IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人 東京大学の特許一覧

<>
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図1
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図2
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図3
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図4
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図5
  • 特許-伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】伸縮性導電インク及び伸縮性導電塗膜
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20231127BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20231127BHJP
   G01B 7/16 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
H01B1/24 Z
H01B5/14 Z
G01B7/16 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019163294
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2020043070
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】62/728,455
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102716
【弁理士】
【氏名又は名称】在原 元司
(74)【代理人】
【識別番号】100122275
【弁理士】
【氏名又は名称】竹居 信利
(72)【発明者】
【氏名】染谷 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】陳 ハンビッ
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0018055(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0377493(US,A1)
【文献】特開2008-198425(JP,A)
【文献】特開2010-248364(JP,A)
【文献】特開平10-261318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/24
H01B 5/14
G01B 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性樹脂と、炭素粉と、バインダと、溶媒と、を含み、前記導電性樹脂の含有率が0.1~1.0質量%であり、前記炭素粉の含有率が1.0~4.0質量%であり、前記バインダの含有率が10~20質量%であり、前記溶媒の含有率が70~90質量%であり、前記炭素粉の比表面積が500~2000m/gであり、前記バインダがポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、天然ゴムのいずれかである伸縮性導電インク。
【請求項2】
前記炭素粉の平均粒径が10~1000nmである請求項1に記載の伸縮性導電インク。
【請求項3】
前記導電性樹脂がPEDOT:PSSである、請求項1または請求項2に記載の伸縮性導電インク。
【請求項4】
前記バインダがポリウレタンである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の伸縮性導電インク。
【請求項5】
前記溶媒が水である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の伸縮性導電インク。
【請求項6】
導電性樹脂と、炭素粉と、バインダと、溶媒と、を含み、前記炭素粉の比表面積が500~2000m /gである伸縮性導電インクにより形成された伸縮性導電塗膜であって、前記導電性樹脂の含有率が0.6~6.0質量%であり、前記炭素粉の含有率が5~30質量%であり、前記バインダの含有率が60~95質量%であり、前記バインダがポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、天然ゴムのいずれかである伸縮性導電塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性導電インクに関する。
【背景技術】
【0002】
導電フィラーとエラストマーからなる導電コンポジット材料は、歪による抵抗変化を示し、抵抗式歪センサの材料として使われている。
【0003】
例えば、下記非特許文献1には、PEDOT:PSS/PU混合材料を使用した歪センサが開示されている。PEDOT:PSS/PU混合材料は、繊維状のPEDOT:PSSがポリウレタンの中に導電ネットワークを形成しており、歪センサ材料として使用する事が出来る。
【0004】
しかし、歪センサを伸長させる事により生じる歪により、PEDOT:PSS鎖が断絶し、部分的にネットワークの損失が生じるため抵抗が不可逆的に上昇し、抵抗変化のヒステリシスが大きくなるという問題があった。また、ヒステリシスが大きいままであると、歪がある時とない時との抵抗値の変化が小さいため、感度が低くなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Mohammad Ziabari Seyedin et al. Strain-Responsive Polyurethane/PEDOT:PSS Elastomeric Composite Fibers with High Electrical Conductivity. Adv. Funct. Mater. 24, 2957-2966, (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、抵抗変化のヒステリシスが小さく、高感度の歪センサの材料として使用可能な伸縮性導電インクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、伸縮性導電インクであって、導電性樹脂と、炭素粉と、バインダと、溶媒と、を含み、前記炭素粉の比表面積が500~2000m/gであることを特徴とする。
【0008】
上記炭素粉の平均粒径は、10~1000nmであるのが好適である。
【0009】
また、上記炭素粉の含有率が1.0~4.0質量%であるのが好適である。
【0010】
また、上記導電性樹脂は、PEDOT:PSSであるのが好適である。
【0011】
また、上記バインダは、ポリウレタンであるのが好適である。
【0012】
また、上記溶媒は水であるのが好適である。
【0013】
また、本発明の他の実施形態は、上記いずれかの伸縮性導電インクにより形成された伸縮性導電塗膜であって、前記炭素粉の含有率が5~30質量%であるのが好適である。
【0014】
また、上記伸縮性導電塗膜の導電性樹脂の含有率が0.6~6.0質量%であるのが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、抵抗変化のヒステリシスが小さく、高感度の歪センサの材料として使用可能な伸縮性導電インクを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例にかかる伸縮性導電インクパターンの形成方法の説明図である。
図2】実施例にかかる伸縮性導電インクパターンが形成されたポリウレタンフィルムに対して50%の大きさの歪を繰り返し印加したときの、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化の測定結果を示す図である。
図3】実施例にかかる伸縮性導電インクパターンが形成されたポリウレタンフィルムに対して印加する歪の大きさを変えたときの、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化の測定結果を示す図である。
図4】実施例にかかる伸縮性導電インクパターンが形成されたポリウレタンフィルムに対して印加する歪の大きさを変えたときの、歪対相対的抵抗変化率の関係を示す図である。
図5】実施例にかかるカーボンブラックの含有率を変化させた伸縮性導電インクパターンが作成されたポリウレタンフィルムに対して50%の大きさの歪を繰り返し印加したときの、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化の測定結果を示す図である。
図6】実施例にかかる伸縮性導電インクとカーボンブラックを含まない伸縮性導電インク(比較例)にて伸縮性導電インクパターンが作成されたポリウレタンフィルムの50%伸長時の伸縮性導電インクパターンのSEM画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を説明する。
【0018】
実施形態にかかる伸縮性導電インクは、導電性樹脂と、炭素粉と、バインダと、溶媒と、を含む。
【0019】
ここで、上記導電性樹脂としては、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸))、ポリピロール、ポリアニリン(PANI)等が挙げられ、炭素粉としては、カーボンブラック等が挙げられ、バインダとしては、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、天然ゴム等が挙げられ、溶媒としては、水等が挙げられる。これらを混合することにより実施形態にかかる伸縮性導電インク構成できる。
【0020】
また、上記伸縮性導電インクを、ポリウレタンフィルム等の適宜な基板上に塗布し、乾燥することにより、本実施形態にかかる伸縮性導電塗膜を得ることができる。この伸縮性導電塗膜は、歪センサ等に好適に使用することができる。ここで、上記伸縮性導電インクの基板上への塗布方法としては、ステンシル印刷等を使用できるが、これには限定されず、適宜な印刷方法を使用できる。また、塗布(印刷)後の乾燥方法としては、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥とすることもできる。
【0021】
上記炭素粉として、カーボンブラックのようなポーラスな炭素粉を添加すると、抵抗変化のヒステリシスを低減することができる。メカニズムの詳細は不明だが、炭素粉が導電性樹脂としてのPEDOT:PSS鎖を機械的に結ぶ役割と電気的に導電パスのブリッジになることによりヒステリシスが低減すると考えられる。このように、炭素粉を含むことにより、繰り返し歪みを印加したときの抵抗変化のヒステリシスを低減することができるので、精度の高い歪センサを実現することができる。
【0022】
上記ヒステリシスの低減効果を発現させるためには、炭素粉の比表面積が500~2000m/gであるのが好適であり、600~1500m/gであるのがさらに好適である。また、炭素粉の平均粒径は、10~1000nmであるのが好適であり、10~100nmであるのがさらに好適ある。
【0023】
また、伸縮性導電インク中の上記炭素粉の含有率は、1.0~4.0質量%であるのが好適であり、1.6~2.3質量%であるのがさらに好適である。
【0024】
尚、伸縮性導電インクから加熱等により溶剤除去(乾燥)した後の伸縮性導電塗膜における上記炭素粉の含有率は5~30質量%であるのが好適であり、10~15質量%であるのがさらに好適である。
【0025】
また、伸縮性導電インク中の上記導電性樹脂の含有率は0.1~1.0質量%であるのが好適であり、0.3~0.5質量%であるのがさらに好適である。
【0026】
尚、伸縮性導電インクから加熱等により溶剤除去(乾燥)した後の伸縮性導電塗膜における上記導電性樹脂の含有率は0.6~6.0質量%であるのが好適であり、1.8~3.2質量%であるのがさらに好適である。
【0027】
また、伸縮性導電インク中の上記バインダの含有率は10~20質量%であるのが好適であり、12~15質量%であるのがさらに好適ある。
【0028】
尚、伸縮性導電インクから加熱等により溶剤除去(乾燥)した後の伸縮性導電塗膜における上記バインダの含有率は60~95質量%であるのが好適であり、75~95質量%であるのがさらに好適である。
【0029】
また、伸縮性導電インク中の上記溶媒の含有率は70~90質量%であるのが好適であり、83~86%であるのがさらに好適である。
【実施例
【0030】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0031】
<伸縮性導電インクの製造>
PEDOT:PSSの1質量%水溶液(Clevis(登録商標)PH1000、Heraeus社製)と、水系のポリウレタンエマルジョン(PUE1000、村山化学研究所製、固形分濃度49質量%)と、カーボンブラック(Ketjen black、Lion japan社製、比表面積1270m/g、一次粒子径34nm)と、水とを、(PEDOT:PSS):(ポリウレタン(固形分)):(カーボンブラック):(水)=0.015:0.49:0.064:2.995の重量比で混合し、実施例の伸縮性導電インクを製造した。混合には、マグネチックスターラーを使用した。
【0032】
また、比較例として、カーボンブラックを添加しない伸縮性導電性インクも、同様にして製造した。
【0033】
<伸縮評価サンプルの作製>
図1(a)に示されるように、上記製造した実施例及び比較例の伸縮性導電インクを、基板としてのポリウレタンフィルム(株式会社エヌエスケーエコーマーク社製、厚さ20μm)上に125μm厚のポリイミドマスクとスキージーを用いてステンシル印刷し、幅5mm、厚さ15μmの長方形状の伸縮性導電インクパターンを形成した。なお、上記ポリウレタンフィルムは、離型フィルム上に配置されている。
【0034】
次に、図1(b)に示されるように、上記ポリウレタンフィルム上に形成した伸縮性導電インクパターンを、90℃で30分乾燥させて伸縮性導電塗膜とし、その後ポリウレタンフィルムとともに離型フィルムから剥離させて、実施例及び比較例にかかる評価用の試料とした。この場合、カーボンブラックの含有率が11質量%となっており、PEDOT:PSSの含有率が2.6質量%となっている。図1(c)には、以上のようにして作製した伸縮評価サンプルが示される。図1(c)において、黒く色のついている部分が伸縮評価サンプルである。
【0035】
<伸縮評価>
(1)上記実施例の伸縮性導電塗膜とした伸縮性導電インクパターン(図1(c)に示された長方形の形状の伸縮評価サンプル)が形成されたポリウレタンフィルムに対して50%の大きさの歪(歪みの大きさε=50%)を繰り返し印加したときの、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化を測定した。ポリウレタンフィルムに対する歪の印加は、株式会社島津製作所製精密万能試験機AG-Xplusを使用し、伸縮性導電インクパターン(長方形)の長手方向にポリウレタンフィルムを伸び縮みさせることにより行った。また、抵抗値の測定は、アジレント・テクノロジー株式会社34411A デジタル・マルチメータにより行った。抵抗値の測定は、引っ張り試験機(上記精密万能試験機AG-Xplus)のサンプル固定冶具の内側に電極を設置し、2端子抵抗測定法により行った。この場合、サンプルは幅5mm、長さ40mmとし、抵抗値を測定する際の電極間距離(歪印加前)30mmとした。
【0036】
上記抵抗値の経時変化の測定結果が図2に示される。図2では、縦軸が相対的抵抗変化率ΔR/Rであり、横軸が時間の経過(秒)である。なお、上記縦軸の相対的抵抗変化率において、Rが、歪がないときの伸縮性導電インクパターンの抵抗値であり、ΔRが歪を印加したときの抵抗値の変化の大きさ(Rとの差)である。
【0037】
次に、実施例及び比較例の伸縮性導電インクパターンが形成されたポリウレタンフィルムに、図2の場合と同様に、繰り返し歪みを、歪みの大きさεを10%、30%、50%としてそれぞれ10回ずつ連続的に印加し、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化を測定した。この場合、10%、30%、50%の大きさの歪みを、この順序で各10回ずつ合計30回印加し、これを1セットとし、3セット繰り返した。
【0038】
図3(a)には、比較例の結果が示され、図3(b)には、実施例の結果が示される。図3(a)及び図3(b)において、縦軸が相対的抵抗変化率ΔR/Rであり、横軸が時間の経過(秒)である。なお、図3(a)、図3(b)とも、ε=0.1が10%歪、ε=0.3が30%歪、ε=0.5が50%歪を印加した期間を示している。図3(a)、図3(b)では、0~50秒までε=0.1の歪を10回印加し、50~140秒までε=0.3の歪を10回印加し、140~250秒までε=0.5の歪を10回印加したときに、伸縮性導電インクパターンの抵抗値の経時変化を計測し、これを3セット繰り返している。
【0039】
また、図4(a)には、比較例の歪対相対的抵抗変化率の関係が示され、図4(b)には、実施例の歪対相対的抵抗変化率の関係が示される。図4(a)、図4(b)において、縦軸が相対的抵抗変化率ΔR/Rであり、横軸が、伸縮性導電インクパターンが形成されたポリウレタンフィルムに印加された歪の大きさである。
【0040】
図3(a)では、ポリウレタンフィルムを伸ばした後、伸ばすために印加した力を無くしても、伸縮性導電インクパターンの抵抗値が元に戻っておらず(ΔR/R=0に戻らない)、抵抗変化が残留している。すなわち、抵抗変化にヒステリシスが存在する。この傾向は、印加した歪の大きさεが大きいほど顕著である。このことは、図4(a)に示されるように、歪を除去した後(Release)も相対的抵抗変化率の値が元に戻らず、ほぼ一定値を維持していることからもわかる。これは、比較例のインクに炭素粉(カーボンブラック)を添加しなかったためである。
【0041】
一方、図3(b)では、伸ばすために印加した力を無くすと、抵抗変化の残留が少なくなる。すなわち、伸縮性導電インクパターンの抵抗値が元に戻り、相対的抵抗変化率ΔR/Rが0に戻っている。このことは、図4(b)に示されるように、歪を除去した後(Release)に相対的抵抗変化率の値が50%伸長した場合の値に対して小さくなっていることからもわかる。さらに、図3(b)において、第1セット~第3セットで印加した歪の大きさεの各値に対する相対的抵抗変化率ΔR/Rの値がほぼ同じであり、再現性が高いこともわかる。これらは、実施例の伸縮性導電インクにカーボンブラックを添加した効果である。
【0042】
(2)次に、伸縮性導電インクへのカーボンブラックの添加量(含有率)を変化させた場合の、抵抗変化のヒステリシスの評価を行った。なお、繰り返し歪みの印加方法は、上記(1)と同様である。
【0043】
カーボンブラックの添加量は、伸縮性導電インク中に0.22質量%、0.55質量%、1.80質量%及び2.23質量%とした。これらのうち、図5(a)には0.22質量%の場合が、図5(b)には1.80質量%の場合が、図5(c)には2.23質量%の場合がそれぞれ示される。
【0044】
抵抗変化のヒステリシスは、以下の回復率を定義して評価した。
回復率=(抵抗の最大変化値-抵抗の回復値)/抵抗の最大変化値
なお、図5(a)に示されるように、抵抗の最大変化値は、ポリウレタンフィルムを伸ばした際の伸縮性導電インクパターンの抵抗値の大きさの最大値であり、抵抗の回復値は、ポリウレタンフィルムを伸ばすために印加した力を無くした際の抵抗値の大きさである。
【0045】
カーボンブラックの添加量が0.22質量%の場合の回復率は37.7%であり(図5(a))、0.55質量%の場合の回復率は63.2%であり(図示せず)、1.80質量%の場合の回復率は80.2%であり(図5(b))、2.23質量%の場合の回復率は92.2%であった(図5(c))。カーボンブラックの添加量を多くした(1.80質量%及び2.23質量%)図5(b)、(c)の場合の回復率が70%以上となっており、良好であった。
【0046】
図6(a)、(b)には、さらに、実施例にかかる伸縮性導電インクとカーボンブラックを含まない伸縮性導電インク(比較例)にて伸縮性導電インクパターンが作成されたポリウレタンフィルムの50%伸長時の伸縮性導電インクパターンのSEM画像が示される。図6(a)が比較例の場合であり、図6(b)が実施例の場合である。
【0047】
図6(a)に示されるように、比較例にかかる伸縮性導電インクにおいては、伸長によりPEDOT:PSS鎖のネットワークが部分的に切れているのが見える。これに対し、図6(b)に示されるように、実施例にかかる伸縮性導電インクでは、カーボンブラックがPEDOT:PSS鎖と絡む構成をとることによりネットワーク鎖の断絶を抑制していることが確認された。
【0048】
以上より、SEM画像による観察においても、ヒステリシス低減のメカニズムが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6