(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】基板処理方法および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231127BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2019177637
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】上村 史洋
(72)【発明者】
【氏名】笠原 政俊
(72)【発明者】
【氏名】南 輝臣
(72)【発明者】
【氏名】須中 郁雄
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219773(JP,A)
【文献】特開2015-076558(JP,A)
【文献】特開2013-243331(JP,A)
【文献】特開2016-189434(JP,A)
【文献】特開2016-162922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
B08B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱して前記基板の温度を上昇させる基板昇温工程と、
前記基板昇温工程の後に、前記基板を加熱するとともに第1回転数で回転させながら前記基板の第1面にプリウエット液を供給して、前記基板の第1面に前記プリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の後に、前記基板を加熱するとともに前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させながら前記基板の第1面に薬液を供給して、前記基板の第1面を前記薬液で処理する薬液処理工程と、
前記薬液処理工程の後に前記基板の温度を低下させる基板降温工程と、
を備
え、
前記基板昇温工程、前記液膜形成工程および薬液処理工程における前記基板の加熱は、前記薬液と異なる加熱された流体を少なくとも前記基板の前記第1面の裏側の第2面に供給することにより行われ、
前記基板昇温工程において前記基板の前記第2面に供給される前記加熱された流体の温度は、前記薬液処理工程における前記基板の目標温度よりも高い第1の温度であり、前記第2面に供給される前記加熱された流体の温度は、前記薬液処理工程が開始されるまでに前記第1の温度より低い第2の温度に下げられる、基板処理方法。
【請求項2】
前記基板昇温工程
における前記基板の加熱は、前記基板の前記第2面のみに前記薬液と異なる前記加熱された流体を供給することにより行われる、請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記基板昇温工程における前記基板の加熱は、さらに、前記基板の前記第1面に、前記液膜形成工程において前記基板の前記第1面に供給される前記プリウエット液の温度よりも高い温度に加熱された流体を供給することにより行われる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記基板昇温工程において前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体は、前記第1面の周縁部のみに供給される、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記基板昇温工程において前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体は、前記プリウエット液より温度が高い前記プリウエット液と同じ液体である、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記基板昇温工程において前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体、および前記プリウエット液はともにDIW(純水)である、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板昇温工程において前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体は、前記プリウエット液より温度が高い前記プリウエット液と異なる液である、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記液膜形成工程で用いられる
前記プリウエット液は、前記薬液処理工程で用いられる
前記薬液と同じ液であり、前記液膜形成工程では前記プリウエット液としての前記薬液が第1の流量で
前記基板の前記第1面に供給され、前記薬液処理工程では前記薬液が前記第1の流量より小さい第2の流量で
前記基板の前記第1面に供給される、請求項
7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記基板昇温工程において前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体はDIW(純水)である、請求項8に記載の基板処理方法。
【請求項10】
基板を加熱して前記基板の温度を上昇させる基板昇温工程と、
前記基板昇温工程の後に、前記基板を加熱するとともに第1回転数で回転させながら前記基板の第1面にプリウエット液を供給して、前記基板の第1面に前記プリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の後に、前記基板を加熱するとともに前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させながら前記基板の第1面に薬液を供給して、前記基板の第1面を前記薬液で処理する薬液処理工程と、
前記薬液処理工程の後に前記基板の温度を低下させる基板降温工程と、
を備え、
前記基板昇温工程は、前記基板の前記第1面およびその裏側の第2面に前記薬液と異なる加熱された流体を供給することにより行われ、
前記基板昇温工程において、前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体は、前記液膜形成工程において前記基板の前記第1面に供給される前記プリウエット液の温度よりも高い温度に加熱された流体であり、
前記液膜形成工程および薬液処理工程における前記基板の加熱は、前記薬液と異なる加熱された流体を少なくとも前記基板の前記第1面の裏側の第2面に供給することにより行われる、基板処理方法。
【請求項11】
基板を加熱して前記基板の温度を上昇させる基板昇温工程と、
前記基板昇温工程の後に、前記基板を加熱するとともに第1回転数で回転させながら前記基板の第1面にプリウエット液を供給して、前記基板の第1面に前記プリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の後に、前記基板を加熱するとともに前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させながら前記基板の第1面に薬液を供給して、前記基板の第1面を前記薬液で処理する薬液処理工程と、
前記薬液処理工程の後に前記基板の温度を低下させる基板降温工程と、
を備え、
前記基板昇温工程は、前記基板の前記第1面の周縁部のみに前記薬液と異なる前記加熱された流体を供給することと、前記基板の前記第1面の裏側の第2面に前記薬液と異なる前記加熱された流体を供給することにより行われ、
前記基板昇温工程において、前記基板の前記第1面に供給される前記加熱された流体は、前記液膜形成工程において前記基板の前記第1面に供給される前記プリウエット液の温度よりも高い温度に加熱された流体であり、
前記液膜形成工程および薬液処理工程における前記基板の加熱は、前記薬液と異なる加熱された流体を少なくとも前記基板の前記第1面の裏側の第2面に供給することにより行われる、基板処理方法。
【請求項12】
前記薬液処理工程において、前記薬液は常温で前記基板
の前記第1面に供給される、請求項1から
11のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
前記基板降温工程は、少なくとも、前記基板
の前記第2面に、前記薬液処理工程における前記基板の目標温度よりも低い温度の、前記薬液と異なる流体を供給することにより行われる、請求項1から
12のうちのいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項14】
第1面とその裏側の第2面とを有する基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転させる回転駆動部と、
前記基板に薬液を供給する薬液供給部と、
前記基板に加熱された流体を供給する加熱流体供給部
であって、前記基板保持部により保持された前記基板の第2面に向けて前記加熱された流体を吐出する加熱流体ノズルと、上流端が加熱流体供給源に接続されるとともに下流端が前記加熱流体ノズルに接続された加熱流体ラインと、上流端が低温流体供給源に接続されるとともに下流端が前記加熱流体ラインに接続され、前記加熱流体ラインに、前記加熱された流体よりも低い温度の低温流体を供給する低温流体ラインと、を有する加熱流体供給部と、
前記低温流体が前記加熱流体ラインに合流する位置よりも下流側の分岐点において前記加熱流体ラインから分岐するドレンラインと、
前記ドレンラインに設けられた温度センサと、
前記ドレンラインを開閉する第1開閉弁と、
前記分岐点の下流側の前記加熱流体ラインに設けられた第2開閉弁と、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記加熱流体供給部により前記加熱された流体を前記基板に供給し、前記基板の温度を上昇させる基板昇温工程と、
前記基板昇温工程の後に、前記回転駆動部により前記基板を第1回転数で回転させながら、前記加熱流体供給部により前記加熱された流体を前記基板の前記第2面に供給するとともに、前記基板の前記第1面に、プリウエット液として、前記加熱流体供給部により前記加熱された流体を供給するか、若しくは、前記薬液供給部により薬液を供給することにより、前記基板の第1面に前記プリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、
前記液膜形成工程の後に、前記回転駆動部により前記基板を前記第1回転数より低い第2回転数で回転させながら、前記加熱流体供給部により前記加熱された流体を前記基板の前記第2面に供給するとともに、前記基板の前記第1面に、前記薬液供給部により前記基板の第1面に薬液を供給して、前記基板の第1面を薬液で処理する薬液処理工程と、
を実行させるように構成さ
れ、
前記制御部は、前記加熱された流体に対する前記低温流体の混合比を調節することにより、前記加熱流体ノズルから吐出される流体の温度を調整し、
前記制御部は、前記温度センサにより検出された温度が予め定められた値に達するまでは前記第2開閉弁を閉じた状態で第1開閉弁を開いて前記ドレンラインから前記加熱された流体を流し、前記温度センサにより検出された温度が予め定められた値に達したら第1開閉弁を閉じるとともに前記第2開閉弁を開いて前記加熱流体ノズルから前記加熱された流体を吐出させる、基板処理装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記第2開閉弁を閉じた状態で第1開閉弁を開いて前記ドレンラインから前記加熱された流体を流しているときに、前記温度センサにより検出された温度に基づいて前記加熱された流体に対する前記低温流体の混合比を制御する、請求項
14に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、半導体ウエハ等の基板に処理液を供給することにより液処理を行う液処理工程が含まれる。このような液処理の一つとして、回転する基板の表面の中心に加熱された薬液を供給することにより行われる薬液洗浄処理またはウエットエッチング処理がある。基板の中心部に供給された加熱された薬液は、基板の周縁部に広がるまでの間に温度が低下する。また、周速の高い基板周縁部では基板が冷えやすい。このため、基板の裏面に加熱された液体例えば水を供給して、基板の温度の均一化を図ることが行われている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、薬液を回転する基板に供給する液処理において、処理液の消費量を抑制しつつ液処理の面内均一性を高める技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理方法は、基板を加熱して前記基板の温度を上昇させる基板昇温工程と、前記基板昇温工程の後に、前記基板を加熱するとともに第1回転数で回転させながら前記基板の第1面にプリウエット液を供給して、前記基板の第1面に前記プリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、前記液膜形成工程の後に、前記基板を加熱するとともに前記第1回転数よりも低い第2回転数で回転させながら前記基板の第1面に薬液を供給して、前記基板の第1面を前記薬液で処理する薬液処理工程と、前記薬液処理工程の後に前記基板の温度を低下させる基板降温工程と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、薬液を回転する基板に供給する液処理において、液処理の面内均一性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板処理装置の一実施形態に係る基板処理システムの縦断側面図である。
【
図2】
図1の基板処理システムに設けられた処理ユニットの構成の一例を示す概略縦断面図である。
【
図3】処理ユニットの裏面ノズルに温調用DIWを供給する温調用DIW供給機構の一例を示す配管系等図である。
【
図4A】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図4B】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図4C】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図5A】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図5B】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図5C】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図6】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図7】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図8】一実施形態に係る液処理の工程について説明する作用図である。
【
図9】ウエハ昇温工程からリンス工程までの間のウエハ温度の推移の一例について説明するグラフである。
【
図10】基板処理システム内のHDIWおよびCDIW配管系統の一例について概略的に示す配管系等図である。
【
図11】基板処理システム内のHDIW配管系統の他の例について概略的に示す配管系等図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
基板処理装置の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0011】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0012】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0013】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0014】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0015】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0016】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0017】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0018】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0019】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0020】
次に、
図2を参照して処理ユニット16の構成について説明する。
【0021】
処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持回転機構30と、第1処理流体供給部40と、第2処理流体供給部50と、回収カップ60とを備えている。
【0022】
チャンバ20は、基板保持回転機構30および回収カップ60を収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0023】
基板保持回転機構30は、基板保持部31と、支柱部32と、回転駆動部33とを備えている。基板保持部31は、円盤状のベース31aと、ベース31aの外周縁部に円周方向に間隔を空けて設けられた複数の把持爪31bとを有するメカニカルチャックとして構成されている。基板保持部31は把持爪31bによりウエハWを水平に保持する。把持爪31bが基板を把持しているとき、ベース31aの上面とウエハWの下面との間に隙間が形成される。
【0024】
支柱部32は鉛直方向に延在する中空部材である。支柱部32の上端はベース31aに連結されている。回転駆動部33が支柱部32を回転させることにより、基板保持部31およびこれに保持されたウエハWが鉛直軸線回りに回転する。
【0025】
回収カップ60は、基板保持部31を取り囲むように配置されている。回収カップ60は、基板保持部31に保持されて回転するウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ60の底部には、排液口61が形成されている。回収カップ60によって捕集された処理液は、排液口61から処理ユニット16の外部へ排出される。回収カップ60の底部には、排気口62が形成されている。回収カップ60の内部空間は排気口62を介して吸引されている。FFU21から供給された気体は、回収カップ60の内部に引き込まれた後に、排気口62を介して、処理ユニット16の外部へ排出される。
【0026】
第1処理流体供給部40は、基板保持部31に保持されたウエハWの上面(通常はデバイスが形成されたウエハWの表面)に様々な処理流体(液体、ガス、気液混合流体等)を供給する。第1処理流体供給部40は、ウエハWの上面(第1面)に向けて処理流体を吐出する複数の表面ノズル41を有する。表面ノズル41の数は、処理ユニット16で実行される処理を行うために必要な数だけ設けられる。
図2には5つの表面ノズル41が描かれているが、この数に限定されるものではない。
【0027】
第1処理流体供給部40は、1つ以上(図示例では2つ)のノズルアーム42を有する。各ノズルアーム42は、複数の表面ノズル41のうちの少なくとも1つを担持している。各ノズルアーム42は、担持した表面ノズル41を、ウエハWの回転中心の概ね真上の位置(処理位置)と、回収カップ60の上端開口よりも外側の退避位置との間で移動させることができる。
【0028】
表面ノズル41の各々には、対応する処理流体供給機構43から処理流体が供給される。処理流体供給機構43は、タンク、ボンベ、工場用力等の処理流体供給源と、処理流体供給源から表面ノズル41に処理流体を供給する供給管路と、供給管路に設けられた開閉弁、および流量制御弁等の流量調節機器と、から構成することができる。表面ノズル41およびその近傍の供給管路内に滞留する処理流体(特に処理液)を排出するために、供給管路にドレン管路を接続することができる。このような処理流体供給機構43は、半導体製造装置の技術分野において広く知られており、構造の図示および詳細な説明は省略する。各表面ノズル41が退避位置にあるときにダミーディスペンスが可能となるように、処理ユニット16には液受け(図示せず)が設けられている。
【0029】
第2処理流体供給部50は、基板保持部31に保持されたウエハWの下面(通常はデバイスが形成されていないウエハWの裏面)に様々な処理流体(処理液、処理ガス等)を供給する。第2処理流体供給部50は、ウエハWの下面(第2面)に向けて処理流体を吐出する1つ以上の(図示例では2つの)裏面ノズル51A,51Bを有する。
図2に概略的に示したように、中空の支柱部32の内部に、処理液供給管52が鉛直方向に延びている。処理液供給管52内に上下方向に延びる2つの流路の各々の上端開口部が、裏面ノズル51A,51Bとしての役割を果たす。処理液供給管52は、基板保持部31および支柱部32が回転しているときも、非回転状態を維持できるように支柱部32内に設置されている。
【0030】
裏面ノズル51A(加熱流体ノズル)には、温調用DIW供給機構53Aから、ウエハWを温調するための温調用DIW(純水)が供給される。裏面ノズル51Aおよび温調用DIW供給機構53Aは、加熱流体(温調用流体)の供給機構を構成する。裏面ノズル51Bには、CDIW供給機構53B(
図2のみに示す)から、ウエハWを冷却するための冷却用のCDIW(常温のDIW)が供給される。裏面ノズル51BおよびCDIW供給機構53Bは、冷却用流体の供給機構を構成する。CDIW供給機構53Bは、例えば先に簡単に説明した表面ノズル41用の処理流体供給機構43と同様の一般的な公知の構成を有するものであってよい。
【0031】
本明細書においては、加熱されたDIWである「HDIW」と区別するために、常温(例えば24℃)のDIWを「CDIW」と呼ぶ。
【0032】
次に、
図3を参照して裏面ノズル51A用の温調用DIW供給機構53Aの構成について説明する。温調用DIW供給機構53Aは、複数の処理ユニット16(16-1,16-2,16-3,・・・)の各々に対して1つずつ設けられている。各温調用DIW供給機構53Aの構成は互いに実質的に同一である。
【0033】
基板処理システム1は、HDIWの供給源に接続されたHDIW幹管23と、CDIWの供給源に接続されたCDIW幹管24とを有している。幹管23,24は、1台の基板処理システム1に備えられた複数の処理ユニット16の全てに、HDIWおよびCDIWを供給する。HDIW幹管23には温度センサ25が設けられ、CDIW幹管24には温度センサ26が設けられている。
【0034】
HDIWの供給源およびCDIWの供給源は、基板処理システム1が設置される半導体装置製造工場の工場用力であることが最も一般的である。しかしながら、例えば、HDIWの供給源が、基板処理システム1の構成要素として設けられたHDIWを貯留するタンクであってもよい。タンクには、工場用力としてのHDIWの供給源およびCDIWの供給源から、DIWが供給される。この場合、タンクに接続されるとともにポンプおよびヒータを備えた循環管路がHDIW幹管23に相当する。HDIWの供給源は、工場用力としてのHDIWの供給源およびCDIWの供給源から供給されたDIWを加熱して送り出すホットウオータジェネレータであってもよい。
【0035】
温調用DIW供給機構53Aは、HDIW幹管23から分岐した主管路531(加熱流体ライン)を有する。主管路531には、上流側から順に、流量計532、定圧弁533、開閉弁534、第1合流点535、第2合流点536、第1分岐点537、開閉弁538および第2分岐点539が設けられている。主管路531の下流端は、処理液供給管52内の流路を経て裏面ノズル51Aに接続されている。
【0036】
流量計532および定圧弁533は、主管路531を流れるHDIWの流量を調整する流量調整部を構成する。定圧弁533はパイロットポート(詳細は図示せず)を有する。定圧弁533は、図示しない電空レギュレータからパイロットポートに供給された操作圧力(空気圧)に応じた二次側圧力が実現されるように動作する。定圧弁533のパイロットポートに供給される操作圧力は、流量計532の検出流量が所望の値(設定値)となるように制御装置(
図1の制御装置4またはその下位コントローラ)よりフィードバック制御される。
【0037】
温調用DIW供給機構53Aは、さらに、CDIW幹管24から分岐した希釈液管路540を有している。希釈液管路540は分岐点541において第1分岐希釈液管路542と第2分岐希釈液管路543に分岐している。第1分岐希釈液管路542には絞り544と、開閉弁545とが介設されている。第2分岐希釈液管路543には絞り546と、開閉弁547とが介設されている。図示例では、絞り544、546は逆止弁付きのオリフィス(固定絞り)として構成されている。第1分岐希釈液管路542および第2分岐希釈液管路543はそれぞれ、第1合流点535および第2合流点536において主管路531に接続されている。
【0038】
希釈液管路540の分岐点541よりも上流側には、流量計548および定圧弁549が設けられている。流量計548および定圧弁549は、流量計532および定圧弁533と同様の構成および作用を有する。
【0039】
第1分岐点537において、主管路531から第1ドレンライン550が分岐している。第1ドレンライン550には、上流側から順に、開閉弁551、温度センサ552および絞り553(図示例では逆止弁付きのオリフィス(固定絞り))が設けられている。
【0040】
第2分岐点539において、主管路531から第2ドレンライン554が分岐している。第2ドレンライン554には、上流側から順に、開閉弁555および絞り556(図示例では逆止弁付きのオリフィス(固定絞り))が設けられている。
【0041】
主管路531の第2分岐点539より下流側には、温度センサ557が設けられている。
【0042】
HDIWの供給源およびCDIWの供給源が工場用力である場合、HDIW幹管23を流れるHDIWの温度は例えば70℃であり、CDIW幹管24を流れるCDIWの温度は例えば24℃である。この温度は、外気温、クリーンルーム内温度の変動等の要因により多少変動するので、温度センサ25,26によって監視されている。
【0043】
後述するように、ウエハWの温度調節を主たる目的として、裏面ノズル51AからウエハWの裏面に温調用HDIWが供給される。温調用DIW供給機構53Aは、HDIWのみ、あるいはHDIWとCDIWとの混合液を、裏面ノズル51AからウエハWの裏面に供給することができる。裏面ノズル51AからウエハWに供給されるDIWの温度は、HDIWとCDIWとの混合比(主管路531に流入するHDIWの流量と希釈液管路540(542,543)を介して主管路531に流入するCDIWの流量との比率)を変化させることにより調節することができる。
【0044】
一例として、裏面ノズル51AからウエハWの裏面に供給されるべきDIWの流量が1500ml/min、温度が65℃であるとする。この場合、70℃のHDIWの流量を1340ml/min、24℃のCDIWの流量を160ml/min とすべきことが、計算により容易に求めることができる。
【0045】
制御装置4は、上記の計算を行う。そして制御装置4は、計算により得られたHDIW流量を、流量計532、定圧弁533および図示しない電空レギュレータからなるHDIW流量フィードバック制御系に設定値(目標値)SVとして与える。また同様に、制御装置4は、計算により得られたCDIW流量を、流量計548、定圧弁549および図示しない電空レギュレータからなるCDIW流量フィードバック制御系に設定値(目標値)SVとして与えるとともに、開放すべき分岐希釈液管路(542または543)の開閉弁(545または547)を指定する信号も出力する。
【0046】
なお、上記のHDIW流量フィードバック制御系およびCDIW流量フィードバック制御系において、流量計532,548による検出流量が測定値PVであり、電空レギュレータから定圧弁533,549に与えられる操作圧力が操作量MVである。制御装置4は、設定値SVに対する測定値PVの偏差に応じて、操作量MVを調節する。
【0047】
混合比のレンジ(最大値/最小値の比)を拡大するために、第1分岐希釈液管路542(第1低温流体ライン)の絞り544の開口面積は、第2分岐希釈液管路543(第2低温流体ライン)の絞り546の開口面積よりも大幅に大きく設定されている。従って、第1分岐希釈液管路542の開閉弁545および第2分岐希釈液管路543の開閉弁547のいずれか一方を選択的に開くことにより、定圧弁549単体で実現することができる流量レンジ(最大流量/最小流量の比)より大幅に広い流量レンジを実現し、かつ、高精度で流量調節を行うことができる。
【0048】
分岐希釈液管路(542,543,・・・)の数は図示した2つに限定されるものではなく、3つ以上であってもよい。この場合、各分岐希釈液管路は主管路531に並列に接続され、各分岐希釈液管路には開閉弁(545,547,・・・)および絞り(544,546,・・・)が設けられる。混合比のレンジを拡大する観点からは絞りの開口面積は互いに異なることが好ましい。
【0049】
第1ドレンライン550は、温度が安定する迄の間、DIWをウエハWに供給せずに廃棄するための操作(「捨て打ち」または「ダミーディスペンス」とも呼ぶ)に用いられる。
【0050】
第2ドレンライン554は、裏面ノズル51A、裏面ノズル51Aに連通する処理液供給管52内の流路、およびその近傍の管路に残留するDIWを廃棄するために用いられる。これにより、裏面ノズル51Aからの温調用DIWの吐出を開始した直後に、温度制御されていないDIWが吐出されることを防止することができる。
【0051】
温調用DIW供給機構53Aは、裏面ノズル51AからCDIW(HDIWに混合されていないCDIW)を単独で吐出するように動作させることも可能である。この場合、裏面ノズル51BおよびCDIW供給機構53Bを省略することも可能である。但し、このようにすると、裏面ノズル51およびこれに接続される管路の温度が不安定になるため、裏面ノズル51BおよびCDIW供給機構53Bを、裏面ノズル51Aおよび温調用DIW供給機構53Aと別に設けた方が好ましい。
【0052】
次に、処理ユニット16内でウエハWに対して実行される液処理について
図3~
図8を参照して説明する。ウエハWは、処理対象面である表面が上面となるように、基板保持回転機構30により水平姿勢で保持され、鉛直軸線回りに回転させられる。ウエハWの回転は、一連の工程が終了するまで継続する。
【0053】
なお、以下の液処理の説明において、特に説明が無い場合には、表面ノズル41からウエハWの表面に供給される処理液の着液点は、ウエハWの回転中心あるいはその付近である。表面ノズル41からウエハWの表面に供給される処理液の着液点がウエハ周縁部になる場合、表面ノズル41をスキャンさせる場合にはその都度その旨を記述するものとする。
【0054】
[ウエハ昇温工程]
まず、ウエハWを液処理に適した温度まで昇温させるウエハ昇温工程(基板昇温工程)が実施される。ウエハ昇温工程は、後述する本処理工程(薬液処理工程)で用いられる薬液とは異なる温調用の流体(加熱された流体)をウエハWの裏面に供給することにより行われる。温調用の流体は、裏面ノズル51Aおよび温調用DIW供給機構53Aなどから構成された温調流体供給部(加熱流体供給部)により供給される。
【0055】
温調用の流体は廉価かつ熱容量が大きいことが好ましく、最も好適な温調用流体は水である。しかしながら、温調用の流体は水(DIW)以外の流体、例えばガス(具体的には例えば加熱された窒素ガス)であってもよい。
【0056】
ウエハ昇温工程に先立ち、開閉弁538が閉じられた状態で開閉弁555が開かれ、第2ドレンライン554を介して、分岐点539から裏面ノズル51Aまでの間に残留しているDIWが廃棄される。
【0057】
一方、開閉弁551が開かれた状態で、開閉弁534が開かれ、制御された流量でHDIWが主管路531に流入し、また、開閉弁545または開閉弁547が開かれ、制御された流量でCDIWが合流点535または536を介して主管路531に流入する。このとき、先に説明したように、制御装置4により計算されたHDIW流量が初期設定値としてHDIW流量フィードバック制御系に与えられ、制御装置4により計算されたCDIW流量が初期設定値としてCDIW流量フィードバック制御系に与えられる。
【0058】
主管路531内でHDIWとCDIWとが混合され、温調用DIWが生成される。混合を促進するため、第2合流点536と第1分岐点537との間にインラインミキサー等の混合促進デバイスを設けてもよい。
【0059】
温調用DIWの生成開始直後は、流量、温度ともに不安定な傾向がある。温度の不安定さは、HDIWが流れる前の管路(特に主管路531)が冷えていることに主に起因する。このため、開閉弁538が閉じられた状態で開閉弁551が開かれ、第1ドレンライン550を介して、生成開始直後の温調用DIWが廃棄される(ダミーディスペンス)。第1ドレンライン550を流れる温調用DIWの温度は、温度センサ552により監視される。
【0060】
開閉弁551が開かれてから予め定められた時間が経過して温度が安定したら、制御装置4は、温度センサ552の検出値に基づいて、温度センサ552の検出値が目標温度となるようにHDIW流量の(初期)設定値(SV)およびCDIW流量の(初期)設定値(SV)を補正してもよい。つまり、温度センサ552の検出値が目標値まで上昇しない場合には、例えば、HDIW流量の設定値(SV)を増加させるとともにCDIW流量の設定値(SV)を減少させる補正をして、HDIW流量およびCDIW流量のフィードバック制御を継続することができる。
【0061】
温度センサ552の検出温度が目標値で安定したら、開閉弁551が閉じられるとともに開閉弁538が開かれる。開閉弁555は、第2ドレンライン554を介した残留DIWの排出が終了したら直ちに閉じてもよいし、開閉弁551が閉じると同時に閉じてもよい。これにより裏面ノズル51Aから所定の流量で所定の温度の温調用DIWがウエハWの裏面の中央部(ウエハの回転中心またはその近傍)に向けて吐出される。裏面ノズル51Aからの温調用DIWの吐出流量は例えば1500ml/minとすることができる。
【0062】
ウエハ昇温工程においてHDIWにCDIWが混合されないで裏面ノズル51Aから供給される場合には、まず、開閉弁545,547,538を閉じた状態で、開閉弁551が開かれる。また、開閉弁555を開いて、分岐点539より下流側に滞留している液を予め排出しておく。するとHDIW幹管23から主管路531に流入したHDIWは第1ドレンライン550に流入する。このとき、第1ドレンライン550を流れるHDIW(温調用DIW)の温度を、温度センサ552により監視する。温度センサ552の検出値が上昇して安定したら、開閉弁551,555を閉じ、開閉弁538が開かれる。これにより、裏面ノズル51AからHDIWの吐出が開始される。この時点では、主管路531の分岐点537よりも上流側の部分は十分に暖められているため、裏面ノズル51Aから吐出されるHDIWの温度は、吐出開始後に比較的短時間で安定する。
【0063】
裏面ノズル51Aから温調用DIWが吐出される前に、ウエハWは回転を開始している。
図4Aに示すように、ウエハWの裏面中央部に供給された温調用DIWは、遠心力によりウエハWの周縁部に向かって流れ、ウエハWの外方に離脱する。このとき、ウエハWの裏面が温調用DIWの液膜に覆われる。ウエハWは、温調用DIWにより加熱されることにより昇温する。
【0064】
ウエハ昇温工程におけるウエハWの回転数は、ウエハWの裏面中央部に供給された温調用DIWがウエハWの裏面内を均一に覆うことが保証されるような回転数、例えば200rpm以上の適当な回転数とすることができる。なお、ウエハWの回転数を高くしすぎると、ウエハWの外方に飛散した温調用DIWが回収カップ60に激しく衝突し、多量のDIWのミストがウエハWの周囲に漂うこととなり、好ましくない。また、ウエハWの回転数を高くしすぎると、周速の高いウエハ周縁部が冷えやすくなり、ウエハ温度の面内均一性が損なわれるため、好ましくない。上記のことを考慮して、ウエハ昇温工程におけるウエハWの回転数を設定することが好ましい。
【0065】
なお、ウエハ昇温工程の開始後、ウエハ降温工程の開始前までの間ずっと裏面ノズル51Aから温調用DIWが吐出される。裏面ノズル51Aから吐出される温調用DIWの温度を、温度センサ557により監視することができる。温度センサ557の検出結果に基づいて、前述したようなHDIW流量の設定値(SV)およびCDIW流量の設定値(SV)の補正を行うことができる。この補正は、後述するように裏面ノズル51Aから吐出される温調用DIWの温度を70℃から52℃に低下させるときにも用いることができる。
【0066】
ウエハ昇温工程においては、
図4Bおよび
図4Cに示すように、ウエハWの表面にも温調用DIWを供給してもよい。この場合、温調用DIWをウエハWの表面に供給する前にダミーディスペンスを行い、温調用DIW供給用の表面ノズル41およびこれに接続された管路を十分に暖めておくことが好ましい。
【0067】
図4Bでは、ウエハWの表面の中央部のみに、温調用DIW供給用の表面ノズル41(以下、簡便のため、「表面温調ノズル41A」とも呼ぶ)から比較的大流量で温調用DIWが供給される。ウエハ表面中央部に供給された温調用DIWは、遠心力によりウエハWの周縁部に向かって流れ、ウエハWの外方に離脱(飛散)する。このとき、ウエハWの表面の全域が温調用DIWの液膜に覆われる。ウエハWは、表面に供給された温調用DIWによっても加熱されて昇温する。これにより、
図4Aの場合よりも、ウエハWを迅速に昇温させることができる。
【0068】
図4Cでは、ウエハWの表面周縁部のみに、表面温調ノズル41Aから比較的小流量で温調用DIWが供給される。このとき、例えば、表面温調ノズル41Aを半径方向に往復運動させ、温調用DIWのウエハWの表面上への着液点の半径方向位置を繰り返し変化させてもよい。このとき、ウエハWの表面では、周縁部のリング状の領域のみが温調用DIWの液膜に覆われる。
図4Cの場合には、冷えやすい傾向にあるウエハWの周縁部を局所的に加熱するため、ウエハ面内の温度の均一性をより高めることができる。表面温調ノズル41Aを往復運動させることに代えて、表面温調ノズル41Aを同じ位置(例えば
図4Cに示された位置)に固定した状態で温調用DIWを吐出させてもよい。
【0069】
ウエハ昇温工程においては、
図4A,
図4B,
図4Cのいずれの手順を採用する場合においても、後述の本処理工程におけるウエハ温度(「本処理時ウエハ温度」とも呼ぶ。これは例えば50℃である。)よりも高い温度(例えば70℃)までウエハWを昇温することが好ましい。本処理時ウエハ温度より高い第1温度に一旦昇温させた後に降温させた方が、ウエハWの温度が本処理時ウエハ温度に安定するまでに必要とされる時間を短縮することができることが実際の試験運転によっても確認されている。
【0070】
[液膜形成工程および本処理工程]
次いで、ウエハWの表面全域にプリウエット液の液膜を形成する液膜形成工程と、ウエハWの表面を薬液で処理する本処理工程(薬液処理工程)が行われる。プリウエット液は、後述の本処理工程で用いる薬液と同じ薬液であってもよいし、後述の本処理工程で用いる薬液で置換容易な他の液体(例えばDIW、IPA(イソプロピルアルコール)等)であってもよい。
【0071】
図4A,
図4Bまたは
図4Cのウエハ昇温工程が終了した後も、引き続き裏面ノズル51Aから温調用DIWがウエハWの裏面に吐出され続ける。但し、裏面ノズル51Aから吐出される温調用DIWの温度は、CDIWの混合比を調節することにより本処理時ウエハ温度とほぼ等しい温度(例えば52℃)に低下させる。これにより、ウエハWの温度は、本処理時ウエハ温度に向けて低下してゆく。
【0072】
ウエハ昇温工程において、
図4Aに示すようにウエハWの表面に温調用DIWを供給していない場合には、薬液供給用の表面ノズル41(以下、簡便のため「表面薬液ノズル41B」とも呼ぶ。)から、プリウエット液として、本処理工程で用いる薬液と同じ常温の薬液が供給される(
図5Aを参照)。常温の薬液は、ウエハWを第1回転数で回転させつつ、表面薬液ノズル41BからウエハWの表面の中央部(ウエハの回転中心またはその近傍)に第1吐出流量で供給される。
【0073】
このとき、薬液を速やかにウエハWの表面全域に広げるため、上記第1回転数は、比較的高く(例えば800rpm程度)することが好ましい。また、上記第1吐出流量は比較的大きく(例えば1000ml/min程度)してもよい。第1吐出流量を比較的大きくすることにより、ウエハWの回転数を比較的高めにしても、ウエハWの表面の全域を確実に薬液の液膜で覆うことができる。また、第1吐出流量を比較的大きくすることにより、液膜形成工程開始時に比較的高温(例えば70℃程度)となっているウエハWの表面に供給された薬液が蒸発して乾燥領域が生じることを確実に防止することができる。
【0074】
なお、均一な液膜が形成し難い条件の場合には、フィンガリングの防止のため、特に、上記第1回転数および上記第1吐出流量を大きめに設定することが好ましい。具体的には例えば、ウエハWに対する濡れ性が低い薬液、あるいは、高粘性の薬液が用いられる場合などが考えられる。
【0075】
ウエハ昇温工程において、
図4Bまたは
図4Cに示すようにウエハ表面にも表面温調ノズル41Aから温調用DIWを供給していた場合には、表面温調ノズル41Aから温調用DIWの吐出を停止する。そして、表面薬液ノズル41Bから、プリウエット液として、本処理工程で用いる薬液と同じ常温の薬液がウエハWの表面の中央部に供給することにより液膜形成工程を実行する。この場合も
図5Aに示した状態となる。
【0076】
図4Bまたは
図4Cの状態から液膜形成工程に移行する場合には、ウエハWの表面に形成された凹凸パターンの倒壊防止のため、パターン凹部内から温調用DIWが離脱する前に、薬液をウエハWの表面に供給することが好ましい。
【0077】
このとき、先に供給される第1処理液(ここでは温調用DIW)と後から供給される第2処理液(ここでは薬液)とを以下のようにして切り替えることが好ましい。まず、第1表面ノズル41(ここでは表面温調ノズル41A)から第1処理液がウエハWの表面の回転中心に着液している状態から出発する。この状態から、第1表面ノズル41に近接した位置にある第2表面ノズル41(ここでは表面薬液ノズル41B)から吐出させた第2処理液を、ウエハWの表面の回転中心からやや離れた位置に着液させる。その後、第1処理液の着液点がウエハの回転中心から離れてゆくように、かつ、第2処理液の着液点がウエハの回転中心に近づくように、第1および第2表面ノズル41を連動させて移動させる。第2処理液の着液点がウエハの回転中心に到達したら、第1表面ノズル41からの第1処理液の吐出を停止させる。この場合、ウエハ表面への第1処理液の供給期間の終期と、薬液供給期間の始期とがオーバーラップすることになる。以下、本明細書において、簡便のため、この処理液の切り替え方式を「オーバーラップ(重複)切替方式」とも呼ぶ。
【0078】
このオーバーラップ切替方式は、共通のノズルアーム(42)に担持された第1表面ノズル(41)と第2表面ノズル(41)とを上記の関係が成立するように移動させながら実行してもよい。これに代えて、第1ノズルアーム(42)に担持された第1表面ノズル41と、第1ノズルアーム(42)とは異なる第2ノズルアーム(42)に担持された第2表面ノズル(41)とを上記の関係が成立するように移動させながら実行してもよい。
【0079】
先に供給される第1処理液(ここでは温調用DIW)と後に供給される第2処理液(ここでは薬液)とを同じ表面ノズル41から吐出する構成を採用しても問題がなければ、以下のようにして処理液の切り替えを行うことができる。すなわち、1つの表面ノズル41に第1処理液の供給機構と第2処理液の供給機構とを並列に接続する。そして、第1処理液の供給機構から表面ノズル41への第1処理液の供給を停止するとほぼ同時に第2処理液の供給機構から表面ノズル41への第2処理液の供給を開始する。こうすることにより、処理液のウエハWの表面への供給が途絶えることなく、処理液の切り替えを行うことができる。別々の2つの表面ノズル(第1表面ノズル41及び第2表面ノズル41)を用い、第1表面ノズル41からの第1処理液の吐出を停止した後に直ちに第2表面ノズル41からの第2処理液の吐出を開始してもよい。なお、以下、本明細書において、簡便のため、この処理液の切り替え方式を「順次切替方式」とも呼ぶ。
【0080】
液膜形成工程において、裏面ノズル51AからウエハWの裏面に本処理時ウエハ温度とほぼ等しい温度の温調用DIWを供給することと、表面ノズル41からウエハWの表面に常温の薬液を供給することにより、ウエハWは冷却され、ウエハWの温度は本処理時ウエハ温度まで低下してゆく。
【0081】
なお、液膜形成工程および本処理工程において、表面薬液ノズル41BからウエハWの表面に常温の薬液(例えば25℃)が継続的に供給されるため、裏面ノズル51AからウエハWの裏面に供給される温調用DIWの温度は、本処理時ウエハ温度(例えば50℃)よりやや高い温度(例えば52℃~55℃)に設定される。そうすることにより、ウエハWの温度(ウエハ表面と薬液との界面の温度)を本処理時ウエハ温度に維持することができる。本処理工程においてウエハWの裏面に供給される温調用DIWの温度は、本処理工程においてウエハWの表面に供給される薬液の温度、薬液の流量、薬液の比熱、ウエハWの回転数、チャンバ20内の温度、チャンバ20内のダウンフローの流量等、ウエハWの温度に影響を与えうる要因を考慮して決定することができる。
【0082】
液膜形成工程は、ウエハWの表面全域に薬液の液膜を均一に形成するだけでなく、ウエハWの温度を本処理時ウエハ温度まで下降させて安定させる工程であるので、「安定化工程」と見なすこともできる。この安定化工程では、チャンバ20内の雰囲気を、本処理工程で必要とされる雰囲気に調整してもよい。例えば、FFU21から窒素ガスをチャンバ20内に供給することにより、チャンバ20内の雰囲気を低酸素濃度かつ低湿度にしてもよい。安定化工程では、ウエハWの回転数を上記第1回転数から本処理工程でのウエハWの回転数である第2回転数あるいは第2回転数より高く第1回転数より低い適当な回転数まで低下させていってもよい。
【0083】
ウエハWの温度が本処理時ウエハ温度で安定したら、本処理工程に移行する。本処理工程への移行にあたっては、ウエハWの回転数を上記第2回転数とした状態で、引き続き裏面ノズル51Aから温調用DIW(これは例えば52℃である)を吐出させ、かつ、引き続き表面薬液ノズル41BからウエハWの表面に常温(例えば25℃)の薬液を吐出させる(
図6を参照)。
【0084】
ウエハWの回転数を低くする(第2回転数とする)ことにより、ウエハWの周縁部が冷えやすくなる傾向が緩和される。これにより、ウエハ面内における処理結果の均一性を向上させることができる。また、ウエハWの回転数を低くすることにより、表面薬液ノズル41Bから吐出される薬液の吐出流量を減少させても、液膜を維持することが可能となる。
【0085】
本処理工程において表面薬液ノズル41Bから吐出される薬液の流量である第2吐出流量は、液膜形成工程において表面薬液ノズル41から吐出される薬液の流量である第1吐出流量よりも小さいことが好ましい。これにより、薬液の消費量を減少させることができる。特に高価な薬液が用いられる場合、薬液の消費量を減少させることは、処理コストを低減する上で有益である。なお、第2吐出流量が小さくても、ウエハWと薬液との間の適切な反応が保証される温度にウエハWを維持することができる。
【0086】
表面薬液ノズル41Bとして大流量用の表面薬液ノズルおよび小流量用の表面薬液ノズルを設けてもよい。あるいは、単一の表面薬液ノズル41Bに選択的に切り替え可能な大流量用の薬液供給ラインおよび小流量用の薬液供給ラインを接続してもよい。こうすることにより、表面薬液ノズル41Bから吐出される薬液の流量を第1吐出流量から第2吐出流量に迅速に切り替えることができる。
【0087】
上記第2回転数でウエハWを回転させるとともに上記第2吐出流量で薬液を供給することを所定時間(例えば30秒程度)継続することにより、本処理工程が完了する。なお、本処理工程においては、ウエハWの表面自体が十分に加熱されているため、ウエハWの表面と薬液との界面の温度は十分に高い。このため、ウエハWの表面と薬液との間の反応は十分に進行する。
【0088】
一実施形態において、液膜形成工程の所用時間は本処理工程の所要時間より十分に短く、例えば5秒以下であり、具体的には例えば2~3秒程度である。従って、液膜形成工程における単位時間当たりの薬液の吐出流量(第1吐出流量)が本処理工程における単位時間当たりの薬液の吐出流量(第2吐出流量)よりも大きくても、薬液の使用総量に大きな影響は無い。
【0089】
本処理工程において、表面薬液ノズル41Bを常時ウエハWの中心部の真上に位置させ、薬液が常時ウエハWの中心部に着液するようにしてもよい(表面ノズル固定)。これに代えて、表面薬液ノズル41Bを移動させることにより、ウエハWの表面上への薬液の着液点を移動させながら、本処理工程を実施してもよい(表面ノズルスキャン)。本処理工程における表面薬液ノズル41Bからの薬液の吐出流量(第2吐出流量)を小さくした場合には、ウエハWの表面に乾燥領域が生じないように、表面薬液ノズル41Bのスキャン条件(スキャン幅、スキャン速度、スキャン範囲)を決定することが望ましい。
【0090】
本処理工程において表面ノズルスキャンが行われる場合には、液膜形成工程(安定化工程)において本処理工程と同様の条件で表面ノズルスキャンを行ってもよい。
【0091】
液膜形成工程および本処理工程において、常温で薬液が供給されるため、予め薬液を加熱しておく必要がない。薬液を長時間加熱したままの状態にすると、薬液の蒸発、変質等の薬液の消耗が生じる可能性がある。常温では薬液の消耗が生じないか、消耗が生じたとしても、加熱した場合と比較すると消耗の度合いは大幅に低い。このことは高価な薬液を使用する場合には、処理コスト低減の観点から特に有利である。また、加熱されることにより可燃性あるいは人体に有害な蒸気(ガス)を発生する薬液もある。このような薬液を用いる場合には、薬液を加熱しないことにより安全確保のためにかかるコストを低減することができる。
【0092】
加熱された薬液を予め準備しておくためには、薬液貯留タンク、薬液貯留タンクに接続された循環管路、および循環管路に設けられたポンプ、ヒータ等の機器類を備えた加熱薬液供給系が必要となる。これに対して、常温の薬液を供給するための薬液供給系は加熱薬液供給系と比較して必要とされる構成部品が少なく、このことは基板処理装置のコストの低減に寄与する。
【0093】
なお、薬液の供給温度は常温に限定されるものではなく、薬液の消耗が問題とならない程度の温度であれば常温より高い温度であってもよい。
【0094】
本実施形態に係る技術が最も効果を発揮する工程の一つとして、半導体製造工程のBEOL工程に含まれる有機薬液処理工程が例示される。この有機薬液処理工程では、高価な有機系薬液が加熱した状態でウエハに供給される。近年のパターンの微細化に伴い有機系薬液に求められる清浄度が高まっており、一旦ウエハに供給した有機系薬液を回収して再利用することができなくなってきている。このため、有機系薬液を使い捨てにすることが必要となっている。そして、処理コストの低減のために、ウエハ1枚を処理するために必要な薬液の量の削減が求められている。本実施形態では、ウエハの裏面を温調用DIWで加熱しながら薬液処理工程(本処理工程)を行っているので、ウエハの昇温およびウエハ温度の面内均一性を確保するために、加熱された有機薬液を大流量で供給する必要が無い。なお、ウエハの裏面を温調用DIWで加熱していない従来技術では、加熱された有機薬液を大流量(例えば1500ml/min程度)で供給している。これにより、薬液とウエハとの反応に必要な温度にウエハ全体を速やかに加熱するとともに、ウエハの周縁部の温度が低下する傾向を緩和している。BEOL工程に含まれる有機薬液処理工程の場合、本実施形態によれば、有機薬液の吐出流量は、有機薬液を用いて液膜形成工程を実行する場合でも例えば150ml/min程度であり、薬液処理工程(本処理工程)ではそれと同等かそれよりもさらに少ない。つまり、本実施形態によれば、有機薬液の使用量を従来技術の1/10程度に削減することができる。また、本実施形態では、薬液とウエハとの反応に必要な温度の維持はウエハWの裏面を温調用DIWで加熱することにより行っているため、上述したように有機薬液を予め加熱しておく必要が無い。このため、高価な有機薬液の消耗を抑制することができ、ひいては有機薬液の使用量を削減することができる。
【0095】
なお、表面薬液ノズル41Bおよびこれに接続された薬液供給機構(処理流体供給機構)43により薬液供給部が構成される。
【0096】
[液膜形成工程および本処理工程の変形実施形態]
図4Bまたは
図4Cのウエハ昇温工程を採用した場合であってかつ、温調用DIWが薬液により容易に置換されるものである場合(例えばDIWと薬液とが相溶性がある場合)、ウエハ昇温工程においてウエハWの表面に供給された温調用DIWをプリウエット液として用いることができる。裏面ノズル51AからウエハWの裏面に供給される温調用DIWの吐出流量および温度の推移は、先に説明した
図4Aのウエハ昇温工程を採用した場合と同じでよい。
【0097】
図4Bのウエハ昇温工程を採用した場合には、ウエハ昇温工程の終了後、表面温調ノズル41AをウエハWの中心部の真上に位置させ続けたまま、表面温調ノズル41Aから吐出される温調用DIWの温度を、ウエハ昇温工程における第1温度(例えば70℃)からこれより低い第2温度(例えば52℃)に低下させる(
図5Bを参照)。これにより、ウエハWの温度が本処理時ウエハ温度(例えば50℃)に近づくように低下してゆく。
【0098】
図4Cのウエハ昇温工程を採用した場合には、ウエハ昇温工程の終了後、表面温調ノズル41AをウエハWの中心部の真上に移動させ、表面温調ノズル41Aから吐出される温調用DIWの温度を、第2温度(例えば52℃)に低下させればよい(
図5Cを参照)。
【0099】
上述したいずれの場合においても、温調用DIWがプリウエット液として用いられる。つまりこの場合、ウエハ昇温工程が液膜形成工程を兼ねているものと見なすことができ、表面温調ノズル41Aから第2温度(例えば52℃)で温調用DIWを吐出する工程を安定化工程と見なすこともできる。
【0100】
表面温調ノズル41Aに温調用DIWを供給する処理流体供給機構43は、裏面ノズル51Aに温調用DIWを供給する温調用DIW供給機構53Aと同一の構成(つまり、HDIWとCDIWとの混合比を調整することにより温度を調節する構成)とすることができる。
【0101】
ウエハWの温度が本処理時ウエハ温度で安定したら、表面温調ノズル41Aからの温調用DIWの吐出を停止し、表面薬液ノズル41Bからの薬液の吐出を開始し、本処理工程を開始する(
図6を参照)。この場合、前述したオーバーラップ切替方式を用いて、供給される処理液を温調用DIWから薬液へと切り替えてもよい。順次切替方式を用いて供給される処理液を温調用DIWから薬液へと切り替えてもよい。
【0102】
ウエハWの温度が本処理時ウエハ温度で安定するやや前の時点に、表面温調ノズル41Aからの温調用DIWの吐出を停止し、表面薬液ノズル41Bからの薬液の吐出を開始してもよい。
【0103】
本処理工程において、表面薬液ノズル41Bから吐出された薬液の着液点は、ウエハ表面の回転中心またはその近傍とすることができる。本処理工程中において、表面薬液ノズル41Bをスキャン動作させることにより、薬液の着液点を移動させてもよい。
【0104】
上述した変形実施形態においても、本処理工程におけるウエハWの回転数(第2回転数)を液膜形成工程におけるウエハWの回転数(第1回転数)より小さくすることが好ましい。これによりウエハWの周縁部が冷えやすくなる傾向を軽減することができる。
【0105】
上述した変形実施形態においても、本処理工程における表面薬液ノズル41Bからの薬液の吐出流量は前述した実施形態における第2吐出流量と同じでよい。
【0106】
表面薬液ノズル41Bから所定時間の間薬液をウエハWの表面に供給することにより本処理工程が完了する。
【0107】
[ウエハ降温工程(基板降温工程)]
ウエハ降温工程は、本処理工程(薬液処理工程)で用いられる薬液とは異なる温調用(冷却用)の流体をウエハWの裏面に供給することにより行われる。温調用の流体は廉価かつ熱容量が大きいことが好ましく、最も好適な温調用流体はCDIWである。
【0108】
ウエハ降温工程は以下のように実行される。本処理工程が完了した後、裏面ノズル51Aからの温調用DIWの吐出を停止し、裏面ノズル51BからCDIWをウエハWの裏面に吐出する。これにより、ウエハWの温度が低下し、ウエハW表面の除去対象物(あるいは反応対象物)と薬液との間の反応速度が低下する。裏面ノズル51BからのCDIWの吐出はリンス工程が終了するまで継続する。
【0109】
[リンス工程]
裏面ノズル51BからのCDIWの吐出と並行して、ウエハWの表面にはリンス液供給用の表面ノズル41からリンス液が供給され、ウエハ表面にリンス工程が施される(
図7参照)。なお、ウエハWの温度が十分に低下していれば、裏面ノズル51BからのCDIWの吐出を停止してもよい。
【0110】
リンス液としてDIWを使用することができない場合、例えばIPA等の有機溶剤をリンス液として用いる場合には、以下の手順によりリンス工程を行うことができる。
【0111】
<IPAリンスの第1の手順>
第1の手順では、表面薬液ノズル41Bからの薬液の供給を停止し、予め定められた時間(例えば数秒)振り切りによりウエハWの表面から薬液を除去し、その後に、IPA供給用の表面ノズル41(以下、簡便のため「表面IPAノズル41C」とも呼ぶ。)からIPAの吐出を開始する。そして、表面IPAノズル41Cから予め定められた時間だけIPAをウエハWに供給することにより、ウエハWの表面のリンス処理を行う。
【0112】
<IPAリンスの第2の手順>
第2の手順では、前述したオーバーラップ切替方式を用いて、表面薬液ノズル41Bから薬液を吐出している状態から、表面IPAノズル41CからIPAを吐出している状態に切り替える。そして、表面IPAノズル41Cから予め定められた時間だけIPAをウエハWに供給することにより、ウエハWの表面のリンス処理を行う。
【0113】
[乾燥工程]
上記第1の手順または第2の手順によるIPAリンスを実行した後、乾燥処理工程を行う。この乾燥処理は、乾燥用ガス例えば窒素ガス等の低酸素濃度かつ低湿度のガスをウエハWの表面に供給しながら、例えば、表面IPAノズル41Cから吐出されるIPAのウエハ表面上への着液点を、ウエハWの中心部から周縁部に移動させることにより行うことができる(
図8参照)。乾燥用ガスは、乾燥用ガス供給用の表面ノズル41(以下、簡便のため「表面ガスノズル41D」とも呼ぶ。)から吐出することができ、この場合、ウエハ表面への乾燥用ガスの吹きつけ位置が、表面IPAノズル41CからのIPAのウエハ表面上への着液点よりもやや半径方向内側に維持されるように、表面IPAノズル41Cと表面ガスノズル41Dとを関連付けて移動させることが好ましい。
【0114】
乾燥工程は、上述したものに限定されるものではなく、上記の(IPAリンスの)第1の手順および第2の手順を行った後、単に表面IPAノズル41CからのIPAの吐出を停止し、振り切り乾燥によりウエハWを乾燥させることも可能である。
【0115】
リンス液としてDIWを使用する場合には、ウエハWの表面にCDIWを供給するための表面ノズル41(以下、簡便のため「表面リンスノズル41E」とも呼ぶ。)を用いて、以下の手順によりリンス工程を行うことができる。
【0116】
乾燥工程時には、裏面ノズル51BからのCDIWの吐出を停止してもよい。また、乾燥を促進するために裏面ノズル51AからHDIWを吐出してもよい。
【0117】
<DIWリンスの手順>
表面薬液ノズル41Bおよび表面リンスノズル41Eを用いて、前述したオーバーラップ切替方式により、ウエハWの表面に薬液が供給されている状態から常温のDIW(CDIW)が供給されている状態に切り替える。表面リンスノズル41EからCDIWを予め定められた時間だけ供給することにより(
図7参照)、DIWリンスが完了する。
【0118】
その後、表面リンスノズル41Eおよび表面IPAノズル41Cを用いて、前述したオーバーラップ切替方式によりウエハWの表面にCDIWが供給されている状態からIPAが供給されている状態に切り替える。表面IPAノズル41CからIPAを予め定められた時間だけ供給することにより、ウエハWの表面上にあるCDIWがIPAに置換される。
【0119】
その後、前述した乾燥工程と同様の乾燥工程が行われる。
【0120】
なお、リンス液としてDIWを使用することができない場合、薬液処理工程の後のウエハWの冷却は主にウエハWの裏面に供給されるCDIWにより行われる。高価なIPAを大流量で供給することは通常は行わないため、ウエハWの表面に供給されるIPAのウエハWの冷却に対する寄与度は小さい。リンス液としてDIWを使用することができる場合には、ウエハWの裏面だけでなくウエハWの表面にも大流量でCDIWを供給することにより、ウエハWの冷却を迅速に行うことができる。
【0121】
乾燥工程の終了により、1枚のウエハWに対する一連の液処理が終了する。その後、ウエハWは処理ユニット16から搬出される。
【0122】
乾燥工程の開始時にウエハWの表面に存在している処理液はIPAに限定されるものではなく、ウエハWの表面のパターンの倒壊を防止しうる程度の低表面張力(少なくともDIWより低い表面張力)を有するIPA以外の溶剤であってもよい。乾燥工程の開始時にウエハWの表面に存在している処理液は、DIWより高揮発性の液体であることが好ましい。
【0123】
上記の実施形態によれば、ウエハWの裏面に温調用DIW(HDIW、CDIWあるいはこれらの混合液)を供給することによりウエハWの表面と薬液との接触界面の温度を制御している。このため、高温でウエハWの表面と反応させるべき薬液を常温で供給しても意図した反応を実現することができる。その結果として、薬液消耗の防止、薬液消費量の削減、面内均一性の高い処理等を実現することが可能となる。
【0124】
図9を参照して、ウエハ昇温工程からリンス工程までの間のウエハ温度の推移の一例について説明する。ウエハ昇温工程(S1)では、ウエハWの裏面(BACK)に温調液として70℃のHDIWが供給される。ウエハ昇温工程(S1)開始から10秒経過後に、ウエハWの温度は約70℃に達する。その後、液膜形成工程(S2)では、ウエハWの裏面に温調液として52℃のHDIWが供給され、ウエハWの表面(FRONT)に常温(25℃)の薬液(CHM)が供給される。液膜形成工程(S2)開始から約3秒後にウエハ温度が本処理時ウエハ温度である50℃で安定する。その後、本処理工程(S3)すなわち薬液処理工程では、引き続きウエハWの裏面に52℃のHDIWが供給され、ウエハWの表面に常温(25℃)の薬液(CHM)が供給される。但し、先にも述べたように、本処理工程(S3)におけるウエハ回転数および薬液吐出流量は、液膜形成工程(S2)時よりも低くされる。本処理工程(S3)から概ね17秒間にわたって行われる。その後、ウエハ降温工程(S4)では、ウエハWの裏面に24℃のCDIWが供給され、約2秒で、ウエハWの温度が常温まで低下する。
図9の例ではウエハ降温工程(S4)の開始とともにウエハWの表面にリンス液として24℃のCDIWが供給される。このCDIWは、ウエハWの温度を低下させる冷却液であるとともに、ウエハWの表面の薬液を洗い流すリンス液でもある。ウエハWの温度が常温で安定した後も引き続きウエハWの表面に24℃のCDIWがリンス液として供給され、リンス工程(S5)が行われる。
図9の例では、ウエハ降温工程(S4)もリンス工程(S5)の一部に含まれている。
【0125】
上記の実施形態では、異なる処理液をそれぞれ別の表面ノズル41により供給していたが、これに限定されるものではない。例えば、同じノズルにより供給しても問題が生じない2種類以上の処理液を1つの表面ノズル41から供給しても構わない。また、上記の実施形態では、裏面ノズル51A,51BからはウエハWの温度調節用のDIWだけが供給されていたが、裏面ノズル51Aから他の処理液例えば薬液も供給することができるような構成としても構わない。なお、同じノズルから複数種類の処理液を供給する場合、切替弁(あるいは複数の開閉弁)により接続切替えが可能な複数の処理液供給機構が1つの表面ノズル41に並列に接続される。このような構成は公知であるため、本明細書では詳細な説明は行わない。
【0126】
次に、
図10を参照して、基板処理システム1内のHDIWおよびCDIWの配管系統の一例について簡単に説明する。基板処理システム1の処理ステーション3は、上層3Aおよび下層3Bからなる2層構造を有する。
図10において、符号71は工場用力としてのHDIW供給源、符号72は工場用力としてのCDIW供給源を表している。
【0127】
HDIW供給源71には、HDIW管路711の上流端が接続されている。HDIW管路711は、分岐点712において、上層3A用の分岐管路713Aと、下層3B用の分岐管路713Bとに分岐する。分岐点712の上流側において、HDIW管路711には開閉弁710および温度センサ716が設けられている。分岐管路713A,713Bは、合流点714において再び合流して1つのHDIW管路711となっている。HDIW管路711の下流端は、工場ドレンライン(DR)に接続されている。合流点714の下流側には背圧弁715が設けられている。
【0128】
CDIW供給源72には、CDIW管路721の上流端が接続されている。CDIW管路721は、分岐点722において、上層3A用の分岐管路723Aと、下層3B用の分岐管路723Bとに分岐する。分岐点722の上流側において、CDIW管路721にはCO2バブラー720および温度センサ726が設けられている。分岐管路723A,723Bは、合流点724において再び合流して1つのCDIW管路721となっている。CDIW管路721の下流端は、工場ドレンライン(DR)に接続されている。分岐管路723A,723Bの最下流部(最も下流側の処理ユニット16への接続点よりも下流側の部分を意味する)には、圧力制御のためのオリフィス727A,727B(固定絞り)が設けられている。
【0129】
分岐管路713A(713B)は、
図3の流体回路図におけるHDIW幹管23に相当する。分岐管路723A(723B)は、
図3の流体回路図におけるCDIW幹管24に相当する。つまり、
図10の例では、分岐管路713A(713B)から取り出されたHDIWと分岐管路723A(723B)から取り出されたCIWDとが、温調用DIW供給機構53A(
図10では破線のボックスで示す)により混合され、裏面ノズル51Aに供給される。
図10の温調用DIW供給機構53Aの構成は、
図2の温調用DIW供給機構53Aの構成と同一である。温調用DIW供給機構53A、各処理ユニット16に一つずつ設けられているが、図面の簡略化のため
図10には1つだけが示されている。
【0130】
図11は、基板処理システム1内のHDIW配管系統の他の例を示している。
図11では、CDIW配管系統の記載は省略している。この例では、工場用力としてのHIDW供給ライン801に、HDIW管路803の上流端が接続されている。HDIW管路803は、分岐点804において、上層3A用の分岐管路805Aと、下層3B用の分岐管路805Bとに分岐する。分岐点804の上流側において、HDIW管路803には開閉弁817および温度センサ816が設けられている。分岐管路805A,805Bは、合流点806において再び合流して1つのHDIW管路803となっている。合流点806の下流側において、HDIW管路803には開閉弁807および逆止弁808が設けられている。HDIW管路803の下流端は、工場用力系の一部としてのHIDW戻りライン802に接続されている。合流点806と開閉弁807との間において、HDIW管路803からドレン管路809が分岐している。ドレン管路809には開閉弁810が設けられている。基板処理システム1の通常運転時には開閉弁807,817が開き、開閉弁810は閉じている。メンテナンスなどを行う目的で、基板処理システム1の運転を停止する場合には、開閉弁807,817が閉じられ、開閉弁810が管路内のDIWを排出するために開かれる。この例では、
図10の例と異なり、HDIW管路803の下流端部には背圧弁は設けられていない。
【0131】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0132】
処理対象の基板は、半導体ウエハ(ウエハW)に限定されるものではなく、ガラス基板、セラミック基板等の半導体装置製造の分野で用いられる任意の基板であってもよい。
【符号の説明】
【0133】
W 基板
S1 基板昇温工程
S2 液膜形成工程
S3 薬液処理工程
S4 基板降温工程