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特許7390200チップの強度測定方法、試験装置、及び、チップの強度計算方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】チップの強度測定方法、試験装置、及び、チップの強度計算方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/20 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01N3/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020012933
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117206
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】内保 貴
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-308002(JP,A)
【文献】特開2011-027430(JP,A)
【文献】特開2015-114114(JP,A)
【文献】特開2020-190449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面にソーマークを有した平板状の矩形のチップの強度測定方法であって、
互いに間隔を有して平行に伸長し、チップの下面を支持する第一支持部と第二支持部とを有した支持ユニットと、
該支持ユニットより上方且つ該第一支持部と該第二支持部の間に配置され、該第一支持部と該第二支持部が伸長する方向を第一方向として当該第一方向に伸長した圧子と、
該支持ユニットで支持されたチップに対して該圧子を相対的に近接移動させる移動ユニットと、
該圧子が該支持ユニットで支持されたチップを押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、を備えた試験装置を準備する準備ステップと、
該チップの裏面に形成されたソーマークの向きを確認するソーマーク確認ステップと、
該準備ステップと該ソーマーク確認ステップとを実施した後、該チップの該ソーマークの向きが該第一方向に対して所定の角度となるように該支持ユニットでチップを支持する支持ステップと、
該支持ステップを実施した後、該圧子をチップに向かって移動させ該圧子で該チップを押圧して破壊し、該チップが破壊した時の該荷重計測ユニットの計測値を入手するチップ破壊ステップと、を備えたチップの強度測定方法。
【請求項2】
該ソーマーク確認ステップと、該支持ステップと、該チップ破壊ステップと、を複数のチップに対してそれぞれ実施し、
該支持ステップにおいて複数のチップはそれぞれ同一の該所定の角度となるように該支持ユニットで支持される、ことを特徴とする請求項1に記載のチップの強度測定方法。
【請求項3】
裏面にソーマークを有した平板状の矩形のチップの強度を測定する試験装置であって、
互いに間隔を有して平行に伸長し、チップの下面を支持する第一支持部と第二支持部とを有した支持手段と、
該支持手段より上方且つ該第一支持部と該第二支持部の間に配置され、該第一支持部と該第二支持部が伸長する方向を第一方向として当該第一方向に伸長した圧子と、
該支持手段で支持されたチップに対して該圧子を相対的に近接移動させる移動手段と、
該圧子が該支持手段で支持されたチップを押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、
チップの裏面に形成されたソーマークの向きを検出するソーマーク検出手段と、
該ソーマーク検出手段で検出されたソーマークの向きが該第一方向に対して所定の角度となるように該支持手段上にチップを載置するチップ載置手段と、
を備えた試験装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の測定方法、及び、請求項3に記載の試験装置において、
以下の式により、強度σ(曲げ応力値)を算出することとする、チップの強度計算方法。
σ=3LW/2bh (式1)
L:支点間距離(mm)
W:圧子荷重値(N)
b:圧子と試験片の接触距離(mm)
h:試験片厚み(mm)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面にソーマークが形成された半導体チップの強度を測定する測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハを切り出したチップの強度(抗折強度(曲げ強度))を測定する手法として、一般的にはSEMI規格G86-0303で既定される3点曲げが広く利用されており、例えば、特許文献1では、JIC値と称される破壊靭性値を正確に測定するための測定装置を開示している。
【0003】
複数のチップの強度を比較すべく、各チップの強度を測定する際には、切り出したチップの向きを揃えて試験装置にセットするとともに、圧子でチップを押圧して破壊する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-017054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップに切り出される前の半導体ウェーハの状態において、半導体ウェーハの裏面が研削される場合には、その研削面にソーマーク(研削痕)が形成されるとともに研削歪みが生成される。
【0006】
ソーマークは放射線状や曲線状に形成されるものであり、上記のように強度を測定する際に各チップの向きを揃えたとしてもソーマークの向きはチップごとに異なるものとなる。
【0007】
したがって、各チップの向きを揃えて測定したとしても、ソーマークと平行な向きに圧子が当接する場合と、ソーマークと直交する向きに圧子が当接する場合においては、仮に同じチップの強度を測定したとしても測定値は異なるものと推察される。なぜなら、ソーマークとともに研削歪みが生成されており、この歪が強度に影響すると考えられるためである。
【0008】
このため、従来のようなチップの向きを揃えて強度を測定する測定方法では、同一の半導体ウェーハから切り出した複数のチップについて、正確な強度の測定や比較ができないといえる。
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑み、より正確にチップの強度の測定や比較を可能とする新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、
裏面にソーマークを有したチップの強度測定方法であって、
互いに間隔を有して配設されるとともにそれぞれ第一方向に伸長し、チップの下面を支持する第一支持部と第二支持部とを有した支持ユニットと、
該支持ユニットより上方且つ該第一支持部と該第二支持部の間に配置され、該第一方向に伸長した圧子と、
該支持ユニットで支持されたチップに対して該圧子を相対的に近接移動させる移動ユニットと、
該圧子が該支持ユニットで支持されたチップを押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、を備えた試験装置を準備する準備ステップと、
該チップの裏面に形成されたソーマークの向きを確認するソーマーク確認ステップと、
該準備ステップと該ソーマーク確認ステップとを実施した後、該チップの該ソーマークの向きが該第一方向に対して所定の角度となるように該支持ユニットでチップを支持する支持ステップと、
該支持ステップを実施した後、該圧子をチップに向かって移動させ該圧子で該チップを押圧して破壊し、該チップが破壊した時の該荷重計測ユニットの計測値を入手するチップ破壊ステップと、を備えたチップの強度測定方法とする。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
該ソーマーク確認ステップと、該支持ステップと、該チップ破壊ステップと、を複数のチップに対してそれぞれ実施し、
該支持ステップにおいて複数のチップはそれぞれ同一の該所定の角度となるように該支持ユニットで支持される、こととする。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
裏面にソーマークを有したチップの強度を測定する試験装置であって、
互いに間隔を有して配設されるとともにそれぞれ第一方向に伸長し、チップの下面を支持する第一支持部と第二支持部とを有した支持手段と、
該支持手段より上方且つ該第一支持部と該第二支持部の間に配置され、該第一方向に伸長した圧子と、
該支持手段で支持されたチップに対して該圧子を相対的に近接移動させる移動手段と、
該圧子が該支持手段で支持されたチップを押圧する荷重を計測する荷重計測ユニットと、
チップの裏面に形成されたソーマークの向きを検出するソーマーク検出手段と、
該ソーマーク検出手段で検出されたソーマークの向きが該第一方向に対して所定の角度となるように該支持手段上にチップを載置するチップ載置手段と、
を備えた試験装置とする。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
以下の式により、強度σ(曲げ応力値)を算出することとする、チップの強度計算方法とする。
σ=3LW/2bh (式1)
L:支点間距離(mm)
W:圧子荷重値(N)
b:圧子と試験片の接触距離(mm)
h:試験片厚み(mm)
【発明の効果】
【0014】
本願発明に係る強度測定方法によれば、チップのソーマークの方向を圧子に対して規定の角度に揃えた上でチップの強度を測定することができ、チップの研削歪みを考慮した上での強度の正確な測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】ピックアップ装置の構成について一部構成を省略した斜視図である。
図2】ピックアップ装置の構成について一部構成を省略した斜視図である。
図3】ウェーハユニットの構成について説明する図である。
図4】ウェーハ撮像カメラによるウェーハの撮像について説明する図である。
図5】(A)は突き上げ機構の上方に配置されたウェーハユニットを示す断面図である。(B)は突き上げ機構の一部を拡大して示す断面図である。
図6】ピックアップ機構を示す斜視図である。
図7】(A)は突き上げ機構によってテープが吸引された状態のウェーハユニットを示す断面図である。(B)は突き上げ機構によってチップが突き上げられた状態のウェーハユニットを示す断面図である。(C)はコレットによってチップがピックアップされた状態のウェーハユニットを示す断面図である。
図8】試験装置を示す斜視図である。
図9】支持ユニットを示す斜視図である。
図10】押圧ユニットを示す斜視図である。
図11】試験片が支持ユニットによって支持された状態の試験装置を示す断面図である。
図12】ウェーハの裏面に形成されるソーマークについて説明する図である。
図13】チップを試験装置の支持ユニットに載置した状態について示す図である。
図14】(A)は圧子の下方にチップが配置された状態について説明する図である。(B)は圧子がチップに接触した状態を示す図である。(C)はチップが破壊された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1、及び、図2は、ピックアップ装置2の構成について示す図である。なお、図1及び図8に示される試験装置202は、本実施例ではピックアップ装置2内に組み込まれているが、試験装置202単体で構成することも可能である。また、ピックアップ装置2を備える試験装置202を試験装置として定義することもできる。
【0017】
ピックアップ装置2は、ピックアップ装置2を構成する各構要素を支持する基台4を備える。基台4の一側角部にはカセット載置台5が設けられており、カセット載置台5にはカセット5aが載置される。このカセット5aには、環状フレーム21でウェーハ13を保持したウェーハユニット11が複数枚収容される。
【0018】
図3はウェーハユニット11の詳細について示すものであり、ウェーハ13は表面13aがテープ19に貼着され、ウェーハ13の周囲を囲むように環状フレーム21がテープ19に貼着され、ウェーハ13と環状フレーム21を一体としたウェーハユニット11が構成されている。ウェーハ13は分割予定ライン17に沿ってチップ23に分割されており、各チップ23にはデバイス15が形成されている。
【0019】
図3に示すように、ウェーハ13の表面13aがテープ19に貼着されることで、ウェーハ13の裏面13bが上側に露出し、その裏面13bには、放射線状に伸びるソーマーク31(研削痕)が研削加工により形成された状態としている。なお、ウェーハ13の裏面13bに保護テープが貼着されることとしてもよい。また、ウェーハ13の表面、又は、裏面に保護テープを貼着し、環状フレーム21なしでハンドリングされることも想定される。
【0020】
図1に示すカセット載置台5に隣接する位置には、ウェーハユニットを二段で仮置き可能な仮置き機構10が設けられている。仮置き機構10は、互いに平行に配置された一対のガイドレール12を備える。一対のガイドレール12はそれぞれ、二段の棚を形成すべく構成され、X軸方向(第一水平方向、左右方向)及びY軸方向(第二水平方向、前後方向)と概ね平行な第一支持面12a及び第二支持面12bを備える。
【0021】
図1に示すように、第一支持面12aはそれぞれ、第二支持面12bの上方で第二支持面12bと重なるように配置されている。そして、一対の第一支持面12aと一対の第二支持面12bとはそれぞれ、ウェーハユニット11の下面側を支持する。例えば、一対の第一支持面12aはカセット載置台5から搬送されたウェーハユニットを支持し、一対の第二支持面12bは後述のフレーム保持機構14から搬送されたウェーハユニットを支持する。
【0022】
図1に示すように、仮置き機構10に隣接する位置には、フレーム保持機構14が設けられる。フレーム保持機構14は、環状フレーム21の下面側を支持するフレーム支持部16と、フレーム支持部16の上方に配置され環状フレーム21の上面側と接触するフレーム押さえ部18とを備える。フレーム支持部16とフレーム押さえ部18とはそれぞれ、環状フレーム21の形状に対応して環状に形成され、互いに重なるように配置される。
【0023】
図1に示すフレーム支持部16は、Z軸方向(鉛直方向、上下方向)に沿って移動可能に構成されている。環状フレーム21がフレーム支持部16によって支持されるようにウェーハユニットを配置した状態で、フレーム支持部16を上方に移動させると、環状フレーム21がフレーム支持部16とフレーム押さえ部18とによって挟まれて固定される。
【0024】
なお、環状フレーム21がフレーム保持機構14によって適切に固定されているか否かは、例えば、フレーム支持部16とフレーム押さえ部18とが環状フレーム21を介して導通しているか否かを検出することによって確認される。
【0025】
また、図1に示すように、仮置き機構10及びフレーム支持部16の上方には、カセット5aとフレーム保持機構14との間でウェーハユニット11を搬送する搬送機構(搬送手段)20が設けられている。搬送機構20は、Y軸方向及びZ軸方向に沿って移動可能に構成されており、ウェーハユニット11の環状フレーム21を上下から把持する第一把持部22a及び第二把持部22bを備える。なお、第一把持部22aは搬送機構20のカセット載置台5側に設けられており、第二把持部22bは搬送機構20のフレーム保持機構14側に設けられている。
【0026】
図1に示すように、カセット5aからウェーハユニット11を搬出する際は、カセット5aに収容されたウェーハユニット11の端部を第一把持部22aで把持した状態で、搬送機構20をY軸方向に沿って仮置き機構10側に移動させる。これにより、ウェーハユニット11がカセット5aから引き出され、仮置き機構10が備える一対の第一支持面12a上(上段)に配置される。その後、第一把持部22aによる把持を解除する。
【0027】
次に、ウェーハユニット11のカセット5a側の端部を搬送機構20の第二把持部22bで把持した状態で、搬送機構20をY軸方向に沿ってフレーム保持機構14側に移動させる。これにより、ウェーハユニット11がフレーム支持部16とフレーム押さえ部18との間に搬送され、環状フレーム21がフレーム支持部16によって支持される。
【0028】
なお、図1及び図2に示すように、フレーム押さえ部18の仮置き機構10側には、フレーム押さえ部18が切り欠かれて形成された切り欠き部18aが設けられている。この切り欠き部18aは、搬送機構20が通過可能な大きさで構成されている。これにより、ウェーハユニット11がフレーム保持機構14に搬送される際に、搬送機構20がフレーム押さえ部18と接触することを防止できる。
【0029】
その後、図1に示すように、第二把持部22bによる把持を解除し、フレーム支持部16を上方に移動させる。これにより、環状フレーム21がフレーム支持部16とフレーム押さえ部18とによって挟まれて固定される。
【0030】
図1及び図2に示すように、フレーム保持機構14は、フレーム保持機構14の位置を制御する位置付け機構30に支持されている。位置付け機構30は、フレーム保持機構14をX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構32と、フレーム保持機構14をY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構42とを備える。X軸移動機構32及びY軸移動機構42により、フレーム保持機構14の水平方向における位置が制御される。
【0031】
X軸移動機構32は、基台4上にX軸方向に沿って配置された一対のガイドレール34を備える。一対のガイドレール34の間には、一対のガイドレール34と概ね平行に配置されたボールねじ36が設けられている。また、ボールねじ36の一端部には、ボールねじ36を回転させるパルスモータ38が連結されている。
【0032】
一対のガイドレール34上には、移動ブロック40がスライド可能に配置されている。移動ブロック40の下面側(裏面側)にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールねじ36に螺合されている。パルスモータ38によってボールねじ36を回転させると、移動ブロック40が一対のガイドレール34に沿ってX軸方向に移動する。
【0033】
Y軸移動機構42は、移動ブロック40上にY軸方向に沿って配置された一対のガイドレール44を備える。一対のガイドレール44の間には、一対のガイドレール44と概ね平行に配置されたボールネジ46が設けられている。また、ボールネジ46の一端部には、ボールネジ46を回転させるパルスモータ48が連結されている。
【0034】
図1に示すように、一対のガイドレール44上には、フレーム保持機構14がスライド可能に配置されている。フレーム保持機構14の支持部14fにはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールネジ46に螺合されている。パルスモータ48によってボールネジ46を回転させると、フレーム保持機構14が一対のガイドレール44に沿ってY軸方向に移動する。
【0035】
図1及び図2に示すように、移動ブロック40は、板状にて構成されており、フレーム保持機構14の下方の位置において、上下方向に貫通する開口部41が形成される。この開口部41を通じて後述する突き上げ機構50による下方からの突き上げが可能となる。
【0036】
基台4において一対のガイドレール36によって挟まれた領域には、矩形状の開口4bが設けられている。この開口4bの内部には、ウェーハユニット11のウェーハ13に含まれるチップ23(図3)を下面側から上方に向かって突き上げる円筒状の突き上げ機構(突き上げ手段)50が設けられている。突き上げ機構50は、モーター等で構成される昇降機構(不図示)と接続されており、Z軸方向に沿って昇降する。
【0037】
ウェーハユニット11の環状フレーム21をフレーム保持機構14によって固定した状態で、位置付け機構30によってフレーム保持機構14をX軸方向に沿って移動させると、ウェーハユニット11が開口4bの上方に位置付けられる。
【0038】
図1図2、及び図4に示すように、フレーム保持機構14を突き上げ機構50の上方までに移動させる経路には、フレーム保持機構14によって固定された環状フレーム21に貼着されたウェーハ13の上面を撮像する撮像手段としてのウェーハ撮像カメラ60が設けられる。
【0039】
ウェーハ撮像カメラ60による撮像は、フレーム保持機構14に固定された状態で行われることとする他、フレーム保持機構14に固定される前の搬送機構20によって搬送されるタイミング、仮置き機構10に載置されたタイミング、などであってもよい。また、ウェーハ撮像カメラ60の配置も、各タイミングに対応する適切な位置に応じて設計されることができる。
【0040】
図1及び図2に示すように、開口4bの上方に位置付けられたフレーム保持機構14は、図5(A)に示すように、ピックアップするチップ23の位置を突き上げ機構50の真上に位置合わせするために、位置付け機構30(図1図2)によって位置調整がされる。
【0041】
図5(A)は、突き上げ機構50の上方に配置されたウェーハユニット11を示す断面図である。突き上げ機構50は、中空の円柱状に形成された外層部52と、外層部52の内部に配置された四角柱状の突き上げ部54とを備える。
【0042】
図5(B)は、突き上げ機構50の一部を拡大して示す断面図である。外層部52の上面52a側には、外層部52の周方向に沿って同心円状に形成された複数の吸引溝52bが形成されている。吸引溝52bはそれぞれ、突き上げ機構50の内部に形成された吸引路(不図示)及びバルブ56(図5(A))を介して、エジェクタ等でなる吸引源58に接続されている。
【0043】
また、突き上げ部54は、四角柱状に形成された第1突き上げピン54aと、中空の四角柱状に形成され第1突き上げピン54aを囲繞する第2突き上げピン54bと、中空の四角柱状に形成され第2突き上げピン54bを囲繞する第3突き上げピン54cと、中空の四角柱状に形成され第3突き上げピン54cを囲繞する第4突き上げピン54dとを備える。第1突き上げピン54a、第2突き上げピン54b、第3突き上げピン54c、第4突き上げピン54dはそれぞれ、モータ等で構成される昇降機構(不図示)と接続されており、Z軸方向に沿って昇降する。
【0044】
ウェーハユニット11が突き上げ機構50の上方に位置付けられた状態で、突き上げ機構50を上昇させると、突き上げ機構50と重なる位置に配置されたチップ23が突き上げられる。なお、突き上げ機構50の寸法は、チップ23のサイズに応じて適宜調整される。
【0045】
チップ23と突き上げ機構50との位置合わせは、フレーム保持機構14の位置を位置付け機構30(図1図2参照)で調整することによって行われる。この位置合わせには、突き上げ機構50の上方に配置されたウェーハ撮像カメラ60(図1図2参照)が用いられる。
【0046】
ウェーハ撮像カメラ60は、開口4b上に配置されたウェーハ13(図3参照)の全体を撮像可能な位置に配置されている。ウェーハ撮像カメラ60によって取得されたウェーハ13の画像に基づき、所定のチップ23が突き上げ機構50と重なるようにフレーム保持機構14の位置が調整される。
【0047】
なお、突き上げ機構50の近傍には、ウェーハ13に向かって光を照射するライトを設けることが好ましい。ウェーハ撮像カメラ60でウェーハ13を撮影する際、ウェーハ13に光を照射することにより、鮮明な画像を取得することができる。なお、ライトが設けられる位置に制限はない。例えば、ライトは開口4bの底部に突き上げ機構50と隣接するように設けられる。また、突き上げ機構50を透明な部材によって形成するとともに、ライトを突き上げ機構50の内部に設けてもよい。
【0048】
次に、図2に示されるピックアップ機構70について説明する。
突き上げ機構50によって突き上げられたチップは、ピックアップ機構70によってピックアップされる。ピックアップ機構70は、突き上げ機構50によって突き上げられたチップをピックアップするコレット76を備えるとともに、コレット76の位置を制御するコレット移動機構(コレット移動手段)80に接続されている。
【0049】
図6は、ピックアップ機構70を示す斜視図である。ピックアップ機構70は、コレット移動機構80に接続される移動基台72と、移動基台72からコレット移動機構80とは反対側に向かってX軸方向に沿うように配置され、コレット76とコレット移動機構80とを接続する柱状のアーム74とを備える。アーム74は、移動基台72を介してコレット移動機構80と接続された柱状の第一支持部74aと、第一支持部74aの先端部から下方に向かって突出する第二支持部74bとを備える。
【0050】
なお、第一支持部74aと第二支持部74bとは、互いに結合及び分離可能に構成されている。例えば、第一支持部74a及び第二支持部74bは、ツールチェンジャー等によって互いに着脱自在に構成される。また、第一支持部74aはX軸方向移動機構74dによりX軸方向に移動するように構成されており、これにより、第二支持部74bがX軸方向に移動可能に構成される。これにより、図1に示すチップ収容具501内への収容に際し、X軸方向の収容位置が選択可能となる。
【0051】
図6に示すように、第二支持部74bの下端側には、チップを保持するコレット76が固定されている。コレット76の下面は、チップを吸引保持する吸引面76aを構成する。吸引面76aは、コレット76の内部に形成された吸引路(不図示)を介して吸引源(不図示)と接続されている。コレット76の吸引面76aにチップを接触させた状態で、吸引面76aに吸引源の負圧を作用させることにより、チップがコレット76によって吸引保持される。第二支持部74bには、コレット76をZ軸を中心にθ回転させる回転機構が内蔵され、コレット76で吸引保持したチップの角度が変更可能となっている。
【0052】
図2に示すように、ピックアップ機構70は、コレット移動機構80に接続されている。コレット移動機構80は、ピックアップ機構70をY軸方向に沿って移動させるY軸移動機構82と、ピックアップ機構70をZ軸方向に沿って移動させるZ軸移動機構92とを備える。Y軸移動機構82及びZ軸移動機構92により、コレット76のY軸方向及びZ軸方向における位置が制御される。
【0053】
Y軸移動機構82は、Y軸方向に沿って配置された一対のガイドレール84を備える。一対のガイドレール84の間には、一対のガイドレール84と概ね平行に配置されたボールねじ86が設けられている。また、ボールねじ86の一端部には、ボールねじ86を回転させるパルスモータ88が連結されている。
【0054】
一対のガイドレール84には、移動ブロック90がスライド可能に装着されている。また、移動ブロック90にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールねじ86に螺合されている。パルスモータ88によってボールねじ86を回転させると、移動ブロック90が一対のガイドレール84に沿ってY軸方向に移動する。
【0055】
図2及び図6に示すように、Z軸移動機構92は、移動ブロック90の側面にZ軸方向に沿って配置された一対のガイドレール94を備える。一対のガイドレール94の間には、一対のガイドレール94と概ね平行に配置されたボールねじ96が設けられている。また、ボールねじ96の一端部には、ボールねじ96を回転させるパルスモータ98が連結されている。
【0056】
図6に示すように、一対のガイドレール94には、ピックアップ機構70の移動基台72がスライド可能に装着されている。また、移動基台72にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールねじ96に螺合されている。パルスモータ98によってボールねじ96を回転させると、移動基台72が一対のガイドレール94に沿ってZ軸方向に移動する。
【0057】
以上のように構成されたピックアップ機構70により、突き上げ機構50によって突き上げたチップ23をピックアップする。以下、ウェーハ13から所定のチップ23をピックアップする際の突き上げ機構50及びコレット76の動作例について説明する。
【0058】
図5(A)に示すように、まず、フレーム保持機構14によって固定されたウェーハユニット11を位置付け機構30によって移動させ、突き上げ機構50の上方に配置する。次いで、ウェーハ撮像カメラ60により撮像された撮像画像に基づいて、ピックアップされる所定のチップ23が突き上げ機構50の位置と重なるように、フレーム保持機構14の位置を調整する。なお、このときピックアップ機構70のコレット76は、突き上げ機構50の上面50aと対向する位置(重なる位置)に配置される(図7(A)参照)。
【0059】
次に、図7(A)に示すように、突き上げ機構50を上方に移動させ、突き上げ機構50の上面50aをチップ23の裏面側に貼着されたテープ19に接触させる。この状態で、バルブ56を開き、吸引溝52b(図5(B)参照)を介して外層部52の上面52aに吸引源58の負圧を作用させる。これにより、テープ19の突き上げ機構50と接触する領域が吸引される。図7(A)は、突き上げ機構50によってテープ19が吸引された状態のウェーハユニット11を示す断面図である。
【0060】
次に、図7(B)に示すように、突き上げ機構50の突き上げ部54を上方に移動させ、テープ19を介してチップ23の下面側を上方に向かって突き上げる。このとき、突き上げ部54を構成する第一突き上げピン54a、第二突き上げピン54b、第3突き上げピン54c、第4突き上げピン54d(図5(B)参照)はそれぞれ、上端が突き上げ機構50の中心に近いほど上方に配置されるように移動する。突き上げ機構50によって突き上げられたチップ23は、他のチップ23よりも上方に配置された状態となる。
【0061】
次に、図7(C)に示すように、ピックアップ機構70を下方に移動させ、突き上げられたチップ23と重なるように配置されたコレット76の吸引面76aを、突き上げ機構50によって突き上げられたチップ23の上面側に接触させる。そして、コレット76の吸引面76aとチップ23とが接触した状態で、吸引面76aに負圧を作用させる。これにより、チップ23がコレット76によって吸引保持される。この状態でピックアップ機構70を上方に移動させると、チップ23がテープ19から剥離され、コレット76によってピックアップされる。
【0062】
以上のようにしてピックアップ機構70によりピックアップされたチップは、図8に示す試験装置202により、抗折強度(曲げ強度)の測定を行うことができる。
【0063】
図8に示すように、試験装置202は、直方体状に形成された箱型の下部容器(収容部)204を備える。下部容器204には、下部容器204の上面204a側で上方に向かって開口する直方体状の開口部204bが形成されている。この開口部204bの内部には、試験装置202によって強度が測定される試験片を支持する支持ユニット(支持手段)206が設けられている。
【0064】
図9は、支持ユニット206を示す斜視図である。支持ユニット206は、試験片を支持する一対の支持台208を備える。一対の支持台208はそれぞれ直方体状に形成され、一対の支持台208の間に隙間210が設けられるように互いに離隔された状態で配置されている。また、一対の支持台208は、その上面208aの長手方向が第1水平方向(Y軸方向、前後方向)に沿うように配置されている。この一対の支持台208上に、強度が測定される試験片(チップ)が配置される。
【0065】
一対の支持台208の上面208a側にはそれぞれ、上面208aから上方に突出する凸条を成す支持部208bが形成されている。支持部208bは、例えばステンレス鋼材等の金属でなり、その長さ方向がY軸方向に沿うように隙間210に隣接して配置されている。一対の支持部208bは、隙間210を挟んで互いに離隔した状態で配置されており、試験片の下面側を支持する。なお、図9では、上面が曲面状に形成された支持部208bを示している。
【0066】
また、一対の支持台208の上面208a側にはそれぞれ、支持部208bよりも柔軟な材質(ゴムスポンジ等)でなる板状の接触部材212が設けられている。一対の接触部材212は、平面視で矩形状に形成され、一対の支持部208bの両側に設けられている。すなわち、接触部材212はそれぞれ支持部208bの隙間210とは反対側に配置されており、一対の支持部208bは一対の接触部材212の間に配置されている。
【0067】
接触部材212の上面は、試験片と接触して試験片を支持する接触面212aを構成する。なお、接触部材212は、その接触面212aが支持部208bの上端よりも上方(例えば、支持部208bの上端から1mm程度上方)に配置されるように設けられている。そのため、試験片を一対の支持台208上に配置すると、試験片の下面側は支持部208bとは接触せず、接触部材212の接触面212aと接触する。
【0068】
一対の支持台208の後方側には、一対の支持台208をそれぞれ第1水平方向と垂直な第2水平方向(X軸方向、左右方向)に沿って移動させる支持台移動機構(支持台移動手段)214が設けられている。支持台移動機構214は、直方体状の支持構造216を備え、支持構造216の前面側(表面側)には一対のガイドレール218がX軸方向に沿って所定の間隔で固定されている。
【0069】
一対のガイドレール218の間には、一対のガイドレール218と概ね平行に配置された一対のボールネジ220が設けられている。一対のボールネジ220の一端部にはそれぞれ、ボールネジ220を回転させるパルスモータ222が連結されている。
【0070】
さらに、支持台移動機構214は、一対の支持台208の後面側にそれぞれ固定される一対の移動プレート224を備える。移動プレート224はそれぞれ、支持構造216の前面側に設けられた一対のガイドレール218にスライド可能に装着されている。
【0071】
また、一対の移動プレート224の後面側(裏面側)にはそれぞれ、ナット部(不図示)が設けられている。一対の移動プレート224の一方に設けられたナット部は一対のボールネジ220の一方に螺合され、一対の移動プレート224の他方に設けられたナット部は一対のボールネジ220の他方に螺合されている。
【0072】
パルスモータ222によってボールネジ220を回転させると、ボールネジ220に螺合された移動プレート224がガイドレール218に沿ってX軸方向に移動する。これにより、一対の支持台208それぞれのX軸方向における位置と、隙間210の幅とが制御される。
【0073】
図8に示すように、下部容器204の上方には、押圧ユニット226が設けられている。押圧ユニット226は、支持ユニット206によって支持された試験片を押圧するとともに、試験片の押圧時に押圧ユニット226にかかる荷重を測定する。
【0074】
図10は、押圧ユニット226を示す斜視図である。押圧ユニット226は、移動手段(移動機構)240に接続された移動ユニット228を備える。移動ユニット228の下面側には、移動ユニット228の下面から下方に向かって配置された円筒状の第1支持部材230が接続されており、第1支持部材230の下端側には、ロードセル等でなる荷重計測ユニット(荷重計測器)232が固定されている。
【0075】
荷重計測ユニット232の下側には、円筒状の第2支持部材234を介して挟持部材236が接続されている。挟持部材236は、正面視で略門型形状に形成されており、互いに対向する一対の挟持面236aを備える。この一対の挟持面236aの間には、支持ユニット206によって支持された試験片を押圧する圧子238が固定されている。
【0076】
圧子238の先端部(下端部)は、下方に向かって幅が狭くなる先細りの略V字形状に形成されている。すなわち、圧子238の先端部の両側面は鉛直方向に対して傾斜している。また、圧子238の先端(下端)は丸みを帯びた形状(R形状)に形成されている(図11参照)。ただし、圧子238の形状は上記に限定されない。
【0077】
また、圧子238は、その下端がY軸方向に沿うように挟持部材236によって支持されている。これにより、圧子238の下端と、支持ユニット206が備える一対の支持部208b(図9参照)とは、互いに概ね平行に配置されるようにしている。この圧子238の下端が伸びる方向、即ち、図10におけるY軸方向が圧子238の奥行き方向として定義される。
【0078】
図10に示すように、押圧ユニット226の後方側(裏面側)には、押圧ユニット226を鉛直方向(Z軸方向、上下方向)に沿って移動させる移動手段240が設けられている。移動手段240は、直方体状の支持構造242を備え、支持構造242の前面側(表面側)には一対のガイドレール244がZ軸方向に沿って所定の間隔で固定されている。
【0079】
一対のガイドレール244の間には、一対のガイドレール244と概ね平行に配置されたボールネジ246が設けられている。ボールネジ246の一端部には、ボールネジ246を回転させるパルスモータ248が連結されている。
【0080】
押圧ユニット226の移動ユニット228の後面側(裏面側)は、一対のガイドレール244にスライド可能に装着される。また、移動ユニット228の後面側にはナット部(不図示)が設けられており、このナット部はボールネジ246に螺合される。
【0081】
パルスモータ248によってボールネジ246を回転させると、移動ユニット228がガイドレール244に沿ってZ軸方向に移動する。これにより、押圧ユニット226のZ軸方向における位置が制御される。そして、移動手段240によって押圧ユニット226をZ軸方向に沿って移動させることにより、圧子238が支持ユニット206に対して相対的に接近及び離隔する。
【0082】
また、図8に示すように、移動ユニット228の両側面には、板状に形成された一対の接続部材250が固定されている。接続部材250は、移動ユニット228の側面から下方に向かって設けられ、接続部材250の下端は挟持部材236の下端よりも下方に配置されている。
【0083】
一対の接続部材250の下端部には、圧子238側に向かって突出する一対の上部容器支持部250aが形成されている。この一対の上部容器支持部250aの間には、圧子238の先端部を覆う直方体状の上部容器252(カバー)が固定されている。上部容器252は、下部容器204の上方に配置されており、両側面が一対の上部容器支持部250aによって支持されている。
【0084】
上部容器252は、例えば透明な材質(ガラス、プラスチック等)でなり、箱型に形成されている。上部容器252には、上部容器252の下面252a側で下方に向かって開口する直方体状の開口部252b(図11参照)が形成されている。また、上部容器252の上面252c側には圧子挿入穴252dが形成されており、この圧子挿入穴252dには圧子238の先端部が挿入され、圧子238の先端部は上部容器252内に配置される。なお、図8では、上部容器252内に挿入された圧子238の一部を破線で表している。
【0085】
図8に示すように、上部容器252は、下部容器204の開口部204bに挿入可能な大きさに形成されており、平面視で下部容器204の開口部204bの内側に配置されている。また、上部容器252の開口部252b(図11(参照))は、支持ユニット206を収容可能な大きさに形成されている。そのため、移動手段240によって押圧ユニット226を下方に移動させると、上部容器252が下部容器204の開口部204bに挿入され、支持ユニット206の上側が上部容器252によって覆われる。
【0086】
また、上部容器252の側壁252eには、気体供給管挿入穴252fが設けられている。この気体供給管挿入穴252fには、圧子238の側面、及び、周囲に気体噴射してエアブローを行うための供給するための気体供給管256が挿通される。気体供給管256は可撓性のある樹脂製のチューブにて構成することができ、気体供給ユニット254のバルブ258を介して気体供給源260と接続される。
【0087】
図8に示すように、下部容器204の底部には、下部容器204の開口部204bの底から下部容器204の下面(底面)204cに貫通する破片排出口204dが形成されている。この破片排出口204dには、下部容器204の内部に存在する試験片の破片を排出する破片排出ユニット262が接続されている。
【0088】
図8に示すように、破片排出ユニット262は、試験片の破片を排出するための経路を構成する破片排出路264を備える。破片排出路264の一端側は破片排出口204dに接続され、破片排出路264の他端側はバルブ266を介して吸引源268に接続されている。
【0089】
図8に示すように、破片排出路264中には、試験片の破片を回収する破片回収部270が設けられている。破片回収部270は、フィルター等によって構成されており、破片排出路264を通過する試験片の破片を捕獲する。バルブ266を開くと、下部容器204の開口部204bの内部に散乱する試験片の破片が破片排出口204dから吸引され、破片回収部270で回収される。
【0090】
図8に示すように、下部容器204の後方側には撮像ユニット(カメラ)272が設けられており、下部容器204の前方側には撮像ユニット272に向かって光を照射する光源274が設けられている。撮像ユニット272及び光源274の位置は、支持ユニット206によって支持された試験片や圧子238の先端部等を撮像ユニット272によって撮像可能となるように調整される。
【0091】
光源274から光を照射しつつ撮像ユニット272で圧子238の先端部を撮影することにより、試験片が圧子238で押圧されている様子や、圧子238の先端部の状態(異物の付着の有無、欠けの有無等)を観察できる。ただし、撮像ユニット272による撮像が十分に明るい環境下で行われる場合には、光源274を省略してもよい。
【0092】
図8に示すように、また、試験装置202を構成する各構成要素は、試験装置202の動作を制御する制御部200と接続されている。例えば、支持台移動機構214、荷重計測ユニット232、移動手段240、気体供給ユニット254、破片排出ユニット262、撮像ユニット272、光源274等の動作は、制御部によって制御される。
【0093】
以上のように構成した試験装置202を用いることにより、試験片となるチップの3点曲げ試験を行うことができる。この3点曲げ試験により、試験片の抗折強度(曲げ強度)が測定可能となる。
【0094】
次に、以上の装置構成を用いることにより、試験片であるチップの強度((抗折強度(曲げ強度))の測定方法について説明する。
【0095】
まず、図12に示すように、試験片となる各チップ23A~23Cには、その分割前のウェーハ13の状態において、裏面13bに放射線状に伸びるソーマーク31(研削痕)が研削加工により形成されている。
【0096】
各チップ23A~23Cにおいてソーマーク31が伸びる方向31dは、ウェーハ13に存在していた位置によって決まるものであり、ウェーハ13のノッチ13nを上端に設定してXY座標を規定した場合において、各チップ23A~23Cのソーマーク31が伸びる方向31dは、Y軸から角度θずれるようになる。
【0097】
ここで、角度θは、例えば、チップ23Aの例に示されるように、チップ23Aに形成されるソーマーク31の中から、最も距離の長いソーマーク31を検出するとともに、当該検出されたソーマーク31の2つの端点P1,P2を直線で結んで角度検出用仮想線Bを規定し、当該角度検出用仮想線BのY軸方向に対する傾きを算出することで規定することができる。なお、この方法に限定されるものではない。
【0098】
このソーマーク31の伸びる方向31dを考慮して、以下のようにチップの強度の測定が行われる。
【0099】
<ソーマーク確認ステップ>
図12に示すように、試験片となる各チップ23A~23Cについて、ソーマーク31の伸びる方向31dについて、第一方向(例えば、Y軸)に対するズレの角度θを検出するステップである。
【0100】
例えば、図4に示すように、ウェーハ撮像カメラ60をソーマーク検出手段として機能させ、ウェーハ撮像カメラ60にてウェーハ13を撮像し、撮像画像に基づいて図12に示されるノッチ13n、及び、各チップ23A~23Cに伸びるソーマーク31の伸びる方向31dを検出し、各チップ23A~23Cについて角度θを検出する。
【0101】
なお、この角度θの検出の画像は、ソーマーク31を検出するため撮像して取得するほか、ピックアップのために撮像する撮像画像を転用してもよい。あるいは、図2に示すように、基台4上に裏面観察用カメラ102とチップ反転機構112を設け、チップ反転機構112で反転させたチップの裏面を裏面観察用カメラ102で撮像することで、チップごとにソーマークの伸びる方向の角度を検出することとしてもよい。あるいは、チップの表面にデバイスが形成されていない場合には、赤外線カメラの撮像画像によりチップの表面側から裏側のソーマークを検出することとしてもよい。これら角度θの検出の画像を取得するための手段は、いずれも、ソーマーク検出手段として機能するものである。
【0102】
<チップ支持ステップ>
図13に示すように、チップ23Aを試験装置202(図8)の支持ユニット206(図9)に載置して一対の支持台208により支持するステップであり、チップ23が角度θ回転された上で載置される。これにより、ソーマークが伸びる方向(ソーマークの向き)と、圧子の奥行方向(図10のY軸方向(第一方向))に対して所定の角度で載置され、例えば、ソーマークが伸びる方向(ソーマークの向き)と、圧子の奥行方向(図10のY軸方向(第一方向))を一致させる。
【0103】
このチップ23の角度θの回転は、ピックアップ機構70のコレット76(図6)をZ軸を中心に回転させることにより行うことができる。なお、ソーマークが伸びる方向(ソーマークの向き)と、圧子の奥行方向(図10のY軸方向(第一方向))を一致させるために厳密に角度θだけ回転させることとする他、ソーマークが伸びる方向(ソーマークの向き)と、圧子の奥行方向(図10のY軸方向(第一方向))を一定の角度で交差させるために角度θの大きさに一定の角度(例えば、0度、45度、90度等)を加えた角度だけ回転させることとしてもよい。
【0104】
なお、コレット76(図6)から支持ユニット206(図9)上へのチップの受け渡しは、ピックアップ機構70(図6)を移動させ、支持ユニット206(図9)の上方にコレット76(図6)を位置付けることで行うことができる。この場合、コレット76(図6)をチップ載置手段として機能させることができ、コレット76(図6)が試験装置202を構成する要素として含まれる。
【0105】
以上に説明する構成の他にも、試験装置202内に、撮像機能を有するソーマーク検出手段と、コレット76(図6)から受け取ったチップを水平面内で角度変更しつつ支持台に載置するためのチップ載置手段を備える構成とし、試験装置202単体において、ソーマークが伸びる方向を検出するとともに、チップの角度変更が可能な構成としてもよい。
【0106】
<チップ破壊ステップ>
図14(A)乃至図14(C)に示すように、移動手段240(図10)によって押圧ユニット226(図10)を下降させる、圧子238を段階的に下降させることで、チップ23Aを破壊するステップである。
【0107】
<強度算出ステップ>
以下の式により、強度σ(曲げ応力値)を算出するステップである。この強度σの算出は制御部200により行うことができる。
σ=3LW/2bh (式1)
【0108】
上記式1において、
L:支点間距離(mm)
W:圧子荷重値(N)
b:圧子と試験片の接触距離(mm)
h:試験片厚み(mm)
【0109】
ここで、圧子荷重値W(N)は、荷重計測ユニット232(図8)により測定される。支点間距離L(mm)は、支持部208b,208bの間の距離である(図13)。試験片厚みh(mm)は、チップの厚みの設計値である。
【0110】
接触距離bは、圧子238とチップ23が接触する距離(mm)であり、例えば、チップ23の縦寸法が長さHとして設計されている場合に、b=H/cosθで求められる。なお、このように計算にて求めることとする他、図示せぬ撮像手段で取得する撮像画像に基づいて、接触距離bを計測してもよい。
【0111】
なお、チップは正方形に限ることなく、長方形や、円形の場合においても、ソーマークが伸びる方向(ソーマークの向き)と、圧子の奥行方向(図10のY軸方向(第一方向))を一致させることで、本発明を実施することができる。
【0112】
また、以上の実施例では、ピックアップ機構70のコレット76(図6)をZ軸を中心に回転させることで、チップ回転させ、ソーマークが伸びる方向と圧子の奥行方向とを一致させることしたが、この構成に限定されるものではない。
【0113】
例えば、フレーム保持機構14(図2)を水平面内で回転させる構成としてウェーハの向きを変更することでピックアップの前段階において検査対象となるチップのソーマークの向きを変更することとしてもよい。
【0114】
また、図8に示す試験装置202において、図9の支持台208の上方にチップの上面を保持してチップを回転させる回転機構、あるいは、支持台208の下方からチップを支持してチップを回転させる回転機構、などを設けることとし、試験装置202においてチップの回転角度が変更できる構成としてもよい。
【0115】
以上のようにして本発明を実施することができる。
即ち、図12及び図13に示すように、
裏面にソーマーク31を有したチップ23の強度測定方法であって、
互いに間隔を有して配設されるとともにそれぞれ第一方向(Y軸方向)に伸長し、チップ23の下面を支持する第一支持部208bと第二支持部208bとを有した支持ユニット208と、
支持ユニット208より上方且つ第一支持部208bと第二支持部208bの間に配置され、第一方向(Y軸方向)に伸長した圧子238と、
支持ユニット208で支持されたチップ23に対して圧子238を相対的に近接移動させる移動ユニット228と、
圧子238が支持ユニット208で支持されたチップ23を押圧する荷重を計測する荷重計測ユニット232と、を備えた試験装置202を準備する準備ステップと、
チップ23の裏面に形成されたソーマーク31の向きを確認するソーマーク確認ステップと、
準備ステップとソーマーク確認ステップとを実施した後、チップ23のソーマーク31の向きが第一方向(Y軸方向)に対して所定の角度となるように支持ユニット208でチップ23を支持する支持ステップと、
支持ステップを実施した後、圧子238をチップ23に向かって移動させ圧子238でチップ23を押圧して破壊し、チップ23が破壊した時の荷重計測ユニット232の計測値を入手するチップ破壊ステップと、を備えたチップ23の強度測定方法とするものである。
【0116】
この方法によれば、チップのソーマークの方向を圧子に対して規定の角度に揃えた上でチップの強度を測定することができ、チップの研削歪みを考慮した上での強度の正確な測定が可能となる。
【0117】
また、図12に示すように、
ソーマーク確認ステップと、支持ステップと、チップ破壊ステップと、を複数のチップ23A~23Cに対してそれぞれ実施し、
支持ステップにおいて複数のチップ23A~23Cはそれぞれ同一の所定の角度となるように支持ユニット208で支持される、こととする。
【0118】
この方法によれば、各チップのソーマークの方向を圧子に対して規定の角度に揃えた上で各チップの強度を測定することができ、ソーマークについて各チップの測定条件を揃えた上で強度の測定が可能となり、各チップの強度比較を正確に行うことができる。
【0119】
また、図8図9図12図13に示すように、
裏面にソーマーク31を有したチップ23の強度を測定する試験装置であって、
互いに間隔を有して配設されるとともにそれぞれ第一方向に伸長し、チップ23の下面を支持する第一支持部208bと第二支持部208bとを有した支持手段(支持ユニット208)と、
支持手段(支持ユニット208)より上方且つ第一支持部208bと第二支持部208bの間に配置され、第一方向(Y軸方向)に伸長した圧子238と、
支持手段(支持ユニット208)で支持されたチップ23に対して圧子238を相対的に近接移動させる移動手段(移動ユニット228)と、
圧子238が支持手段(支持ユニット208)で支持されたチップ23を押圧する荷重を計測する荷重計測手段(荷重計測ユニット232)と、
チップ23の裏面に形成されたソーマークの向きを検出するソーマーク検出手段(ウェーハ撮像カメラ60(図4))と、
ソーマーク検出手段で検出されたソーマークの向きが第一方向に対して所定の角度となるように支持手段上にチップ23を載置するチップ載置手段(コレット76(図6))と、を備えた試験装置202とする。
【0120】
この試験装置202によれば、チップのソーマークの方向を圧子に対して規定の角度に揃えた上でチップの強度を測定することができ、チップの研削歪みを考慮した上での強度の正確な測定が可能となる。
【0121】
また、上記測定方法、及び、試験装置において、
以下の式により、強度σ(曲げ応力値)を算出することとする。
σ=3LW/2bh (式1)
L:支点間距離(mm)
W:圧子荷重値(N)
b:圧子と試験片の接触距離(mm)
h:試験片厚み(mm)
【0122】
この計算式では、圧子と試験片の接触距離がパラメータとして利用され、より厳密にチップの強度を定義することができる。
【符号の説明】
【0123】
2 ピックアップ装置
10 機構
11 ウェーハユニット
13 ウェーハ
13a 表面
13b 裏面
13n ノッチ
14 フレーム保持機構
15 デバイス
17 分割予定ライン
21 環状フレーム
23 チップ
31 ソーマーク
31d ソーマークが伸びる方向
50 突き上げ機構機構
60 ウェーハ撮像カメラ
70 ピックアップ機構
76 コレット
80 コレット移動機構
102 裏面観察用カメラ
112 チップ反転機構
202 試験装置
204 下部容器
206 支持ユニット
208 支持台
208b 支持部
238 圧子
b 接触距離
L 支点間距離
W 圧子荷重値
θ 角度
σ 強度(曲げ応力値)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14