメタルマスク14が動かないように位置決めするための固定治具である。固定装置18は、搬送プレート66に取り付けられ、照射処理室56に搬送される。
【0017】
メタルマスク14は、ウェハ12よりもイオンビームBの進行方向の手前側に配置される。したがって、スキャンされたビームBは、メタルマスク14越しにウェハ12に入射する。メタルマスク14は、部分的に開口が形成されたパターン部を有し、入射するイオンビームBの一部を遮蔽し、残りの部分を通過させる。イオンビームBの照射により、ウェハ12の内部にはメタルマスク14のパターンに応じた位置に欠陥領域が形成される。
【0018】
メタルマスク14は、ウェハ12を覆うことのできる大きさを有する。メタルマスク14は、例えば、ステンレス鋼(SUS)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、またはその他の重金属、またはこれらの合金で形成される。メタルマスク14は、たとえば、42アロイのように、ウェハ12の熱膨張率に近い熱膨張率をもつ低熱膨張合金で形成されてもよい。ただし、メタルマスク14の形状および材質はこれに限定されない。メタルマスク14は、アルミニウム(Al)またはアルミ材で形成されてもよい。
【0019】
イオン照射装置50は、イオンビームに関する様々なパラメータ、例えば、イオン種、加速エネルギー、イオン照射量(ビーム電流、照射時間)、イオン照射方向を調整することができるように構成されている。イオン照射に用いられるイオン種は、H、He、B、C、N、O、Ne、Si、Ar、Kr、Xeからなる群より選択される少なくとも1種の原子がイオン化されたものが挙げられる。具体的には、例えば、1H+、2H+、3He2+、4He2+などが挙げられる。イオン照射システム10は、イオン照射を0.001MeV以上の加速エネルギーで行ってもよい。あるいは、0.1MeV以上の加速エネルギーで行ってもよい。また、イオン照射を100MeV以下の加速エネルギーで行ってもよい。あるいは、30MeV以下の加速エネルギーで行ってもよい。
【0020】
イオンが照射されるウェハ12は典型的には、円形のシリコン基板であるが、ウェハ12の形状および材質はこれに限定されず、その他の半導体基板であってもよい。ウェハ12は、例えば300mm以下の直径を有し、例えば300mmまたは250mmまたは200mmまたは150mmの直径を有しうる。ウェハ12は、例えば50μm~1.5mm程度の厚みを有してもよく、例えば100μm~900μm程度の厚みを有してもよい。
【0021】
ウェハ12にイオン照射が行われると、ウェハ内部のある深さにまでイオンが到達する。その際、到達した領域を含む近傍では格子欠陥が形成され、結晶の規則性(周期性)が乱れた状態となる。このような格子欠陥が多い領域では電子が散乱されやすくなり、電子の移動が阻害される。つまり、イオン照射により局所的な格子欠陥が生じた領域では、抵抗率が上昇することになる。イオン照射装置50において上述のパラメータを調整することにより、ウェハ中の欠陥層の面内位置、深さ位置、深さ方向の幅、抵抗率の大きさを適宜設定できる。なお、イオン照射により得られる欠陥層は、高抵抗領域を形成する目的の他に、キャリアのライフタイム制御層を形成する目的など、様々な用途に用いることができる。
【0022】
イオン照射装置50には、イオン照射量を計測するために電流計68が設けられていてもよい。電流計68は、搬送プレート66とアブソーバ64に接続されている。そのため、電流計68は、メタルマスク14とウェハ12に照射され搬送プレート66に流れる電流値(I1)とアブソーバ64に流れる電流値(I2)の合計を計測する。
【0023】
また、マスクアライナ70が照射処理室56の外に設けられていてもよい。マスクアライナ70は、イオン照射装置50とともにイオン照射システムを構成してもよい。マスクアライナ70は、ウェハ12とメタルマスク14の位置合わせ(アライメント)、ウェハホルダ20とマスクホルダ40の固定および固定解除に用いられる。矢印71で図示されるようにして、互いに位置合わせされたウェハ12とメタルマスク14を収めた固定装置18が搬送プレート66とともに、マスクアライナ70から照射処理室56へと搬送され、照射処理室56でイオン照射が行われ、照射処理室56からマスクアライナ70に再び搬送される。
【0024】
図2は、実施の形態に係るマスクホルダ40とメタルマスク14の概略上面図である。
図3は、
図2に示されるマスクホルダ40とメタルマスク14のA-A断面の一部を模式的に示す部分断面図である。マスクホルダ40とメタルマスク14は左右対称の構成であるため、
図3には簡潔のために右側のみを示す。
図3において上側がビーム上流側にあたり、下側がウェハ側にあたる。
【0025】
メタルマスク14は、マスクパターン15とアライメント開口16を有するプレートである。このプレートは、ウェハ12の直径より大きい幅と長さをもち、矩形(たとえば正方形)であってもよい。メタルマスク14の厚さは、例えば1mm未満(例えば約0.1mm)であってもよい。メタルマスク14は、上述のように、金属で形成されている。メタルマスク14は、たとえば、フォトエッチングなどの微細加工技術、またはエレクトロフォーミングなどの精密薄膜形成技術を用いて製作される。
【0026】
マスクパターン15とアライメント開口16は、プレート上でウェハ12に相当する領域の内側に配置される。このパターン配置領域はウェハ12と同じ直径の円形であってもよい。領域内には互いに縦横に隣接する多数のパターンエリアが含まれ、各パターンエリアにマスクパターン15が形成される。マスクパターン15の例は後述する。アライメント開口16は、メタルマスク14越しにウェハ12上のアライメントマークまたはその他の部位を観察するための貫通孔であり、メタルマスク14上のパターン配置領域内でマスクパターン15よりも外側に位置する。一例として、4つのアライメント開口16がメタルマスク14の中心まわりに均等に設けられ、各アライメント開口16は同じ大きさの円形である。
【0027】
マスクホルダ40は、ウェハ保護膜41と、上流側保護膜42と、保持構造43とを備える。ウェハ保護膜41は、メタルマスク14のマスクパターン15を覆うようにメタルマスク14に対してウェハ側に配置され、上流側保護膜42は、マスクパターン15を覆うようにメタルマスク14に対してウェハ保護膜41とは反対側(すなわちビーム上流側)に配置される。保持構造43は、メタルマスク14、ウェハ保護膜41および上流側保護膜42をこれらの外周部で挟み込むようにして保持する。
【0028】
ウェハ保護膜41は、樹脂材料で形成されるフィルムである。ウェハ保護膜41は、ウェハ12に面するメタルマスク14の表面を全体的に覆い、それにより、メタルマスク14によるウェハ12の重金属汚染や、メタルマスク14からウェハ12へのその他の汚染物質の移動からウェハ12を保護する。ウェハ保護膜41は、メタルマスク14のマスクパターン15だけでなく、アライメント開口16も覆う。
【0029】
ウェハ保護膜41は、メタルマスク14とともに保持構造43で挟持されるように、メタルマスク14と同じ外寸を有するか、またはメタルマスク14よりいくらか小さい外寸を有してもよい。ウェハ保護膜41は、メタルマスク14と同様に、矩形であってもよい。
【0030】
ウェハ保護膜41は、イオンビームBへの影響をなるべく小さくするように設計され、アブゾーバのようにイオンビームBを減速させることも、イオンビームBを遮蔽することも意図されていない。そのため、ウェハ保護膜41は、十分に薄いことが好ましく、ウェハ保護膜41の厚さは、例えば、メタルマスク14より薄くてもよい。ウェハ保護膜41の厚さは、メタルマスク14の厚さの半分より薄くてもよい。ウェハ保護膜41は、例えば、0.01mmより厚くてもよい。
【0031】
ウェハ保護膜41は、アライメント開口16およびウェハ保護膜41を通じてウェハ12のアライメントマークを観察可能とするように透明または半透明であることが好ましい。このようにすれば、メタルマスク14とウェハ12のアライメントが容易になる。また、ウェハ保護膜41は、イオン照射を受けるので、耐放射線性と耐熱性を有することが望ましい。そこで、ウェハ保護膜41を形成する樹脂材料の仕様上の耐熱温度は、たとえば、200℃以上であってもよい。また、樹脂材料のガラス転移温度は、たとえば、200℃以上であってもよい。
【0032】
したがって、ウェハ保護膜41を形成する樹脂材料は、ポリイミド、ポリアミド、またはポリエーテルエーテルケトンを含んでもよい。これらの樹脂材料は、上述の条件、つまり、透明性、耐放射線性、および耐熱性を満たしうる。好ましくは、ウェハ保護膜41は、ポリイミドで形成される。ポリイミドは、耐放射線性と耐熱性に優れる。また、ポリイミドは、琥珀色(半透明)または無色透明のフィルムとして容易に入手可能である。
【0033】
上流側保護膜42は、ウェハ保護膜41と同じ形状、材料とすればよい。上流側保護膜42を設けることにより、メタルマスク14からの重金属汚染またはその他の汚染物質が照射処理室56またはイオン照射装置50の上流側へと広がることを防止することができる。ただし、必要に応じて、上流側保護膜42は、ウェハ保護膜41と異なる設計とされてもよい。また、上流側保護膜42は、省略されてもよい。
【0034】
保持構造43は、一組の補強フレーム44(上フレーム44a、下フレーム44b)と、一組のスペーサー板45とを備える。スペーサー板45は、メタルマスク14の上下両側に設けられる。すなわち、一方のスペーサー板45がウェハ保護膜41とメタルマスク14の間に挿入され、他方のスペーサー板45が上流側保護膜42とメタルマスク14の間に挿入されている。このようなウェハ保護膜41、上流側保護膜42、メタルマスク14、およびスペーサー板45からなる積層構造が、補強フレーム44(上フレーム44a、下フレーム44b)で上下に支持される。補強フレーム44とスペーサー板45は、例えば、アルミ材、SUSなど金属で形成される。
【0035】
上フレーム44aと下フレーム44bは、例えば固定ねじ46を用いて固定される。補強フレーム44には固定ねじ46用のねじ穴が形成され、ウェハ保護膜41、上流側保護膜42、メタルマスク14、およびスペーサー板45にも固定ねじ46を通す貫通孔が形成されている。なお、他の適切な固定手段が用いられてもよく、例えば、上フレーム44aと下フレーム44bの外側からこれらを挟み込むクリップまたはブロックで上フレーム44aと下フレーム44bが機械的に固定されてもよい。あるいは、上フレーム44aと下フレーム44bそれぞれに磁石を組み込んで、上フレーム44aと下フレーム44bが磁力で固定されてもよい。
【0036】
補強フレーム44とスペーサー板45はそれぞれ、メタルマスク14のマスクパターン15とアライメント開口16を遮らないように、中心に開口を有する。一例として、補強フレーム44は、中心に矩形開口をもつ矩形枠であり、スペーサー板45は、中心に円形開口をもつ矩形プレートである。補強フレーム44とスペーサー板45の外寸は、メタルマスク14と同じであってもよい。スペーサー板45の円形開口は、メタルマスク14のパターン配置領域(上述)と同じ大きさであってもよい。補強フレーム44の矩形開口は、スペーサー板45の円形開口より大きい。
【0037】
補強フレーム44は、マスクホルダ40とメタルマスク14の形状を保持する役割を果たすために、相応の厚さとフレーム幅をもつ。補強フレーム44の寸法はメタルマスク14とウェハ12のサイズにもよるが、例えば、補強フレーム44の厚さは、少なくともメタルマスク14の厚さより大きく、例えば1mm~5mmであってもよい。フレーム幅は例えば1cm~5cmであってもよい。
【0038】
保持構造43は、マスクパターン15がウェハ保護膜41から隙間47をあけて配置されるようにメタルマスク14およびウェハ保護膜41を保持する。同様に、保持構造43は、マスクパターン15が上流側保護膜42から隙間47をあけて配置されるようにメタルマスク14および上流側保護膜42を保持する。ウェハ保護膜41(または上流側保護膜42)とメタルマスク14の間にはスペーサー板45が配置されているので、隙間47は、スペーサー板45の厚さにより規定される。スペーサー板45の厚さは、補強フレーム44の厚さより小さく、例えば、メタルマスク14の厚さと同程度であってもよい。
【0039】
ウェハ保護膜41(または上流側保護膜42)と隙間47は、マスクホルダ40の外からメタルマスク14のマスクパターン15に力が加わるとき(例えば、作業者が作業中に誤ってウェハ保護膜41を手で触れたとき)、緩衝材の役割を果たしうる。このように、ウェハ保護膜41(または上流側保護膜42)をマスクパターン15から離して配置することは、メタルマスク14の変形やマスクパターン15の損傷を防ぐことに役立つ。
【0040】
また、イオン照射中にイオンビームBによってメタルマスク14は加熱されるが、隙間47は、メタルマスク14からウェハ保護膜41(または上流側保護膜42)への熱伝達を抑える役割も果たす。メタルマスク14とウェハ保護膜41が接触している場合に比べて、イオン照射中のウェハ保護膜41の温度上昇を抑えることができる。これは、ウェハ保護膜41の温度が耐熱温度を超えることを防ぐのに役立つ。なお、ウェハ保護膜41が十分な耐熱性をもつ場合など、ウェハ保護膜41とメタルマスク14が接触してもよい場合には、スペーサー板45は省略されてもよい。
【0041】
図4は、イオン照射中のマスクホルダ40とメタルマスク14を、ウェハホルダ20、ウェハ12とともに模式的に示す部分断面図である。イオン照射中、メタルマスク14を保持したマスクホルダ40は、ウェハ12を保持したウェハホルダ20と結合される。固定装置18は、搬送プレート66上に取り付けられ、これらは照射処理室56に配置される。
【0042】
ウェハホルダ20にはウェハ12を受け入れるための凹部が形成され、この凹部内で外周に沿って下部スペーサー22が配置され、下部スペーサー22の上にウェハ12が配置されている。ウェハ12の外周部が下部スペーサー22を介してウェハホルダ20に支持されている。また、ウェハホルダ20の凹部内でウェハ12の外周部の上には、上部スペーサー23が配置されている。マスクホルダ40とウェハホルダ20は、例えばボルト、ねじなど適宜の固定手段により互いに固定される。このとき、上部スペーサー23の上面がウェハ保護膜41の下面と接触し、上部スペーサー23、ウェハ12、下部スペーサー22がウェハ保護膜41とウェハホルダ20との間に挟み込まれる。これにより、イオン照射中、ウェハ12の位置が保持される。
【0043】
上部スペーサー23によりウェハ保護膜41とウェハ12との間に空間が確保される。メタルマスク14と同様に、イオン照射中にイオンビームBによってウェハ12も加熱されるが、この空間は、ウェハ12からウェハ保護膜41への熱伝達を抑える役割も果たす。ウェハ12とウェハ保護膜41が接触している場合に比べて、イオン照射中のウェハ保護膜41の温度上昇を抑えることができ、ウェハ保護膜41の温度が耐熱温度を超えることを防ぐのに役立つ。
【0044】
なお、下部スペーサー22と上部スペーサー23はウェハ12と接触するので、ウェハ12の重金属汚染を避けるため、例えばアルミニウム、シリコン、樹脂などで形成される。
【0045】
マスクホルダ40とウェハホルダ20との間には、ウェハ12を収容するウェハ収容室24が形成される。ウェハ収容室24は、外界(すなわち、固定装置18の外部)から隔てられる。ウェハ12は、ウェハホルダ20とマスクホルダ40によって外界から隔離され、イオン照射中、および固定装置18の搬送中、汚染から保護される。
【0046】
イオンビームBがメタルマスク14に入射するとき、メタルマスク14はイオンビームBから電荷を得る。メタルマスク14の両側に位置するウェハ保護膜41と上流側保護膜42は、樹脂材料(例えばポリイミド)で形成されるので、多くの場合、絶縁性をもつ。仮に、メタルマスク14から電荷を逃がす経路が無かったとすると、イオン照射中にメタルマスク14に電荷が溜まってしまうチャージアップが発生する。そうすると、電流計68は、電流I1を正確に計測しがたくなる。
【0047】
そこで、マスクホルダ40の保持構造43は、イオン照射の際にメタルマスク14から外部への電流経路30を形成する。メタルマスク14とその周囲の金属部材との間で導通が確保されている。イオン照射によってメタルマスク14が受ける電荷は、メタルマスク14から、スペーサー板45、固定ねじ46、下フレーム44bを経て、ウェハホルダ20へと流れ、さらに、搬送プレート66を通じて電流計68へと流れることができる。もし、上フレーム44aにイオンが照射されたとしても、上フレーム44aから固定ねじ46を通じて下フレーム44bに電流を流すこともできる。
【0048】
また、ウェハ保護膜41の外寸がメタルマスク14、スペーサー板45よりも小さいので、電流経路30は、ウェハ保護膜41の外側にも形成される。メタルマスク14が受ける電荷は、メタルマスク14から、スペーサー板45と下フレーム44bの外周部を通じてウェハホルダ20へと流れる。図においては、ウェハ保護膜41の厚さを誇張して描いているので、スペーサー板45と下フレーム44bが厚さ方向に離れているようにみえる。しかし、実際にはウェハ保護膜41はきわめて薄く、上下の補強フレーム44が固定ねじ46で固定されるので、スペーサー板45と下フレーム44b(上フレーム44aも同様)は互いに接触し、導通は確保されている。
【0049】
図5は、他の実施の形態に係るマスクホルダ40とメタルマスク14を模式的に示す部分断面図である。
図5に示される実施の形態では、マスクパターン15がウェハ保護膜41上に形成されることを除いて、
図1から
図4を参照して述べた実施の形態と同じである。以下では、相違する構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。
【0050】
メタルマスク14は、マスクパターン15を形成するメタル層100と、中間層102と、ウェハ保護膜41とを備える。メタル層100は、たとえばニッケルで形成されるが、上述のように、適する他の金属材料で形成されてもよい。ウェハ保護膜41は、たとえばポリイミドで形成されるが、上述のように、適する他の樹脂材料で形成されてもよい。中間層102は、メタル層100とウェハ保護膜41との接着性を良好にするために設けられ、たとえば銅またはその他の金属材料で形成されてもよい。中間層102とウェハ保護膜41は十分に薄い膜厚を有するので、イオン照射の際にイオンビームの透過を妨げない。なお、ポリイミド層の表面に銅薄膜(例えば数μm程度)を形成したフィルムは一般に容易に入手可能である。こうしたフィルム材料にエレクトロフォーミングでニッケルのマスクパターン15を形成することができる。このようにしても、ウェハ保護膜41は、イオン照射中に起こりうるメタルマスク14による重金属汚染からウェハ12を保護することができる。
【0051】
アライメント開口16は、メタルマスク14に貫通孔として形成されている。図示されるように、アライメント開口16は、メタル層100だけでなく、中間層102とウェハ保護膜41も貫通している。これにより、中間層102が不透明である場合にも(例えば銅薄膜は不透明である)、アライメント開口16を通じてウェハ12上のアライメントマーク72を観察可能となる。また、貫通孔の形成は、中間層102をウェハ保護膜41から剥離してウェハ保護膜41を残すのに比べて、加工が簡単である。アライメント開口16を通じてメタルマスク14からウェハ12が汚染されるのを防ぐために、アライメント開口16は、ウェハ保護膜41と同じ樹脂材料で形成される保護パッチ104で塞がれている。保護パッチ104は、ウェハ保護膜41の一部をなすとみなされる。
【0052】
既述の実施の形態と同様に、メタルマスク14のビーム上流側にはスペーサー板45を介して上流側保護膜42が配置される。上流側保護膜42、スペーサー板45、メタルマスク14(ウェハ保護膜41を含む)からなる積層構造が、補強フレーム44(上フレーム44a、下フレーム44b)で上下に支持される。補強フレーム44でメタルマスク14を挟み込んで固定ねじ46で固定するので、メタルマスク14の上側と下側の導通は確保されている。また、メタルマスク14の中間層102も電流経路30の一部となる。イオン照射によってメタルマスク14が受ける電荷は、マスクパターン15から、中間層102、固定ねじ46、下フレーム44bを経て、マスクホルダ40の外部へと流れる。
【0053】
図6(a)、
図6(b)は、マスクパターン15の例を示す概略図である。
図6(a)に示されるように、メタルマスク14には多数のスリット110が平行に形成され、マスクパターン15はストライプ状のイオン遮蔽領域を形成する。各スリット110は縦方向に延び、スリット110の上下でマスクパターン15は横方向に接続している。イオンが通過するスリット110とイオンを遮蔽するストライプが交互に並ぶ。スリット110を通過するイオンがウェハに照射される。このマスクパターン15は、例えば、
図2から
図4に示す第1方式のメタルマスク14に適用可能である。また、
図5に示す第2方式のメタルマスク14にも適用しうる。
【0054】
図6(b)に示されるように、メタルマスク14は、ストライプ状のイオン遮蔽領域112からなるマスクパターン15を有する。ただし、各イオン遮蔽領域112は、他のイオン遮蔽領域112と接続していない孤立パターンとして形成される。このマスクパターン15は、第2方式のメタルマスク14に適用される。よって、各イオン遮蔽領域112は、中間層102の上に形成されている。
【0055】
第2方式のメタルマスク14では、第1方式のメタルマスク14のようにイオン遮蔽領域が互いに接続している必要がないので、マスクパターン15の設計自由度が高く、より多様なパターンでイオン照射をすることができる。
【0056】
なお、ここではストライプ状のマスクパターン15を例として説明したが、マスクパターン15の形状はこの限りではなく、種々の形状がありうる。
【0057】
図7は、実施の形態に係るマスクアライナ70の構成を模式的に示す側面図である。マスクアライナ70は、支持テーブル74と、カメラ78とを備える。支持テーブル74は、固定装置18を支持し、例えばXYθステージのようなステージ機構を有してもよい。支持テーブル74は、ウェハ12を保持したウェハホルダ20を支持し、メタルマスク14を保持したマスクホルダ40がその上に重ね合わせるように配置される。カメラ78は、支持テーブル74の上方に配置されている。
【0058】
図8(a)、
図8(b)は、
図7に示されるマスクアライナ70におけるメタルマスク14とウェハ12の位置合わせを示す模式図である。
図8(a)に示されるように、カメラ78は、メタルマスク14のアライメント開口16を通じてウェハ12上のアライメントマーク72を観察する。カメラ78とアライメントマーク72の間には、ウェハ保護膜41と上流側保護膜42があるが、これらは透明または半透明であるので、観察を妨げない。
【0059】
したがって、
図8(b)に示されるように、カメラ78は、アライメント開口16とアライメントマーク72をとらえることができる。例えば、アライメントマーク72がアライメント開口16の中心に位置するように支持テーブル74がウェハ12(またはウェハホルダ20)とメタルマスク14(またはマスクホルダ40)を相対移動させることによって、メタルマスク14とウェハ12を位置合わせすることができる。
【0060】
図9は、実施の形態に係るイオン照射方法を例示するフローチャートである。まず、ウェハ12がウェハホルダ20に置かれる(S10)。次に、メタルマスク14とウェハ12とを位置合わせする工程が行われる(S12)。メタルマスク14を保持したマスクホルダ40がウェハホルダ20の上に置かれる。このようにして、位置合わせは、メタルマスク14とウェハ12の間にウェハ保護膜41を配置した状態で行われる。位置合わせする工程は、アライメント開口16およびウェハ保護膜41を通じてウェハ12のアライメントマーク72を観察することを含む。位置合わせが完了すると、マスクホルダ40とウェハホルダ20が固定され(S14)、それにより、メタルマスク14がウェハ12に正しく位置決めされる。
【0061】
マスクホルダ40とウェハホルダ20を固定した後、メタルマスク14とウェハ12の位置ずれ量を確認する工程が行われてもよい(S16)。この位置ずれ量の確認は、上述の位置合わせ工程と同様に、アライメント開口16およびウェハ保護膜41を通じてウェハ12のアライメントマーク72を観察することを含む。マスクホルダ40とウェハホルダ20を固定する工程(S14)では、例えば作業者の不注意やその他の事情で、正しく位置合わせされたメタルマスク14とウェハ12がいくらかずれてしまうケースも起こりうる。したがって、メタルマスク14とウェハ12の位置ずれ量をイオン照射前に確認することにより、そうした位置ずれを把握し、ずれが大きければ位置合わせをやり直すことができる。位置ずれが生じたままイオン照射をしてウェハ12を無駄にしてしまうといった望まれない状況を避けることができる。
【0062】
マスクホルダ40とウェハホルダ20は搬送プレート66にセットされ、照射処理室56に搬送される(S18)。そして、メタルマスク14およびウェハ保護膜41を介してウェハ12にイオンを照射する工程が行われる(S20)。イオン照射が終了すると、固定装置18は照射処理室56からマスクアライナ70へと搬出される(S22)。イオン照射後にも、メタルマスク14とウェハ12の位置ずれ量を確認する工程が行われてもよい(S24)。イオン照射中に何らかの原因でメタルマスク14とウェハ12にずれが生じることなく正常にイオン照射が完了したことを確認することができる。このあと、マスクホルダ40とウェハホルダ20の固定は解除され(S26)、イオン照射されたウェハ12が回収される(S28)。
【0063】
既存のメタルマスクは多くの場合、ウェハの重金属汚染を防ぐためにアルミニウムで形成され、マスクパターンの加工は切削またはワイヤーカットでなされている。このようにメタルマスクの材質と加工方法が限定され、実現しうるマスクパターンの微細化にも限度があった(例えば、加工精度は±30μm程度であり、マスクパターンの開口間寸法は0.2mm以上であった)。
【0064】
これに対して、実施の形態によると、マスクホルダ40には、メタルマスク14のマスクパターン15を覆うようにメタルマスク14に対してウェハ側に配置され、樹脂材料で形成されるウェハ保護膜41が設けられている。したがって、メタルマスク14によるウェハ12の重金属汚染や、メタルマスク14からウェハ12へのその他の汚染物質の移動からウェハ12を保護することができる。
【0065】
ウェハ保護膜41によってメタルマスク14からウェハ12への重金属汚染を防ぐことができるので、メタルマスク14の材料として様々な重金属を採用することが可能になる。材質の制約が緩和されることで、採用しうる加工方法も多様となる。フォトエッチングやエレクトロフォーミングなど、微細化に適する加工方法でマスクパターン15を製作することもできる。例えば、エレクトロフォーミングでは、加工精度±10μm、開口間寸法30μmまでの加工が可能である。したがって、より高精度で微細なパターンでイオン照射をすることが可能となる。
【0066】
ウェハ保護膜41にポリイミドなどの透明または半透明の樹脂材料を使用することで、メタルマスク14を保護した状態で、ウェハ12とメタルマスク14のアライメントが可能である。また、こうした樹脂材料は、金属に比べて密度が小さい。よって、ウェハ保護膜41に入射するイオンの散乱は小さく、ウェハ保護膜41がイオンビームに及ぼす影響は少ない。
【0067】
以上、本発明を実施の形態にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0068】
上述の実施の形態では、搬送プレート66に固定装置18が1つだけ取り付けられている場合を例として説明しているが、搬送プレート66には、複数の固定装置18が取り付けられてもよい。その場合、照射処理室56内で搬送プレート66がイオンビームBに対し移動され、それによりイオン照射装置50は一回のイオン照射で複数のウェハ12を処理してもよい。また、一つの固定装置18が複数組のウェハ12とメタルマスク14を並べて支持してもよく、つまり、一つのマスクホルダ40が複数のメタルマスク14を並べて保持し、一つのウェハホルダ20が複数のウェハ12を並べて保持してもよい。
【符号の説明】
【0069】
12 ウェハ、 14 メタルマスク、 15 マスクパターン、 16 アライメント開口、 18 固定装置、 20 ウェハホルダ、 24 ウェハ収容室、 30 電流経路、 40 マスクホルダ、 41 ウェハ保護膜、 43 保持構造、 47 隙間。