(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】マゼンタ色感光性樹脂組成物、膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231122BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231122BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231122BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20231122BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20231122BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231122BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G02B5/20 101
H01L27/146 D
G09F9/30 349A
H10K59/38
H10K59/10
(21)【出願番号】P 2022521853
(86)(22)【出願日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2021017328
(87)【国際公開番号】W WO2021230122
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2020083572
(32)【優先日】2020-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020181989
(32)【優先日】2020-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】奈良 裕樹
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-208452(JP,A)
【文献】特開2018-168365(JP,A)
【文献】特開平11-189733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G02B 5/20
H01L 27/146
G09F 9/30
H10K 59/38
H10K 59/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材と、樹脂と、重合性化合物と、溶剤と、を含むマゼンタ色感光性樹脂組成物であって、
前記色材は、マゼンタ色顔料と、マゼンタ色染料とを含み、
前記マゼンタ色染料は、重合性基を有する化合物であり、前記重合性基はエチレン性不飽和結合含有基であり、
前記色材中における前記マゼンタ色染料の含有量が20質量%以上であり、
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における前記マゼンタ色顔料と前記マゼンタ色染料との合計量が30質量%以上である、マゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記マゼンタ色染料が有する前記重合性基は、ビニル基、(メタ)アリル基または(メタ)アクリロイル基である、請求項1に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項3】
色材と、樹脂と、重合性化合物と、溶剤と、を含むマゼンタ色感光性樹脂組成物であって、
前記色材は、マゼンタ色顔料と、マゼンタ色染料とを含み、
前記マゼンタ染料は、式(A)で表される繰り返し単位を含む染料多量体、または、式(D)で表される染料多量体であり、
前記色材中における前記マゼンタ色染料の含有量が20質量%以上であり、
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における前記マゼンタ色顔料と前記マゼンタ色染料との合計量が30質量%以上である、マゼンタ色感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(A)中、X
1
は繰り返し単位の主鎖を表し、L
1
は単結合または2価の連結基を表し、D
1
は色素構造を表す。)
【化2】
(式(D)中、L
4
は(n+k)価の連結基を表し、L
41
およびL
42
は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、D
4
は色素構造を表し、P
4
は置換基を表し、nは2~15を表し、kは0~13を表し、n+kは2~15であり、n個のD
4
は互いに異なっていても良く、同一であってもよく、kが2以上の場合、複数のP
4
は互いに異なっていても良く、同一であってもよい。)
【請求項4】
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、400~450nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下で、かつ、600~700nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下である、請求項1
~3のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、吸光度が0.3となる光の波長が450~520nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在する、請求項1
~4のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、前記膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が30%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上であり、
前記膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在する、請求項1~
5のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、前記膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が80%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上であり、
前記膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が475~495nmの波長範囲と、570~590nmの波長範囲のそれぞれに存在する、請求項1~
5のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記マゼンタ色染料は、キサンテン化合物、ピロメテン化合物およびトリアリールメタン化合物から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~7のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記マゼンタ色顔料は、カラーインデックスピグメントレッド122、カラーインデックスピグメントレッド202、カラーインデックスピグメントレッド209、および、カラーインデックスピグメントレッド269から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~8のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記マゼンタ色顔料は、カラーインデックスピグメントレッド122を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記マゼンタ色染料の100質量部に対して、前記マゼンタ色顔料を5~400質量部含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項12】
固体撮像素子用である、請求項1~11のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項13】
フォトリソグラフィ用である、請求項1~12のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られる膜。
【請求項15】
請求項14に記載の膜を有するカラーフィルタ。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られるマゼンタ色画素と、カラーインデックスピグメントグリーン7を含むシアン色画素と、カラーインデックスピグメントイエロー150を含む黄色画素とを有するカラーフィルタ。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか1項に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られるマゼンタ色画素と、シアン色画素と、黄色画素とを有し、
前記シアン色画素は、450~550nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、615~645nmの波長範囲の光の透過率の最小値が20%以下であり、透過率が50%を示す波長が395~415nmの波長範囲と、560~580nmの波長範囲のそれぞれに存在し、
前記黄色画素は、500~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、415~445nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下であり、透過率が50%を示す波長が470~490nmの波長範囲に存在する、
カラーフィルタ。
【請求項18】
請求項14に記載の膜を有する固体撮像素子。
【請求項19】
請求項14に記載の膜を有する画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マゼンタ色感光性樹脂組成物に関する。また、本発明は、マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されている。
【0003】
カラーフィルタの各色の着色画素は色材を含む感光性樹脂組成物を用いて製造されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年ではマゼンタ色の画素を有するカラーフィルタの開発が検討されている。
本発明者の検討によれば、従来から知られているマゼンタ色感光性樹脂組成物では、現像残渣が生じやすかったり、画素の表面粗さが大きかったり、画素の解像性が不十分であり、これらの特性を高い水準で並立させることは困難であった。
【0006】
よって、本発明の目的は、現像残渣が少なく、解像性に優れ、表面粗さの小さいマゼンタ色の画素を形成できるマゼンタ色感光性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者の検討によれば、色材と、樹脂と、重合性化合物と、溶剤と、を含むマゼンタ色感光性樹脂組成物において、色材としてマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料とを併用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 色材と、樹脂と、重合性化合物と、溶剤と、を含むマゼンタ色感光性樹脂組成物であって、
上記色材は、マゼンタ色顔料と、マゼンタ色染料とを含み、
上記色材中における上記マゼンタ色染料の含有量が20質量%以上であり、
上記マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における上記マゼンタ色顔料と上記マゼンタ色染料との合計量が30質量%以上である、マゼンタ色感光性樹脂組成物。
<2> 上記マゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、400~450nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下で、かつ、600~700nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下である、<1>に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<3> 上記マゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、吸光度が0.3となる光の波長が450~520nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在する、<1>または<2>に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<4> 上記マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、上記膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が30%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上であり、
上記膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在する、<1>~<3>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<5> 上記マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、上記膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が80%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上であり、
上記膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が475~495nmの波長範囲と、570~590nmの波長範囲のそれぞれに存在する、<1>~<3>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<6> 上記マゼンタ色染料は、重合性基を有する化合物である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<7> 上記マゼンタ色染料は、染料多量体である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<8> 上記マゼンタ色染料は、キサンテン化合物、ピロメテン化合物およびトリアリールメタン化合物から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<7>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<9> 上記マゼンタ色顔料は、カラーインデックスピグメントレッド122、カラーインデックスピグメントレッド202、カラーインデックスピグメントレッド209、および、カラーインデックスピグメントレッド269から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<10> 上記マゼンタ色顔料は、カラーインデックスピグメントレッド122を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<11> 上記マゼンタ色染料の100質量部に対して、上記マゼンタ色顔料を5~400質量部含む、<1>~<10>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<12> 固体撮像素子用である、<1>~<11>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<13> フォトリソグラフィ用である、<1>~<12>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物。
<14> <1>~<13>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られる膜。
<15> <14>に記載の膜を有するカラーフィルタ。
<16> <1>~<13>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られるマゼンタ色画素と、カラーインデックスピグメントグリーン7を含むシアン色画素と、カラーインデックスピグメントイエロー150を含む黄色画素とを有するカラーフィルタ。
<17> <1>~<13>のいずれか1つに記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られるマゼンタ色画素と、シアン色画素と、黄色画素とを有し、
上記シアン色画素は、450~550nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、615~645nmの波長範囲の光の透過率の最小値が20%以下であり、透過率が50%を示す波長が395~415nmの波長範囲と、560~580nmの波長範囲のそれぞれに存在し、
上記黄色画素は、500~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、415~445nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下であり、透過率が50%を示す波長が470~490nmの波長範囲に存在する、
カラーフィルタ。
<18> <14>に記載の膜を有する固体撮像素子。
<19> <14>に記載の膜を有する画像表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、現像残渣が少なく、解像性に優れ、表面粗さの小さいマゼンタ色の画素を形成できるマゼンタ色感光性樹脂組成物を提供することができる。また、マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いた膜、カラーフィルタ、固体撮像素子及び画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、構造式中のMeはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Buはブチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0010】
<マゼンタ色感光性樹脂組成物>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、色材と、樹脂と、重合性化合物と、溶剤と、を含むマゼンタ色感光性樹脂組成物であって、
色材は、マゼンタ色顔料と、マゼンタ色染料とを含み、
色材中におけるマゼンタ色染料の含有量が20質量%以上であり、
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料との合計量が30質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物によれば、現像残渣が少なく、解像性に優れ、表面粗さの小さいマゼンタ色の画素を形成できる。
【0012】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、400~450nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下で、かつ、600~700nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下であることが好ましい。400~450nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値は0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることが更に好ましい。600~700nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値は0.3以下であることがより好ましく、0.2以下であることが更に好ましい。
【0013】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、吸光度が0.3となる光の波長が450~520nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在することが好ましい。吸光度が0.3となる短波長側の波長(以下、λ1ともいう)は、シアン、イエロー等の他色の着色画素と十分に色分離し、イメージセンサの色再現性を高めることができるという理由から460~510nmの波長範囲に存在することがより好ましく、470~500nmの波長範囲に存在することが更に好ましい。また、吸光度が0.3となる長波長側の波長(以下、λ2ともいう)も、上記と同様の理由から560~595nmの波長範囲に存在することがより好ましく、570~590nmの波長範囲に存在することが更に好ましい。また、λ2とλ1との差(λ2-λ1)は、他色の着色画素との色分離の性能を十分に確保しつつ、フォトダイオードに入射する光量を十分に確保することができるという理由から60~120nmであることが好ましく、70~110nmであることがより好ましい。
【0014】
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(Ab1)により定義される。
Aλ=-log(Tλ/100) ・・・(Ab1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率(%)である。
【0015】
本発明において、吸光度の値は、溶液の状態で測定した値であってもよく、マゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて製膜した膜の値であってもよい。膜の状態で吸光度を測定する場合は、ガラス基板上にスピンコート等の方法によってマゼンタ色感光性樹脂組成物を塗布し、ホットプレート等を用いて100℃、2分間乾燥し、次いで、光照度20mW/cm2、露光量1J/cm2の条件でi線露光し、次いで、100℃のホットプレート上で20分間加熱し、常温まで放冷して得られた膜(膜)を用いて測定することが好ましい。吸光度は従来公知の分光光度計を用いて測定できる。
【0016】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が30%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上であり、膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在することが好ましい。この態様において、400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値は、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値は、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値は、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す短波側の波長は、460~495nmの波長範囲に存在することがより好ましく、470~495nmの範囲に存在することが更に好ましく、475~495nmの範囲に存在することが特に好ましい。膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す長波側の波長は、560~595nmの波長範囲に存在することがより好ましく、570~590nmの範囲に存在することが更に好ましい。
【0017】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、固体撮像素子用として好ましく用いることができる。また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、カラーフィルタ用として好ましく用いることができる。具体的には、カラーフィルタのマゼンタ色の画素形成用として好ましく用いることができる。また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタのマゼンタ色画素形成用として好ましく用いることができる。また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、フォトリソグラフィ用のマゼンタ色感光性樹脂組成物としても用いることができる。
【0018】
以下、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物に用いられる各成分について説明する。
【0019】
<<色材>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は色材を含有する。色材としては、マゼンタ色顔料とマゼンタ色染料とが用いられる。なお、本明細書において、マゼンタ色とは緑色の補色の色相のことである。また、補色とは、色相環(color circle)で正反対に位置する関係の色の組合せのことである。また、マゼンタ色顔料とはマゼンタ色の色相を呈する顔料のことであり、マゼンタ色染料とはマゼンタ色の色相を呈する染料のことである。また、本明細書において、マゼンタ色顔料とは、溶剤に対して溶解しにくいマゼンタ色の色素化合物を指す。マゼンタ色顔料は、23℃の水100gおよび23℃のシクロヘキサノン100gに対する溶解度がいずれも1g未満であることが好ましい。また、本明細書において、マゼンタ色染料とは、水または有機溶剤に溶解するマゼンタ色の色素化合物を指す。マゼンタ色染料は、23℃のシクロヘキサノン100gに対する溶解度が1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。
【0020】
(マゼンタ色顔料)
本発明で用いられるマゼンタ色顔料としては、緑の波長の光の吸光度が高く、かつ、赤色および青色の波長の光の吸光度の低い顔料が挙げられる。
【0021】
マゼンタ色顔料の極大吸収波長は、500~600nmの波長範囲に存在することが好ましく、500~590nmの波長範囲に存在することがより好ましく、500~585nmの範囲に存在することが更に好ましく、500~580nmの範囲に存在することが特に好ましい。
【0022】
また、マゼンタ色顔料は、波長500~600nmの範囲における極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる波長が極大吸収波長よりも短波長側では450nm以上に存在することが好ましく、460nm以上に存在することがより好ましく、470nm以上に存在することが更に好ましい。また、本発明で用いられるマゼンタ色顔料は、波長500~600nmの範囲における極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる波長が極大吸収波長よりも長波長側では650nm以下に存在することが好ましく、640nm以下に存在することがより好ましく、630nm以下に存在することが更に好ましく、620nm以下に存在することが特に更に好ましい。また、本発明で用いられるマゼンタ色顔料は、極大吸収波長と、波長λ1(極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる極大吸収波長よりも短波長の波長)との差が、110nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、90nm以下であることが更に好ましい。また、波長λ2(極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる極大吸収波長よりも長波長の波長)と極大吸収波長との差が、110nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、90nm以下であることが更に好ましい。また、本発明で用いられるマゼンタ色顔料は、波長λ2と波長λ1との差(λ2-λ1)が、130nm以下であることが好ましく、120nm以下であることがより好ましく、115nm以下であることが更に好ましく、110nm以下であることが特に好ましい。
【0023】
マゼンタ色顔料は、キナクリドン骨格、ジオキサジン骨格およびナフトールアゾ骨格から選ばれる色素骨格を有する化合物であることが好ましく、キナクリドン骨格およびジオキサジン骨格から選ばれる色素骨格を有する化合物であることがより好ましく、分光性能と安定性という理由から色素骨格としてキナクリドン骨格を有する化合物であることが更に好ましい。
【0024】
マゼンタ色顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.)ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23が挙げられ、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209およびC.I.ピグメントレッド269が好ましく、分光波形の観点からC.I.ピグメントレッド122がより好ましい。
【0025】
マゼンタ色顔料の平均一次粒子径は、50nm以下であることが好ましく、47nm以下であることがより好ましく、45nm以下であることが更に好ましい。下限は特に限定はないが、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。マゼンタ色顔料の平均一次粒子径が50nm以下であれば、直線性にすぐれた微細な画素(パターン)を形成することができる。なお、本明細書において、顔料の平均一次粒子径は、顔料を透過型電子顕微鏡(例えば、日本電子製、JEM-2100F型、電界放射型透過電子顕微鏡に準ずる装置)を用いて観察し、得られた写真から求めた数平均粒子径のことをいう。具体的には、上記装置により顔料の投影面積を求め、そこから各顔料の円相当径を求めて平均一次粒子径を算出する。より具体的には、100個の顔料についての円相当径を測定した後、最大側10個と最小側10個とを除いた80個の顔料についての円相当径を算術平均して顔料の平均一次粒子径を算出する。
【0026】
(マゼンタ色染料)
本発明で用いられるマゼンタ色染料としては、緑の波長の光の吸光度が高く、かつ、赤色および青色の波長の光の吸光度の低い染料が挙げられる。マゼンタ色染料は、波長500~550nmの範囲の光の吸光度が高く、かつ、波長400~480nmの範囲の光の吸光度と、波長600~700nmの範囲の光の吸光度が低い染料であることが好ましい。
【0027】
マゼンタ色染料は、下記式(A1)で表されるΔλが150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0028】
Δλ=λ2-λ1 (A1)
式中、λ1はマゼンタ色染料の極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる極大吸収波長よりも短波長側の波長であり、λ2はマゼンタ色染料の極大吸収波長の吸光度を1とした場合に、吸光度が0.5となる極大吸収波長よりも長波長側の波長である。
【0029】
マゼンタ色染料の極大吸収波長は、450~600nmの波長範囲に存在することが好ましく、475~575nmの波長範囲に存在することがより好ましく、500~550nmの波長範囲に存在することが更に好ましい。
【0030】
マゼンタ色染料は、400~480nmの波長範囲の光の吸光度の最大値A1と、500~550nmの波長範囲の光の吸光度の最小値A2との比(A1/A2)が0.2~0.8であることが好ましく、0.3~0.7であることがより好ましく、0.4~0.6であることが更に好ましい。また、マゼンタ色染料は、600~700nmの波長範囲の光の吸光度の最大値A3と、500~550nmの波長範囲の光の吸光度の最小値A2との比(A3/A2)が0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましい。また、マゼンタ色染料は、600~700nmの波長範囲の光の吸光度の最大値A3と400~480nmの波長範囲の光の吸光度の最大値A1との比(A3/A1)が0.1以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることが更に好ましい。
【0031】
マゼンタ色染料は、波長440nmの光の吸光度A440と、波長525nmの光の吸光度A525との比(A440/A525)が0.001~0.15であることが好ましく、0.005~0.10であることがより好ましく、0.01~0.05であることが更に好ましい。また、マゼンタ色染料は、波長650nmの光の吸光度A650と、波長525nmの光の吸光度A525との比(A650/A525)が0.2以下であることが好ましく、0.1以下であることがより好ましく、0.05以下であることが更に好ましい。また、マゼンタ色染料は、波長650nmの光の吸光度A650と波長440nmの光の吸光度A440との比(A650/A440)が0.1以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることが更に好ましい。
【0032】
マゼンタ色染料としては、キサンテン化合物、ピロメテン化合物、トリアリールメタン化合物、キナクリドン化合物、シアニン化合物、アントラピリドン化合物、およびアントラキノン化合物などが挙げられ、マゼンタ色としての分光の観点からキサンテン化合物、ピロメテン化合物およびトリアリールメタン化合物が好ましく、キサンテン化合物がより好ましい。
【0033】
トリアリールメタン化合物としては、下記式(TP)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【0035】
式(TP)中、Rtp1~Rtp4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Rtp5は、水素原子、アルキル基、アリール基またはNRtp9Rtp10(Rtp9およびRtp10は水素原子、アルキル基またはアリール基を表す)を表す。Rtp6、Rtp7およびRtp8は、置換基を表す。a、bおよびcは、0~4の整数を表す。a、bおよびcが2以上の場合、Rtp6同士、Rtp7同士およびRtp8同士は、それぞれ連結して環を形成してもよい。Xはアニオンを表す。Xが存在しない場合は、Rtp1~Rtp8の少なくとも1つがアニオンを含む。
【0036】
Rtp1~Rtp4は水素原子、炭素数1~5の直鎖または分岐のアルキル基およびフェニル基が好ましい。Rtp5は、水素原子またはNRtp9Rtp10が好ましく、NRtp9Rtp10が特に好ましい。Rtp9およびRtp10は、水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐のアルキル基またはフェニル基が好ましい。Rtp6、Rtp7およびRtp8が表す置換基は、後述する置換基Tで挙げた基や重合性基が挙げられる。
【0037】
式(TP)において、Xは対アニオンを表す。Xが存在しない場合は、Rtp1~Rtp8の少なくとも1つがアニオンを含む。対アニオンとしては、特に制限は無い。有機アニオンであってもよく、無機アニオンであってもよい。対アニオンは有機アニオンが好ましい。対アニオンとしては、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、シアン化物イオン、過塩素酸アニオン、非求核性のアニオンなどが挙げられる。耐熱性の観点で非求核性のアニオンであることが好ましい。対アニオンの例として、特開2007-310315号公報の段落番号0075に記載の公知の非求核性アニオンが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ここで、非求核性とは、加熱により色素を求核攻撃しない性質を意味する。
【0038】
対アニオンは、イミドアニオン(例えばビス(スルホニル)イミドアニオン)、トリス(スルホニル)メチルアニオン、ホウ素原子を有するアニオンが好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオンおよびトリス(スルホニル)メチルアニオンがより好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオンがより好ましい。ホウ素原子を有するアニオンとしては、テトラフルオロボレートアニオン、テトラフェニルボレートアニオン、テトラパーフルオロフェニルボレートアニオンなどが挙げられる。対アニオンの分子量は、100~1000が好ましく、200~500がより好ましい。
【0039】
式(TP)において、a、bまたはcは、それぞれ独立に0~4の整数を表す。特にaおよびcは、それぞれ、0または1が好ましく、0がより好ましい。bは0~2の整数が好ましく、0または2がより好ましい。
【0040】
式(TP)において、Rtp
1~Rtp
7の少なくとも1つがアニオンを含む場合、アニオンとしては、-SO
3
-、-COO
-、-PO
4
-、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンおよびテトラアリールボレートアニオンが好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンおよびテトラアリールボレートアニオンがより好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオンおよびトリス(スルホニル)メチドアニオンが更に好ましい。具体的には、Rtp
1~Rtp
7の少なくとも1つが、式(P)で置換された構造が挙げられる。
【化2】
式(P)中、Lは単結合または2価の連結基を表し、X
1は、アニオンを表す。
【0041】
式(P)中、Lは単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-NR10-、-O-、-SO2-、フッ素原子を含むアルキレン基、フッ素原子を含むアリーレン基またはこれらの組み合わせからなる基を表すことが好ましい。特に、-NR10-と-SO2とフッ素原子を含むアルキレン基との組み合わせからなる基、-O-とフッ素原子を含むアリーレン基との組み合わせからなる基、または、-NR10-と-SO2とフッ素原子を含むアルキレン基との組み合わせからなる基が好ましい。
-NR10-において、R10は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基を表し、水素原子が好ましい。
フッ素原子を含むアルキレン基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。これらのアルキレン基は、パーフルオロアルキレン基がより好ましい。フッ素置換アルキレン基の具体例としては、ジフルオロメチレン基、テトラフルオロエチレン基、ヘキサフルオロプロピレン基などが挙げられる。
フッ素原子を含むアリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。フッ素原子を含むアリーレン基の具体例としては、テトラフルオロフェニレン基、ヘキサフルオロ-1-ナフチレン基、ヘキサフルオロ-2-ナフチレン基などが挙げられる。
【0042】
式(P)中、X1は、アニオンを表し、-SO3
-、-COO-、-PO4H-、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンおよびテトラアリールボレートアニオンから選ばれる1種が好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンおよびテトラアリールボレートアニオンから選ばれる1種がより好ましく、ビス(スルホニル)イミドアニオンまたはトリス(スルホニル)メチドアニオンが更に好ましい。
【0043】
Rtp
1~Rtp
8の少なくとも1つがアニオンを含む場合、Rtp
1~Rtp
8の少なくとも1つが、式(P-1)で置換された構造であることも好ましい。
【化3】
式(P-1)中、L
1は、単結合または2価の連結基を表し、単結合であることが好ましい。L
1が表す2価の連結基としては、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、-O-、-S-、またはこれらの組み合わせからなる基等が挙げられる。L
2は、-SO
2-または-CO-を表す。Gは、炭素原子または窒素原子を表す。n1は、Gが炭素原子の場合2を表し、Gが窒素原子の場合1を表す。R
6は、フッ素原子を含むアルキル基またはフッ素原子を含むアリール基を表す。n1が2の場合、2つのR
6はそれぞれ同一でも異なっていても良い。R
6が表すフッ素原子を含むアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。R
6が表すフッ素原子を含むアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~14がより好ましく、6~10がさらに好ましい。
【0044】
置換基Tとしては、次の基が挙げられる。ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1~30のアルキル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2~30のアルケニル基)、アルキニル基(好ましくは炭素数2~30のアルキニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6~30のアリール基)、アミノ基(好ましくは炭素数0~30のアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~30のアルコキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6~30のアリールオキシ基)、ヘテロアリールオキシ基、アシル基(好ましくは炭素数2~30のアシル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニル基)、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2~30のアシルオキシ基)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアシルアミノ基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2~30のアルコキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7~30のアリールオキシカルボニルアミノ基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0~30のスルファモイル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1~30のカルバモイル基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1~30のアルキルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6~30のアリールチオ基)、ヘテロアリールチオ基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1~30)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6~30)、ヘテロアリールスルフィニル基(好ましくは炭素数1~30)、ウレイド基(好ましくは炭素数1~30)、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホ基、スルホ基の塩、リン酸基、リン酸基の塩、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基、メルカプト基、シアノ基、アルキルスルフィノ基、アリールスルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1~30)。カルボキシル基の塩、スルホ基の塩、およびリン酸基の塩において、塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。これらの基は、さらに置換可能な基である場合、さらに置換基を有してもよい。置換基としては、上述した置換基Tで説明した基が挙げられる。
【0045】
トリアリールメタン化合物の具体例としては、特開2016-102191号公報に記載された化合物および後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。
【0046】
キサンテン化合物としては、下記式(XT)で表される化合物が挙げられる。
【0047】
【0048】
式(XT)中、Rxt1、Rxt2、Rxt3およびRxt4は、各々独立に、水素原子または置換基を表し、Rxt5は、置換基を表し、mは0~5の整数を表す。Xは対アニオンを表す。Xが存在しない場合は、Rxt1~Rxt5の少なくとも1つがアニオンを含む。
【0049】
式(XT)におけるRxt
1~Rxt
5が取りうる置換基は、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、下記式(xt-1)で表される基が挙げられる。Rxt
1およびRxt
3は、各々独立に、アリール基またはアルキル基であることが好ましい。また、Rxt
2およびRxt
4は、各々独立に、水素原子またはアルキル基であることが好ましい。また、上記のアルキル基及びアリール基は更に置換基を有していてもよい。さらなる置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、下記式(xt-1)で表される基が挙げられる。
【化5】
【0050】
式(xt-1)中、Rxt100は炭素数1~10のアルカンジイル基を表し、アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-NRs10-、-OCO-、-COO-、-OCONH-、-CONH-または-NHCO-で置換されていてもよく、Rs10は水素原子または炭素数1~20のアルキル基を表し、
Rs1~Rs3はそれぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基または炭素数1~4のアルコキシ基を表し、
*は式(XT)の窒素原子との結合手を表す。
【0051】
式(xt-1)で表される基の詳細については、特開2016-027075号公報の段落番号0010~0065の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0052】
式(XT)中のRxt1とRxt2、Rxt3とRxt4、およびmが2以上の場合のRxt5同士は、各々独立に、互いに結合して5員、6員若しくは7員の飽和環、または5員、6員若しくは7員の不飽和環を形成していてもよい。形成する環としては、例えば、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピロリジン環、ピペリジン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環が挙げられ、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環が挙げられる。形成される環は、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基、上述した式(xt-1)で表される基などを更に有していてもよい。
【0053】
式(XT)において、Xは、対アニオンを表す。対アニオンとしては、上述した式(TP)で説明した対アニオンが挙げられる。Xが存在しない場合は、Rxt1~Rxt5の少なくとも1つがアニオンを含む。また、式(XT)において、Rxt1~Rxt5の少なくとも1つがアニオンを含む場合、アニオンとしては、上述した式(TP)で説明したアニオンが挙げられる。
【0054】
キサンテン化合物は、式(XT1)で表される化合物または式(XT2)で表される化合物であることも好ましい。
【0055】
【0056】
式(XT1)中、Rxt11およびRxt12は、各々独立に、水素原子またはアルキル基を表し、Rxt21~Rxt24は各々独立にアルキル基を表し、Rxt25~Rxt27は各々独立に水素原子または置換基を表す。
式(XT2)中、Rxt31~Rxt34は、各々独立に、アルキル基を表し、Rxt35は水素原子または置換基を表す。
【0057】
式(XT1)のRxt11、Rxt12、Rxt21、Rxt22、Rxt23およびRxt24が表すアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。上記のアルキル基は置換基を有していてもよい。更なる置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、上記式(xt-1)で表される基が挙げられ、カルボキシル基であることが好ましい。式(XT1)のRxt25~Rxt27が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、上記式(xt-1)で表される基が挙げられる。
【0058】
式(XT2)のRxt31~Rxt34が表すアルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。上記のアルキル基は置換基を有していてもよい。更なる置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、上記式(xt-1)で表される基が挙げられ、カルボキシル基であることが好ましい。式(XT2)のRxt35が表す置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基、重合性基および、上記式(xt-1)で表される基が挙げられる。
【0059】
キサンテン化合物の具体例としては、特開2016-027075号公報に記載された化合物、特開2016-102191号公報に記載された化合物、国際公開第2020/195962号の段落番号0091~に0109に記載された化合物および後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。
【0060】
ピロメテン化合物としては、式(PM)で表される化合物、および、式(PM)で表される化合物と金属または金属化合物とから形成される金属錯体化合物などが挙げられる。
【化7】
式中、Rpm
1~Rpm
6は、各々独立に、水素原子又は置換基を表し、Rpm
7は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。アルキル基、アリール基およびヘテロ環基は置換基を有していてもよい。Rpm
1~Rpm
6が表す置換基、ならびに、アルキル基、アリール基およびヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、上述した置換基Tで挙げた基や、重合性基が挙げられる。
【0061】
式(PM)で表される化合物と金属錯体化合物を形成する金属又は金属化合物について説明する。金属又は金属化合物としては、式(PM)で表される化合物と錯体を形成可能な金属原子又は金属化合物であればいずれであってもよく、2価の金属原子、2価の金属酸化物、2価の金属水酸化物、および2価の金属塩化物が挙げられる。例えば、Zn、Mg、Si、Sn、Rh、Pt、Pd、Mo、Mn、Pb、Cu、Ni、Co、Fe、B、AlCl、InCl、FeCl、TiCl2、SnCl、SiCl2、GeCl2、TiO、VO、Si(OH)2等が挙げられる。これらの中でも、錯体の安定性、分光特性、耐熱、耐光性、及び製造適性等の観点から、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Mo、Mn、Cu、Ni、Co、TiO、B、又はVOが好ましく、Fe、Zn、Mg、Si、Pt、Pd、Cu、Ni、Co、B、又はVOが更に好ましく、Fe、Zn、Cu、Co、B、又はVO(V=O)がより一層好ましく、Znが特に好ましい。
【0062】
ピロメテン化合物の具体例としては、特開2014-132348号公報に記載された化合物、および後述する実施例に記載の化合物が挙げられる。
【0063】
マゼンタ色染料としては、重合性基を有する化合物を用いることも好ましい。この態様によれば、膜を加熱した際における色移りなどを効果的に抑制できる。重合性基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合含有基などが挙げられる。
【0064】
マゼンタ色染料は、染料多量体であることも好ましい。この態様によれば、膜を加熱した際における色移りなどを効果的に抑制できる。染料多量体とは、一分子中に、色素構造を2以上有する化合物のことである。染料多量体は色素構造を3以上有する化合物であることが好ましい。色素構造の数の上限は、特に限定はないが、100以下とすることもできる。染料多量体の重量平均分子量(Mw)は、2000~50000が好ましい。下限は、3000以上がより好ましく、6000以上がさらに好ましい。上限は、30000以下がより好ましく、20000以下がさらに好ましい。
【0065】
染料多量体としては、式(A)で表される繰り返し単位を有する染料多量体(以下、染料多量体(A)ともいう)、式(B)で表される繰り返し単位を有する染料多量体(以下、染料多量体(B)ともいう)、式(C)で表される繰り返し単位を有する染料多量体(以下、染料多量体(C)ともいう)、式(D)で表される染料多量体(以下、染料多量体(D)ともいう)が挙げられ、染料多量体(A)または染料多量体(D)であることが好ましい。
【0066】
(染料多量体(A))
染料多量体(A)は、式(A)で表される繰り返し単位を含む。式(A)で表される繰り返し単位の割合は、染料多量体(A)を構成する全繰り返し単位の10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%以下とすることもでき、95質量%以下とすることもできる。
【化8】
式(A)中、X
1は繰り返し単位の主鎖を表し、L
1は単結合または2価の連結基を表し、D
1は色素構造を表す。
【0067】
式(A)中、X1は繰り返し単位の主鎖を表す。X1は、重合反応で形成される連結基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、ビニル基、エーテル基を有する化合物由来の主鎖が好ましい。また、主鎖が環状のアルキレン基を有する態様も好ましい。X1としては、公知の重合可能なモノマーから形成される連結基であれば特に制限ない。下記(XX-1)~(XX-25)で表される連結基が好ましく、(XX-1)、(XX-2)、(XX-10)~(XX-17)、(XX-18)、(XX-19)、(XX-24)および(XX-25)から選択されることがより好ましく、(XX-1)、(XX-2)、(XX-10)~(XX-17)、(XX-24)および(XX-25)から選択されることがさらに好ましい。
【0068】
以下の式中、*は、式(A)のL1との結合部位である。Meはメチル基を表す。また、(XX-18)および(XX-19)中のRは、水素原子、炭素数1~5のアルキル基またはフェニル基を表す。
【0069】
【0070】
L1は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-およびこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。
【0071】
アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましい。上限は、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。下限は、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
アリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。アリーレン基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
ヘテロ環連結基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環連結基が有するヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子が好ましい。ヘテロ環連結基が有するヘテロ原子の数は、1~3個が好ましい。ヘテロ環連結基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。
【0072】
D1は、色素構造を表す。D1が表す色素構造としては、キサンテン色素構造、ピロメテン色素構造、トリアリールメタン色素構造、キナクリドン色素構造、シアニン色素構造およびアントラキノン色素構造などが挙げられ、キサンテン色素構造、ピロメテン色素構造およびトリアリールメタン色素構造であることが好ましく、キサンテン色素構造であることがより好ましい。キサンテン色素構造としては、上述した式(XT)で表される化合物から水素原子を1個以上取り除いた残基であることが好ましい。また、ピロメテン色素構造としては、上述した式(PM)で表される化合物から水素原子を1個以上取り除いた残基であることが好ましい。また、トリアリールメタン色素構造としては、上述した式(TP)で表される化合物から水素原子を1個以上取り除いた残基であることが好ましい。
【0073】
染料多量体(A)は、式(A)で表される繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の繰り返し単位は、重合性基を有する繰り返し単位、酸基を有する繰り返し単位等が挙げられる。重合性基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などのエチレン性不飽和結合含有基などが挙げられる。酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
【0074】
重合性基を有する繰り返し単位の割合は、染料多量体(A)を構成する全繰り返し単位の50質量%以下であることが好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。上限は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0075】
酸基を有する繰り返し単位の割合は、染料多量体(A)を構成する全繰り返し単位の50質量%以下であることが好ましい。下限は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましい。上限は、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0076】
(染料多量体(B))
染料多量体(B)は、式(B)で表される繰り返し単位を含む。式(B)で表される繰り返し単位の割合は、染料多量体(B)を構成する全繰り返し単位の10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%以下とすることもでき、95質量%以下とすることもできる。
【化10】
式(B)中、X
2は繰り返し単位の主鎖を表し、L
2は単結合または2価の連結基を表し、D
2はY
2とイオン結合もしくは配位結合可能な基を有する色素構造を表し、Y
2はD
2とイオン結合または配位結合可能な基を表す;
【0077】
X2は、式(A)のX1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
L2は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-およびこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。2価の連結基の詳細については、式(A)のL1と同じである。L2は、単結合、または、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-およびこれらを2以上組み合わせた2価の連結基が好ましい。
【0078】
Y2は、D2とイオン結合もしくは配位結合可能な基であればよい。たとえば、アニオン性基、カチオン性基などが挙げられる。アニオン性基としては、-SO3
-、-COO-、-PO4
2-、-PO4H-、ビス(スルホニル)イミドアニオン、トリス(スルホニル)メチドアニオンおよびテトラアリールボレートアニオンなどが挙げられる。カチオン性基としては、置換又は無置換のオニウムカチオン(例えば、アンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリウム及びホスホニウム等)が挙げられ、特にアンモニウムカチオンが好ましい。アンモニウムカチオンとしては、-N(R)3
+が挙げられる。Rは、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基を表し、Rの少なくとも1つは、アルキル基を表す。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖が好ましい。
【0079】
D2は、Y2とイオン結合もしくは配位結合可能な基を有する色素構造を表す。色素構造の種類としては、特に限定は無くD1で説明した種類の色素構造が挙げられる。D2が有するY2とイオン結合もしくは配位結合可能な基としては、Y2で説明した、アニオン性基およびカチオン性基が挙げられる。また、D2の電荷のバランスがカチオンおよびアニオンのいずれかに偏っている場合は、D2のカチオン部またはアニオン部において、Y2と結合することもできる。
【0080】
染料多量体(B)は、式(B)で表される繰り返し単位の他に、染料多量体(A)で説明した他の繰り返し単位などを含んでいてもよい。また、上述した式(A)で表される繰り返し単位、および、後述する式(C)で表される繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【0081】
(染料多量体(C))
染料多量体(C)は、式(C)で表される繰り返し単位を含む。式(C)で表される繰り返し単位の割合は、染料多量体(C)を構成する全繰り返し単位の10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましく、50質量%以上が特に好ましい。上限は、100質量%以下とすることもでき、95質量%以下とすることもできる。
【化11】
式(C)中、L
3は単結合または2価の連結基を表し、D
3は色素構造を表し、mは0または1を表す。
【0082】
式(C)中、L3は単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、炭素数1~30のアルキレン基、炭素数6~30のアリーレン基、ヘテロ環連結基、-CH=CH-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-およびこれらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。
【0083】
アルキル基およびアルキレン基の炭素数は、1~30が好ましい。上限は、25以下がより好ましく、20以下が更に好ましい。下限は、2以上がより好ましく、3以上が更に好ましい。アルキル基およびアルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
アリール基およびアリーレン基の炭素数は、6~20が好ましく、6~12がより好ましい。
ヘテロ環連結基およびヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環連結基およびヘテロ環基が有するヘテロ原子は、酸素原子、窒素原子および硫黄原子が好ましい。ヘテロ環連結基およびヘテロ環基が有するヘテロ原子の数は、1~3個が好ましい。
アルキレン基、アリーレン基、ヘテロ環連結基、アルキル基、アリール基、およびヘテロ環基は、無置換であってもよく、置換基を有してもよい。置換基としては、重合性基、酸基が挙げられる。また、2~20個の無置換のアルキレンオキシ鎖の繰り返しからなる基、ラクトン、酸無水物、アミド、シアノ基等の現像促進基、長鎖および環状アルキル基、アラルキル基、アリール基、ポリアルキレンオキシド基、ヒドロキシ基、マレイミド基、アミノ基等の親疎水性調整基等を置換基として有してもよい。
【0084】
L3は、アルキレン基、アリーレン基、-NH-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-およびこれらを2以上組み合わせた連結基が好ましい。
D3は色素構造を表す。色素構造の種類としては、特に限定は無くD1で説明した種類の色素構造が挙げられる。
mは0または1を表し、1が好ましい。
【0085】
染料多量体(C)は、一般式(C)で表される繰り返し単位の他に、染料多量体(A)で説明した他の繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0086】
(染料多量体(D))
染料多量体(D)は、式(D)で表される化合物である。
【化12】
式(D)中、L
4は(n+k)価の連結基を表し、L
41およびL
42は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表し、D
4は色素構造を表し、P
4は置換基を表す;nは2~15を表し、kは0~13を表し、n+kは2~15である。n個のD
4は互いに異なっていても良く、同一であってもよい。kが2以上の場合、複数のP
4は互いに異なっていても良く、同一であってもよい。
【0087】
nは2~14が好ましく、2~8がより好ましく、2~7が特に好ましく、2~6が一層好ましい。kは1~13が好ましく、1~10がより好ましく、1~8がさらにより好ましく、1~7が特に好ましく、1~6が一層好ましい。
【0088】
L41、L42は、それぞれ独立に、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、1から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれ、無置換でも置換基を更に有していてもよい。2価の連結基は、具体的な例として、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基を挙げることができる。以下の式中の*は結合手を表す。
【0089】
【0090】
L4が表す(n+k)価の連結基としては、1から100個までの炭素原子、0個から10個までの窒素原子、0個から50個までの酸素原子、1個から200個までの水素原子、および0個から20個までの硫黄原子から成り立つ基が含まれる。(n+k)価の連結基としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)を挙げることができる。以下の式中の*は結合手を表す。
【0091】
【0092】
(n+k)価の連結基の具体例としては、特開2008-222950号公報の段落番号0071~0072に記載された連結基、特開2013-029760号公報の段落番号0176に記載された連結基が挙げられる。
【0093】
一般式(D)中、D4は色素構造を表す。色素構造の種類としては、特に限定は無くD1で説明した種類の色素構造が挙げられる。
【0094】
式(D)中、P4が表す置換基としては、酸基、重合性基等が挙げられる。また、P4が表す置換基は、繰り返し単位を有する1価のポリマー鎖であってもよい。繰り返し単位を有する1価のポリマー鎖は、ビニル化合物由来の繰り返し単位を有する1価のポリマー鎖が好ましい。kが2以上の場合、k個のP4は、同一であっても、異なっていてもよい。
【0095】
マゼンタ染料の具体例としては、後述する実施例に記載の化合物;
C.I.Acid Red 1,6,8,9,13,14,18,26,27,32,35,37,42,51,52,57,75,77,80,82,85,87,88,89,92,94,97,106,111,114,115,117,118,119,129,130,131,133,134,138,143,145,154,155,158,168,180,183,184,186,194,198,209,211,215,219,249,252,254,262,265,274,282,289,303,317,320,321,322、C.I.Direct Red 1,2,4,9,11,13,17,20,23,24,28,31,33,37,39,44,46,62,63,75,79,80,81,83,84,89,95,99,113,197,201,218,220,224,225,226,227,228,229,230,231;
C. I.Reactive Red 1,2,3,4,5,6,7,8,11,12,13,15,16,17,19,20,21,22,23,24,28,29,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,45,46,49,50,58,59,63,64;
C.I. Food Red 7,9,14等が挙げられる。
【0096】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、マゼンタ色以外の色相の色材を含んでいてもよい。マゼンタ色以外の色相の色材としては、緑色色材、赤色色材、紫色色材、青色色材、オレンジ色色材、黒色色材ななどが挙げられる。マゼンタ色以外の色相の色材は顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0097】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における色材の含有量は、30質量%以上であり、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。上限は、現像残渣抑制、解像性および表面荒れの抑制の観点から80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0098】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料との合計の含有量は、分光特性の観点から30質量%以上であり、35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましい。上限は、現像残渣抑制、解像性および表面荒れの抑制の観点から80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることが更に好ましい。
【0099】
また、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる色材中におけるマゼンタ色染料の含有量は20質量%以上である。色材中におけるマゼンタ色染料の含有量は、分光特性、解像性および表面荒れの抑制の観点から30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、45質量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることがより一層好ましく、55質量%以上であることが特に好ましい。また、色材中におけるマゼンタ色染料の含有量は、現像残渣抑制の観点から97質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0100】
マゼンタ色感光性樹脂組成物中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料との割合は、分光特性、現像残渣抑制、解像性および表面荒れの抑制の観点からマゼンタ色染料の100質量部に対してマゼンタ色顔料が5~400質量部であることが好ましい。下限は、現像残渣抑制の観点から10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることが更に好ましく、30質量部以上であることがより一層好ましく、50質量部以上であることが特に好ましい。上限は、分光特性、解像性および表面荒れの抑制の観点から300質量部以下であることが好ましく、250質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることが更に好ましく、150質量部以下であることがより一層好ましく、100質量部以下であることが特に好ましい。
【0101】
マゼンタ色感光性樹脂組成物は、分光特性の観点からマゼンタ色顔料以外の顔料(マゼンタ色以外の色相の顔料)を実質的に含まないことも好ましい。マゼンタ色感光性樹脂組成物がマゼンタ色顔料以外の顔料を実質的に含まない場合とは、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる顔料中におけるマゼンタ色顔料の含有量が99質量%以上であることを意味し、99.9質量%以上であることが好ましく、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる顔料がマゼンタ色顔料のみであることがより好ましい。
【0102】
マゼンタ色感光性樹脂組成物は、分光特性の観点からマゼンタ色染料以外の染料(マゼンタ色以外の色相の染料)を実質的に含まないことも好ましい。マゼンタ色感光性樹脂組成物がマゼンタ色染料以外の染料を実質的に含まない場合とは、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる染料中におけるマゼンタ色染料の含有量が99質量%以上であることを意味し、99.9質量%以上であることが好ましく、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる染料がマゼンタ色染料のみであることがより好ましい。
【0103】
マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる色材中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料の合計の含有量は分光特性の観点から40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、70質量%以上であることがより一層好ましく、90質量%以上であることが更に一層好ましい。マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる色材は実質的にマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料のみであることが特に好ましい。なお、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる色材が実質的にマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料のみである場合とは、色材中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料との合計の含有量が99質量%以上であることを意味し、99.9質量%以上であることが好ましく、マゼンタ色感光性樹脂組成物に含まれる色材がマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料のみであることがより好ましい。
【0104】
<<顔料誘導体>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は顔料誘導体を含有することが好ましい。顔料誘導体としては、色素骨格に酸基または塩基性基が結合した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成する色素骨格としては、キノリン色素骨格、ベンゾイミダゾロン色素骨格、ベンゾイソインドール色素骨格、ベンゾチアゾール色素骨格、イミニウム色素骨格、スクアリリウム色素骨格、クロコニウム色素骨格、オキソノール色素骨格、ピロロピロール色素骨格、ジケトピロロピロール色素骨格、アゾ色素骨格、アゾメチン色素骨格、フタロシアニン色素骨格、ナフタロシアニン色素骨格、アントラキノン色素骨格、キナクリドン色素骨格、ジオキサジン色素骨格、ペリノン色素骨格、ペリレン色素骨格、チオインジゴ色素骨格、イソインドリン色素骨格、イソインドリノン色素骨格、キノフタロン色素骨格、イミニウム色素骨格、ジチオール色素骨格、トリアリールメタン色素骨格、ピロメテン色素骨格等が挙げられる。酸基としては、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基及びこれらの塩が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、アルカリ金属イオン(Li+、Na+、K+など)、アルカリ土類金属イオン(Ca2+、Mg2+など)、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ホスホニウムイオンなどが挙げられる。塩基性基としては、アミノ基、ピリジニル基およびその塩、アンモニウム基の塩、並びにフタルイミドメチル基が挙げられる。塩を構成する原子または原子団としては、水酸化物イオン、ハロゲンイオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、フェノキシドイオンなどが挙げられる。
【0105】
顔料誘導体の具体例としては、後述する実施例に記載の化合物、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平01-217077号公報、特開平03-009961号公報、特開平03-026767号公報、特開平03-153780号公報、特開平03-045662号公報、特開平04-285669号公報、特開平06-145546号公報、特開平06-212088号公報、特開平06-240158号公報、特開平10-030063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開第2011/024896号の段落番号0086~0098、国際公開第2012/102399号の段落番号0063~0094、国際公開第2017/038252号の段落番号0082、特開2015-151530号公報の段落番号0171、特開2011-252065号公報の段落番号0162~0183、特開2003-081972号公報、特許第5299151号公報、特開2015-172732号公報、特開2014-199308号公報、特開2014-085562号公報、特開2014-035351号公報、特開2008-081565号公報に記載の化合物、国際公開第2020/002106号に記載のチオール連結基を有するジケトピロロピロール化合物が挙げられる。
【0106】
顔料誘導体の含有量は、マゼンタ色顔料の100質量部に対して1~30質量部であることが好ましく、3~20質量部であることがより好ましい。また、マゼンタ色顔料と顔料誘導体との合計の含有量は、マゼンタ色染料の100質量部に対して、5.1~520質量部であることが好ましく、20~300質量部であることがより好ましく、50~130質量部であることが更に好ましい。
【0107】
<<樹脂>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は樹脂を含有する。樹脂は、例えば、顔料等をマゼンタ色感光性樹脂組成物中で分散させる用途や、バインダーの用途で配合される。なお、主に顔料等をマゼンタ色感光性樹脂組成物中で分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外を目的として樹脂を使用することもできる。
【0108】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、3000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0109】
樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0110】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、酸基を有する樹脂を含むことも好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。酸基を有する樹脂は分散剤として用いることもできる。また、酸基を有する樹脂としては、特開2017-173787号公報に記載されたアルカリ可溶性樹脂を用いることもできる。酸基を有する樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、400mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g以下がより好ましく、150mgKOH/g以下が更に好ましく、120mgKOH/g以下が最も好ましい。
【0111】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、塩基性基を有する樹脂を含むことも好ましい。塩基性基を有する樹脂は、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましく、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位と塩基性基を含まない繰り返し単位とを有する共重合体であることがより好ましく、塩基性基を側鎖に有する繰り返し単位と、塩基性基を含まない繰り返し単位とを有するブロック共重合体であることが更に好ましい。塩基性基を有する樹脂は分散剤として用いることもできる。塩基性基を有する樹脂のアミン価は、5~300mgKOH/gが好ましい。下限は、10mgKOH/g以上が好ましく、20mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、200mgKOH/g以下が好ましく、100mgKOH/g以下がより好ましい。塩基性基を有する樹脂に含まれる塩基性基としては、下記式(a-1)で表される基、下記式(a-2)で表される基などが挙げられる。
【化15】
【0112】
式(a-1)中、Ra1およびRa2は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表し、Ra1とRa2とは結合して環を形成していてもよい;
式(a-2)中、Ra11は、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基またはオキシラジカルを表し、Ra12~Ra19は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
【0113】
Ra1、Ra2、Ra11~Ra19が表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0114】
Ra1、Ra2、Ra11~Ra19が表すアリール基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリール基は置換基を有していてもよい。
【0115】
Ra11が表すアルコキシ基の炭素数は、1~30が好ましく、1~15がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~5が特に好ましい。アルコキシ基は置換基を有していてもよい。
【0116】
Ra11が表すアリールオキシ基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~12が更に好ましい。アリールオキシ基は置換基を有していてもよい。
【0117】
Ra11が表すアシル基の炭素数は、2~30が好ましく、2~20がより好ましく、2~12が更に好ましい。アシル基は置換基を有していてもよい。
【0118】
塩基性基を有する樹脂の市販品としては、DISPERBYK-161、162、163、164、166、167、168、174、182、183、184、185、2000、2001、2050、2150、2163、2164、BYK-LPN6919(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、SOLSPERSE11200、13240、13650、13940、24000、26000、28000、32000、32500、32550、32600、33000、34750、35100、35200、37500、38500、39000、53095、56000、7100(以上、日本ルーブリゾール社製)、Efka PX 4300、4330、4046、4060、4080(以上、BASF社製)等が挙げられる。また、塩基性基を有する樹脂は、特開2014-219665号公報の段落番号0063~0112に記載されたブロック共重合体(B)、特開2018-156021号公報の段落番号0046~0076に記載されたブロック共重合体A1を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0119】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、酸基を有する樹脂と塩基性基を有する樹脂とをそれぞれ含むことも好ましい。この態様によれば、マゼンタ色感光性樹脂組成物の保存安定性をより向上できる。酸基を有する樹脂と塩基性基を有する樹脂とを併用する場合、塩基性基を有する樹脂の含有量は、酸基を有する樹脂の100質量部に対して20~500質量部であることが好ましく、30~300質量部であることがより好ましく、50~200質量部であることが更に好ましい。
【0120】
樹脂としては、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)由来の繰り返し単位を含む樹脂を含むことも好ましい。
【0121】
【0122】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化17】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0123】
エーテルダイマーの具体例については、特開2013-029760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0124】
樹脂としては、重合性基を有する繰り返し単位を含む樹脂を含むことも好ましい。
【0125】
樹脂としては、式(X)で表される化合物由来の繰り返し単位を含む樹脂を含むことも好ましい。
【化18】
式中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
21およびR
22はそれぞれ独立してアルキレン基を表し、nは0~15の整数を表す。R
21およびR
22が表すアルキレン基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~3であることが更に好ましく、2または3であることが特に好ましい。nは0~15の整数を表し、0~5の整数であることが好ましく、0~4の整数であることがより好ましく、0~3の整数であることが更に好ましい。
【0126】
式(X)で表される化合物としては、パラクミルフェノールのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。市販品としては、アロニックスM-110(東亞合成(株)製)などが挙げられる。
【0127】
樹脂としては、芳香族カルボキシル基を有する樹脂(以下、樹脂Acともいう)を含むことも好ましい。樹脂Acにおいて、芳香族カルボキシル基は繰り返し単位の主鎖に含まれていてもよく、繰り返し単位の側鎖に含まれていてもよい。芳香族カルボキシル基は繰り返し単位の主鎖に含まれていることが好ましい。なお、本明細書において、芳香族カルボキシル基とは、芳香族環にカルボキシル基が1個以上結合した構造の基のことである。芳香族カルボキシル基において、芳香族環に結合したカルボキシル基の数は、1~4個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましい。
【0128】
樹脂Acは、式(Ac-1)で表される繰り返し単位および式(Ac-2)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含む樹脂であることが好ましい。
【化19】
式(Ac-1)中、Ar
1は芳香族カルボキシル基を含む基を表し、L
1は、-COO-または-CONH-を表し、L
2は、2価の連結基を表す。
式(Ac-2)中、Ar
10は芳香族カルボキシル基を含む基を表し、L
11は、-COO-または-CONH-を表し、L
12は3価の連結基を表し、P
10はポリマー鎖を表す。
【0129】
式(Ac-1)においてAr
1が表す芳香族カルボキシル基を含む基としては、芳香族トリカルボン酸無水物から由来する構造、芳香族テトラカルボン酸無水物から由来する構造などが挙げられる。芳香族トリカルボン酸無水物および芳香族テトラカルボン酸無水物としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化20】
【0130】
上記式中、Q
1は、単結合、-O-、-CO-、-COOCH
2CH
2OCO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、下記式(Q-1)で表される基または下記式(Q-2)で表される基を表す。
【化21】
【0131】
Ar
1が表す芳香族カルボキシル基を含む基は、重合性基を有していてもよい。重合性基は、エチレン性不飽和結合含有基および環状エーテル基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基であることがより好ましい。Ar
1が表す芳香族カルボキシル基を含む基の具体例としては、式(Ar-11)で表される基、式(Ar-12)で表される基、式(Ar-13)で表される基などが挙げられる。
【化22】
【0132】
式(Ar-11)中、n1は1~4の整数を表し、1または2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(Ar-12)中、n2は1~8の整数を表し、1~4の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、2であることが更に好ましい。
式(Ar-13)中、n3およびn4はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、0~2の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。ただし、n3およびn4の少なくとも一方は1以上の整数である。
式(Ar-13)中、Q1は、単結合、-O-、-CO-、-COOCH2CH2OCO-、-SO2-、-C(CF3)2-、上記式(Q-1)で表される基または上記式(Q-2)で表される基を表す。
式(Ar-11)~(Ar-13)中、*1はL1との結合位置を表す。
【0133】
式(Ac-1)においてL1は、-COO-または-CONH-を表し、-COO-を表すことが好ましい。
【0134】
式(Ac-1)においてL2が表す2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アリーレン基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。アルキレン基およびアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L2が表す2価の連結基は、-L2a-O-で表される基であることが好ましい。L2aは、アルキレン基;アリーレン基;アルキレン基とアリーレン基とを組み合わせた基;アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる少なくとも1種と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-および-S-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせた基などが挙げられ、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。アルキレン基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。アルキレン基およびアリーレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
【0135】
式(Ac-2)においてAr10が表す芳香族カルボキシル基を含む基としては、式(Ac-1)のAr1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0136】
式(Ac-2)においてL11は、-COO-または-CONH-を表し、-COO-を表すことが好ましい。
【0137】
式(Ac-2)においてL
12が表す3価の連結基としては、炭化水素基、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-S-およびこれらの2種以上を組み合わせた基が挙げられる。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~15が更に好ましい。脂肪族炭化水素基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。芳香族炭化水素基の炭素数は、6~30が好ましく、6~20がより好ましく、6~10が更に好ましい。炭化水素基は置換基を有していてもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。L
12が表す3価の連結基は、式(L12-1)で表される基であることが好ましく、式(L12-2)で表される基であることがより好ましい。
【化23】
【0138】
式(L12-1)中、L12bは3価の連結基を表し、X1はSを表し、*1は式(Ac-2)のL11との結合位置を表し、*2は式(Ac-2)のP10との結合位置を表す。L12bが表す3価の連結基としては、炭化水素基;炭化水素基と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-および-S-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせた基などが挙げられ、炭化水素基または炭化水素基と-O-とを組み合わせた基であることが好ましい。
【0139】
式(L12-2)中、L12cは3価の連結基を表し、X1はSを表し、*1は式(Ac-2)のL11との結合位置を表し、*2は式(Ac-2)のP10との結合位置を表す。L12cが表す3価の連結基としては、炭化水素基;炭化水素基と、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-および-S-から選ばれる少なくとも1種とを組み合わせた基などが挙げられ、炭化水素基であることが好ましい。
【0140】
式(Ac-2)においてP10はポリマー鎖を表す。P10が表すポリマー鎖は、ポリ(メタ)アクリル繰り返し単位、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位およびポリオール繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有することが好ましい。ポリマー鎖P10の重量平均分子量は500~20000が好ましい。下限は1000以上が好ましい。上限は10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。P10の重量平均分子量が上記範囲であれば組成物中における顔料の分散性が良好である。芳香族カルボキシル基を有する樹脂が式(Ac-2)で表される繰り返し単位を有する樹脂である場合は、この樹脂は分散剤として好ましく用いられる。
【0141】
樹脂は、分散剤としての樹脂を含むことが好ましい。分散剤としては、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)としては、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上である樹脂が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、10~105mgKOH/gが好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)としては、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基が好ましい。
【0142】
分散剤として用いる樹脂は、グラフト樹脂であることも好ましい。グラフト樹脂の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0143】
分散剤として用いる樹脂は、芳香族カルボキシル基を有する樹脂(樹脂Ac)であることも好ましい。芳香族カルボキシル基を有する樹脂としては上述したものが挙げられる。
【0144】
分散剤として用いる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むポリイミン系分散剤であることも好ましい。ポリイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造を有する主鎖と、原子数40~10000の側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子は、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。ポリイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0166の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0145】
分散剤として用いる樹脂は、コア部に複数個のポリマー鎖が結合した構造の樹脂であることも好ましい。このような樹脂としては、例えば、デンドリマー(星型ポリマーを含む)が挙げられる。また、デンドリマーの具体例としては、特開2013-043962号公報の段落番号0196~0209に記載された高分子化合物C-1~C-31などが挙げられる。
【0146】
分散剤として用いる樹脂は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する繰り返し単位を含む樹脂であることも好ましい。エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する繰り返し単位の含有量は、樹脂の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。また、分散剤は、特開2018-087939号公報に記載された樹脂を用いることもできる。
【0147】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、ビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYKシリーズ、日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSEシリーズ、BASF社製のEfkaシリーズ、味の素ファインテクノ(株)製のアジスパーシリーズ等が挙げられる。また、特開2012-137564号公報の段落番号0129に記載された製品、特開2017-194662号公報の段落番号0235に記載された製品を分散剤として用いることもできる。
【0148】
また、分散剤には、特許第6432077号公報の段落番号0219~0221に記載されたブロック共重合体(EB-1)~(EB-9)、特開2018-087939号公報に記載された樹脂、国際公開第2016/104803号に記載のポリエステル側鎖を有するポリエチレンイミン、国際公開第2019/125940号に記載のブロック共重合体、特開2020-066687号公報に記載のアクリルアミド構造単位を有するブロックポリマー、特開2020-066688号公報に記載のアクリルアミド構造単位を有するブロックポリマー、国際公開第2016/104803号に記載の分散剤などを用いることもできる。
【0149】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における樹脂の含有量は、1~60質量%であることが好ましい。下限は5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましい。上限は50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。樹脂を2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0150】
<<重合性化合物>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物としては、ラジカル、酸または熱により架橋可能な公知の化合物を用いることができる。本発明において、重合性化合物は、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を有する化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和結合含有基としては、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。本発明で用いられる重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
【0151】
重合性化合物としては、モノマー、プレポリマー、オリゴマーなどの化学的形態のいずれであってもよいが、モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましい。上限は、2000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。下限は、150以上がより好ましく、250以上が更に好ましい。
【0152】
重合性化合物は、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上含む化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~15個含む化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合含有基を3~6個含む化合物であることが更に好ましい。また、重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。重合性化合物の具体例としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-029760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257、特開2013-253224号公報の段落番号0034~0038、特開2012-208494号公報の段落番号0477、特開2017-048367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0153】
重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、NKエステルA-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコールおよび/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。また、重合性化合物としては、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、NKエステルA-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)、NKオリゴUA-7200(新中村化学工業(株)製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600、LINC-202UA(共栄社化学(株)製)、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることもできる。
【0154】
また、重合性化合物には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能の(メタ)アクリレート化合物を用いることもできる。3官能の(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、アロニックスM-309、M-310、M-321、M-350、M-360、M-313、M-315、M-306、M-305、M-303、M-452、M-450(東亞合成(株)製)、NKエステル A9300、A-GLY-9E、A-GLY-20E、A-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、A-TMPT、TMPT(新中村化学工業(株)製)、KAYARAD GPO-303、TMPTA、THE-330、TPA-330、PET-30(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0155】
また、重合性化合物には、酸基を有する化合物を用いることもできる。酸基を有する重合性化合物を用いることで、現像時に未露光部の重合性化合物が除去されやすく、現像残渣の発生を抑制できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。酸基を有する重合性化合物の市販品としては、アロニックスM-510、M-520、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)等が挙げられる。酸基を有する重合性化合物の好ましい酸価としては、0.1~40mgKOH/gであり、より好ましくは5~30mgKOH/gである。重合性化合物の酸価が0.1mgKOH/g以上であれば、現像液に対する溶解性が良好であり、40mgKOH/g以下であれば、製造や取扱い上、有利である。
【0156】
また、重合性化合物には、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることもできる。カプロラクトン構造を有する重合性化合物の市販品としては、KAYARAD DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120(以上、日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0157】
また、重合性化合物には、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物がより好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がさらに好ましい。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物としては、下記構造の化合物などが挙げられる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えば、サートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能(メタ)アクリレートであるSR-494、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能(メタ)アクリレートであるKAYARAD TPA-330などが挙げられる。
【化24】
【0158】
また、重合性化合物には、フルオレン骨格を有する重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有する重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【0159】
重合性化合物としては、トルエンなどの環境規制物質を実質的に含まない化合物を用いることも好ましい。このような化合物の市販品としては、KAYARAD DPHA LT、KAYARAD DPEA-12 LT(日本化薬(株)製)などが挙げられる。
【0160】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における重合性化合物の含有量は0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。重合性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0161】
<<溶剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、溶剤を含有する。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤の種類は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤としては、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開第2015/166779号の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤も好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、3-ペンタノン、4-ヘプタノン、シクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、プロピレングリコールジアセテート、3-メトキシブタノール、メチルエチルケトン、ガンマブチロラクトン、スルホラン、アニソール、1,4-ジアセトキシブタン、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、二酢酸ブタン-1,3-ジイル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセタート、ジアセトンアルコール、2-メトキシプロピルアセテート、2-メトキシ-1-プロパノール、イソプロピルアルコールなどが挙げられる。ただし有機溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0162】
本発明においては、金属含有量の少ない有機溶剤を用いることが好ましく、有機溶剤の金属含有量は、例えば、10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの有機溶剤を用いてもよく、そのような有機溶剤は、例えば、東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0163】
有機溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0164】
有機溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0165】
有機溶剤中の過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0166】
マゼンタ色感光性樹脂組成物中における溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0167】
また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、マゼンタ色感光性樹脂組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えば、ベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、マゼンタ色感光性樹脂組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒としてマゼンタ色感光性樹脂組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば、重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製したマゼンタ色感光性樹脂組成物の段階などのいずれの段階でも可能である。
【0168】
<<光重合開始剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する化合物が好ましい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0169】
光重合開始剤としては、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物など)、アシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物などが挙げられる。光重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体、ハロメチルオキサジアゾール化合物および3-アリール置換クマリン化合物であることが好ましく、オキシム化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、および、アシルホスフィン化合物から選ばれる化合物であることがより好ましく、オキシム化合物であることが更に好ましい。また、光重合開始剤としては、特開2014-130173号公報の段落0065~0111、特許第6301489号公報に記載された化合物、MATERIAL STAGE 37~60p,vol.19,No.3,2019に記載されたパーオキサイド系光重合開始剤、国際公開第2018/221177号に記載の光重合開始剤、国際公開第2018/110179号に記載の光重合開始剤、特開2019-043864号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-044030号公報に記載の光重合開始剤、特開2019-167313号公報に記載の過酸化物系開始剤、特開2020-055992号公報に記載のオキサゾリジン基を有するアミノアセトフェノン系開始剤、特開2013-190459号公報に記載のオキシム系光重合開始剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0170】
α-ヒドロキシケトン化合物の市販品としては、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 2959、Irgacure 127(以上、BASF社製)などが挙げられる。α-アミノケトン化合物の市販品としては、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 369E、Irgacure 379EG(以上、BASF社製)などが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、Omnirad 819、Omnirad TPO(以上、IGM Resins B.V.社製)、Irgacure 819、Irgacure TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0171】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-080068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-066385号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-019766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開第2015/152153号に記載の化合物、国際公開第2017/051680号に記載の化合物、特開2017-198865号公報に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0038に記載の化合物、国際公開第2013/167515号に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。市販品としては、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02、Irgacure OXE03、Irgacure OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304、TR-PBG-3057(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-014052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物としては、着色性が無い化合物や、透明性が高く変色し難い化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0172】
光重合開始剤としては、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物、特許第6636081号公報に記載されたフルオレン環とニトロ基とを有するオキシム化合物などが挙げられる。
【0173】
光重合開始剤としては、カルバゾール環の少なくとも1つのベンゼン環がナフタレン環となった骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。そのようなオキシム化合物の具体例としては、国際公開第2013/083505号に記載の化合物が挙げられる。
【0174】
光重合開始剤としては、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0175】
光重合開始剤としては、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体とすることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0176】
光重合開始剤としては、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることもできる。具体例としては、国際公開第2015/036910号に記載されているOE-01~OE-75が挙げられる。
【0177】
光重合開始剤としては、カルバゾール骨格にヒドロキシ基を有する置換基が結合したオキシム化合物を用いることもできる。このような光重合開始剤としては国際公開第2019/088055号に記載された化合物などが挙げられる。
【0178】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0179】
【0180】
オキシム化合物は、波長350~500nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、波長360~480nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物がより好ましい。また、オキシム化合物の波長365nm又は波長405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、高いことが好ましく、1000~300000であることがより好ましく、2000~300000であることが更に好ましく、5000~200000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0181】
光重合開始剤としては、Irgacure OXE01(BASF社製)および/またはIrgacure OXE02(BASF社製)と、Omnirad 2959(IGM Resins B.V.社製)とを組み合わせて用いることも好ましい。
【0182】
光重合開始剤としては、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、マゼンタ色感光性樹脂組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開第2015/004565号、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開第2017/033680号の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開第2016/034963号に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)、特許第6469669号公報に記載されているオキシムエステル光開始剤などが挙げられる。
【0183】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における光重合開始剤の含有量は0.1~30質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。光重合開始剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0184】
<<環状エーテル基を有する化合物>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物はは、環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物(以下、エポキシ化合物ともいう)であることが好ましい。エポキシ化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0185】
エポキシ化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)でもよい。エポキシ化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0186】
エポキシ化合物としては、エポキシ樹脂を好ましく用いることができる。エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール化合物のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、各種ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物であるエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ハロゲン化フェノール類をグリシジル化したエポキシ樹脂、エポキシ基をもつケイ素化合物とそれ以外のケイ素化合物との縮合物、エポキシ基を持つ重合性不飽和化合物とそれ以外の他の重合性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、310~3300g/eqであることが好ましく、310~1700g/eqであることがより好ましく、310~1000g/eqであることが更に好ましい。
【0187】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0188】
マゼンタ色感光性樹脂組成物はの全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0189】
<<硬化促進剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤としては、チオール化合物、メチロール化合物、アミン化合物、ホスホニウム塩化合物、アミジン塩化合物、アミド化合物、塩基発生剤、イソシアネート化合物、アルコキシシラン化合物、オニウム塩化合物などが挙げられる。硬化促進剤の具体例としては、国際公開第2018/056189号の段落番号0094~0097に記載の化合物、特開2015-034963号公報の段落番号0246~0253に記載の化合物、特開2013-041165号公報の段落番号0186~0251に記載の化合物、特開2014-055114号公報に記載のイオン性化合物、特開2012-150180号公報の段落番号0071~0080に記載の化合物、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物、特許第5765059号公報の段落番号0085~0092に記載の化合物、特開2017-036379号公報に記載のカルボキシル基含有エポキシ硬化剤などが挙げられる。硬化促進剤を含有する場合、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における硬化促進剤の含有量は0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0190】
<<紫外線吸収剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。このような化合物としては、特開2009-217221号公報の段落番号0038~0052、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-068814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080に記載された化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)、BASF社製のTinuvinシリーズ、Uvinul(ユビナール)シリーズなどが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、特許第6268967号公報の段落番号0049~0059に記載された化合物、国際公開第2016/181987号の段落番号0059~0076に記載された化合物、国際公開第2020/137819号に記載されたチオアリール基置換ベンゾトリアゾール型紫外線吸収剤を用いることもできる。
【化27】
【0191】
紫外線吸収剤を含有する場合、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0192】
<<重合禁止剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。重合禁止剤を含有する場合、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.0001~5質量%が好ましい。重合禁止剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0193】
<<シランカップリング剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-602)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-603)、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBE-602)、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-903)、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBE-903)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-502)、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製、商品名 KBM-503)等がある。また、シランカップリング剤の具体例については、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。シランカップリング剤を含有する場合、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.01~15.0質量%が好ましく、0.05~10.0質量%がより好ましい。シランカップリング剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0194】
<<界面活性剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤はシリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であることが好ましい。界面活性剤については、国際公開第2015/166779号の段落番号0238~0245に記載された界面活性剤、特開2020-008634号公報に記載された界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0195】
マゼンタ色感光性樹脂組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0196】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、マゼンタ色感光性樹脂組成物中における溶解性も良好である。
【0197】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-041318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開第2014/017669号の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF-171、F-172、F-173、F-176、F-177、F-141、F-142、F-143、F-144、F-437、F-475、F-477、F-479、F-482、F-554、F-555-A、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-565、F-563、F-568、F-575、F-780、EXP、MFS-330、R-01、R-40、R-40-LM、R-41、R-41-LM、RS-43、TF-1956、RS-90、R-94、RS-72-K、DS-21(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、AGC(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)、フタージェント208G、215M、245F、601AD、601ADH2、602A、610FM、710FL、710FM、710FS、FTX-218、(以上、株)NEOS製)等が挙げられる。
【0198】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報(2016年2月22日)、日経産業新聞(2016年2月23日))、例えば、メガファックDS-21が挙げられる。
【0199】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報に記載されたフッ素系界面活性剤が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0200】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。また、特開2010-032698号公報の段落番号0016~0037に記載されたフッ素含有界面活性剤や、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化28】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3000~50000であり、例えば、14000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0201】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合含有基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、DIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。また、フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0202】
また、国際公開第2020/084854号に記載の界面活性剤を、炭素数6以上のパーフルオロアルキル基を有する界面活性剤の代替として用いることも、環境規制の観点から好ましい。
【0203】
また、式(fi-1)で表される含フッ素イミド塩化合物を界面活性剤として用いることも好ましい。
【化29】
式(fi-1)において、mは1または2を表し、nは1~4の整数を表し、aは1または2を表し、X
a+はa価の金属イオン、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオンまたはNH
4
+を表す。
【0204】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(富士フイルム和光純薬(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0205】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400、FZ-2122(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越化学工業(株)製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0206】
界面活性剤を含有する場合、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種類のみでもよく、2種類以上でもよい。2種類以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0207】
<<酸化防止剤>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0208】
<<その他成分>>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開第2014/021023号、国際公開第2017/030005号、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤の市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。また、本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、特開2020-079833号公報に記載の芳香族基含有ホスホニウム塩を含んでいてもよい。
【0209】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、得られる膜の屈折率を調整するために金属酸化物を含有させてもよい。金属酸化物としては、TiO2、ZrO2、Al2O3、SiO2等が挙げられる。金属酸化物の一次粒子径は1~100nmが好ましく、3~70nmがより好ましく、5~50nmが更に好ましい。金属酸化物はコア-シェル構造を有していてもよい。また、この場合、コア部は中空状であってもよい。
【0210】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、耐光性改良剤を含んでもよい。耐光性改良剤としては、特開2017-198787号公報の段落番号0036~0037に記載の化合物、特開2017-146350号公報の段落番号0029~0034に記載の化合物、特開2017-129774号公報の段落番号0036~0037、0049~0052に記載の化合物、特開2017-129674号公報の段落番号0031~0034、0058~0059に記載の化合物、特開2017-122803号公報の段落番号0036~0037、0051~0054に記載の化合物、国際公開第2017/164127号の段落番号0025~0039に記載の化合物、特開2017-186546号公報の段落番号0034~0047に記載の化合物、特開2015-025116号公報の段落番号0019~0041に記載の化合物、特開2012-145604号公報の段落番号0101~0125に記載の化合物、特開2012-103475号公報の段落番号0018~0021に記載の化合物、特開2011-257591号公報の段落番号0015~0018に記載の化合物、特開2011-191483号公報の段落番号0017~0021に記載の化合物、特開2011-145668号公報の段落番号0108~0116に記載の化合物、特開2011-253174号公報の段落番号0103~0153に記載の化合物などが挙げられる。
【0211】
環境規制の観点から、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の使用が規制されることがある。本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物において、上記した化合物の含有率を小さくする場合、パーフルオロアルキルスルホン酸(特にパーフルオロアルキル基の炭素数が6~8のパーフルオロアルキルスルホン酸)及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸(特にパーフルオロアルキル基炭素数が6~8のパーフルオロアルキルカルボン酸)及びその塩の含有率は、マゼンタ色感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01ppb~1,000ppbの範囲であることが好ましく、0.05ppb~500ppbの範囲であることがより好ましく、0.1ppb~300ppbの範囲であることが更に好ましい。本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を実質的に含まなくてもよい。例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩の代替となりうる化合物、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の代替となりうる化合物を用いることで、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を実質的に含まない組成物を選択してもよい。規制化合物の代替となりうる化合物としては、例えば、パーフルオロアルキル基の炭素数の違いによって規制対象から除外された化合物が挙げられる。ただし、上記した内容は、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩の使用を妨げるものではない。本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、許容される最大の範囲内で、パーフルオロアルキルスルホン酸及びその塩、並びにパーフルオロアルキルカルボン酸及びその塩を含んでもよい。
【0212】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物の含水率は、通常3質量%以下であり、0.01~1.5質量%が好ましく、0.1~1.0質量%の範囲であることがより好ましい。含水率は、カールフィッシャー法にて測定することができる。
【0213】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、膜面状(平坦性など)の調整、膜厚の調整などを目的として粘度を調整して用いることができる。粘度の値は必要に応じて適宜選択することができるが、例えば、25℃において0.3mPa・s~50mPa・sが好ましく、0.5mPa・s~20mPa・sがより好ましい。粘度の測定方法としては、例えば、コーンプレートタイプの粘度計を使用し、25℃に温度調整を施した状態で測定することができる。
【0214】
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば、特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0215】
<マゼンタ色感光性樹脂組成物の調製方法>
本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物は、前述の成分を混合して調製できる。マゼンタ色感光性樹脂組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散してマゼンタ色感光性樹脂組成物を調製してもよいし、必要に応じて、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合してマゼンタ色感光性樹脂組成物を調製してもよい。
【0216】
また、マゼンタ色感光性樹脂組成物の調製に際して、顔料を分散させるプロセスを含むことが好ましい。顔料を分散させるプロセスにおいて、顔料の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における顔料の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、顔料を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全集、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また顔料を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば、特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0217】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、マゼンタ色感光性樹脂組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)及びナイロンが好ましい。
【0218】
フィルタの孔径は、0.01~7.0μmが好ましく、0.01~3.0μmがより好ましく、0.05~0.5μmが更に好ましい。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物をより確実に除去できる。フィルタの孔径値については、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。フィルタは、日本ポール株式会社(DFA4201NXEY、DFA4201NAEY、DFA4201J006Pなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)及び株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタを用いることができる。
【0219】
また、フィルタとしてファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えば、ポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。市販品としては、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)が挙げられる。フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0220】
<膜>
本発明の膜は、上述した本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物から得られる膜である。本発明の膜は、カラーフィルタに用いることができる。より具体的にはカラーフィルタのマゼンタ色画素に用いることができる。本発明の膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。例えば、膜厚は、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0221】
本発明の膜の400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値は70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。また、本発明の膜の450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値は30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが更に好ましく、10%以下であることが特に好ましい。また、本発明の膜の550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。また、本発明の膜について、光の透過率が50%を示す波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在することが好ましい。光の透過率が50%を示す短波側の波長は、波長460~495nmの範囲に存在することが好ましく、波長470~495nmの範囲に存在することがより好ましく、475~495nmの範囲に存在することが特に好ましい。光の透過率が50%を示す長波側の波長は、波長560~595nmの範囲に存在することが好ましく、波長570~590nmの範囲に存在することがより好ましい。このような分光特性を有する膜は、マゼンタ色画素として好ましく用いられる。
【0222】
<カラーフィルタ>
次に、本発明のカラーフィルタについて説明する。本発明のカラーフィルタは、上述した本発明の膜を有する。具体的には、本発明のカラーフィルタは、カラーフィルタのマゼンタ色画素として、本発明の膜を有することが好ましい。
また、本発明のカラーフィルタは、上述した本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用いて得られるマゼンタ色画素と、シアン色画素と、黄色画素とを有するものであることも好ましい。
シアン色画素は、カラーインデックスピグメントグリーン7を含むものであることが好ましい。また、シアン色画素は、450~550nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、615~645nmの波長範囲の光の透過率の最小値が20%以下であり、透過率が50%を示す波長が395~415nmの波長範囲と、560~580nmの波長範囲のそれぞれに存在するものであることが好ましい。
黄色画素は、カラーインデックスピグメントイエロー150を含むものであることが好ましい。また、黄色画素は、500~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上、415~445nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下であり、透過率が50%を示す波長が470~490nmの波長範囲に存在するものであることが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子や画像表示装置などに用いることができる。
【0223】
本発明のカラーフィルタにおいて膜の膜厚は、目的に応じて適宜調整できる。膜厚は、5μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましく、0.6μm以下がさらに好ましい。膜厚の下限は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上がさらに好ましい。
【0224】
カラーフィルタに含まれる画素の幅は0.2~10.0μmであることが好ましい。下限は、0.4μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であることがより好ましく、0.6μm以上であることが更に好ましい。上限は、5.0μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることが更に好ましく、0.8μm以下であることがより一層好ましい。また、画素のヤング率は0.5~20GPaであることが好ましく、2.5~15GPaがより好ましい。
【0225】
カラーフィルタに含まれる各画素は高い平坦性を有することが好ましい。具体的には、画素の表面粗さRaは、100nm以下であることが好ましく、40nm以下であることがより好ましく、15nm以下であることが更に好ましい。下限は規定されないが、例えば0.1nm以上であることが好ましい。画素の表面粗さは、例えばVeeco社製のAFM(原子間力顕微鏡) Dimension3100を用いて測定することができる。また、画素上の水の接触角は適宜好ましい値に設定することができるが、典型的には、50~110°の範囲である。接触角は、例えば接触角計CV-DT・A型(協和界面科学(株)製)を用いて測定できる。また、画素の体積抵抗値は高いことが好ましい。具体的には、画素の体積抵抗値は109Ω・cm以上であることが好ましく、1011Ω・cm以上であることがより好ましい。上限は規定されないが、例えば1014Ω・cm以下であることが好ましい。画素の体積抵抗値は、例えば超高抵抗計5410(アドバンテスト社製)を用いて測定することができる。
【0226】
カラーフィルタにおいては、本発明の膜(画素)の表面に保護層が設けられていてもよい。保護層を設けることで、酸素遮断化、低反射化、親疎水化、特定波長の光(紫外線、近赤外線等)の遮蔽等の種々の機能を付与することができる。保護層の厚さとしては、0.01~10μmが好ましく、0.1~5μmがより好ましい。保護層の形成方法としては、有機溶剤に溶解した樹脂組成物を塗布して形成する方法、化学気相蒸着法、成型した樹脂を接着材で貼りつける方法等が挙げられる。保護層を構成する成分としては、(メタ)アクリル樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、アラミド樹脂、ポリアミド樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、セルロース樹脂、Si、C、W、Al2O3、Mo、SiO2、Si2N4などが挙げられ、これらの成分を二種以上含有しても良い。例えば、酸素遮断化を目的とした保護層の場合、保護層はポリオール樹脂と、SiO2と、Si2N4を含むことが好ましい。また、低反射化を目的とした保護層の場合、保護層は(メタ)アクリル樹脂とフッ素樹脂を含むことが好ましい。
【0227】
樹脂組成物を塗布して保護層を形成する場合、樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の公知の方法を用いることができる。樹脂組成物に含まれる有機溶剤は、公知の有機溶剤(例えば、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、シクロペンタノン、乳酸エチル等)を用いることが出来る。保護層を化学気相蒸着法にて形成する場合、化学気相蒸着法としては、公知の化学気相蒸着法(熱化学気相蒸着法、プラズマ化学気相蒸着法、光化学気相蒸着法)を用いることができる。
【0228】
保護層は、必要に応じて、有機・無機微粒子、特定波長の光(例えば、紫外線、近赤外線等)の吸収剤、屈折率調整剤、酸化防止剤、密着剤、界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。有機・無機微粒子の例としては、例えば、高分子微粒子(例えば、シリコーン樹脂微粒子、ポリスチレン微粒子、メラミン樹脂微粒子)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アルミニウム、窒化チタン、酸窒化チタン、フッ化マグネシウム、中空シリカ、シリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。特定波長の光の吸収剤は公知の吸収剤を用いることができる。これらの添加剤の含有量は適宜調整できるが、保護層の全質量に対して0.1~70質量%が好ましく、1~60質量%がさらに好ましい。
【0229】
また、保護層としては、特開2017-151176号公報の段落番号0073~0092に記載の保護層を用いることもできる。
【0230】
カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。
【0231】
<画素の形成方法>
次に、画素の形成方法について説明する。画素の形成方法は、上述した本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物を支持体上に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、フォトリソグラフィ法により感光性樹脂組成物層に対してパターンを形成する工程と、を経て製造できる。フォトリソグラフィ法によるパターン形成は、上述した本発明のマゼンタ色感光性樹脂組成物を支持体上に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する工程と、感光性樹脂組成物層をパターン状に露光する工程と、露光後の感光性樹脂組成物層の未露光部を現像除去する工程と、を含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0232】
感光性樹脂組成物層を形成する工程では、マゼンタ色感光性樹脂組成物層を支持体上に塗布して感光性樹脂組成物層を形成する。支持体としては、特に限定は無く、用途に応じて適宜選択できる。例えば、ガラス基板、シリコン基板などが挙げられ、シリコン基板であることが好ましい。また、シリコン基板には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、シリコン基板には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、シリコン基板には、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下地層が設けられていてもよい。下地層の表面接触角は、ジヨードメタンで測定した際に20~70°であることが好ましい。また、水で測定した際に30~80°であることが好ましい。下地層の表面接触角が上記範囲であれば、マゼンタ色感光性樹脂組成物層の濡れ性が良好である。下地層の表面接触角の調整は、例えば、界面活性剤の添加などの方法で行うことができる。
【0233】
マゼンタ色感光性樹脂組成物の塗布方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;スピンコート法;流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(例えば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115ページ~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、マゼンタ色感光性樹脂組成物の塗布方法については、国際公開第2017/030174号、国際公開第2017/018419号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0234】
支持体上に形成した感光性樹脂組成物層は、乾燥(プリベーク)してもよい。低温プロセスにより膜を製造する場合は、プリベークを行わなくてもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。プリベークは、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0235】
次に、感光性樹脂組成物層をパターン状に露光する(露光工程)。例えば、感光性樹脂組成物層に対し、ステッパー露光機やスキャナ露光機などを用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン状に露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
【0236】
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等が挙げられる。また、波長300nm以下の光(好ましくは波長180~300nmの光)を用いることもできる。波長300nm以下の光としては、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、KrF線(波長248nm)が好ましい。また、300nm以上の長波な光源も利用できる。
【0237】
また、露光に際して、光を連続的に照射して露光してもよく、パルス的に照射して露光(パルス露光)してもよい。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。
【0238】
照射量(露光量)は、例えば、0.03~2.5J/cm2が好ましく、0.05~1.0J/cm2がより好ましい。露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、または、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、または、50体積%)で露光してもよい。また、露光照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、または、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度35体積%で照度20000W/m2などとすることができる。
【0239】
次に、露光後の感光性樹脂組成物層の未露光部を現像除去する(現像工程)。感光性樹脂組成物層の未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、未露光部の感光性樹脂組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、さらに新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0240】
現像液は、有機溶剤、アルカリ現像液などが挙げられ、アルカリ現像液が好ましく用いられる。アルカリ現像液としては、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液(アルカリ現像液)が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。また、現像後純水で洗浄(リンス)することも好ましい。また、リンスは、現像後の感光性樹脂組成物層が形成された支持体を回転させつつ、現像後の感光性樹脂組成物層へリンス液を供給して行うことが好ましい。また、リンス液を吐出させるノズルを支持体の中心部から支持体の周縁部に移動させて行うことも好ましい。この際、ノズルの支持体中心部から周縁部へ移動させるにあたり、ノズルの移動速度を徐々に低下させながら移動させてもよい。このようにしてリンスを行うことで、リンスの面内ばらつきを抑制できる。また、ノズルを支持体中心部から周縁部へ移動させつつ、支持体の回転速度を徐々に低下させても同様の効果が得られる。
【0241】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。追加露光処理やポストベークは、硬化を完全なものとするための現像後の硬化処理である。ポストベークにおける加熱温度は、例えば100~240℃が好ましく、200~240℃がより好ましい。ポストベークは、現像後の膜(画素)を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。また、追加露光処理は、韓国公開特許第10-2017-0122130号公報に記載された方法で行ってもよい。
【0242】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の膜を有する。固体撮像素子の構成としては、本発明の膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0243】
基板上に、固体撮像素子(CCD(電荷結合素子)イメージセンサ、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)イメージセンサ等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。更に、デバイス保護膜上であってカラーフィルタの下(基板に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各着色画素が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各着色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報、国際公開第2018/043654号に記載の装置が挙げられる。また、特開2019-211559号公報の中で示しているように固体撮像素子の構造内に紫外線吸収層を設けて耐光性を改良してもよい。本発明の固体撮像素子を備えた撮像装置は、デジタルカメラや、撮像機能を有する電子機器(携帯電話等)の他、車載カメラや監視カメラ用としても用いることができる。
【0244】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の膜を有する。画像表示装置としては、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などが挙げられる。画像表示装置の定義や各画像表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木昭夫著、(株)工業調査会、1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田龍男編集、(株)工業調査会、1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【実施例】
【0245】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0246】
<分散液の製造>
下記表に記載の原料を混合した混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.1mm径)を用いて3時間混合および分散した。次いで、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて圧力2000kg/cm2および流量500g/minの条件の下、分散処理を行なった。この分散処理を全10回繰り返して、分散液を得た。
【0247】
【0248】
上記表の略語で記載の原料は以下の通りである。
【0249】
(顔料)
P-1:C.I.ピグメントレッド122(マゼンタ色顔料)
P-2:C.I.ピグメントレッド202(マゼンタ色顔料)
P-3:C.I.ピグメントレッド209(マゼンタ色顔料)
P-4:C.I.ピグメントレッド269(マゼンタ色顔料)
【0250】
(顔料誘導体)
Syn-1:下記構造の化合物
Syn-2:下記構造の化合物
【化30】
【0251】
(分散剤)
D-1:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比である。重量平均分子量=11000)
【化31】
D-2:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量=24000)
【化32】
【0252】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S-4:2-メトキシプロピルアセテート
【0253】
<感光性樹脂組成物の製造>
下記の表に記載の原料を混合して、実施例1~46、比較例1~2の感光性樹脂組成物を製造した。実施例1~46の感光性樹脂組成物は、マゼンタ色感光性樹脂組成物である。下記表のマゼンタ色色材の含有量の欄に、感光性樹脂組成物の全固形分中におけるマゼンタ色顔料とマゼンタ色染料との合計の含有量を記す。また、マゼンタ色染料の含有量の欄に、色材中におけるマゼンタ色染料の含有量を記す。
【0254】
【0255】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0256】
上記表の略語で記載の原料は以下の通りである。
【0257】
(顔料分散液)
分散液1~8:上述した分散液1~8
【0258】
(染料)
Dye-1:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料、重量平均分子量10000)
【化33】
Dye-2:下記構造のジピロメテン染料(マゼンタ色染料、重量平均分子量7000)
【化34】
Dye-3:下記構造のトリアリールメタン染料(マゼンタ色染料)
【化35】
Dye-4:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化36】
Dye-5:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化37】
Dye-6:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化38】
Dye-7:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化39】
Dye-8:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化40】
Dye-9:下記構造のキサンテン染料(マゼンタ色染料)
【化41】
【0259】
(重合性化合物)
M-1:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製)
M-2:NKエステルA-TMMT(新中村化学工業(株)製)
【0260】
(樹脂)
D-1:上述した分散剤D-1と同じ樹脂
D-3:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比である。重量平均分子量=11000)
【化42】
【0261】
(光重合開始剤)
I-1~I-4:下記構造の化合物
【化43】
【0262】
(添加剤)
A-1:エポキシ化合物(EHPE3150、(株)ダイセル製、2,2’-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物)
A-2:紫外線吸収剤(UV-503、大東化学(株)製)
【0263】
(界面活性剤)
Su-1:下記構造の化合物(重量平均分子量:14000、繰り返し単位の割合を示す数値はモル%である)
【化44】
Su-2:KF-6001(シリコーン系界面活性剤、信越化学工業(株)製)
【0264】
(重合禁止剤)
In-1:p-メトキシフェノール
【0265】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
S-2:シクロヘキサノン
S-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0266】
<現像残渣の評価、解像性の評価>
直径8インチ(20.32cm)のシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に、下塗り用レジスト液(CT-4000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、さらに220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
感光性樹脂組成物を、上記で作製した下塗り層付シリコンウエハ基板の下塗り層上に塗布した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行ない塗布膜(感光性樹脂組成物層)を形成した。
次いで、この塗布膜に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長の光を、パターンを有するマスクを通して500mJ/cm2の露光量で照射して露光した。マスクは1.4μm×1.4μmのアイランドパターンを有するマスクを用いた。
次いで、露光後の塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、アルカリ現像液CD-2060(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて室温で60秒間パドル現像を行い着色パターン(着色画素)を形成した。
次に、着色画素が形成された基板を、真空チャック方式で水平回転テーブル上に固定し、回転装置によって基板を回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理(23秒×2回)を行った。次いで、スピン乾燥し、次いで、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、着色画素が形成された基板(以下、着色画素基板という)を得た。
【0267】
(現像残渣の評価)
得られた着色画素基板について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20000倍に拡大して観察し、未露光部の現像残渣の有無を確認し、以下の基準で解像性の評価を行った。
A:未露光部に現像残渣がなかった。
B:未露光部に現像残渣があった。
【0268】
(解像性の評価)
得られた着色画素基板を裁断し、着色画素の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20000倍に拡大して観察し、以下の基準で評価を行った。
A:着色画素の断面形状が矩形で、画素上面の平坦な領域の幅が1.2μm以上。
B:着色画素の断面形状が矩形でなく、画素上面の平坦な領域の幅が1.2μm未満。
【0269】
<表面粗さの評価>
感光性樹脂組成物を、上記で作製した下塗り層付シリコンウエハ基板の下塗り層上に塗布した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行ない塗布膜を形成した。次いで、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長の光を500mJ/cm2の露光量で塗布膜の全面に照射して露光した。
次いで、露光後の塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、アルカリ現像液CD-2060(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて室温で60秒間パドル現像を行った。次いで、現像後の基板を、真空チャック方式で水平回転テーブル上に固定し、回転装置によって基板を回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理(23秒×2回)を行った。次いで、スピン乾燥し、次いで、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、膜を形成した。
得られた膜の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察し、膜の表面粗さ(Ra)を算出した。
A:10μm四方のスキャン範囲での膜の表面粗さ(Ra)が10nm以下である。
B:10μm四方のスキャン範囲での膜の表面粗さ(Ra)が10nmを超えて30nm未満である。
C:10μm四方のスキャン範囲での膜の表面粗さ(Ra)が30nm以上である。
【0270】
【0271】
上記表に示すように、実施例1~46の感光性樹脂組成物は現像残渣、解像性および表面粗さの評価が良好であった。
【0272】
なお、実施例1~46の感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、400~450nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下で、かつ、600~700nmの波長範囲の光に対する吸光度の最大値が0.5以下であった。
また、実施例1~46の感光性樹脂組成物は、波長540nmの光に対する吸光度を1としたとき、吸光度が0.3となる光の波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在していた。
また、実施例1~46の感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が30%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が70%以上であった。また、膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が450~500nmの波長範囲と、550~600nmの波長範囲のそれぞれに存在していた。
また、実施例1の感光性樹脂組成物については、実施例1の感光性樹脂組成物を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、膜の厚み方向における400~500nmの波長範囲の光の透過率の最大値が80%以上、450~600nmの波長範囲の光の透過率の最小値が10%以下、および、550~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値が90%以上であった。また、膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が475~495nmの波長範囲と、570~590nmの波長範囲のそれぞれに存在していた。
【0273】
<実施例1001>
直径8インチ(20.32cm)のシリコンウエハをオーブン中で200℃のもと30分加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に、下塗り用レジスト液(CT-4000、富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、さらに220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
実施例1~21の感光性樹脂組成物を、上記で作製した下塗り層付シリコンウエハ基板の下塗り層上に塗布した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行ない塗布膜(感光性樹脂組成物層)を形成した。
次いで、この塗布膜に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長の光を、パターンを有するマスクを通して500mJ/cm2の露光量で照射して露光した。マスクは1.4μm×1.4μmのアイランドパターンを有するマスクを用いた。
次いで、露光後の塗布膜が形成されている基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、アルカリ現像液CD-2060(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて室温で60秒間パドル現像を行い着色パターン(着色画素)を形成した。
次に、着色画素が形成された基板を、真空チャック方式で水平回転テーブル上に固定し、回転装置によって基板を回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理(23秒×2回)を行った。次いで、スピン乾燥し、次いで、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、着色画素が形成された基板(以下、着色画素基板という)を得た。
次に、この着色画素が形成された基板に、透明画素形成用組成物1または透明画素形成用組成物2を用いて上記と同様の方法に従い、着色画素の抜け部に透明画素を形成してカラーフィルタを製造した。透明画素形成用組成物1および透明画素形成用組成物2は、以下に示す方法で製造したものを用いた。
【0274】
-透明画素形成用組成物1、2の製造-
下記の表に記載の原料を混合して、透明画素形成用組成物1、2を製造した。
【表12】
【0275】
上記表の略語で記載の原料のうち、溶剤S-1、樹脂D-1、添加剤A-2、界面活性剤Su-1および重合禁止剤In-1はそれぞれ上述した原料である。これら以外の原料の詳細は以下の通りである。
(溶剤)
S-7:3-メトキシブタノール
S-8:プロピレングリコールジアセテート
【0276】
(重合性化合物)
M-3:アロニックスM-510(東亞合成(株)製)
【0277】
(光重合開始剤)
I-5:下記構造の化合物
【化45】
【0278】
(添加剤)
A-3:下記構造の化合物
【化46】
A-4:Adeka Pluronic TR-702(ADEKA(株)製)
【0279】
<実施例2001~2009>
-黄色感光性樹脂組成物およびシアン色感光性樹脂組成物の製造-
下記の表に記載の原料を混合して、黄色感光性樹脂組成物1~3およびシアン色感光性樹脂組成物1~4をそれぞれ製造した。
黄色感光性樹脂組成物1~3については、黄色感光性樹脂組成物1~3を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、膜の厚み方向における500~700nmの波長範囲の光の透過率の最大値は90%以上、415~445nmの波長範囲の光の透過率の最小値は10%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長は470~490nmの波長範囲に存在していた。
シアン色感光性樹脂組成物1~4については、シアン色感光性樹脂組成物1~4を用いて厚さ0.6μmの膜を形成した際に、膜の厚み方向における450~550nmの波長範囲の光の透過率の最大値は90%以上、615~645nmの波長範囲の光の透過率の最小値は20%以下であり、膜の厚み方向における光の透過率が50%を示す波長が395~415nmの波長範囲と、560~580nmの波長範囲のそれぞれに存在していた。
【0280】
【0281】
上記表の略語で記載の原料のうち、重合性化合物M-1、M-2、樹脂D-1、光重合開始剤I-1、I-5、添加剤A-1、A-2、界面活性剤Su-2、重合禁止剤In-1および溶剤S-1はそれぞれ上述した原料である。分散液9~15は、以下のようにして製造した分散液を用いた。
【0282】
-分散液9~15の製造-
下記表に記載の原料を混合した混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.1mm径)を用いて3時間混合および分散した。次いで、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて圧力2000kg/cm2および流量500g/minの条件の下、分散処理を行なった。この分散処理を全10回繰り返して、分散液9~15を製造した。
【0283】
【0284】
上記表の略語で記載の原料は以下の通りである。
(顔料)
P-5:C.I.ピグメントイエロー150
P-6:C.I.ピグメントイエロー185
P-7:C.I.ピグメントイエロー139
P-8:C.I.ピグメントグリーン7
P-9:C.I.ピグメントブルー15:4
P-10:C.I.ピグメントグリーン62
P-11:C.I.ピグメントグリーン63
【0285】
(顔料誘導体)
Syn-2:上述した顔料誘導体Syn-2
【0286】
(分散剤)
D-1:上述した分散剤D-1
D-2:上述した分散剤D-2
D-4:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量=21000)
【化47】
D-5:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値は繰り返し単位のモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。重量平均分子量=20000)
【化48】
【0287】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S-4:2-メトキシプロピルアセテート
S-5:2-メトキシ-1-プロパノール
S-6:イソプロピルアルコール
【0288】
-カラーフィルタの製造-
ガラス基板の表面に、下記表に記載のシアン色感光性樹脂組成物を塗布した。そして、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行ない塗布膜(感光性樹脂組成物層)を形成した。
次いで、この塗布膜に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を使用して365nmの波長の光を、ベイヤーパターンを有するマスクを通して500mJ/cm2の露光量で照射して露光した。
次いで、露光後の塗布膜が形成されているガラス基板をスピン・シャワー現像機(DW-30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、アルカリ現像液CD-2060(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて室温で60秒間パドル現像を行った。次いで、ガラス基板を真空チャック方式で水平回転テーブル上に固定し、回転装置によってガラス基板を回転数50rpmで回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理(23秒×2回)を行った。次いで、スピン乾燥し、次いで、200℃で300秒間、ホットプレートでポストベークを行い、シアン色画素を形成した。
次いで、下記表に記載の黄色感光性樹脂組成物を用い、アイランドパターンのフォトマスクを用いた以外は上記と同様の手順でガラス基板上のシアン色画素の開口部に、黄色画素を形成した。
次いで、下記表に記載のマゼンタ色感光性樹脂組成物を用い、アイランドパターンのフォトマスクを用いた以外は上記と同様の手順でガラス基板上のシアン色画素及び黄色画素の開口部に、マゼンタ色画素を形成した。
このようにして、シアン色画素、黄色画素およびマゼンタ色画素が形成されたカラーフィルタを製造した。
【0289】
【0290】
得られたカラーフィルタを用いて、擬似白色LED光源(日亜化学社製、NSPW300BS)を用いて光を照射したときのカラーフィルタのNTSC比(アメリカNational Television Syste m Committee(NTSC)により定められた標準方式の3原色、赤(0.67、0.33)、緑(0.21、0.71)、青(0.14、0.08)により囲まれる面積に対する比率)で定められた赤(R)緑(G)青(B)3色の三角形の面積を100として、基準値の面積に対する三角形の面積の比率を測定して色再現性を評価した。評価結果を以下に示す。
A:基準値の面積に対する三角形の面積の比率が80%以上である
B:基準値の面積に対する三角形の面積の比率が70%以上80%未満である
C:基準値の面積に対する三角形の面積の比率が60%以上70%未満である
D:基準値の面積に対する三角形の面積の比率が60%未満である
【0291】
【0292】
実施例2001~2009のカラーフィルタは、色再現性に優れていた。
【0293】
<実施例3001~3009>
実施例2001~2009のカラーフィルタを形成したガラス基板に、赤色画素形成用組成物、緑色画素形成用組成物および青色画素形成用組成物を用いて、段落番号0273に記載の方法と同様の方法に従い、着色画素の抜け部に赤画素、緑色画素および青色画素をそれぞれ形成してカラーフィルタを製造した。赤色画素形成用組成物、緑色画素形成用組成物および青色画素形成用組成物は、以下に示す方法で製造したものを用いた。
【0294】
<<分散液R-1、分散液G-1、分散液B-1の製造>>
下記表に記載の原料を混合した混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.1mm径)を用いて3時間混合および分散した。次いで、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて圧力2000kg/cm2および流量500g/minの条件の下、分散処理を行なった。この分散処理を全10回繰り返して、分散液を得た。
【0295】
【0296】
上記表の略語で記載の原料は以下の通りである。
【0297】
(顔料)
P-5:C.I.ピグメントイエロー150
P-7:C.I.ピグメントイエロー139
P-12:C.I.ピグメントレッド254
P-13:C.I.ピグメントグリーン36
P-14:C.I.ピグメントブルー15:6
【0298】
(分散剤)
D-1:上述した分散剤D-1と同じ樹脂
D-3:上述した樹脂D-3と同じ樹脂
D-5:上述した分散剤D-5と同じ樹脂
【0299】
(溶剤)
S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S-2:シクロヘキサノン
S-3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
S-4:2-メトキシプロピルアセテート
【0300】
<<赤色画素形成用組成物の製造>>
分散液R-1の67.14質量部と、重合性化合物M-4の1.142質量部と、樹脂D-6の1.0119質量部と、光重合開始剤I-1の0.603質量部と、界面活性剤Su-2の0.0417質量部と、重合禁止剤In-1の0.0006質量部と、溶剤S-1の27.736質量部と、溶剤S-2の2.3248質量部とを混合して赤色画素形成用組成物を製造した。
【0301】
<<緑色画素形成用組成物の製造>>
分散液G-1の64.93質量部と、重合性化合物M-2の1.809質量部と、樹脂D-1の0.7364質量部と、光重合開始剤I-1の0.8質量部と、添加剤A-2の0.51質量部と、界面活性剤Su-2の0.0417質量部と、重合禁止剤In-1の0.0009質量部と、溶剤S-1の31.172質量部とを混合して緑色画素形成用組成物を製造した。
【0302】
<<青色画素形成用組成物の製造>>
分散液B-1の33.842質量部と、染料Dye-1の1.535質量部と、重合性化合物M-5の1.678質量部と、樹脂D-1の0.028質量部と、樹脂D-3の0.112質量部と、光重合開始剤I-6の0.839質量部と、添加剤A-1の0.707質量部と、界面活性剤Su-2の0.0063質量部と、重合禁止剤In-1の0.0008質量部と、溶剤S-1の0.922質量部と、溶剤S-2の60.33質量部とを混合して青色画素形成用組成物を製造した。
【0303】
赤色画素形成用組成物、緑色画素形成用組成物および青色画素形成用組成物の製造に用いた各素材の詳細は以下の通りである。
【0304】
・分散液R-1、分散液G-1、分散液B-1:上述した分散液R-1、分散液G-1、分散液B-1
・染料Dye-1:上述した染料Dye-1
・重合性化合物M-2:NKエステルA-TMMT(新中村化学工業(株)製)
・重合性化合物M-4:KAYARAD DPCA(日本化薬(株)製)
・重合性化合物M-5:トリメチロールプロパントリアクリレートのエチレンオキシド変性体
・樹脂D-1:上述した分散剤D-1と同じ樹脂
・樹脂D-3:上述した樹脂D-3と同じ樹脂
・樹脂D-6:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw=12000)
【化49】
・光重合開始剤I-1:上述した光重合開始剤I-1
・光重合開始剤I-6:下記構造の化合物
【化50】
・添加剤A-1:上述した添加剤A-1
・添加剤A-2:上述した添加剤A-2
・界面活性剤Su-2:上述した界面活性剤Su-2
・重合禁止剤In-1:p-メトキシフェノール
・溶剤S-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・溶剤S-2:シクロヘキサノン