(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-22
(45)【発行日】2023-12-01
(54)【発明の名称】内視鏡システム、及び内視鏡システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B1/00 513
(21)【出願番号】P 2022503290
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005937
(87)【国際公開番号】W WO2021172131
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2020034275
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅裕
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/093256(WO,A1)
【文献】特開2010-279454(JP,A)
【文献】特開2017-164393(JP,A)
【文献】国際公開第2019/093355(WO,A1)
【文献】特開2013-188364(JP,A)
【文献】国際公開第2019/163540(WO,A1)
【文献】特開2016-123576(JP,A)
【文献】特開2009-279171(JP,A)
【文献】特開2017-079870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる波長帯域の光を発光する複数の半導体光源と、
第1期間中に、前記複数の半導体光源の光強度比の組み合わせが互いに異なる複数の照明光のうちの第1照明光を発光し、前記第1照明光と前記組み合わせが互いに異なる第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、前記第1照明光と切り替えて、発光する制御を
行う光源用プロセッサと、
画像用プロセッサとを備え、
前記画像用プロセッサは、
前記第1照明光又は前記第2照明光により照明された観察対象を撮影して得られる第1画像又は第2画像をフレーム毎に取得し、
前記第1画像及び前記第2画像を保存する画像保存処理を行い、
前記画像保存処理を開始させるための処理開始操作が行われた際に、前記処理開始操作時刻より前の予め設定した期間に取得した複数の前記第1画像及び複数の前記第2画像から、予め設定した選択条件を満たす前記第1画像及び前記第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して保存
し、
取得した前記第1画像及び/又は前記第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、
前記第1期間中は前記第1画像のみを前記ディスプレイに表示する内視鏡システム。
【請求項2】
前記選択条件は、取得した複数の前記第1画像及び複数の前記第2画像のうち、ブレが最も少ない前記第1画像及び前記第2画像とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記選択条件は、取得した複数の前記第1画像及び複数の前記第2画像から選択された前記第1画像と前記第2画像とにおいて、位置ずれが最も少ない前記第1画像及び前記第2画像とする請求項1または2に記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記選択条件は、取得した複数の前記第1画像及び複数の前記第2画像から選択された前記第1画像と前記第2画像とにおいて、取得時刻の差が最も少ない前記第1画像及び前記第2画像とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記光源用プロセッサは、前記第1期間と、前記第2照明光を発光する第2期間とを交互に繰り返し、かつ、前記第2期間中に、前記第2照明光を発光し、前記第1照明光を、少なくとも1フレームの期間、前記第2照明光と切り替えて発光する制御を行う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記画像用プロセッサは、取得した前記第1画像及び/又は前記第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、
前記第2期間中は少なくとも前記第2画像を前記ディスプレイに表示する請求項5に記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記半導体光源は、前記波長帯域が中心波長410±10nmかつ波長範囲
380~420nmである第1狭帯域光を発光する第1半導体光源と、前記波長帯域が中心波長450±10nmかつ波長範囲
420~500nmである第2狭帯域光を発光する第2半導体光源とを含む請求項1
ないし6のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記画像用プロセッサは、用いた前記照明光に関する情報を付与した上で前記第1画像及び前記第2画像を保存する請求項1
ないし7のいずれか1項に記載の内視鏡システム。
【請求項9】
互いに異なる波長帯域の光を発光する複数の半導体光源と、
光源用プロセッサと、
画像用プロセッサとを備える内視鏡システムの作動方法において、
前記光源用プロセッサは、
第1期間中に、前記複数の半導体光源の光強度比の組み合わせが互いに異なる複数の照明光のうちの第1照明光を発光し、前記第1照明光と前記組み合わせが互いに異なる第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、前記第1照明光と切り替えて、発光する制御を行い、
前記画像用プロセッサは、
前記第1照明光又は前記第2照明光により照明された観察対象を撮影して得られる第1画像又は第2画像をフレーム毎に取得し、
前記第1画像及び前記第2画像を保存する画像保存処理を行い、
前記画像保存処理を開始させるための処理開始操作が行われた際に、前記処理開始操作時刻より前の予め設定した期間に取得した複数の前記第1画像及び複数の前記第2画像から、予め設定した選択条件を満たす前記第1画像及び前記第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して保存
し、
取得した前記第1画像及び/又は前記第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、
前記第1期間中は前記第1画像のみを前記ディスプレイに表示する内視鏡システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指示により複数種類の静止画を保存する内視鏡システム、及び内視鏡システムの作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、光源装置、内視鏡、及びプロセッサ装置を備える内視鏡システムを用いた診断が広く行われている。内視鏡システムを用いた診断では、照明光等を工夫した画像強調観察(IEE、image enhanced endoscopy)により、観察対象を内視鏡で撮影して得た画像(以下、内視鏡画像という)を用いて、観察対象の表面構造、又は粘膜表層等に関する様々な情報を得る場合がある。
【0003】
IEEを用いた診断においては、複数種類の照明光等によって得られる複数種類の画像を取得し、これらの画像を詳細に比較又は重畳することにより適切な診断ができる場合がある。白色光観察による通常画像、及びIEEによる画像等からなる複数種類の画像を用いるものとして、酸素飽和度観察動画、通常観察動画、及び血管強調観察動画を表示装置に並列表示し、動画表示中にフリーズボタンが操作されると、各観察動画を露光条件を設定した上で静止画として保存する内視鏡システム等が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、動画表示中にフリーズボタンを操作することにより静止画の保存が指示された時点から、例えば、一定期間過去にさかのぼって、ブレの少ない複数種類の静止画を選択し保存している。複数の照明光において、例えば、観察対象の表層血管等を強調するための照明光による画像と、同じ観察対象の中深層血管等を強調するための照明光による画像との2種類の画像を見比べることにより、観察対象の奥行き方向に関する情報が得られるため、病変の範囲について診断する場合等に有効である。
【0006】
複数の照明光に対応した複数種類の静止画を保存するためには、例えば、従来技術のように、照明光を切り替えて照明光毎に静止画の保存を行うことにより各種の静止画を保存する。複数の照明光を繰り返し切り替えながら観察対象を観察して撮像する場合、観察に使用する照明光の切り替え周期は、光過敏等の問題から、できるだけ長くすることが好ましい。しかしながら、この場合は、静止画取得指示を行った際の観察に使用しない照明光の画像を選択しなければならず、照明光の切り替え周期が長いほど、保存した複数種類の画像間の時間差が大きくなる。保存した複数種類の画像間の時間差が大きいほど、観察対象の動き等のため画像間の位置が大きくずれる可能性が高くなり、比較又は重畳に適さない静止画が保存されるおそれがあった。
【0007】
一方、保存した複数種類の画像間の時間差を小さくするためには、複数種類の照明光の切り替え周期を小さくして、各照明光の照明時間を短くすることが考えられる。しかしながら、この方法では、光のちらつき、又は光過敏の問題が生じるおそれがあり、画像間の時間差とのトレードオフとなる。
【0008】
また、特許文献1では、上記に加え、複数種類の照明光を所定の順序により自動で切り替えて、各照明光に対応する動画を同時にディスプレイに表示する。この場合、1つの照明光としては照明光を切り替えない場合と比較してフレームレートが半分以下になり、例えば、動く可能性がある観察対象を複数種類の画像間の比較又は重畳により診断するのが難しい場合があった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、複数種類の静止画を1回の指示により比較又は重畳に適した状態で保存する内視鏡システム、及び内視鏡システムの作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、内視鏡システムであって、光源用プロセッサと画像用プロセッサとを備える。光源用プロセッサは、第1期間中に、互いに異なる波長帯域の光を発光する複数の半導体光源と、複数の半導体光源の光強度比の組み合わせが互いに異なる複数の照明光のうちの第1照明光を発光し、第1照明光と組み合わせが互いに異なる第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、第1照明光と切り替えて、発光する制御を行う。画像用プロセッサは、第1照明光又は第2照明光により照明された観察対象を撮影して得られる第1画像又は第2画像をフレーム毎に取得し、第1画像及び第2画像を保存する画像保存処理を行い、画像保存処理を開始させるための処理開始操作が行われた際に、処理開始操作時刻より前の予め設定した期間に取得した複数の第1画像及び複数の第2画像から、予め設定した選択条件を満たす第1画像及び第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して保存し、取得した第1画像及び/又は第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、第1期間中は第1画像のみをディスプレイに表示する。
【0011】
選択条件は、取得した複数の第1画像及び複数の第2画像のうち、ブレが最も少ない第1画像及び第2画像とすることが好ましい。
【0012】
選択条件は、取得した複数の第1画像及び複数の第2画像から選択された第1画像と第2画像とにおいて、位置ずれが最も少ない第1画像及び第2画像とすることが好ましい。
【0013】
選択条件は、取得した複数の第1画像及び複数の第2画像から選択された第1画像と第2画像とにおいて、取得時刻の差が最も少ない第1画像及び第2画像とすることが好ましい。
【0014】
光源用プロセッサは、第1期間と、第2照明光を発光する第2期間とを交互に繰り返し、かつ、第2期間中に、第2照明光を発光し、第1照明光を、少なくとも1フレームの期間、第2照明光と切り替えて発光する制御を行うことが好ましい。
【0015】
画像用プロセッサは、取得した第1画像及び/又は第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、第2期間中は少なくとも第2画像をディスプレイに表示することが好ましい。
【0017】
半導体光源は、波長帯域が中心波長410±10nmかつ波長範囲380~420nmである第1狭帯域光を発光する第1半導体光源と、波長帯域が中心波長450±10nmかつ波長範囲420~500nmである第2狭帯域光を発光する第2半導体光源とを含むことが好ましい。
【0018】
画像用プロセッサは、用いた照明光に関する情報を付与した上で第1画像及び第2画像を保存することが好ましい。
【0019】
また、本発明は、内視鏡システムの作動方法であって、互いに異なる波長帯域の光を発光する複数の半導体光源と、光源用プロセッサと、画像用プロセッサとを備える。光源用プロセッサは、第1期間中に、複数の半導体光源の光強度比の組み合わせが互いに異なる複数の照明光のうちの第1照明光を発光し、第1照明光と組み合わせが互いに異なる第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、第1照明光と切り替えて、発光する制御を行う。画像用プロセッサは、第1照明光又は第2照明光により照明された観察対象を撮影して得られる第1画像又は第2画像をフレーム毎に取得し、第1画像及び第2画像を保存する画像保存処理を行い、画像保存処理を開始させるための処理開始操作が行われた際に、処理開始操作時刻より前の予め設定した期間に取得した複数の第1画像及び複数の第2画像から、予め設定した選択条件を満たす第1画像及び第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して保存し、取得した第1画像及び/又は第2画像をディスプレイに表示する制御を行い、第1期間中は第1画像のみをディスプレイに表示する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数種類の静止画を1回の指示により比較又は重畳に適した状態で保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図3】内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
【
図4】光源部が含む4色のLEDを説明する説明図である。
【
図5】紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rのスペクトルを示すグラフである。
【
図6】第1照明光のスペクトルを示すグラフである。
【
図7】第2照明光のスペクトルを示すグラフである。
【
図8】第1特殊観察モードにおける照明光を説明する説明図である。
【
図9】第2特殊観察モードにおける照明光を説明する説明図である。
【
図10】マルチ観察モードにおける照明光を説明する説明図である。
【
図11】発光期間設定メニューを示す説明図である。
【
図13】第1照明光を照明した場合に得られる紫及び青色光画像と緑及び赤色光画像を示す説明図である。
【
図15】第2照明光を照明した場合に得られる紫及び青色光画像と緑及び赤色光画像を示す説明図である。
【
図16】第1特殊観察モードにおける静止画の保存の一例を説明した説明図である。
【
図17】第1特殊観察モードにおける静止画の保存の別の例を説明した説明図である。
【
図18】マルチ観察モードにおける静止画の保存の例を説明した説明図である。
【
図19】第1特殊観察モードにおいてディスプレイに表示する画像を説明した説明図である。
【
図20】マルチ観察モードにおいてディスプレイに表示する画像を説明した説明図である。
【
図21】第1特殊観察モードにおける静止画の保存の一連の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1において、内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、ディスプレイ18と、キーボード19とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続され、且つ、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、観察対象の体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられた湾曲部12c及び先端部12dとを有している。湾曲部12cは、操作部12bのアングルノブ12e(
図2参照)を操作することにより湾曲動作する。先端部12dは、湾曲部12cの湾曲動作によって所望の方向に向けられる。
【0023】
図2に示すように、操作部12bは、アングルノブ12eの他、観察モードの切替操作に用いるモード切替スイッチ12gと、撮像倍率を変更するためのズーム操作部12hと、静止画取得指示を行う静止画取得指示部12fとを有する。なお、観察モードの切替操作、ズーム操作、又は静止画取得指示は、モード切替スイッチ12g、又は静止画取得指示部12fのスコープスイッチの他、キーボード19、又はフットスイッチ(図示しない)等を用いた操作又は指示としてもよい。
【0024】
内視鏡システム10は、通常観察モード、特殊観察モード、及びマルチ観察モードの3つのモードを有している。通常観察モードは、照明光に白色光を用いて観察対象を撮像して得た自然な色合いの画像である通常観察画像(以下、通常画像という)をディスプレイ18上に表示するモードである。特殊観察モードは、第1特殊観察モードと第2特殊観察モードとを含む。第1特殊観察モードは、表層血管などの表層情報を強調した第1特殊観察画像(以下、第1画像という)をディスプレイ18上に表示するモードであり、第2特殊観察モードは、深層血管などの深層情報を強調した第2特殊観察画像(以下、第2画像という)をディスプレイ18上に表示するモードである。マルチ観察モードは、第1特殊観察モードと第2特殊観察モードとを自動的に切り替えるモードである。
【0025】
プロセッサ装置16は、ディスプレイ18及びキーボード19と電気的に接続される。ディスプレイ18は、通常画像、第1画像、第2画像、及び/又はこれらの画像に付帯する情報などを出力表示する。キーボード19は、機能設定などの入力操作を受け付けるユーザインタフェースとして機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像や画像情報などを記録する外付けの記録部(図示省略)を接続してもよい。
【0026】
図3において、光源装置14は、観察対象に照射する照明光を発する装置であり、光源部20と、光源部20を制御する光源用プロセッサ21とを備える。光源部20は、例えば、複数色のLED(Light Emitting Diode)等の半導体光源、レーザダイオードと蛍光体との組み合わせ、又はキセノンランプやハロゲン光源で構成する。また、光源部20には、LED等が発光した光の波長帯域を調整するための光学フィルタ等が含まれる。光源用プロセッサ21は、各LED等のオン/オフや、各LED等の駆動電流や駆動電圧の調整によって、照明光の光量を制御する。また、光源用プロセッサ21は、光学フィルタの変更等によって、照明光の波長帯域を制御する。
【0027】
図4に示すように、本実施形態では、光源部20は、V-LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B-LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G-LED(Green Light Emitting Diode)20c、及びR-LED(Red Light Emitting Diode)20dの4色のLEDを有する。
【0028】
図5に示すように、V-LED20aは、中心波長410±10nm、波長範囲380~420nmの紫色光Vを発生する。B-LED20bは、中心波長450±10nm、波長範囲420~500nmの青色光Bを発生する。G-LED20cは、波長範囲が480~600nmに及ぶ緑色光Gを発生する。R-LED20dは、中心波長620~630nmで、波長範囲が600~650nmに及ぶ赤色光Rを発生する。なお、本明細書において、「~」の記号は前後の数値を含む範囲を示し、例えば、「420~500nm」は「420nm以上500nm以下」を意味する。
【0029】
光源用プロセッサ21は、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、及びR-LED20dを制御する。光源用プロセッサ21は、通常観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比の組み合わせがVc:Bc:Gc:Rcとなる通常光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。
【0030】
光源用プロセッサ21は、第1特殊観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比の組み合わせがVs1:Bs1:Gs1:Rs1となる第1照明光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。第1照明光は、表層血管を強調することが好ましい。そのため、第1照明光は、紫色光Vの光強度を青色光Bの光強度よりも大きくすることが好ましい。例えば、
図6に示すように、紫色光Vの光強度Vs1と青色光Bの光強度Bs1との比率を「4:1」とする。
【0031】
なお、本明細書において、光強度比の組み合わせは、少なくとも1つの半導体光源の比率が0(ゼロ)の場合を含む。したがって、各半導体光源のいずれか1つまたは2つ以上が点灯しない場合を含む。例えば、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比の組み合わせが1:0:0:0の場合のように、半導体光源の1つのみを点灯し、他の3つは点灯しない場合も、光強度比を有し、光強度比の組み合わせの1つである。
【0032】
また、光源用プロセッサ21は、第2特殊観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比の組み合わせがVs2:Bs2:Gs2:Rs2となる第2照明光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。第2照明光は、深層血管を強調することが好ましい。そのため、第2照明光は、青色光Bの光強度を紫色光Vの光強度よりも大きくすることが好ましい。例えば、
図7に示すように、紫色光Vの光強度Vs2と青色光Bの光強度Bs2との比率を「1:3」とする。
【0033】
通常観察モード、第1特殊観察モード、または第2特殊観察モードにおいて、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの光強度比の組み合わせ、すなわち照明光の種類は互いに異なる。光源用プロセッサ21は、特定の種類の照明光、例えば、第1照明光を発光する第1期間中に、第1照明光と光強度比の組み合わせが互いに異なる照明光、例えば、第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、第1照明光と切り替えて発光する制御を行う。例えば、第2照明光を発光する第2期間中では、第2照明光と光強度比の組み合わせが互いに異なる照明光、例えば、第1照明光を、少なくとも1フレームの期間、第2照明光と切り替えて発光する制御を行う。光源用プロセッサ21は、特定の種類の照明光を発光する期間中に他の種類の照明光を切り替えて発光する際は、少なくとも1フレームの期間であればどの時点で他の種類の照明光に切り替えてもよいが、予め設定した周期により他の種類の照明光を周期的に発光するように制御してもよい。なお、特定の種類の照明光を発光する期間中とは、特定の種類の照明光を続けて発光する期間であるため、特定の種類の照明光を発光する期間中に他の種類の照明光を切り替えて発光した後は、再び、特定の種類の照明光を発光してもよい。
【0034】
なお、「フレーム」とは、観察対象を撮像する撮像センサ45(
図3参照)を制御するための単位をいい、例えば、「1フレーム」とは、観察対象からの光で撮像センサ45を露光する露光期間と画像信号を読み出す読出期間とを少なくとも含む期間をいう。本実施形態においては、撮像の単位である「フレーム」に対応して第1期間、又は第2期間がそれぞれ定められる。
【0035】
特殊観察モードにおいて、光源用プロセッサ21による上記のような第1期間での発光制御又は第2期間での発光制御を具体的に説明すると、
図8に示すように、第1照明光を続けて発光する第1期間中は、5フレームの第1照明光発光期間71に対して1フレームの第2照明光発光期間72の周期で、第1照明光と切り替えて第2照明光を発光し、この周期を繰り返す。または、
図9に示すように、第2照明光を続けて発光する第2期間中は、5フレームの第2照明光発光期間73に対して1フレームの第1照明光発光期間74の周期で、第2照明光と切り替えて第1照明光を発光し、この周期を繰り返す。なお、図においては、図が煩雑になることを避けるため、一部にのみ符号を付す。
【0036】
光源用プロセッサ21は、マルチ観察モードに設定されている場合には、特定の種類の照明光、例えば、第1照明光を続けて発光する第1期間と、第2照明光を続けて発光する第2期間とを交互に繰り返す。マルチ観察モードでは、光源用プロセッサ21は、例えば、第1期間中に、第2照明光を、少なくとも1フレームの期間、第1照明光と切り替えて発光する制御を行い、かつ、第2期間中に、第1照明光を、少なくとも1フレームの期間、第2照明光と切り替えて発光する制御を行う。
【0037】
光源用プロセッサ21によるマルチ観察モードにおける発光制御を具体的に説明すると、
図10に示すように、第1照明光を続けて発光する第1期間75では、5フレームの第1照明光発光期間71に対して1フレームの第2照明光発光期間72の周期で、第1照明光と切り替えて第2照明光を発光し、この周期を第1期間75中で繰り返す。その後、第2照明光を続けて発光する第2期間76では、5フレームの第2照明光発光期間73に対して1フレームの第1照明光発光期間74の周期で、第2照明光と切り替えて第1照明光を発光し、この周期を第2期間76中で繰り返す。その後、再び第1照明光を続けて発光する第1期間75に戻り、第1期間75と第2期間とを交互に繰り返す。本実施形態では、第1期間75と第2期間76とは、それぞれ20フレームである。
【0038】
第1照明光の発光期間である第1期間と第2照明光の発光期間である第2期間とは、光源用プロセッサ21に接続された発光期間設定部22によって、適宜変更が可能である。キーボード19の操作により、発光期間の変更操作を受け付けると、発光期間設定部22は、
図11に示すような発光期間設定メニューをディスプレイ18上に表示する。第1期間は、例えば、2フレームから60フレームの間で変更可能であり、各発光期間については、スライドバー81a上に割り当てられている。第2期間も、例えば、2フレームから60フレームの間で変更可能であり、各発光期間については、スライドバー81b上に割り当てられている。
【0039】
第1期間を変更する場合には、キーボード19を操作して、スライドバー81a上の変更したい発光期間を示す位置にスライダ82aを合わせることで、第1期間が変更される。第2期間についても、キーボード19を操作して、スライドバー81b上の変更したい発光期間を示す位置にスライダ82bを合わせることで、第2期間が変更される。なお、スライドバー81bも、例えば、2フレームから60フレームの発光期間が割り当てられている。本実施形態では、マルチ観察モードでは、第1期間は、スライドバー81aにより20フレームの発光期間が割り当てられ、第2期間は、スライドバー81bにより20フレームの発光期間が割り当てられる。
【0040】
各LED20a~20dが発する光は、ミラーやレンズなどで構成される光路結合部(図示せず)を介して、ライトガイド41に入射される。ライトガイド41は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と、光源装置14及びプロセッサ装置16を接続するコード)に内蔵されている。ライトガイド41は、光路結合部からの光を、内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。
【0041】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ42を有しており、ライトガイド41によって伝搬した照明光は照明レンズ42を介して観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ43、ズームレンズ44、及び撮像センサ45を有している。観察対象からの反射光、散乱光、及び蛍光等の各種の光は、対物レンズ43及びズームレンズ44を介して撮像センサ45に入射する。これにより、撮像センサ45に観察対象の像が結像する。ズームレンズ44は、ズーム操作部12hを操作することでテレ端とワイド端との間で自在に移動し、撮像センサ45に結像する観察対象を拡大又は縮小する。
【0042】
撮像センサ45は、画素毎にR(赤色)、G(緑色)、またはB(青色)のカラーフィルタのいずれかが設けられたカラー撮像センサであり、観察対象を撮像してRGB各色の画像信号を出力する。撮像センサ45としては、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサを利用可能である。また、原色のカラーフィルタが設けられた撮像センサ45の代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(緑)の補色フィルタを備えた補色撮像センサを用いても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力される。このため、補色-原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換することにより、撮像センサ45と同様のRGB画像信号を得ることができる。また、撮像センサ45の代わりに、カラーフィルタを設けていないモノクロセンサを用いても良い。
【0043】
撮像センサ45は、撮像用プロセッサ(図示せず)によって駆動制御される。撮像用プロセッサによる制御は、各モードによって異なっている。通常観察モードでは、撮像用プロセッサは、通常光で照明された観察対象を撮像するように、撮像センサ45を制御する。これにより、撮像センサ45のB画素からBc画像信号が出力され、G画素からGc画像信号が出力され、R画素からRc画像信号が出力される。特殊観察モード又はマルチ観察モードでは、撮像用プロセッサは、特殊光で照明された観察対象を撮像するように、撮像センサ45を制御する。これにより、第1特殊観察モードでは、撮像センサ45のB画素からBs1画像信号が出力され、G画素からGs1画像信号が出力され、R画素からRs1画像信号が出力される。同様に、第2特殊観察モードでは、撮像センサ45のB画素からBs2画像信号が出力され、G画素からGs2画像信号が出力され、R画素からRs2画像信号が出力される。
【0044】
CDS/AGC(Correlated Double Sampling/Automatic Gain Control)回路46は、撮像センサ45から得られるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路46を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)コンバータ47により、デジタルの画像信号に変換される。A/D変換後のデジタル画像信号は、プロセッサ装置16に入力される。
【0045】
プロセッサ装置16には、画像保存処理などの処理に関するプログラムがプログラム用メモリ(図示しない)に格納されている。プロセッサ装置16においては、画像用プロセッサによって構成される中央制御部62によって、プログラム用メモリ内のプログラムが動作することによって、画像信号取得部51と、DSP(Digital Signal Processor)52と、ノイズ低減部53と、メモリ54と、信号処理部55と、画像保存部56と、画像保存制御部61と、表示制御部57と、映像信号生成部58の機能が実現される。また、中央制御部62は、内視鏡12および光源装置14からの情報を受信し、受信した情報に基いて、プロセッサ装置16の各部の制御の他、内視鏡12または光源装置14の制御を行う。また、キーボード19からの指示などの情報も受信する。
【0046】
画像信号取得部51は、内視鏡12から入力される内視鏡画像のデジタル画像信号を取得する。画像信号取得部51は、各照明光により照明された観察対象を撮影した画像信号を、フレーム毎に取得する。取得した画像信号はDSP52に送信される。DSP52は、受信した画像信号に対して、オフセット処理、欠陥補正処理、デモザイク処理、リニアマトリクス処理、ゲイン補正処理、ガンマ変換処理、及びYC変換処理等の各種信号処理を行う。オフセット処理では、受信した画像信号から暗電流成分を除き、正確な零レベルを設定する。欠陥補正処理では、撮像センサ45の欠陥画素の信号が補正される。欠陥補正処理後の画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、同時化処理とも言う)が施され、補間により各画素の欠落した色の信号を生成される。デモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。
【0047】
デモザイク処理後の各色の画像信号には、色再現性を高めるリニアマトリクス処理が施される。ゲイン補正処理は、デモザイク処理後の各色の画像信号に特定のゲインを乗じることにより各画像信号の信号レベルを整える。その後、ガンマ変換処理によって、各画像信号の明るさや彩度が整えられる。DSP52は、ガンマ変換処理後の各画像信号にYC変換処理を施し、輝度信号Yと色差信号Cb及び色差信号Crをノイズ低減部53に出力する。
【0048】
ノイズ低減部53は、DSP52でガンマ変換処理等を施した画像信号に対して、例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等によるノイズ低減処理を施す。ノイズを低減した画像信号は、メモリ54に記憶する。
【0049】
信号処理部55は、メモリ54からノイズ低減後の画像信号を取得する。そして、取得した画像信号に対して、必要に応じて、色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理等の信号処理を施し、観察対象が写ったカラーの内視鏡画像を生成する。色変換処理は、画像信号に対して3×3のマトリックス処理、階調変換処理、及び3次元LUT(ルックアップテーブル)処理などにより色の変換を行う処理である。色彩強調処理は、色変換処理済みの画像信号に対して行う。構造強調処理は、例えば血管やピットパターン等の観察対象に含まれる特定の組織や構造を強調する処理であり、色彩強調処理後の画像信号に対して行う。
【0050】
信号処理部55において、通常観察モードでは、入力した1フレーム分のノイズ低減後の画像信号に対して、通常画像用画像処理を施す。通常画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT処理等の色変換処理、色彩強調処理、及び空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。通常画像用画像処理が施された画像信号は、通常画像として画像保存部56に入力する。
【0051】
信号処理部55において、特殊観察モードでは、第1特殊観察モード又は第2特殊観察モードにおいて入力した1フレーム分のノイズ低減後の画像信号に対して、それぞれ特殊画像用画像処理を施す。特殊画像用画像処理には、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT処理等の色変換処理、色彩強調処理、空間周波数強調等の構造強調処理が含まれる。特殊画像用画像処理が施された画像信号は、第1画像又は第2画像として画像保存部56に入力する。
【0052】
信号処理部55が生成する内視鏡画像は、観察モードが通常観察モードの場合は通常観察画像であり、観察モードが特殊観察モードの場合は特殊観察画像であるため、色変換処理、色彩強調処理、及び構造強調処理の内容は、観察モードによって異なる。通常観察モードの場合、信号処理部55は、観察対象が自然な色合いになる上記各種信号処理を施して通常観察画像を生成する。特殊観察モードの場合、信号処理部55は、例えば、観察対象の血管を強調する上記各種信号処理を施して第1画像及び第2画像を含む特殊観察画像を生成する。
【0053】
半導体光源は、波長帯域が中心波長410±10nmかつ波長範囲380~420nmである紫色光V(第1狭帯域光)を発光する第1半導体光源と、波長帯域が中心波長450±10nmかつ波長範囲420~500nmである青色光B(第2狭帯域光)を発光する第2半導体光源とを含むため、信号処理部55が生成する特殊観察画像では、第1画像では、粘膜の表面を基準として観察対象内の比較的浅い位置にある血管(いわゆる表層血管)又は血液は、マゼンタ系の色(例えばブラウン色)になり、第2画像では、粘膜の表面を基準とし観察対象内の比較的深い位置にある血管(いわゆる中深層血管)は、シアン系の色(例えば緑色)になる。このため、ピンク系の色で表される粘膜に対して、観察対象の血管又は出血(血液)は、色の違いで強調される。
【0054】
図12に示すように、第1画像により、観察対象のうち背景粘膜BM、及び、表層血管VS1が表された画像が表示される。第1画像は、紫色光、青色光、緑色光、及び赤色光を含む第1照明光に基づいて得られる。
図13に示すように、第1照明光が観察対象に照明されると、第1照明光のうち紫色光V及び青色光Bは、表層血管VS1が分布する表層にまで深達する。したがって、紫色光V及び青色光Bの反射光に基づいて得られる紫色光画像VPには、表層血管VS1の像が含まれる。なお、ここでは、紫色光Vの光強度が青色光Bの光強度より強いため、紫色光画像VPとする。また、第1照明光のうち緑色光Gと赤色光Rは、表層血管VS1及び深層血管VS2(表層血管VS1よりも深い位置にある血管)よりもさらに深い位置に分布する背景粘膜BMにまで深達する。したがって、緑色光Gと赤色光Rの反射光に基づいて得られる緑及び赤色光画像GRPには、背景粘膜BMの像が含まれる。以上から、第1画像は紫色光画像VPと緑及び赤色光画像GRPを組み合わせた画像であるため、背景粘膜BM及び表層血管VS1の像が表示される。
【0055】
図14に示すように、第2画像により、観察対象のうち背景粘膜BM、及び、深層血管VS2が表された画像が表示される。第2画像は、紫色光、青色光、緑色光、及び赤色光を含む第2照明光に基づいて得られる。
図15に示すように、第2照明光が観察対象に照明されると、第2照明光のうち紫色光V及び青色光Bは、深層血管VS2が分布する深層にまで深達する。したがって、紫色光V及び青色光Bの反射光に基づいて得られる青色光画像BPには、深層血管VS2の像が含まれる。なお、ここでは、青色光Bの光強度が紫色光Vの光強度より強いため、青色光画像BPとする。また、第2照明光のうち緑色光Gと赤色光Rは、表層血管VS1及び深層血管VS2(表層血管VS1よりも深い位置にある血管)よりもさらに深い位置に分布する背景粘膜BMにまで深達する。したがって、緑色光Gと赤色光Rの反射光に基づいて得られる緑及び赤色光画像GRPには、背景粘膜BMの像が含まれる。以上から、第2画像は青色光画像BPと緑及び赤色光画像GRPを組み合わせた画像であるため、背景粘膜BM及び深層血管VS2の像が表示される。
【0056】
画像保存部56は、画像保存処理を行う。画像保存処理は、画像を保存する処理であり、例えば、第1画像及び第2画像を保存する処理である。画像保存制御部61は、画像保存処理を制御する。具体的には、画像保存制御部61は、画像保存処理を開始させるための処理開始操作が行われた際に、処理開始操作時刻より前の所定期間に取得した複数種類の画像、例えば、複数の第1画像及び複数の第2画像から、予め設定した選択条件を満たす第1画像及び第2画像を、それぞれ少なくとも1つずつ選択して、画像保存部56に保存する制御を行う。
【0057】
処理開始操作は、例えば、静止画取得指示部12fによる静止画取得指示(フリーズ指示又はレリーズ指示)操作である。静止画取得指示部12fを操作することにより、静止画取得指示が入力されると、処理開始操作が行われたことになり、画像保存処理が開始する。画像保存部56は、画像保存制御部61の制御により、予め設定した選択条件により選択された第1画像及び第2画像等の内視鏡画像を、画像保存部56又はストレージ(図示せず)に保存する。ストレージは、プロセッサ装置16にLAN(Local Area Network)等を介して接続した外部記憶装置であり、例えば、PACS(Picture Archiving and Communication System)等の内視鏡画像をファイリングするシステムのファイルサーバや、NAS(Network Attached Storage)等である。
【0058】
図16に示すように、画像保存制御部61による画像保存処理は、具体的には次のように行う。第1特殊観察モードにおいて、照明光としては、第1照明光を続けて発光する第1期間中に、5フレームの第1照明光発光期間71に対して1フレームの第2照明光発光期間72の周期で、第1照明光と切り替えて第2照明光を発光し、この周期を繰り返す。撮像センサ45は、フレーム毎に電荷の蓄積と読み出しとを行うことにより、画像信号を取得する。なお、
図16において、撮像センサ45による第1画像信号取得を実線で示し、第2画像信号取得を破線で示した。また、図は模式的に示したものであって、例えば、蓄積と読み出しとの時間は、必ずしも同程度の時間であるとは限らない。以上により、画像信号取得部51は、期間91において、第1照明光により照明された観察対象を撮影した第1画像を複数取得し、期間92において、第2照明光により照明された観察対象を撮影した第2画像を複数取得する。
【0059】
静止画取得指示93が行われると、画像保存制御部61は、予め設定した所定期間94に取得した複数の第1画像及び第2画像から、選択条件を満たす第1画像又は第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して画像保存部56に保存する制御を行う。選択条件は、予め設定することができるが、保存する第1画像と第2画像とが、比較又は重畳に適した状態で保存される条件とする。例えば、画像保存制御部61は、選択条件を、取得した複数の第1画像及び複数の第2画像のうち、それぞれブレが最も少ない第1画像及び第2画像であるとすることが好ましい。
【0060】
第1画像又は第2画像においてブレが最も少ない第1画像及び第2画像を選択する方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、各画像におけるブレ量を算出して、ブレ量が最も小さいものを選択することができる。ブレ量の算出方法としては、主として、画像解析に基づく方法と撮像センサ45に基づく方法等があり、画像解析に基づく方法としては、画像における複数の領域のそれぞれについて点拡がり関数(PSF(Point Spread Function))を推定し、その点拡がり関数からブレの方向及び大きさを高精度に推定する方法がある(特許5499050号公報参照)。また、画像信号から移動ベクトルを検出し、移動ベクトルを元に画像ブレ量を検出する方法がある(特開平3-16470号公報参照)。また、コントラストを算出し、コントラストが大きいものをブレ量が少ないものとして検出する方法も好ましく用いられる。
【0061】
図16において、静止画取得指示93から
所定期間94に取得された複数の第1画像及び複数の第2画像のうち、ブレが最も少ない第1画像96及び第2画像95が選択される。画像保存制御部61が選択した第1画像96と第2画像95とは、画像保存制御部61が画像保存部56に保存する。なお、画像保存部56は、信号処理部55から送られた画像信号を、画像保存処理のために用いるほか、表示のために表示制御部57に送る。
【0062】
なお、画像信号取得部51が取得した画像、又は、画像保存部56が保存した画像は、画像の付帯情報として取得した時間を有するが、画像保存部56は、対応する照明光に関する情報を付与した上で第1画像及び第2画像を保存することが好ましい。この場合、照明光又は観察モードの情報も付帯情報として有することが好ましい。また、画像のファイル名に照明光又は観察モードと紐付けしたタグ等の識別情報又は識別子等を付しても良い。以上によれば、取得又は保存した画像が第1画像であるか第2画像であるかを、容易に認識することができる。
【0063】
表示制御部57は、表示手段であるディスプレイ18への画像の表示を制御する。例えば、通常観察モードでは、通常画像を連続して動画としてディスプレイ18に表示し、特殊観察モードでは、第1画像又は第2画像を連続して動画としてディスプレイ18に表示し、マルチ観察モードでは、第1画像又は第2画像のいずれかを自動的に切り替えて動画としてディスプレイ18に表示する制御を行う。また、静止画取得指示93が行われた場合は、選択条件により選択された第1画像及び第2画像等の内視鏡画像を静止画としてディスプレイ18に表示する制御を行う。
【0064】
表示制御部57は、第1画像及び第2画像等の静止画を表示する場合は、ディスプレイ18に並べて表示する他に、それぞれの画像の透過度を調整して重畳して表示する、又は、ディスプレイ18の同じ領域に1秒以下の短時間で切り替えて、アニメーションのように表示する等、目的に応じて設定した表示方法となるよう表示を制御する。
【0065】
映像信号生成部58は、表示制御部57から出力される通常画像、特殊画像、画像保存部56に保存された第1画像と第2画像、及び/又はこれらの画像に付帯する情報などを、ディスプレイ18においてフルカラーで表示可能にする映像信号に変換する。変換済みの映像信号はディスプレイ18に入力される。これにより、ディスプレイ18には通常画像、特殊画像、又は付帯情報等が表示される。
【0066】
以上のとおり、内視鏡システム10では、観察に使用する照明光の照明期間は長くする一方で、その照明期間中に、例えば、1フレームといった一瞬だけ他の照明光に切り替えて画像を取得しておくため、複数種類の照明光に対応した複数種類の画像が簡便に取得できる。さらに、照明光の切り替えは、1フレームといった一瞬の期間であり、それ以外は1種類の照明光を続けて発光するため、ユーザは照明の切り替えを認識することがなく、光過敏の問題が生じにくい。したがって、内視鏡システム10は、上記の構成としたことにより、複数種類の静止画を1回の静止画取得指示93により、比較又は重畳に適した状態で保存することができる。
【0067】
なお、画像保存制御部61は、選択条件を、取得した複数の第1画像又は複数の第2画像から選択された第1画像と第2画像とにおいて、位置ずれが最も少ない第1画像及び第2画像であるとすることが好ましい。選択された第1画像と第2画像との位置ずれが少ないことにより、第1画像と第2画像とを比較又は重畳に適した状態で保存することができる。
【0068】
位置ずれが最も少ない第1画像と第2画像とを選択する方法としては、公知の手法を用いることができる。例えば、画像解析に基づく方法では、第1画像と第2画像とを分割し、それぞれの領域において信号特性が類似する第1画像のGs1画像信号と第2画像のGs2画像信号の累積量を比較して求める方法等が挙げられる。
【0069】
また、画像保存制御部61は、選択条件を、取得した複数の第1画像及び複数の第2画像から選択された第1画像と第2画像とにおいて、取得時刻の差が最も少ない第1画像及び第2画像であるとすることが好ましい。選択された第1画像と第2画像との取得時刻の差が少ないほど、第1画像と第2画像との位置ずれが生じにくいため、第1画像と第2画像とを比較又は重畳に適した状態で保存することができる。
【0070】
図17に示すように、
図16と同様の照明光、撮像センサ45、及び画像信号取得部51により、期間91において第1画像を複数取得し、期間92において第2画像を複数取得されている場合、取得時刻の差が最も少ない第1画像及び第2画像のうち、静止画取得指示93の時刻に近い第1画像96及び第2画像95が選択される。画像保存制御部61が選択した第1画像96と第2画像95とは、画像保存制御部61が画像保存部56に保存する。
【0071】
上記したような選択条件は、単独で用いても良いし、複数を組み合わせて用いても良い。例えば、取得時刻の差が最も少ない第1画像及び第2画像の組み合わせが複数あった場合は、それらのうち、ブレが少ないものを選択するようにしてもよい。
【0072】
なお、マルチ観察モードにおいて、画像保存制御部61による画像保存処理は、具体的には、
図18に示すように行なう。照明光は、マルチ観察モードにおける照明光である。図において、同じ符号は同じものを示す。したがって、
図18において、
図10と同じ符号は同じものを示す。撮像センサ45は、フレーム毎に電荷の蓄積と読み出しとを行うことにより画像信号を取得する。なお、
図18において、撮像センサ45による第1画像信号取得を実線で示し、第2画像信号取得を破線で示した。したがって、画像信号取得部51は、期間91において、第1照明光により照明された観察対象を撮影した第1画像を複数取得し、期間92において、第2照明光により照明された観察対象を撮影した第2画像を複数取得し、また、期間97において、第2照明光により照明された観察対象を撮影した第2画像を複数取得し、期間98において、第1照明光により照明された観察対象を撮影した
第1画像を複数取得する。
【0073】
静止画取得指示93が行われると、画像保存制御部61は、予め設定した所定期間94に取得した複数の第1画像及び第2画像から、選択条件を満たす第1画像及び第2画像をそれぞれ少なくとも1つずつ選択して画像保存部56に保存する制御を行う。選択条件等は、上記した特殊観察モードの場合と同様である。
【0074】
以上のように、マルチ観察モードにおいても、内視鏡システム10により、複数種類の静止画を1回の静止画取得指示93により、比較又は重畳に適した状態で保存することができる。
【0075】
なお、表示制御部57は、第1期間中は第1画像を連続してディスプレイ18に表示する制御を行っても良い。第1期間中は、第2照明光を少なくとも1フレームの期間、第1照明光と切り替えて発光し、撮像センサ45は、フレーム毎に画像信号を取得するが、ディスプレイ18には第1画像を連続して表示する。
【0076】
図19に示すように、第1特殊観察モードにおいて、画像信号取得部51は、期間91において、第1照明光により照明された観察対象を撮影した第1画像を複数取得し、期間92において、第2照明光により照明された観察対象を撮影した第2画像を複数取得する。表示制御部57は、取得した
第1画像をディスプレイ18に表示する制御を行う他に、本実施形態では、取得した第2画像はディスプレイ18に表示しない制御を行う。この場合、第2画像を取得した期間は、第2画像を取得する直前の第1画像をそのまま延長して表示してもよい。なお、第2特殊観察モードにおいても同様に、第2画像を連続して表示する。
【0077】
マルチ観察モードにおいては、
図20に示すように、表示制御部57は、第1期間75では第1画像を連続してディスプレイ18に表示し、第2期間76では第2画像を連続してディスプレイに表示する。
【0078】
以上のように、表示制御部57が第1期間中は第1画像を連続してディスプレイ18に表示する制御を行うことにより、観察中のモードとは異なるモードの画像信号を取得しながらも、ディスプレイ18に、ちらつき等がなく内視鏡画像を表示することができる。したがって、ユーザーはより安定して観察等を行うことができる。
【0079】
次に、静止画保存の一連の流れについて、
図21に示すフローチャートに沿って説明を行う。第1特殊観察モードの場合、第1特殊観察モードにて観察を行う(ステップST110)。観察中に、画像信号取得部51は第1画像と第2画像とを取得している(ステップST120)。この場合、ディスプレイ18に表示する内視鏡画像は、第1画像を連続して表示してもよいし、画像の取得に従って、表示も第1画像と第2画像とを切り替えても良い。
【0080】
静止画取得指示があった場合(ステップST130でYES)、静止画取得指示は画像保存処理の処理開始操作であるので、静止画取得指示の時刻より前の所定期間に、画像信号取得部51が取得した複数の第1画像と第2画像とから、予め設定した選択条件を満たす第1画像及び第2画像をそれぞれ1つずつ選択する(ステップST140)。静止画取得指示がない場合は(ステップST130でNO)、観察と第1画像及び第2画像の取得が続けられる。選択された第1画像及び第2画像は、画像保存部56が保存する(ステップST150)。表示制御部57が、保存された第1画像及び第2画像をディスプレイ18に表示する(ステップST160)。表示形式は、予め設定された形式であり、例えば、2つの画像を重畳してディスプレイ18に表示する。観察が終了されると(ステップST170でYES)、一連の流れが終了する。観察を継続する場合は(ステップST170でNO)、第1特殊観察モードでの観察に戻る。
【0081】
なお、上記実施形態では、内視鏡画像の処理を行う内視鏡システムに対して、本発明の適用を行っているが、内視鏡画像以外の医療画像を処理する医療画像処理システムに対しても、静止画を保存する際に本発明の適用は可能である。
【0082】
上記実施形態において、プロセッサ装置16に含まれる中央制御部62、画像信号取得部51、DSP52、ノイズ低減部53、メモリ54、信号処理部55、画像保存部56、画像保存制御部61、表示制御部57、及び映像信号生成部58といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)、光源用プロセッサ21、並びに撮像用プロセッサのハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0083】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0084】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0085】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
12a 挿入部
12b 操作部
12c 湾曲部
12d 先端部
12e アングルノブ
12f 静止画取得指示部
12g モード切替スイッチ
12h ズーム操作部
14 光源装置
16 プロセッサ装置
18 ディスプレイ
19 キーボード
20 光源部
20a V-LED
20b B-LED
20c G-LED
20d R-LED
21 光源用プロセッサ
22 発光期間設定部
30a 照明光学系
30b 撮像光学系
41 ライトガイド
42 照明レンズ
43 対物レンズ
44 ズームレンズ
45 撮像センサ
46 CDS/AGC回路
47 A/Dコンバータ
51 画像信号取得部
52 DSP
53 ノイズ低減部
54 メモリ
55 信号処理部
56 画像保存部
57 表示制御部
58 映像信号生成部
61 画像保存制御部
62 中央制御部
71、74 第1照明光発光期間
72、73 第2照明光発光期間
81a、81b スライドバー
82a、82b スライダ
91、92、97、98 期間
93 静止画取得指示
94 所定期間
95 第2画像
96 第1画像
BM 背景粘膜
VS1 表層血管
VS2 深層血管
VP 紫色光画像
GRP 緑及び赤色光画像
ST110~ST200 ステップ