(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】搬送装置、及び、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20231124BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20231124BHJP
B65H 5/00 20060101ALI20231124BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20231124BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G03G21/16 195
G03G21/00 530
G03G21/00 370
B65H5/00 A
B65H5/02 Z
G03G15/00 455
(21)【出願番号】P 2020000497
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019099116
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】深尾 剛
(72)【発明者】
【氏名】今井 正和
(72)【発明者】
【氏名】永田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 亮
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-344374(JP,A)
【文献】特開2016-204160(JP,A)
【文献】特開2004-043070(JP,A)
【文献】特開平11-079518(JP,A)
【文献】米国特許第04252307(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 21/00
B65H 5/00
B65H 5/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写ベルトから定着装置に至る搬送経路においてシートを搬送する搬送部材と、
前記搬送経路の途中に設置されて、前記搬送部材によって搬送されているシートを除電する除電部材と、
前記除電部材を幅方向に移動する移動機構と、
を備え、
前記搬送部材は、前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向の範囲内であって当該範囲よりも小さな範囲内で当該シートに接するように形成され、
前記除電部材は、
前記搬送経路で搬送されるシートに前記搬送部材が接する幅方向の範囲とは異なる幅方向の範囲で当該シートに近接するように形成さ
れて、
前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向サイズに合わせて、当該シートの幅方向端部に近接するように前記移動機構によって移動されることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記搬送部材は、搬送ベルトであって、そのベルト幅が前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向の範囲内であって当該範囲よりも小さな範囲内になるように形成され、
前記除電部材は、前記搬送ベルトが設置されていない幅方向の範囲で、前記搬送経路で搬送されるシートに近接するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送経路で搬送されるシートを前記
搬送部材に密着させるための密着補助手段を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
転写ベルトから定着装置に至る搬送経路においてシートを搬送する搬送部材と、
前記搬送経路の途中に設置されて、前記搬送部材によって搬送されているシートを除電する除電部材と、
前記搬送経路で搬送されるシートを前記搬送部材に密着させるための吸引ファンと、
を備え、
前記搬送部材は、前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向の範囲内であって当該範囲よりも小さな範囲内で当該シートに接するように形成され、
前記除電部材は、
前記搬送経路で搬送されるシートに前記搬送部材が接する幅方向の範囲とは異なる幅方向の範囲で当該シートに近接するように形成されて、
前記搬送経路におけるシートの搬送方向に対する位置が、前記吸引ファンの前記搬送方向の位置に略一致する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記搬送部材は、搬送ベルトであって、
前記除電部材は、前記搬送ベルトにおけるシートの搬送方向に対する位置が、中央又は中央よりも下流側であることを特徴とする
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記除電部材は、少なくとも、前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向端部に近接するように形成されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記除電部材は、除電針であることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれかに記載の搬送装置と、前記転写ベルトと、前記定着装置と、を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙などのシートを搬送する搬送装置と、それを備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機等の画像形成装置と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、2次転写ベルトなどの転写ベルトから送出されたシートを定着装置に向けて搬送するために、転写ベルトから定着装置に至る搬送経路に搬送ベルトを設置したものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
転写ベルトと、中間転写ベルトや感光体ドラムなどの像担持体と、が当接する転写ニップで画像が転写されたシートは、転写ベルトによって搬送されて転写ベルトから分離された後に、搬送ベルトによって定着装置の定着ニップに向けて搬送される。
【0003】
一方、特許文献2には、転写ローラと搬送ベルトとの間に除電部材を設置する技術が開示されている。転写ローラと感光体ドラムとが当接する転写ニップで画像が転写されたシートは、転写ニップを通過した直後に除電部材によって除電されて、その後に搬送ベルトによって定着装置に向けて搬送される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1の技術は、転写ベルトから定着装置に至る搬送経路に搬送ベルトを設置しているため、その搬送経路が長い場合であっても、搬送ベルトによってシートを確実に搬送することができる。しかし、転写ベルトから送出されたシートが帯電したままの状態で搬送ベルトによって搬送されることで、定着装置の入口側でシートが静電力によって浮き上がってしまい、定着ニップにシートが良好に送入されずに、シートが耳折れしてしまう不具合などが生じてしまうことがあった。
これに対して、特許文献2の技術を応用して、転写ベルトと搬送ベルトとの間に除電部材を設置して、シートを除電する方策が考えられる。しかし、シートに対する除電効果を高めるために、転写ベルトから搬送ベルトに受け渡されるシートに近接するように除電部材を設置してしまうと、除電部材によってシートの搬送性が損なわれてしまう可能性がある。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、転写ベルトから定着装置に至る搬送経路において、シートが静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明における搬送装置は、転写ベルトから定着装置に至る搬送経路においてシートを搬送する搬送部材と、前記搬送経路の途中に設置されて、前記搬送部材によって搬送されているシートを除電する除電部材と、前記除電部材を幅方向に移動する移動機構と、を備え、前記搬送部材は、前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向の範囲内であって当該範囲よりも小さな範囲内で当該シートに接するように形成され、前記除電部材は、前記搬送経路で搬送されるシートに前記搬送部材が接する幅方向の範囲とは異なる幅方向の範囲で当該シートに近接するように形成されて、
前記搬送経路で搬送されるシートの幅方向サイズに合わせて、当該シートの幅方向端部に近接するように前記移動機構によって移動されるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、転写ベルトから定着装置に至る搬送経路において、シートが静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送される、搬送装置、及び、画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施の形態における画像形成装置を示す全体構成図である。
【
図3】2次転写ベルト装置と搬送装置と定着装置とその近傍とを示す概略図である。
【
図4】2次転写ベルト装置と搬送装置と定着装置とを示す上面図である。
【
図6】変形例1としての搬送装置とその近傍とを示す上面図である。
【
図7】変形例2としての搬送装置とその近傍とを示す上面図である。
【
図8】変形例3としての搬送装置とその近傍とを示す上面図である。
【
図9】変形例4としての搬送装置とその近傍とを示す概略図である。
【
図10】
図9の搬送装置とその近傍とを示す上面図である。
【
図11】除電される前後のシートの電位差と、チリ/放電跡のランクと、の関係を示すグラフである。
【
図12】搬送中のシートの搬送方向の位置と、シートの電位と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
まず、
図1及び
図2にて、画像形成装置100における全体の構成・動作について説明する。
図1は画像形成装置としてのプリンタを示す構成図であり、
図2はその作像部の一部を示す拡大図である。
図1に示すように、画像形成装置本体100の中央には、中間転写ベルト8(中間転写ベルト装置)が設置されている。また、中間転写ベルト8に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y、6M、6C、6Kが並設されている。また、中間転写ベルト8の下方には、2次転写ベルト装置69や搬送装置60や定着装置50が設置されている。さらに、その下方には、給紙装置26が設置されている。
【0011】
図2を参照して、イエローに対応した作像部6Yは、感光体ドラム1Yと、感光体ドラム1Y(感光体)の周囲に配設された帯電部4Y、現像部5Y、クリーニング部2Y、潤滑剤供給装置3、除電部、等で構成されている。そして、感光体ドラム1Y上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程、除電工程)がおこなわれて、感光体ドラム1Y上にイエロー画像が形成されることになる。
【0012】
なお、他の3つの作像部6M、6C、6Kも、使用されるトナーの色が異なる以外は、イエローに対応した作像部6Yとほぼ同様の構成となっていて、それぞれのトナー色に対応した画像が形成される。以下、他の3つの作像部6M、6C、6Kの説明を適宜に省略して、イエローに対応した作像部6Yのみの説明をおこなうことにする。
【0013】
図2を参照して、感光体ドラム1Yは、メインモータによって反時計方向に回転駆動される。そして、帯電部4Yの位置で、感光体ドラム1Yの表面が一様に帯電される(帯電工程である。)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、露光部7から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での幅方向(
図1、
図2の紙面垂直方向であって、主走査方向である。)の露光走査によってイエローに対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
【0014】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、現像部5Yとの対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、イエローのトナー像が形成される(現像工程である。)。
その後、感光体ドラム1Yの表面は、中間転写ベルト8及び1次転写ローラ9Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト8の表面に1次転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム1Y上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
【0015】
その後、感光体ドラム1Yの表面は、クリーニング部2Yとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1Y上に残存した未転写トナーがクリーニングブレード2aによってクリーニング部2Y内に回収される(クリーニング工程である。)。
ここで、クリーニング部2Yの内部には、潤滑剤供給ローラ3a、固形潤滑剤3b、圧縮スプリング3cなどからなる潤滑剤供給装置3(感光体用潤滑剤供給装置)が内設されている。そして、
図2の時計方向に回転する潤滑剤供給ローラ3aによって、固形潤滑剤3bから潤滑剤が少量ずつ削られて、潤滑剤供給ローラ3aによって感光体ドラム1Yの表面に潤滑剤が供給されることになる。
最後に、感光体ドラム1Yの表面は、除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム1Y上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
【0016】
なお、上述した作像プロセスは、他の作像部6M、6C、6Kでも、イエロー作像部6Yと同様におこなわれる。すなわち、作像部の上方に配設された露光部7から、画像情報に基いたレーザ光Lが、各作像部6M、6C、6Kの感光体ドラム1M、1C、1K上に向けて照射される。
その後、各現像部5M、5C、5Kによる現像工程を経て各感光体ドラム1M、1C、1K上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト8上に重ねて1次転写する。こうして、中間転写ベルト8上にカラー画像が形成される。
【0017】
ここで、中間転写ベルト8は、複数のローラ部材16~22、40によって張架・支持されるとともに、駆動モータによる1つのローラ部材(駆動ローラ16)の回転駆動によって
図3中の矢印方向に無端移動される。
4つの1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。そして、1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kに、トナーの極性とは逆の極性の転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。
そして、中間転写ベルト8は、矢印方向に走行して、1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト8の表面に重ねて1次転写される(1次転写工程である。)。
【0018】
その後、各色のトナー像が重ねて1次転写された中間転写ベルト8は、転写ベルトとしての2次転写ベルト72との対向位置に達する。この位置では、2次転写対向ローラ40が、2次転写ローラ70との間に中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを挟み込んで2次転写ニップ(転写ニップ)を形成している。そして、中間転写ベルト8上に形成された4色のトナー像は、この2次転写ニップの位置に搬送された用紙等のシートP上に2次転写される(2次転写工程である。)。このとき、中間転写ベルト8には、シートPに転写されなかった未転写トナーが残存する。
【0019】
その後、中間転写ベルト8は、中間転写クリーニング部10の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8の表面に付着した未転写トナーなどの付着物が除去される。
さらに、中間転写ベルト8は、中間転写潤滑剤供給装置30の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト8の表面に潤滑剤が供給される。
こうして、中間転写ベルト8上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
【0020】
ここで、
図1を参照して、2次転写ニップの位置に搬送されるシートPは、装置本体100の下方に配設された給紙装置26から、給紙ローラ27やレジストローラ対28等を経由して搬送されるものである。
詳しくは、給紙装置26には、用紙等のシートPが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ27が
図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上のシートPが搬送経路を経由してレジストローラ対28に向けて給送される。
【0021】
レジストローラ対28(タイミングローラ対)に搬送されたシートPは、回転駆動を停止したレジストローラ対28のローラニップの位置で一旦停止する。そして、中間転写ベルト8上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対28が回転駆動されて、ガイド板に案内されながら、シートPが2次転写ニップに向けて搬送される。こうして、シートP上に、所望のカラー画像が転写される。
【0022】
その後、2次転写ニップの位置でカラー画像が転写されたシートPは、2次転写ベルト72によって搬送されて、2次転写ベルト72から分離された後に、搬送装置60によって定着装置50の位置に搬送される。そして、この位置で、定着ローラ51及び加圧ローラ52による熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像がシートP上に定着される(定着工程である。)。
その後、シートPは、搬送経路を経由して、排紙ローラ対によって装置外へと排出される。排紙ローラ対によって装置外に排出されたシートPは、出力画像として、スタック部上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成動作(印刷動作)が完了する。
【0023】
次に、
図2にて、作像部における現像部5Y(現像装置)の構成・動作について、さらに詳しく説明する。
現像部5Yは、感光体ドラム1Yに対向する現像ローラ51Yと、現像ローラ51Yに対向するドクターブレード52Yと、現像剤収容部内に配設された2つの搬送スクリュ55Yと、現像剤中のトナー濃度を検知する濃度検知センサ56Yと、等で構成される。現像ローラ51Yは、内部に固設されたマグネットや、マグネットの周囲を回転するスリーブ等で構成される。現像剤収容部内には、キャリアとトナーとからなる2成分現像剤Gが収容されている。
【0024】
このように構成された現像部5Yは、次のように動作する。
現像ローラ51Yのスリーブは、
図2の矢印方向に回転している。そして、マグネットにより形成された磁界によって現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、スリーブの回転にともない現像ローラ51Y上を移動する。ここで、現像部5Y内の現像剤Gは、現像剤G中のトナーの割合(トナー濃度)が所定の範囲内になるように調整される。具体的に、現像部5Yに設置されたトナー濃度センサによってトナー濃度が低い状態が検知されたときには、トナー濃度が所定の範囲内になるように、トナー容器58から現像部5Y内に新品トナーが補給される。
その後、トナー容器58から現像剤収容部内に補給されたトナーは、2つの搬送スクリュ55Yによって、現像剤Gとともに混合・撹拌されながら、隔絶された2つの現像剤収容部を循環する(
図2の紙面垂直方向の移動である。)。そして、現像剤G中のトナーは、キャリアとの摩擦帯電によりキャリアに吸着して、現像ローラ51Y上に形成された磁力によりキャリアとともに現像ローラ51Y上に担持される。
【0025】
現像ローラ51Y上に担持された現像剤Gは、
図2中の矢印方向に搬送されて、ドクターブレード52Yの位置に達する。そして、現像ローラ51Y上の現像剤Gは、この位置で現像剤量が適量化された後に、感光体ドラム1Yとの対向位置(現像領域である。)まで搬送される。そして、現像領域に形成された電界によって、感光体ドラム1Y上に形成された潜像にトナーが吸着される。その後、現像ローラ51Y上に残った現像剤Gはスリーブの回転にともない現像剤収容部の上方に達して、この位置で現像ローラ51Yから離脱される。
なお、トナー容器58は、現像部5Y(画像形成装置100)に対して着脱可能(交換可能)に設置されている。そして、トナー容器58は、その内部に収容された新品のトナーが空になると、現像部5Y(画像形成装置100)から取り外されて新品のものに交換されることになる。
【0026】
次に、
図3等を用いて、本実施の形態における中間転写ベルト装置について詳述する。
図3を参照して、中間転写ベルト装置は、中間転写ベルト8、4つの1次転写ローラ9Y、9M、9C、9K 、駆動ローラ16、従動ローラ17、転写前ローラ18、テンションローラ19、クリーニング対向ローラ20、潤滑剤対向ローラ21、バックアップローラ22、中間転写クリーニング部10、中間転写潤滑剤供給装置30、2次転写対向ローラ40、等で構成される。
中間転写ベルト8は、各色のトナー像をそれぞれ担持する4つの感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに当接して1次転写ニップを形成している。中間転写ベルト8は、主として8つのローラ部材(駆動ローラ16、従動ローラ17、転写前ローラ18、テンションローラ19、クリーニング対向ローラ20、潤滑剤対向ローラ21、バックアップローラ22、2次転写対向ローラ40、である。)によって張架され支持されている。
本実施の形態において、中間転写ベルト8は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、等を単層又は複数層に構成して、カーボンブラック等の導電性材料を分散させたものである。
【0027】
1次転写ローラ9Y、9M、9C、9Kは、それぞれ、中間転写ベルト8を介して対応する感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kに当接している。詳しくは、イエロー用の転写ローラ9Yは中間転写ベルト8を介してイエロー用の感光体ドラム1Yに当接して、マゼンタ用の転写ローラ9Mは中間転写ベルト8を介してマゼンタ用の感光体ドラム1Mに当接して、シアン用の転写ローラ9Cは中間転写ベルト8を介してシアン用の感光体ドラム1Cに当接して、ブラック用(黒色用)の転写ローラ9Kは中間転写ベルト8を介してブラック用(黒色用)の感光体ドラム1Kに当接している。
【0028】
駆動ローラ16は、4つの感光体ドラムに対して中間転写ベルトの走行方向下流側の位置で、中間転写ベルト8が120度程度の巻付角度で巻き付けられた状態で中間転写ベルト8の内周面に当接するように配置されている。駆動ローラ16は、制御部によって制御される駆動モータによって
図3の時計方向に回転駆動される。これにより、中間転写ベルト8は所定の走行方向(
図3の時計方向である。)に走行することになる。
【0029】
従動ローラ17は、4つの感光体ドラムに対して中間転写ベルト8の走行方向上流側の位置で、中間転写ベルト8が180度程度の巻付角度で巻き付けられた状態で中間転写ベルト8の内周面に当接するように配置されている。中間転写ベルト8において、従動ローラ17から駆動ローラ16に至る部分は、ほぼ水平面になるように設定されている。従動ローラ17は、中間転写ベルト8の走行にともない
図3の時計方向に従動回転する。
【0030】
テンションローラ19は、中間転写ベルト8の外周面に当接している。転写前ローラ18、クリーニング対向ローラ20、潤滑剤対向ローラ21、バックアップローラ22、2次転写対向ローラ40は、中間転写ベルト8の内周面に当接している。
2次転写対向ローラ40と潤滑剤対向ローラ21との間には、中間転写ベルト8を介してクリーニング対向ローラ20に当接するように中間転写クリーニング部10(クリーニングブレード)が設置されている。
クリーニング対向ローラ20とテンションローラ19との間には、中間転写ベルト8を介して潤滑剤対向ローラ21に当接するように中間転写潤滑剤供給装置30が設置されている。中間転写潤滑剤供給装置30は、感光体ドラム用の潤滑剤供給装置3と同様に、潤滑剤供給ローラ、固形潤滑剤、圧縮スプリングなどからなる。そして、
図3の反時計方向に回転する潤滑剤供給ローラによって、固形潤滑剤から潤滑剤が少量ずつ削られて、潤滑剤供給ローラによって中間転写ベルト8の表面に潤滑剤が供給されることになる。
駆動ローラ16を除くローラ部材17~22、40は、いずれも、中間転写ベルト8の走行にともない従動回転する。
【0031】
図3を参照して、2次転写対向ローラ40は、中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを介して2次転写ローラ70に当接している。2次転写対向ローラ40は、ステンレス鋼等からなる円筒状の芯金の外周面に、体積抵抗が10
7~10
8Ω程度で、硬度(JIS-A硬度)が48~58度程度のNBRゴムからなる弾性層83(層厚は5mm程度である。)が形成されたものである。
【0032】
また、本実施の形態において、2次転写対向ローラ40は、電源部に電気的に接続されていて、その電源部から-5kV程度の高圧電圧となる2次転写バイアスが印加される。この2次転写対向ローラ40に印加される2次転写バイアスは、2次転写ニップに搬送されるシートPに、中間転写ベルト8の表面に1次転写されたトナー像を2次転写するためのものであって、トナーの極性と同じ極性(本実施の形態ではマイナス極性である。)の2次転写バイアス(直流電圧)である。これにより、中間転写ベルト8のトナー担持面(外周面)に担持されたトナーが、2次転写電界によって2次転写対向ローラ40側から2次転写装置69側に向かって静電移動することになる。
なお、本実施の形態では、2次転写対向ローラ40にマイナス極性の2次転写バイアスを印加したが、2次転写ローラ70(2次転写ベルト72)にプラス極性の2次転写バイアスを印加することもできるし、双方のローラ40、70に2次転写バイアスを印加することもできる。
【0033】
次に、
図3、
図4等を用いて、2次転写装置69について詳述する。
図3、
図4等を参照して、2次転写装置69は、転写ベルトとしての2次転写ベルト72、2次転写ローラ70、分離ローラ71、2次転写ブレード73(クリーニングブレード)、等で構成される。2次転写ベルト装置69を設けることで、2次転写ニップから送出されるシートPを良好に搬送することができて、さらにシートPの2次転写ベルト72からのシートPの分離性を高めることができる。
【0034】
2次転写ベルト72(転写ベルト)は、複数のローラ部材(2次転写ローラ70と分離ローラ71とである。)に張架・支持された無端ベルトであって、中間転写ベルト8とほぼ同じ材料で形成されている。2次転写ベルト72は、当接部材としての中間転写ベルト8に当接して2次転写ニップを形成するとともに、2次転写ニップから送出されたシートPを搬送するものである。
【0035】
2次転写ローラ70は、2次転写対向ローラ40との間に中間転写ベルト8と2次転写ベルト72とを挟んで2次転写ニップを形成している。2次転写ローラ70は、ステンレス鋼、アルミニウム等からなる中空状の芯金上に、硬度(アスカーC硬度)が40~50度程度の弾性層が形成(被覆)されたものである。2次転写ローラ70の弾性層は、ポリウレタン、EPDM、シリコーン等のゴム材料に、カーボン等の導電性フィラーを分散させたり、イオン性の導電材料を含有させたりして、ソリッド状又は発泡スポンジ状に形成することができる。なお、
図4を参照して、2次転写ベルト72は、その幅方向の範囲が、いずれも、通紙可能な最大サイズのシートPの幅方向範囲を含むように構成されている。
また、2次転写ローラ70は、制御部によって制御されるモータによって
図3の反時計方向に回転駆動されて、2次転写ベルト72を
図3の反時計方向に回転(走行)させるとともに、分離ローラ71を
図3の反時計方向に従動回転させる。
【0036】
分離ローラ71は、2次転写ニップに対してシートPの搬送方向の最下流側に配置されている。2次転写ニップから送出されたシートPは、
図3の反時計方向に走行する2次転写ベルト72に沿うように搬送された後に、分離ローラ71の位置で、分離ローラ71の外周に沿うように曲面が形成された2次転写ベルト72によって、2次転写ベルト72から分離(曲率分離)されることになる。このように2次転写ベルト72を用いた装置では、分離ローラ71の位置で曲率分離することができるため、シートPを分離するために特別なバイアスの印加はおこなっていない。
なお、本実施の形態では、2次転写ローラ70と分離ローラ71との2つのローラ部材によって2次転写ベルト72を張架するように構成したが、3つ以上のローラ部材によって2次転写ベルト72を張架・支持するように構成することもできる。
【0037】
2次転写ブレード73は、2次転写ベルト72の表面に当接して、2次転写ベルト72の表面に付着したトナーや紙粉などの異物を除去するものである。2次転写ブレード73は、2次転写ベルト72の走行方向に対してカウンタ方向に当接するように、2次転写ベルト72を介して2次転写ローラ70に圧接している。2次転写ブレード73は、ウレタンゴムなどのゴム材料からなる厚さが1~5mm程度の板状のブレード本体が、板金からなるホルダに保持されたものである。
【0038】
次に、
図3、
図4等を用いて、定着装置50について詳述する。
図3に示すように、定着装置50は、定着回転体としての定着ローラ51、加熱手段としてのヒータ53、加圧回転体としての加圧ローラ52、定着前ガイド板80、等で構成されている。
ここで、定着ローラ51は、ステンレス鋼などの金属材料からなる中空構造の芯金上に、弾性層、離型層が順次積層された多層構造のローラ部材であって、加圧ローラ52に圧接してニップ部(定着ニップ)を形成している。定着ローラ51は、駆動モータによって
図3の時計方向に回転駆動される。
中空構造の定着ローラ51の内部には加熱手段としてのヒータ53(加熱源)が固設されている。電源部からヒータ53に電力が供給されて、ヒータ53からの輻射熱によって定着ローラ51が加熱されて、さらに加熱された定着ローラ51の表面からシートP上のトナー像に熱が加えられる。
また、加圧ローラ52は、主として、芯金と、芯金の外周面に接着層を介して形成された弾性層と、からなる。加圧ローラ52は、定着ローラ51の回転にともない、
図2の反時計方向に従動回転する。
また、定着前ガイド板80は、亜鉛処理鋼板などの金属材料や耐熱性樹脂材料などで形成された板状部材である。定着前ガイド板80は、搬送装置60と定着装置50との間であって、シートPの非定着面(下面)に対向するように設置されている。そして、搬送装置60から送出されたシートP(未定着画像が担持されたシートである。)は、定着前ガイド板80に案内されながら、定着ニップに向けて搬送されることになる。なお、定着前ガイド板80は、電荷が蓄積されないように接地しておくことが好ましい。
なお、
図4を参照して、定着ローラ51、加圧ローラ52、定着前ガイド板80は、いずれも、その幅方向の範囲が、通紙可能な最大サイズのシートPの幅方向範囲を含むように構成されている。
【0039】
以下、本実施の形態における画像形成装置100において特徴的な、搬送装置60の構成・動作について詳述する。
図3、
図4に示すように、搬送装置60は、2次転写ベルト装置69から送出されたシートPを定着装置50に向けて搬送するための装置である。このように2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路に搬送ベルト61(搬送装置60)を設置することで、その搬送経路が長い場合であっても、搬送ベルト61によってシートPを確実に搬送することができる。
本実施の形態における搬送装置60は、搬送部材としての搬送ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、除電部材としての除電針64、フレーム65、などで構成されている。
【0040】
搬送ベルト61は、2次転写ベルト72(転写ベルト)から定着装置50に至る搬送経路においてシートPを搬送する搬送部材として機能するものである。搬送ベルト61は、複数のローラ部材(駆動ローラ62と従動ローラ63とである。)によって張架・支持されるとともに、駆動モータによる駆動ローラ62の回転駆動によって
図3の反時計方向に走行(無端移動)される。搬送ベルト61は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)、等で形成することができる。駆動ローラ62と従動ローラ63とは、軸部上に2つのローラ部が隙間をあけて並設されたものであって、装置60のフレーム65(筐体)に軸受を介して回転可能に保持されている。
【0041】
ここで、
図4を参照して、本実施の形態における搬送ベルト61(搬送部材)は、搬送装置60における搬送経路で搬送されるシートPの幅方向の範囲M内であって、その範囲Mよりも小さな範囲内でシートPに接するように形成されている。すなわち、搬送ベルト61は、そのベルト幅(搬送方向に直交する幅方向の長さであって、
図4の上下方向の長さである。)が、搬送経路で搬送されるシートPの幅方向の範囲M内であって、その範囲Mよりも小さな範囲内になるように形成されている。
特に、本実施の形態では、2つの搬送ベルト61が、一点鎖線で示す中央基準を中心に幅方向に等間隔で隙間をあけて並設されているが、それらの2つの搬送ベルト61が上述した範囲M内に収まるように配置されている。また、これらの2つの搬送ベルト61の搬送面は、搬送装置60のフレーム65(筐体)に形成した開口から露呈するように構成されている。
なお、2つの搬送ベルト61は、画像形成装置100において通紙可能な最小サイズのシートPを搬送可能に構成されている。具体的に、2つの搬送ベルト61は、最小サイズのシートPの幅方向の範囲M´内に収まるように配置されている。
【0042】
図3、
図4を参照して、除電針64は、搬送装置60における搬送経路の途中に設置されて、搬送ベルト61(搬送部材)によって搬送されているシートPを除電する除電部材として機能する。除電針64(除電部材)は、薄い金属板の先端側(
図3の上方である。)に複数の針状部材を配列したものであって、接地されている。
そして、本実施の形態において、除電針64(除電部材)は、搬送装置60における搬送経路で搬送されるシートPに搬送ベルト61が接する幅方向の範囲とは異なる幅方向の範囲で、そのシートPに近接するように形成されている。すなわち、除電針64は、搬送ベルト61が設置されていない幅方向の範囲(搬送ベルト61のベルト幅の範囲外である。)で、搬送経路で搬送されるシートPに近接するように形成されている。このような除電針64の幅方向の範囲は、搬送ベルト61によるシートPの搬送を妨げない範囲である。
特に、本実施の形態では、2つの除電針64(除電部材)が、一点鎖線で示す中央基準を中心に幅方向に等間隔で隙間をあけて並設されているが、それらの2つの除電針64は搬送ベルト61の範囲外である幅方向両端部にそれぞれ配置されている。また、これらの2つの除電針64の先端部は、搬送装置60のフレーム65(筐体)に形成した開口から露呈して、搬送ベルト61によって搬送されるシートPの両端部に対向(又は、軽接触)するように構成されている。具体的に、除電針64は、その先端の高さ方向の位置が、搬送ベルト61の搬送面と同等か、搬送面よりも僅かに上方に突出するように配置されている。
また、除電針64(除電部材)は、2次転写ベルト72の最下流部(分離ローラ71の位置である。)から充分に離れた位置であって、搬送ベルト61の搬送方向のほぼ中央部に対応する位置に配置されている。
【0043】
このように、本実施の形態では、搬送ベルト61による搬送経路の途中であって、搬送ベルト61の幅方向の範囲外に、搬送中のシートPに近接可能に除電針64を設置しているため、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路において、シートPが静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送されることになる。
【0044】
詳しくは、
図5(A)に示す従来の搬送装置160のように、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路において除電部材を設けない場合には、2次転写工程時に2次転写バイアスの印加により帯電したシートP(本実施の形態の場合、マイナス極性で帯電したシートである。)が、分離バイアスを印加されることなく2次転写ベルト72から分離されて搬送ベルト61に担持されるため、シートPが帯電したままの状態の搬送ベルト61によって定着装置50に向けて搬送されてしまう。そのため、
図5(A)にて破線で囲んだ部分を参照して、定着装置50の入口側でシートPが静電力によって浮き上がってしまい、定着ニップにシートPが良好に送入されずに、シートPが耳折れしてしまう不具合などが生じてしまいやすい。
これに対して、本実施の形態では、シートPの重力と搬送ベルト61による搬送力とにより、搬送ベルト61にほぼ密着した状態で搬送されるシートPに除電針64を近接させて、シートPの除電をおこなっているため、定着ニップに至る搬送経路においてシートPが静電力によって浮き上がってしまう現象が軽減される。そのため、定着ニップにシートPが良好に送入されて、シートPが耳折れしてしまう不具合などが生じにくくなる。
【0045】
また、
図5(B)に示す搬送装置160のように、2次転写ベルト装置69と搬送装置160との間に除電針164(除電部材)を設ける場合には、シートPに対する除電効果を高めるために、2次転写ベルト72から搬送ベルト61に受け渡されるシートPに近接するように除電針164を設置しなければならず、除電針164によってシートPの搬送性が損なわれてしまう可能性がある。すなわち、
図5(B)にて破線で囲んだ部分を参照して、シートPが2次転写ベルト72から搬送ベルト61に受け渡されるときに除電針164に干渉してしまいやすくなる。
これに対して、本実施の形態では、シートPの重力と搬送ベルト61による搬送力とにより、搬送ベルト61にほぼ密着した状態で搬送されるシートPに対して、その搬送を妨げない位置で除電針64を近接させて、シートPの除電をおこなっているため、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路においてシートPが良好に搬送されることになる。
特に、2次転写ベルト装置69から充分に離れた位置に除電針64を設置しているため、2次転写ベルト装置69の位置で付与されたシートPの電荷が自然に空気中に放電されて、シートPの電位がある程度低下した状態で、除電針64によるシートPの除電がおこなわれることになる。そのため、除電によるシートPの電位変化が小さくなり、シートP上のトナーが散りにくくなる。すなわち、画像チリによる画質低下を防止することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、除電部材として先端が尖頭状の除電針64を用いているため、2次転写ベルト72から送出されたシートPに蓄えられた電荷を集中して針部に放電させることができるため、簡単な構成でシートPの除電を効率的におこなうことができる。
なお、本実施の形態では、除電針64(除電部材)を接地したが、電源から除電針64(除電部材)に所定のDC電圧(又は、AC電圧)を印加しても良い。
【0047】
ここで、本実施の形態では、
図4に示すように、除電針64(除電部材)は、少なくとも、搬送装置60における搬送経路で搬送されるシートPの幅方向端部に近接するように形成されている。
詳しくは、2つの除電針のうち、一方の除電針64(
図4の上方の除電針である。)は、シートPの幅方向一端側の端部に近接するように配置されて、他方の除電針64(
図4の下方の除電針である。)は、シートPの幅方向他端側の端部に近接するように配置されている。すなわち、搬送ベルト61によって搬送されるシートPは、幅方向中央部が搬送ベルト61に接して、幅方向両端部がそれぞれ除電針64に対向(又は、摺接)することになる。
先に説明した定着装置50の入口側でのシートPの静電力による浮き上がりは、シートPの幅方向両端部で生じやすいため、本実施の形態のように、シートPの幅方向両端部を除電針64に積極的に近接させることで、そのようなシートPの浮き上がりを軽減して、耳折れの発生を生じにくくすることができる。
【0048】
<変形例1>
図6は、変形例1としての搬送装置60とその近傍とを示す上面図であって、本実施の形態における
図4に対応する図である。
図6に示すように、変形例1における搬送装置60には、本実施の形態のものとは異なり、幅方向両端部にそれぞれ設置された除電針64に加えて、幅方向中央部にも除電針64が設置されている。そして、これらの3つの除電針64は、いずれも、搬送ベルト61における搬送方向中央部の位置であって、搬送ベルト61の幅方向の範囲外に設置されている。
このように構成された変形例1における搬送装置60も、本実施の形態のものと同様に、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路において、シートPを静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送することができる。
特に、変形例1では、シートPに対して幅方向両端部に加えて幅方向中央部も除電針64によって積極的に除電しているため、画像チリによる画質低下をさらに軽減することができる。
【0049】
<変形例2>
図7は、変形例2としての搬送装置60とその近傍とを示す上面図であって、本実施の形態における
図4に対応する図である。
図7に示すように、変形例2における搬送装置60には、除電針64(除電部材)を幅方向(
図7の上下方向である。)に移動する移動機構91が設置されている。
そして、除電針64(除電部材)は、搬送装置60における搬送経路で搬送されるシートPの幅方向サイズに合わせて、そのシートPの幅方向端部に近接するように移動機構91によって移動される。具体的に、
図7(A)に示すように、幅方向長さがM1のシートP(例えば、A4縦サイズのシートPである。)が搬送されるときには、制御部90によって制御される移動機構91によって、その幅方向サイズM1に合わせて除電針64が黒矢印方向(幅方向中央側)に向けて移動される。これに対して、
図7(B)に示すように、幅方向長さがM2(>M1)のシートP(例えば、A3縦サイズのシートPである。)が搬送されるときには、制御部90によって制御される移動機構91によって、その幅方向サイズM2に合わせて除電針64が黒矢印方向(幅方向端部側)に向けて移動される。
このように構成された変形例2における搬送装置60では、搬送されるシートPの幅方向サイズに関わらず、シートPを静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送することができる。
なお、除電針64を移動する移動機構91としては、例えば、ラック・ピニオン機構や、カム機構などを用いることができる。また、シートPの幅方向サイズは、給紙装置26などに設置されたサイズ検知センサ93によって直接的に検知してもよいし、装置本体100の外装部に設置された操作パネル92にユーザーによって入力されたシートPに関する情報に基づいて間接的に検知してもよい。そして、そのような検知結果に基づいて、制御部90によって移動機構91が制御されることになる。
また、除電針64を手動で移動するように構成する場合には、給紙装置26のサイドフェンス(シートPの幅方向の位置を定める部材である。)の手動操作による幅方向の移動に連動して、除電針64を幅方向に移動させることができる。
【0050】
<変形例3>
図8は、変形例3としての搬送装置60とその近傍とを示す上面図であって、本実施の形態における
図4に対応する図である。
図8に示すように、変形例3における搬送装置60は、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路においてシートPを搬送する搬送部材として、搬送ベルト61の代わりに、複数の搬送ローラ68が設けられている。
詳しくは、3つの搬送ローラ68は、それぞれ、軸部上に複数のローラ部が幅方向に隙間をあけて形成されたものである。3つの搬送ローラ68は、搬送方向に間隔をあけて並設されていて、それぞれが搬送方向に沿うように回転することでシートPを搬送する。
そして、変形例3においても、搬送装置60における搬送経路中であって、搬送ローラ68において搬送部材として機能するローラ部の幅方向の範囲外(ローラ幅の範囲外)に、搬送中のシートPに近接可能に除電針64が設置されている。
このように構成された変形例3における搬送装置60も、本実施の形態のものと同様に、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路において、シートPを静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送することができる。
【0051】
<変形例4>
図9は、変形例4としての搬送装置60とその近傍とを示す上面図であって、本実施の形態における
図3に対応する図である。
図10は、変形例4としての搬送装置60とその近傍とを示す上面図であって、本実施の形態における
図4に対応する図である。
図9、
図10に示すように、変形例4における搬送装置60も、本実施の形態や変形例1~3のものと同様に、搬送部材としての搬送ベルト61、駆動ローラ62、従動ローラ63、除電部材としての除電針64、フレーム65、などで構成されている。ここで、変形例4における搬送装置60には、さらに密着補助手段としての吸引ファン66が設置されている。この吸引ファン66は、搬送経路で搬送されるシートPを搬送ベルト61に密着させるための密着補助手段として機能するものである。
詳しくは、吸引ファン66は、搬送ベルト61の内周面に対向するようにフレーム65に設置されていて、搬送ベルト61を介してシートP(搬送ベルト61によって搬送されるシートPである。)に対向するように配置されている。また、搬送ベルト61には、そのベルト面の全域にわたって複数の穴(シートPの搬送を妨げない程度の小さな貫通穴である。)が形成されている。また、吸引ファン66は、少なくとも、搬送ベルト61上にシートPがあるときには、オン状態(吸引状態)になるように制御されている。
このように、吸引ファン66(密着補助手段)を設置することにより、搬送ベルト61にシートPを重力のみによって密着させるように構成した場合に比べて、種々の外乱が生じても搬送ベルト61に対してシートPが安定的に密着することになる。したがって、搬送中のシートPと除電針64(除電部材)との距離もバラツキなく安定して、除電針64の機能が効率的に発揮されて、シートPが静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送される。特に、変形例4では、密着補助手段として、静電気力によって搬送ベルト61に密着させる手段を用いるのではなくて、そのような静電気力が生じない吸引ファン66を用いているため、除電針64(除電部材)の除電効率に影響することがない。
なお、変形例4において、除電針64(除電部材)は、搬送方向(搬送経路におけるシートPの搬送方向であって、
図9、
図10の左右方向である。)に対する位置が、吸引ファン66の搬送方向の位置に略一致している。すなわち、除電針64と吸引ファン66とは、
図9、
図10の左右方向の位置が互いにほぼ一致するように配置されている。これは、吸引ファン66に対して搬送方向の位置が近い位置では、遠い位置に比べて、シートPに対する吸引力が強くて、搬送ベルト61に対するシートPの密着性が高いためである。すなわち、除電針64と吸引ファン66との搬送方向の位置を近くすることによって、除電針64の機能が効率的に発揮されることになる。
【0052】
また、変形例4において、除電針64(除電部材)は、搬送ベルト61におけるシートPの搬送方向に対する位置が、中央又は中央よりも下流側であるように配置されている。すなわち、
図10を参照して、除電針64は、搬送ベルト61における搬送方向の位置関係が、X1≧X2となるように配置されている。なお、X1+X2が、搬送ベルト61の搬送面の搬送方向長さになる。
これにより、シートPは、除電にともなう異常画像(チリ/放電跡)の発生が軽減されつつ、自然放電により一定電位以下に電位が低下した後に除電針64により効率的に除電されることになる。
詳しくは、
図11は、除電される前後のシートPの電位差(用紙電位差)と、異常画像(チリ/放電跡)の発生状況と、の関係を示したグラフである。
図11に示すように、異常画像は電位差が大きくなるほど程度が悪くなる傾向があって、画像が許容レベル(ランク4以上)になる範囲は、装置の使用環境が高温高湿であるときには1kV以下に、低温低湿であるときには6kV以下にする必要がある。
一方、
図12は、搬送中のシートPの搬送方向の位置と、シートPの電位(用紙電位)と、の関係を示したグラフである。
図12に示すように、シートPは、搬送中に徐々に放電していくため、2次転写工程の直後に比べて電位が低下していくが、搬送装置60の出口(定着装置50の入口)までに完全に0Vになることはない。一方、シートPは、除電針64(除電部材)を通過した後に電位が0Vになるため、0Vと通過前との電位差が、除電前後の電位差になる。チリ/放電跡を許容レベルにするためには、除電前後の電位差(用紙電位差)を
図11にて説明した範囲(高温高湿で1kV以下、低温低湿で6kV以下)にする必要がある。したがって、除電針64の搬送方向の位置が、搬送ベルト61の中央又は中央よりも下流側であることにより、異常画像(チリ/放電跡)の発生を軽減しつつ、除電針64により効率的に除電することが可能になる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態における搬送装置60は、2次転写ベルト72(転写ベルト)から定着装置50に至る搬送経路においてシートPを搬送する搬送ベルト61(搬送部材)と、搬送経路の途中に設置されて搬送ベルト61によって搬送されているシートPを除電する除電針64(除電部材)と、が設置されている。搬送ベルト61は、搬送経路で搬送されるシートPの幅方向の範囲M内であって、その範囲Mよりも小さな範囲内でシートPに接するように形成されている。そして、除電針64は、搬送経路で搬送されるシートPに搬送ベルト61が接する幅方向の範囲Mとは異なる幅方向の範囲でシートPに近接するように形成されている。
これにより、2次転写ベルト72から定着装置50に至る搬送経路において、シートPが静電力による浮き上がりなどなく良好に搬送される。
【0054】
なお、本実施の形態では、転写ベルトとしての2次転写ベルト72を具備した2次転写ベルト装置69が設けられた画像形成装置100に対して、本発明を適用した。これに対して、中間転写ベルトや中間転写ドラムなどの中間転写体を備えず、現像部によって現像されたトナー像が形成される感光体ドラム(感光体)と、感光体ドラムに当接して転写ニップを形成して、転写ニップに搬送されるシートに対して感光体ドラム上のトナー像を転写するための転写ベルトと、を備えた装置、いわゆる直接転写方式の画像形成装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、カラー画像を形成する画像形成装置100に対して、本発明を適用した。これに対して、モノクロ画像のみを形成する画像形成装置に対しても本発明を適用することができる。
また、本実施の形態では、搬送装置60に設置する除電部材として針状の除電針64を用いたが、除電部材はこれに限定されることなく、例えば、除電部材としてワイヤ状の除電ワイヤや、植毛状の除電毛などを用いることもできる。
そして、それらのような場合であっても、本実施の形態のものと同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【0056】
なお、本願明細書等において、「シート」とは、用紙の他に、コート紙、ラベル紙、OHPシート、金属シート、等のシート状の記録媒体のすべてを含むものと定義する。
また、本願明細書等において、「除電部材がシートに近接する」状態とは、除電部材がシートに僅かな隙間をあけて対向する状態の他、除電部材がシートに接している状態も含むものと定義する。
【符号の説明】
【0057】
50 定着装置、
60 搬送装置、
61 搬送ベルト(搬送部材)、
64 除電針(除電部材)、
66 吸引ファン(密着補助手段)、
68 搬送ローラ(搬送部材)、
69 2次転写装置、
72 2次転写ベルト(転写ベルト)、
91 移動機構、
100 画像形成装置(画像形成装置本体)、
P シート。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【文献】特開2018-72749号公報
【文献】特開2004-43070号公報