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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】基板処理装置及び接合方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20231127BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20231127BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 P
G01B11/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019034842
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020141034
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】稲益 寿史
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207160(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/145622(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に離間して配置され、下基板を吸着保持するチャックおよび上基板を吸着保持する上チャックと、
前記チャックに吸着保持された前記下基板の、前記チャックに接する第1の面とは反対側の第2の面内の複数箇所の観察を行う観察部と、
前記複数箇所の観察結果を解析する解析部と、
を有し、
前記観察部は、前記第2の面の前記チャックの前記基板を吸着保持する面からの高さを測定する変位計を有し、前記第2の面の少なくとも周縁部を走査しながら、変位計により前記第2の面の前記下チャックの前記下基板を吸着保持する面からの高さの測定及び記録を行い、
前記解析部は、前記変位計により測定された高さに基づいて前記高さに関する特異点が前記第2の面に存在するか判定し、前記特異点が前記第2の面に存在する場合、前記チャック上での当該特異点の位置を特定し、
前記下チャックと前記上チャックとを相対的に移動させることにより、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と前記上チャックに吸着保持されている前記上基板との位置合わせを行い、
前記位置合わせの後に、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と、前記上チャックに吸着保持されている前記上基板とを押付け合せることにより、前記下基板と前記上基板とを接合する、基板処理装置。
【請求項2】
前記特異点は前記基板の膨らみである、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記観察部は、前記第2の面に設けられたパターンを撮像する撮像装置を有し、
前記解析部は、前記撮像装置によりピントが合う前記第2の面までの距離に基づいて前記特異点の有無を判定する、請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記観察部は、前記第2の面の全体を走査しながら、前記変位計により前記高さの測定及び記録を行う、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
鉛直方向に離間して配置される下チャックおよび上チャックのうち、前記下チャックの前記上チャックに対向する吸着面で下基板を吸着保持すると共に、前記上チャックの前記下チャックに対向する吸着面で上基板を吸着保持する工程と、
前記下チャックに吸着保持された前記下基板の、前記下チャックに接する第1の面とは反対側の第2の面内の複数箇所の観察を行う工程と、
前記複数箇所の観察結果を解析する工程と、
前記下チャックと前記上チャックとを相対的に移動させることにより、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と前記上チャックに吸着保持されている前記上基板との位置合わせを行う工程と、
前記位置合わせを行う工程の後に、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と、前記上チャックに吸着保持されている前記上基板とを押付け合せることにより、前記下基板と前記上基板とを接合する工程と、
を有し、
前記観察を行う工程は、前記第2の面の少なくとも周縁部を走査しながら、変位計により前記第2の面の前記下チャックの前記下基板を吸着保持する面からの高さの測定及び記録を行う工程を有し、
前記観察結果を解析する工程は、前記変位計により測定された高さに基づいて前記高さに関する特異点が前記第2の面に存在するか判定し、前記特異点が前記第2の面に存在する場合、前記下チャック上での当該特異点の位置を特定する工程を有する、接合方法。
【請求項6】
前記特異点の大きさに応じて、前記位置合わせを行う工程の前に、前記下チャックの清掃を行う工程を有する、請求項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記特異点の大きさ及び位置に応じて、前記位置合わせを行う工程の前に、前記下チャックの清掃を行う工程を有する、請求項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記観察を行う工程において、前記第2の面の全体を走査しながら、前記変位計により前記高さの測定及び記録を行う、請求項乃至のいずれか1項に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の接合装置は、上側の基板を上方から吸着する上チャックと、下側の基板を下方から吸着する下チャックとを備え、二枚の基板を向い合せたうえで接合する。具体的には、接合装置は、先ず、上チャックに吸着されている基板の中心部を押し下げ、下チャックに吸着されている基板の中心部と接触させる。これにより、二枚の基板の中心部同士が分子間力等によって接合される。次いで、接合装置は、2枚の基板の接合された接合領域を中心部から外周部に広げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-095579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、チャックに付着した異物を適切に検出することができる基板処理装置及び接合方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様による基板処理装置は、鉛直方向に離間して配置され、下基板を吸着保持するチャックおよび上基板を吸着保持する上チャックと、前記チャックに吸着保持された前記下基板の、前記チャックに接する第1の面とは反対側の第2の面内の複数箇所の観察を行う観察部と、前記複数箇所の観察結果を解析する解析部と、を有し、前記観察部は、前記第2の面の前記チャックの前記基板を吸着保持する面からの高さを測定する変位計を有し、前記第2の面の少なくとも周縁部を走査しながら、変位計により前記第2の面の前記下チャックの前記下基板を吸着保持する面からの高さの測定及び記録を行い、前記解析部は、前記変位計により測定された高さに基づいて前記高さに関する特異点が前記第2の面に存在するか判定し、前記特異点が前記第2の面に存在する場合、前記チャック上での当該特異点の位置を特定し、前記下チャックと前記上チャックとを相対的に移動させることにより、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と前記上チャックに吸着保持されている前記上基板との位置合わせを行い、前記位置合わせの後に、前記下チャックに吸着保持されている前記下基板と、前記上チャックに吸着保持されている前記上基板とを押付け合せることにより、前記下基板と前記上基板とを接合する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、チャックに付着した異物を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態にかかる接合システムを示す平面図である。
図2】一実施形態にかかる接合システムを示す側面図である。
図3】一実施形態にかかる第1基板および第2基板の接合前の状態を示す側面図である。
図4】一実施形態にかかる接合装置を示す平面図である。
図5】一実施形態にかかる接合装置を示す側面図である。
図6】一実施形態にかかる上チャックおよび下チャックを示す断面図であって、上ウェハと下ウェハの接合直前の状態を示す断面図である。
図7】一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとを中心部から外周部に向けて徐々に接合する動作を示す断面図である。
図8】一実施形態にかかる接合システムが実行する処理の一部を示すフローチャートである。
図9】一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの水平方向位置合わせの動作を示す説明図である。
図10】一実施形態にかかる異物検査の方法を示すフローチャートである。
図11】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例を示す模式図(その1)である。
図12】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例を示すフローチャートである。
図13】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例を示す模式図(その2)である。
図14】異物と下ウェハの膨らみとの関係を示す図である。
図15】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定方の法の第2の例を示すフローチャートである。
図16】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示す模式図(その1)である。
図17】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示す模式図(その2)である。
図18】下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略することがある。以下の説明において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向であり、X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。鉛直軸を回転中心とする回転方向をθ方向とも呼ぶ。本明細書において、下方とは鉛直下方を意味し、上方とは鉛直上方を意味する。
【0009】
<接合システム>
図1は、一実施形態にかかる接合システムを示す平面図である。図2は、一実施形態にかかる接合システムを示す側面図である。図3は、一実施形態にかかる第1基板および第2基板の接合前の状態を示す側面図である。図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板T(図7(b)参照)を形成する。
【0010】
第1基板W1は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、例えば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
【0011】
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。また、以下では、図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0012】
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0013】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットC1,C2,C3がそれぞれ載置される。例えば、カセットC1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットC2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットC3は重合ウェハTを収容するカセットである。
【0014】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットC1~C3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
【0015】
なお、載置板11に載置されるカセットC1~C3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットC1,C2,C3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
【0016】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0017】
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiOの結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
【0018】
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
【0019】
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
【0020】
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
【0021】
第3処理ブロックG3には、図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。
【0022】
また、図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
【0023】
また、図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。制御装置70は、例えばコンピュータで構成され、CPU(Central Processing Unit)71と、メモリなどの記憶媒体72と、入力インターフェース73と、出力インターフェース74とを有する。制御装置70は、記憶媒体72に記憶されたプログラムをCPU71に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置70は、入力インターフェース73で外部からの信号を受信し、出力インターフェース74で外部に信号を送信する。制御装置70は解析部の一例である。
【0024】
制御装置70のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
【0025】
<接合装置>
図4は、一実施形態にかかる接合装置を示す平面図である。図5は、一実施形態にかかる接合装置を示す側面図である。
【0026】
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。処理容器100は処理室の一例である。
【0027】
処理容器100の内部には、上ウェハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック140と、下ウェハW2を載置して下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック141とが設けられる。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成される。上チャック140と下チャック141とは、鉛直方向に離間して配置される。
【0028】
図5に示すように、上チャック140は、上チャック140の上方に設けられた上チャック保持部150に保持される。上チャック保持部150は、処理容器100の天井面に設けられる。上チャック140は、上チャック保持部150を介して処理容器100に固定される。
【0029】
上チャック保持部150には、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部151Aが設けられている。上部撮像部151Aには、例えばCCDカメラが用いられる。上チャック保持部150には、更に、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)の変位を測定する上部変位計151Bが設けられている。上部変位計151Bには、例えばLED変位計が用いられる。上部撮像部151Aは撮像装置の一例であり、上部変位計151Bは変位計の一例である。
【0030】
下チャック141は、下チャック141の下方に設けられた第1の下チャック移動部160に支持される。第1の下チャック移動部160は、後述するように下チャック141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部160は、下チャック141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
【0031】
第1の下チャック移動部160には、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部161Aが設けられている(図5参照)。下部撮像部161Aには、例えばCCDカメラが用いられる。第1の下チャック移動部160には、更に、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)の変位を測定する下部変位計161Bが設けられている。下部変位計161Bには、例えばLED変位計が用いられる。
【0032】
第1の下チャック移動部160は、第1の下チャック移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール162、162に取り付けられている。第1の下チャック移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
【0033】
一対のレール162、162は、第2の下チャック移動部163に配設されている。第2の下チャック移動部163は、当該第2の下チャック移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164、164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
【0034】
第1の下チャック移動部160および第2の下チャック移動部163等により、位置合わせ部166が構成される。位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との水平方向位置合わせを行う。また、位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行う。
【0035】
なお、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行うが、本開示はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にX軸方向、Y軸方向およびθ方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向およびY軸方向に移動させると共に、上チャック140をθ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行ってもよい。
【0036】
また、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行うが、本開示はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にZ軸方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、上チャック140をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行ってもよい。
【0037】
図6は、一実施形態にかかる上チャックおよび下チャックを示す断面図であって、上ウェハと下ウェハの接合直前の状態を示す断面図である。図7(a)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合途中の状態を示す断面図である。図7(b)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合完了時の状態を示す断面図である。図6図7(a)および図7(b)において、実線で示す矢印は真空ポンプによる空気の吸引方向を示す。
【0038】
上チャック140および下チャック141は、例えば真空チャックである。本実施形態では、上チャック140が特許請求の範囲に記載の第1保持部に対応し、下チャック141が特許請求の範囲に記載の第2保持部に対応する。上チャック140は、上ウェハW1を吸着する吸着面140aを、下チャック141に対向する面(下面)に有する。一方、下チャック141は、下ウェハW2を吸着する吸着面141aを、上チャック140に対向する面(上面)に有する。
【0039】
上チャック140は、チャックベース170を有する。チャックベース170は、上ウェハW1と同径もしくは上ウェハW1より大きい径を有する。チャックベース170は、支持部材180によって支持される。支持部材180は、平面視において少なくともチャックベース170を覆うように設けられ、チャックベース170に対して例えばネジ止めによって固定されている。支持部材180は、処理容器100の天井面に設けられた複数の支持柱181(図5参照)に支持される。支持部材180および複数の支持柱181で上チャック保持部150が構成される。
【0040】
支持部材180およびチャックベース170には、支持部材180およびチャックベース170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。かかる貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
【0041】
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
【0042】
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウェハW1の中心部と当接して当該上ウェハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
【0043】
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
【0044】
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による上ウェハW1の押圧荷重を制御する。
【0045】
ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1と、下チャック141に吸着保持されている下ウェハW2とを押付け合せる。具体的には、ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1を変形させることにより、下ウェハW2に押付け合せる。ストライカー190が、特許請求の範囲に記載の押圧部に相当する。
【0046】
チャックベース170の下面には、上ウェハW1の非接合面W1nに接触する複数のピン171が設けられている。チャックベース170、複数のピン171等で上チャック140が構成される。上チャック140の上ウェハW1を吸着保持する吸着面140aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着力の発生と吸着力の解除とがなされる。
【0047】
なお、下チャック141は、上チャック140と同様に構成されてよい。下チャック141は、下ウェハW2の非接合面W2nに接触する複数のピンを有する。下チャック141の下ウェハW2を吸着保持する吸着面141aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着力の発生と吸着力の解除とがなされる。
【0048】
<接合方法>
図8は、一実施形態にかかる接合システムが実行する処理の一部を示すフローチャートである。なお、図8に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0049】
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットC1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットC2、および空のカセットC3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットC1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0050】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
【0051】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される(ステップS102)。また、接合面W1jの親水化に用いる純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
【0052】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される(ステップS103)。このとき、上ウェハW1は、その表裏面を反転して搬送される。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
【0053】
その後、接合装置41内にて、搬送装置61の搬送アームが上チャック140の下方に移動する。そして、搬送アームから上チャック140に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、上チャック140に非接合面W1nが接する向きで、上チャック140に吸着保持される(ステップS104)。
【0054】
上ウェハW1に上述したステップS101~S104の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットC2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0055】
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS105)。なお、ステップS105における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
【0056】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化される(ステップS106)。また、接合面W2jの親水化に用いる純水によって、接合面W2jが洗浄される。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの親水化は、上記ステップS102における上ウェハW1の接合面W1jの親水化と同様である。
【0057】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される(ステップS107)。
【0058】
その後、接合装置41内にて、搬送装置61の搬送アームが下チャック141の上方に移動する。そして、搬送アームから下チャック141に下ウェハW2が受け渡される。下ウェハW2は、下チャック141に非接合面W2nが接する向きで、下チャック141に吸着保持される(ステップS108)。
【0059】
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS109)。この位置合わせには、上ウェハW1の接合面W1jに予め形成されたアライメントマークW1a、W1b、W1c(図9参照)や下ウェハW2の接合面W2jに予め形成されたアライメントマークW2a、W2b、W2c(図9参照)が用いられる。
【0060】
上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせの動作について図9を参照して説明する。図9(a)は、一実施形態にかかる上部撮像部と下部撮像部との位置合わせ動作を説明する図である。図9(b)は、一実施形態にかかる上部撮像部による下ウェハの撮像動作および下部撮像部による上ウェハの撮像動作を説明する図である。図9(c)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの位置合わせ動作を説明する図である。
【0061】
まず、図9(a)に示すように、上部撮像部151Aおよび下部撮像部161Aの水平方向位置の調節を行う。具体的には、下部撮像部161Aが上部撮像部151Aの略下方に位置するように、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させる。そして、上部撮像部151Aと下部撮像部161Aとで共通のターゲット149を確認し、上部撮像部151Aと下部撮像部161Aの水平方向位置が一致するように、下部撮像部161Aの水平方向位置が微調節される。
【0062】
次に、図9(b)に示すように、位置合わせ部166によって下チャック141を鉛直上方に移動させる。その後、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させながら、上部撮像部151Aを用いて下ウェハW2の接合面W2jのアライメントマークW2c、W2b、W2aを順次撮像する。同時に、下チャック141を水平方向に移動させながら、下部撮像部161Aを用いて上ウェハW1の接合面W1jのアライメントマークW1a、W1b、W1cを順次撮像する。なお、図9(b)は上部撮像部151Aによって下ウェハW2のアライメントマークW2cを撮像するとともに、下部撮像部161Aによって上ウェハW1のアライメントマークW1aを撮像する様子を示している。
【0063】
撮像された画像データは、制御装置70に出力される。制御装置70は、上部撮像部151Aで撮像された画像データと下部撮像部161Aで撮像された画像データとに基づいて、位置合わせ部166によって下チャック141の水平方向位置を調節させる。この水平方向位置合わせは、鉛直方向視で上ウェハW1のアライメントマークW1a、W1b、W1cと下ウェハW2のアライメントマークW2a、W2b、W2cとが重なるように行われる。こうして、上チャック140と下チャック141の水平方向位置が調節され、上ウェハW1と下ウェハW2の水平方向位置(例えばX軸方向位置、Y軸方向位置およびθ方向位置を含む。)が調節される。
【0064】
次に、図9(c)に実線で示すように上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS110)。具体的には、位置合わせ部166が下チャック141を鉛直上方に移動させることによって、下ウェハW2を上ウェハW1に接近させる。これにより、図6に示すように、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔WS1は所定の距離、たとえば50μm~200μmに調整される。例えば、間隔WS1は上部変位計151B及び下部変位計161Bにより測定してもよい。
【0065】
次に、上チャック140による上ウェハW1の中央部の吸着保持を解除した後(ステップS111)、図7(a)に示すように、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押し下げる(ステップS112)。上ウェハW1の中心部が下ウェハW2の中心部に接触し、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とが所定の力で押圧されると、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する。その後、上ウェハW1と下ウェハW2とを中心部から外周部に向けて徐々に接合するボンディングウェーブが発生する。
【0066】
ここで、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S105において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S106において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
【0067】
その後、押圧ピン191によって上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を押圧した状態で、上チャック140による上ウェハW1の全体の吸着保持を解除する(ステップS113)。これにより、図7(b)に示すように、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される。その後、押圧ピン191を上チャック140まで上昇させ、下チャック141による下ウェハW2の吸着保持を解除する。
【0068】
その後、重合ウェハTは、搬送装置61によって第3処理ブロックG3のトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットC3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
【0069】
<下チャックの異物検査>
図8に示すステップS101~S113に示す一連の接合処理は繰り返し行われ、重合ウェハTが繰り返し製造される。その間、図6に示すように上ウェハW1と下ウェハW2とが近接し接合する過程において、非接合面W2nに異物が付着した状態で下ウェハW2が下チャック141に吸着保持されることがある。このような異物が存在すると、下ウェハW2が歪んで下ウェハW2に膨らみが生じるため、下ウェハW2と上ウェハW1との間にボイドが生じることがある。更に、この異物が下チャック141上に残存すると、異物が除去されない限り、ボイドが発生し続け得る。
【0070】
そこで、本実施形態では、適宜、下チャック141による下ウェハW2の吸着保持(ステップS108)の後で、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調節(ステップS109)の前に、異物検査を行う。図10は、一実施形態にかかる異物検査の方法を示すフローチャートである。なお、図10に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0071】
まず、下チャック141により下ウェハW2が吸着保持されると、下ウェハW2の上面(接合面W2j)の観察を行う(ステップS11)。
【0072】
そして、下ウェハW2の接合面W2jに、予め設定された条件を満たす膨らみがなければ(ステップS12)、接合処理を行う(ステップS13)。すなわち、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向の位置調節(ステップS109)を行い、続けて、ステップS110~S113の処理を行う。ステップS11の観察及びステップS12の膨らみの有無の判定の方法の詳細については後述する。予め設定された条件は下チャック141の上面からの高さに関連し、膨らみは主として異物によって生じ、膨らみは特異点の一例である。
【0073】
一方、下ウェハW2の接合面W2jに、予め設定された条件を満たす膨らみがあると(ステップS12)、下ウェハW2を接合装置41の外に排出する(ステップS14)。
【0074】
そして、2枚の下ウェハW2で連続して、同じ箇所に膨らみが検出されている場合には(ステップS15)、異物が存在し、このまま処理を継続すると、次の重合ウェハTにボイドが発生する可能性が高いとして、接合処理を停止する。この場合、例えば、ランプ若しくは音又はこれらの両方を用いて、接合処理を停止したことを操作者に報知する。また、接合システム1の管理を行っているホストコンピュータがある場合には、当該ホストコンピュータに通知してもよい。
【0075】
一方、2枚の下ウェハW2で連続して、同じ箇所に膨らみが検出されているのではない場合には(ステップS16)、別の下ウェハW2の搬送(ステップS107)及び吸着保持(ステップS108)を行う(ステップS17)。これは、1枚の下ウェハW2においてのみ膨らみが検出されている場合、当該膨らみを生じさせている異物は、ステップS14で排出された下ウェハW2と共に接合装置41から除かれて、下チャック141上に残存していない可能性があるためである。別の下ウェハW2の搬送及び吸着保持の後、当該下ウェハW2の接合面W2jの観察を行う(ステップS11)。
【0076】
このような実施形態によれば、適宜、下チャック141の上面の異物検査を行うことができる。従って、下ウェハW2の非接合面W2nに付着して接合装置41内に異物が持ち込まれ、この異物が下チャック141の上面に残存したとしても、異物を適切に検出することができる。
【0077】
また、本実施形態では、下チャック141に吸着保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)の観察を行い、膨らみの有無を判定する。例えば、異物がZ軸方向に延びる細い針状の形状を有している場合、下ウェハW2を載置せずに直上から直接観察したときには、この異物は検出しにくいことがある。これに対し、下ウェハW2が載置されていれば、下ウェハW2は異物の影響で広範囲にわたって歪み、下ウェハW2に膨れが生じることとなる。このため、下ウェハW2の上面の広範囲にわたって異物の存在を示す特徴が現れ、異物が存在することを検出しやすい。
【0078】
<下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例>
次に、ステップS11の下ウェハの上面の観察及びステップS12の膨らみの有無の判定の方法の第1の例について説明する。図11は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例を示す模式図である。図12は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第1の例を示すフローチャートである。なお、図12に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0079】
第1の例では、上部撮像部151Aを用いて下ウェハW2の上面の観察を行う。より具体的には、下ウェハW2の上面の複数箇所に予め観察用パターンを形成しておき、各観察用パターンについて上部撮像部151Aによるピント合わせを行い、ピント位置に応じてZ軸方向における各観察用パターンまでの距離を特定する。例えば、図11に示すように、下ウェハW2の上面上の、Y軸方向に等間隔で配置されたX軸方向に延びる複数の直線202と、X軸方向に等間隔で配置されたY軸方向に延びる複数の直線203との交点を測定箇所とし、ここに観察用パターンを設けておく。直線202及び直線203の間隔は、例えば10mm~30mm程度とする。観察用パターンは、下ウェハW2の縁に存在する半導体チップ等が形成されない領域201には、設けなくてもよい。
【0080】
第1の例では、まず、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させ、上部撮像部151Aを測定箇所の一つの上方に位置させる(ステップS21)。
【0081】
次いで、上部撮像部151Aによるピント合わせを行い、当該測定箇所における観察用パターンのピント位置を測定する(ステップS22)。その後、ピント位置を記録する(ステップS23)。
【0082】
これらのステップS21~S23の一連の処理を、すべての測定箇所についてのピント位置の測定及び記録が完了するまで繰り返す(ステップS24)。
【0083】
そして、すべての測定箇所についてのピント位置の測定及び記録が完了すると(ステップS24)、ピント位置の解析を行い、膨らみがあるか判定する。すなわち、ピント位置のZ軸方向の座標Z1が隣の測定箇所でのピント位置のZ軸方向の座標Z2よりも大きく、かつ、その差が予め定められている閾値Zth、例えば10μm超になっている測定箇所があるか判定する(ステップS25)。
【0084】
座標Z1が座標Z2よりも大きく、かつ、その差が閾値Zth超になっている測定箇所がなければ、当該下ウェハW2の上面には、全体にわたって膨らみがないとして、処理を終了する。この場合、ステップS13に移行する(図10参照)。
【0085】
一方、座標Z1が座標Z2よりも大きく、かつ、その差が閾値Zth超になっている測定箇所があれば、当該測定箇所に膨らみがあるとして、当該測定箇所のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を特定して記録し、処理を終了する(ステップS26)。この場合、ステップS14に移行する(図10参照)。例えば、図13に示すように、測定箇所204における座標Z1が、隣の測定箇所における座標Z2よりも大きく、その差が閾値Zth超になっていれば、測定箇所204のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を特定して記録する。測定箇所204はX軸方向で2つ、Y軸方向で2つの測定箇所と隣り合っているところ、このうちの少なくとも1つの測定箇所との間で上記の関係が成り立てば、測定箇所204のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を特定して記録する。ステップS15では、ステップS26で記録したX軸方向の座標及びY軸方向の座標に基づき、同じ測定箇所に膨らみが2枚連続で存在するかの判定を行う。
【0086】
第1の例では、このような一連の処理を行う。第1の例によれば、膨らみの高さを高精度で特定することができる。
【0087】
なお、ステップS25における膨らみの有無の判定基準は上記のものに限定されない。例えば、全測定領域内で最小のZ軸方向の座標Zminからの差が、予め定められている閾値Zth、例えば10μm超になっている測定箇所があるかの判定を行ってもよい。
【0088】
なお、図14に示すように、上部撮像部151Aが下チャック141上の異物210の直上に位置していない場合であっても、異物210によって下ウェハW2が膨らんだ範囲211の上方に位置していれば、膨らみを検出することができる。従って、下ウェハW2と上ウェハW1との間のボイドを引き起こす異物の大きさに応じて測定箇所の間隔を設定することが好ましい。
【0089】
<下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第2の例>
次に、ステップS11の下ウェハの上面の観察及びステップS12の膨らみの有無の判定の方法の第2の例について説明する。図15は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第2の例を示すフローチャートである。なお、図15に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0090】
第2の例では、上部撮像部151Aを用いて下ウェハW2の上面の観察を行う。より具体的には、下ウェハW2の上面の複数箇所に予め観察用パターンを形成しておき、異物検査の際の上部撮像部151Aと下ウェハW2との間の距離等に基づいてピントを固定し、各観察用パターンについて適切なコントラストが得られるか判定する。例えば、第1の例と同様に、直線202と直線203との交点を測定箇所とし、ここに観察用パターンを形成しておく。
【0091】
第2の例では、まず、上部撮像部151Aと下ウェハW2との間の距離等に基づいてピントを設定し、固定する(ステップS31)。ステップS31で設定するピントは、下チャック141上に異物が存在しない状態で吸着保持された下ウェハW2の上面を観察したときに観察用パターンに合うピントである。従って、下チャック141の上面の全体にわたって異物が存在しなければ、各測定箇所において高コントラストで観察用パターンを観察することができる。
【0092】
次いで、位置合わせ部166によって下チャック141を水平方向に移動させ、上部撮像部151Aを測定箇所の一つの上方に位置させる(ステップS32)。
【0093】
その後、ピントを固定したまま上部撮像部151Aにより観察用パターンを観察し、コントラストの高さを測定する(ステップS33)。
【0094】
続いて、ステップS33で測定したコントラストの高さを解析し、コントラストの高さが閾値以上になっているか判定する(ステップS34)。ステップS33で測定したコントラストの高さが閾値以上になっていれば、当該測定箇所には膨らみがないとして、ステップS36に移行する。ここで用いるコントラストの高さの閾値としては、例えば高さが10μmの異物に伴う膨らみが生じている場合に得られるコントラストの高さである。
【0095】
一方、ステップS33で測定したコントラストが閾値以上になっていなければ、当該測定箇所に膨らみが存在してピンぼけが生じているとして、当該測定箇所のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を特定して記録し(ステップS35)、ステップS36に移行する。
【0096】
これらのステップS31~S35の一連の処理を、すべての測定箇所についてのコントラストの測定、及びコントラストが閾値未満の測定箇所の座標の記録が完了するまで繰り返し、処理を終了する(ステップS36)。
【0097】
そして、すべての測定箇所においてコントラストが閾値以上であれば、当該下ウェハW2の上面には、全体にわたって膨らみがないとして、ステップS13に移行する(図10参照)。一方、いずれかの測定箇所においてコントラストが閾値未満であれば、当該下ウェハW2の上面に膨らみが存在するとして、ステップS14に移行する(図10参照)。
【0098】
第2の例では、このような一連の処理を行う。第2の例によれば、各測定箇所におけるピント合わせが不要であるため、一連の処理に要する時間を短縮することができる。
【0099】
<下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例>
次に、ステップS11の下ウェハの上面の観察及びステップS12の膨らみの有無の判定の方法の第3の例について説明する。図16は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示す模式図(その1)である。図17は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示す模式図(その2)である。図18は、下ウェハの上面の観察及び膨らみの有無の判定の方法の第3の例を示すフローチャートである。なお、図18に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0100】
第3の例では、上部変位計151Bを用いて下ウェハW2の上面の観察を行う。より具体的には、図16に示すように、下ウェハW2の上面の全体を走査しながら、又は、図17に示すように、下ウェハW2の上面の周縁部を走査しながら、上部変位計151Bにて下ウェハW2の上面のZ軸方向の変位(座標)を測定する。
【0101】
第3の例では、まず、位置合わせ部166による下チャック141の水平方向の移動による走査を開始する(ステップS41)。そして、走査を継続しながら、上部変位計151Bにて下ウェハW2の上面のZ軸方向の変位(座標)を測定し、記録する(ステップS42)。走査対象は、例えば、図16に示すような下ウェハW2の上面の全体でもよく、図17に示すような下ウェハW2の上面の周縁部でもよい。
【0102】
これらのステップS41~S42の一連の処理を、走査対象の全体についてのZ軸方向の変位の測定及び記録が完了するまで繰り返す(ステップS43)。
【0103】
そして、すべての測定箇所についてのZ軸方向の変位の測定及び記録が完了すると(ステップS43)、Z軸方向の変位の解析を行い、膨らみがあるか判定する。すなわち、走査対象の領域内で最小のZ軸方向の座標Zminからの差が、予め定められている閾値Zth、例えば10μm超になっている点があるか判定する(ステップS44)。
【0104】
座標Zminからの差が閾値Zth超になっている測定箇所がなければ、当該下ウェハW2の上面には、全体にわたって膨らみがないとして、処理を終了する。この場合、ステップS13に移行する(図10参照)。
【0105】
一方、座標Zminからの差が閾値Zth超になっている点があれば、当該点に膨らみがあるとして、当該点のX軸方向の座標及びY軸方向の座標を特定して記録し、処理を終了する(ステップS45)。この場合、ステップS14に移行する(図10参照)。ステップS15では、ステップS45で記録したX軸方向の座標及びY軸方向の座標に基づき、同じ点に膨らみが2枚連続で存在するかの判定を行う。
【0106】
第3の例では、このような一連の処理を行う。第3の例によれば、観察前及び観察中のいずれにおいてもピント合わせが不要であるため、一連の処理に要する時間を更に短縮することができる。また、下ウェハW2にピント合わせ用のパターンが不要である。
【0107】
なお、図16に示すように、上面の全体の走査を行うことで、高精度の異物検査を行うことができる。また、接合処理を行う直近の処理が化学機械的研磨(CMP)のように、異物が付着しやすい箇所がウェハの周縁部に集中しやすい処理である場合には、図17に示すように、周縁部の走査を行うことで足りることがある。そして、周縁部のみの走査とすることで、一連の処理に要する時間をより一層短縮することができる。例えば、周縁部の走査対象は縁から30mmの領域とする。
【0108】
なお、ステップS44における膨らみの有無の判定基準は上記のものに限定されない。例えば、Z軸方向の座標が極大となる点が存在する場合に、その点に隣接するZ軸方向の座標が極小となる点との間のZ軸方向の座標の差が閾値Zth以上になっているかの判定を行ってもよい。更に、このような点について、Z軸方向の座標が極大となる点とZ軸方向の座標が極小となる点の間で、Z軸方向の座標の変化の勾配が、予め定められている閾値Sth以上になっているかの判定を行ってもよい。
【0109】
第1の例、第2の例、第3の例において、上部撮像部151Aを用いた異物検査と上部変位計151Bを用いた異物検査とを組み合わせて実行してもよい。
【0110】
異物検査の頻度は特に限定されない。例えば、下ウェハW2の搬入の度に行ってもよく、一定数の重合ウェハTの処理の度に行ってもよく、ロット毎に最初の下ウェハW2の搬入の前に行ってもよい。また、一定数の重合ウェハTの処理の度に行いつつ、ロット毎に最初の下ウェハW2の搬入の前に行うようにしてもよい。更に、任意のタイミングで異物検査を行ってもよい。
【0111】
図10に示すフローチャートでは、2枚の下ウェハW2で連続して、同じ箇所に異物が検出されている場合に、処理を停止することとしているが、3枚以上の下ウェハW2で連続して、同じ箇所に異物が検出されている場合に、処理を停止することとしてもよい。また、1枚の下ウェハW2で異物が検出された場合に、処理を停止するようにしてもよい。
【0112】
ステップS14にて下ウェハW2を排出する際に、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1を下ウェハW2とセットで排出してもよい。この場合、ステップS17にて、別の上ウェハW1の搬送(ステップS103)及び吸着保持(ステップS104)も行うことができる。
【0113】
接合装置41内に下チャック141のクリーニングパッド等の自動清掃装置を内蔵させておき、ステップS16の処理停止に代えて、自動清掃装置を稼働させて下チャック141の上面上の異物を除去するようにしてもよい。自動洗浄装置を用いた異物の除去を行う場合、ステップS17における別の下ウェハW2として、ステップS14で排出した下ウェハW2を用いてもよい。
【0114】
ある異物検査で処理停止の判断がなされた場合、その直近の異物検査から当該異物検査までの間に作製した重合ウェハTについては、異物の付着のおそれがあるとしてソフトマーキングして、重合ウェハTの特性管理を行うホストコンピュータに情報を蓄積してもよい。
【0115】
処理を継続するか停止するかを判定する際に、下ウェハW2の膨らみの大きさだけでなく、膨らみが生じている場所を加味してもよい。例えば、下ウェハW2から複数の半導体チップが切り出される場合、膨らみが下ウェハW2の中央で生じていると、XY平面内でボイドの影響は膨らみを中心とした全方向で多数の半導体チップに及び得る。一方、膨らみが下ウェハW2の縁の近傍で生じているときには、ボイドが発生しても、縁の側ではボイドの影響を受ける半導体チップは比較的少ない。このように、膨らみの位置に応じて歩留まりが相違する。そして、1枚の重合ウェハTから得られる良品の半導体チップが多少減ったとしても、接合システム1に収容されている残りのウェハの接合処理を完了させた後に、下チャック141のクリーニングを行った方が、時間の関係上好ましい場合もある。従って、例えば、膨らみの大きさ及び膨らみの位置の各々に重み付けを行い、これらを総合的に考慮して処理を継続するか停止するかを判定してもよい。この場合、接合システム1に収容されている残りのウェハの枚数を更に加味してもよい。
【0116】
異物検査の際に下チャック141に吸着保持させる下ウェハW2として、実製品の製造には用いないダミーウェハを用いてもよい。
【0117】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0118】
1 接合システム
41 接合装置
70 制御装置
140 上チャック
141 下チャック
151A 上部撮像部
151B 上部変位計
図1
図2
図3
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