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特許7389911感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-21
(45)【発行日】2023-11-30
(54)【発明の名称】感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20231122BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20231122BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231122BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/038 601
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022540104
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2021025206
(87)【国際公開番号】W WO2022024673
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020128367
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 文博
(72)【発明者】
【氏名】冨賀 敬充
(72)【発明者】
【氏名】楜澤 佑真
(72)【発明者】
【氏名】田中 匠
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043684(WO,A1)
【文献】特開2010-039146(JP,A)
【文献】特開2002-196497(JP,A)
【文献】特開2015-057638(JP,A)
【文献】特開2016-133743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/039
G03F 7/038
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂(A)中の前記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、前記樹脂(B)中の前記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である|G-G|が5モル%以上20モル%以下であり、
前記樹脂(A)中の前記酸分解性基と、前記樹脂(B)中の前記酸分解性基とは同一の構造を有し、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、前記樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、前記樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比であるS/Sが10/90~90/10であり、
前記樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、前記樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である|Mw-Mw|が1000以上5000以下であり、
前記Mwを前記樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である前記樹脂(A)の分子量分布Mw/Mnと、前記Mwを前記樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である前記樹脂(B)の分子量分布Mw/Mnとの差の絶対値である|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.05以上であり、
前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)が含む前記酸分解性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(Aa2)で表される、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化1】

一般式(Aa2)中、R 101 は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 102 は酸の作用により脱離する基を表す。
【請求項2】
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
前記樹脂(A)中の前記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G と、前記樹脂(B)中の前記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G との差の絶対値である|G -G |が5モル%以上20モル%以下であり、
前記樹脂(A)中の前記酸分解性基と、前記樹脂(B)中の前記酸分解性基とは同一の構造を有し、
前記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、前記樹脂(A)の質量基準の含有率S と、前記樹脂(B)の質量基準の含有率S との比であるS /S が10/90~90/10であり、
前記樹脂(A)の重量平均分子量Mw と、前記樹脂(B)の重量平均分子量Mw との差の絶対値である|Mw -Mw |が100以上5000以下であり、
前記Mw を前記樹脂(A)の数平均分子量Mn で除した値である前記樹脂(A)の分子量分布Mw /Mn と、前記Mw を前記樹脂(B)の数平均分子量Mn で除した値である前記樹脂(B)の分子量分布Mw /Mn との差の絶対値である|Mw /Mn -Mw /Mn |が0.05以上であり、
前記樹脂(A)のZ平均分子量Mz と、前記樹脂(B)のZ平均分子量Mz との差の絶対値である|Mz -Mz |が1000以上であり、
前記樹脂(A)及び前記樹脂(B)が含む前記酸分解性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(Aa2)で表される、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化2】

一般式(Aa2)中、R 101 は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 102 は酸の作用により脱離する基を表す。
【請求項3】
前記S/Sが40/60~60/40である、請求項1又は2に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項4】
25℃における粘度が10~100mPa・sである、請求項1~3のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項5】
前記|G-G|が10モル%以上20モル%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項6】
前記Gが30モル%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項7】
前記|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.10以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項8】
前記|Mw-Mw|が1000以上5000以下である、請求項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂(A)のZ平均分子量Mzと、前記樹脂(B)のZ平均分子量Mzとの差の絶対値である|Mz-Mz|が100以上である、請求項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項10】
前記|Mz-Mz|が1000以上である、請求項9に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を露光して、露光されたレジスト膜を得る工程と、
現像液を用いて、前記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
【請求項13】
前記露光の光源がKrFである、請求項12に記載のパターン形成方法。
【請求項14】
前記基板上に形成された前記レジスト膜の膜厚が500nm以上である、請求項12又は13に記載のパターン形成方法。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、レジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit、集積回路)及びLSI(Large Scale Integrated circuit、大規模集積回路)等の半導体デバイスの製造プロセスにおいては、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。
リソグラフィーの方法としては、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物によりレジスト膜を形成した後、得られたレジスト膜を露光して、その後、現像することによりレジストパターンを形成する方法が挙げられる。
感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物としては、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(酸分解性樹脂)を含有するものが知られている。
【0003】
近年では厚膜レジスト膜を用いたパターン形成に適した感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物も提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂を2種併用したレジスト組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/078031号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には感度が良好で、優れた断面形状を有するパターンを形成できる感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物が開示されているが、本発明者らの検討により、ウェハ面内のパターン寸法の均一性を示すCDU(Critical Demension Uniformity)について、更なる向上の余地があることが分かった。
【0006】
本発明の課題は、CDUに優れるパターンを形成することが可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
[1]
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G との差の絶対値である|G -G |が5モル%以上20モル%以下であり、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基とは同一の構造を有し、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、上記樹脂(A)の質量基準の含有率S と、上記樹脂(B)の質量基準の含有率S との比であるS /S が10/90~90/10であり、
上記樹脂(A)の重量平均分子量Mw と、上記樹脂(B)の重量平均分子量Mw との差の絶対値である|Mw -Mw |が1000以上5000以下であり、
上記Mw を上記樹脂(A)の数平均分子量Mn で除した値である上記樹脂(A)の分子量分布Mw /Mn と、上記Mw を上記樹脂(B)の数平均分子量Mn で除した値である上記樹脂(B)の分子量分布Mw /Mn との差の絶対値である|Mw /Mn -Mw /Mn |が0.05以上であり、
上記樹脂(A)及び上記樹脂(B)が含む上記酸分解性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(Aa2)で表される、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化101】

一般式(Aa2)中、R 101 は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 102 は酸の作用により脱離する基を表す。
[2]
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G との差の絶対値である|G -G |が5モル%以上20モル%以下であり、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基とは同一の構造を有し、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、上記樹脂(A)の質量基準の含有率S と、上記樹脂(B)の質量基準の含有率S との比であるS /S が10/90~90/10であり、
上記樹脂(A)の重量平均分子量Mw と、上記樹脂(B)の重量平均分子量Mw との差の絶対値である|Mw -Mw |が100以上5000以下であり、
上記Mw を上記樹脂(A)の数平均分子量Mn で除した値である上記樹脂(A)の分子量分布Mw /Mn と、上記Mw を上記樹脂(B)の数平均分子量Mn で除した値である上記樹脂(B)の分子量分布Mw /Mn との差の絶対値である|Mw /Mn -Mw /Mn |が0.05以上であり、
上記樹脂(A)のZ平均分子量Mz と、上記樹脂(B)のZ平均分子量Mz との差の絶対値である|Mz -Mz |が1000以上であり、
上記樹脂(A)及び上記樹脂(B)が含む上記酸分解性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(Aa2)で表される、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【化102】

一般式(Aa2)中、R 101 は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R 102 は酸の作用により脱離する基を表す。
[3]
上記S /S が40/60~60/40である、[1]又は[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[4]
25℃における粘度が10~100mPa・sである、[1]~[3]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[5]
上記|G -G |が10モル%以上20モル%以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[6]
上記G が30モル%以下である、[1]~[5]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[7]
上記|Mw /Mn -Mw /Mn |が0.10以上である、[1]~[6]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[8]
上記|Mw -Mw |が1000以上5000以下である、[2]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[9]
上記樹脂(A)のZ平均分子量Mz と、上記樹脂(B)のZ平均分子量Mz との差の絶対値である|Mz -Mz |が100以上である、[1]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[10]
上記|Mz -Mz |が1000以上である、[9]に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
[11]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
[12]
[1]~[10]のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光して、露光されたレジスト膜を得る工程と、
現像液を用いて、上記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
[13]
上記露光の光源がKrFである、[12]に記載のパターン形成方法。
[14]
上記基板上に形成された上記レジスト膜の膜厚が500nm以上である、[12]又は[13]に記載のパターン形成方法。
[15]
[12]~[14]のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
本発明は、上記[1]~[15]に関するものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
<1>
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である|G-G|が5モル%以上20モル%以下であり、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基とは同一の構造を有し、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、上記樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、上記樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比であるS/Sが10/90~90/10であり、
上記樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、上記樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である|Mw-Mw|が100以上5000以下であり、
上記Mwを上記樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である上記樹脂(A)の分子量分布Mw/Mnと、上記Mwを上記樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である上記樹脂(B)の分子量分布Mw/Mnとの差の絶対値である|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.05以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<2>
上記樹脂(A)及び上記樹脂(B)が含む上記酸分解性基を有する繰り返し単位が、下記一般式(Aa2)で表される、<1>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(Aa2)中、R101は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R102は酸の作用により脱離する基を表す。
<3>
上記S/Sが40/60~60/40である、<1>又は<2>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<4>
25℃における粘度が10~100mPa・sである、<1>~<3>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<5>
上記|G-G|が10モル%以上20モル%以下である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<6>
上記Gが30モル%以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<7>
上記|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.10以上である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<8>
上記|Mw-Mw|が1000以上5000以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<9>
上記樹脂(A)のZ平均分子量Mzと、上記樹脂(B)のZ平均分子量Mzとの差の絶対値である|Mz-Mz|が100以上である、<1>~<8>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<10>
上記|Mz-Mz|が1000以上である、<9>に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物。
<11>
<1>~<10>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成されたレジスト膜。
<12>
<1>~<10>のいずれか1項に記載の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光して、露光されたレジスト膜を得る工程と、
現像液を用いて、上記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有するパターン形成方法。
<13>
上記露光の光源がKrFである、<12>に記載のパターン形成方法。
<14>
上記基板上に形成された上記レジスト膜の膜厚が500nm以上である、<12>又は<13>に記載のパターン形成方法。
<15>
<12>~<14>のいずれか1項に記載のパターン形成方法を含む電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、CDUに優れるパターンを形成することが可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
【0013】
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換又は無置換を記していない表記は、置換基を有していない基と共に置換基を有する基をも含む。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも含む。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0015】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び、置換基の数は特に限定されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上であってもよい。置換基の例としては水素原子を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、例えば、以下の置換基Tから選択することができる。
【0016】
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基、ニトロ基;ホルミル基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本明細書において表記される二価の基の結合方向は、特に断らない限り制限されない。例えば、「L-M-N」なる一般式で表される化合物中の、Mが-OCO-C(CN)=CH-である場合、L側に結合している位置を*1、N側に結合している位置を*2とすると、Mは、*1-OCO-C(CN)=CH-*2であってもよく、*1-CH=C(CN)-COO-*2であってもよい。
【0018】
本明細書における、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを含む総称であり、「アクリル及びメタクリルの少なくとも1種」を意味する。同様に「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸を含む総称であり、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種」を意味する。
【0019】
本明細書において、樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)、及び分子量分布(分散度とも記載する)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー株式会社製HLC-8120GPC)によるGPC測定(溶剤:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー株式会社製TSK gel Multipore HXL-M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0020】
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による描画も含む。
【0021】
〔感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物〕
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」とも呼ぶ。)は、
酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)と、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)とを含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物であって、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である|G-G|が5モル%以上20モル%以下であり、
上記樹脂(A)中の上記酸分解性基と、上記樹脂(B)中の上記酸分解性基とは同一の構造を有し、
上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、上記樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、上記樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比であるS/Sが10/90~90/10であり、
上記樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、上記樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である|Mw-Mw|が100以上5000以下であり、
上記Mwを上記樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である上記樹脂(A)の分子量分布Mw/Mnと、上記Mwを上記樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である上記樹脂(B)の分子量分布Mw/Mnとの差の絶対値である|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.05以上である、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物である。
【0022】
本発明の組成物によりCDUに優れるパターンを形成することができる理由は完全には明らかになっていないが、本発明者らは以下のように推測している。同種の酸分解性樹脂は凝集しやすいため、酸分解性樹脂を1種のみ含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて形成された膜の面内には、酸分解性樹脂の密度が高い領域と低い領域が発生してしまう。そのため、上記膜を露光、現像して得られるパターンのCDUは低くなる場合がある。また、酸分解性樹脂を2種以上用いる場合であっても、樹脂同士の性質の差が小さすぎると、全体として凝集が抑えられず、優れたCDUは得られない。反対に、樹脂同士の性質の差が大きすぎると、個々の樹脂が凝集してしまい、優れたCDUは得られない。
そこで、本発明者らは鋭意検討し、樹脂同士の性質及び組成物中の含有率の差が特定の範囲内である酸分解性樹脂を少なくとも2種含有する感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物により、上記凝集を抑制し、優れたCDUを有するパターンを形成することができることを見出した。
【0023】
本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、典型的には、レジスト組成物(好ましくは化学増幅型のレジスト組成物)であり、ポジ型レジスト組成物であっても、ネガ型レジスト組成物であってもよい。また、本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
【0024】
<酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)>
本発明の組成物に含まれる酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(A)(単に「樹脂(A)」とも呼ぶ。)について説明する。
【0025】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を有する。
酸分解性基とは、酸の作用により分解し、極性基を生じる基をいう。酸分解性基は、酸の作用により脱離する基(脱離基)で極性基が保護された構造を有することが好ましい。つまり、樹脂(A)は、酸の作用により分解し、極性基を生じる基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。樹脂(A)は、酸の作用により極性が増大してアルカリ現像液に対する溶解度が増大し、有機溶剤に対する溶解度が減少するものであることが好ましい。
【0026】
極性基としては、アルカリ可溶性基が好ましく、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸基、並びに、アルコール性水酸基等が挙げられる。
極性基としては、カルボキシル基、フェノール性水酸基、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール基)、又は、スルホン酸基が好ましい。
【0027】
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられる。
式(Y1):-C(Rx)(Rx)(Rx
式(Y2):-C(=O)OC(Rx)(Rx)(Rx
式(Y3):-C(R36)(R37)(OR38
式(Y4):-C(Rn)(H)(Ar)
【0028】
式(Y1)及び式(Y2)中、Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)又はシクロアルキル基(単環もしくは多環)を表す。なお、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状もしくは分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
中でも、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を表すことが好ましく、Rx~Rxは、それぞれ独立に、直鎖状のアルキル基を表すことがより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、単環又は多環を形成してもよい。
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、並びに、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましく、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基がより好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
式(Y1)又は式(Y2)で表される基は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0029】
式(Y3)中、R36~R38は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の置換基を表す。R37とR38とは、互いに結合して環を形成してもよい。1価の置換基としては特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及び、アルケニル基等が挙げられる。R36は水素原子であることも好ましい。
【0030】
式(Y3)としては、下記式(Y3-1)で表される基が好ましい。
【0031】
【化2】
【0032】
ここで、L及びLは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とアリール基とを組み合わせた基)を表す。
Mは、単結合又は2価の連結基を表す。
Qは、ヘテロ原子を有していてもよいアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいシクロアルキル基、ヘテロ原子を有していてもよいアリール基、アミノ基、アンモニウム基、メルカプト基、シアノ基、アルデヒド基、又は、これらを組み合わせた基(例えば、アルキル基とシクロアルキル基とを組み合わせた基)を表す。
アルキル基及びシクロアルキル基は、例えば、メチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
なお、L及びLのうち一方は水素原子であり、他方はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又は、アルキレン基とアリール基とを組み合わせた基であることが好ましい。
Q、M、及び、Lの少なくとも2つが結合して環(好ましくは、5員又は6員環)を形成してもよい。
パターンの微細化の点では、Lが2級又は3級アルキル基であることが好ましく、3級アルキル基であることがより好ましい。2級アルキル基としては、イソプロピル基、シクロヘキシル基、及び、ノルボルニル基が挙げられ、3級アルキル基としては、tert-ブチル基、及び、アダマンタン環基が挙げられる。これらの態様では、Tg(ガラス転移温度)及び活性化エネルギーが高くなるため、膜強度の担保に加え、かぶりの抑制ができる。
【0033】
式(Y4)中、Arは、芳香環基を表す。Rnは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。RnとArとは互いに結合して非芳香族環を形成してもよい。Arはより好ましくはアリール基である。
【0034】
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(Aa1)で表される繰り返し単位及び下記一般式(Aa2)で表される繰り返し単位の少なくとも1種が好ましい。
【0035】
【化3】
【0036】
一般式(Aa1)中、Lは2価の連結基を表し、Rは水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rは酸の作用により脱離する基を表す。
【0037】
は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、炭化水素基(例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等)、及び、これらの複数が連結した連結基等が挙げられる。上記炭化水素基は置換基を有していてもよい。
は-CO-、アルキレン基又は-アリーレン基であることが好ましい。
アリーレン基としては、炭素数6~20のアリーレン基が好ましく、炭素数6~10のアリーレン基がより好ましく、フェニレン基が更に好ましい。
アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルキレン基はフッ素原子又はヨウ素原子を有することが好ましい。アルキレン基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、2以上が好ましく、2~10がより好ましく、3~6が更に好ましい。
【0038】
は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
アルキル基がフッ素原子又はヨウ素原子を有する場合、アルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0039】
は、酸の作用により脱離する基(脱離基)を表す。
脱離基としては、前述の式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられ、好ましい範囲も前述したものと同様である。
【0040】
【化4】
【0041】
一般式(Aa2)中、R101は水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R102は酸の作用により脱離する基を表す。
【0042】
101は、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、アルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
アルキル基がフッ素原子又はヨウ素原子を有する場合、アルキル基に含まれるフッ素原子及びヨウ素原子の合計数は特に制限されないが、1以上が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が更に好ましい。
上記アルキル基は、ハロゲン原子以外の酸素原子等のヘテロ原子を有していてもよい。
【0043】
102は、酸の作用により脱離する基(脱離基)を表す。
脱離基としては、前述の式(Y1)~(Y4)で表される基が挙げられ、好ましい範囲も前述したものと同様である。
【0044】
脱保護の前後での溶解コントラストが大きいという理由から、樹脂(A)が含む酸分解性基を有する繰り返し単位としては、上記一般式(Aa2)で表される繰り返し単位が好ましく、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位がより好ましい。
【0045】
【化5】
【0046】
一般式(AI)中、
Xaは、水素原子又はアルキル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx~Rxは、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)、又は、シクロアルキル基(単環、又は、多環)を表す。ただし、Rx~Rxの全てがアルキル基(直鎖状、又は、分岐鎖状)である場合、Rx~Rxのうち少なくとも2つはメチル基であることが好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して、シクロアルキル基(単環もしくは多環)を形成してもよい。
【0047】
Xaにより表されるアルキル基は置換基を有していてもよい。Xaにより表されるアルキル基としては、例えば、メチル基又は-CH-R11で表される基が挙げられる。R11は、ハロゲン原子(フッ素原子等)、水酸基又は1価の置換基を表し、例えば、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルキル基、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアシル基、及び、ハロゲン原子が置換していてもよい炭素数5以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素数3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Xaとしては、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、又は、ヒドロキシメチル基が好ましい。
【0048】
Tにより表される2価の連結基は置換基を有していてもよい。
Tにより表される2価の連結基としては、アルキレン基、芳香環基、-COO-Rt-基、及び、-O-Rt-基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、又は、シクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は-COO-Rt-基が好ましい。Tが-COO-Rt-基を表す場合、Rtは、炭素数1~5のアルキレン基が好ましく、-CH-基、-(CH-基、又は、-(CH-基がより好ましい。
【0049】
Rx~Rxのアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、及び、t-ブチル基等の炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
Rx~Rxのシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の単環のシクロアルキル基が好ましく、その他にも、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及び、アダマンチル基等の多環のシクロアルキル基が好ましい。中でも、炭素数5~6の単環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx~Rxの2つが結合して形成されるシクロアルキル基は、例えば、環を構成するメチレン基の1つが、酸素原子等のヘテロ原子、又は、カルボニル基等のヘテロ原子を有する基で置き換わっていてもよい。
一般式(AI)で表される繰り返し単位は、例えば、Rxがメチル基又はエチル基であり、RxとRxとが結合して上述のシクロアルキル基を形成している態様が好ましい。
【0050】
上記各基が置換基を有する場合、置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(炭素数1~4)、カルボキシル基、及び、アルコキシカルボニル基(炭素数2~6)等が挙げられる。置換基中の炭素数は、8以下が好ましい。
【0051】
一般式(AI)で表される繰り返し単位としては、好ましくは、酸分解性(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル系繰り返し単位(Xaが水素原子又はメチル基を表し、かつ、Tが単結合を表す繰り返し単位)である。
【0052】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(A-VIII)~(A-XII)で表される繰り返し単位からなる群より選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することも好ましい。
【0053】
【化6】
【0054】
一般式(A-VIII)中、Rは、tert-ブチル基、1,1’-ジメチルプロピル基、又は、-CO-O-(tert-ブチル)基を表す。
一般式(A-IX)中、R及びRは、それぞれ独立に、1価の置換基を表す。1価の置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
一般式(A-X)中、pは1又は2を表す。
一般式(A-X)~(A-XII)中、Rは、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、Rは、炭素数1~3のアルキル基を表す。
一般式(A-XII)中、R10は、炭素数1~3のアルキル基又はアダマンチル基を表す。
【0055】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位を1種のみ有していてもよく、2種以上有していてもよい。
【0056】
樹脂(A)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率(2種以上の酸分解性基を有する繰り返し単位を有する場合は合計の含有率)Gは、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、70モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることが更に好ましく、10モル%以上30モル%以下であることが特に好ましく、20モル%以上30モル%以下であることが最も好ましい。Gが大きいほど現像時に溶解コントラストが大きくなり、CDUを良好にできるが、Gが大きすぎると酸分解性基の疎水性のため現像欠陥が発生しやすくなる傾向があるため、Gは上記範囲であることが好ましい。
【0057】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位に加えて、その他の繰り返し単位を有していてもよい。
樹脂(A)が酸分解性基を有する繰り返し単位に加えて、その他の繰り返し単位を有する場合、樹脂(A)中のその他の繰り返し単位のモル基準の含有率(2種以上のその他の繰り返し単位を有する場合は合計の含有率)は、樹脂(A)中の全繰り返し単位に対し、30モル%以上90モル%以下であることが好ましく、50モル%以上90モル%以下であることが更に好ましく、70モル%以上80モル%以下であることが特に好ましい。
以下、その他の繰り返し単位について説明する。
【0058】
(酸基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、酸基を有する繰り返し単位を有してもよい。
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(B)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0059】
【化7】
【0060】
は、水素原子又は1価の置換基を表す。1価の置換基はフッ素原子又はヨウ素原子を有していてもよい。1価の置換基としては、-L40-Rで表される基が好ましい。L40は、単結合、又は、エステル基を表す。Rは、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいシクロアルキル基、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアリール基、又は、これらを組み合わせた基が挙げられる。
【0061】
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、又は、フッ素原子もしくはヨウ素原子を有していてもよいアルキル基を表す。
【0062】
は、単結合、又は、エステル基を表す。
は、(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基、又は、(n+m+1)価の脂環式炭化水素環基を表す。芳香族炭化水素環基としては、ベンゼン環基、及び、ナフタレン環基が挙げられる。脂環式炭化水素環基としては、単環であっても、多環であってもよく、例えば、シクロアルキル環基が挙げられる。
は、水酸基、又は、フッ素化アルコール基(好ましくは、ヘキサフルオロイソプロパノール基)を表す。なお、Rが水酸基の場合、Lは(n+m+1)価の芳香族炭化水素環基であることが好ましい。
は、ハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられる。
mは、1以上の整数を表す。mは、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましい。
nは、0又は1以上の整数を表す。nは、1~4の整数が好ましい。
なお、(n+m+1)は、1~5の整数が好ましい。
【0063】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(I)で表される繰り返し単位も好ましい。
【0064】
【化8】
【0065】
一般式(I)中、
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアルコキシカルボニル基を表す。但し、R42はArと結合して環を形成していてもよく、その場合のR42は単結合又はアルキレン基を表す。
は、単結合、-COO-、又は-CONR64-を表し、R64は、水素原子又はアルキル基を表す。
は、単結合又はアルキレン基を表す。
Arは、(n+1)価の芳香環基を表し、R42と結合して環を形成する場合には(n+2)価の芳香環基を表す。
nは、1~5の整数を表す。
【0066】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が好ましく、炭素数8以下のアルキル基がより好ましく、炭素数3以下のアルキル基が更に好ましい。
【0067】
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のシクロアルキル基としては、単環型でも、多環型でもよい。中でも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、及び、シクロヘキシル基等の炭素数3~8個で単環型のシクロアルキル基が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43のアルコキシカルボニル基に含まれるアルキル基としては、上記R41、R42、R43におけるアルキル基と同様のものが好ましい。
【0068】
Arは、(n+1)価の芳香環基を表す。nが1である場合における2価の芳香環基は、置換基を有していてもよく、例えば、フェニレン基、トリレン基、ナフチレン基、及び、アントラセニレン基等の炭素数6~18のアリーレン基、又は、チオフェン環、フラン環、ピロール環、ベンゾチオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾピロール環、トリアジン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアジアゾール環、及び、チアゾール環等のヘテロ環を含む芳香環基が好ましい。
【0069】
nが2以上の整数である場合における(n+1)価の芳香環基の具体例としては、2価の芳香環基の上記した具体例から、(n-1)個の任意の水素原子を除してなる基が挙げられる。(n+1)価の芳香環基は、更に置換基を有していてもよい。
【0070】
上述したアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキレン基、及び、(n+1)価の芳香環基が有し得る置換基としては、例えば、一般式(I)におけるR41、R42、及び、R43で挙げたアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、プロポキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、及び、ブトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基等のアリール基;等が挙げられる。
により表わされる-CONR64-(R64は、水素原子又はアルキル基を表す)におけるR64のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、及び、ドデシル基等の炭素数20以下のアルキル基が挙げられ、炭素数8以下のアルキル基が好ましい。
としては、単結合、-COO-、又は、-CONH-が好ましく、単結合、又は、-COO-がより好ましい。
【0071】
におけるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、及び、オクチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基が好ましい。
Arとしては、炭素数6~18の芳香環基が好ましく、ベンゼン環基、ナフタレン環基、及び、ビフェニレン環基がより好ましい。
【0072】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに制限されるものではない。式中、aは1、2又は3を表す。
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
(ラクトン構造、スルトン構造、カーボネート構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2))
樹脂(A)は、ラクトン構造、カーボネート構造、スルトン構造、及びヒドロキシアダマンタン構造からなる群より選択される少なくとも1種を有する繰り返し単位(A-2)を有していてもよい。
【0076】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位におけるラクトン構造又はスルトン構造は、特に制限されないが、5~7員環ラクトン構造又は5~7員環スルトン構造が好ましく、5~7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5~7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。
ラクトン構造又はスルトン構造を有する繰り返し単位としては、WO2016/136354号の段落0094~0107に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0077】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
カーボネート構造を有する繰り返し単位としては、WO2019/054311号の段落0106~0108に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0078】
樹脂(A)は、ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位を有していてもよい。ヒドロキシアダマンタン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0079】
【化11】
【0080】
一般式(AIIa)中、Rcは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。Rc~Rcは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基を表す。但し、Rc~Rcのうちの少なくとも1つは、水酸基を表す。Rc~Rcのうちの1つ又は2つが水酸基で、残りが水素原子であることが好ましい。
【0081】
(フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位を有していてもよい。
フッ素原子又はヨウ素原子を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0076~0081に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0082】
(光酸発生基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、上記以外の繰り返し単位として、光酸発生基(活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基)を有する繰り返し単位を有していてもよい。
光酸発生基を有する繰り返し単位としては、特開2019-045864号公報の段落0092~0096に記載の繰り返し単位が挙げられる。
【0083】
(アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位)
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有していてもよい。
アルカリ可溶性基としては、カルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、及び、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。樹脂(A)がアルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することにより、コンタクトホール用途での解像性が増す。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸及びメタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、又は、連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位が挙げられる。なお、連結基は、単環又は多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸又はメタクリル酸による繰り返し単位が好ましい。
【0084】
(酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位)
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位を有してもよい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0085】
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない繰り返し単位としては、例えば、米国特許出願公開第2016/0026083号明細書の段落0236~0237に記載された繰り返し単位、及び、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0433に記載された繰り返し単位が挙げられる。
【0086】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性、標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有していてもよい。
【0087】
樹脂(A)は、常法(例えばラジカル重合)に従って合成できる。
【0088】
樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、1000~200000であることが好ましく、3000~50000であることがより好ましく、5000~30000であることが更に好ましい。Mwを上記範囲内とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、更に、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。また、Mwが1000以上であると、本発明の組成物を用いて形成した膜のガラス転位温度を高くすることができるため、酸の拡散が抑制され、CDUが良好になる。Mwが200000以下であると、樹脂(A)の1分子あたりの体積が大きくなり過ぎず、パターンのがたつきが抑制され、CDUが良好になる。なお、Mwは前述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
【0089】
Mwを樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.00~5.00であり、1.00~3.00であることが好ましく、1.10~2.00であることがより好ましい。分子量分布が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状が優れ、更に、パターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。また、分子量分布が小さいものほどポリマーが均一であり、ポリマーが均一なほどパターンのがたつきが抑制できるためCDUが良化する。
【0090】
樹脂(A)のZ平均分子量(Mz)は、1000~200000であることが好ましく、3000~100000であることがより好ましく、5000~50000であることが更に好ましい。なお、Mzは前述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。分子量分布曲線の各溶出位置の分子量をMiとし、分子数をNiとすると、Z平均分子量Mzは次式により求められる。
Mz=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi
【0091】
本発明の組成物中の全固形分に対する樹脂(A)の質量基準の含有率(S)は、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
【0092】
なお、本明細書において、固形分とは溶剤以外の成分を意味する。上記成分の性状が液状であっても、固形分として扱う。全固形分とはすべての固形分をあわせたものを意味する。
【0093】
<酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)>
本発明の組成物は、上記樹脂(A)に加えて、更に、酸分解性基を有する繰り返し単位を含む樹脂(B)(単に「樹脂(B)」とも呼ぶ。)を含有する。
【0094】
樹脂(A)と樹脂(B)とは下記条件1~5を全て満たす。
条件1:樹脂(A)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、樹脂(B)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である|G-G|が5モル%以上20モル%以下である。
条件2:樹脂(A)中の酸分解性基と、樹脂(B)中の酸分解性基とは同一の構造を有する。
条件3:感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物中の全固形分に対する、樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比であるS/Sが10/90~90/10である。
条件4:樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である|Mw-Mw|が100以上5000以下である。
条件5:Mwを樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(A)の分子量分布Mw/Mnと、Mwを樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(B)の分子量分布Mw/Mnとの差の絶対値である|Mw/Mn-Mw/Mn|が0.05以上である。
【0095】
樹脂(B)が含む酸分解性基を有する繰り返し単位については前述の樹脂(A)におけるものと同様である。また、樹脂(B)が有していてもよいその他の繰り返し単位についても前述の樹脂(A)におけるものと同様である。
なお、上記条件2に記載されているように、樹脂(B)中の酸分解性基は、樹脂(A)中の酸分解性基と同一である。条件2を満たすことで、樹脂(A)と樹脂(B)が各々凝集することを抑制することができ、優れたCDUを得ることができる。
【0096】
樹脂(B)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率(2種以上の酸分解性基を有する繰り返し単位を有する場合は合計の含有率)Gは、樹脂(B)中の全繰り返し単位に対し、70モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましく、30モル%以下であることが更に好ましく、10モル%以上30モル%以下であることが特に好ましく、20モル%以上30モル%以下であることが最も好ましい。
ただし、上記条件1に記載されているように、樹脂(A)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、樹脂(B)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である|G-G|は5モル%以上20モル%以下である。条件1を満たすことで、樹脂(A)と樹脂(B)との凝集や、樹脂(A)同士の凝集、樹脂(B)同士の凝集を抑制することができ、優れたCDUを得ることができる。
|G-G|は10モル%以上20モル%以下であることが好ましく、10モル%以上18モル%以下であることがより好ましく、10モル%以上15モル%以下であることが更に好ましい。
【0097】
樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、1000~200000であることが好ましく、3000~50000であることがより好ましく、5000~30000であることが更に好ましい。Mwを上記範囲内とすることにより、耐熱性及びドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、更に、現像性の劣化、及び、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。また、Mwが1000以上であると、本発明の組成物を用いて形成した膜のガラス転位温度を高くすることができるため、酸の拡散が抑制され、CDUが良好になる。Mwが200000以下であると、樹脂(B)の1分子あたりの体積が大きくなり過ぎず、パターンのがたつきが抑制され、CDUが良好になる。なお、Mwは前述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
ただし、上記条件4に記載されているように、樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である|Mw-Mw|は100以上5000以下である。条件4を満たすことで、樹脂(A)と樹脂(B)との凝集や、樹脂(A)同士の凝集、樹脂(B)同士の凝集を抑制することができ、優れたCDUを得ることができる。
|Mw-Mw|は200以上5000以下であることが好ましく、500以上5000以下であることがより好ましく、1000以上5000以下であることが更に好ましい。
【0098】
Mwを樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、通常1.00~5.00であり、1.00~3.00であることが好ましく、1.10~2.00であることがより好ましい。分子量分布が小さいものほど、解像度、及び、レジスト形状が優れ、更に、パターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。また、分子量分布が小さいものほどポリマーが均一であり、ポリマーが均一なほどパターンのがたつきが抑制できるためCDUが良化する。
ただし、上記条件5に記載されているように、|Mw/Mn-Mw/Mn|は0.05以上である。条件5を満たすことで、樹脂(A)と樹脂(B)との凝集を抑制することができ、優れたCDUを得ることができる。
|Mw/Mn-Mw/Mn|は0.10以上であることが好ましく、0.10以上0.30以下であることがより好ましく、0.10以上0.20以下であることが更に好ましく、0.10以上0.15以下であることが特に好ましい。
【0099】
樹脂(B)のZ平均分子量(Mz)は、1000~200000であることが好ましく、3000~100000であることがより好ましく、5000~50000であることが更に好ましい。なお、Mzは前述のGPC法により測定されたポリスチレン換算値である。
樹脂(A)のZ平均分子量Mzと、樹脂(B)のZ平均分子量Mzとの差の絶対値である|Mz-Mz|は100以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1000以上10000以下であることが更に好ましく、1000以上5000以下であることが特に好ましい。
【0100】
本発明の組成物中の全固形分に対する樹脂(B)の質量基準の含有率(S)は、40~90質量%であることが好ましく、50~80質量%であることがより好ましい。
ただし、上記条件3に記載されているように、本発明の組成物中の全固形分に対する樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、本発明の組成物中の全固形分に対する樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比であるS/Sは10/90~90/10である。条件5を満たすことで、樹脂(A)と樹脂(B)が各々凝集することを抑制することができ、優れたCDUを得ることができる。
/Sは40/60~60/40であることが好ましく、45/55~55/45であることがより好ましい。
【0101】
本発明の組成物は少なくとも2種の酸分解性樹脂を含有する。本発明の組成物に含まれる酸分解性樹脂が2種である場合は、いずれか一方が樹脂(A)であり、他方が樹脂(B)である。本発明の組成物が樹脂(A)又は樹脂(B)に該当する酸分解性樹脂を3種以上含有する場合は、便宜的に、酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率が最も大きい樹脂を樹脂(A)とし、それ以外の樹脂を樹脂(B)としてもよい。この場合の本発明の組成物中の全固形分に対する樹脂(B)の質量基準の含有率S、樹脂(B)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率G、樹脂(B)の重量平均分子量Mw、樹脂(B)の数平均分子量Mn、及び樹脂(B)のZ平均分子量Mzは、以下のようにして求めることができる。すなわち、樹脂(B)に該当する樹脂がn種存在する場合、Sは下記式(1)、Gは下記式(2)、Mwは下記式(3)、Mnは下記式(4)、Mzは下記式(5)でそれぞれ求めることができる。ただし、nは2以上の整数を表し、iは1~nの整数を表し、SBiは樹脂(B)に該当する各樹脂の本発明の組成物中の全固形分に対する質量基準の含有率を表し、GBiは樹脂(B)に該当する各樹脂中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率を表し、MwBiは樹脂(B)に該当する各樹脂の重量平均分子量を表し、MnBiは樹脂(B)に該当する各樹脂の数平均分子量を表し、MzBiは樹脂(B)に該当する各樹脂のZ平均分子量を表し、XBiは樹脂(B)に該当する各樹脂の樹脂(B)の全体に対する質量基準の含有率を表す。
【0102】
【数1】
【0103】
【数2】
【0104】
【数3】
【0105】
【数4】
【0106】
【数5】
【0107】
<活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(「光酸発生剤(C)」とも記載する。)を含有することが好ましい。
光酸発生剤(C)は、活性光線又は放射線を照射されることにより酸を発生する化合物であれば特に限定されない。
光酸発生剤(C)は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤(C)が、低分子化合物の形態である場合、重量平均分子量(Mw)が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることが更に好ましい。
光酸発生剤(C)は、樹脂(A)又は樹脂(B)の一部に組み込まれていてもよいし、樹脂(A)又は樹脂(B)とは異なる樹脂に組み込まれていてもよい。
光酸発生剤(C)は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤(C)は、カチオンとアニオンを含むイオン性化合物であることが好ましい。
【0108】
光酸発生剤(C)は、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であることが好ましく、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物であり、かつ分子中にフッ素原子又はヨウ素原子を有する化合物であることがより好ましい。上記有機酸としては、例えば、スルホン酸(脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸、及び、カンファースルホン酸等)、カルボン酸(脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸、及び、アラルキルカルボン酸等)、カルボニルスルホニルイミド酸、ビス(アルキルスルホニル)イミド酸、及び、トリス(アルキルスルホニル)メチド酸等が挙げられる。
【0109】
光酸発生剤(C)の好適な態様としては、例えば、下記一般式(ZI)で表される化合物、下記一般式(ZII)で表される化合物、下記一般式(ZIII)で表される化合物が挙げられる。
【0110】
【化12】
【0111】
上記一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。
また、R201~R203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R201~R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び-CH-CH-O-CH-CH-を挙げることができる。
-は、アニオンを表す。
【0112】
(一般式(ZI)で表される化合物におけるカチオン)
一般式(ZI)におけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI-1)、(ZI-2)、(ZI-3)及び(ZI-4)における対応する基を挙げることができる。
なお、光酸発生剤(C)は、一般式(ZI)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201~R203の少なくとも1つと、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201~R203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0113】
(化合物(ZI-1))
まず、化合物(ZI-1)について説明する。
化合物(ZI-1)は、上記一般式(ZI)のR201~R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201~R203の全てがアリール基でもよいし、R201~R203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0114】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1~15の直鎖アルキル基、炭素数3~15の分岐アルキル基、又は炭素数3~15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0115】
201~R203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立にアルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~14)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0116】
(化合物(ZI-2))
次に、化合物(ZI-2)について説明する。
化合物(ZI-2)は、一般式(ZI)におけるR201~R203が、各々独立に、芳香環を有さない有機基を表す化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含する。
201~R203としての芳香環を有さない有機基は、一般的に炭素数1~30であり、好ましくは炭素数1~20である。
201~R203は、各々独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖又は分岐の2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、さらに好ましくは直鎖又は分岐2-オキソアルキル基である。
【0117】
201~R203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖アルキル基又は炭素数3~10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、ならびに炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
201~R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1~5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0118】
(化合物(ZI-3))
次に、化合物(ZI-3)について説明する。
化合物(ZI-3)は、下記一般式(ZI-3)で表され、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0119】
【化13】
【0120】
一般式(ZI-3)中、
1c~R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表す。
及びRは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2-オキソアルキル基、2-オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及び、RとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、上記環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
Zcは、アニオンを表す。
【0121】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R5cとR6c、R6cとR7c、R5cとR、及びRとRは、各々結合して環構造を形成してもよく、この環構造は、各々独立に酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3~10員環を挙げることができ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0122】
1c~R5c中のいずれか2つ以上、R6cとR7c、及びRとRが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等を挙げることができる。
5cとR6c、及びR5cとRが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等を挙げることができる。
【0123】
6c及びR7cとしてのアルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましい。
アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0124】
6c及びR7cとしてのシクロアルキル基は、特に限定されないが、単環又は多環でもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフタレニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0125】
6c及びR7cとしてのアリール基は、特に限定されないが、単環でも多環でもよく、炭素数6~20のアリール基であることが好ましく、炭素数6~15のアリール基であることがより好ましく、炭素数6~10のアリール基であることが更に好ましい。
アリール基は置換基を有していてもよい。
【0126】
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
【0127】
及びRとしてのアルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましい。
アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0128】
及びRとしてのシクロアルキル基は、特に限定されないが、単環又は多環でもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフタレニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0129】
及びRとしての2-オキソアルキル基は、特に限定されないが、炭素数1~20の2-オキソアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15の2-オキソアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10の2-オキソアルキル基であることが更に好ましい。
2-オキソアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0130】
及びRとしての2-オキソシクロアルキル基は、特に限定されないが、炭素数3~20の2-オキソシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15の2-オキソシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10の2-オキソシクロアルキル基であることが更に好ましい。
2-オキソシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0131】
及びRとしてのアルコキシカルボニルアルキル基は、特に限定されないが、炭素数3~22のアルコキシカルボニルアルキル基であることが好ましく、炭素数3~17のアルコキシカルボニルアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~12のアルコキシカルボニルアルキル基であることが更に好ましい。
アルコキシカルボニルアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0132】
とRが互いに連結して環を形成してもよく、この環構造は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造は、酸素原子を含むことが好ましい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3~10員環を挙げることができ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0133】
(化合物(ZI-4))
次に、化合物(ZI-4)について説明する。
化合物(ZI-4)は、下記一般式(ZI-4)で表される。
【0134】
【化14】
【0135】
一般式(ZI-4)中、
lは0~2の整数を表す。
rは0~8の整数を表す。
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はアルコキシカルボニル基を表す。
14は、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、又はシクロアルキルスルホニル基を表す。R14は、複数存在する場合は同一でも異なっていてもよい。
15は各々独立して、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表す。2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。
は、アニオンを表す。
【0136】
一般式(ZI-4)において、R13、R14及びR15のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1~10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基等がより好ましい。
【0137】
13としてのアルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基が好ましい。
アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0138】
13としてのシクロアルキル基は、特に限定されないが、単環又は多環でもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフタレニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0139】
13としてのアルコキシ基は、特に限定されないが、炭素数1~20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~15のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
アルコキシ基は置換基を有していてもよい。
【0140】
13としてのアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数2~21のアルコキシカルボニル基であることが好ましく、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、炭素数2~11のアルコキシカルボニル基であることが更に好ましい。
アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。
【0141】
14としてのアルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基が好ましい。
アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0142】
14としてのシクロアルキル基は、特に限定されないが、単環又は多環でもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフタレニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0143】
14としてのアルコキシ基は、特に限定されないが、炭素数1~20のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数1~15のアルコキシ基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基であることが更に好ましい。
アルコキシ基は置換基を有していてもよい。
【0144】
14としてのアルコキシカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数2~21のアルコキシカルボニル基であることが好ましく、炭素数2~16のアルコキシカルボニル基であることがより好ましく、炭素数2~11のアルコキシカルボニル基であることが更に好ましい。
アルコキシカルボニル基は置換基を有していてもよい。
【0145】
14としてのアルキルカルボニル基は、特に限定されないが、炭素数2~21のアルキルカルボニル基であることが好ましく、炭素数2~16のアルキルカルボニル基であることがより好ましく、炭素数2~11のアルキルカルボニル基であることが更に好ましい。
アルコキルカルボニル基は置換基を有していてもよい。
【0146】
14としてのアルキルスルホニル基は、特に限定されないが、炭素数1~20のアルキルスルホニル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキルスルホニル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキルスルホニル基であることが更に好ましい。
アルキルスルホニル基は置換基を有していてもよい。
【0147】
14としてのシクロアルキルスルホニル基は、特に限定されないが、炭素数3~20のシクロアルキルスルホニル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキルスルホニル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキルスルホニル基であることが更に好ましい。
シクロアルキルスルホニル基は置換基を有していてもよい。
【0148】
14は、複数存在する場合は、複数のR14は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0149】
15としてのアルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~15のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることが更に好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n-ブチル基、又はt-ブチル基が好ましい。
アルキル基は置換基を有していてもよい。
【0150】
15としてのシクロアルキル基は、特に限定されないが、単環又は多環でもよく、炭素数3~20のシクロアルキル基であることが好ましく、炭素数3~15のシクロアルキル基であることがより好ましく、炭素数3~10のシクロアルキル基であることが更に好ましい。
シクロアルキル基としては、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、デカヒドロナフタレニル基が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
【0151】
15としてのナフチル基は置換基を有していてもよい。
【0152】
2つのR15が互いに結合して環を形成してもよい。2つのR15が互いに結合して環を形成するとき、この環構造は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケトン基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造は、酸素原子を含むことが好ましい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3~10員環を挙げることができ、4~8員環が好ましく、5又は6員環がより好ましい。
【0153】
好ましい一態様において、2つのR15がアルキル基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
【0154】
(一般式(ZII)又は一般式Z(III)で表される化合物におけるカチオン)
次に、一般式(ZII)、及び(ZIII)について説明する。
一般式(ZII)、及び(ZIII)中、R204~R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204~R207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R204~R207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等を挙げることができる。
204~R207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1~10の直鎖アルキル基又は炭素数3~10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、炭素数3~10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
【0155】
204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に置換基を有していてもよい。R204~R207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1~15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3~15)、アリール基(例えば炭素数6~15)、アルコキシ基(例えば炭素数1~15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等を挙げることができる。
は、アニオンを表す。
【0156】
(一般式(ZI)、一般式(ZII)、一般式(ZI-3)、又は一般式(ZI-4)で表される化合物におけるアニオン)
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記一般式(3)で表されるアニオンが好ましい。
【0157】
【化15】
【0158】
一般式(3)中、
Xfは、各々独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、複数存在する場合のR、Rは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Wは、有機基を表す。
oは、1~3の整数を表す。pは、0~10の整数を表す。qは、0~10の整数を表す。
【0159】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基が好ましい。複数存在するXfは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCFであることがより好ましい。特に、すべてのXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0160】
及びRは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。複数存在する場合のR及びRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
及びRとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1~4が好ましい。R及びRは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例および好適な態様は一般式(3)中のXfの具体例および好適な態様と同じである。
【0161】
Lは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のLは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、-COO-(-C(=O)-O-)、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-SO-、アルキレン基(好ましくは炭素数1~6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3~15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、-COO-、-OCO-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-O-、-SO-、-COO-アルキレン基-、-OCO-アルキレン基-、-CONH-アルキレン基-又は-NHCO-アルキレン基-が好ましく、-COO-、-OCO-、-CONH-、-SO-、-COO-アルキレン基-又は-OCO-アルキレン基-がより好ましい。
【0162】
Wは有機基を表す。
有機基の炭素数は特に限定されないが、一般的に1~30であり、好ましくは1~20である。
有機基としては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基等を表す。
アルキル基は、特に限定されないが、直鎖状又は分岐状でもよく、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基が更に好ましい。
アルキル基、アルコキシ基は置換基を有していてもよい。置換基を有していてもよい。置換基としては特に限定されないが、例えば上述の置換基Tが挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0163】
Wは、環状構造を含む有機基を表すことが好ましい。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0164】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、前述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0165】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1~12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3~20が好ましい)、アリール基(炭素数6~14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0166】
一般式(ZI)におけるZ-、一般式(ZII)におけるZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-としては、下記一般式(An-2)又は(An-3)で表されるアニオンも好ましい。
【0167】
【化16】
【0168】
一般式(An-2)及び(An-3)中、Rfaはそれぞれ独立に、フッ素原子を有する一価の有機基を表し、複数のRfaは互いに結合して環を形成してもよい。
【0169】
Rfaは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。このアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
【0170】
一般式(ZI)におけるスルホニウムカチオン、及び一般式(ZII)におけるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0171】
【化17】
【0172】
一般式(ZI)、一般式(ZII)におけるアニオンZ-、一般式(ZI-3)におけるZc、及び一般式(ZI-4)におけるZ-の好ましい例を以下に示す。
【0173】
【化18】
【0174】
本発明の組成物中の光酸発生剤(C)の質量基準の含有率は、上記組成物の全固形分に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることが更に好ましい。
【0175】
光酸発生剤(C)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。光酸発生剤(C)を2種以上併用する場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0176】
<酸拡散制御剤(D)>
本発明の組成物は、酸拡散制御剤(「酸拡散制御剤(D)」とも記載する。)を含有することが好ましい。
酸拡散制御剤(D)は、露光時に光酸発生剤(C)等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における樹脂(A)及び樹脂(B)(酸分解性樹脂)の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。
酸拡散制御剤(D)としては、例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線若しくは放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、光酸発生剤(C)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、かつ酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、及び、カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等が使用できる。
酸拡散制御剤(D)としては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用できる。例えば、米国特許出願公開2016/0070167号明細書の段落[0627]~[0664]、米国特許出願公開2015/0004544号明細書の段落[0095]~[0187]、米国特許出願公開2016/0237190号明細書の段落[0403]~[0423]、及び、米国特許出願公開2016/0274458号明細書の段落[0259]~[0328]に開示された公知の化合物を、酸拡散制御剤(D)として好適に使用できる。
【0177】
塩基性化合物(DA)としては、特開2019-045864号公報の段落0188~0208に記載の化合物が挙げられる。
【0178】
本発明では、光酸発生剤(C)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤(D)として使用することもできる。
光酸発生剤(C)と、光酸発生剤(C)から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤(C)から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散を制御できると考えられる。
【0179】
光酸発生剤(C)に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、特開2019-070676号公報の段落0224~0233に記載のオニウム塩が挙げられる。
【0180】
塩基性化合物(DA)としては、好ましくは、下記式(A)~(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0181】
【化19】
【0182】
一般式(A)及び(E)中、
200、R201及びR202は、同一でも異なってもよく、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~20)、アリール基(好ましくは炭素数6~20)、アルキルカルボニル基(好ましくは炭素数2~21)、シクロアルキルカルボニル基(好ましくは炭素数4~21)、アリールカルボニル基(好ましくは炭素数7~21)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1~20)、シクロアルキルスルホニル基(好ましくは炭素数3~20)、又はアリールスルホニル基(好ましくは炭素数6~20)を表す。R200、R201及びR202のうち少なくとも2つは結合して環を形成してもよく、上記環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基、及びスルホニル基の少なくとも1つを含んでいてもよい。
203、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、各々独立に、炭素数1~20個のアルキル基を表す。
【0183】
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1~20のアミノアルキル基、炭素数1~20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1~20のシアノアルキル基が好ましい。
一般式(A)及び(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0184】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0185】
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0186】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0187】
【化20】
【0188】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、1~3級アミン、ピリジン、イミダゾール、及びピラジン構造などを挙げることができる。
【0189】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0190】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<-1を満たすことが好ましく、-13<pKa<-1がより好ましく、-13<pKa<-3が更に好ましい。
【0191】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0192】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994-2007 ACD/Labs)。
【0193】
本発明の組成物では、酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)を酸拡散制御剤として使用することができる。
酸発生剤と、酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0194】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩としては、下記一般式(d1-1)~(d1-3)で表される化合物であることが好ましい。
【0195】
【化21】
【0196】
式中、R51は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、Z2cは置換基を有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基(ただし、Sに隣接する炭素にはフッ素原子は置換されていないものとする)であり、R52は有機基であり、Yは直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基又はアリーレン基であり、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基であり、Mは各々独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンである。
【0197】
として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、一般式(ZI)で例示したスルホニウムカチオン及び一般式(ZII)で例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0198】
酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、上記カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記一般式(C-1)~(C-3)のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0199】
【化22】
【0200】
一般式(C-1)~(C-3)中、
、R、及びRは、各々独立に炭素数1以上の置換基を表す。
は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
-Xは、-COO、-SO 、-SO 、及び-N-Rから選択されるアニオン部位を表す。Rは、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(-C(=O)-)、スルホニル基(-S(=O)-)、及びスルフィニル基(-S(=O)-)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
、R、R、R、及びLは、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、一般式(C-3)において、R~Rのうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0201】
~Rにおける炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0202】
2価の連結基としてのLは、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。Lは、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0203】
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100~1000が好ましく、100~700がより好ましく、100~500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記一般式(d-1)で表すことができる。
【0204】
【化23】
【0205】
一般式(d-1)において、
Rbは、各々独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1~10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3~30)、アリール基(好ましくは炭素数3~30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1~10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1~10)を表す。Rbは相互に連結して環を形成していてもよい。
Rbが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にヒドロキシル基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。Rbが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0206】
Rbとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのRbが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
一般式(d-1)で表される基の具体的な構造としては、米国特許公報US2012/0135348A1号明細書の段落[0466]に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されない。
【0207】
化合物(DD)は、下記一般式(6)で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0208】
【化24】
【0209】
一般式(6)において、
lは0~2の整数を表し、mは1~3の整数を表し、l+m=3を満たす。
Raは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのRaは同じでも異なっていてもよく、2つのRaは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
Rbは、上記一般式(d-1)におけるRbと同義であり、好ましい例も同様である。
一般式(6)において、Raとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基は、各々独立にRbとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として前述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0210】
上記Raのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、Rbについて前述した具体例と同様な基が挙げられる。
本発明における特に好ましい化合物(DD)の具体的な構造としては、米国特許出願公開2012/0135348A1号明細書の段落[0475]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0211】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子など)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体的な構造としては、米国特許出願公開2015/0309408A1号明細書の段落[0203]に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
【0212】
本発明の組成物中の酸拡散制御剤(D)の含有率(複数種存在する場合はその合計)は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01~10.0質量%であることが好ましく、0.01~5.0質量%であることがより好ましい。
本発明において、酸拡散制御剤(D)は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0213】
<溶剤>
本発明の組成物は、溶剤(「溶剤(S)」とも記載する。)を含有することが好ましい。
溶剤(S)は、(M1)プロピレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、並びに、(M2)プロピレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸エステル、酢酸エステル、アルコキシプロピオン酸エステル、鎖状ケトン、環状ケトン、ラクトン、及び、アルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つの少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合の溶剤は、成分(M1)及び(M2)以外の成分を更に含んでいてもよい。
成分(M1)又は(M2)を含む溶剤は、前述の樹脂(A)及び樹脂(B)と組み合わせて用いると、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の塗布性が向上すると共に、現像欠陥数の少ないパターンが形成可能となるため好ましい。
【0214】
また、溶剤(S)としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4~10)、環を含んでいてもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4~10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0215】
本発明の組成物中の溶剤(S)の含有率は、本発明の組成物の固形分濃度が0.5~40質量%となるように調整されることが好ましく、本発明の組成物の固形分濃度が3~30質量%となるように調整されることがより好ましい。特に、本発明の効果がより優れる点で、本発明の組成物の固形分濃度は10質量%以上であることが好ましく、10~30質量%であることが特に好ましい。なお、固形分濃度とは、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分(感活性光線性又は感放射線性膜を構成し得る成分)の質量の質量百分率を意味する。
【0216】
<界面活性剤>
本発明の組成物は、界面活性剤(「界面活性剤(E)」とも記載する。)を含むことができる。本発明の組成物は、界面活性剤を含むことにより、密着性により優れ、現像欠陥のより少ないパターンを形成することができる。
界面活性剤(E)としては、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤が好ましい。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0276に記載の界面活性剤が挙げられる。また、エフトップEF301又はEF303(新秋田化成(株)製);フロラードFC430、431又は4430(住友スリーエム(株)製);メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120又はR08(DIC(株)製);サーフロンS-382、SC101、102、103、104、105又は106(旭硝子(株)製);トロイゾルS-366(トロイケミカル(株)製);GF-300又はGF-150(東亞合成化学(株)製)、サーフロンS-393(セイミケミカル(株)製);エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、EF352、EF801、EF802又はEF601((株)ジェムコ製);PF636、PF656、PF6320又はPF6520(OMNOVA社製);KH-20(旭化成(株)製);FTX-204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D又は222D((株)ネオス製)を用いてもよい。なお、ポリシロキサンポリマーKP-341(信越化学工業(株)製)も、シリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0217】
また、界面活性剤(E)は、上記に示すような公知の界面活性剤の他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)又はオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物を用いて合成してもよい。具体的には、このフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を備えた重合体を、界面活性剤として用いてもよい。このフルオロ脂肪族化合物は、例えば、特開2002-90991号公報に記載された方法によって合成できる。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、及び、ポリ(オキシブチレン)基が挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)等同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。更に、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマー、及び、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)等を同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
例えば、市販の界面活性剤としては、メガファックF178、F-470、F-473、F-475、F-476、F-472(DIC(株)製)、C13基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体が挙げられる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落[0280]に記載されているフッ素系及び/又はシリコン系以外の界面活性剤を使用してもよい。
【0218】
界面活性剤(E)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0219】
本発明の組成物は界面活性剤(E)を含有してもよいし、含有しなくてもよいが、本発明の組成物が界面活性剤(E)を含有する場合、界面活性剤(E)の含有率は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.0001~2質量%であることが好ましく、0.0005~1質量%であることがより好ましい。
【0220】
<疎水性樹脂>
本発明の組成物は、疎水性樹脂(「疎水性樹脂(F)」とも記載する。)を含むことができる。
疎水性樹脂(F)は、前述の樹脂(A)及び樹脂(B)とは異なる疎水性の樹脂である。
疎水性樹脂(F)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性物質及び非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
疎水性樹脂(F)を添加することの効果として、水に対するレジスト膜表面の静的及び動的な接触角の制御、並びにアウトガスの抑制等が挙げられる。
【0221】
疎水性樹脂(F)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“珪素原子”、及び、“樹脂の側鎖部分に含まれたCH部分構造”のいずれか1種以上を有することが好ましく、2種以上を有することがより好ましい。また、疎水性樹脂(F)は、炭素数5以上の炭化水素基を有することが好ましい。これらの基は樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0222】
疎水性樹脂(F)が、フッ素原子及び/又は珪素原子を含む場合、疎水性樹脂における上記フッ素原子及び/又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0223】
疎水性樹脂(F)がフッ素原子を有している場合、フッ素原子を有する部分構造としては、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又は、フッ素原子を有するアリール基が好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基であり、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、更にフッ素原子以外の置換基を有していてもよい。
フッ素原子又は珪素原子を有する繰り返し単位の例としては、US2012/0251948の段落0519に例示されたものが挙げられる。
【0224】
また、上記したように、疎水性樹脂(F)は、側鎖部分にCH部分構造を有することも好ましい。
ここで、疎水性樹脂中の側鎖部分が有するCH部分構造は、エチル基、及び、プロピル基等を有するCH部分構造を含む。
一方、疎水性樹脂(F)の主鎖に直接結合しているメチル基(例えば、メタクリル酸構造を有する繰り返し単位のα-メチル基)は、主鎖の影響により疎水性樹脂(F)の表面偏在化への寄与が小さいため、本発明におけるCH部分構造に含まれないものとする。
【0225】
疎水性樹脂(F)に関しては、特開2014-010245号公報の段落0348~0415の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0226】
なお、疎水性樹脂(F)としては、特開2011-248019号公報、特開2010-175859号公報、特開2012-032544号公報に記載された樹脂も、好ましく用いることができる。
【0227】
本発明の組成物は疎水性樹脂(F)を含有していてもよいし、含有していなくてもよいが、本発明の組成物が疎水性樹脂(F)を含有する場合、疎水性樹脂(F)の含有率は、本発明の組成物の全固形分に対して、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましい。
【0228】
<その他の成分>
本発明の組成物は前述した成分以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、架橋剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止化合物、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、現像液に対する溶解性を促進させる化合物等が挙げられる。
【0229】
<粘度>
本発明の組成物の粘度は特に限定されないが、25℃において、10~100mPa・sであることが好ましく、15~90mPa・sであることがより好ましく、30~70mPa・sであることが更に好ましい。感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(RE-85L型、東機産業株式会社製)を用いて25℃の条件で測定を行って求める。
【0230】
<調製方法>
本発明の組成物は、前述の樹脂(A)及び樹脂(B)、並びに必要に応じて前述した各成分を、溶剤(好ましくは前述の溶剤)に溶解し、これをフィルター濾過して調製することができる。
フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズは特に限定されないが、3μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.3μm以下が更に好ましい。また、場合によっては、フィルターのポアサイズを0.1μm以下にすることも好ましく、0.05μm以下にすることも好ましく、0.03μm以下にすることも好ましい。フィルターは、ポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製であることが好ましい。フィルター濾過においては、例えば日本国特許出願公開第2002-62667号明細書(特開2002-62667)に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0231】
<用途>
本発明の組成物は、活性光線又は放射線の照射により反応して性質が変化する。本発明の組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造等に使用することができる。本発明の組成物を用いて形成されるパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用することができる。
【0232】
〔パターン形成方法、レジスト膜〕
本発明のパターン形成方法は、
前述の本発明の感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程と、
上記レジスト膜を露光して、露光されたレジスト膜を得る工程と、
現像液を用いて、上記露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程と、を有する。
以下、それぞれの工程について詳述する。
【0233】
(工程a:レジスト膜形成工程)
工程aは、本発明の組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程である。
本発明の組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する方法としては、本発明の組成物を基板上に塗布する方法が挙げられる。
本発明の組成物は、集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン、二酸化シリコン被覆)上に、スピナー又はコーター等の適当な塗布方法により塗布することができる。塗布方法としては、スピナーを用いたスピン塗布が好ましい。
本発明の組成物の塗布後、基板を乾燥し、レジスト膜を形成してもよい。なお、必要により、レジスト膜の下層に、各種下地膜(無機膜、有機膜、又は、反射防止膜)を形成してもよい。
【0234】
乾燥方法としては、加熱する方法(プリベーク:PB)が挙げられる。加熱は通常の露光機、及び/又は、現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は30~1000秒間が好ましく、40~800秒間がより好ましい。
【0235】
レジスト膜の膜厚は特に制限されない。
レジスト膜がKrF露光用のレジスト膜の場合、膜厚は500nm以上であることが好ましく、800nm以上12μm以下であることがより好ましく、1μm以上6μm以下であることが更に好ましい。
レジスト膜がArF露光用又はEUV露光用のレジスト膜の場合、膜厚は10~700nmが好ましく、20~400nmがより好ましい。
本発明は、本発明の組成物を用いて形成されたレジスト膜にも関する。レジスト膜の膜厚が500nm以上の場合に、優れたCDUのパターンを形成することができるという本発明の効果が顕著に発揮される。
【0236】
レジスト膜の上層にトップコート組成物を用いてトップコートを形成してもよい。
トップコート組成物は、レジスト膜と混合せず、更にレジスト膜上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートの膜厚は、10~200nmが好ましく、20~100nmがより好ましい。
トップコートについては、特に制限されず、従来公知のトップコートを、従来公知の方法によって形成でき、例えば、特開2014-059543号公報の段落0072~0082の記載に基づいてトップコートを形成できる。
【0237】
(工程b:露光工程)
工程bは、レジスト膜を露光して、露光されたレジスト膜を得る工程である。
露光の方法としては、光源とレジスト膜の間に、マスクを配置して、又はマスクを配置せずに直接、活性光線又は放射線を照射する方法が挙げられる。
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光、X線、EB(Electron Beam)等が挙げられ、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fエキシマレーザー(157nm)、EUV(13nm)、X線、EB等が好ましい。
工程bの露光の光源はKrFであることが特に好ましい。
【0238】
露光後、現像を行う前にベーク(ポストエクスポージャーベーク:PEB)を行うことが好ましい。
加熱温度は80~150℃が好ましく、80~140℃がより好ましい。
加熱時間は10~1000秒間が好ましく、10~180秒間がより好ましい。
加熱は通常の露光機、及び/又は現像機に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
この工程は露光後ベークとも記載する。
【0239】
(工程c:現像工程)
工程cは、現像液を用いて、露光されたレジスト膜を現像し、パターンを形成する工程である。
現像方法としては、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、及び、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)が挙げられる。
また、現像を行う工程の後に、他の溶剤に置換しながら、現像を停止する工程を実施してもよい。
現像時間は未露光部の樹脂が十分に溶解する時間であれば特に制限はなく、10~300秒間が好ましく、20~120秒間がより好ましい。
現像液の温度は0~50℃が好ましく、15~35℃がより好ましい。
【0240】
現像液としては、アルカリ現像液、及び、有機溶剤現像液が挙げられる。
アルカリ現像液としては、アルカリを含むアルカリ水溶液を用いることが好ましい。中でも、アルカリ現像液は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に代表される4級アンモニウム塩の水溶液であることが好ましい。アルカリ現像液には、アルコール類、界面活性剤等を適当量添加してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常、0.1~20質量%である。また、アルカリ現像液のpHは、通常、10.0~15.0である。
【0241】
有機溶剤現像液とは、有機溶剤を含む現像液である。
有機溶剤現像液に用いられる有機溶剤としては、公知の有機溶剤が挙げられ、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び、炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0242】
(他の工程)
本発明のパターン形成方法は、上記工程cの後に、リンス液を用いて洗浄する工程を含むことができる。
アルカリ現像液を用いて現像する工程の後のリンス工程に用いるリンス液としては、例えば、純水が挙げられる。なお、リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0243】
有機系現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、レジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液は、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及び、エーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いるのが好ましい。なお、リンス液には、界面活性剤を適当量添加してもよい。
【0244】
また、形成されたパターンをマスクとして、基板のエッチング処理を実施してもよい。つまり、工程cにて形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)を加工して、基板にパターンを形成してもよい。
基板(又は、下層膜及び基板)の加工方法は特に制限されないが、工程cで形成されたパターンをマスクとして、基板(又は、下層膜及び基板)に対してドライエッチングを行うことにより、基板にパターンを形成する方法が好ましい。
ドライエッチングは、1段のエッチングであっても、複数段からなるエッチングであってもよい。エッチングが複数段からなるエッチングである場合、各段のエッチングは同一の処理であっても異なる処理であってもよい。
エッチングは、公知の方法をいずれも用いることができ、各種条件等は、基板の種類又は用途等に応じて、適宜、決定される。例えば、国際光工学会紀要(Proc.of SPIE)Vol.6924,692420(2008)、特開2009-267112号公報等に準じて、エッチングを実施できる。また、「半導体プロセス教本 第四版 2007年刊行 発行人:SEMIジャパン」の「第4章 エッチング」に記載の方法に準ずることもできる。
ドライエッチングとしては、酸素プラズマエッチングが好ましい。
【0245】
本発明において使用される各種材料(例えば、溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、トップコート形成用組成物等)は、金属等の不純物を含まないことが好ましい。これら材料に含まれる不純物の含有量としては、1質量ppm(parts per million)以下が好ましく、10質量ppb(parts per billion)以下がより好ましく、100質量ppt(parts per trillion)以下が更に好ましく、10質量ppt以下が特に好ましく、1質量ppt以下が最も好ましい。ここで、金属不純物としては、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mn、Mg、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Ag、As、Au、Ba、Cd、Co、Mo、Zr、Pb、Ti、V、W、及び、Zn等が挙げられる。
【0246】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いたろ過が挙げられる。フィルター孔径としては、0.20μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.01μm以下が更に好ましい。
フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン6及びナイロン66等のポリアミド樹脂が好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数又は複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び/又は材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよく、複数回ろ過する工程が循環ろ過工程であってもよい。循環ろ過工程としては、例えば、特開2002-62667号公報に開示されるような手法が好ましい。
フィルターとしては、特開2016-201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルターろ過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルターろ過と吸着材とを組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は、活性炭等の有機系吸着材を使用できる。金属吸着剤としては、例えば、特開2016-206500号公報に開示されるものが挙げられる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を低減する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、又は、装置内をフッ素樹脂等でライニング若しくはコーティングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルターろ過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、特開2015-123351号公報、特開2017-13804号公報等に記載された容器に保存されることが好ましい。
各種材料は組成物に使用する溶剤により希釈し、使用してもよい。
【0247】
また、本発明は、前述のパターン形成方法を含む、電子デバイスの製造方法にも関する。
本発明の電子デバイスは、電気電子機器(家電、OA(Office Automation)、メディア関連機器、光学用機器及び通信機器等)に、好適に、搭載されるものである。
【実施例
【0248】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
なお、実施例4、5、11及び19は、「実施例」とあるのを「参考例」に読み替えるものとする。
【0249】
<樹脂(A)及び樹脂(B)>
樹脂(A)及び樹脂(B)として下記酸分解性樹脂を用いた。
各樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、分子量分布(Mw/Mn)は、前述の方法により測定した。また、各樹脂中の繰り返し単位の組成比(単位:モル%)は、13C-NMR(nuclear magnetic resonance)により測定した。
【0250】
【化25】
【0251】
【化26】
【0252】
【化27】
【0253】
【化28】
【0254】
【化29】
【0255】
【化30】
【0256】
<光酸発生剤(C)>
光酸発生剤として使用した化合物の構造を以下に示す。
【0257】
【化31】
【0258】
【化32】
【0259】
<酸拡散制御剤(D)>
酸拡散制御剤として使用した化合物の構造を以下に示す。
【0260】
【化33】
【0261】
【化34】
【0262】
<界面活性剤(E)>
界面活性剤として下記E-X及びE-Yを用いた。
E-X:メガファック(登録商標)R-41(DIC(株)製)
【0263】
【化35】
【0264】
<溶剤(S)>
使用した溶剤を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
CyHx:シクロヘキサノン
【0265】
<レジスト組成物の調製>
下記表1及び表2に示した樹脂(A)、樹脂(B)、光酸発生剤(C)、酸拡散制御剤(D)、界面活性剤(E)及び溶剤(S)を容積100Lの撹拌槽に入れた。撹拌槽内の収容物を、23℃、150rpm(rotations per minute)の条件で12時間撹拌した。次いで、撹拌後の収容物(溶液)を孔径0.10μmのポリエチレン膜からなるフィルタを通過させて、感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物(レジスト組成物)を調製した。
表1及び表2中の各成分の含有率は、各レジスト組成物の全固形分に対する質量基準の割合である。「%」は質量基準(すなわち、「質量%」)である。固形分濃度は各レジスト組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量の質量百分率を意味する。
溶剤(S)としてはそれぞれ表1及び表2に示した化合物を表1及び表2に示した質量比率で用いた。
実施例6では、樹脂(B)として2種の化合物を表1に記載した質量比率で用いた。実施例11及び18では、光酸発生剤(C)として2種の化合物を表1及び表2に記載した質量比率で用いた。実施例17では酸拡散制御剤(D)として2種の化合物を表2に記載した質量比率で用いた。
【0266】
【表1】
【0267】
【表2】
【0268】
各レジスト組成物に含まれる樹脂(A)と樹脂(B)についての|G-G|、酸分解性基の構造が同一であるか不同であるか、S/S、|Mw-Mw|、|Mw/Mn-Mw/Mn|、及び|Mz-Mz|を下記表3に記載した。また、各レジスト組成物の粘度を下記表3に記載した。粘度は、E型粘度計(RE-85L型、東機産業株式会社製)を用いて25℃の条件で測定を行った。
|G-G|は、樹脂(A)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gと、樹脂(B)中の酸分解性基を有する繰り返し単位のモル基準の含有率Gとの差の絶対値である。
/Sは、レジスト組成物中の全固形分に対する樹脂(A)の質量基準の含有率Sと、レジスト組成物中の全固形分に対する樹脂(B)の質量基準の含有率Sとの比である。
|Mw-Mw|は、樹脂(A)の重量平均分子量Mwと、樹脂(B)の重量平均分子量Mwとの差の絶対値である。
|Mw/Mn-Mw/Mn|は、Mwを樹脂(A)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(A)の分子量分布Mw/Mnと、Mwを樹脂(B)の数平均分子量Mnで除した値である樹脂(B)の分子量分布Mw/Mnとの差の絶対値である。
|Mz-Mz|は、樹脂(A)のZ平均分子量Mzと、樹脂(B)のZ平均分子量Mzとの差の絶対値である。
【0269】
【表3】
【0270】
<パターンの形成>
ヘキサメチルジシラザン処理を施したSi基板(Advanced Materials Technology社製)上に、反射防止層を設けることなく、下記表4に示したレジスト組成物を1500rpmの回転数でスピンコートし、120℃の温度で60秒間ベーク(PreBake;PB)を行い、感活性光線性又は感放射線性膜(レジスト膜)を形成した。レジスト膜の膜厚は下記表4に記載した厚みとした。レジスト膜が形成されたウェハを、実施例1~18、比較例1~10ではKrFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/850C,波長248nm、NA0.50)を用い、実施例19ではArFエキシマレーザースキャナー(ASML製、PAS5500/1100,波長193nm、NA0.50)を用い、露光マスクを介して、ウェハ上に225ポイントのパターン露光を行った。その後、110℃の温度で60秒間ベーク(Post Exposure Bake;PEB)し、次いで、下記表4に示した現像液で60秒間現像し、その後、下記表4に示したリンス液で30秒間リンスを行い、スピン乾燥した。このようにして、面内に評価用パターン(ピッチ700nm、スペース幅300nmのラインアンドスペースパターン)が225個形成されたウェハを得た。
表4中、「TMAHaq」はテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(濃度2.38質量%)であり、「nBA」は酢酸ブチルであり、「MIBC」はメチルイソブチルカルビノール(4-メチル-2-ペンタノール)である。
【0271】
<CDUの評価>
225ポイントの評価用パターン(ピッチ700nm、スペース幅300nmのラインアンドスペースパターン)を走査型電子顕微鏡(SEM)(S-9380II、日立社製)を用いてCD(スペース幅のサイズ)測定を行った。得られたCD測定値から標準偏差を求め、3σを算出し、その値(単位:nm)をCDUの指標とした。この値が小さいほど寸法のばらつきが小さく、CDUが良好であることを示す。
【0272】
【表4】
【0273】
表4から分かるように、実施例のレジスト組成物はCDUに優れるパターンを形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0274】
本発明により、CDUに優れるパターンを形成することが可能な感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物、並びに上記感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物を用いたレジスト膜、パターン形成方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することができる。
【0275】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2020年7月29日出願の日本特許出願(特願2020-128367)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。