(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】グリース組成物、該グリース組成物を用いた摺動機構の潤滑方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C10M 169/02 20060101AFI20231122BHJP
C10M 115/08 20060101ALI20231122BHJP
C10M 133/04 20060101ALI20231122BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20231122BHJP
F16C 11/06 20060101ALI20231122BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20231122BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20231122BHJP
C10N 20/06 20060101ALN20231122BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20231122BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20231122BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20231122BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M115/08
C10M133/04
C10M133/16
F16C11/06 Z
F16C33/20 Z
C10N20:02
C10N20:06
C10N30:06
C10N40:02
C10N40:04
(21)【出願番号】P 2021504006
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007909
(87)【国際公開番号】W WO2020179589
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019039936
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/125859(WO,A1)
【文献】特開2017-115109(JP,A)
【文献】特開2015-147867(JP,A)
【文献】国際公開第2017/126703(WO,A1)
【文献】特開2017-149905(JP,A)
【文献】特開2006-089575(JP,A)
【文献】特開2010-248442(JP,A)
【文献】特開平11-021580(JP,A)
【文献】特開2010-270864(JP,A)
【文献】国際公開第2003/006590(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有するグリース組成物であって、
前記基油(A)は40℃動粘度が100mm
2/s以上であり、
前記基油(A)が、40℃動粘度が10~50mm
2
/sの低粘度基油(A1)、40℃動粘度が200~700mm
2
/sの高粘度基油(A2)、及び40℃動粘度が30,000~45,000mm
2
/sの超高粘度基油(A3)の混合基油であり、
前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たす
、グリース組成物
。
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
【請求項2】
前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、さらに下記要件(II)を満たす、請求項1に記載のグリース組成物。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が、1.0×10
5cm
2/cm
3以上である。
【請求項3】
前記基油(A)の40℃動粘度が150~700mm
2/sである、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記ウレア系増ちょう剤(B)が、下記一般式(b1)で表される化合物である、請求項1~
3の何れか1項に記載のグリース組成物。
R
1-NHCONH-R
3-NHCONH-R
2 (b1)
[
前記一般式(b1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示し、R
1及びR
2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R
3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
【請求項5】
前記ウレア系増ちょう剤(B)の含有量がグリース組成物全量基準で15質量%以下である、請求項1~
4の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項6】
さらに、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)及びアミド化合物(C3)から選ばれる1種以上の添加剤(C)を含む、請求項1~
5の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項7】
混和ちょう度が250以上である、請求項1~
6の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項8】
金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構の潤滑用である、請求項1~
7の何れか1項に記載のグリース組成物。
【請求項9】
金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構に対して、請求項1~
8の何れか1項に記載のグリース組成物を添加する、摺動機構の潤滑方法。
【請求項10】
金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構を有する装置であって、前記摺動機構の摺動面に請求項1~
8の何れか1項に記載のグリース組成物を供給可能に構成されてなる、装置。
【請求項11】
前記摺動機構が、金属製のボールスタッド、ハウジング、及び前記ボールスタッドと前記ハウジングとの間に配置される樹脂製のボールシートを有するボールジョイントである、請求項
10に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリース組成物、該グリース組成物を用いた摺動機構の潤滑方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グリース組成物としては、リチウム石けんを増ちょう剤として用いたグリース組成物(以下、「リチウム石けんグリース」ともいう)、及び、ウレア系増ちょう剤を用いたグリース組成物(以下、「ウレアグリース」ともいう)が挙げられる。リチウム石けんグリースとしては特許文献1のものが挙げられ、ウレアグリースとしては特許文献2のものが挙げられる。
これらグリース組成物は、自動車及び工作機械内の潤滑部の潤滑性を高めるために広く用いられている。
【0003】
また、自動車に用いられるグリース組成物は、乗り心地性を損なわないことが肝要である。
例えば、ボールジョイントは、サスペンションのリンク機構の結合及びステアリングのリンク機構の結合に用いられるため、ボールジョイントの潤滑部に用いるグリース組成物は、自動車の乗り心地性に大きな影響を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-222516号公報
【文献】特開2009-293042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようなリチウム石けんグリースは、ウレアグリースに比べて乗り心地性を良好にし得る傾向にある。しかし、リチウム石けんグリースは、耐熱性及び酸化安定性に劣るという根本的な問題がある。
リチウム石けんグリースが上記の問題を内在するため、近年、乗り心地性を改良したウレアグリースが求められている。
【0006】
しかし、ウレアグリースは、ボールジョイントの潤滑部から振動及び音が発生する場合があり、さらには、該潤滑部の摩擦を十分に下げることができない場合があり、乗り心地性を良好にできない傾向がある。
【0007】
以上のように、従来のウレアグリースは、耐熱性及び酸化安定性が良好であるものの、潤滑部の動摩擦力を十分に下げることができず、また、動摩擦力がバラツクという問題があった。
そこで、本発明は、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できるウレア系増ちょう剤を含むグリース組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ウレアグリースを用いた際の潤滑部における動摩擦力について鋭意研究した。その結果、ウレアグリース内に含まれる粒子が原因であることを見出した。そして、該粒子の平均粒子径を適切な範囲にしつつ、基油を特定の粘度とすることにより、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できるグリース組成物を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]~[13]に関する。
[1]基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有するグリース組成物であって、前記基油(A)は40℃動粘度が100mm2/s以上であり、前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たすグリース組成物
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
[2]前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、さらに下記要件(II)を満たす、上記[1]に記載のグリース組成物。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が、1.0×105cm2/cm3以上である。
[3]前記基油(A)の40℃動粘度が150~700mm2/sである、上記[1]又は[2]に記載のグリース組成物。
[4]前記基油(A)が、40℃動粘度が10~50mm2/sの低粘度基油(A1)、40℃動粘度が200~700mm2/sの高粘度基油(A2)、及び40℃動粘度が30,000~45,000mm2/sの超高粘度基油(A3)の混合基油である、上記[1]~[3]の何れかに記載のグリース組成物。
[5]前記ウレア系増ちょう剤(B)が、下記一般式(b1)で表される化合物である、上記[1]~[4]の何れかに記載のグリース組成物。
R1-NHCONH-R3-NHCONH-R2 (b1)
[一般式(b1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示し、R1及びR2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
[6]前記一般式(b1)で表される化合物として、R1及びR2が炭素数6~24の1価の鎖式炭化水素基である化合物(b1-1)、R1及びR2が炭素数6~24の1価の脂環式炭化水素基である化合物(b1-2)、及び、R1が炭素数6~24の1価の鎖式炭化水素基でありR2が炭素数6~24の1価の脂環式炭化水素基である化合物(b1-3)を含み、
前記化合物(b1-1)の含有率をαモル%、前記化合物(b1-2)の含有率をβモル%、前記化合物(b1-3)の含有率をγモル%と定義した際に、α+γ/2:β+γ/2が80:20~50:50である、上記[5]に記載のグリース組成物。
[7]前記ウレア系増ちょう剤(B)の含有量がグリース組成物全量基準で15質量%以下である、上記[1]~[6]の何れかに記載のグリース組成物。
[8]さらに、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)から選ばれる1種以上の添加剤(C)を含む、上記[1]~[7]の何れかに記載のグリース組成物。
[9]混和ちょう度が250以上である、上記[1]~[8]の何れかに記載のグリース組成物。
[10]金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構の潤滑用である、上記[1]~[9]の何れかに記載のグリース組成物。
[11]金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構に対して、上記[1]~[10]の何れかに記載のグリース組成物を添加する、摺動機構の潤滑方法。
[12]金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構を有する装置であって、前記摺動機構の摺動面に上記[1]~[10]の何れかに記載のグリース組成物を供給可能に構成されてなる、装置。
[13]前記摺動機構が、金属製のボールスタッド、ハウジング、及び前記ボールスタッドと前記ハウジングとの間に配置される樹脂製のボールシートを有するボールジョイントである、上記[12]に記載の装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できるウレア系増ちょう剤を含むグリース組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1で製造したグリース組成物中の粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の、面積基準での粒子径分布曲線である。
【
図2】本発明の一態様で使用される、グリース製造装置の断面の模式図である。
【
図3】
図2のグリース製造装置の容器本体側の第一凹凸部における、回転軸に直交する方向の断面の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることができる。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
【0013】
[グリース組成物]
本発明のグリース組成物は、基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含有するグリース組成物であって、前記基油(A)は40℃動粘度が100mm2/s以上であり、前記グリース組成物中の前記ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たすものである。
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
【0014】
<粒子径>
本発明のグリース組成物は、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が下記要件(I)を満たすことを要する。
・要件(I):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である。
【0015】
上記要件(I)は、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)の凝集の状態を示したパラメータともいえる。
ここで、レーザー回折・散乱法により測定する対象となる「ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子」とは、グリース組成物に含まれるウレア系増ちょう剤(B)が凝集してなる粒子を指す。
なお、グリース組成物中にウレア系増ちょう剤(B)以外の添加剤が含まれる場合、上記要件(I)で規定する粒子径は、当該添加剤を配合せずに同一条件で調製したグリース組成物をレーザー回折・散乱法により測定することで得られる。但し、当該添加剤が室温(25℃)で液状である場合には、当該添加剤が配合されたグリース組成物を測定対象としても構わない。
【0016】
算術平均粒子径が2.0μmを超える場合、潤滑部において、動摩擦力が増加したり、動摩擦力にバラツキが生じたりしてしまう。
【0017】
本発明の一態様のグリース組成物は、算術平均粒子径が、好ましくは1.5μm以下、より好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.8μm以下、より好ましくは0.7μm以下、より好ましくは0.6μm以下である。また、通常0.01μm以上である。
【0018】
<比表面積>
本発明の一態様のグリース組成物は、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子が、さらに下記要件(II)を満たすことが好ましい。
・要件(II):前記粒子をレーザー回折・散乱法により測定した際の比表面積が、1.0×105cm2/cm3以上である。
比表面積は、1.2×105cm2/cm3以上であることがより好ましく、1.5×105cm2/cm3以上であることがさらに好ましく、1.7×105cm2/cm3以上であることがよりさらに好ましい。なお、比表面積は通常1.0×106cm2/cm3以下である。
【0019】
比表面積は、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の微細化の状態と大きな粒子(ダマ)の存在とを示す副次的な指標である。すなわち、算術平均粒子径が2.0μm以下であり、かつ比表面積が上記範囲であることは、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の微細化の状態がより良好であり、大きな粒子(ダマ)の存在がより抑制されていることが表されている。さらに、比表面積が大きいことは、粒子による基油(A)の保持力が良好であることを示している。
したがって、比表面積が上記範囲である本発明の一態様のグリース組成物は、算術平均粒子径を2.0μmとすることによる効果をより高めることができる。また、比表面積が上記範囲である本発明の一態様のグリース組成物は、潤滑部から音が生じることを抑制しやすくできる。
【0020】
ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の算術平均粒子径及び比表面積の測定は、例えば、実施例に記載の方法で測定することができる。
また、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の算術平均粒子径及び比表面積の値は、主に、グリース組成物製造時のせん断力の強弱により調整可能である。
以下、算術平均粒子径及び比表面積を調整するための具体的な手段に着目しながら、本発明のグリース組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0021】
<基油(A)>
本発明のグリース組成物に含まれる基油(A)は、40℃動粘度が100mm2/s以上であることを要する。なお、グリース組成物に含まれる基油(A)とは、グリース組成物から抽出した基油の40℃動粘度を意味する。基油(A)の40℃動粘度が100mm2/s未満の場合、潤滑部において、動摩擦力が増加したり、動摩擦力にバラツキが生じたりしてしまう。
【0022】
なお、基油(A)の40℃動粘度が高すぎる場合、低温トルクが高くなる傾向がある。このため、本発明の一態様の基油(A)の40℃動粘度は、100~1,000mm2/sであることが好ましく、130~800mm2/sであることがより好ましく、150~700mm2/sであることがさらに好ましい。
【0023】
基油(A)は、40℃動粘度が100mm2/s以上であれば、鉱油及び合成油の何れも用いることができる。基油(A)は混合基油でもよく、その場合、混合基油の40℃動粘度が100mm2/s以上であればよい。
【0024】
鉱油としては、常圧蒸留の残油(パラフィン系原油、中間基系原油及びナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して、ガス、ガソリン及び灯油等を抽出した後に残った油)を減圧蒸留して得られる留出油を精製することによって得られる精製油が挙げられる。
精製油を得るための精製方法としては、例えば、水素化改質処理、溶剤抽出処理、溶剤脱ろう処理、水素化異性化脱ろう処理、水素化仕上げ処理、白土処理等が挙げられる。
【0025】
合成油としては、例えば、炭化水素系油、芳香族系油、エステル系油、及びエーテル系油が挙げられる。また、フィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(GTLワックス)を異性化することで得られる合成油等も挙げられる。
【0026】
炭化水素系油としては、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-デセンオリゴマー、1-デセンとエチレンコオリゴマー等のポリ-α-オレフィン(PAO)及びこれらの水素化物等が挙げられる。
【0027】
芳香族系油としては、例えば、モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;等が挙げられる。
【0028】
エステル系油としては、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート、ジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジトリデシルグルタレート、メチルアセチルリシノレート等のジエステル系油;トリオクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート等の芳香族エステル系油;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンベラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールベラルゴネート等のポリオールエステル系油;多価アルコールと二塩基酸及び一塩基酸の混合脂肪酸とのオリゴエステル等のコンプレックスエステル系油;等が挙げられる。
【0029】
エーテル系油としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリコールモノエーテル等のポリグリコール;モノアルキルトリフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル等のフェニルエーテル系油;等が挙げられる。
【0030】
ここで、グリース組成物に高温下での酸化安定性が求められる場合には、合成油を用いることが好ましく、炭化水素系油、エステル系油、及びエーテル系油から選択される1種以上を用いることがより好ましい。また、炭化水素系油、エステル系油、及びエーテル系油を混合して用いることで、耐熱性、耐シール性、及び低温特性のバランスをとることもできる。
【0031】
本発明の一態様の基油(A)は、40℃動粘度が10~50mm2/sの低粘度基油(A1)、40℃動粘度が200~700mm2/sの高粘度基油(A2)、及び40℃動粘度が30,000~45,000mm2/sの超高粘度基油(A3)の混合基油であることが好ましい。
低粘度基油(A1)の40℃動粘度は、15~45mm2/sであることがより好ましく、20~40mm2/sであることがさらに好ましい。
高粘度基油(A2)の40℃動粘度は、250~600mm2/sであることがより好ましく、300~500mm2/sであることがさらに好ましい。
超高粘度基油(A3)の40℃動粘度は、32,000~43,000mm2/sであることがより好ましく、35,000~40,000mm2/sであることがさらに好ましい。
【0032】
低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)及び超高粘度基油(A3)を合計した含有量の全量(100質量%)基準で、低粘度基油(A1)の含有量は、20~55質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることがさらに好ましい。
低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)及び超高粘度基油(A3)を合計した含有量の全量(100質量%)基準で、高粘度基油(A2)の含有量は、40~75質量%であることが好ましく、45~70質量%であることがより好ましく、50~65質量%であることがさらに好ましい。
低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)及び超高粘度基油(A3)を合計した含有量の全量(100質量%)基準で、超高粘度基油(A3)の含有量は、1~25質量%であることが好ましく、2~20質量%であることがより好ましく、3~18質量%であることがさらに好ましい。
【0033】
上記のような混合基油とする場合、低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)及び超高粘度基油(A3)は、組成が類似する基油とすることが好ましい。例えば、低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)、及び超高粘度基油(A3)は、何れも炭化水素系の合成油であることが好ましく、何れもポリ-α-オレフィン又はこれらの水素化物であることがより好ましい。
なお、低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)、及び超高粘度基油(A3)を何れもポリ-α-オレフィン又はこれらの水素化物とする場合、ポリ-α-オレフィンの粘度は重量平均分子量により調整できる。本明細書において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定によって求めた標準ポリスチレン換算の分子量を意味する。
【0034】
本発明の一態様で用いる基油(A)の粘度指数としては、好ましくは60以上、より好ましくは80以上、更に好ましくは100以上である。
なお、本明細書において、動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定又は算出した値を意味する。
【0035】
本発明の一態様のグリース組成物において、基油(A)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、また、好ましくは98.5質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、より更に好ましくは93質量%以下である。
【0036】
<ウレア系増ちょう剤(B)>
本発明のグリース組成物は、増ちょう剤としてウレア系増ちょう剤(B)を含む。ウレア系増ちょう剤(B)を含まない場合、耐熱性及び酸化安定性を良好にすることができない。
【0037】
ウレア系増ちょう剤(B)の含有量は、増ちょう剤の全量(100質量%)基準で、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがより好ましい。
【0038】
本発明のグリース組成物に含まれるウレア系増ちょう剤(B)としては、ウレア結合を有する化合物であればよいが、2つのウレア結合を有するジウレア化合物が好ましく、下記一般式(b1)で表されるジウレア化合物がより好ましい。
R1-NHCONH-R3-NHCONH-R2 (b1)
[一般式(b1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示し、R1及びR2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。]
【0039】
なお、本発明の一態様で用いるウレア系増ちょう剤(B)は、1種からなるものであってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
【0040】
前記一般式(b1)中のR1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数としては、6~24であるが、好ましくは6~20、より好ましくは6~18である。
また、R1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基としては、1価の鎖式炭化水素基、1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、1価の鎖式炭化水素基、及び、1価の脂環式炭化水素基が好ましい。なお、1価の鎖式炭化水素基及び1価の脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよい。
【0041】
前記一般式(b1)で表される化合物の好適な一態様は、R1及びR2が炭素数6~24の1価の鎖式炭化水素基である化合物(b1-1)、R1及びR2が炭素数6~24の1価の脂環式炭化水素基である化合物(b1-2)、及び、R1が炭素数6~24の1価の鎖式炭化水素基でありR2が炭素数6~24の1価の脂環式炭化水素基である化合物(b1-3)を含み、前記化合物(b1-1)の含有率をαモル%、前記化合物(b1-2)の含有率をβモル%、前記化合物(b1-3)の含有率をγモル%と定義した際に、α+γ/2:β+γ/2が80:20~50:50であるものである。
【0042】
前記一般式(b1)で表される化合物において、R1及びR2の鎖式炭化水素基を所定以上の割合とすることにより、グリース組成物を滑らかにして、摩擦を低減しやすくできる。当該効果は、特に、摺動部等の潤滑部に樹脂材を有する場合に有効である。また、前記一般式(b1)で表される化合物において、R1及びR2の脂環式炭化水素基を所定以上の割合とすることにより、摺動部等の潤滑部に金属材を有する場合に、潤滑部にグリース組成物を残存させやすくすることができ、摩耗防止性を良好にしやすくできる。このため、上記の比(α+γ/2:β+γ/2)を上記範囲とすることにより、優れた乗り心地性を長期に渡って維持しやすくできる。当該効果は、金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構に対して極めて有効である。
上記の比(α+γ/2:β+γ/2)は、70:30~50:50であることがより好ましく、65:35~55:45であることがさらに好ましい。
【0043】
1価の飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
1価の不飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、オレイル基、ゲラニル基、ファルネシル基、リノレイル基等が挙げられる。
なお、1価の飽和鎖式炭化水素基及び1価の不飽和鎖式炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0044】
1価の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等のシクロアルキル基;メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1-メチル-プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ペンチル-メチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルキル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基);等が挙げられる。
【0045】
1価の不飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等のシクロアルケニル基;メチルシクロヘキセニル基、ジメチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、ジエチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキセニル基);等が挙げられる。
【0046】
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、ジフェニルプロピル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等が挙げられる。
【0047】
前記一般式(b1)中のR3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6~18であるが、好ましくは6~15、より好ましくは6~13である。
R3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、ジフェニルプロピレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、又はジフェニルプロピレン基が好ましく、ジフェニルメチレン基がより好ましい。
【0048】
本発明の一態様のグリース組成物において、増ちょう剤(B)の含有量は、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下であり、また、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
増ちょう剤(B)の含有量を上記範囲とすることにより、グリース組成物の混和ちょう度を適切な範囲としやすくできる。
【0049】
<ウレア系増ちょう剤(B)を含むグリース組成物の製造方法>
ウレア系増ちょう剤(B)は、通常、イソシアネート化合物と、モノアミンとを反応させることによって得ることができる。当該反応は、上述の基油(A)にイソシアネート化合物を溶解させて得られる加熱した溶液xに、基油(A)にモノアミンを溶解させた溶液yを添加する方法が好ましい。
例えば、前記一般式(b1)で表される化合物を合成する場合に、イソシアネート化合物としては、前記一般式(b1)中のR3で示される2価の芳香族炭化水素基に対応する基を有するジイソシアネートを用い、モノアミンとしては、R1及びR2で示される1価の炭化水素基に対応する基を有するアミンを用いて、上記の方法により、所望のウレア系増ちょう剤(B)を合成することができる。
【0050】
なお、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子を微細化する観点から、下記[1]に示すようなグリース製造装置を用いてグリース組成物を製造することが好ましい。
[1]グリース原料が導入される導入部、及び外部にグリースを吐出させる吐出部を有する容器本体と、
前記容器本体の内周の軸方向に回転軸を有し、前記容器本体の内部に回転可能に設けられた回転子とを備え、
前記回転子は、
(i)前記回転子の表面に沿って、凹凸が交互に設けられて、当該凹凸が前記回転軸に対して傾斜し、
(ii)前記導入部から前記吐出部方向への送り能力を有する
第一凹凸部を備えている、グリース製造装置。
【0051】
以下、上記[1]に記載のグリース製造装置について説明するが、以下の記載の「好ましい」とされる規定は、特に断りが無い限り、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子を微細化する観点からの態様である。
【0052】
図2は、本発明の一態様で使用し得る、上記[1]のグリース製造装置の断面の模式図である。
図2に示すグリース製造装置1は、グリース原料を内部に導入する容器本体2と、容器本体2の内周の中心軸線上に回転軸12を有し、回転軸12を中心軸として回転する回転子3とを備える。
回転子3は、回転軸12を中心軸として高速回転し、容器本体2の内部でグリース原料に高いせん断力を与える。これにより、ウレア系増ちょう剤を含むグリースが製造される。
容器本体2は、
図2に示すように、上流側から順に、導入部4、滞留部5、第一内周面6、第二内周面7、及び吐出部8に区画されていることが好ましい。
容器本体2は、
図2に示すように、導入部4から吐出部8に向かうにしたがって、次第に内径が拡径する円錐台状の内周面を有していることが好ましい。
容器本体2の一端となる導入部4は、容器本体2の外部からグリース原料を導入する複数の溶液導入管4A、4Bを備える。
【0053】
滞留部5は、導入部4の下流部に配置され、導入部4から導入されたグリース原料を一時的に滞留させる空間である。この滞留部5にグリース原料が長時間滞留すると、滞留部5の内周面に付着したグリースが、大きなダマを形成してしまうので、なるべく短時間で下流側の第一内周面6に搬送するのが好ましい。さらに好ましくは、滞留部5を経ず、直接第一内周面6に搬送することが好ましい。
第一内周面6は、滞留部5に隣接した下流部に配置され、第二内周面7は、第一内周面6に隣接した下流部に配置される。詳しくは後述するが、第一内周面6に第一凹凸部9を設けること、および第二内周面7に第二凹凸部10を設けることが、第一内周面6及び第二内周面7をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与する高せん断部として機能させる上で好ましい。
容器本体2の他端となる吐出部8は、第一内周面6と第二内周面7で撹拌されたグリースを吐出する部分であり、グリースを吐出する吐出口11を備える。吐出口11は、回転軸12に直交する方向又は略直交する方向に形成されている。これにより、グリースが吐出口11から回転軸12に直交する方向又は略直交する方向に吐出される。但し、吐出口11は、必ずしも回転軸12に直交せずともよく、回転軸12と平行方向又は略平行方向に形成されていてもよい。
【0054】
回転子3は、容器本体2の円錐台状の内周面の中心軸線を回転軸12として回転可能に設けられ、
図2に示すように容器本体2を上流部から下流部に向けてみたときに、反時計回りに回転する。
回転子3は、容器本体2の円錐台の内径の拡大に応じて拡大する外周面を有し、回転子3の外周面と、容器本体2の円錐台の内周面とは、一定の間隔が維持されている。
回転子3の外周面には、回転子3の表面に沿って凹凸が交互に設けられた回転子の第一凹凸部13が設けられている。
【0055】
回転子の第一凹凸部13は、導入部4から吐出部8方向に、回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8方向への送り能力を有する。すなわち、回転子の第一凹凸部13は、回転子3が
図2に示された方向に回転する時に、溶液を下流側に押し出す方向に傾斜している。
【0056】
回転子の第一凹凸部13の凹部13Aと凸部13Bの段差は、回転子3の外周面の凹部13Aの直径を100とした際、好ましくは0.3~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは2~7である。
円周方向における回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの数は、好ましくは2~1000個、より好ましくは6~500個、更に好ましくは12~200個である。
【0057】
回転子3の回転軸12に直交する断面における回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの幅と、凹部13Aの幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2である。
回転軸12に対する、回転子の第一凹凸部13の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
【0058】
容器本体2の第一内周面6には、内周面に沿って凹凸が複数形成された第一凹凸部9が備えられていることが好ましい。
また、容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸は、回転子の第一凹凸部13とは逆向きに傾斜していることが好ましい。
すなわち、容器本体2側の第一凹凸部9の複数の凹凸は、回転子3の回転軸12が
図2に示される方向に回転する時に、溶液を下流側に押し出す方向に傾斜していることが好ましい。容器本体2の第一内周面6に備えられた複数の凹凸を有する第一凹凸部9によって、撹拌能力と吐出能力が更に増強される。
【0059】
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の深さは、容器内径(直径)を100とした際、好ましくは0.2~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは1~5である。
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の本数は、好ましくは2~1000本、より好ましくは6~500本、更に好ましくは12~200本である。
【0060】
容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の凹部の幅と、溝間の凸部の幅との比〔凹部の幅/凸部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2以下である。
回転軸12に対する、容器本体2側の第一凹凸部9の凹凸の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
なお、容器本体2の第一内周面6に第一凹凸部9を備えることによって、第一内周面6をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与するせん断部として機能させることができるが、第一凹凸部9は必ずしも設けずともよい。
【0061】
回転子の第一凹凸部13の下流部の外周面には、回転子3の表面に沿って、凹凸が交互に設けられた回転子の第二凹凸部14が設けられていることが好ましい。
回転子の第二凹凸部14は、回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8に向けて、溶液を上流側に押し戻す送り抑制能力を有する。
【0062】
回転子の第二凹凸部14の段差は、回転子3の外周面の凹部の直径を100とした際、好ましくは0.3~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは2~7である。
円周方向における回転子の第二凹凸部14の凸部の数は、好ましくは2~1000個、より好ましくは6~500個、更に好ましくは12~200個である。
【0063】
回転子3の回転軸に直交する断面における回転子の第二凹凸部14の凸部の幅と、凹部の幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2である。
回転軸12に対する、回転子の第二凹凸部14の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
【0064】
容器本体2の第二内周面7には、容器本体2側の第一凹凸部9における凹凸の下流部に隣接して、複数の凹凸が形成された第二凹凸部10が備えられていることが好ましい。
凹凸は、容器本体2の内周面に複数形成され、それぞれの凹凸は、回転子の第二凹凸部14の傾斜方向とは逆向きに傾斜していることが好ましい。
すなわち、容器本体2側の第二凹凸部10の複数の凹凸は、回転子3の回転軸12が
図2に示される方向に回転する時に、溶液を上流側に押し戻す方向に傾斜していることが好ましい。容器本体2の第二内周面7に備えられた第二凹凸部10の凹凸によって、撹拌能力が更に増強される。また、容器本体の第二内周面7をグリース原料またはグリースに高いせん断力を付与するせん断部として機能させ得る。
【0065】
容器本体2側の第二凹凸部10の凹部の深さは、容器本体2の内径(直径)を100とした際、好ましくは0.2~30、より好ましくは0.5~15、更に好ましくは1~5である。
容器本体2側の第二凹凸部10の凹部の本数は、好ましくは2~1000本、より好ましくは6~500本、更に好ましくは12~200本である。
【0066】
回転子3の回転軸12に直交する断面における容器本体2側の第二凹凸部10の凹凸の凸部の幅と、凹部の幅との比〔凸部の幅/凹部の幅〕は、好ましくは0.01~100、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~2以下である。
回転軸12に対する、容器本体2側の第二凹凸部10の傾斜角度は、好ましくは2~85度、より好ましくは3~45度、更に好ましくは5~20度である。
容器本体2側の第一凹凸部9の長さと、容器本体2側の第二凹凸部10の長さとの比〔第一凹凸部の長さ/第二凹凸部の長さ〕は、好ましくは2/1~20/1である。
【0067】
図3は、グリース製造装置1の容器本体2側の第一凹凸部9における、回転軸12に直交する方向の断面の図である。
図3に示す、回転子の第一凹凸部13には、第一凹凸部13の凸部13Bの突出方向先端よりも、先端が容器本体2の内周面側に突出したスクレーパー15が複数設けられている。また、図示省略するが、第二凹凸部14にも、第一凹凸部13と同様、凸部の先端が容器本体2の内周面側に突出したスクレーパーが複数設けられている。
スクレーパー15は、容器本体2側の第一凹凸部9、及び、容器本体2側の第二凹凸部10の内周面に付着したグリースを掻き取るものである。
回転子の第一凹凸部13の凸部13Bの突出量に対する、スクレーパー15の先端の突出量は、スクレーパー15の先端の半径(R2)と、凸部13Bの先端の半径(R1)との比〔R2/R1〕が、1.005を超え、2.0未満となるのが好ましい。
【0068】
スクレーパー15の数は、好ましくは2~500箇所、より好ましくは2~50箇所、更に好ましくは2~10箇所である。
なお、
図3に示すグリース製造装置1では、スクレーパー15を設けているが、設けないものであってもよく、間欠的に設けたものであってもよい。
【0069】
グリース製造装置1により、ウレア系増ちょう剤(B)を含むグリースを製造するには、前述したグリース原料である、溶液xと溶液yとを、容器本体2の導入部4の溶液導入管4A、4Bからそれぞれ導入し、回転子3を高速回転させることにより、ウレア系増ちょう剤(B)を含むグリース基材を製造することができる。
そして、このようにして得られたグリース基材に、添加剤(C)を配合しても、算術平均粒子径が上記範囲となるように、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤を微細化することができる。
【0070】
回転子3の高速回転条件として、グリース原料に与えるせん断速度としては、好ましくは102s-1以上、より好ましいは103s-1以上、さらに好ましくは104s-1以上であり、また、通常107s-1以下である。
【0071】
また、回転子3の高速回転する際のせん断における、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)の比(Max/Min)は、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、更に好ましくは10以下である。
混合液に対するせん断速度ができるだけ均一であることにより、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤やその前駆体を微細化しやすくなり、より均一なグリース構造となる。
【0072】
ここで、最高せん断速度(Max)とは、混合液に対して付与される最高のせん断速度であり、最低せん断速度(Min)とは、混合液に対して付与される最低のせん断速度であって、下記のように定義されるものである。
・最高せん断速度(Max)=(回転子の第一凹凸部13の凸部13B先端の線速度)/(回転子の第一凹凸部13の凸部13B先端と容器本体2の第一内周面6の第一凹凸部9の凸部のギャップA1)
・最低せん断速度(Min)=(回転子の第一凹凸部13の凹部13Aの線速度)/(回転子の第一凹凸部13の凹部13Aと容器本体2の第一内周面6の第一凹凸部9の凹部のギャップA2)
なお、ギャップA1とギャップA2は、
図3に示されるとおりである。
【0073】
グリース製造装置1がスクレーパー15を備えていることにより、容器本体2の内周面に付着したグリースを掻き取ることができるため、混練中にダマが発生することを防止することができ、ウレア系増ちょう剤を微細化したグリースを連続して短時間で製造することができる。
また、スクレーパー15が、付着したグリースを掻き取ることにより、滞留グリースが回転子3の回転の抵抗となるのを防止することができるため、回転子3の回転トルクを低減することができ、駆動源の消費電力を低減して、効率的にグリースの連続製造を行うことができる。
【0074】
容器本体2の内周面が、導入部4から吐出部8に向かうにしたがって、内径が拡大する円錐台状であるので、遠心力がグリースまたはグリース原料を下流方向に排出する効果を持ち、回転子3の回転トルクを低減して、グリースの連続製造を行うことができる。
回転子3の外周面に、回転子の第一凹凸部13が設けられ、回転子の第一凹凸部13が回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8への送り能力を有し、回転子の第二凹凸部14が回転子3の回転軸12に対して傾斜し、導入部4から吐出部8への送り抑制能力を有しているため、溶液に高いせん断力を付与することができ、添加剤を配合後も、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子を微細化することができる。
【0075】
容器本体2の第一内周面6に第一凹凸部9が形成され、回転子の第一凹凸部13とは逆向きに傾斜しているため、回転子の第一凹凸部13の効果に加え、さらに、グリースまたはグリース原料を下流方向に押し出しながら、十分なグリース原料の撹拌を行うことができる。このため、添加剤を配合後も、グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子を微細化することができる。
また、容器本体2の第二内周面7に第二凹凸部10が設けられると共に、回転子3の外周面に回転子の第二凹凸部14が設けられることにより、グリース原料が必要以上に容器本体の第一内周面6から流出することを防止できる。このため、溶液に高いせん断力を与えてグリース原料を高分散化して、添加剤を配合後も、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子を微細化することができる。
【0076】
<添加剤(C)>
本発明の一態様のグリース組成物は、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)から選ばれる1種以上の添加剤(C)を含むことが好ましい。また、下記(1)~(4)のように、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)から選ばれる2種以上を含むことがより好ましく、下記(4)のように、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)の3種を含むことがさらに好ましい。
(1)サルコシン誘導体(C1)及びアミン化合物(C2)の2種を含む。
(2)サルコシン誘導体(C1)及びアミド化合物(C3)の2種を含む。
(3)アミン化合物(C2)及びアミド化合物(C3)の2種を含む。
(4)サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)の3種を含む。
【0077】
グリース組成物が、サルコシン誘導体(C1)、アミン化合物(C2)、及びアミド化合物(C3)から選ばれる1種以上の添加剤(C)を含むことにより、耐摩耗性をより良好にすることができる。特に、金属材と樹脂材とで構成された摺動部分の潤滑に使用した場合に、樹脂材の耐摩耗性の向上効果が大きく、さらに、摺動速度が低速である場合や、摺動部分にかかる荷重が比較的大きい場合、樹脂材の耐摩耗性の向上効果を大きくできる。
【0078】
本発明の一態様において、添加剤(C)の含有量は、グリース組成物の全量(100質量%)基準で、好ましくは0.1~10.0質量%であり、より好ましくは1.0~8.0質量%、さらに好ましくは3.0~6.0質量%である。
【0079】
<<サルコシン誘導体(C1)>>
サルコシン誘導体(C1)としては、カルボキシル基が結合している炭素原子にメチル基を有するアミノ基が結合しているα-アミノ酸であり、N―メチルグリシン又はN―メチルグリシン骨格を有する脂肪族アミノ酸であればよい。
サルコシン誘導体(C1)としては、例えば、N-オレオイルサルコシン、N-ステアロイルサルコシン、N-ラウロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン及びN-パルミトイルサルコシン等が挙げられる。
これらのサルコシン誘導体(C1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
サルコシン誘導体(C1)としては、下記一般式(c-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化1】
[式(c-1)中、Rは、炭素数1~30のアルキル基、又は、炭素数1~30のアルケニル基である。]
【0081】
式(c-1)のRのアルキル基及びアルケニル基の炭素数は1~30であるが、好ましくは6~27、より好ましくは10~24、更に好ましくは12~20である。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。また、当該アルケニル基も、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
サルコシン誘導体(C1)としては、N-オレオイルサルコシンが好ましい。
【0082】
<<アミン化合物(C2)>>
アミン化合物(C2)は、アミノ基を有する化合物であればよく、モノアミン、ジアミン、トリアミン等が挙げられる。
アミン化合物(C2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の一態様で用いるアミン化合物(C2)としては、モノアミンが好ましく、脂肪族モノアミンがより好ましい。
【0083】
本発明の一態様で用いる脂肪族モノアミンとしては、下記一般式(c2-i)で表される第1級脂肪族モノアミン、下記一般式(c2-ii)で表される第2級脂肪族モノアミン、及び下記一般式(c2-iii)で表される第3級脂肪族モノアミンが挙げられる。
【化2】
【0084】
上記一般式(c2-i)~(c2-iii)中、R1~R3は、それぞれ独立に、アルキル基又はアルケニル基であり、アルケニル基であることが好ましい。
R1~R3として選択し得る、アルキル基及びアルケニル基の炭素数としては、好ましくは8~22、より好ましくは10~20、更に好ましくは12~18である。
当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
また、当該アルケニル基も、直鎖アルケニル基であってもよく、分岐鎖アルケニル基であってもよい。
【0085】
前記一般式(c2-i)で表される第1級脂肪族モノアミンとしては、例えば、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン等が挙げられる。
前記一般式(c2-ii)で表される第2級脂肪族モノアミンとしては、例えば、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン等が挙げられる。
前記一般式(c2-iii)で表される第3級脂肪族モノアミンとしては、例えば、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリステアリルアミン、トリオレイルアミン等が挙げられる。
【0086】
本発明の一態様で用いるアミン化合物(C2)としては、前記一般式(c2-i)で表される第1級脂肪族モノアミンが好ましく、前記一般式(c2-i)中のR1が炭素数8~22のアルケニル基である第1級脂肪族モノアミンがより好ましく、オレイルアミンが更に好ましい。
【0087】
<<アミド化合物(C3)>>
アミド化合物(C3)は、アミド結合を有する化合物であればよいが、カルボン酸類とアミン類とを反応させてなる酸アミドであることが好ましく、脂肪酸アミドであることがより好ましい。
アミド化合物(C3)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
カルボン酸類としては、直鎖もしくは分岐鎖の飽和又は不飽和のモノカルボン酸が挙げられ、具体的には、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘンイコサン酸、ドコサン酸、トリコサン酸、テトラコサン酸等の飽和脂肪酸;ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸(オレイン酸を含む)、ノナデセン酸、イコセン酸、ヘンイコセン酸、ドコセン酸、トリコセン酸、テトラコセン酸等の不飽和脂肪酸;等が挙げられる。
なお、これらの飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
また、不飽和脂肪酸が有する二重結合の位置は任意である。
【0089】
カルボン酸類の炭素数としては、好ましくは7~30、より好ましくは8~24、更に好ましくは10~22である。
【0090】
アミン類としては、例えば、アルキルアミン、アルカノールアミン、ポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。
【0091】
アルキルアミンとしては、例えば、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン等の一級脂肪族アルキルアミン類;ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン等の二級脂肪族アルキルアミン類等が挙げられる。
なお、アルキルアミンが有するアルキル基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
【0092】
アルカノールアミンとしては、例えば、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン等が挙げられる。
なお、アルカノールアミンが有するアルカノール基は、直鎖及び分岐鎖のいずれであってもよい。
【0093】
ポリアルキレンポリアミンは、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、テトラプロピレンペンタミン、ヘキサブチレンヘプタミン等が挙げられる。
【0094】
<その他の添加剤>
本発明の一態様のグリース組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、一般的なグリースに配合される、成分(C)以外のグリース用添加剤(その他の添加剤)を含有していてもよい。
その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、増粘剤、固体潤滑剤、清浄分散剤、腐食防止剤、金属不活性剤等が挙げられる。その他の添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、アルケニルコハク酸多価アルコールエステル等のカルボン酸系防錆剤、ステアリン酸亜鉛、チアジアゾール及びその誘導体、ベンゾトリアゾール及びその誘導体等が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛,ジアルキルジチオリン酸モリブデン,無灰系ジチオカーバメートや亜鉛ジチオカーバメート、モリブデンジチオカーバメート等のチオカルバミン酸類;硫化油脂、硫化オレフィン、ポリサルファイド、チオリン酸類、チオテルペン類、ジアルキルチオジピロピオネート類等の硫黄化合物;トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;トリフェニルフォスファイト等の亜リン酸エステル;等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、ポリメタクリレート(PMA)、オレフィン共重合体(OCP)、ポリアルキルスチレン(PAS)、スチレン-ジエン共重合体(SCP)等が挙げられる。
固体潤滑剤としては、例えば、ポリイミド、PTFE、黒鉛、金属酸化物、窒化硼素、メラミンシアヌレート(MCA)、および二硫化モリブデン等が挙げられる。
清浄分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等の無灰分散剤が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール系化合物等が挙げられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0096】
本発明の一態様のグリース組成物において、その他の添加剤の含有量は、添加剤の種類に応じて適宜設定されるが、それぞれ独立に、当該グリース組成物の全量(100質量%)基準で、通常0~10質量%、好ましくは0~7質量%、より好ましくは0~5質量%、より更に好ましくは0~2質量%である。
【0097】
<添加剤の配合方法>
本発明のグリース組成物は、上述の方法により合成した、基油(A)及びウレア系増ちょう剤(B)を含むグリースと、添加剤(C)等の各種添加剤とを混合することにより製造することができる。例えば、添加剤(C)等の各種添加剤を配合した後に撹拌すること、あるいは当該グリースを撹拌しながら添加剤(C)等の各種添加剤を配合することにより製造することができる。
【0098】
<グリース組成物の物性>
本発明の一態様のグリース組成物の25℃における混和ちょう度は、好ましくは250以上であり、より好ましくは270以上、さらに好ましくは300以上であり、また、好ましくは480以下、より好ましくは450以下、さらに好ましくは430以下である。
混和ちょう度を250以上とすることにより、摩耗防止性を良好にしやすくできる。
なお、本明細書において、グリース組成物の混和ちょう度は、ASTM D 217法に準拠して、25℃にて測定された値を意味する。
【0099】
本発明の一態様のグリース組成物の滴点としては、好ましくは180℃以上、より好ましくは220℃以上、更に好ましくは240℃以上、より更に好ましくは260℃以上である。
なお、本明細書において、グリース組成物の滴点は、JIS K2220 8:2013に準拠して、25℃にて測定された値を意味する。
【0100】
<グリース組成物の用途>
本発明のグリース組成物は、各種装置の軸受、摺動部、接合部等の潤滑部の潤滑用として用いることにより、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できることのほか、低温トルクに優れ、温度ごとのトルクのバラツキを低減するとともに、耐摩耗性を良好にすることができる。当該効果は、摺動部の潤滑用として用いた場合に発揮しやすく、金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構の潤滑用として用いた場合により発揮しやすくできる。
【0101】
グリース組成物を適用する装置の分野は特に限定されない。例えば、自動車分野、事務機器分野、工作機械分野、風車分野、建設用及び農業機械用分野等の装置が挙げられる。
【0102】
自動車用分野の適用では、例えば、ラジエータファンモータ、ファンカップリング、オルターネータ、アイドラプーリ、ハブユニット、ウォーターポンプ、パワーウィンドウ、ワイパ、電動パワーステアリング、駆動用電動モータフライホイール、ボールジョイント、ホイールベアリング、スプライン部、等速ジョイント等の装置内の軸受部分;ドアロック、ドアヒンジ、クラッチブースタ等の装置内の軸受部分、ギヤ部分、摺動部分;等が挙げられる。
事務機器分野の装置内での潤滑部分としては、例えば、プリンタ等の装置内の定着ロール、ポリゴンモーター等の装置内の軸受及びギヤ部分等が挙げられる。
工作機械分野の装置内での潤滑部分としては、例えば、スピンドル、サーボモータ、工作用ロボット等の減速機内の軸受部分等が挙げられる。
風車分野の装置内での潤滑部分としては、例えば、ブレードベアリング及び発電機等の軸受部分等が挙げられる。
建設用又は農業機械用分野の装置内での潤滑部分としては、例えば、ボールジョイント、スプライン部等の軸受部分、ギヤ部分及び摺動部分等が挙げられる。
【0103】
[装置]
本発明の装置は、金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構を有する装置であって、前記摺動機構の摺動面に上述した本発明の供給可能に構成されてなるものである。
【0104】
金属材は鋼、ステンレス合金、アルミニウム合金等の各種合金や銅が好ましい。なお、金属材は、強度が高い材料(例えば、セラミック材等)に置き換えてもよい。
樹脂材としては、天然樹脂でもよく、合成樹脂でもよいが、合成樹脂の汎用プラスチック(ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール等)及びエンジニアリングプラスチックが好ましく、耐熱性及び機械的強度の観点から、エンジニアプラスチックがより好ましい。
エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
【0105】
本発明の装置の一態様は、前記摺動機構が、金属製のボールスタッド、ハウジング、及び前記ボールスタッドと前記ハウジングとの間に配置される樹脂製のボールシートを有するボールジョイントであることが好ましい。装置を当該構成とすることにより、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できることのほか、低温トルクに優れ、温度ごとのトルクのバラツキを低減するとともに、耐摩耗性を良好にすることができるので、車両に用いた場合に、優れた乗り心地性を長期に渡って維持できる効果を顕著に発揮することができる。
【0106】
本発明の装置の一態様は、前記摺動機構が、金属製の保持器、金属製のころ、及び樹脂製の保持器を有するボールベアリングであることが好ましい。装置を当該構成とすることにより、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できることのほか、低温トルクに優れ、温度ごとのトルクのバラツキを低減するとともに、耐摩耗性を良好にすることができるので、車両に用いた場合に、優れた乗り心地性を長期に渡って維持できる効果を顕著に発揮することができる。
【0107】
[摺動機構の潤滑方法]
本発明の摺動機構の潤滑方法は、金属材と樹脂材とが摺動する摺動機構に対して、上述した本発明のグリース組成物を添加するものである。
【0108】
本発明の摺動機構の潤滑方法によれば、潤滑部における動摩擦力を適切に維持することができる。当該効果は、前記摺動機構が、金属製のボールスタッド、ハウジング、及び前記ボールスタッドと前記ハウジングとの間に配置される樹脂製のボールシートを有するボールジョイントである場合に、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できることのほか、低温トルクに優れ、温度ごとのトルクのバラツキを低減するとともに、耐摩耗性を良好にすることができるので、車両に用いた場合に、優れた乗り心地性を長期に渡って維持できる効果をより顕著なものとすることができる。また、前記摺動機構が、金属材と樹脂材とで構成された摺動部分を有する電動パワーステアリングである場合には、潤滑部における動摩擦力を適切に維持できることのほか、低温トルクに優れ、温度ごとのトルクのバラツキを低減するとともに、耐摩耗性を良好にすることができるので、優れた操舵性を長期に渡って維持できる効果を顕著に発揮することができる。
【実施例】
【0109】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
1.各種物性値
各種物性値の測定法は、以下のとおりとした。
(1)40℃動粘度、100℃動粘度、粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して測定及び算出した。
(2)混和ちょう度
ASTM D 217法に準拠して、25℃にて測定した。
【0111】
2.基油
実施例及び比較例で用いる基油(A)は、下記の低粘度基油(A1)、高粘度基油(A2)及び超高粘度基油(A3)を、表1に記載の量で配合したものとした。
A1:重量平均分子量555のPAO、40℃動粘度:30mm2/s、100℃動粘度:6mm2/s、粘度指数:132
A2:重量平均分子量1400のPAO、40℃動粘度:400mm2/s、100℃動粘度:40mm2/s、粘度指数:149
A3:重量平均分子量17,000のPAO、40℃動粘度:37,500mm2/s、100℃動粘度:2,000mm2/s、粘度指数:300
【0112】
3.ウレアグリースの合成及びグリース組成物の調製
[実施例1]
(1)ウレアグリースの合成
基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合した混合基油(40℃動粘度:120mm
2/s、100℃動粘度:16mm
2/s、粘度指数:142)を70℃に加熱した。加熱した混合基油(A)50質量部に、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)3質量部を加えて、溶液x1を調製した。
また、同じく基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合し、70℃に加熱した混合基油(40℃動粘度:120mm
2/s、100℃動粘度:16mm
2/s、粘度指数:142)50質量部に、シクロヘキシルアミン1質量部と、ステアリルアミン3.5質量部とを加えて、溶液y1を調製した。
そして、
図2に示すグリース製造装置1を用いて、70℃に加熱した溶液x1を溶液導入管4Aから流量150L/hで、70℃に加熱した溶液y1を溶液導入管4Bから流量150L/hで、それぞれを同時に容器本体2内へ導入し、回転子3を回転させた状態で溶液x1と溶液y1を容器本体2内へ連続的に導入し続けた。なお、使用したグリース製造装置1の回転子3の回転数は8000rpmとした。
また、この際の最高せん断速度(Max)は10,500s
-1であり、最高せん断速度(Max)と最低せん断速度(Min)との比〔Max/Min〕は3.5として、撹拌を行った。
なお、得られたウレアグリースに含まれるウレア系増ちょう剤は、前記一般式(b1)中のR
1及びR
2が、シクロヘキシル基及びステアリル基(オクタデシル基)から選択され、R
3がジフェニルメチレン基である化合物に相当する。また、ウレア系増ちょう剤の明細書本文のα+γ/2:β+γ/2は、60:40であった。
【0113】
(2)グリース組成物の調製
上記(1)で得たウレアグリース(
図2に示すグリース製造装置1から吐出されたもの)を160℃で加熱撹拌した後、自然放冷で冷却し、基油(A3)と、添加剤(C)として、N-オレオイルサルコシン(C1)、オレイルアミン(C2)、及びアルキルポリアミド(C3)を加え、実施例1のグリース組成物を得た。
なお、実施例1のグリース組成物中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0114】
[実施例2]
基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合した混合基油(40℃動粘度:140mm2/s、100℃動粘度:18mm2/s、粘度指数:143)を70℃に加熱した。加熱した混合基油(A)50質量部に、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)3質量部を加えて、溶液x2を調製した。
また、同じく基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合し、70℃に加熱した混合基油(40℃動粘度:140mm2/s、100℃動粘度:18mm2/s、粘度指数:143)50質量部に、シクロヘキシルアミン1質量部と、ステアリルアミン3.5質量部とを加えて、溶液y2を調製した。
そして、溶液x1及びy1を、溶液x2及びy2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のグリース組成物を得た。実施例2のグリース組成物中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0115】
[実施例3]
基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合した混合基油(40℃動粘度:90mm2/s、100℃動粘度:13mm2/s、粘度指数:143)を70℃に加熱した。加熱した混合基油(A)50質量部に、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)3質量部を加えて、溶液x3を調製した。
また、同じく基油(A1)と基油(A2)を表1の割合で配合し、70℃に加熱した混合基油(40℃動粘度:90mm2/s、100℃動粘度:13mm2/s、粘度指数:143)50質量部に、シクロヘキシルアミン1質量部と、ステアリルアミン4質量部とを加えて、溶液y3を調製した。
そして、溶液x1及びy1を、溶液x3及びy3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のグリース組成物を得た。実施例3のグリース組成物中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0116】
[比較例1]
基油(A1)を表1の割合で配合した基油(40℃動粘度:30mm2/s、100℃動粘度:6mm2/s、粘度指数:132)を70℃に加熱した。加熱した基油(A)50質量部に、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)4質量部を加えて、溶液x4を調製した。
また、同じく基油(A1)を表1の割合で配合し、70℃に加熱した基油(40℃動粘度:30mm2/s、100℃動粘度:6mm2/s、粘度指数:132)50質量部に、シクロヘキシルアミン1質量部と、ステアリルアミン4質量部とを加えて、溶液y4を調製した。
そして、溶液x1及びy1を、溶液x4及びy4に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のグリース組成物を得た。比較例1のグリース組成物中の各成分の含有量は、表1に示すとおりである。
【0117】
4.測定、評価
実施例1~3及び比較例1のグリース組成物について、グリース組成物から抽出した基油の40℃動粘度と、グリース組成物の混和ちょう度を測定すると共に、下記の評価を行った。また、実施例1~3及び比較例1のグリース組成物について、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子に関する測定を行った。結果を表1に示す。
【0118】
4-1.粒子径に関する測定
実施例1~3及び比較例1のグリース組成物を十分に混和し、真空脱泡した後1mLシリンジに充填し、シリンジから0.10~0.15mLのグリース組成物を押し出し、ペーストセル用固定治具の板状のセルの表面に押し出したグリース組成物を載せた。そして、グリース組成物の上に、さらに別の板状のセルを重ねて、2枚のセルでグリース組成物を挟持した測定用セルを得た。
レーザー回折型粒径測定機(堀場製作所社製、商品名:LA-920)を用いて、測定用セルのグリース組成物中の粒子(ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子)の面積基準での算術平均粒子径を測定した。なお、添加剤(C)として用いた成分(C1)~(C3)は、いずれも室温(25℃)で液体ないしは、基油に溶解していることから、グリース組成物中の粒子(ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子)の測定には影響を与えない。
ここで、「面積基準での算術平均粒子径」とは、面積基準での粒子径分布を算術平均した値を意味する。
実施例1のグリース組成物中の粒子の面積基準での粒子径分布を
図1に示す。面積基準での粒子径分布は、測定対象である粒子全体における粒子径の頻度分布を、当該粒子径から算出される面積(詳細には、当該粒子径を有する粒子の断面積)を基準として示したものである。
また、面積基準での粒子径分布を算術平均した値は、下記式(1)により計算することができる。
【0119】
【数1】
上記式(1)中、Jは、粒子径の分割番号を意味する。q(J)は、頻度分布値(単位:%)を意味する。X(J)は、J番目の粒子径範囲の代表径(単位:μm)である。
【0120】
4-2.比表面積
4-1の測定から得られた粒子径分布に基づき、グリース組成物中の粒子(ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子)の比表面積(単位:cm2/cm3)を算出した。
【0121】
4-3.動摩擦力(動摩擦力の平均)
ボール・オン・ディスク型の往復動摩擦試験機(バウデン・レーベン式)を用い、下記の条件で20往復の動摩擦力を測定(測定間隔:10s)し、各測定時間の動摩擦力の平均値(単位は「N」)を算出した。
・板材:ポリアセタール(POM)
・球:SUJ-2(鋼)
・荷重:4kgf
・摺動距離:10mm
・往復回数:20回
・速度:1mm/s
・温度:室温(25℃)
【0122】
4-4.動摩擦力のバラツキ
上記4-3の測定データに基づき、各測定時間の動摩擦力のバラツキ(標準偏差)を算出した。単位は「N」である。その結果、バラツキ(標準偏差)が0.01N未満のものを「A」、0.01N以上0.05N未満のものを「B」、0.05N以上のものを「C」とした。
【0123】
4-5.音響測定
SKF社のグリース専用音響測定機器(Grease Test Rig Be Quiet+)を用いて、BeQuiet法に基づく音響測定を行った。測定は該装置の測定手順書に従った。具体的には、室温(約25℃)にて、所定の深溝玉軸受(type608)を用い、軸方向の荷重30N、回転数1800rpmにて音響特性を評価した。まず、グリースを封入しない状態で新品の軸受をセットし所定の荷重をかけながら所定回転数で回転させて音響データを得た。次に同じ軸受に所定の荷重をかけ、所定の回転数で回転させながら、グリース導入とエアブローを繰り返して、グリースの封入を完了させた。その後、所定の荷重をかけ、所定の回転数で回転させながらグリース封入時の音響測定を行い、装置に付随するプログラムによってBQ分類を算出した。
各グリース組成物についてBQ分類を算出する作業を100回(10回が1セットの測定を10セット)行った。さらに、100回測定したBQ分類の割合に基づいてGN分類を算出した。GN分類は、GN4、GN3、GN2、GN1、GNXの5つに区分される。異音が最も少なく、音響特性が最も良好なものはGN4であり、GNXは音響特性が最も悪いものである。なお、音響特性が良好であることは、摺動部の異音を抑制するのみならず、振動を抑制し得ることを意味するため、乗り心地性が良好であるといえる。
【0124】
【0125】
実施例1~3と比較例1との対比により、基油(A)の40℃動粘度が100mm2/s以上であり、かつ、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の面積基準での算術平均粒子径が2.0μm以下である実施例1~3の潤滑油組成物は、動摩擦力を低くでき、かつ動摩擦力のバラツキが少なくできることが確認できる。さらに、実施例1及び2と実施例3との対比により、ウレア系増ちょう剤(B)を含む粒子の比表面積が1.0×105cm2/cm3以上である実施例1~2の潤滑油組成物は、音響特性をより良好にできることが確認できる。
【符号の説明】
【0126】
1 グリース製造装置
2 容器本体
3 回転子
4 導入部
4A、4B 溶液導入管
5 滞留部
6 第一凹凸部
7 第二凹凸部
8 吐出部
9 容器本体側の第一凹凸部
10 容器本体側の第二凹凸部
11 吐出口
12 回転軸
13 回転子の第一凹凸部
13A 凹部
13B 凸部
14 回転子の第二凹凸部
15 スクレーパー
A1、A2 ギャップ