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特許7389904フォトレジストでコーティングされた基板の注入中の予想線量変化を決定し修正するための技法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】フォトレジストでコーティングされた基板の注入中の予想線量変化を決定し修正するための技法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/317 20060101AFI20231122BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20231122BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20231122BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
H01J37/317 A
H01J37/147 D
H01J37/244
H01L21/265 T
H01L21/265 603B
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022532725
(86)(22)【出願日】2020-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 US2020061704
(87)【国際公開番号】W WO2021113099
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/944,811
(32)【優先日】2019-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/093,468
(32)【優先日】2020-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, エリック ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】ギャメル, ジョージ
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-546160(JP,A)
【文献】特開昭58-087746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0074909(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジスト層でコーティングされた基板が、前記基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、第1の注入レシピを使用して、前記第1の軸に沿ってイオンビームを走査することによって注入を実行すること、
基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、前記注入中の複数の事例において注入電流(I)を測定すること、
前記注入中の前記複数の事例において、前記注入電流に基づいて差分比の値を決定することであって、前記差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、前記基板が存在せず前記基板位置に第2の検出器が配置された較正中に、ベース圧力において前記第1の検出器によって測定された電流である、差分比の値を決定すること、
前記注入中の前記複数の事例について、それぞれ、前記差分比を、電流比(CR)の関数として(I-B)/Bを表す電流比曲線にマッピングすることにより、前記注入中の電流比の複数の値を決定することであって、前記電流比は、前記基板位置における電流に対する前記注入電流の比である、電流比の複数の値を決定すること、及び
決定された前記電流比の前記複数の値に基づいて、前記イオンビームの前記走査、前記基板の前記走査、又はそれらの組み合わせを調整することを含む、方法。
【請求項2】
前記電流比曲線は、
前記較正中の複数の事例について、前記基板を収容するエンドステーション内の所与の圧力範囲にわたり、前記第1の検出器と前記第2の検出器とのそれぞれにより、複数の電流値を測定すること
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる圧力の関数として、前記第2の検出器により測定された前記電流値に対する前記第1の検出器により測定された前記電流値の比を、前記電流比の複数の値として決定すること、及び
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる前記差分比の複数の値を決定すること、によって決定される、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の検出器は、閉ループ電流検出器である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整は、
前記注入中の前記複数の事例について決定された前記電流比の前記複数の値に基づいて、前記注入中の前記複数の事例における走査線量を決定すること、及び
決定された前記走査線量に基づいて、前記注入中の前記複数の事例に続く事例のための、前記基板及び/又は前記イオンビームの走査速度を調整すること、によって行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
注入レシピに従ってイオンビームを生成するためのイオン源、
前記イオンビームを走査するためのスキャナ、
前記イオンビームの電流を測定するための、基板位置の脇に配置された第1の検出器、
基板を走査するための基板ステージ、並びに
前記イオンビームを制御するためのコントローラを備える、イオン注入装置であって、前記コントローラは、
フォトレジスト層でコーティングされた基板が、前記基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、前記第1の軸に沿って前記イオンビームを走査することによって注入を実行すること、
前記第1の検出器を使用して、前記注入中の複数の事例において注入電流(I)を測定すること、
前記注入中の前記複数の事例において、前記注入電流に基づいて差分比の値を決定することであって、前記差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、前記基板が存在せず前記基板位置に第2の検出器が配置された較正中に、ベース圧力において前記第1の検出器によって測定された電流である、差分比の値を決定すること、
前記注入中の前記複数の事例について、それぞれ、前記差分比を、電流比(CR)の関数として(I-B)/Bを表す電流比曲線にマッピングすることにより、前記注入中の電流比の複数の値を決定することであって、前記電流比は、前記基板位置における電流に対する前記注入電流の比である、電流比の複数の値を決定すること、及び
決定された前記電流比の前記複数の値に基づいて、前記イオンビームの前記走査、前記基板の前記走査、又はそれらの組み合わせを調整すること、を実行するように構成されている、イオン注入装置。
【請求項6】
前記電流比曲線は、
前記較正中の複数の事例について、前記基板を収容するエンドステーション内の所与の圧力範囲にわたり、前記第1の検出器と前記第2の検出器とのそれぞれにより、複数の電流値を測定すること
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる圧力の関数として、前記第2の検出器により測定された前記電流値に対する前記第1の検出器により測定された前記電流値の比を、前記電流比の複数の値として決定すること、及び
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる前記差分比の複数の値を決定すること、によって決定される、請求項に記載のイオン注入装置。
【請求項7】
前記第1の検出器は、閉ループ電流検出器である、請求項5又は6に記載のイオン注入装置。
【請求項8】
前記調整は、
前記注入中の前記複数の事例について決定された前記電流比の前記複数の値に基づいて、前記注入中の前記複数の事例における走査線量を決定すること、及び
決定された前記走査線量に基づいて、前記注入中の前記複数の事例に続く事例のための、前記基板及び/又は前記イオンビームの走査速度を調整すること、によって行われる、請求項5から7のいずれか一項に記載のイオン注入装置。
【請求項9】
基板に注入する方法であって、
基板が前記基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、第1の注入レシピを使用して、前記第1の軸に沿ってイオンビームを走査することによって注入を実行すること、
基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、前記注入中に注入電流(I)を測定すること、
前記注入電流に基づいて差分比の値を決定することであって、前記差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、前記基板が存在せず前記基板位置に第2の検出器が配置された較正中に、ベース圧力において前記第1の検出器によって測定された電流である、差分比の値を決定すること、
前記差分比を、電流比(CR)の関数として(I-B)/Bを表す電流比曲線にマッピングすることにより、前記注入中の電流比の値を決定することであって、前記電流比は、前記基板位置における電流に対する前記注入電流の比である、電流比の値を決定すること、及び
決定された前記電流比の前記値に基づいて、前記イオンビームの前記走査、前記基板の前記走査、又はそれらの組み合わせを調整することを含む、方法。
【請求項10】
前記電流比曲線は、
前記較正中の複数の事例について、前記基板を収容するエンドステーション内の所与の圧力範囲にわたり、前記第1の検出器と前記第2の検出器とのそれぞれにより、複数の電流値を測定すること
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる圧力の関数として、前記第2の検出器により測定された前記電流値に対する前記第1の検出器により測定された前記電流値の比を、前記電流比の複数の値として決定すること、及び
前記較正中の前記複数の事例について、前記所与の圧力範囲にわたる前記差分比の複数の値を決定すること、によって決定される、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の検出器は、閉ループ電流検出器である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記調整は、
前記注入中の複数の事例について決定された前記電流比の複数の値に基づいて、前記注入中の前記複数の事例における走査線量を決定すること、及び
決定された前記走査線量に基づいて、前記注入中の前記複数の事例に続く事例のための、前記基板及び/又は前記イオンビームの走査速度を調整すること、によって行われる、請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、令和1年12月6日に出願された「フォトレジストでコーティングされた基板の注入中の予想線量変化を決定し修正するための技法」という名称の米国仮特許出願第62/944,811号の優先権を主張する。当該仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本実施形態は、処理装置及び方法に関し、特に、イオン注入プロセスにおいてビーム電流を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 今日、イオンで基板を処理するために、様々な種類の処理装置が採用されている。半導体基板のような基板を処理では、イオンを使用して、基板上の層又は特徴をエッチングすることができる。イオンはまた、基板上に層又は構造を堆積させるために、基板の中に核種を注入するために、又は基板をアモルファス化するためにも使用され得る。基板の処理を制御するために、基板の処理をモニタする技法も開発されている。
【0004】
[0004] 走査されるスポットビームを使用した基板のイオン注入のための、正確な線量制御を提供するために、ファラデーカップモニタのような電流モニタを基板に又はその近くに設けてよい。幾つかのイオン注入装置では、基板に提供されるイオン線量を推定するために、走査されるスポットビームのリアルタイムモニタリングが実行される。基板が垂直方向に走査されている間に、第1の方向に沿って前後に走査されるスポットビームを傍受するために、ファラデーカップのような電流センサを基板に隣接して設けてよい。リアルタイムモニタリングを使用して、例えば、電流センサで測定されたイオン線量が目標イオン線量と一致しないときに、スポットビームの走査を調整することができる。
【0005】
[0005] 場合によっては、注入中に適切なイオン線量が基板に送達されることを確実にするために、基板の近くに配置された電流モニタが電流測定を実行してよい。場合によっては、閉ループファラデー(CLF)モニタが、基板位置のすぐ上流の基板位置の外側に配置されてもよく、イオンビームを傍受して、イオンビームが所与の方向に沿って走査されるときに、集積電流を測定するために使用されてもよい。この集積電流は、集積されたプロファイル電流検出器(PF)電流に対する集積されたCLF電流の比を決定するために、基板面に配置されたPFのようなモニタによって測定される集積電流と比較されてよい。PF検出器は、例えば、基板の中心位置に対応する位置に配置されてよい。この決定された比は、異なる基板間に不均一なイオン線量を提供することにおける再現性を確実にし、基板の均一性を上げ/下げ制御するために、後に使用されてよい。
【0006】
[0006] イオン注入中に適切なビーム電流又はイオン線量が基板に送達されることを確実にするために、CLF構成要素は、注入プロセス中にビーム電流を測定してよく、一方、注入中にビーム電流を動的に調整するためにビームコントローラに結合されていてよい。したがって、注入中のCLFでの測定電流の変化は、信号をトリガして、ビームライン構成要素を調整し、基板に送達されているビーム電流を増減させることができる。例えば、走査されるスポットビームについて、測定されたCLF電流の変化は、基板の所与の部分に送達される実効ビーム電流を調整するために、基板の走査速度の変化をもたらし得る。
【0007】
[0007] 特に、基板の上流のビームライン構成要素の機能の変化は、イオン注入中に基板に送達されるビーム電流に影響を及ぼす可能性があるが、基板を取り囲む条件における注入中の局所的な変化は、概して考慮されず、したがって、ビーム電流を調整するために電流モニタを使用する既知の注入システムによっては修正されない。
【0008】
[0008] これら及び他の考慮事項に関して、目下の改良が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 一実施形態では、方法が提供される。該方法は、フォトレジスト層でコーティングされた基板が、基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、第1の注入レシピを使用して、第1の軸に沿ってイオンビームを走査することによって注入を実行すること、及び、基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、複数の事例において注入中に注入電流(I)を測定することを含んでよい。該方法は、複数の事例において、注入電流に基づいて差分比の値を決定することを含んでよい。差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、基板が存在しないベース圧力での較正中に、第1の検出器によって測定された電流である。該方法はまた、複数の事例について、それぞれ、差分比に基づいて注入中の電流比(CR)の複数の値を決定することも含んでよい。電流比は、較正中に、基板位置の上に配置された第2の検出器によって測定された電流に対する注入電流の比である。該方法は、電流比に基づいて、イオンビームの走査及び/又は基板の走査を調整することを含んでよい。
【0010】
[0010] 別の一実施形態では、イオン注入装置が、注入レシピに従ってイオンビームを生成するためのイオン源、イオンビームを走査するためのスキャナ、イオンビームの電流を測定するための第1の検出器及び第2の検出器、基板を走査するための基板ステージ、並びにイオンビームを制御するためのコントローラを含んでよい。コントローラは、フォトレジスト層でコーティングされた基板が、基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、第1の軸に沿ってイオンビームを走査することによって注入を実行すること、及び、基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、複数の事例において注入中に注入電流(I)を測定すること、を実行するように構成されてよい。コントローラは、複数の事例において、注入電流に基づいて差分比の値を決定するように構成されてよい。差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、基板が存在しないベース圧力での較正中に、第1の検出器によって測定された電流である。コントローラは、複数の事例について、それぞれ、差分比に基づいて注入中の電流比(CR)の複数の値を決定することも含んでよい。電流比は、較正中に、基板位置の上に配置された第2の検出器によって測定された電流に対する注入電流の比である。コントローラは、電流比に基づいて、イオンビームの走査、基板の走査、又はそれらの組み合わせを調整するように構成されてよい。
【0011】
[0011] 別の一実施形態では、基板に注入する方法が、基板が基板の上の第1の軸に垂直な第2の軸に沿って走査されている間に、第1の注入レシピを使用して、第1の軸に沿ってイオンビームを走査することによって注入を実行すること、及び、基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、注入中に注入電流(I)を測定することを含んでよい。該方法は、注入電流に基づいて差分比の値を決定することを含んでよい。差分比は、(I-B)/Bによって与えられ、ここで、Bは、ベース圧力での較正中に、第1の検出器によって測定される電流である。該方法は、差分比に基づいて注入中の電流比(CR)の値を決定することを更に含んでよい。電流比は、較正中に、基板位置の上に配置された第2の検出器によって測定された電流に対する注入電流の比である。該方法は更に、電流比に基づいて、イオンビームの走査、基板の走査、又はそれらの組み合わせを調整することを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】[0012] ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図1B】ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図1C】ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図1D】ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図1E】ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図1F】ガスランプ較正中のイオン注入装置内のガス圧力の関数としてのビーム電流モニタパラメータの変化を描く。
図2A】[0013] 図2A図2Cは、2つの異なる条件下でのガスランプ測定の結果を示す。
図2B図2Aの同じ測定プロトコルを使用した注入中のガス圧力挙動を示す。
図2C図2A図2Cは、2つの異なる条件下でのガスランプ測定の結果を示す。
図2D図2Cの同じ測定プロトコルを使用した注入中のガス圧力挙動を示す。
図3A】[0014] 図3A図3Bは、2つの異なる条件について、ベース圧力において注入前に測定されたベース電流に対する注入中の電流の変化を示す。
図3B図3A図3Bは、2つの異なる条件について、ベース圧力において注入前に測定されたベース電流に対する注入中の電流の変化を示す。
図4A】[0015] 図4A図4Bは、2つの異なる条件下で注入された基板についての水平及び垂直Rsライン走査を、参照基板と比較して示し、ガス圧効果による過剰線量注入を示す。
図4B図4A図4Bは、2つの異なる条件下で注入された基板についての水平及び垂直Rsライン走査を、参照基板と比較して示し、ガス圧効果による過剰線量注入を示す。
図5】[0016] 例示的なプロセスフローを描く。
図6】[0017] 本開示の様々な実施形態による、ビームラインイオン注入装置のブロック形態の上面図を描く。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0018] 本明細書ではこれより、一部の実施形態を示している添付図面を参照しつつ、実施形態についてより網羅的に説明していく。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化されてよく、本書に明示している実施形態に限定されると解釈すべきではない。これらの実施形態が提供されることにより、この開示は網羅的かつ完全なものとなり、当業者に主題の範囲が十分に伝わることになる。図面では、全体を通じて、類似の番号が類似の要素を指し示している。
【0014】
[0019] 本明細書で説明される実施形態は、基板の制御されたイオン注入を生成するための新規な処理装置及び方法を提供する。
【0015】
[0020] 様々な実施形態では、基板の注入中に誘起され得るCLF電流及びCLF電流/PF電流のような比を含むビーム電流パラメータの変化を考慮する技法が開示される。この場合、圧力変化が、基板の近くで生じ得る。本明細書で開示されるように、フォトレジスト層を含む基板の注入によって誘起される圧力変化が、CLF電流及び他のビーム電流パラメータに体系的に影響を及ぼし得ることを発見した実験が行われた。本実施形態によるこれらの効果を考慮することによって、基板に送達されるビーム電流をより正確に制御することができる。
【0016】
[0021] 図6は、本開示の様々な実施形態による、イオン注入装置100として示されている、ビームラインイオン注入装置のブロック形態の上面図を描いている。イオン注入装置100は、イオンビーム104を生成するように構成されたイオン源102を含む。イオンビーム104は、X方向のような方向に沿って走査されるスポットビームとして提供されてよい。本明細書で使用される規約では、Z方向が、イオンビーム104の中心光線軌道に平行な軸の方向を指す。したがって、Z方向の絶対方向は、X方向と同様に、図示されているように、イオン注入装置100内の種々のポイントで変化し得る。その場合、X方向は、Z方向と垂直である。イオンビーム104は、分析磁石106、質量分解スリット108、及びコリメータ112を通って移動し、その後で、基板ステージ114上に配置された基板116に衝撃を与えてよい。基板ステージ114は、幾つかの実施形態では、少なくともY方向に沿って基板116を走査するように構成されてよい。図6で示されている実施例では、イオン注入装置100が、ビームスキャナ110を含む。イオンビーム104が、スポットビームとして提供されるときに、ビームスキャナ110は、X方向に沿ってイオンビーム104を走査し、走査されるイオンビームを生成し、また、X方向に沿って基板において走査されるイオンビームを生成し得る。結果として走査されるスポットビームの幅は、基板116の幅Wと同程度であってよい。
【0017】
[0022] 様々な実施形態では、イオン注入装置100が、1kV~300kVの電圧範囲などの「低」エネルギー又は「中」エネルギーのイオン注入のためのイオンビームを送達するように構成されてよく、これは、一価イオン(singly charged ion)に対する1keV~300keVの注入エネルギー範囲に対応する。後述するように、基板116に提供されるイオンビームの走査は、所与の走査されるイオンビームについて行われる電流測定に応じて調整されてよい。
【0018】
[0023] イオン注入装置100は、基板116に提供されるビーム電流をモニタリングするための閉ループ電流検出器などのような電流検出器118、特に閉ループファラデー電流検出器(CLF)を更に含む。電流検出器118は、基板領域119の外側のイオンビームを傍受するように配置され、イオンビーム104の走査中にイオンビーム104の測定された集積電流を記録するように構成されてよい。
【0019】
[0024] イオン注入装置100はまた、走査調整構成要素120も含む。走査調整構成要素120は、ビームスキャナ110ならびに電流検出器118に結合されてよい。走査調整構成要素120は、特に測定が実行され得る場合に、イオンビーム104の走査を調整するために、1以上の構成要素に結合され得る。走査調整構成要素120は、様々な入力に基づいてイオンビーム104の走査を調整するための調整信号を生成するための論理を含んでよい。場合によっては、走査調整構成要素120の論理が、ハードウェア、ファームウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで実装されてよい。幾つかの実施例では、走査調整構成要素120が、イオンビーム104の走査を調整するための指示命令を実行するために、ソフトウェアに結合されるコントローラ120‐A及びメモリ120‐Bなどのような回路を含んでよい。実施形態は、この文脈に限定されない。
【0020】
[0025] 本発明者らは、特定の構成の下で、イオン注入がフォトレジストでコーティングされた基板の中に実行されるときに、CLFモニタから得られる電流読み取り値が注入を調整するために使用される閉ループ制御の下で、実際の注入されるイオン線量が予想されるイオン線量から逸脱することを発見した。フォトレジストでコーティングされた基板は、フォトレジスト層で部分的に、大部分が、又は全体が覆われてよい。その場合、フォトレジスト層は、場合によっては注入マスクとして作用してよい。特定の理論に限定されるものではないが、フォトレジストでの注入中に予想される注入線量からの実際の注入線量の偏差は、基板116付近及び電流検出器118付近の周囲の局所的な圧力の変動によるものであろう。
【0021】
[0026] 本開示の様々な実施形態によれば、フォトレジストでの注入に起因する、基板エンドステーションにおけるような圧力の変化は、以下の図面に関して説明されるように決定され調整される。周囲圧力の関数として検出される電流の変化を記録に残すために、一連の実験が行われてきた。特に、基板ステーション内の圧力は、フォトレジストでコーティングされたウエハ(基板)の注入中に、バックグラウンド圧力から10-5Torr~5×10-5Torr程度の範囲の圧力まで上昇することが観察されている。幾つかの実施形態によれば、圧力による検出される電流の変化を迅速に決定するために、ガス(ウエハ冷却に使用される)が、基板が存在しない基板プラテンの中に意図的に抽気される。レシピが設定された後で、ウエハ冷却圧力は、基板プラテン上にウエハがない状態で、基板注入手順中に遭遇するピーク値に匹敵する値にエンドステーション圧力が達するまで(上述のようにフォトレジストが存在する状態で)、場合によっては約1秒で急速に上昇(ramped up)する。次いで、圧力を下げ戻す。エンドステーション内の圧力が上昇するのと同時に、エンドステーション内でイオンビームが走査され、CLF電流とプロファイラ(PF)電流が記録される(PFモニタをウエハ中心位置に配置した状態で)。したがって、CLF電流/PF電流の比を含む電流値の変化は、CLF電流によって比がどのように変化するかを示す。
【0022】
[0027] 図1A図1Fを参照すると、様々なシナリオ下で、周囲圧力の関数としてビーム電流モニタパラメータの変化が示されている。図中のX軸上で示されている圧力は、基板を収容するエンドステーションで測定される。図1A及び図1Cは、ガス圧の上昇中のCLF電流及びプロファイラ電流対エンドステーション圧力を示している。図1Aでは、データが第1の注入装置の構成から取得され、図1Cでは、データが第2の注入装置の構成から取得されている。これらの構成のいずれにおいても、ビームスキャナ110におけるような上流位置では、注入装置の中にガスが抽気されない。図1B及び図1Dは、それぞれ、図1A及び図1Cの構成について、CLF/PF電流比(つまり、プロファイラ検出器をウエハ中心位置に配置した状態で、プロファイラ(PF)電流によって割られたCLF電流を意味する)の変化を示している。
【0023】
[0028] 明らかなように、検出された電流及びCLF/PF電流の比は、フォトレジストでコーティングされた基板の注入中に誘起されるその圧力の圧力特性の範囲にわたって、ガス圧力によって変化する。更に、電流及びCLF/PF電流の比の変化は、注入装置1の構成よりも注入装置2の方が大きい。CLF/PF電流の比は、注入装置2では数パーセント変化するが、注入装置1では<0.5%である。図1E及び図1Fは、注入装置2について、それぞれ検出された電流及び電流比を示している。その場合、ガスは、スキャナチャンバ内のエンドステーション(ビームスキャナ110参照)の上流で1sccmの割合で抽気される。走査チャンバの中に抽気を加えることにより、注入装置2におけるCLF/PF電流比の変化が<0.5%に低減される。
【0024】
[0029] 要するに、以上の結果は、検出された電流及びCLF/PF電流の比が、エンドステーション圧力、注入装置の構成、及び上流のガス抽気の存在に対する強い依存性を持つことを例証している。特に、走査チャンバ内などの上流でガス抽気が実行される場合では、基板における注入核種のエネルギー汚染が増加し得る。したがって、エンドステーションの上流でガス抽気を使用しないことは、しばしば、エネルギー汚染を低減させるのに有用である。しかし、図1Dで示されているように、実際の「ウエハ上の」電流は、フォトレジストでコーティングされたウエハの注入中に予想されるピークガス放出圧力(約10μTorr)において、検出されたCLF電流が予測するよりも約4%増加する。これらの結果は、ガス抽気を使用しない注入装置2におけるフォトレジストでコーティングされた基板の中への注入手順は、スキャナチャンバの中への1sccm抽気を使用して同じ基板の中に実行される注入手順に対して、基板に約4%の過剰線量を与えるやり方で実行されるべきであることを示唆する。
【0025】
[0030] 図2A及び図2Cは、2つの異なるガス圧力モニタについて示されている、上述のように、抽気なし及び1sccm抽気の条件下での注入装置2についてのガスランプ(gas ramp)較正測定の結果を示している。以下の説明で論じるように、制御されたガスランプ実験を使用して、いわゆる差分比及び/又は電流比を含む、様々な実体を表す曲線を含む様々な較正曲線を確立することができる。図2B及び図2Dは、それぞれ、図2A及び図2Cの同じ測定プロトコルを使用した注入中のガス圧力挙動を示している。これらの結果は、注入装置2では、上流の圧力対エンドステーション圧力(IG3、X軸上)の変化が、ガスランプ較正と抽気なし条件及び1sccm抽気についての実際の注入試験とについて同様であったことを示している。
【0026】
[0031] 図3Aは、フォトレジストでコーティングされたウエハの存在によって生成される測定される注入電流偏差を、ウエハが存在しない場合にエンドステーション内の基板位置の中に向けられたイオンビームからどのような電流値が予測され得るか、からプロットしたものである。具体的には、Y軸は、差分比と呼ばれる比をプロットし、この差分比は、所与の圧力で第1の検出器によって測定された瞬時電流(I)から、ガスランプが開始する前のベース圧力で第1の検出器によって測定されたベース電流(B)を引いた両者間の差を、ベース電流で割ったものとして規定される。すなわち、差分比は、(I-B)/Bで表すことができる。この実施例では、第1の検出器が、閉ループファラデー(CLF)検出器である。したがって、注入エンドステーション内の圧力は、ベース圧力において、より低い2×10-6Torrの範囲であってよい。図3Aのデータは、図1Cに基づいており、上述されたように、抽気ガスがエンドステーションの上流に導入されない場合を表している。注入電流は、基板がフォトレジストでコーティングされた基板プラテン上にロードされた後で、基板の脇に配置されたCLF検出器によって基板の注入中に測定される。このように、注入中、フォトレジストのガス放出により、圧力の増加が生じ得る。図3Aで示されているデータでは、イオンビームが基板を横切って走査され、イオンビームが基板上のフォトレジストをエンドステーションにガス放出させるときに、圧力の変動を生成する。図3Aのデータは、ただ1つのウエハ(基板)の注入中に取られたデータを表している。一般に、イオンビームがウエハを横切って走査されるとき、エンドステーション内の圧力は、ビーム位置と共に変動し、ビームがウエハの縁部に向かって最も遠くに配置されたときの2×10-5Torr未満程度の低い値から、ビーム位置がウエハの中心にあるときの約1×10-5Torr程度の高い値まで増加する。全てのデータ点は、エンドステーション内の瞬間的に記録された圧力から導出されたデータ、及びCLFモニタによって記録された瞬間的に測定されたビーム電流を表している。したがって、図示されているデータは、ウエハを横切るイオンビームの複数回の走査にわたり取られた複数回の読み取り値を表している。
【0027】
[0032] 図3Aで示されているように、この実施例では、(I-B)/B比は、最低圧力から最高圧力まで約0.5%単調に増加し、これは、測定される注入電流が予想され得るよりも約0.5%高いことを意味している。図3Bでは、差分比((I-B)/B比)が、電流比(この実施例では、CLF電流/プロファイル電流の比)の変化の関数としてプロットされている。その場合、負の%は、ベース圧力における比に対するCLF電流/プロファイル電流の比の減少を示している。
【0028】
[0033] したがって、図3A及び図3Bの傾向に基づいて、フォトレジストでコーティングされた基板をイオンビームに曝露することによってCLF電流が変化するときに、ベース圧力からの圧力変化は、図3Aから決定することができ、ベース比からのCLF/プロファイル電流の比の%変化は、図3Bから決定することができる。圧力変化はまた、中立的効果を修正するために使用されてもよく、CLF電流/プロファイル電流の比の変化を修正するためのプログラム内の表で利用可能であってもよいことに留意されたい。
【0029】
[0034] したがって、フォトレジストでコーティングされたウエハなどの基板が、走査イオンビームなどのイオンビームに曝露されるとき、注入電流の変化は、CLFなどのセンサによってリアルタイムで測定されてよい。注入電流のこの変化は、エンドステーションでの圧力変化、及びベース値に対するCLF電流/プロファイル電流の比の変化を決定するために使用される。したがって、ウエハ上の電流は知られることになる。基板上に衝突する核種の中性成分は、注入電流の変化に基づいて、圧力変化から決定されてよい。
【0030】
[0035] 図4A及び図4Bは、2つの異なる条件下で注入された基板の水平及び垂直抵抗(Rs)ライン走査を、参照基板と比較して示し、ガス圧効果による過剰線量注入を示している。図4Aでは、上側の2つの曲線が、ベア注入基板について、基板上の位置の関数として示されている、水平及び垂直抵抗値である。この条件では、抵抗値が比較的高い。図4Aでは、下側の2つの線が、フォトレジストを有する注入基板について、スキャナチャンバ内の上流では抽気が行われない、水平及び垂直抵抗値である。図示されているように、抵抗値ははるかに低く、ベア基板によって表されているように、基板が目標線量に対して約5%過剰線量を与えられている。1sccmでのガス抽気が注入中に行われる図4Bでは、ベア基板のRs値(上側の2つの曲線)は、予想通り、図1Aと同じであり、一方、フォトレジストでコーティングされた基板のRs値(下側の2つの曲線)は、図4Aの抽気がない場合と比較して、いくらか低く、より小さいイオン過剰線量示している。例えば、図1Dのデータで反映されているように、2つの場合の間の過剰線量の差が、ガスランプ較正データによって予測された。
【0031】
[0036] 要約すると、上記の結果は、フォトレジストが存在する状態で注入される基板へ送達される線量が、エンドステーション内のガス圧力の関数としてCLF電流/PF電流の比を決定するガスランプ較正から導出されたCLF電流/PF電流の比データを使用する、送達される線量の予測と一致することを実証する。これらの結果は、ガスランプ試験較正からのCLF電流/PF電流の比データが、フォトレジストでコーティングされた基板に注入される送達されるイオン線量をより正確に制御することを示している。言い換えれば、ターゲット電流からの注入電流の偏差の関数としてのCLF電流/PFの比の決定された値を使用して、より正確な線量をウエハに送達することができる。別の言い方をすると、ベース圧力(ベース電流)における設定電流に対するCLF電流の測定された%変化を使用して、CLF電流/PF電流の比の変化を予測することができる。したがって、このアプローチは、方程式から周囲圧力を取り出すので、修正はイオンゲージの精度に依存しない。
【0032】
[0037] したがって、本開示の実施形態によれば、フォトレジストでコーティングされた一連の少なくとも1つのウエハ(又は基板)の注入中に、各ウエハに対する注入プロセスの開始時にCLFモニタなどによって電流測定を行うことができ、電流測定は、以前に測定された電流比(CLF電流/PF電流の比)に基づいて実際の注入電流に変換される。
【0033】
[0038] したがって、本実施形態による所与のイオン注入レシピに対して線量の補償を実行するために、ただ1つの修正係数、すなわち「線量補償」係数を使用することができ、この係数はチューニング条件とは無関係である。この係数は、電荷交換相互作用に起因してイオンから生成される中性物質の効果と同様に、電流比変化(CLF_current/Profiler_current)の正味の効果を考慮に入れる。変化に対する中性物質の寄与は設定条件に依存せず、一方、電流比の変化は設定条件に依存する。したがって、実際には、線量補償係数は、チューニング条件の関数として変化し得る。本実施形態は、所与のチューニング条件について圧力による電流比の変化を測定することによって、正味の線量補償係数の可変部分をより正確に決定する。
【0034】
[0039] 図5は、本開示の実施形態によるプロセスフロー500を示している。ブロック510において、制御されたガスランプ較正プロセスが実行される。その場合、ガスランプ較正中に、電流比の複数の値が測定される。電流比は、基板の脇に位置付けられた第1の検出器によって測定される電流と、基板位置の上に位置付けられた第2の検出器によって測定される電流と、の間の比を表している。一実施例において、電流比は、閉ループファラデー検出器によって測定される電流と、プロファイル検出器によって測定される電流との比を表してよい。複数の測定は、基板を収容するエンドステーション内の所与の圧力範囲にわたる圧力の関数として行われる。所与の圧力範囲は、イオンビームが、フォトレジストでコーティングされた基板の上で走査されるときに生成される圧力範囲をカバーしてよい。
【0035】
[0040] ブロック520において、ガスランプ較正中に、ブロック510の動作の所与の圧力範囲にわたり差分比の複数の値が計算される。ここで、差分比は、所与の圧力における第1の検出器によって測定された瞬間的な電流(I)から、ガスランプが開始する前のベース圧力における第1の検出器によって測定されたベース電流(B)を引いた両者間の差を、ベース電流で割ったものとして規定される。言い方を換えると、差分比は、(I-B)/Bとして表されてよい。
【0036】
[0041] 本開示の様々な実施形態によれば、ブロック510及び520の動作は、所与の複数の基板が所与のイオン注入レシピに従って注入される前に実行されてもよく、結果は、所与のレシピについての圧力による差分比(I-B)/Bの変化を表すために、表、グラフィック、関数形式で捕捉されてもよい。
【0037】
[0042] ブロック530において、ブロック510及び520を生成するために使用される所与の注入レシピなどについて、電流比に対する差分比の変化が決定される。換言すれば、所与の数の圧力値について、電流比が決定されてよい。特に、ブロック520及び530のガスランプ較正中の各圧力値について、電流比の測定値が決定され、差分比が決定され、その結果、各測定される電流比の値は差分比の値に対応する。異なるガス圧力におけるこれらの異なる電流比及び差分比の値は、例えば、電流比に対する差分比の依存性又は変化を表すために、表、関数、又はグラフとして保存されてよい。
【0038】
[0043] ブロック540において、イオンビームが、フォトレジスト層でコーティングされた基板の上を走査される。イオンビームは、デカルト座標系のx軸のような所与の軸にわたり走査されてよい。同時に、基板は、第1の軸に垂直な第2の軸、例えばY軸に沿って走査されてよい。イオンビームは、ブロック510及び520のガスランプ較正中に採用される注入レシピを使用して走査されてよい。幾つかの実施例では、イオンビームが、幾つかの非限定的な実施形態によれば、0.5kHz~5kHzなどの所与の速度で前後に走査されてよい。同時に、基板を走査速度で走査することができ、ここで、イオンビームの下での一端から反対側の他端への基板の走査は、数秒の十分の一から数秒の持続時間を必要とし得る。したがって、イオンビームは、基板が一端から反対側の他端まで走査される持続時間中に、第1の方向に沿って数百回前後に走査されてよい。したがって、円形基板などの基板の走査中に、フォトレジストからのガス放出は、基板が、基板の縁部だけがイオンビームの下で走査される位置から、基板の最も広い部分がイオンビームの下で走査される位置まで移動するにつれて増加することがある。したがって、ガス圧力は、基板の走査中に、一方の端から他方の端まで変化し得る。
【0039】
[0044] 種々の実施形態によれば、ブロック540及びそれに続くブロックの基板は、ブロック510及び520で情報を生成するために使用されるレシピに従って注入される複数の基板のうちの1つの基板であってよい。
【0040】
[0045] ブロック550において、基板の上のイオンビームの走査中に、基板位置の脇に配置された第1の検出器を使用して、注入電流が測定される。注入電流は、イオンビームの下での基板の個々の走査中に、数十回又は数百回などの多数の事例について、瞬時に測定することができる。言い換えれば、第2の軸に垂直な第1の軸に沿って走査しているイオンビームの下で第2の軸に沿って基板を走査するための、例えば1秒の持続時間中に、注入電流の測定は、数ミリ秒毎に第1の検出器によって実行されてよい。
【0041】
[0046] ブロック560において、基板及びイオンビームの走査中に第1の検出器によって測定された注入電流(I)に基づいて、差分比の値が決定される。差分比の値は、幾つかの非限定的な例では、ブロック550の各注入電流の測定値などの、幾つかの注入電流の値について決定され得る。差分比の値は、ブロック520のベース電流の値に基づいて決定することができる。この動作では、差分比の計算が、一般にブロック520の較正動作と同様に進行するが、ブロック560では、差分比の値が、実際の注入中に第1の検出器によって測定された瞬間注入電流(I)に基づいており、ここで、Bの値はブロック520で説明された通りであり、ベース電流(B)は、基板がイオンビーム下で走査される前に、注入の開始時に測定されたベース電流を表している。
【0042】
[0047] ブロック570では、イオンビーム及び基板の走査中の複数の事例において、計算された差分比を、ブロック530で決定されるような差分比/電流比の曲線、若しくは関数、又は表にマッピングすることによって、第1の検出器と第2の検出器との間の電流比(CR)が決定される。電流比は、第1の検出器によって収集された各注入電流の測定値などについて、所与の走査中の複数の事例について決定することができる。
【0043】
[0048] ブロック580では、ブロック570において複数の事例で測定された電流比に基づいて修正された電流が計算される。次いで、ブロック570において決定された電流比を使用して修正された電流に基づいて、イオンビームの走査が調整される。例えば、CRの複数の値が、基板の走査中に複数の事例にわたり決定されてよい。CRのこれらの値は、最初の走査中に、測定されたイオン電流(基板の脇に配置された第1の検出器によって測定された)が基板上の電流からどれくらい離れているかの決定を容易にする。より具体的には、所与の走査(又は複数の走査)について、基板上のイオン線量(走査線量)は、基板上の電流に走査時間を乗じたものに比例する。その場合、基板上の電流は、第1の検出器によって測定された電流(I)に電流比を乗じたものに基づいて計算される。知られているアプローチにおけるように、所与の走査についての走査速度は、所与の走査の前に、一定数の以前の走査から記録された平均ウエハ上電流に基づいてもよい。任意の所与の走査について、ウエハ上電流=(その走査についてのCLF電流)/(そのCLF電流についてのCR)となる。
【0044】
[0049] 要約すると、本実施形態は、条件を調整するためにただ1つの修正係数を使用するという第1の利点を含む、注入条件を修正するための様々な利点を提供する。時間による圧力ドリフトの測定が、線量補償係数において間接的に考慮されるので、イオン線量の修正が、イオンゲージの精度に依存しない、という更なる利点が提供される。
【0045】
[0050]本開示は、本明細書に記載された特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。上述したもの以外の本開示の様々な実施形態及び本開示の変形例は、本明細書に説明したものと同様に、上述の説明及び添付図面から、当業者には明らかである。したがって、そのような他の実施形態及び変形例は、本開示の範囲内に入ると意図されている。更に、本開示は、特定の目的のための特定の環境における特定の実装の文脈で説明したが、当業者は、有用性がそれに限定されず、本開示は、任意の数の目的のために任意の数の環境において有益に実装され得ることを認識するであろう。したがって、以下で説明される特許請求の範囲は、本明細書で説明される本開示の全ての範囲及び主旨を考慮して解釈されるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6