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特許7390822ティーチング装置、基板搬送装置、基板処理装置、ティーチング方法、及び電子デバイスの製造方法
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  • 特許-ティーチング装置、基板搬送装置、基板処理装置、ティーチング方法、及び電子デバイスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】ティーチング装置、基板搬送装置、基板処理装置、ティーチング方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20231127BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
B25J13/08 A
H01L21/68 F
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019147810
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021028098
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】三村 敏彦
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-210692(JP,A)
【文献】特開2013-239342(JP,A)
【文献】特開2019-083311(JP,A)
【文献】特開2014-128855(JP,A)
【文献】特開2004-050306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクに形成された所定のパターンのマスク開口部を介して成膜材料が堆積され得る基板を支持して搬送するロボットによる、前記成膜材料を前記基板に堆積させるための成膜装置が設けられた基板処理室に設けられた基板載置部に対する基板の搬送動作において、前記ロボットの前記基板を支持する支持部の辿るべき経路を、前記ロボットを制御する制御部にティーチングするティーチング装置であって、
前記基板の代わりに前記支持部に支持させるティーチング用治具と、
前記治具を前記支持部に対して位置決めする位置決め手段と、
前記支持部の位置を示すためのマークと、
前記マークを撮像する、前記基板処理室に設けられた撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記支持部の位置に基づいて、前記制御部に記憶させるべき前記経路を取得する取得部と、
を備え
前記撮像手段は、前記マスクと前記基板の位置調整を行うために、前記マスクに設けられたアライメントマークと前記基板に設けられたアライメントマークとを撮像するものであることを特徴とするティーチング装置。
【請求項2】
前記マークは、前記治具に設けられていることを特徴する請求項1に記載のティーチング装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、前記治具と前記支持部のいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられ前記凸部が嵌合する凹部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載のティーチング装置。
【請求項4】
前記治具は、前記基板と略同じ重量及び重心位置を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のティーチング装置。
【請求項5】
前記制御部が、前記位置決め手段により前記治具が前記支持部に位置決め支持された状態で、前記支持部が仮の経路を辿って移動するように、前記ロボットを制御したときに、
前記撮像手段は、前記支持部が前記仮の経路上の所定の位置にあるときの前記マークを
撮像し、
前記取得部は、前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記マークの位置と前記所定の位置における基準位置とのずれに基づいて、前記制御部に記憶させるべき前記経路を取得することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載のティーチング装置。
【請求項6】
前記所定の位置は、前記基板載置部との間で基板の受け渡しを行う受け渡し位置であることを特徴とする請求項に記載のティーチング装置。
【請求項7】
基板を支持して搬送するロボットと、
前記ロボットを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、請求項1~のいずれか1項に記載のティーチング装置により記憶させられた前記経路に基づいて前記ロボットを制御することを特徴とする基板搬送装置。
【請求項8】
基板載置部を有する基板処理室と、
請求項に記載の基板搬送装置と、
を備え、
前記基板搬送装置により搬送され前記基板載置部に載置された基板に対して処理を行うことを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
前記処理は、蒸着又はスパッタリングによる成膜処理であることを特徴とする請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
マスクに形成された所定のパターンのマスク開口部を介して成膜材料が堆積され得る基板を支持して搬送するロボットによる、前記成膜材料を前記基板に堆積させるための成膜装置が設けられた基板処理室に設けられた基板載置部に対する基板の搬送動作において、前記ロボットの前記基板を支持する支持部の辿るべき経路を、前記ロボットを制御する制御部にティーチングするティーチング方法であって、
前記基板の代わりにティーチング用治具を前記支持部に支持させ、かつ前記治具を前記支持部に対して位置決めした状態で、前記支持部が仮の経路を辿って移動するように前記制御部が前記ロボットを制御する治具搬送工程と、
前記基板処理室に設けられた撮像手段を用いて、前記支持部の位置を示すマークを撮像する撮像工程と、
前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記支持部の位置に基づいて、前記制御部に記憶させるべき前記経路を取得する取得工程と、
前記制御部に、取得した前記経路を記憶させるティーチング工程と、
を含み、
前記撮像手段は、前記マスクと前記基板の位置調整を行うために、前記マスクに設けられたアライメントマークと前記基板に設けられたアライメントマークとを撮像するものであることを特徴とするティーチング方法。
【請求項11】
前記マークは、前記治具に設けられていることを特徴する請求項10に記載のティーチング方法。
【請求項12】
前記治具を前記支持部に対して位置決めする位置決め手段は、前記治具と前記支持部のいずれか一方に設けられた凸部と、他方に設けられ前記凸部が嵌合する凹部と、を有することを特徴とする請求項10または11に記載のティーチング方法。
【請求項13】
前記治具は、前記基板と略同じ重量及び重心位置を有することを特徴とする請求項1012のいずれか1項に記載のティーチング方法。
【請求項14】
前記取得工程において、前記支持部が前記仮の経路上の所定の位置にあるときに、前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記マークの位置と前記所定の位置における基準位置とのずれに基づいて、前記制御部に記憶させるべき前記経路を取得することを特徴とする請求項1013のいずれか1項に記載のティーチング方法。
【請求項15】
前記所定の位置は、前記基板載置部との間で基板の受け渡しを行う受け渡し位置であることを特徴とする請求項14に記載のティーチング方法。
【請求項16】
少なくとも、前記治具搬送工程及び前記撮像工程は、前記基板処理室内が大気圧環境にある状態において行われることを特徴とする請求項1015のいずれか1項に記載のティーチング方法。
【請求項17】
基板処理室の基板載置部に載置された基板に対して成膜処理を施す成膜方法であって、
請求項1016のいずれか1項に記載のティーチング方法により、前記制御部に前記経路を記憶させるティーチング工程と、
前記経路に基づいて前記制御部が前記ロボットを制御して、前記基板を前記基板載置部に搬送、載置する搬送工程と、
前記基板載置部に載置された前記基板に対して蒸着又はスパッタリングにより成膜処理を施す成膜工程と、
を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項18】
基板上に形成された有機膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項17に記載の成膜方法により前記有機膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
基板上に形成された金属膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
請求項17に記載の成膜方法により前記金属膜が形成されることを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
前記電子デバイスが、有機EL表示装置の表示パネルであることを特徴とする請求項18または19に記載の電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置及び同装置に基板を搬入出する搬送用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、搬送手段にて搬入された基板の被成膜面に、マスクに形成された所定のパターンのマスク開口部を介して成膜材料を堆積させ、薄膜を形成させるものであり、かかる処理を行う装置内部は真空環境となっている。成膜処理を位置精度よく行うために、装置に付属する撮像手段で基板位置を認識、補正(アライメント)を行っている。アライメントをスムーズに行うためには、撮像手段の画角内に入る所定の位置に、正確に、あるいはある程度の誤差範囲内で基板を搬送する必要がある。しかし、装置を構成する部品の寸法誤差、装置の組立誤差等による様々な原因により、搬送用ロボットを設計値の位置へと移動させても、撮像手段の画角内に入る所定の位置に基板を搬送することができない場合がある。その場合、基板が検出されないことによる装置のエラー停止が発生し、歩留りの低下や人的確認作業が発生してしまう。よって、装置の稼働に先立ち、搬送用ロボットのティーチング作業が必要となる。
【0003】
特許文献1では、大気圧環境下で取得したティーチングデータを補正して、真空中のチャンバにおけるティーチングデータを算出している。その際、動作ポイントの位置を目視で確認しながら、大気中におけるティーチングデータを作成している。
【0004】
一般的な目視確認によるティーチングは、実際の基板を搬送手段に載置し、基板と装置内の所定部の相対位置を作業者が目視確認し、一定の公差範囲内になるように搬送手段の位置を調整している。ここで使用される基板は、基板処理装置の立上に際して基板を製造するユーザーから提供されるものである。特に、新製品用の基板では、基板の不具合修正等に伴い、そのパターンは度々変更され、基板が変更となるたびに再度ティーチングが必要となる場合があった。さらには、ユーザーからの基板供給が計画日程に間に合わず、基板処理装置の立上日程に影響することが度々あった。
【0005】
また、上記方法にて精度良くティーチングするためには、目視確認および調整作業を繰り返し行う必要があり、多大な時間を要する。また、装置内は、効率良く真空環境にするために必要最小限のスペースしか確保されていない。よって、作業者による視認性、作業性が著しく悪く、これがさらなる時間を要する一因となっている。また、基板は基本的に極めて薄い構造であり、搬送手段には基板を水平方向に位置規制する基準もしくはガイドのようなものを設けることができない。つまり、ティーチング時に載置される基板は位置再現性がなく、精度良いティーチングを困難とさせている。
【0006】
特許文献2では、位置検出手段としてのカメラを設けたティーチング用治具を搬送用ロボットに載置し、装置内の載置部に予め設けられた位置決めマークを検出することでティーチングしている。つまり、ティーチング専用の位置検出手段を用意する必要があり、コストアップにつながってしまう。また、搬送用ロボットの座標系と位置検出手段の座標系は一致していないため、ティーチングで使用する前に、両座標系の関係を校正するRV(Robot-Vision)校正が必要となる。精度良くティーチングするためには、高い精度でRV校正を行う必要があるが、治具のコストアップや校正に多くの時間を要することになってしまう。また、装置内の載置部に位置決めマークを直接設けることは、高クリーン環境が求められる基板処理装置においてはコンタミ等の影響が懸念される。すなわち、高温かつ真空で、蒸着材料の付着もある真空チャンバの環境下において、位置決めマ
ークとして、視認性、センシング性を得るための顔料や樹脂を用いることは、それらの材料からのデガス等の懸念があり、そのような材料を安易にチャンバ内に持ち込むことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-239342号公報
【文献】特開2004-050306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、基板を用いたティーチング方法では、基板変更の度にティーチングを実施したり、基板提供が間に合わないことによる装置立上日程の遅延リスクが大きい。また、ティーチング精度向上、作業時間短縮が困難である。
特許文献2の方法では、ティーチング専用の位置検出手段が必要であり、簡易化によるコストダウンが困難である。さらには、事前のRV校正作業が必要であり、作業時間短縮が困難である。また、基板処理装置の内部機構に位置決めマークを直接設けることはコンタミ等の影響が懸念される。
【0009】
本発明は、上述のような問題点を解決したもので、実際の被処理物(被成膜対象物)である基板を用いることなく精度良く、早期にティーチング作業を完了することが可能で、簡易で、装置内のクリーン度を担保できるティーチング方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のティーチング装置は、
マスクに形成された所定のパターンのマスク開口部を介して成膜材料が堆積され得る基板を支持して搬送するロボットによる、前記成膜材料を前記基板に堆積させるための成膜装置が設けられた基板処理室に設けられた基板載置部に対する基板の搬送動作において、前記ロボットの前記基板を支持する支持部の辿るべき経路を、前記ロボットを制御する制御部にティーチングするティーチング装置であって、
前記基板の代わりに前記支持部に支持させるティーチング用治具と、
前記治具を前記支持部に対して位置決めする位置決め手段と、
前記支持部の位置を示すためのマークと、
前記マークを撮像する、前記基板処理室に設けられた撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記支持部の位置に基づいて、前記制御部
に記憶させるべき前記経路を取得する取得部と、
を備え
前記撮像手段は、前記マスクと前記基板の位置調整を行うために、前記マスクに設けられたアライメントマークと前記基板に設けられたアライメントマークとを撮像するものであることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の基板搬送装置は、
基板を支持して搬送するロボットと、
前記ロボットを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、本発明のティーチング装置により記憶させられた前記経路に基づいて前記ロボットを制御することを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の基板処理装置は、
基板載置部を有する基板処理室と、
本発明の基板搬送装置と、
を備え、
前記基板搬送装置により搬送され前記基板載置部に載置された基板に対して処理を行うことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明のティーチング方法は、
マスクに形成された所定のパターンのマスク開口部を介して成膜材料が堆積され得る基板を支持して搬送するロボットによる、前記成膜材料を前記基板に堆積させるための成膜装置が設けられた基板処理室に設けられた基板載置部に対する基板の搬送動作において、前記ロボットの前記基板を支持する支持部の辿るべき経路を、前記ロボットを制御する制御部にティーチングするティーチング方法であって、
前記基板の代わりにティーチング用治具を前記支持部に支持させ、かつ前記治具を前記支持部に対して位置決めした状態で、前記支持部が仮の経路を辿って移動するように前記制御部が前記ロボットを制御する治具搬送工程と、
前記基板処理室に設けられた撮像手段を用いて、前記支持部の位置を示すマークを撮像する撮像工程と、
前記撮像手段が撮像した画像から取得される前記支持部の位置に基づいて、前記制御部に記憶させるべき前記経路を取得する取得工程と、
前記制御部に、取得した前記経路を記憶させるティーチング工程と、
を含み、
前記撮像手段は、前記マスクと前記基板の位置調整を行うために、前記マスクに設けられたアライメントマークと前記基板に設けられたアライメントマークとを撮像するものであることを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の成膜方法は、
基板処理室の基板載置部に載置された基板に対して成膜処理を施す成膜方法であって、
本発明のティーチング方法により、前記制御部に前記経路を記憶させるティーチング工程と、
前記経路に基づいて前記制御部が前記ロボットを制御して、前記基板を前記基板載置部に搬送、載置する搬送工程と、
前記基板載置部に載置された前記基板に対して蒸着又はスパッタリングにより成膜処理を施す成膜工程と、
を含むことを特徴とする。
上記目的を達成するため、本発明の電子デバイスの製造方法は、
基板上に形成された金属膜を有する電子デバイスの製造方法であって、
本発明の成膜方法により前記金属膜が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関し、特に、基板の高精度な搬送および位置調整のための技術に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本発明の技術は、具体的には、有機薄膜を用いた電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。なかでも、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板の搬送精度及び基板とマスクのアライメント精度のさらなる向上が要求されているため、本発明の好ましい適用例の一つである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る成膜装置の全体構成を示す概略図
図2】本発明の実施例による処理室の構成を示す概略上面図
図3】本発明の実施例による処理室の構成を示す概略側面図
図4】本発明の実施例による搬送用ロボットの構成を示す概略図
図5】本発明の実施例によるティーチング時の構成を示す概略図
図6】本発明の実施例によるティーチング時の撮像手段の映像を示す概略図
図7】本発明の実施例に係る成膜装置の制御構成を示すブロック図
図8】本発明の実施例によるティーチングプロセスのフローチャート
図9】本発明の実施例による成膜プロセスのフローチャート
図10】有機EL表示装置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下で説明する実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本
発明の範囲をそれらの構成に限定するものではない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、製造条件、寸法、材質、形状などは、特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0014】
本発明は、基板上に薄膜を形成する成膜装置及びその制御方法に関し、特に、基板の高精度な搬送および位置調整のための技術に関する。本発明は、平行平板の基板の表面に真空蒸着により所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用できる。基板の材料としては、ガラス、樹脂、金属などの任意の材料を選択でき、また、蒸着材料としても、有機材料、無機材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択できる。本発明の技術は、具体的には、有機薄膜を用いた電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。なかでも、有機EL表示装置の製造装置は、基板の大型化あるいは表示パネルの高精細化により基板の搬送精度及び基板とマスクのアライメント精度のさらなる向上が要求されているため、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0015】
[実施例1]
<製造装置及び製造プロセス>
図1は、電子デバイスの製造装置の全体構成を模式的に示す上視概略図である。図1の製造装置(基板処理装置)100は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mm、厚み約0.5mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0016】
図1に示すように、本実施例に係る基板処理装置100は、処理室(成膜室)1と、搬送室2と、搬入室3と、排出室4と、搬送用ロボット5と、を有する。処理室1には、処理すべき対象である基板Wを載置する基板載置部11が設けられている。搬送室2には、基板Wを保持し搬送する搬送用ロボット5が設けられている。搬送用ロボット5は、例えば、多関節アームに、基板Wを支持する手段としてのロボットハンド6が取り付けられた構造をもつロボットであり(詳細は後述する。)、各室への基板Wの搬入/搬出を行う。例えば、搬入室3に載置された基板Wは、搬送用ロボット5のロボットハンド6により、処理室1、排出室4へと搬送される。なお、装置内における基板Wの各室間の移動は、搬送用ロボット5を介して自由に行うことができる。
【0017】
処理室11には成膜装置(蒸着装置とも呼ぶ)が設けられている。図9に示すような、搬送用ロボット5と基板載置部11との間の基板Wの受け渡し(S202)、基板Wとマスク(不図示)の相対位置の調整(アライメント)(S203)、マスク上への基板Wの固定、成膜(蒸着)など(S204)の一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。なお、図9の成膜プロセスにおける基板Wの処理室11内への搬入(基板受け渡し位置までの移動)(S201)は、後述する、本実施例のティーチングプロセスにより取得されたティーチング経路に基づいて制御される(詳細は後述する)。
【0018】
図1に示した基板処理装置100の構成は、あくまで一例であり、かかる構成に限定されるものではない。例えば、1つの装置内に2つ以上の処理室1を設けてもよい。また、別の処理室では、成膜装置としてスパッタリング装置が設けられた処理室が設けられていてもよい。また、1つの処理室内に2つ以上の基板載置部11を設けてもよい。また、本実施例では、搬送用ロボット5は2つのロボットハンド6を有しているが、1つのみや、3つ以上を有してもよい。また、基板支持部としてのロボットハンド6は、搬送用ロボット5の動作領域を最大限活用するため、搬送用ロボット5のアーム先端付近に設置されることが望ましい。さらには、自重による先端部の撓みを最小化するため、CFRPといっ
た軽量な部材で構成されることが望ましい。
【0019】
図2図3を用いて、本実施例による処理室1の構成について説明する。図2は、本実施例による処理室1の構成を上方から見たときの様子を概略的に示したものである。図3は、本実施例による処理室の構成を側方から見たときの様子を概略的に示したものである。
【0020】
図2図3に示すように、処理室1には、基板載置部11と、蒸着装置8と、が設けられている。処理室1は、成膜装置(蒸着装置)の一部として、基板Wに対する成膜処理が行われる際には、真空チャンバとして、その室内が、真空雰囲気か、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される。処理室1内には、概略、基板保持ユニット、マスク、マスク載置部、冷却板(いずれも不図示)や、蒸着装置8などが設けられる。基板保持ユニットは、搬送用ロボット6から受け取った基板Wを保持・搬送する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。基板載置部11は、基板保持ユニットの一部をなしている。マスクは、基板Wに形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクであり、枠状のマスク台の上に固定されている。成膜時にはマスクの上に基板Wが載置される。冷却板は、成膜時に基板W(のマスクに対向する面とは反対側の面)に密着し、基板Wの温度上昇を抑えることで有機材料の変質や劣化を抑制する部材である。冷却板がマグネット板を兼ねていてもよい。マグネット板とは、磁力によってマスクを引き付けることで、成膜時の基板Wとマスクの密着性を高める部材である。蒸着装置8は、蒸着材料、蒸着材料を収容する容器(坩堝)、ヒータ、シャッタ、蒸発装置の駆動機構、蒸発レートモニタなどから構成される(いずれも不図示)。
【0021】
処理室1には、さらに、処理室1内に進入したロボットハンド6上に載置された基板Wの、もしくは基板載置部11に載置された基板WのアライメントマークW1を撮像する撮像手段(カメラ)12と、基板載置部11に載置された基板Wの位置補正するための位置補正手段13と、が設けられている。
【0022】
位置補正手段13は、基板Wのマスクに対するアライメントにおいて両者の位置調整を行う手段として、例えば、モータとボールねじ、モータとリニアガイドなどで構成されるアクチュエータを複数備えている。例えば、基板載置部11を含む基板保持ユニットの全体を昇降(Z方向移動)させるためのアクチュエータや、基板保持ユニットの基板挟持機構を開閉させるためのアクチュエータ、冷却板を昇降させるためのアクチュエータ、基板保持ユニット及び冷却板の全体を、X方向移動、Y方向移動、θ回転させるアクチュエータなどである。また、マスクの位置を調整し、又は、基板Wとマスクの両者の位置を調整することで、基板Wとマスクのアライメントを行うアクチュエータを備えていてもよい。
【0023】
処理室1の上方(外側)には、基板W及びマスクのアライメントのために、基板W及びマスクそれぞれの位置を測定する撮像手段(カメラ)12が設けられている。撮像手段12は、処理室1の壁(天井)に設けられた窓を通して、基板Wとマスクを撮影する。その画像から基板W上のアライメントマークW1及びマスク上のアライメントマークを認識することで、各々のXY位置やXY面内での相対ズレを計測することができる。
【0024】
基板Wを水平および回転方向に位置補正するには、少なくとも2つの撮像手段12を設けるが、1つのみや、3つ以上を設けてもよい。撮像手段12は、基板Wが理想位置に載置された際のアライメントマークW1と、マスクのアライメントマーク(不図示)がその画角内かつ被写界深度内に入るように設置、調整されている。
【0025】
短時間で高精度なアライメントを実現するために、大まかに位置合わせを行う第1アライメント(「ラフアライメント」とも称す)と、高精度に位置合わせを行う第2アライメ
ント(「ファインアライメント」とも称す)の2段階のアライメントを実施することが好ましい。その場合、低解像だが広視野の第1アライメント用のカメラと狭視野だが高解像の第2アライメント用のカメラの2種類のカメラを撮像手段として用いるとよい。
【0026】
図4を参照して、搬送用ロボット5の構成について説明する。図4(a)は、搬送用ロボット5の模式的平面図である。図4(b)は、搬送用ロボット5の模式的側面図である。なお、ここで説明する搬送用ロボットの構成(ロボットアーム、ロボットハンドの構成)はあくまで一例であり、かかる構成に限定されるものではない。
搬送用ロボット5は、概略、基板Wを担持するためのロボットハンド6と、ロボットハンド6をXYZ直交座標の任意の位置へ自在に移動させるためのロボットアーム51と、からなる。
【0027】
ロボットアーム51は、搬送室2の設置面に固定設置されるベース510と、ベース510に対してジョイント520、521、522を介して順次連結されたアーム511、512、513と、とを有する。第1アーム511は、ベース510に対し、第1ジョイント520を介して、設置面に垂直な方向(Z方向)に延びる回転軸を中心に回転可能に連結されている。第2アーム512は、第1アーム511に対して第2ジョイント521を介して、第3アーム513に対して第3ジョイント522を介して、それぞれ、設置面に垂直な方向(Z方向)に延びる回転軸を中心に回転可能に連結されている。第3アーム513の先端(両端)には、ロボットハンド6が対になって連結されている。各アーム511~513の回転の組み合わせにより、ロボットハンド6の水平位置(XY座標)を任意に変位させることができる。
また、第1アーム511は、ベース510に対して、ジョイント520に沿った方向に昇降移動可能に構成されている(Z方向)。第1アーム511の昇降によって第2アーム512及び第3アーム513も昇降することで、ロボットハンド6の高さを変化させ、基板Wの高さを変化させることができる(Z方向)。
【0028】
ロボットアーム51の各ジョイントには、モータとエンコーダがそれぞれ設けられている。後述するティーチングデータ取得部は、各アームの回転量及び昇降高さ、もしくは、それらの情報を換算して取得される3次元座標から、必要となるロボットハンド6の移動量(各アームの動作量)を取得することができる。
【0029】
ロボットハンド6は、第3アーム513の先端から延びる一対のスパインロッド16と、スパインロッド16の側面からそれぞれスパインロッド16に対して直交する方向外向きに延びる複数のリブロッド26と、を有している。リブロッド26の先端上面には、基板Wの下面を支持するためのパッド36が設けられている。パッド36は、基板Wの表面を傷つけずに支持できるようにシリコーンゴム等の弾性部材で構成され、基板Wのたわみを考慮した配置(基板Wの外周縁の沿って)で複数設けられている。なお、スパインロッド16の延びる方向における両端に配置されたリブロッド26には、それぞれスパインロッド16の延びる方向に延在する第2のリブロッド46が複数設けられており、それらの先端上面にもパッド36が設けられている。
【0030】
搬送用ロボット5は、ロボットハンド6に載置された基板Wを処理室1内の基板載置部11に載置する際、基板WのアライメントマークW1が水平方向において撮像手段12の画角内に入る所定の載置位置まで移動する。次いで、搬送用ロボット5が高さ方向に移動して基板載置部11に基板を載置した後、載置された基板WのアライメントマークW1とマスクのアライメントマークを撮像手段12にて撮像し、基板とマスクの相対位置を計測する。計測された数値に基づいて基板の位置補正量を算出し、位置補正手段13にて基板Wを移動させる。その後、撮像手段12にて再度撮像、基板とマスクの相対位置を測定し、一定の公差範囲内に入るまで所定回数繰り返し実施する。なお、基板Wはロボットハン
ド6に載置された状態、つまり基板載置部11に載置される前の状態で、撮像手段12にて撮像されてもよい。
【0031】
図7は、本実施例に係る成膜装置の制御構成の概略を示すブロック図である。制御部は、各種機能部を備える。
室圧制御部は、真空計や真空ポンプを備え処理室1の室圧を制御する。
アクチュエータ制御部は、位置補正手段13の各種アクチュエータを制御する。
画像処理部は、撮像手段12の撮影した画像から上述したアライメントマーク間のずれ量を抽出・取得し、モニタに表示させる。
ティーチングデータ取得部は、後述するティーチングプロセスにおいてティーチングデータを取得する。
記憶部は、ロボットハンド6の座標情報などを含むティーチングデータやその他の各種情報を記憶する。
ロボット制御部は、搬送用ロボット5を制御する。
モニタ制御部は、膜厚モニタの動作の制御、成膜レートの測定、取得を行う。
加熱制御部は、ヒータに供給する電力を制御することで、蒸着装置8において蒸着材料が収容された坩堝の加熱制御を行う。
【0032】
制御部は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、成膜装置ごとに制御部が設けられていてもよいし、1つの制御部が複数の成膜装置を制御してもよい。
【0033】
処理室1の基板載置部11への基板の受け渡しを終えると、蒸着装置8を用いて、マスクを介して基板Wに蒸着処理を施す。その後、ロボットハンド6にて処理後の基板Wを処理室1の基板載置部11より受け取り、次工程へと搬送する。
【0034】
上述の一連の動作は全て、真空およびクリーン環境が担保された基板処理装置内にて実施される。また、上述した基板処理装置内の手段は全て、装置内のクリーン環境を担保できる、つまりコンタミ等の影響懸念がないものである。
【0035】
(本実施例の特徴)
図4図5を用いて、本実施例の特徴である、搬送用ロボット5に基板搬送の経路をティーチングする際の構成(ティーチング装置)について説明する。図5は、本実施例による処理室1における搬送用ロボット5のティーチング時の構成(ティーチング装置)を上面から見た図にて概略的に表したものである。
【0036】
図4(a)に示すように、搬送用ロボット5のロボットハンド6には、基準6aおよびサブ基準6bが設けられている。基準6aおよびサブ基準6bは、後述するティーチング用治具等を位置再現良く載置するための載置用基準である。本実施例では、基準6aおよびサブ基準6bは、円筒状の穴であるが、円筒以外の形状や、突起状であってもよい。
一方、図5に示すように、ティーチング用治具Tには、ロボットハンド6の基準6aおよびサブ基準6bに対応した位置決め機構TaおよびTbとして、基準6aおよびサブ基準6bに嵌合する突起が設けられている。本実施例では、Taは円筒状の、Tbはダイヤ状の突起であるが、搬送用ロボット、つまりは基準6aおよびサブ基準6bに、治具Tを位置再現良く載置できれば前記以外でもよい。なお、Tbは不要であれば設けなくてもよ
い。
【0037】
治具Tとロボットハンド6の支持部との間の位置決め手段としては、いずれか一方に設けられた凸部と、これが嵌合する他方に設けられ凹部からなる構成が、コスト面や取り回し性において好適であるが、かかる構成に限定されるものではない。例えば、両者にそれぞれ係合する別体の部材を用いて位置決めを行うようにしてもよい。
また、基準6aおよびサブ基準6bは、搬送用ロボット5に設けてもよいが、基板が載置される近傍に設けることが望ましい。搬送用ロボット5に複数のロボットハンド6が含まれる場合は、各々のロボットハンド6ごとに基準6aおよびサブ基準6bを設ける。なお、サブ基準6bは不要であれば設けなくてもよい。
【0038】
図5に示すように、ティーチング用治具Tは、位置決めマークT1を有している。位置決めマークT1は、ティーチング用治具Tが基板載置部11への所定の基板受渡位置に搬送された際に、撮像手段12の画角内および被写界深度内に入る位置に設けられている。さらには、位置決めマークT1は、基板Wがロボットハンド6の理想位置に載置された際のアライメントマークW1と、水平方向において設計上同一位置に設けられていることが望ましい。また、位置決めマークT1は、本実施例では円筒状の穴であるが、撮像手段12にて撮像した際に、作業者もしくは画像処理部にて精度良く位置を認識することができる特徴的な形状であれば前記以外でもよい。
また、治具Tは、基板Wと同じ重量、同じ重心位置であることが望ましい。すなわち、実際の基板Wを乗せたときと同様の重量バランスを再現できるように構成されていれば良く、全体形状は特定の形状に限定されるものではない。本実施例における治具Tは、実際の基板Wの重量バランを再現するために、複数の肉抜き部Th1、Th2、Th3を複数設けた、平板に複数の開口(貫通孔)を開けたような構成としているが、かかる構成に限定されるものではない。また、例えば、単体ではなく複数の部分に分割されたような構成としてもよい。
【0039】
なお、別の手段として、ロボットハンド6や搬送用ロボット5先端部に位置決めマークT1を直接設けることが考えられる。しかしながら、一般的に、かかる部位は軽量化のためCFRPといった部材で構成されるが、その色は黒色に近く、位置決めマークT1を直接設けても、位置決めマークT1周辺とのコントラスト差が生じにくく、撮像手段12にて位置を検出することが非常に困難となる場合が多い。また、装置内クリーン度の担保も非常に困難となってしまうことが考えらえる。
【0040】
図5図6図8を用いて、搬送用ロボット5のティーチング方法について説明する。図8は、本実施例におけるティーチングプロセスのフローチャートであり、以下では図8の各ステップの説明と併せて、本実施例のティーチング方法について説明する。なお、一連のティーチング作業は全て、大気環境下にて実施される(S101)。
【0041】
図5に示すように、まず、ロボットハンド6にティーチング用治具Tを載置し(S102)、処理室内の撮像手段12の画角内に位置決めマークT1が入る位置、すなわち、基板受け渡し位置に移動させる(S103)。このときのロボットハンド6の移動経路は、仮の経路であり、実際の成膜処理時に基板Wを搬送する際の移動経路(基板Wが辿るべき経路)とは、必ずしも一致しない。ロボットハンド6が所定の基板受け渡し位置に移動した際の、撮像手段12にて撮像された映像を図6(a)に概略的に示す(S104)。なお、図6(a)にて示す座標系は、図1図5にて示す座標系と一致させたものであり、図7に示した画像処理部によりモニタ上に基準位置からのずれ量がわかりやすく表示される(S105)。そして、撮像画面を基に位置決めマークT1が撮像手段12の画角内における基準から一定の公差範囲内12bに収まるようにロボットハンド6を水平および回転方向に移動させる(S106:No、S108)。その際の、撮像手段12にて撮像さ
れた映像を図6(b)にて概略的に示す。なお、図6(b)にて示す座標系は、図1図5にて示す座標系と一致させたものである。その後、搬送用ロボット5の動作データ記憶手段に、上記位置のポイントを記録させる(S106:Yes、S107)。すなわち、図7において、ティーチングデータ取得部が、ロボットハンド6が上記位置にあるときの各アームの動作量、昇降量、あるいはそれらから換算して取得されるロボットハンド6の座標などを取得し、記憶部に記憶させる。なお、ティーチング時において、搬送用ロボット5は低速で動作させることが望ましい。
【0042】
以上は、基板Wの処理室1への搬入経路のティーチングであるが、搬出経路のティーチングについても同様である。
なお、以上のティーチングは、処理室以外、例えば図1における搬入室や搬出室に、基板WのアライメントマークWの位置を検出する撮像手段を備えていれば、それらの場所でも行うことができる。すなわち、基板Wの移動経路上の各地点において理想的な搬送位置を取得することで、基板処理装置100全体における理想的な基板の搬送経路を取得することができる(S103~S110)。
【0043】
なお、マスクも搬送用ロボット5にて搬送する場合、上記と同様な手段にてマスクの載置位置等のティーチングを実施することが可能である。
【0044】
(本実施例の優れた点)
本実施例によれば、実際の被処理物(被成膜対象物)である基板を用いることなく、処理室内の基板載置部への搬送用ロボットの動作ポイントを精度良くティーチングすることが可能である。また、ティーチングには、装置に設けられている基板上のアライメントマークの位置を検出する撮像手段を用いるため、ティーチング専用の位置検出手段は不要である。そのため、簡易かつ安価な手段でティーチング用治具を実現する事が可能となる。また、処理室内の載置部もしくは搬送用ロボットに位置決めマークを設けないため、コンタミ等の影響はなく、装置内のクリーン度を担保することが可能である。
また、ティーチング用治具が有する位置決め機構により、搬送手段に治具を位置再現良く載置することができるため、精度良くティーチングすることが可能である。これにより、ティーチング作業の大幅な時間短縮や省力化が可能となる。
また、搬送用ロボットの位置を前記撮像手段にて検出することで、作業者がティーチング位置に接近することなくティーチングでき、ティーチング作業の大幅な時間短縮や省力化が可能となる。
また、精度良くティーチングすることが可能となるため、処理室に供給される基板のアライメントマークを、撮像手段の画角内かつ被写界深度内に確実に入れることが可能となる。これにより、アライメントマークが検出されないことによる装置のエラー停止が無くなり、歩留りの向上や人的確認作業の低減が可能となる。
【0045】
<電子デバイスの製造方法の実施例>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図10(a)は有機EL表示装置60の全体図、図10(b)は1画素の断面構造を表している。
【0046】
図10(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている
。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0047】
図10(b)は、図10(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,66G,66Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0048】
有機EL層を発光素子単位に形成するためには、マスクを介して成膜する方法が用いられる。近年、表示装置の高精細化が進んでおり、有機EL層の形成には開口の幅が数十μmのマスクが用いられる。このようなマスクを用いた成膜の場合、マスクが成膜中に蒸発源から受熱して熱変形するとマスクと基板との位置がずれてしまい、基板上に形成される薄膜のパターンが所望の位置からずれて形成されてしまう。そこで、これら有機EL層の成膜には本発明にかかる成膜装置(真空蒸着装置)が好適に用いられる。
【0049】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0050】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0051】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
発光層66Rの成膜と同様に、第3の成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
電子輸送層67までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を
成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0052】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
100…基板処理装置、1…処理室、2…搬送室、3…搬入室、4…排出室、5…搬送用ロボット、6…ロボットハンド、6a…ロボットハンド基準、6b…ロボットハンドサブ基準、11…基板載置部、12…撮像手段、13…基板位置補正手段、W…基板、W1…アライメントマーク、T…ティーチング用治具、T1…位置決めマーク、Ta…治具基準、Tb…治具サブ基準
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10