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特許7389817ラメラの作製方法、解析システムおよび試料の解析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】ラメラの作製方法、解析システムおよび試料の解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20231122BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G01N1/28 G
G01N1/28 F
H01J37/20 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021558094
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 JP2019045433
(87)【国際公開番号】W WO2021100144
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】野間口 恒典
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072596(JP,A)
【文献】特開2004-264145(JP,A)
【文献】特開平06-129962(JP,A)
【文献】特開2001-015058(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0108988(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/28
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハの一部をエッチングすることで、解析部および切削部を有するラメラを作製する工程を有し、
第1方向における前記ラメラの幅は、前記第1方向と直交する第2方向における前記ラメラの幅、並びに、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向における前記ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記解析部の幅は、前記解析部の周囲の前記ラメラの幅よりも小さく、
前記切削部は、前記第1方向において前記ラメラを貫通する孔によって構成され、
前記第3方向において、前記解析部の幅および前記切削部の幅は、前記ラメラの幅よりも小さく、
前記第2方向において、前記解析部および前記切削部は、互いに離間されており、
前記第2方向から見た平面視において、前記解析部は、前記切削部に重なり、
前記解析部は、前記第2方向における前記ラメラの第1端部を含む箇所に形成され、
前記切削部は、前記第2方向において前記第1端部と反対側の前記ラメラの第2端部を含む箇所に形成された、ラメラの作製方法。
【請求項2】
請求項1に記載のラメラの作製方法において、
前記第3方向において、前記切削部の幅は、前記解析部の幅よりも大きい、ラメラの作製方法。
【請求項3】
請求項1に記載のラメラの作製方法において、
前記エッチングは、イオンビームカラムまたは電子ビームカラムの何れかまたは両方を備えた荷電粒子線装置によって行われる、ラメラの作製方法。
【請求項4】
ラメラ作製機構と、ラメラ搬送機構とを備える解析システムであって、
(a)前記ラメラ作製機構において、ウェハの一部をエッチングすることで、少なくとも、第1解析部および第1切削部を有する第1ラメラと、第2解析部および第2切削部を有する第2ラメラとを作製する工程、
(b)前記ラメラ搬送機構において、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラを前記ウェハからラメラグリッドへ順次搬送する工程、
を有し、
第1方向における前記第1ラメラの幅は、前記第1方向と直交する第2方向における前記第1ラメラの幅、並びに、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向における前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第1解析部の幅は、前記第1解析部の周囲の前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第1切削部は、前記第1方向において前記第1ラメラを貫通する孔によって構成され、
前記第2方向において、前記第1解析部および前記第1切削部は、互いに離間され、
前記第3方向において、前記第1解析部の幅および前記第1切削部の幅は、前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向における前記第2ラメラの幅は、前記第2方向における前記第2ラメラの幅、および、前記第3方向における前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第2解析部の幅は、前記第2解析部の周囲の前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記第2切削部は、前記第1方向において前記第2ラメラを貫通する孔によって構成され、
前記第2方向において、前記第2解析部および前記第2切削部は、互いに離間され、
前記第3方向において、前記第2解析部の幅および前記第2切削部の幅は、前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記ラメラグリッドは、基体と、前記第2方向において前記基体の表面から突出し、且つ、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラを搭載可能な支持部とを有し、
前記(b)工程において、前記第2切削部および前記第1解析部が、前記第2方向において隣接し、且つ、前記第2方向から見た平面視において重なるように、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラは、前記ラメラグリッドへ搬送される、解析システム。
【請求項5】
請求項4に記載の解析システムにおいて、
前記第2方向から見た平面視において、前記第1解析部および前記第2解析部は、それぞれ前記第1切削部および前記第2切削部に重なり、
前記第3方向において、前記第1切削部の幅および前記第2切削部の幅は、それぞれ前記第1解析部の幅および前記第2解析部の幅よりも大きい、解析システム。
【請求項6】
請求項4に記載の解析システムにおいて、
前記支持部は、それぞれ前記第2方向において前記基体の表面から突出した第1支柱、第2支柱、第3支柱および第4支柱を含み、
前記(b)工程において、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラは、それぞれ前記第1支柱と前記第2支柱との間、および、前記第3支柱と前記第4支柱との間に挟まれる、解析システム。
【請求項7】
請求項6に記載の解析システムにおいて、
前記第1方向から見た平面視において、前記第1解析部および前記第2解析部は、それぞれ前記第1支柱、前記第2支柱、前記第3支柱および前記第4支柱と重ならない、解析システム。
【請求項8】
請求項4に記載の解析システムにおいて、
前記(a)工程は、前記ラメラ作製機構に備えられたイオンビームカラムまたは第1電子ビームカラムを用いて行われ、
前記(b)工程は、前記ラメラ搬送機構に備えられた着脱器を用いて行われる、解析システム。
【請求項9】
請求項8に記載の解析システムにおいて、
前記ラメラ作製機構および前記ラメラ搬送機構は、それぞれ別の荷電粒子線装置内に含まれている、解析システム。
【請求項10】
請求項8に記載の解析システムにおいて、
前記ラメラ作製機構および前記ラメラ搬送機構は、同一の荷電粒子線装置内に含まれている、解析システム。
【請求項11】
請求項8に記載の解析システムにおいて、
第2電子ビームカラムおよび試料ステージを有するラメラ解析機構を更に備え、
(c)前記ラメラ解析機構において、前記第1方向において前記第1解析部および前記第2解析部が、それぞれ前記第2電子ビームカラムと向き合うように、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラを搭載した前記ラメラグリッドが、前記試料ステージ上に設置された状態で、前記第1解析部および前記第2解析部の解析を行う工程、
を更に有する、解析システム。
【請求項12】
透過電子顕微鏡を用いて行われる試料の解析方法であって、
(a)解析対象部を有する前記試料を前記透過電子顕微鏡の試料ステージ上に設置する工程、
(b)前記(a)工程後、低倍率で前記試料の画像を取得し、前記画像に基づいて前記試料の前記解析対象部の位置を特定する工程、
(c)前記(b)工程後、高倍率で前記試料の前記解析対象部の解析を実施する工程、
を有し、
前記(b)工程で取得される前記画像は、暗領域と、前記暗領域に囲まれた明領域とを含み、
前記明領域は、第1領域と、前記第1領域よりも小さな面積を有し、且つ、前記第1領域に接する第2領域とを含み、
前記第1領域と前記暗領域との境界に沿って前記第2領域を探すことで、前記第1領域から突出した前記第2領域の位置が、前記解析対象部の位置であると特定され、
前記試料は、少なくとも、第1解析部および第1切削部を有する第1ラメラと、第2解析部および第2切削部を有する第2ラメラと、前記第2切削部および前記第1解析部が隣接するように、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラが搭載されたラメラグリッドとを有し、
前記解析対象部の位置には、前記第1解析部の位置および前記第2解析部の位置が含まれ、
第1方向における前記第1ラメラの幅は、前記第1方向と直交する第2方向における前記第1ラメラの幅、並びに、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向における前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第1解析部の幅は、前記第1解析部の周囲の前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第1切削部は、前記第1方向において前記第1ラメラを貫通する孔によって構成され、
前記第3方向において、前記第1解析部の幅および前記第1切削部の幅は、前記第1ラメラの幅よりも小さく、
前記第2方向において、前記第1解析部および前記第1切削部は、互いに離間され、
前記第1方向における前記第2ラメラの幅は、前記第2方向における前記第2ラメラの幅、および、前記第3方向における前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記第1方向において、前記第2解析部の幅は、前記第2解析部の周囲の前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記第2切削部は、前記第1方向において前記第2ラメラを貫通する孔によって構成され、
前記第3方向において、前記第2解析部の幅および前記第2切削部の幅は、前記第2ラメラの幅よりも小さく、
前記第2方向において、前記第2解析部および前記第2切削部は、互いに離間され、
前記第2切削部および前記第1解析部が、前記第2方向において隣接し、且つ、前記第2方向から見た平面視において重なるように、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラは、前記ラメラグリッドに搭載され、
前記第2方向から見た平面視において、前記第1解析部および前記第2解析部は、それぞれ前記第1切削部および前記第2切削部に重なり、
前記第3方向において、前記第1切削部の幅および前記第2切削部の幅は、それぞれ前記第1解析部の幅および前記第2解析部の幅よりも大きく、
前記第1方向において前記第1解析部および前記第2解析部が、それぞれ前記透過電子顕微鏡の電子ビームカラムと向き合っている、試料の解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラメラの作製方法、解析システムおよび試料の解析方法に関し、特に、切削部を有するラメラの作製方法、そのラメラが適用される解析システム、および、そのラメラが適用される試料の解析方法に好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの分野では、ムーアの法則に従って、微細化による性能の向上が果たされてきた。しかし、近年、微細化の限界が近づいており、化合物半導体またはグラフェンなどのようなシリコンに代わる新規材料の利用、三次元構造の促進、および、微細化以外の方法によるデバイス性能の向上技術などが注目されている。
【0003】
これらのような新たな取り組みによって、異種材料間の界面状態および積層構造を解析するための技術の重要性が増している。例えば、従来の解析技術には、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM: Scanning Electron Microscope)を用いた表面観察があるが、これらの表面観察では、正確な界面状態および積層構造を解析することが困難となってきている。
【0004】
そこで、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置によって、ウェハの一部からラメラ(薄片試料)を作製し、ラメラ搬送装置または上記FIB装置によって、ラメラをラメラグリッドへ搬送し、高分解能な電子顕微鏡によって、ラメラグリッド上のラメラを解析する手法が行われている。高分解能な電子顕微鏡(荷電粒子線装置)は、例えばSEM、透過電子顕微鏡(TEM: Transmission Electron Microscope)または走査型透過電子顕微鏡(STEM: Scanning Transmission Electron Microscope)などである。
【0005】
一方で、一般的にラメラグリッドを用いてラメラを搬送する際には、デポジションを利用してラメラがラメラグリッドに固定される。例えば、特許文献1には、デポジションによって、一つのラメラグリッドに複数のラメラを搭載する技術が開示されている。また、特許文献2には、デポジションを利用しないラメラの固定方法として、嵌合形状を利用した方法などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-204296号公報
【文献】特開2009-115582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェハ内の界面情報および積層構造を取得する一連の流れを自動で行うことで、ウェハの品質評価を行うことが望まれている。例えば、一つのウェハから複数のラメラを作製し、複数のラメラを一つのラメラグリッドに纏めて搭載し、複数のラメラを荷電粒子線装置で纏めて解析するような解析システムを構築することができれば、ウェハの品質評価のスループットの向上が果たせる。
【0008】
特許文献1では、多数のラメラを搬送することが可能であり、デポジションを用いて複数のラメラがラメラグリッドに固定されている。しかし、デポジションは、時間が掛かるという問題および試料汚染の問題を有するので、ウェハの品質評価においては、デポジションを用いないラメラの固定方法が望まれる。
【0009】
特許文献2では、デポジションが用いられていないので、短時間での搬送が可能であり、試料汚染も少ない。しかし、多数のラメラを搬送するためには、搬送するラメラの数の分、支持部を増やす必要がある。一般的に利用される直径3mm程度のラメラグリッドにおいては、10~20箇所程度の支持部を設けることしかできない。そのため、一つのラメラグリッドによって多数のラメラを搬送することは困難である。
【0010】
以上の理由から、デポジションを利用せずに、一つのラメラグリッドによって複数のラメラを搬送する技術が望まれ、ウェハの品質評価のスループットを向上させる技術が望まれる。
【0011】
図1は、本願発明者らが検討を行ったラメラ10およびラメラグリッド20の概要を示す正面図である。図2および図3は、検討例1および検討例2のラメラ10およびラメラグリッド20を示す要部斜視図であり、図1の円で囲まれた領域である支持部22付近の構造を示している。
【0012】
図1に示されるように、ラメラグリッド20は、ハーフムーン型の基体21と、Z方向において基体21の表面から突出した複数の支持部22とを含み、複数の支持部22の各々に、ラメラ10が搭載されている。
【0013】
図2に示される検討例1では、一つの支持部22に一つのラメラ10が搭載されている。支持部22は、支柱22a~22dによって構成され、支柱22a~22dは、Z方向において基体21の上面から突出している。ラメラ10は、支柱22aと支柱22bとの間、および、支柱22cと支柱22dとの間に挟まれている。また、ラメラ10の上部には、後に荷電粒子線装置において解析対象となる解析部11が設けられている。
【0014】
検討例1では、図2に示されるように、一つの支持部22で一つのラメラ10しか搬送できない。そのため、ウェハの品質評価のスループットを向上させることが困難である。
【0015】
図3に示される検討例2では、支持部22の高さを高くすることで、複数のラメラ10(ここでは二つのラメラ10)を搬送することが可能となっている。しかし、検討例2の構造では、上方のラメラ10の底部が、下方のラメラ10の解析部11に接しているので、解析部11が破損する恐れがある。また、TEM装置などの荷電粒子線装置を用いて行われる解析時に、上方のラメラ10の底部を構成する物質が、下方のラメラ10の解析部11の分析に干渉する恐れもある。これらの理由から、正確な観察像の取得が困難となる場合もある。
【0016】
以上を纏めると、ラメラグリッド20に複数のラメラ10を搭載する際に、解析部11の損傷が抑制されるようなラメラ10の作製技術が望まれる。また、このようなラメラ10の作製および搬送が可能となる解析システムの構築が望まれる。また、作製されたラメラ10を、荷電粒子線装置によって解析する際に、より正確な観察像を取得できる解析方法の構築が望まれる。
【0017】
その他の課題および新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される実施の形態のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
一実施の形態におけるラメラの作製方法は、ウェハの一部をエッチングすることで、解析部および切削部を有するラメラを作製する工程を有する。ここで、第1方向における前記ラメラの幅は、前記第1方向と直交する第2方向における前記ラメラの幅、並びに、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向における前記ラメラの幅よりも小さく、前記第1方向において、前記解析部の幅は、前記解析部の周囲の前記ラメラの幅よりも小さい。また、前記切削部は、前記第1方向において前記ラメラを貫通する孔によって構成され、前記第2方向において、前記解析部および前記切削部は、互いに離間されている。
【0020】
また、一実施の形態における解析システムは、ラメラ作製機構と、ラメラ搬送機構とを備え、(a)前記ラメラ作製機構において、ウェハの一部をエッチングすることで、少なくとも、第1解析部および第1切削部を有する第1ラメラと、第2解析部および第2切削部を有する第2ラメラとを作製する工程、(b)前記ラメラ搬送機構において、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラを前記ウェハからラメラグリッドへ順次搬送する工程、を有する。ここで、第1方向における前記第1ラメラの幅は、前記第1方向と直交する第2方向における前記第1ラメラの幅、並びに、前記第1方向および前記第2方向と直交する第3方向における前記第1ラメラの幅よりも小さく、前記第1方向において、前記第1解析部の幅は、前記第1解析部の周囲の前記第1ラメラの幅よりも小さい。また、前記第1切削部は、前記第1方向において前記第1ラメラを貫通する孔によって構成され、前記第2方向において、前記第1解析部および前記第1切削部は、互いに離間され、前記第1方向における前記第2ラメラの幅は、前記第2方向における前記第2ラメラの幅、および、前記第3方向における前記第2ラメラの幅よりも小さい。また、前記第1方向において、前記第2解析部の幅は、前記第2解析部の周囲の前記第2ラメラの幅よりも小さく、前記第2切削部は、前記第1方向において前記第2ラメラを貫通する孔によって構成され、前記第2方向において、前記第2解析部および前記第2切削部は、互いに離間されている。また、前記ラメラグリッドは、基体と、前記第2方向において前記基体の表面から突出し、且つ、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラを搭載可能な支持部とを有し、前記(b)工程において、前記第2切削部および前記第1解析部が、前記第2方向において隣接し、且つ、前記第2方向から見た平面視において重なるように、前記第1ラメラおよび前記第2ラメラは、前記ラメラグリッドへ搬送される。
【0021】
また、一実施の形態における試料の解析方法は、透過電子顕微鏡を用いて行われ、(a)解析対象部を有する前記試料を前記透過電子顕微鏡の試料ステージ上に設置する工程、(b)前記(a)工程後、低倍率で前記試料の画像を取得し、前記画像に基づいて前記試料の前記解析対象部の位置を特定する工程、(c)前記(b)工程後、高倍率で前記試料の前記解析対象部の解析を実施する工程、を有する。ここで、前記(b)工程で取得される前記画像は、暗領域と、前記暗領域に囲まれた明領域とを含み、前記明領域は、第1領域と、前記第1領域よりも小さな面積を有し、且つ、前記第1領域に接する第2領域とを含み、前記第1領域と前記暗領域との境界に沿って前記第2領域を探すことで、前記第1領域から突出した前記第2領域の位置が、前記解析対象部の位置であると特定される。
【発明の効果】
【0022】
一実施の形態によれば、一つのラメラグリッドによって複数のラメラを搬送することができ、ウェハの品質評価のスループットを向上させることができる。また、その際に、解析部の損傷が抑制されるようなラメラを作製することができる。また、このようなラメラの作製および搬送が可能となる解析システムを提供できる。また、このようなラメラを適用した試料の解析方法において、より正確な観察像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1、検討例1および検討例2におけるラメラおよびラメラグリッドを示す正面図である。
図2】検討例1におけるラメラおよびラメラグリッドを示す要部斜視図である。
図3】検討例2におけるラメラおよびラメラグリッドを示す要部斜視図である。
図4】実施の形態1におけるラメラおよびラメラグリッドを示す要部斜視図である。
図5】実施の形態1におけるラメラを示す要部斜視図である。
図6】実施の形態1におけるラメラを示す正面図である。
図7】実施の形態1におけるラメラを示す平面図である。
図8】実施の形態1における解析システムを示す模式図である。
図9】実施の形態1におけるラメラ作製機構を示す模式図である。
図10】実施の形態1におけるラメラ搬送機構を示す模式図である。
図11】実施の形態1におけるラメラ解析機構を示す模式図である。
図12】実施の形態1におけるネットワーク構成を示す模式図である。
図13】実施の形態1における解析システムの処理フロー図である。
図14】実施の形態1におけるラメラの作製方法を示す要部斜視図である。
図15図14に続くラメラの作製方法を示す要部斜視図である。
図16図15に続くラメラの作製方法を示す要部斜視図である。
図17】実施の形態1におけるラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
図18図17に続くラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
図19図18に続くラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
図20図19に続くラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
図21図20に続くラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
図22】実施の形態1におけるラメラの解析方法を説明するための正面図である。
図23】実施の形態1におけるラメラの解析方法を説明するための画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0025】
また、本願において説明されるX方向、Y方向およびZ方向は互いに直交している。本願では、Z方向をある構造体の上方向または高さ方向として説明する場合もある。また、X方向およびY方向からなる面は平面を成し、Z方向に垂直な平面である。Y方向およびZ方向からなる面は平面を成し、X方向に垂直な平面である。X方向およびZ方向からなる面は平面を成し、Y方向に垂直な平面である。例えば、本願において、「Y方向から見た平面視」と表現した場合、それは、X方向およびZ方向からなる面を、Y方向から見ることを意味する。
【0026】
(実施の形態1)
<ラメラ10およびラメラグリッド20の構造>
実施の形態1におけるラメラ10およびラメラグリッド20の大まかな構造は、図1に示される通りである。図4は、二つのラメラ10がラメラグリッド20に搭載されている様子を示す要部斜視図であり、図5図7は、一つのラメラ10の構造を示す要部斜視図、正面図および平面図である。なお、図4に示されるように、実施の形態1では二つのラメラ10が例示されているが、ラメラグリッド20は、三つ以上の複数のラメラ10を搭載可能である。
【0027】
図1に示されるように、ラメラグリッド(TEMグリッド、ラメラキャリア)20は、ハーフムーン型の基体21と、Z方向において基体21の表面から突出した複数の支持部(間隙部)22とを含み、複数の支持部22の各々に、複数のラメラ10が搭載されている。なお、複数の支持部22を含む基体21は、例えばシリコンのような一つの材料から構成されていてよいが、基体21のうち、複数の支持部22が設けられる箇所およびその周囲は、基体21を構成する材料とは異なる材料で構成されていてもよい。例えば、基体21の大部分が銅によって構成され、複数の支持部22およびその周囲はシリコンによって構成されていてもよい。
【0028】
図4に示されるように、支持部22は、支柱22a~22dによって構成され、支柱22a~22dは、Z方向において基体21の表面から突出し、Z方向へ向かって延在している。ラメラ10は、間隙部を成す支持部22において支持される。具体的には、ラメラ10は、支柱22aと支柱22bとの間、および、支柱22cと支柱22dとの間に挟まれている。支持部22は複数のラメラ10を支持可能であり、ここでは二つのラメラ10が、Z方向において隣接し、支持部22によって支持されている。
【0029】
支柱22aおよび支柱22bは、Y方向において互いに離間され、支柱22cおよび支柱22dは、Y方向において互いに離間されている。また、支柱22aおよび支柱22bは、X方向において支柱22cおよび支柱22dと離間されている。
【0030】
一つのラメラグリッド20には、このような支柱22a~22dからなる支持部22が4~20個設けられている。なお、実施の形態1では支柱22a~22dが四角柱体である場合を例示するが、支柱22a~22dの形状は、ラメラ10を保持できる形状であればよく、四角以外の多角柱体であってもよいし、円柱体であってもよい。
【0031】
図4図7に示されるように、ラメラ10は、Y方向における幅が、X方向における幅およびZ方向における幅よりも薄い薄片試料であり、後で説明するように、ウェハ1の一部をエッチングすることで作製される。Z方向においてラメラ10の上部には、解析部11が設けられている。解析部11は、後にラメラ解析機構において解析対象となる領域であり、Y方向において、解析部11の幅はその周囲のラメラ10の幅よりも薄い。ラメラ10は、Y方向から見た平面視において解析部11が支持部22(支柱22a~22d)と重ならないように、ラメラグリッド20へ搭載される。
【0032】
Z方向においてラメラ10の下部には、解析部11と離間されるように、切削部12が設けられている。切削部12は、Y方向においてラメラ10を貫通する孔によって構成されている。
【0033】
また、X方向において、切削部12の幅W2は、解析部11の幅W1よりも大きい。そして、図7に示されるように、Z方向から見た平面視おいて、解析部11は、切削部12に重なるように設けられている。言い換えれば、Z方向から見た平面視おいて、解析部11は、切削部12に内包されている。
【0034】
複数のラメラ10は、Z方向において互いに隣接するようにラメラグリッド20へ順次搬送される。また、上方のラメラ10の切削部12および下方のラメラ10の解析部11は、Z方向において互いに隣接し、且つ、Z方向から見た平面視において重なっている。このように、ラメラ10に切削部12が設けられているので、上方のラメラ10が、下方のラメラ10の解析部11に接しない。
【0035】
従って、実施の形態1におけるラメラ10を用いれば、ラメラグリッド20に複数のラメラ10を搭載できると共に、解析部11が損傷するという不具合を抑制することができる。また、実施の形態1では、ラメラグリッド20への搭載時にデポジションが用いられていないので、短時間での搬送が可能であり、試料汚染も少ない。
【0036】
また、ラメラ解析機構において解析を行う際、解析は、複数のラメラ10がラメラグリッド20に搭載された状態で行われる。従って、解析部11が支持部22に遮られないように、Y方向から見た平面視おいて、解析部11は、支持部22に重ならず、支持部22から露出している。また、Y方向から見た平面視おいて、切削部12も支持部22に重ならず、支持部22から露出しているが、解析部11が支持部22に重ならなければ、切削部12の一部は支持部22に重なっていてもよい。
【0037】
なお、ラメラグリッド20の最下方に位置するラメラ10では、その下方に他のラメラ10(解析部11)が存在しないので、最下方のラメラ10には切削部12が設けられていなくともよい。しかしながら、切削部12を有するラメラ10と、切削部12を有さないラメラ10とを分けて作製する場合、ラメラ10を作製する工程が複雑となる。更に、切削部12を有さないラメラ10を最初に搬送する必要があり、搬送順番が限定されるので、ラメラ10を搬送する工程も複雑となる。従って、全てのラメラ10に切削部12を設けることが、最も望ましい。
【0038】
<解析システムの構成>
以下に図8図11を用いて、ラメラ10の作製、搬送および解析を行うことが可能な解析システム30の構成について説明する。図8は、実施の形態1における解析システム30を示す模式図である。解析システム30は、ラメラ作製機構、ラメラ搬送機構およびラメラ解析機構を有する。図8に示されるように、ラメラ作製機構としては、ラメラ作製装置40が使用され、ラメラ搬送機構としては、ラメラ作製装置40またはラメラ搬送装置60が使用され、ラメラ解析機構としては、ラメラ解析装置70が使用される。
【0039】
解析システム30は、半導体製造ライン2からウェハ1を受け取り、ラメラ10の作製および搬送を終えたウェハ1を半導体製造ライン2に返す。後で詳細に説明するが、ラメラ10の作製はラメラ作製装置40において行われ、ラメラグリッド20へのラメラ10の搬送は、ラメラ作製装置40またはラメラ搬送装置60において行われる。その後、ラメラ10の解析がラメラ解析装置70において行われ、ラメラ10の解析結果が解析データD4として提供される。
【0040】
また、半導体製造ライン2、ラメラ作製装置40、ラメラ搬送装置60およびラメラ解析装置70の間で行われる移送作業時には、ウェハ1、ラメラ10およびラメラグリッド20は、窒素などの不活性ガスが充満された容器(FOUP)の内部に保管され、移送完了後に各装置の内部で容器から取り出される。
【0041】
なお、実施の形態1におけるウェハ1は、p型またはn型の不純物領域が形成された半導体基板、上記半導体基板上に形成されたトランジスタなどの半導体素子、および、上記半導体素子上に形成された配線層などで構成されている。ラメラ10はウェハ1の一部から取得された薄片であるので、ラメラ10の構造は、上記半導体基板、上記半導体素子および上記配線層のうち全部または一部を含んでいる。また、実施の形態1では、主に半導体製造ラインで用いられるウェハ1を説明しているが、ウェハ1は、半導体技術以外で用いられる構造体でもよい。
【0042】
以下に、解析システム30の主な構成要素である、ラメラ作製装置40、ラメラ搬送装置60およびラメラ解析装置70の各々の詳細な構造について説明する。
【0043】
<ラメラ作製装置>
図9は、実施の形態1におけるラメラ作製装置40を示す模式図である。ラメラ作製装置40は、少なくともラメラ作製機構を備え、例えばFIB-SEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。
【0044】
ラメラ作製装置40は、イオンビームカラム41、電子ビームカラム42、試料室43、ウェハステージ44、ウェハ押さえ45、荷電粒子検出器46、着脱器47、ラメラグリッドステージ48、ラメラグリッド押さえ49および各制御部C1~C7を備える。また、ラメラ作製装置40の内部または外部には、入力デバイス50およびディスプレイ51が設けられている。
【0045】
イオンビームカラム41は、イオンビーム(荷電粒子ビーム)IBを発生するためのイオン源、イオンビームIBを集束するためのレンズ、および、イオンビームIBを走査し、且つ、シフトするための偏向系など、FIB装置として必要な構成要素を全て含む。イオンビームIBとして、一般にガリウムイオンが使用されるが、加工および観察の目的に応じてイオン種は適宜変更してもよい。また、イオンビームIBは、集束イオンビームに限られず、ブロードなイオンビームでもよい。
【0046】
イオンビームカラム制御部C1は、イオンビームカラム41を制御する。例えば、イオン源からのイオンビームIBの発生および偏向系の駆動などが、イオンビームカラム制御部C1によって制御される。
【0047】
電子ビームカラム42は、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB1を発生するための電子源、電子ビームEB1を集束するためのレンズ、および、電子ビームEB1を走査し、且つ、シフトするための偏向系など、SEM装置として必要な構成要素を全て含む。
【0048】
電子ビームカラム制御部C2は、電子ビームカラム42を制御する。例えば、電子源からの電子ビームEB1の発生および偏向系の駆動などが、電子ビームカラム制御部C2によって制御される。
【0049】
イオンビームカラム41を通過したイオンビームIB、および、電子ビームカラム42を通過した電子ビームEB1は、主にイオンビームカラムの光軸OA1と電子ビームカラムの光軸OA2との交点であるクロスポイントCP1にフォーカスされる。
【0050】
また、実施の形態1においては、イオンビームカラム41を垂直配置し、電子ビームカラム42を傾斜配置しているが、これに限られず、イオンビームカラム41を傾斜配置し、電子ビームカラム42を垂直配置してもよい。また、イオンビームカラム41および電子ビームカラム42の双方を傾斜配置してもよい。
【0051】
また、イオンビームカラム41および電子ビームカラム42は、これらの代わりに、ガリウム集束イオンビームカラム、アルゴン集束イオンビームカラムおよび電子ビームカラムを備えたトリプルカラムによって構成されていてもよい。
【0052】
また、ラメラ作製装置40は、イオンビームカラム41のみを備えていてもよいし、電子ビームカラム42のみを備えていてもよい。言い換えれば、ウェハ1の加工および観察を行うことができるならば、荷電粒子線装置であるラメラ作製装置40には、イオンビームカラム41または電子ビームカラム42の何れかまたは両方が備えられていてもよい。すなわち、荷電粒子線装置には、荷電粒子ビームカラムが備えられていればよい。また、電子ビームカラム42は、SEM装置に限られず、試料を透過した電子を用いて観察を行うTEM装置またはSTEM装置としてもよい。
【0053】
ウェハステージ44は、試料室43内において、ウェハ1にイオンビームIBおよび電子ビームEB1が照射される位置に設けられている。ウェハステージ44の駆動は、ウェハステージ制御部C3によって制御される。このため、ウェハステージ44は、平面移動、垂直移動、回転移動および傾斜移動を行うことができる。
【0054】
ウェハステージ44には、ウェハ1を固定するためのウェハ押さえ45が設けられ、ウェハ1は、ウェハ押さえ45を介してウェハステージ44に固定される。ウェハステージ44を駆動することによって、ウェハ1の位置および向きを自由に変更することができる。ウェハステージ44は、例えば、ウェハ1上の所望の箇所がイオンビームIBの照射位置または電子ビームEB1の照射位置に位置するように、移動される。
【0055】
荷電粒子検出器46は、イオンビームIBおよび電子ビームEB1をウェハ1またはラメラ10に照射した際に発生する荷電粒子を検出する。また、ラメラ作製装置40には、荷電粒子検出器46として、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器が設けられていてもよい。
【0056】
検出器制御部C4は、荷電粒子検出器46を制御する。検出器制御部C4は、荷電粒子検出器46からの検出信号を演算処理し、画像化する回路または演算処理部を備える。
【0057】
着脱器47は、着脱器47にイオンビームIBおよび電子ビームEB1が照射される位置に到達できるように、試料室43内に設けられる。着脱器47の駆動は、着脱器制御部C5によって制御される。これにより、着脱器47は、平面移動、垂直移動および回転移動を行うことができる。着脱器47を駆動することによって、ラメラ10をウェハ1から取り出すこと、および、ラメラ10をラメラグリッド20に搬送することが可能になる。
【0058】
なお、実施の形態1における着脱器47として、ナノピンセットが例示されているが、着脱器47はマイクロプローブであってもよい。その場合、マイクロプローブも着脱器制御部C5によって制御される。
【0059】
ラメラグリッドステージ48には、ラメラグリッド20を固定するためのラメラグリッド押さえ49が設けられ、ラメラグリッド20は、ラメラグリッド押さえ49を介してラメラグリッドステージ48に固定される。ラメラグリッドステージ48の駆動は、ラメラグリッドステージ制御部C6によって制御される。このため、ラメラグリッドステージ48は、平面移動、垂直移動、回転移動および傾斜移動を行うことができる。着脱器47によって、ラメラ10は、ウェハ1から取り出され、ラメラグリッド20へ搬送される。
【0060】
統合制御部C7は、イオンビームカラム制御部C1、電子ビームカラム制御部C2、ウェハステージ制御部C3、検出器制御部C4、着脱器制御部C5およびラメラグリッドステージ制御部C6のそれぞれと互いに通信可能であり、ラメラ作製装置40全体の動作を制御する。統合制御部C7は、入力デバイス50によるユーザーからの指示または予め設定された条件に従って、各制御部C1~C6を制御し、各制御部C1~C6にウェハ1へのパターンの書き込みまたは解析対象の観察などを行わせる。また、統合制御部C7は、ラメラ作製装置40の各制御部C1~C6から受信した情報等を記憶するための記憶部(図示せず)を備える。
【0061】
なお、本願では説明を判り易くするため、各制御部C1~C6は、各々に関連する制御対象の近くに個別に図示されているが、各制御部C1~C6および統合制御部C7が一つの制御ユニットとして纏められていてもよい。そのため、本願においては、制御部C1~C7の全部または一部を有する制御ユニットを、単に「制御部」と称する場合もある。なお、このような様態は、後述の制御部C2~C6およびC8、並びに、制御部C9~C14についても同様である。
【0062】
入力デバイス50は、例えば、解析対象の情報の入力、イオンビームIBおよび電子ビームEB1の照射条件の変更、並びに、ウェハステージ44およびラメラグリッドステージ48の位置の変更などの指示を、ユーザーが入力するためのデバイスである。入力デバイス50は、例えばキーボードまたはマウスなどである。
【0063】
ディスプレイ51には、GUI画面52などが表示される。GUI画面52は、ラメラ作製装置40の各構成を制御するための画面である。入力デバイス50によってGUI画面52に各種指示が入力された場合、上記指示が統合制御部C7に送信される。ディスプレイ51は、GUI画面52として、例えば、解析対象の情報を入力する画面、ラメラ作製装置40の各構成の状態を示す画面、観察により取得された解析対象の情報(画像を含む)を表示する画面、イオンビームIBおよび電子ビームEB1の照射条件を変更するための指示画面、並びに、ウェハステージ44およびラメラグリッドステージ48の位置を変更するための指示画面などを表示することができる。ディスプレイ51は、一つ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。なお、ディスプレイ51が、タッチパネルのような入力デバイス50の機能を備えていてもよい。
【0064】
試料室43には、上記以外にも、ガスデポジションユニット(図示せず)が搭載されていてもよい。ガスデポジションユニットは、それぞれその駆動を制御する制御部を有する。ガスデポジションユニットは、ウェハ1への保護膜の作製またはマーキングに使用され、荷電粒子線の照射によって堆積膜を形成するデポガスを貯蔵する。デポガスは、必要に応じてノズル先端から供給することができる。また、試料室43には、真空排気するための減圧装置、コールドトラップまたは光学顕微鏡などが搭載されていてもよい。また、試料室43には、三次電子検出器、STEM検出器、後方散乱電子検出器または低エネルギー損失電子検出器などの検出器が搭載されていてもよい。
【0065】
以上のように、ラメラ作製装置40は、ウェハ1から複数のラメラ10を作製するためのラメラ作製機構と、複数のラメラ10をラメラグリッド20へ搬送(搭載)するためのラメラ搬送機構とを有する。この場合、図8に示されるように、ラメラ10が搭載されたラメラグリッド20は、後述のラメラ搬送装置60を介することなくラメラ解析装置70へ移送される。
【0066】
しかしながら、ラメラ作製装置40には、ラメラ搬送機構が含まれていなくてもよい。すなわち、ラメラ作製装置40には、着脱器47、着脱器制御部C5、ラメラグリッドステージ48、ラメラグリッド押さえ49およびラメラグリッドステージ制御部C6が、構成要素として含まれていなくてもよい。
【0067】
その場合、ラメラ搬送機構は、ラメラ搬送装置60に含まれる。ラメラ10の搬送と比較して、ラメラ10の作製には多くの時間が必要とされるので、ラメラ搬送装置60においてラメラ10の搬送を行った方が効率的である。例えば、解析システム30に複数のラメラ作製機構として複数のラメラ作製装置40を用意し、複数のラメラ作製装置40において複数のウェハ1から多量のラメラ10を作製する。その間、ラメラ搬送装置60において、あるラメラ作製装置40で加工が終了したウェハ1から複数のラメラ10をラメラグリッド20へ順次搬送する。ラメラ搬送装置60をラメラ搬送機構として専従させることで、ウェハの品質評価のスループットを向上させることができる。
【0068】
<ラメラ搬送装置>
図10は、実施の形態1におけるラメラ搬送装置60を示す模式図である。ラメラ搬送装置60は、少なくともラメラ搬送機構を備え、例えば二本の電子ビームカラムを備えるSEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。なお、ラメラ搬送装置60の多くの構成要素は、ラメラ作製装置40と同様であるため、ここではそれらの詳細な説明を省略する。
【0069】
ラメラ搬送装置60は、ラメラ作製装置40のイオンビームカラム41およびイオンビームカラム制御部C1が、他の電子ビームカラム61および他の電子ビームカラム制御部C8に置き換えられることで構成されている。
【0070】
電子ビームカラム61は、電子ビームカラム42と同様に、電子ビーム(荷電粒子ビーム)EB2を発生するための電子源、電子ビームEB2を集束するためのレンズ、および、電子ビームEB2を走査し、且つ、シフトするための偏向系など、SEM装置として必要な構成要素を全て含む。
【0071】
電子ビームカラム制御部C8は、電子ビームカラム61を制御する。例えば、電子源からの電子ビームEB2の発生および偏向系の駆動などが、電子ビームカラム制御部C8によって制御される。
【0072】
また、電子ビームカラム42を通過した電子ビームEB1および電子ビームカラム61を通過した電子ビームEB2は、主に電子ビームカラム42の光軸OA2と電子ビームカラム61の光軸OA3との交点であるクロスポイントCP2にフォーカスされる。ラメラ搬送装置60が、電子ビームカラム42および電子ビームカラム61を有するので、ウェハ1およびラメラグリッド20を二方向から確認することが可能になる。
【0073】
なお、実施の形態1では、二本の電子ビームカラムが用いられるが、二方向からウェハ1およびラメラグリッド20の像観察が可能であれば、二本の電子ビームカラムの代わりに、イオンビームカラム、光学顕微鏡またはレーザー顕微鏡などが用いられてもよい。
【0074】

ラメラ搬送装置60は、ラメラ10をラメラグリッド20に搬送(搭載)するためのラメラ搬送機構を有する。この場合、図8に示されるように、ラメラ10が作製されたウェハ1は、ラメラ作製装置40からラメラ搬送装置60へ移送され、ラメラ10が搭載されたラメラグリッド20は、ラメラ搬送装置60からラメラ解析装置70へ移送される。
【0075】
ラメラ搬送装置60におけるラメラグリッドステージ48にも、ラメラグリッド20を固定するためのラメラグリッド押さえ49が設けられ、ラメラグリッド20は、ラメラグリッド押さえ49を介してラメラグリッドステージ48に固定される。ラメラグリッドステージ48の駆動は、ラメラグリッドステージ制御部C6によって制御される。このため、ラメラグリッドステージ48は、平面移動、垂直移動、回転移動および傾斜移動を行うことができる。
【0076】
ウェハステージ44において、着脱器47によって複数のラメラ10がウェハ1から取り出され、ラメラグリッドステージ48において、着脱器47によって複数のラメラ10がラメラグリッド20へ順次搬送される。
【0077】
なお、上述のように、ラメラ作製装置40にラメラ搬送機構を含ませることもできるが、ラメラ搬送装置60をラメラ搬送機構として専従させることで、ウェハの品質評価のスループットを向上させることができる。
【0078】
<ラメラ解析装置>
図11は、実施の形態1におけるラメラ解析装置70を示す模式図である。ラメラ解析装置70は、少なくともラメラ解析機構を備え、例えばTEM装置またはSTEM装置のような荷電粒子線装置によって構成される。
【0079】
ラメラ解析装置70は、電子ビームカラム71、試料ステージ72、試料交換室73、荷電粒子検出器74、荷電粒子検出器75、X線検出器76、試料室77および各制御部C9~C14を備える。また、ラメラ解析装置70の内部または外部には、入力デバイス78およびディスプレイ79が設けられている。
【0080】
また、試料室77の内部において、試料ステージ72に試料SAMを設置させることができる。試料SAMは、図4に示されるような複数のラメラ10およびラメラグリッド20を含み、ラメラ解析装置70によってラメラ10の解析部11の物質および構造などが解析される。なお、図4における解析部11の正面が、Y方向において電子ビームカラム71と向き合うように、試料SAMは横向きに設置される。
【0081】
電子ビームカラム71は、電子ビームを発生するための電子源、電子ビームを集束するためのレンズ、および、電子ビームを走査し、且つ、シフトするための偏向系など、TEM装置またはSTEM装置として必要な構成要素を全て含む。電子ビームカラム71を通過した電子ビームは、試料SAMに照射される。
【0082】
電子ビームカラム制御部C9は、電子ビームカラム71を制御する。具体的には、電子ビームカラム71の電子源による電子ビームの発生および偏向系の駆動が、電子ビームカラム制御部C9によって制御される。なお、実施の形態1においては、図11に示すように、試料SAMに対して電子ビームカラム71が垂直に配置されているが、これに限られず、電子ビームカラム71が試料SAMに対して傾斜させて配置されていてもよい。
【0083】
試料ステージ72は、試料室77内において、試料SAMに電子ビームを照射できるように設けられる。試料交換室73は、試料室77に挿入される試料SAMを交換する場所である。試料ステージ72は、試料ステージ制御部C10によってその駆動が制御され、平面移動、垂直移動または回転移動を行うことができる。試料ステージ72を駆動することにより、試料SAMの位置および向きを変更することができ、例えば、試料ステージ72は、電子ビームの照射位置に試料SAMが位置するように移動される。
【0084】
荷電粒子検出器74および荷電粒子検出器75は、電子ビームを試料SAMに照射した際に発生する荷電粒子を検出する。荷電粒子検出器74および荷電粒子検出器75には、電子だけでなくイオンの検出も可能な複合荷電粒子検出器が用いられてもよい。
【0085】
検出器制御部C11は荷電粒子検出器74を制御し、検出器制御部C12は荷電粒子検出器75を制御する。検出器制御部C11および検出器制御部C12は、検出信号を演算処理し、画像化する回路または演算処理部(図示せず)を備える。
【0086】
X線検出器76は、試料SAMが発するX線を検出する。X線検出器76の代わりに、質量分析器が搭載されていてもよい。
【0087】
X線検出器制御部C13は、X線検出器76を制御する。X線検出器制御部C13は、X線検出器76からの検出信号を演算処理し、画像化する回路または演算処理部(図示せず)を備える。
【0088】
試料室77には、真空排気するための減圧装置、コールドトラップまたは光学顕微鏡などが搭載されていてもよい。また、試料室77には、三次電子検出器、STEM検出器、後方散乱電子検出器または低エネルギー損失電子検出器などのような検出器が搭載されていてもよい。
【0089】
統合制御部C14は、電子ビームカラム制御部C9、試料ステージ制御部C10、検出器制御部C11及びC12、X線検出器制御部C13のそれぞれと互いに通信可能であり、ラメラ解析装置70全体の動作を制御する。統合制御部C14は、入力デバイス78によるユーザーからの指示により、あるいは予め設定された条件に従い、上記の各制御部を制御し、試料SAMの解析等を行わせる。また、統合制御部C14は、ラメラ解析装置70の各制御部から受信した情報等を記憶するための記憶部(図示せず)を備える。
【0090】
入力デバイス78は、電子ビームの照射条件の変更または試料ステージ72の位置の変更などの指示を、ユーザーが入力するためのデバイスである。入力デバイス78は、例えばキーボードまたはマウスなどである。
【0091】
ディスプレイ79には、GUI画面80などが表示される。GUI画面80は、ラメラ解析装置70を制御するための画面である。入力デバイス78によってGUI画面80に各種指示が入力された場合、上記指示は統合制御部C14に送信される。ディスプレイ79は、GUI画面80として、例えば、ラメラ解析装置70の各構成の状態を示す画面、解析により取得された試料情報(画像を含む)を表示する画面、解析により得られた試料SAMの情報を入力する画面、電子ビームの照射条件を変更するための指示画面、および、試料ステージ72の位置を変更するための指示画面などを表示することができる。ディスプレイ79は、一つ設けられていてもよいし、複数設けられていてもよい。なお、ディスプレイ79が、タッチパネルのような入力デバイス78の機能を備えていてもよい。
【0092】
<解析システムのネットワーク構成>
図12は、解析システム30のネットワーク構成31を示す模式図である。半導体製造ライン2、ラメラ作製装置40、ラメラ搬送装置60、ラメラ解析装置70、および、データ管理を行うサーバSVは、ネットワーク32によって電気的に接続されている。このため、これらの間で各種データのやり取りが可能となる。サーバSVは、解析位置データD1、ラメラ作製位置データD2、ラメラ搬送位置データD3および解析データD4を保持することができる。
【0093】
解析位置データD1は、ウェハ1上において断面解析を行う予定の位置を示すデータである。ラメラ作製位置データD2は、ウェハ1上においてラメラ10の作製に成功した位置を示すデータである。ラメラ搬送位置データD3は、ラメラグリッド20上において搬送されているラメラ10の位置を示すデータである。解析データD4は、解析結果を含むデータであり、電子ビームに照射された試料SAMからの荷電粒子またはX線の検出信号、および、上記検出信号から得られた観察像などを含むデータである。
【0094】
また、解析位置データD1、ラメラ作製位置データD2、ラメラ搬送位置データD3および解析データD4は、それぞれの情報が紐付けられている。つまり、ウェハ1上の所定位置に作製されたラメラ10が、ラメラグリッド20上のどの位置に搭載され、そのラメラ10の解析結果がどのようになったかを知ることができる。
【0095】
<解析システムの処理フロー>
図13は、実施の形態1における解析システム30の処理フロー図である。また、図14図16は、ラメラ作製機構によるラメラの作製方法を示す要部斜視図であり、図17図21は、ラメラ搬送機構によるラメラの搬送方法を示す要部斜視図である。
【0096】

ステップS1において、断面解析を行いたいウェハ1が、半導体製造ライン2からラメラ作製装置40へ移送され、ウェハ1がラメラ作製装置40のウェハステージ44上に設置される。
【0097】
ステップS2において、ラメラ作製装置40は、受け取ったウェハ1に対応する解析位置データD1をサーバSVから取得する。
【0098】
ステップS3において、解析位置データD1に基づいて、ウェハステージ44を解析位置に移動する。その後、図14図16に示されるように、ウェハ1の一部からラメラ10を作製する。
【0099】
まず、図14に示されるように、ラメラ作製装置40において、イオンビームIBなどの荷電粒子ビームによって、ウェハ1上の断面解析を行いたい領域の周辺をエッチングし、ラメラ10の外形を作製する。次に、ラメラ10の一部にエッチングを行うことで、ラメラ10の上部に解析部11を作製する。解析部11には、後に解析を行うための仕上げ面処理などが施される。
【0100】
ここで、ラメラ10は、接続箇所1aによってウェハ1に接続されている。言い換えれば、この時点では、ラメラ10、接続箇所1aおよびウェハ1は一体化しており、ラメラ10の搬送時に、ラメラ10は接続箇所1aから分離する。
【0101】
次に、図15に示されるように、ウェハステージ44を傾斜させ、イオンビームIBのような荷電粒子ビームを照射することで、ラメラ10の底部をエッチングする。これにより、図16に示されるように、ラメラ10の切削部12が作製される。この状態におけるラメラ10の構造は、接続箇所1aを除き、上述の図5図7で説明した構造と同じである。従って、ラメラ10の詳細な構造については、上述の図5図7の説明を参照されたい。
【0102】
なお、実施の形態1では、図14のラメラ10を作製した後に、切削部12のエッチングを行っているが、図14の作製工程の途中で切削部12のエッチングを行ってもよい。
【0103】
このようなウェハステージ44の移動およびラメラ10の作製は、加工中のウェハ1において解析位置データD1に対応する全ての領域に対して実施される。すなわち、解析位置データD1に対応する全てのラメラ10の作製が終了するまで、ステップS3が繰り返される。
【0104】
ステップS4において、ステップS3で作製された全てのラメラ10のうち、作製に成功した複数のラメラ10の位置が、サーバSVに送信され、ラメラ作製位置データD2としてサーバSVに保存される。
【0105】
ステップS5において、複数のラメラ10が作製されたウェハ1が、ラメラ作製装置40からラメラ搬送装置60へ移送される。すなわち、上記ウェハ1は、ラメラ作製機構からラメラ搬送機構へ移送される。
【0106】
ここで、上述のように、ラメラ作製装置40がラメラ作製機構およびラメラ搬送機構を有する場合には、ステップS5と、以下のステップS6~S9とに係る工程は、ラメラ作製装置40で行われる。
【0107】
ステップS6において、ラメラ搬送装置60は、受け取ったウェハ1に対応するラメラ作製位置データD2をサーバSVから取得する。
【0108】
ステップS7において、ラメラ作製位置データD2に基づいて、ラメラ作製位置にウェハステージ44を移動させる。その後、図17図21に示されるように、複数のラメラ10をラメラグリッド20へ搬送する。
【0109】
まず、ラメラ搬送装置60において、電子ビームカラム42または電子ビームカラム61によって形成された画像を確認し、その後、図17に示されるように、着脱器47を用いてウェハ1に作製されたラメラ10を保持する。ここでは、着脱器47はナノピンセットであり、ナノピンセットによってラメラ10が掴まれている。この際、解析部11が掴まれないように、ナノピンセットを操作することが望ましい。
【0110】
次に、図18に示されるように、ウェハステージ44を下げる、または、着脱器47を上げることで、ラメラ10が接続箇所1aから分離し、ウェハ1からリフトオフする。このようにして、ウェハ1の一部からラメラ10が取得される。
【0111】
次に、ラメラグリッドステージ48を電子ビームカラム42および電子ビームカラム61によって画像が取得できる位置に移動し、着脱器47およびラメラグリッドステージ48の各々の位置を調整する。そして、図19に示されるように、着脱器47で保持されているラメラ10を、ラメラグリッド20上の支持部22(支柱22a~22d)の真上に移動させる。
【0112】
次に、電子ビームカラム42によって形成される画像を確認しながら、図20に示されるように、支持部22にラメラ10を挿し込む。具体的には、ラメラ10を、支柱22aと支柱22bとの間、および、支柱22cと支柱22dとの間に挿入する。所定の位置までラメラ10の挿入が完了した後、着脱器47の掴みを解除し、着脱器47を退避させる。以上により、一枚目のラメラ10がウェハ1からラメラグリッド20へ搬送される。
【0113】
次に、一枚目と同様の手法によって、ウェハ1から二枚目のラメラ10を取得する。そして、図21に示されるように、ラメラグリッド20の支持部22の真上に二枚目のラメラ10を移動させ、支持部22にラメラ10を挿し込む。これにより、二枚目のラメラ10がウェハ1からラメラグリッド20へ搬送される。
【0114】
図4図7でも説明したが、ラメラ10に切削部12が設けられていることで、上方のラメラ10の底部が、下方のラメラ10の解析部11に接しない。従って、解析部11が損傷するという不具合を抑制することができる。また、支持部22に複数のラメラ10を搭載でき、そのような支持部22を複数有するラメラグリッド20を提供できる。また、ラメラ10をラメラグリッド20へ搬送する際に、デポジションが用いられていないので、短時間での搬送が可能であり、試料汚染も抑制することができる。
【0115】
また、実施の形態1では、二枚のラメラ10が支持部22に搭載されているが、支持部22の形状(高さ)によっては、二枚以上の複数のラメラ10を支持部22に搭載させることも可能である。
【0116】
このようなウェハステージ44の移動およびラメラ10の搬送は、ウェハ1においてラメラ作製位置データD2に対応する全ての領域に対して実施される。すなわち、ラメラ作製位置データD2に対応する全てのラメラ10の搬送が終了するまで、ステップS7が繰り返される。また、一つの支持部22の許容範囲を超えた場合には、後続のラメラ10は、ラメラグリッド20上の他の支持部22へ搬送される。そして、一つのラメラグリッド20の許容範囲を超えた場合には、更に後続のラメラ10は、他のラメラグリッド20の支持部22へ搬送される。
【0117】
以上のステップS7の後、ステップS8において、ラメラグリッド20に搬送されたラメラ10のうち、搬送に成功したラメラ10のラメラグリッド20上の位置が、サーバSVに送信され、ラメラ搬送位置データD3としてサーバSVに保存される。
【0118】
ステップS9において、複数のラメラ10の搬送が完了したウェハ1は、ラメラ搬送装置60から排出される。その後、必要であれば、排出されたウェハ1を半導体製造ライン2に戻してもよい。
【0119】
ステップS10において、複数のラメラ10が搭載されたラメラグリッド20は、試料SAMとして、ラメラ搬送装置60からラメラ解析装置70へ移送される。
【0120】
ステップS11において、ラメラ解析機構であるラメラ解析装置70は、受け取ったラメラグリッド20に対応するラメラ搬送位置データD3をサーバSVから取得する。ラメラ解析装置70では、以上のように用意されたラメラ10(解析部11)の解析が行われる。
【0121】
以下のステップS12およびステップS13において、ラメラ解析装置70を用いて行われるラメラ10の解析方法について説明する。ここでは、ラメラ解析装置70がTEM装置である場合を例示する。
【0122】
ステップS12において、ラメラ搬送位置データD3に基づいて、解析したい試料SAMの搬送位置になるように、試料ステージ72を移動させる。図22は、試料ステージ72に設置された試料SAMの正面図であるが、Y方向において試料SAM(ラメラ10の解析部11)の正面が電子ビームカラム71と向き合うように、試料SAMは横向きに設置される。
【0123】
試料SAMのうち、実質的には、複数のラメラ10の各々の解析部11が解析対象部であり、ラメラグリッド20は複数のラメラ10を支持するホルダであるが、ここでは、これらを纏めて試料SAMとして記述する。また、解析部11が支持部22に遮られないように、Y方向から見た平面視おいて、解析部11および切削部12は、支持部22に重ならず、支持部22から露出している。
【0124】
解析部11の解析時には、まず、低倍率で試料SAMの画像を取得し、ラメラ10の解析部11が視野中心になるような試料ステージ72の位置情報(座標)を取得する。次に、その座標に試料ステージ72を移動し、その後、高倍率で解析部11の断面解析を実施する。
【0125】
解析部11の解析手法としては、一般的な手法を用いることができる。例えば、電子ビームカラム71からの電子ビームを解析部11に照射することで、荷電粒子検出器74および荷電粒子検出器75によって、解析部11から発する荷電粒子を解析できる。また、X線検出器76によって、解析部11から発するX線を解析できる。
【0126】
ここで、一つの支持部22に二つのラメラ10が搭載されている場合、低倍率の画像を取得する際に、第一のラメラ10の解析部11および第二のラメラ10の解析部11の両方の試料ステージ72の位置情報を取得することが可能である。このため、低倍率および高倍率を交互に行う必要が無く、断面解析の時間短縮を図ることができる。
【0127】
具体的には、第一のラメラ10の解析部11の座標に試料ステージ72を移動し、第一のラメラ10の解析部11において高倍率の断面解析を完了した後、再び低倍率にはせずに、第二のラメラ10の解析部11の座標に試料ステージ72を移動し、第二のラメラ10の解析部11において高倍率の断面解析を行う。
【0128】
なお、一つの支持部22に三つ以上のラメラ10が搭載されている場合でも同様に、低倍率の画像を一度取得すればよいので、断面解析の時間短縮を図ることができる。
【0129】
また、上述のように、試料SAMの解析対象部に含まれる複数の解析部11の解析時には、低倍率で複数の解析部11の位置を特定する作業が行われるが、実施の形態1の試料SAMの構造を用いれば、複数の解析部11の位置を容易に特定することができる。
【0130】
低倍率で試料SAMを観察すると、例えば図23に示されるような暗領域90と、暗領域90に囲まれた明領域とを含む画像が得られる。Y方向における幅が薄い解析部11、および、貫通孔である切削部12は、明領域として明るく表示される。すなわち、明領域は、切削部12に対応する大面積領域12aと、解析部11に対応する小面積領域11aとを含み、大面積領域12aおよび小面積領域11aは互いに接している。言い換えれば、大面積領域12aの一部に小面積領域11aが凸部として表示される。
【0131】
ここで、大面積領域12aと暗領域90との境界に沿って小面積領域11aを探すことで、大面積領域12aから突出した小面積領域11aを容易に特定でき、小面積領域11aの位置が、試料SAMの解析対象部(解析部11)の位置であると特定される。なお、支持部22の最上部に搭載されたラメラ10を観察する場合、その上方の領域は、ラメラ10およびラメラグリッド20が存在しない空間となるので、その空間が大面積領域12aとなる。この場合も同様に、大面積領域12aと暗領域90との境界に沿って小面積領域11aを探すことで、試料SAMの解析対象部を容易に特定できる。
【0132】
仮に、ラメラ10に切削部12が設けられていない場合、すなわち、大面積領域12aが存在していない場合、明暗画像には小面積領域11aのみが明領域として存在することになる。この場合、画像上で小面積領域11aを明確に判別することができない恐れがあり、解析部11の位置を特定するための作業時間が増加する恐れがある。これに対して、実施の形態1によれば、比較的見つけ易い大面積領域12aが存在している。このため、まず、近くに解析部11が存在すると予想される大まかな位置を特定し、その後、大面積領域12aと暗領域90との境界に沿って凸部である小面積領域11aを探せばよい。従って、解析部11の位置の特定が容易となり、その作業時間も短縮することができる。
【0133】
更に、実施の形態1におけるラメラ10の解析方法によれば、切削部12が存在しているので、観察対象となる解析部11の近くに、他のラメラ10が存在していない状態で断面解析を行うことができる。従って、断面解析時に、他のラメラ10の成分の影響を受ける可能性が低くなるので、荷電粒子検出器74および荷電粒子検出器75によって得られる観察像の精度を、より高めることができる。また、X線検出器76によって得られる元素分析の精度も高めることができる。
【0134】
その後、ステップS13において、断面解析によって得られたラメラ10の解析部11の解析結果は、サーバSVへ送信され、解析データD4としてサーバSVに保存される。
【0135】
以上、上記実施の形態に基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0136】
1 ウェハ
1a 接続箇所
2 半導体製造ライン
10 ラメラ
11 解析部
11a 小面積領域(明領域)
12 切削部
12a 大面積領域(明領域)
20 ラメラグリッド
21 基体
22 支持部
22a~22d 支柱
30 解析システム
31 ネットワーク構成
32 ネットワーク
40 ラメラ作製装置
41 イオンビームカラム
42 電子ビームカラム
43 試料室
44 ウェハステージ
45 ウェハ押さえ
46 荷電粒子検出器
47 着脱器
48 ラメラグリッドステージ
49 ラメラグリッド押さえ
50 入力デバイス
51 ディスプレイ
52 GUI画面
60 ラメラ搬送装置
61 電子ビームカラム
70 ラメラ解析装置
71 電子ビームカラム
72 試料ステージ
73 試料交換室
74 荷電粒子検出器
75 荷電粒子検出器
76 X線検出器
77 試料室
78 入力デバイス
79 ディスプレイ
80 GUI画面
90 暗領域
C1 イオンビームカラム制御部
C2 電子ビームカラム制御部
C3 ウェハステージ制御部
C4 検出器制御部
C5 着脱器制御部
C6 ラメラグリッドステージ制御部
C7 統合制御部
C8 電子ビームカラム制御部
C9 電子ビームカラム制御部
C10 試料ステージ制御部
C11 検出器制御部
C12 検出器制御部
C13 X線検出器制御部
C14 統合制御部
CP1、CP2 クロスポイント
D1 解析位置データ
D2 ラメラ作製位置データ
D3 ラメラ搬送位置データ
D4 解析データ
EB1、EB2 電子ビーム(荷電粒子ビーム)
IB イオンビーム(荷電粒子ビーム)
OA1~OA3 光軸
S1~S13 ステップ
SV サーバ
W1、W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23