(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20231127BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61K8/44
A61Q11/00
(21)【出願番号】P 2019084502
(22)【出願日】2019-04-25
(62)【分割の表示】P 2013267437の分割
【原出願日】2013-12-25
【審査請求日】2019-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2012287944
(32)【優先日】2012-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391066490
【氏名又は名称】日本ゼトック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】長野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】早坂 奈美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】安室 操
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】宮崎 大輔
【審判官】齊藤 真由美
(56)【参考文献】
【文献】特公昭48-43869(JP,B1)
【文献】特開2000-281551(JP,A)
【文献】特開2005-289917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ラウロイルサルコシン及び/又はその塩、並びに(B)サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル及びサリチル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が50~500重量部である、口腔用組成物(但し、アルキル硫酸ナトリウムを含む口腔用組成物、並びに、(B)成分としてサリチル酸メチル含む場合には、エストラゴール、クレオソール,ジャスモン酸メチル,アンスラニル酸メチル、バイオレット油、デカラクトン、ウンデカラクトン、ダマスコン、ダマセノン、イオノン、及びイロンよりなる群から選択される少なくとも1種を含む口腔用組成物を除く)。
【請求項2】
口腔用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤の総重量に対するラウロイルサルコシン及び/又はその塩の割合が50重量%以上である、請求項
1に記載される口腔用組成物。
【請求項3】
歯磨剤又は洗口剤である、請求項1
又は2に記載される口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低刺激性であり、且つ起泡性の高い口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤、洗口剤等の口腔用組成物には、通常、洗浄力を高め、更に口腔内での起泡によって使用者に心地よい使用感や清掃感を与える目的で界面活性剤が配合されている。このような口腔用組成物に用いられる界面活性剤は、口腔粘膜に適用されることから高い安全性が求められる。口腔内に対する安全性を満たし、高い発泡性を発揮することができ、且つ比較的安価であるラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤が従来使用されている。
【0003】
また、口腔用組成物の起泡性を高めて口腔内での泡立ちをよくし、満足のいく使用感や清掃感を実現するためには、前述のアニオン界面活性剤を多く配合する処方が組まれるのが一般的である。しかし、アニオン界面活性剤を多く配合することは、アニオン界面活性剤による口腔粘膜への刺激が増強され、特に口内乾燥症(ドライマウス)や知覚過敏に悩む患者は、不快感や強い刺激を感じるため、敬遠される傾向が強い。そのため、界面活性剤として刺激の少ない非イオン性界面活性剤のみを含む口腔用組成物も提供されるが(例えば特許文献1を参照)、価格が高い割に消費者を満足させるだけの起泡性や洗浄作用を発揮させることが困難であった。
【0004】
低刺激性の界面活性剤として他に、ラウロイルメチルタウリン、ラウロイルサルコシン等のアミノ酸系アニオン界面活性剤も知られている。しかし、これらの界面活性剤もラウリル硫酸ナトリウム等の従来一般的に使用されている界面活性剤に比べると起泡性に劣り、使用者が満足するような発泡が得られるものではなかった。このような背景から、口腔内への刺激が低減され、且つ十分な起泡性を有する口腔用組成物が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低刺激性であり、優れた起泡性を有する口腔用組成物を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アミノ酸系アニオン界面活性剤と、トウキ、シャクヤク、サリチル酸メチルとを所定の割合で組合せて配合することにより、口内に適用した際の刺激が低減されながらも十分な起泡力を備えた口腔用組成物が得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明は下記態様の口腔用組成物を提供する。
項1.(A)アミノ酸系アニオン界面活性剤、及び
(B)トウキ、シャクヤク、サリチル酸、サリチル酸の誘導体及びサリチル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種
を含み、且つ前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.1~500重量部である、口腔用組成物。
項2.前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が2~200重量部である、項1に記載される口腔用組成物。
項3.前記アミノ酸系アニオン界面活性剤が、炭素数8~18の飽和又は不飽和のアシル基を有する項1又は2に記載される口腔用組成物。
項4.口腔用組成物中に含まれるアニオン界面活性剤の総重量に対する前記アミノ酸系アニオン界面活性剤の割合が50重量%以上である、項1~3のいずれかに記載される口腔用組成物。
項5.前記(A)成分が、ラウロイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリンの塩、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸の塩、ラウロイルサルコシン、及びラウロイルサルコシンの塩からなる群より選択される少なくとも1種である、項1~4のいずれかに記載される口腔用組成物。
項6.前記(A)成分がラウロイルメチルタウリン及び/又はその塩である、項1~5のいずれかに記載される口腔用組成物。
項7.歯磨剤又は洗口剤である、項1~6のいずれかに記載される口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物によれば、口腔に適用した際の刺激や痛みが低減され、且つ口腔用組成物として十分な泡立ちを実現することができる。従って、本発明によれば、優れた使用感や実用性を備えた口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.口腔用組成物
本発明の口腔用組成物は(A)アミノ酸系アニオン界面活性剤と、(B)トウキ、シャクヤク、サリチル酸、サリチル酸の誘導体及びサリチル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含み、且つ、前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が0.1~500重量部であることを特徴とする。以下、本発明の口腔用組成物について詳述する。
【0011】
(A)成分
本発明の口腔用組成物の(A)成分であるアミノ酸系アニオン界面活性剤は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば炭素数8~18、好ましくは炭素数10~16、より好ましくは10~14、更に好ましくは12~14の飽和又は不飽和のアシル基を有するアミノ酸又はタウリンが例示される。アシル基は、アミノ酸又はタウリンのアミノ基と、カルボキシル基とが結合することにより形成される。ここで、アシル基としては、具体的にはオクチル基、デシル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアリル基等が例示される。
【0012】
また、本発明のアミノ酸系界面活性剤は、塩の形態で使用されてもよく、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩が挙げられる。
【0013】
本発明の(A)成分として具体的には、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシントリエタノールアミンなどのアシルサルコシン及びその塩;ラウロイルメチル-β-アラニン、ラウロイルメチル-β-アラニンナトリウム、パルミトイルメチル-β-アラニンナトリウムなどのアシルアラニン及びその塩;ラウロイルメチルタウリン、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリン、パルミトイルメチルタウリンナトリウムなどのアシルタウリン及びその塩;ミリストイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸カリウム、ラウロイルグルタミン酸、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミンなどのアシルグルタミン酸及びその塩;ミリストイルグルタミン、ココイルグルタミン、ラウロイルグルタミンなどのアシルグルタミン等が例示される。これらの中でも、口内に適用する場合の安全性が確認されており、且つ口腔粘膜に対する刺激性がより低いという観点から、ラウロイルメチルタウリン又はその塩、ラウロイルグルタミン酸又はその塩、ラウロイルサルコシン又はその塩が好ましく、ラウロイルメチルタウリン又はその塩が、更に好ましいものとして挙げられる。これらはその1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0014】
ラウロイルメチルタウリンナトリウムについては、例えば、日光ケミカルズ株式会社等から商業的に入手可能である。ラウロイルグルタミン酸ナトリウムについては、例えば、味の素株式会社等から商業的に入手可能である。ラウロイルサルコシンナトリウムについては、例えば、日光ケミカルズ株式会社、川研ファインケミカル株式会社、クローダジャパン株式会社等から商業的に入手可能である。
【0015】
本発明の口腔用組成物中の(A)成分の含有量は、組成物の総量に対して0.3~2.5重量%、好ましくは0.5~2重量%、より好ましくは0.5~1.5重量%、更に好ましくは0.5~1.0重量%が挙げられる。
【0016】
本発明の口腔用組成物中に前記アミノ酸系アニオン界面活性剤以外に、当該分野において一般的に使用される界面活性剤を配合することを制限するものではない。しかし、本発明の口腔用組成物は、アミノ酸系アニオン界面活性剤を用いることにより、口内に適用した場合の刺激を低減しながらも、使用者が満足し得る起泡性を実現するものである。従って、本発明の口腔用組成物に含まれる前記アミノ酸系アニオン界面活性剤は、他の界面活性剤との総重量に対して50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含まれていることが望ましい。また、本発明の口腔用組成物中に含まれる界面活性剤のうち、アニオン界面活性剤の総重量に対する前記アミノ酸系アニオン界面活性剤の割合が50重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で含まれていることが望ましい。
【0017】
(B)成分
本発明の口腔用組成物において(B)成分として、トウキ、シャクヤク、サリチル酸、サリチル酸の誘導体及びサリチル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種が使用される。
【0018】
トウキ(当帰)は、セリ科(Umbelliferae)のトウキAngelica acutiloba Kitagawa又はその他近縁植物の根で、通例、湯通ししたものであり、生薬(日本薬局方)として、婦人薬、冷え症用薬、保健強壮薬、精神神経用薬及び尿路疾患用薬などの処方に配合して用いられる。トウキについては、丸善製薬株式会社、三國株式会社、一丸ファルコス株式会社等から商業的に入手可能である。
【0019】
シャクヤク(芍薬)は、ボタン科(Paeoniaceae)のシャクヤクPaeonia lactiflora Pallas又はその他近縁植物の根であり、生薬(日本薬局方)として主に鎮痛鎮痙薬(胃腸薬)、婦人薬、冷え症用薬、風邪薬などの用途に使用される。なお、シャクヤクは、生薬名(日本薬局方)でもあるとともに植物名でもある。シャクヤクについては、丸善製薬株式会社、三國株式会社、一丸ファルコス株式会社等から商業的に入手可能である。
【0020】
サリチル酸は、C6H4(OH)COOHで表わされる化合物である。本発明においては、(B)成分としてサリチル酸の他に、サリチル酸の誘導体、サリチル酸の塩も同様に使用することができる。サリチル酸の誘導体としては、例えば、アセチルサリチル酸、スルホサリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸グリコール、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸チタン、サリチル酸2-エチルヘキシル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸フェニル、サリチル酸アミド等が挙げられる。また、サリチル酸の塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。本発明において使用されるサリチル酸の塩として具体的には、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム、サリチル酸カルシウム、ジサリチル酸マグネシウム等が例示される。これらの中でも、サリチル酸、サリチル酸の塩、サリチル酸メチル、サリチル酸エチルが好適なものとして挙げられ、これらの中で、サリチル酸メチルが更に好適なものとして挙げられる。サリチル酸メチルについては、例えば、東京化成工業株式会社、フィルメニッヒ株式会社、JQC株式会社等から商業的に入手可能である。
【0021】
また、本発明においては(B)成分として、トウキ、シャクヤク、サリチル酸、サリチル酸の誘導体又はサリチル酸塩を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の具体的な組合せは特に限定されないが、例えば、トウキとシャクヤク;トウキとサリチル酸メチル;シャクヤクとサリチル酸メチル;トウキ、シャクヤク及びサリチル酸メチル等が挙げられる。特に、泡立ちを高める効果が高いという点から、トウキとサリチル酸メチルの組み合わせ、又はトウキ、シャクヤク及びサリチル酸メチルの組み合わせが好ましい。また、2種以上を併用する場合の比率は特に限定されず、適宜調整すればよいが、例えば各化合物を等量で用いることができる。
【0022】
本発明の口腔用組成物は、前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分を0.1~500重量部の割合で含有する。また、(B)成分の好ましい配合割合として1~200重量部、より好ましくは2~200重量部、更に好ましくは10~200重量部が挙げられる。例えば、(B)成分としてトウキを使用する場合の好ましい配合割合は、(A)成分100重量部に対して1~200重量部、より好ましくは2~200重量部、更に好ましくは10~200重量部が挙げられる。また、(B)成分としてシャクヤクを使用する場合の好ましい配合割合は、(A)成分100重量部に対して1~200重量部、より好ましくは2~200重量部、更に好ましくは6.6~200重量部が挙げられる。更に、サリチル酸、サリチル酸の誘導体及びサリチル酸の塩からなる群より選択される少なくとも1種を用いる場合の好ましい配合割合は、(A)成分100重量部に対して1~200重量部、より好ましくは2~200重量部、更に好ましくは10~200重量部が挙げられる。
【0023】
このような割合で(B)成分を配合することにより、(A)成分の起泡力を向上させることができ、口内での豊かな泡立ちを実現し、使用者に優れた使用感、清掃感を与えることができる。また、(B)成分として2種以上を併用する場合には、(B)成分の総量として前記配合割合を満たすように調整すればよい。
【0024】
2.好ましい態様
本発明の口腔用組成物の剤型は、粉末状、液状、ゲル状、顆粒状、錠剤状のいずれであってもよく、口内の清掃、清涼感の付与、殺菌、口臭防止等を目的として口腔内に適用される限り、従来公知の態様から適宜選択することができる。本発明の口腔用組成物の剤型として具体的には、粉歯磨剤、練歯磨剤、ジェル歯磨剤及び液体歯磨剤等の歯磨剤、ならびに洗口剤等が例示される。また、液状の剤型については、原液のまま使用するタイプであってもよく、濃縮タイプであって使用時に希釈して用いるタイプであってもよい。本発明の口腔用組成物の剤型を歯磨剤又は洗口剤とすることにより、口内に適用した場合に口腔粘膜に対する刺激の低減、優れた起泡性をより一層顕著に実感することができることから、これらが本発明における好適な剤型として挙げられる。特に、練歯磨剤及びジェル歯磨剤においては、起泡性と洗浄効果感の相関が強く、起泡性が向上した場合、その差異を敏感に実感することができるため、練歯磨剤及びジェル歯磨剤は、本発明における好適な剤型として挙げられる。
【0025】
上記(A)成分及び(B)成分を含む本発明の口腔用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に通常配合され得る各種、研磨剤、発泡剤、増粘剤、香料、甘味剤、湿潤剤、抗酸化剤、pH調整剤、着色剤、防腐剤等の添加剤や、薬理活性成分、溶剤等を添加し、従来公知の手法に従って所望の剤型に調製することができる。
【0026】
研磨剤としては、口腔用組成物に一般的に使用される種々の研磨剤を配合することができ、特に限定されないが、例えば、第1リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム・2水和物及び無水和物、第3リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、シリカゲル、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、沈降性シリカ、不溶性メタリン酸ナトリウム、第3リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、ベントナイト、ケイ酸ジルコニウム、チタニウム結合ケイ酸塩等が挙げられる。
【0027】
発泡剤としては、本発明の(A)成分であるアミノ酸系アニオン界面活性剤以外のアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を配合することができる。より具体的には、アニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、例えば、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が挙げられる。本発明において、アミノ酸系アニオン界面活性剤以外の界面活性剤の配合割合は、組成物全体に対して2.5重量%以下、好ましくは2重量%以下であることが望ましい。
【0028】
増粘剤としては、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カラギナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0029】
香料としては、l-メントール、l-カルボン、シンナミックアルデヒド、オレンジオイル、アネトール、1,8-シネオール、メチルサリシレート、オイゲノール、チモール、リナロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、シトラール、カンファー、ボルネオール、ピネン、スピラントール、エチルアセテート、エチルブチレート、イソアミルアセテート、ヘキサナール、ヘキセナール、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、ベンズアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、フラネオール、マルトール、エチルマルトール、ガンマ/デルタデカラクトン、ガンマ/デルタウンデカラクトン、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、メンチルラクテート、エチレングリコール-l-メンチルカーボネート等の香料成分;ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、クローブ油、タイム油、セージ油、カルダモン油、ローズマリー油、マジョラム油、レモン油、ナツメグ油、ラベンダー油、パラクレス油等の天然精油;アップル、バナナ、ストロベリー、ブルーベリー、メロン、ピーチ、パイナップル、グレープ、マスカット、ワイン、チェリー、スカッシュ、コーヒー、ブランデー、ヨーグルト等の調合フレーバーが挙げられる。
【0030】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アセスルファームK、ステビオサイド、ネオヘスポリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド、アスパルテーム、キシリトール、エリスリトール等が挙げられる。
【0031】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、濃グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0032】
抗酸化剤としては、ローズマリー抽出物、ステビア抽出物、ヒマワリ種子抽出物、没食子酸プロピル、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、L-システイン塩酸塩、フィチン酸、ハイドロキノン及びその配糖体、ノルジヒドログアヤレチン酸、グアヤク脂、ポリフェノール、トコフェロール酢酸エステル、マツエキス、アスコルビン酸等が挙げられる。
【0033】
pH調整剤としては、フタル酸、リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、リンゴ酸、炭酸やそれらのカリウム塩、ナトリウム塩又はアンモニウム塩、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。本発明の口腔用組成物のpHは、口腔内及び人体に安全性上問題ない範囲であれば特に限定されるものではないが、例えば口腔用組成物30gを25℃70mLの水に溶解させた場合のpHの範囲としてpH4~9が挙げられる。本発明の口腔用組成物のpHは、必要に応じて前記pH調整剤を使用して当該範囲に調整され得る。
【0034】
着色剤としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色225号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、黄色205号、青色1号、青色2号、青色201号、青色204号、緑色3号、雲母チタン、酸化チタン等が挙げられる。
【0035】
防腐剤としては、例えば安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、塩化セチルピリジニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0036】
薬理活性成分としては、例えばクロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤;トラネキサム酸、グリチルリチン酸ジカリウム塩等の抗炎症剤;アラントイン、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム等の酵素;塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤などが挙げられ、これらを薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
【0037】
溶剤としては、エタノールやイソプロピルアルコール等を使用することができる。
【0038】
本発明の口腔用組成物中の任意成分の含有量としては、配合される各成分の量、担体、添加剤の種類等に応じて適宜設定され得るが、総量として1~80重量%が挙げられる。
【0039】
また、本発明の口腔用組成物は、薬理学的に許容される従来公知の担体を含んでいてもよい。このような担体としては、例えば水(イオン交換水、蒸留水、精製水等)、生理食塩水等の水性担体;高級脂肪酸、植物油、動物油、シリコーン油類、金属石鹸等の油性担体が挙げられる。本発明において、これらの担体の含有量は、口腔用組成物において上記(A)及び(B)成分と、その他の任意成分以外の残部に相当するように調整される。
【0040】
本発明の口腔用組成物の適用量は特に限定されず、用途に応じて適宜調整され得るが、例えば、練歯磨剤の場合には、0.2~1gが挙げられ、液体歯磨剤や洗口剤の場合には5~20mLが挙げられる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例等を示し、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0042】
[起泡力の評価]
下表1~10に示される歯磨剤を、原料を室温(約25℃)下において脱気混合することにより調製した。より具体的には、(A)成分、精製水、濃グリセリン、ソルビット液及び無水ケイ酸を10分間攪拌混合した後、別途混合しておいた(B)成分、エタノール及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を加えて10分間撹拌し、最後にカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを加えて更に15分撹拌し脱気させた。
【0043】
得られた歯磨剤15gに対して精製水(25℃)75gを加え、よく懸濁し試料溶液とした。試料溶液60mLをメスシリンダーにとり、ホモジェナイザー(System POLYTRON PT-K)の攪拌翼を液面から約3分の2の位置に設置した。室温(約25℃)において回転速度約5000rpmで10秒間回転させた後、攪拌翼が停止して泡沫が安定したとき(約5秒後)に、泡部分の最上部のメスシリンダーの目盛り(mL)を測定した。下記数式1に示されるように泡部分と液部分(60mL)の差を発泡量とした。
【0044】
<数式1>
発泡量=泡部分の最上部の目盛-液部分(60mL)
【0045】
結果を下表1~10に示す。
【0046】
【0047】
表1に示されるように、アミノ酸系アニオン界面活性剤としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを用いた場合、当該界面活性剤と、シラカバ、オウバク、コリアンダー又はユーカリといった本発明の(B)成分以外の生薬や精油とを組み合わせた参考比較例1~4の歯磨剤の発泡量は、ラウロイルメチルタウリンナトリウムを単独で含有する歯磨剤(比較例1)に比べて低下し、満足な発泡量が得られないことが示された。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
表2~4に示されるように、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを用い、(B)成分としてサリチル酸メチル、トウキ又はシャクヤクを組合せると、優れた起泡力が得られることが示された(実施1~23)。
【0052】
また、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを0.5重量%含有する場合、(B)成分であるサリチル酸メチルの配合量を(A)成分100重量部に対して10~200重量部とすることにより、(A)成分単独で含有する場合(比較例1)に比べて発泡増加量を115%以上とすることができ、より一層優れた起泡力を付与できることが示された(実施例1~4)。また、(B)成分としてトウキを用いる場合にも、トウキの配合量を(A)成分100重量部に対して10~200重量部とすることにより発泡増加量を115%以上とすることができた(実施例8~11)。更に(B)成分としてシャクヤクを用いる場合には、シャクヤクの配合量を(A)成分100重量部に対して6.6~200重量部とすることにより発泡増加量を115%以上とすることができ(実施例14~18)、特に、シャクヤクの配合量を6.6~50重量部とすると、更に優れた起泡力を付与できることが示された(実施例15~18)。
【0053】
また、(B)成分としてサリチル酸メチル、トウキ、シャクヤクをそれぞれ組合せて用いた場合にも、同様に発泡量の増加が示された(実施例20~23)。特に、サリチル酸メチル及びトウキを組み合わせた場合(実施例20)並びにサリチル酸メチル、トウキ及びシャクヤクを組合せた場合(実施例21)、より一層高い起泡力を付与できることが示された。
【0054】
【0055】
【0056】
表5及び6より、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを1重量%含有する場合、(B)成分のサリチル酸メチルの配合量を(A)成分100重量部に対して10~200重量部とすることにより発泡増加量が114%以上となり、より優れた起泡力を付与できることが示された(実施例24~27)。また、(B)成分としてトウキを用いる場合、(A)成分100重量部に対する配合量を10~200重量部とすることによって、より一層優れた起泡力が付与されることが示された(実施例29~32)。更に、(B)成分としてシャクヤクを用いる場合も、(A)成分100重量部に対する配合量を10~200重量部とすることにより、更に発泡量の増加が認められた(実施例34~37)
【0057】
【0058】
【0059】
表7及び8に示されるように、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを2重量%含有する場合、(B)成分のサリチル酸メチルの配合量を(A)成分100重量部に対して10~50重量部とすることによって、より一層優れた起泡力を付与することができた(実施例40~42)。また、(B)成分としてトウキを用いる場合には、(A)成分100重量部に対する配合量を10~50重量部とすることによって、更に高い起泡性が示された(実施例45~47)。更に、(B)成分としてシャクヤクを用いる場合には、(A)成分100重量部に対する配合量を10~200重量部とすることによってより高い起泡性が示された。(実施例49~52)。なお、実施例44、48及び53については、発泡量の増加率がいずれも107%程度となっており、他の実施例に比べると比較的発泡増加量が小さいが、これらの歯磨剤を口内に適用し、歯ブラシを用いてブラッシングした場合に、適度な泡立ちの向上を実感することができ、実用上十分な起泡力が付与されたものである。
【0060】
【0061】
表9に示されるように、(A)成分としてラウロイルグルタミン酸ナトリウムを用いた場合にも、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを用いた場合と同様に(B)成分と組合せることによって発泡量が増加し、優れた起泡力を付与できることが示された。
【0062】
【0063】
表10に示されるように、(A)成分としてラウロイルサルコシンナトリウムを用いた場合にも、(A)成分としてラウロイルメチルタウリンナトリウムを用いた場合と同様に(B)成分と組合せることによって発泡量が増加し、優れた起泡力を付与できることが示された。
【0064】
また、表1~10の、実施例1~65の歯磨剤を実際に口内に適用し、歯ブラシを用いてブラッシングしたところ、泡立ちの向上だけでなく、泡立ちの向上に相関して洗浄効果の向上を実感することができた。
【0065】
[処方例:練歯磨剤]
下記表11~17に練歯磨剤の処方例を示す。練歯磨剤の調製は、(A)成分、精製水、濃グリセリン、ソルビット液、無水ケイ酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、マツエキス、クエン酸ナトリウム、クエン酸を10分間攪拌混合した後、別途混合しておいた(B)成分、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トコフェロール酢酸エステル及びl-メントールを10分間撹拌し、最後にカルボキシメチルセルロースナトリウム及びポリアクリル酸ナトリウムを加えて更に15分撹拌し脱気させることにより行った。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
[処方例:液体歯磨剤、洗口剤]
下表18に液体歯磨剤又は洗口剤の処方例を示す。液体歯磨剤又は洗口剤は、(A)成分、精製水、濃グリセリン、ソルビット液、グリチルリチン酸ジカリウム、アラントイン、マツエキス、クエン酸ナトリウム及びクエン酸を10分間撹拌した後、別途混合しておいた(B)成分、エタノール、トコフェロール酢酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及びL-メントールと共に更に10分間撹拌することにより調製される。
【0074】
【0075】
以上のいずれの処方の口腔用組成物も口内への刺激が低減され、且つ満足な使用感、清掃感が得られる起泡力を有していた。