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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】給電システム
(51)【国際特許分類】
   B60M 7/00 20060101AFI20231127BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20231127BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231127BHJP
   B60L 5/38 20060101ALI20231127BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20231127BHJP
【FI】
B60M7/00 U
B60C19/00 D
H02J7/00 P
H02J7/00 301A
B60L5/38 A
B60L53/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019186307
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059300
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業、「第三世代ワイヤレスインホイールモータを開発と実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】藤本 博志
(72)【発明者】
【氏名】清水 修
(72)【発明者】
【氏名】芥川 恵造
(72)【発明者】
【氏名】若尾 泰通
(72)【発明者】
【氏名】桑山 勲
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135837(JP,A)
【文献】実開平03-113901(JP,U)
【文献】特開2015-140174(JP,A)
【文献】特開昭52-029005(JP,A)
【文献】特開2009-171772(JP,A)
【文献】特開平01-022604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 7/00
B60C 19/00
H02J 7/00
B60L 1/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置されている受電装置と、
道路に設置され、前記受電装置に電力を供給する給電レールと、を備え、
前記受電装置は、前記移動体の走行中又は停車中に前記給電レールに接触可能に構成されている受電部を備え、
前記受電部が前記給電レールに接触した状態において、前記受電部を通じて給電レールから前記受電装置に電力が供給され、
前記受電装置は、前記受電部が接続されている装置本体を備え、
前記装置本体の少なくとも一部は、前記移動体の車輪の内部空間に収容されており、
前記受電部の少なくとも一部は、前記移動体の前記車輪の前記内部空間に収容されていない、
給電システム。
【請求項2】
前記受電部は、前記移動体の車輪の側面に設けられた複数の導電性の繊維により構成されている、請求項1に記載の給電システム。
【請求項3】
前記受電部の少なくとも一部は、前記移動体の前記車輪を除く本体の下に設けられており、
前記給電レールの前記道路からの高さは、前記移動体の前記車輪を除く前記本体の最低地上高よりも低い、請求項1又は2に記載の給電システム。
【請求項4】
移動体に設置されている受電装置と、
道路に設置され、前記受電装置に電力を供給する給電レールと、を備え、
前記受電装置は、前記移動体の走行中又は停車中に前記給電レールに接触可能に構成されている受電部を備え、
前記受電部が前記給電レールに接触した状態において、前記受電部を通じて給電レールから前記受電装置に電力が供給され、
前記受電部は、前記移動体の車輪の側面に設けられた複数の導電性の繊維により構成されている、給電システム。
【請求項5】
移動体に設置されている受電装置と、
道路に設置され、前記受電装置に電力を供給する給電レールと、を備え、
前記受電装置は、前記移動体の走行中又は停車中に前記給電レールに接触可能に構成されている受電部を備え、
前記受電部が前記給電レールに接触した状態において、前記受電部を通じて給電レールから前記受電装置に電力が供給され、
前記受電部の少なくとも一部は、前記移動体の車輪を除く本体の下に設けられており、
前記給電レールの前記道路からの高さは、前記移動体の前記車輪を除く前記本体の最低地上高よりも低い、給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給電システム、車輪、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、充電ケーブルを用いて当該電気自動車を車外電源設備に接続し、この状態で車外電源設備から電力の供給を受けることによって充電を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-060861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電ケーブルで電気自動車を車外電源設備に接続した状態で充電を行う場合、電気自動車と車外電源設備とを充電ケーブルで接続したり取り外したりする作業等を行うために、搭乗者が電気自動車から乗り降りする必要がある。そのため、電気自動車のユーザにとって有用性が高いとは言い難い。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、移動体に対する給電技術の有用性を向上させることができる、給電システム、車輪、及び移動体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る給電システムは、移動体に設置されている受電装置と、道路に設置され、前記受電装置に電力を供給する給電レールと、を備え、前記受電装置は、前記移動体の走行中又は停車中に前記給電レールに接触可能に構成されている受電部を備え、前記受電部が前記給電レールに接触した状態において、前記受電部を通じて給電レールから前記受電装置に電力が供給される。本発明に係る給電システムによれば、給電の際に搭乗者の乗り降りを必要としないため、移動体に対する給電技術の有用性が向上する。
【0007】
本発明の給電システムでは、前記受電装置は、前記受電部が接続されている装置本体を備え、前記装置本体の少なくとも一部は、前記移動体の車輪の内側に収容されており、前記受電部の少なくとも一部は、前記移動体の前記車輪の内側に収容されていないことが好ましい。この構成によれば、車輪の外側に設けられた受電部が給電レールと接触することにより、受電部を通じて給電レールから受電装置に電力を供給することができる。
【0008】
本発明の給電システムでは、前記受電部は、前記移動体の車輪の側面に設けられた複数の導電性の繊維により構成されていることが好ましい。この構成によれば、給電レールから、導電性の繊維を通じて給電することができる。
【0009】
本発明の給電システムでは、前記給電レールの前記道路からの高さは、前記移動体の前記車輪を除く移動体本体の最低地上高よりも低いことが好ましい。この構成によれば、給電レールにより移動体の走行が妨げられにくくなる。
【0010】
本発明に係る車輪は、移動体の車輪であって、前記移動体の走行中又は停車中に、道路に設置されている給電レールに接触可能に構成されている受電部を備える。本発明に係る車輪によれば、給電の際に搭乗者の乗り降りを必要としないため、有用性が向上する。
【0011】
本発明に係る移動体は、前述の車輪を備える。本発明に係る移動体によれば、給電の際に搭乗者の乗り降りを必要としないため、有用性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体に対する給電技術の有用性を向上させることができる、給電システム、車輪、及び移動体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る給電システムを、車輪の幅方向断面を用いて示す、概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る給電システムにおける車輪の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪の幅方向断面を用いて示す、概略図である。
図3】本発明の一実施形態に係る受電装置の構成例を概略的に示す、機能ブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る給電システムにおける給電レールの道路への設置例を示す、概略図である。
図5】本発明の一実施形態に係る給電システムにおける車輪の一例としてのタイヤ・ホイール組立体の一変形例を、車輪の幅方向断面を用いて示す、概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る給電システム、車輪、及び移動体について、図面を参照して説明する。各図において同一の部品及び部位には同一の符号を付している。本明細書において、車輪の幅方向とは、車輪の回転軸と平行な方向をいう。車輪の径方向とは、車輪の回転軸と直交する方向をいう。道路又は走行レーンの延在方向とは、道路又は走行レーンが延在する方向をいう。道路又は走行レーンの幅方向とは、延在方向と直交する方向をいう。移動体の幅方向とは、移動体が走行する方向と直交する方向をいう。
【0015】
(給電システムの構成)
図1及び図2を参照して、本発明の一実施形態に係る給電システム1の構成について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る給電システム1を、車輪6の幅方向断面を用いて示す、概略図である。給電システム1は、給電レール2と、受電装置3とを含む。給電レール2は、道路4に設置されている。具体的には、本実施形態の給電レール2は、道路4の路面上に、突出するように設置されている。給電レール2は、移動体5に電力を供給する。受電装置3は、移動体5に設置されている。受電装置3は、移動体5の走行中又は停車中に給電レール2に接触可能に構成されている受電部31を備える。給電システム1では、移動体5が道路4を走行している間又は停車している間に、受電装置3の受電部31と、給電レール2とが接触する。これにより、給電レール2から受電部31を通じて受電装置3に電力が供給される。移動体5は、このようにして供給された電力を消費して、走行したり、移動体5が備える各装置を駆動したりすることができる。
【0017】
給電レール2は、道路又は走行レーンの延在方向に沿って、レール状に形成されている。給電レール2が、道路又は走行レーンにおいて延在する長さは適宜定めることができる。上述したように、本実施形態の給電レール2は、道路4の路面上に突出するように設置されている。給電レール2が路面上に突出する高さHは、移動体5の車輪6を除く本体の最低地上高よりも低い高さに設定されることが好ましい。これにより、給電レール2により移動体5の走行が妨げられにくくなる。
【0018】
給電レール2は、受電装置3の受電部31と接触することにより給電レール2及び受電装置3を電気接続する給電部21を備える。給電部21は、例えば、導電性の金属により構成されている。図1に示す例において、給電部21は、給電レール2の上面に設けられているが、給電部21が設けられる位置は、上面に限られない。給電部21は、受電部31と接触可能な適宜の位置に設けられていてよい。
【0019】
本実施形態の給電レール2は、給電部21以外に、給電部21に電力を供給する電力供給部(不図示)を備える。電力供給部は、例えば、発電装置を含んで構成されていてよい。給電レール2は、上述した給電部21及び電力供給部に加えて、他の部位を有してもよい。また、給電レール2は電力供給部を有さない構成であってもよく、給電部21のみから構成されてもよい。かかる場合に、給電レール2を構成する給電部21には、給電レール2内ではなく、例えば、道路4の路面内に埋設される電力供給源から、電力が供給されればよい。
【0020】
図1に示す例では、道路又は走行レーンの幅方向において、給電レール2が1つのみ設けられている。しかしながら、給電レール2は、道路又は走行レーンの幅方向において2つ以上設けられていてもよい。給電レール2が道路又は走行レーンの幅方向において2つ以上設けられる場合、2つ以上の給電レール2同士の、道路又は走行レーンの幅方向における間隔は、移動体5の左右の車輪6の中心間距離(輪距)に基づいて定めることができる。具体的には、2つ以上の給電レール2は、道路又は走行レーンの幅方向において、移動体5の左右の車輪6の内側に隣接する位置となるように、道路4に設置されている。なお、給電レール2は、道路又は走行レーンの幅方向において、移動体5の左右の車輪6の外側に隣接する位置となるように、道路4に設置されていてもよい。
【0021】
受電装置3は、給電レール2から電力を受電する。本実施形態の受電装置3は、受電部31と、受電部31が接続されている装置本体10と、を備える。本実施形態において、装置本体10の少なくとも一部は、移動体5の車輪6の内側に収容されている。車輪6の内側とは、車輪6の幅方向内側、かつ、車輪6の径方向内側、を意味する。図2に示す例では、受電装置3の大部分が、移動体5の車輪6の内側に収容されている。装置本体10は、全体が移動体5の車輪6の内側に収容されていてもよい。また、受電部31の少なくとも一部は、移動体5の車輪6の内側に収容されていない。具体的には、本実施形態の受電部31は、装置本体10から突設され、移動体5の車輪6の外側に位置する。図1及び図2に示す例では、受電部31は、装置本体10から移動体5の内側方向に突設されると共に、その先端が鉛直方向下側(道路4の路面側)に伸びている。ここで、移動体5の内側方向とは、移動体5の幅方向の中央側の方向をいう。
【0022】
なお、受電部31は、車輪6に対して移動体5の内側方向に突出していなくてもよい。受電部31は、車輪6に対して移動体5の外側方向に突出していてもよい。移動体5の外側方向とは、移動体5の幅方向の中央側の方向とは反対の方向をいう。給電レール2が移動体5の車輪6の内側に隣接する位置に設置されている場合は、受電部31は、移動体5の内側方向に突設されることが好ましい。また、給電レール2が移動体5の車輪6の外側に隣接する位置に設置されている場合は、受電部31は、移動体5の外側方向に突設されることが好ましい。
【0023】
受電部31は、移動体5の走行中又は停車中に、少なくともその一部が給電レール2に接触するように設けられている。受電部31は、導電性の材料を含んで構成されている。受電部31は、少なくとも、給電レール2に接触する部分が、導電性の材料で構成されている。図2に示す受電部31は、装置本体10から突設される線状部材により構成される。図2に示す受電部31のうち給電レール2に接触する部分は、線状部材の先端部である。ただし、受電部31の構成は図2に示す構成に限られない。受電部31は、例えば、複数の導電性の繊維により構成されてもよい。この詳細は後述する(図5参照)。受電部31は、給電レール2の給電部21に接触することにより、給電レール2から電力を受電し、装置本体21に伝送する。
【0024】
道路4は、移動体5による交通に用いられる路面を有する。本明細書では、「路面」は、移動体5が車輪6で走行する道路4の表面である。本実施形態では、道路4は、例えば車道である。しかしながら、道路4は、車道に限られず、歩道、農道、林道、滑走路、駐車場、空き地、及び広場等を含み得る。移動体5の交通には、移動体5の走行、停車及び駐車が含まれる。
【0025】
道路4の路面には、少なくとも1つの走行レーン41が設けられている。走行レーン41は、移動体5が走行する領域として区画された路面の領域である。道路4には、並走可能な移動体5の数に応じて、複数の走行レーン41が設けられていてもよい。道路4の路面には、走行レーン41を示すために、白線等の区画線が引かれてもよい。
【0026】
本実施形態では、道路4の路面は、例えばアスファルトで舗装されている。しかしながら、道路4の路面は、アスファルトに限られず、コンクリート、石、煉瓦、土、及び砂利等で構成されていてもよい。
【0027】
移動体5は、車輪6により道路4の路面を走行する。本実施形態では、移動体5は、例えば電気自動車又はハイブリッド車等の、動力源にモータが含まれる自動車である。自動車には、乗用車、トラック、バス、及び自動二輪車等が含まれる。しかしながら、移動体5には、自動車に限られず、トラクター等の農業用車両、ダンプカー等の工事用又は建設用車両、飛行機、ヘリコプター、原動機付自転車、電動自転車、並びに電動車いす等が含まれる。
【0028】
車輪6は、移動体5の移動に用いられる。車輪6は、移動体5の本体に取り付けられた状態で、道路4の路面と接する接地面を有している。本実施形態では、移動体5は4つの車輪6を備えている。本実施形態では、車輪6は、タイヤ61をホイール62に装着させたタイヤ・ホイール組立体であるが、その構成はこれに限られない。本明細書において、車輪6の「接地面」は、車輪6がタイヤ・ホイール組立体である場合、タイヤ61の接地面、即ち、タイヤ61を適用リムに装着し、規定内圧を充填し、最大荷重を負荷した状態で、路面と接する、タイヤ61の表面をいう。
【0029】
本明細書において、「適用リム」とは、空気入りタイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指すが、これらの産業規格に記載のないサイズの場合は、空気入りタイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に前述の産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられ得る。
【0030】
本明細書において、「規定内圧」とは、前述したJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいい、前述した産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。また、本明細書において、「最大荷重」とは、前述した産業規格に記載されている適用サイズのタイヤにおける最大負荷能力に対応する荷重、又は、前述した産業規格に記載のないサイズの場合には、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重を意味する。
【0031】
図2は、本発明の一実施形態に係る給電システム1における車輪6の一例としてのタイヤ・ホイール組立体を、車輪6の幅方向断面を用いて示す、概略図である。
【0032】
図2に示されるように、タイヤ61は、幅方向断面において、一対のビード部611と、一対のサイドウォール部612と、トレッド部613とを有している。ビード部611は、タイヤ61をホイール62のリム部621に装着させたときに、ビード部611の径方向内側及び幅方向外側がリム部621に接するように構成されている。サイドウォール部612は、トレッド部613とビード部611との間に延在している。サイドウォール部612は、ビード部611よりも、車輪6の径方向外側に位置している。トレッド部613は、サイドウォール部612よりも車輪6の径方向外側に位置し、タイヤ61の接地面を含む。
【0033】
タイヤ61は、天然ゴム及び合成ゴム等のゴムで形成されており、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等、スチール等の金属で形成されている部品を含み得る。例えば、カーカス、ベルト及びビードワイヤ等の部品の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていてもよい。
【0034】
ホイール62は、タイヤ61を装着するための円筒状のリム部621と、リム部621の径方向内側に設けられ、移動体5のシャフト52に固定されるハブ部622と、ハブ部622に支持固定されると共にリム部621を支持固定するディスク部623と、を有している。
【0035】
ホイール62は、スチール等の金属で形成され得るが、これに限られない。ホイール62のリム部621、ハブ部622、及びディスク部623の少なくとも一部は、非磁性材料で形成されていてもよい。
【0036】
受電装置3は、移動体5の本体に取り付けられている。これによって、車輪6の回転状態によらずに、受電装置3の受電部31は、一定の方向(本実施形態では道路4側)に向かって伸びた状態を維持できる。換言すれば、受電部31は、車輪6の回転によらず、車輪6に対する相対的な位置が変動しない。これにより、受電部31は、車輪6の回転によって、道路4からの高さが変動せず、走行中であっても給電レール2の給電部21との接触状態を維持できる。
【0037】
(受電装置の構成)
次に、図3を参照して、本発明の一実施形態に係る給電システム1に含まれる受電装置3の構成について説明する。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態に係る受電装置3の構成例を概略的に示す、機能ブロック図である。図3に示されるように、受電装置3は、受電部31及び装置本体10を備える。また、図3に示されるように、受電装置3の装置本体10は、機能ブロックとして、電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、記憶部36、及び制御部37を備えている。受電部31と、装置本体10の電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、記憶部36、及び制御部37とは、例えばCAN等のネットワークを介して、有線又は無線で互いに通信可能に接続されている。
【0039】
受電部31は、移動体5の走行中又は停車中に、給電レール2に接触して、給電レール2から電力を受電し、装置本体10に伝送する。具体的には、受電部31は、給電レール2から受電した電力を、装置本体10の電力変換部32に伝送する。受電部31は、少なくとも、給電レール2に接触する部分が、導電性の材料で構成されている。受電部31は、導電性の材料が非導電性の材料で被覆されて形成されていてよい。受電部31は、導電性材料で構成された箇所により、給電レール2の給電部21と電気的に接続される。これにより、給電レール2から受電装置3の装置本体10における電力変換部32に電力が伝送される。
【0040】
電力変換部32は、受電部31からの電力を受電可能なように、受電部31と電気的に接続されている。電力変換部32は、例えば、AC/DCコンバータ及びインバータ等の電力変換回路を備える。電力変換部32は、受電部31から受電した電力を変換して、移動体5に搭載された車載装置51に送電する。
【0041】
車載装置51は、例えばモータである。モータである車載装置51は、受電装置3から送電された電力を消費して、車輪6を駆動させる。本実施形態では、車載装置51は、車輪6に搭載されているインホイールモータである。インホイールモータは、移動体5が備える各車輪6(本実施形態では4つの車輪6)に、それぞれ設けられている。車載装置51は、移動体5の本体に搭載され、移動体5のシャフト52を回転させることで、車輪6を駆動させる、オンボードモータであってもよい。
【0042】
車載装置51は、モータに限られず、蓄電池、通信機器、カーナビゲーションシステム、メディアプレイヤ、及び車載センサ等の、移動体5に設置された任意の電子装置を含んでいてもよい。
【0043】
蓄電部33は、電力変換部32と接続されている。蓄電部33は、例えば、鉛蓄電池、ニッケル水素蓄電池、リチウムイオン電池、及びナトリウム硫黄電池等の充放電可能な電池を含む。蓄電部33は、蓄電池に限られず、キャパシタを含んでもよい。蓄電部33がキャパシタを含む場合、蓄電池等に比べて短時間で充放電を行うことができ、高い即応性を求められる状況において、有利である。蓄電部33は、電力変換部32を介して、受電部31から送電された電力を蓄電し、或いは、蓄電した電力を車載装置51に供給する。
【0044】
検出部34は、例えば電圧センサ及び電流センサ等の、センサを含む。検出部34は、受電部31を通じて給電レール2から受電装置3の装置本体10に供給された電力を検出する。
【0045】
通信部35は、1つ以上の通信モジュールを含む。通信モジュールは、例えば、有線LAN通信モジュール又は無線LAN通信モジュール、CAN通信モジュール等である。通信部35は、インターネット等のネットワークを介して、外部のコンピュータ、或いは移動体5の車載装置51等と通信を行う。
【0046】
記憶部36は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等である。記憶部36は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部36は、受電装置3の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部36は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、及び組み込みソフトウェア等を記憶する。
【0047】
制御部37は、1つ以上のプロセッサを含む。プロセッサは、例えば、CPU等の汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であってよい。制御部37は、プロセッサに限られず、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA、又はASICであってよい。制御部37は、上述した、電力変換部32、蓄電部33、検出部34、通信部35、及び記憶部36を制御して、受電装置3の装置本体10の機能を実現させる。
【0048】
制御部37は、受電装置3が給電レール2から受電している電力を計測することができる。具体的には、制御部37は、検出部34により検出された情報に基づいて、受電部31を通じて装置本体10が給電レール2から受電した電力の強度を計測する。電力の強度は、例えば電力、電力量、電圧、電流、磁束、又は磁束密度等の数値情報で表されてよい。
【0049】
制御部37は、受電装置3が受電した電力を、移動体5に搭載された車載装置51に送電することができる。具体的には、制御部37は、受電装置3が受電部31を通じて給電レール2から受電した電力を、電力変換部32を介して車載装置51に送電することもでき、或いは、受電装置3が受電部31を通じて給電レール2から受電した電力を蓄電部33に蓄電したのち、蓄電部33から車載装置51に送電することもできる。
【0050】
(送電装置の道路への設置例)
次に、図1及び図4を参照して、給電システム1における給電レール2の道路4への設置例について、説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る給電システムにおける給電レール2の道路4への設置例を示す、概略図である。図4は、図1に示された給電システム1を俯瞰図で示したものである。
【0051】
本実施形態では、給電システム1は、複数の給電レール2を含む。図4に示されるように、道路4には、道路4の延在方向に複数の給電レール2が設置されている。具体的には、図4に示す例では、複数の給電レール2が、走行レーン41の幅方向において、中央よりも左右いずれかの方向に寄った位置に設置されている。移動体5の進行方向から見た場合に、走行レーン41の幅方向において中央よりも右側によって設置された給電レール2は、移動体5の右側に備えられている車輪6に少なくとも一部が収容されている受電装置3に給電するための給電レール2である。反対に、移動体5の進行方向から見た場合に、走行レーン41の幅方向において中央よりも左側によって設置された給電レール2は、移動体5の左側に備えられている車輪6に少なくとも一部が収容されている受電装置3に給電するための給電レール2である。なお、図4では、走行レーン41の幅方向の左側に寄って配置されている給電レール2と、走行レーン41の幅方向の右側に寄って配置されている給電レール2とが、走行レーン41の延在方向の異なる位置に配置されているが、走行レーン41の延在方向の同位置に配置されていてもよい。この場合、移動体5の左右方向の双方の車輪6に給電を行うことができる。
【0052】
図4に示されるように、本実施形態では、給電レール2は、道路4の延在方向に所定の間隔Dで並んで設置されている。所定の間隔Dは、任意に定められてよい。
【0053】
このように、本実施形態に係る給電システム1によれば、移動体5に設置されている受電装置3と、道路4に設置され、受電装置3に電力を供給する給電レール2と、を含む。また、受電装置3は、給電レール2に接触可能に構成されている受電部31を備える。受電装置3には、受電部31が給電レール2に接触した状態において、受電部31を通じて給電レール2から電力が供給される。これにより、給電レール2に受電装置3の受電部31を接触させることにより、受電装置3は、給電レール2から、受電部31を通じて電力の供給を受けることができる。そのため、受電装置3は、移動体5が走行中であるか停車中であるかにかかわらず、受電部31を給電レール2に接触させることにより、給電を受けることができ、従って、搭乗者の乗り降りが不要になる。また、給電を行いながら移動体5を走行させることもできる。このようにして、移動体5に対する給電技術の有用性を向上させることができる。
【0054】
上記実施形態の受電装置3では、受電部31が装置本体10に直接接続されている場合の例について説明した。しかしながら、給電レール2から電力を受電する受電部31の構成はこれに限られない。以下に、図5を参照して、給電システム1の変形例について、説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る給電システムにおける車輪の一例としてのタイヤ・ホイール組立体の一変形例を、車輪の幅方向断面を用いて示す、概略図である。
【0055】
図5では、受電部31が、車輪6の側面に設けられた複数の導電性の繊維38により構成されている。より具体的には、図5に示す受電部31は、タイヤ61のサイドウォール部612に設けられた複数の導電性の繊維38により構成されている。図5において、導電性の繊維38は、車輪6のタイヤ61のサイドウォール部612から、給電レール2がある方向、すなわち、移動体5の幅方向外側に向かって突出している。図5に示される例では、導電性の繊維38は、サイドウォール部612において、車輪6の周方向全域に亘って、設けられている。導電性の繊維38は、例えば静電植毛によりサイドウォール部612に形成される。導電性の繊維38は、例えばタイヤ61又はホイール62の内部に設けられる送電機構を介して、装置本体10と電気的に接続される。なお、送電機構は、受電部31としての導電性の繊維38が給電レール2から受電した電力を、装置本体10に送電可能な構成であればよく、その構成は特に限定されない。
【0056】
図5に示す構成では、車輪6の側面を給電レール2に近接させることにより、受電部31としての導電性の繊維38と給電レール2の給電部21とを接触させることができる。なお、図5に示す例では、給電部21は、給電レール2の側面に設けられている。これにより、給電レール2から、受電部31としての複数の導電性の繊維38に電力が供給され、この電力が送電機構を介して装置本体10に送電される。このようにして、図5に示す車輪6を用いた給電システムにおいても、給電レール2から受電装置3への給電に際して、移動体5の搭乗者の乗り降りが不要になる。また、給電を行いながら移動体5を走行させることもできる。
【0057】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態又は各実施例に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態又は他の実施例に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【0058】
例えば、前述した実施形態において、受電装置3の制御部37の機能又は処理として説明された機能又は処理の全部又は一部が、例えばスマートフォン又はパーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータの機能又は処理として実現されてもよい。具体的には、前述の実施形態に係る受電装置3の制御部37の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを、コンピュータのメモリに記憶させ、コンピュータのプロセッサによって当該プログラムを読み出して実行させることができる。したがって、本実施形態に係る発明は、プロセッサが実行可能なプログラムとしても実現可能である。例えば、移動体5の制御装置(ECU:Electronic Control Unit)が、受電装置3の制御部37として機能する構成とされてもよい。
【0059】
また例えば、前述した実施形態において、タイヤ61は、空気を充填されるものとして説明したが、この限りではない。例えば、タイヤ61には、窒素等の気体を充填することができる。また、例えば、タイヤ61には、気体に代えて又は加えて、液体、ゲル状物質、又は粉粒体等を含む、任意の流体を充填することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:給電システム、 10:装置本体、 2:給電レール、 21:給電部、 3:受電装置、 31:受電部、 32:電力変換部、 33:蓄電部、 34:検出部、 35:通信部、 36:記憶部、 37:制御部、 38:導電性の繊維、 4:道路、 41:走行レーン、 5:移動体、 51:車載装置、 52:シャフト、 6:車輪、 61:タイヤ、 611:ビード部、 612:サイドウォール部、 613:トレッド部、 62:ホイール、 621:リム部、 622:ハブ部、 623:ディスク部
図1
図2
図3
図4
図5