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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】切削装置のチャックテーブル
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231127BHJP
【FI】
H01L21/78 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019193653
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021068824
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 智洋
(72)【発明者】
【氏名】有福 法久
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 博
(72)【発明者】
【氏名】伏田 正康
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-054256(JP,A)
【文献】特開2015-153868(JP,A)
【文献】特開2013-229403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する複数の分割予定ラインが形成された板状の被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削して複数のチップに分割する切削ユニットと、該チャックテーブルが固定されるテーブルベースと、を備える切削装置に用いられるチャックテーブルであって、
通気性を有する硬質板と、該硬質板の表面側に積層して固定されるラバープレートと、を有する本体部と、
該本体部の該ラバープレートの保持面と該硬質板の裏面とが露出するように該本体部の外周に嵌合するとともに該テーブルベースに固定されることで該テーブルベースとの間に該本体部を挟んで着脱自在に固定する枠体部と、
を備え、
該本体部の該ラバープレートは、
被加工物を保持する該保持面と、
該保持面で支持する被加工物の該分割予定ラインに対応する切削ブレード用逃げ溝と、
該切削ブレード用逃げ溝で区画された領域に形成された吸引穴と、
を備え、
該テーブルベースからの負圧が該硬質板を介して該ラバープレートの該吸引穴に伝達される、
切削装置のチャックテーブル。
【請求項2】
該テーブルベースは、
該本体部の該硬質板の裏面側を底面で支持する凹部と、
該凹部の底面から下方に凹形状に形成される負圧伝達室と、
を有し、
該本体部が該凹部の底面上に載置された状態で該本体部を該凹部内に収納し、該枠体部が固定されることで該負圧伝達室が密封される、
請求項1に記載の切削装置のチャックテーブル。
【請求項3】
該硬質板は、通気性のある硬質樹脂またはポーラスセラミックスである、
請求項1または2に記載の切削装置のチャックテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置のチャックテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
CSP(Chip Scale Package)やQFN(Quad Flat Non-leaded package)等の樹脂パッケージ基板を切削ブレードで切削して分割する切削装置が知られている。樹脂パッケージ基板を各チップに分割する切削加工においては、分割予定ラインに合わせて形成された逃げ溝と各チップを吸引保持する吸引口とを有するチャックテーブルに被加工物である樹脂パッケージ基板を固定して切削するジグダイサーが用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。このようなチャックテーブルを用いる場合、粘着テープで環状フレームに固定された被加工物を加工する従来の方法に比べて、消耗品である粘着テープが不要になるため製造コストを抑えられるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-093335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のチャックテーブルを用いる場合、チップサイズの変更等のデザイン変更が発生した場合、変更したデザインに合わせたチャックテーブルを作成する必要があるため、チャックテーブルを製造するコストおよび全体の製造期間が増加する問題があった。また、上記のチャックテーブルは、逃げ溝および吸引穴が形成されたSUS(Steel Use Stainless)等の金属板と、被加工物が載置される領域において金属板に貼られる被加工物を保護するためのラバーシートとからなる。しかしながら、SUS等の金属加工は難しいため、専門業者に依頼する必要がある。これにより、さらに、コスト削減および納期短縮が難しくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工コストを削減し、納期を短縮することができる切削装置のチャックテーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置のチャックテーブルは、互いに交差する複数の分割予定ラインが形成された板状の被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削して複数のチップに分割する切削ユニットと、該チャックテーブルが固定されるテーブルベースと、を備える切削装置に用いられるチャックテーブルであって、通気性を有する硬質板と、該硬質板の表面側に積層して固定されるラバープレートと、を有する本体部と、該本体部の該ラバープレートの保持面と該硬質板の裏面とが露出するように該本体部の外周に嵌合するとともに該テーブルベースに固定されることで該テーブルベースとの間に該本体部を挟んで着脱自在に固定する枠体部と、を備え、該本体部の該ラバープレートは、被加工物を保持する該保持面と、該保持面で支持する被加工物の該分割予定ラインに対応する切削ブレード用逃げ溝と、該切削ブレード用逃げ溝で区画された領域に形成された吸引穴と、を備え、該テーブルベースからの負圧が該硬質板を介して該ラバープレートの該吸引穴に伝達されることを特徴とする。
【0007】
また、切削装置のチャックテーブルにおいて、該テーブルベースは、該本体部の該硬質板の裏面側を底面で支持する凹部と、該凹部の底面から下方に凹形状に形成される負圧伝達室と、を有し、該本体部が該凹部の底面上に載置された状態で該本体部を該凹部内に収納し、該枠体部が固定されることで該負圧伝達室が密封されてもよい。また、該硬質板は、通気性のある硬質樹脂またはポーラスセラミックスであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、加工コストを削減し、納期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の加工対象の被加工物の外観を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示された被加工物を別の方向から視た外観を示す斜視図である。
図4図4は、図1に示された切削装置のチャックテーブルおよびテーブルベースの構成例を示す分解斜視図である。
図5図5は、図1に示された切削装置による切削加工の一状態を示す模式図である。
図6図6は、図1に示された切削装置のチャックテーブルの本体部を交換する一状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削装置1のチャックテーブル10について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態に係る切削装置1の全体構成および加工対象の被加工物100の構成について説明する。図1は、実施形態に係る切削装置1の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置1の加工対象の被加工物100の外観を示す斜視図である。図3は、図2に示された被加工物100を別の方向から視た外観を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態の切削装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、切り込み送り方向がZ軸方向である。
【0012】
切削装置1は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する装置である。被加工物100は、図2に示すように、絶縁性の絶縁板および絶縁板の内部に埋設され導電性の金属により構成されたグランドラインを有し、表面102および裏面103に電極や各種配線が形成された配線基板101を備えたパッケージ基板である。被加工物100は、配線基板101の表面102に形成される複数の分割予定ライン104と、格子状に交差する複数の分割予定ライン104によって区画された各領域に形成されるデバイス105とを有する。
【0013】
被加工物100は、図3に示すように、配線基板101の裏面103に、各デバイス105と各デバイス105にワイヤボンディングにより形成された不図示のワイヤとを封止する封止剤106が形成される。封止剤106は、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、またはポリイミド樹脂等により構成されたいわゆるモールド樹脂である。被加工物100は、配線基板101の裏面103に封止剤106が形成されていることで、凹凸を有している。被加工物100は、各分割予定ライン104に沿って分割されて、個々のデバイス105を含む複数のチップ107に分割される。
【0014】
被加工物100の、分割予定ライン104の数、分割予定ライン104同士の間隔、およびデバイス105の数等は、実施形態に限定されない。すなわち、品番が異なる被加工物100は、分割予定ライン104の数、分割予定ライン104同士の間隔、およびデバイス105の数等が互いに異なる。
【0015】
切削装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と、テーブルベース50と、切削ユニット70と、給水ユニット75と、撮像ユニット80と、X軸移動ユニット91と、Y軸移動ユニット92と、Z軸移動ユニット93と、回転移動ユニット94と、を備える。切削装置1は、切削ユニット70を2つ備えた、すなわち2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。切削装置1は、さらに、切削後の被加工物100を洗浄する洗浄ユニット、切削前後の被加工物100を収容するカセット、被加工物100をカセットとチャックテーブル10と洗浄ユニットとの間で搬送する搬送ユニット等を備えていてもよい。切削装置1の各構成要素は、不図示のコンピュータである制御ユニットによって制御される。
【0016】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面31で吸引保持する。チャックテーブル10は、粘着テープ等越しに被加工物100を吸引保持するものではなく、被加工物100を直接保持面31に吸引保持するとともに、被加工物100から個々に分割されたチップ107も吸引保持するものである。チャックテーブル10は、実施形態において、被加工物100の外形より大きい矩形状の保持面31を有する。チャックテーブル10は、テーブルベース50に対して着脱自在である。チャックテーブル10は、テーブルベース50の吸引源連通穴53を介して、吸引源60(図5参照)と接続される。チャックテーブル10は、吸引源60によって吸引されることで、保持面31に載置された被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10の詳細な構成については、後述にて説明する。
【0017】
テーブルベース50は、チャックテーブル10が固定される。テーブルベース50は、チャックテーブル10が嵌合する矩形状の皿体である。テーブルベース50は、実施形態において、切削ユニット70の下方の加工領域と、切削ユニット70の下方から離間して被加工物100が搬入出される領域とに亘って、X軸移動ユニット91によってX軸方向に移動自在であるX軸移動基台4に設置される。テーブルベース50は、実施形態において、X軸移動ユニット91によってX軸方向に移動自在に設けられた回転移動ユニット94にZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に支持される。なお、X軸移動基台4の上面は、水平方向に沿って平坦に形成されている。テーブルベース50の詳細な構成については、後述にて説明する。
【0018】
切削ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削して複数のチップ107に分割する切削ブレード71を着脱自在に装着した切削手段である。一方の切削ユニット70は、Y軸移動ユニット92およびZ軸移動ユニット93を介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の一方の柱部に設けられる。他方の切削ユニット70は、Y軸移動ユニット92およびZ軸移動ユニット93を介して、支持フレーム3の他方の柱部に設けられる。なお、支持フレーム3は、一対の柱部の上端同士を水平梁により連結してなる。各々の切削ユニット70は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、Y軸移動ユニット92によりY軸方向に移動自在、かつ、Z軸移動ユニット93によりZ軸方向に移動自在である。切削ユニット70は、Y軸移動ユニット92およびZ軸移動ユニット93により、チャックテーブル10の保持面31の任意の位置に切削ブレード71を位置付け可能である。切削ユニット70は、切削ブレード71と、スピンドルハウジング72と、スピンドル73と、を備える。
【0019】
切削ブレード71は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。切削ブレード71は、実施形態において、いわゆるハブブレードであり、スピンドル73に装着される円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設される所定厚みの円環状の切り刃とを備える。円形基台は、導電性の金属で構成される。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなる。
【0020】
スピンドルハウジング72は、後述のZ軸移動ユニット93によってZ軸方向に移動自在なZ軸移動基台6上に設置される。一方の切削ユニット70のスピンドルハウジング72は、Y軸移動ユニット92およびZ軸移動ユニット93を介して、装置本体2から立設した門型の支持フレーム3の一方の柱部側に支持される。他方の切削ユニット70のスピンドルハウジング72は、Y軸移動ユニット92およびZ軸移動ユニット93を介して、支持フレーム3の他方の柱部側に支持される。各々のスピンドルハウジング72は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、Y軸移動ユニット92によりY軸方向に移動自在、かつ、Z軸移動ユニット93によりZ軸方向に移動自在である。
【0021】
スピンドル73は、スピンドルハウジング72内に軸心回りに回転自在に設けられる。スピンドル73は、不図示のスピンドルモータ等が駆動することにより回転する。スピンドル73は、先端部に切削ブレード71が装着される。切削ユニット70のスピンドル73および切削ブレード71の軸心は、実施形態において、Y軸方向と平行な方向に設定される。
【0022】
給水ユニット75は、切削ユニット70による切削加工中に、被加工物100および切削ブレード71に加工水を供給する。給水ユニット75は、不図示の給水源と、給水ノズル76と、を含む。給水源は、例えば、加工水を貯留するタンクと、タンクの加工水を給水ノズル76に供給するポンプと、を含む。給水ノズル76は、切削ユニット70と一体的に移動するように、切削ユニット70に固定されている。給水ノズル76は、給水源から供給される加工水を、被加工物100および切削ブレード71に供給する。
【0023】
撮像ユニット80は、一方の切削ユニット70と一体的に移動するように、一方の切削ユニット70に固定されている。撮像ユニット80は、チャックテーブル10に保持された被加工物100の表面102の所定領域を撮像する撮像素子を含む。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子またはCMOS(Complementary MOS)撮像素子等である。撮像ユニット80は、例えば、チャックテーブル10に保持された被加工物100と切削ブレード71との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の撮像画像を撮像し、取得した撮像画像を制御ユニット等に出力する。
【0024】
X軸移動ユニット91は、チャックテーブル10と、切削ユニット70とを、加工送り方向であるX軸方向に相対的に移動させるユニットである。X軸移動ユニット91は、実施形態において、チャックテーブル10が固定されるテーブルベース50および回転移動ユニット94を、X軸移動基台4を介してX軸方向に移動させる。X軸移動ユニット91は、例えば、X軸方向に平行な軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータと、テーブルベース50が設置されるX軸移動基台4をX軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールと、を備える。X軸移動ユニット91のガイドレールは、実施形態において、切削装置1の装置本体2に設置されている。
【0025】
Y軸移動ユニット92は、チャックテーブル10と、切削ユニット70とを、割り出し送り方向であるY軸方向に相対的に移動させるユニットである。Y軸移動ユニット92は、実施形態において、切削ユニット70およびZ軸移動ユニット93をY軸方向に移動させる。Y軸移動ユニット92は、例えば、Y軸方向に平行な軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータと、Y軸移動基台5をY軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールと、を備える。Y軸移動ユニット92のガイドレールは、実施形態において、切削装置1の支持フレーム3の一対の柱部の上端同士を連結する水平梁上に設置されている。
【0026】
Z軸移動ユニット93は、チャックテーブル10と、切削ユニット70とを、切り込み送り方向であるZ軸方向に相対的に移動させるユニットである。Z軸移動ユニット93は、実施形態において、各々の切削ユニット70に対応して2つ設けられる。各々のZ軸移動ユニット93は、実施形態において、各々の切削ユニット70を支持する各々のZ軸移動基台6をZ軸方向に移動させる。Z軸移動ユニット93は、例えば、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじと、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータと、切削ユニット70をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールと、を備える。Z軸移動ユニット93のガイドレールは、実施形態において、Y軸移動基台5上に設置されている。
【0027】
回転移動ユニット94は、チャックテーブル10と、切削ユニット70とを、Z軸方向と平行な軸心回りに回転させるユニットである。回転移動ユニット94は、実施形態において、テーブルベース50を介してチャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転させる。回転移動ユニット94は、テーブルベース50が設置されるX軸移動基台4とともにX軸方向に加工送りされる。
【0028】
次に、実施形態に係るチャックテーブル10およびテーブルベース50の詳細な構成について説明する。図4は、図1に示された切削装置1のチャックテーブル10およびテーブルベース50の構成例を示す分解斜視図である。図5は、図1に示された切削装置1による切削加工の一状態を示す模式図である。図6は、図1に示された切削装置1のチャックテーブル10の本体部11を交換する一状態を示す図である。
【0029】
図4に示すように、チャックテーブル10は、本体部11と、枠体部40と、に分解可能である。また、チャックテーブル10は、テーブルベース50に対して着脱自在である。本体部11は、被加工物100が保持されるチャックテーブル10の保持面31を有する。本体部11は、硬質板20と、ラバープレート30と、を有する。
【0030】
硬質板20は、被加工物100の外形より大きい矩形状の板である。硬質板20は、通気性を有する。硬質板20は、例えば、通気性を有する硬質樹脂またはポーラスセラミックスである。通気性を有する硬質樹脂とは、例えば、発泡ウレタン、発泡ポリエチレン(PE:Polyethylene)、発泡ポリプロピレン(PP:Polypropylene)等の連続した気泡を有する連泡性を有しかつ発塵性が低い材質の樹脂である。硬質板20は、フィラー等を添加して熱収縮を抑制した硬質樹脂であってもよい。
【0031】
ラバープレート30は、硬質板20とほぼ同形の矩形状の板である。ラバープレート30は、硬質板20の表面側に接着材等を介して積層して固定される。ラバープレート30は、例えば、非通気性のウレタンゴム等の樹脂である。ラバープレート30は、保持面31と、切削ブレード用逃げ溝32と、吸引穴33と、を備える。保持面31は、被加工物100を保持するラバープレート30の表面側の面である。切削ブレード用逃げ溝32は、ラバープレート30の保持面31に格子状に交差して形成される複数の溝である。切削ブレード用逃げ溝32は、保持面31で支持する被加工物100の分割予定ライン104に対応する。吸引穴33は、切削ブレード用逃げ溝32で区画された領域に形成される貫通穴である。
【0032】
枠体部40は、本体部11の外周に嵌合する矩形枠状の蓋体である。枠体部40は、テーブルベース50に本体部11を着脱自在に固定する。図5に示すように、枠体部40とテーブルベース50との間に挟まれて固定された本体部11は、ラバープレート30の保持面31と硬質板20の裏面21とが枠体部40の開口41から露出する。図4に示すように、枠体部40は、実施形態において、4つの角部にねじ用貫通穴42と、ねじ用貫通穴42に螺合するねじ43と、を有する。ねじ用貫通穴42は、テーブルベース50のねじ穴54に対応する。
【0033】
テーブルベース50は、チャックテーブル10が固定される。テーブルベース50は、上面から下方に凹形状に形成される凹部51を有する矩形状の皿体である。テーブルベース50の凹部51の底面上には、硬質板20の裏面21側が支持される。チャックテーブル10の本体部11は、凹部51の底面上に載置された状態で、凹部51内に収容される。テーブルベース50は、凹部51の底面から下方に凹形状に形成される負圧伝達室52と、負圧伝達室52の底面に形成される吸引源連通穴53と、を有する。負圧伝達室52は、好ましくはラバープレート30の吸引穴33が形成される領域に対応する領域を含んで形成される直方形状の室である。負圧伝達室52は、凹部51に連通する。吸引源連通穴53は、実施形態では負圧伝達室52の底面中央に円形状に形成されるが、本発明ではこれに限定されない。図5に示すように、吸引源連通穴53は、吸引源60と接続する。吸引源60と吸引源連通穴53とを接続する通路には、切換弁61が設けられていてもよい。切換弁61は、通電されている状態のみ吸引源60と吸引源連通穴53とを連通させる。図4に示すように、テーブルベース50は、実施形態において、4つの角部にねじ穴54を有する。ねじ穴54は、枠体部40のねじ用貫通穴42に対応する。
【0034】
図5に示すように、テーブルベース50は、本体部11を収納し、ねじ43によって枠体部40が固定されることによって、負圧伝達室52が密封される。チャックテーブル10は、吸引源60による吸引によって生じるテーブルベース50の負圧伝達室52の負圧が、通気性を有する硬質板20を介してラバープレート30の吸引穴33に伝達されることによって、被加工物100を吸引保持する。チャックテーブル10は、実施形態において、被加工物100の封止剤106を含む裏面103側を吸引保持する。この際、被加工物100の分割予定ライン104とラバープレート30の切削ブレード用逃げ溝32とを位置合わせすることによって、切削ユニット70が被加工物100を切削加工する際に、切削ブレード71がラバープレート30を切削することを抑制することができる。
【0035】
本体部11は、例えば、ラバープレート30を硬質板20に接着材等で貼り付けた後、ラバープレート30に切削ブレード用逃げ溝32および吸引穴33を形成することによって製造される。本体部11は、ラバープレート30に切削ブレード用逃げ溝32および吸引穴33を形成した後、切削ブレード用逃げ溝32および吸引穴33が形成されたラバープレート30を硬質板20に接着材等で貼り付けることによって製造されてもよい。
【0036】
ラバープレート30の切削ブレード用逃げ溝32の数、切削ブレード用逃げ溝32同士の間隔、および吸引穴33の数等は、対応する被加工物100の分割予定ライン104の数、分割予定ライン104同士の間隔、およびデバイス105の数等に応じて形成する必要がある。実施形態のチャックテーブル10は、対応する被加工物100の分割予定ライン104の数、分割予定ライン104同士の間隔、およびデバイス105の数等に応じて、切削ブレード用逃げ溝32の数、切削ブレード用逃げ溝32同士の間隔、および吸引穴33の数等が異なる複数の本体部11のうち、一つの本体部11を選択して取り付けられることが可能である。
【0037】
チャックテーブル10は、テーブルベース50に対して着脱自在であるとともに、本体部11と、枠体部40と、に分解可能である。これにより、図6に示すように、枠体部40をテーブルベース50から取り外した状態では、枠体部40とテーブルベース50との間に収納される本体部11-1を、別の本体部11-2に交換することが可能である。本体部11の交換では、まず、枠体部40をテーブルベース50に固定するねじ43を取り外す。次に、枠体部40をテーブルベース50から持ち上げて取り外すことにより、使用済みの本体部11-1の外周を露出させる。次に、テーブルベース50に収納される本体部11-1をテーブルベース50から持ち上げて取り外した後、別の本体部11-2をテーブルベース50の凹部51の底面に載置させる。さらに、枠体部40をテーブルベース50に取り付けて、ねじ43によって固定することによって、交換を完了する。
【0038】
以上説明したように、実施形態に係る切削装置1のチャックテーブル10は、本体部11と、本体部11をテーブルベース50に固定するための枠体部40とを備える。本体部11は、切削ブレード用逃げ溝32および吸引穴33が樹脂であるラバープレート30に形成されるため、加工が容易である。これにより、加工コストを削減し、納期を短縮することができる。また、枠体部40は、テーブルベース50に対して本体部11を着脱自在に固定するので、本体部11のみを容易に交換することができる。これにより、チップサイズの変更等のデザイン変更が発生した場合であっても、チャックテーブル10を製造するコストおよび全体の製造期間の増加を抑制することができる。チャックテーブル10は、例えば、切削屑を吸引して硬質板20に目詰まりが発生することで吸引力が低下したとしても、安価に形成でき、かつ容易に本体部11の交換ができる。
【0039】
さらに従来のチャックテーブルでは、保持面を有するSUS等の金属板の裏面を負圧伝達室に対面させ、金属板の吸引穴に負圧伝達室から直接負圧を作用させていたので、保持面の下方が空洞であるため、加工中に保持面が振動する恐れがあった。これに対し、実施形態のチャックテーブル10は、ラバープレート30が通気性のある硬質板20に固定されるとともに、硬質板20がテーブルベース50の凹部51に収容されて凹部51の底面に載置されているため、保持面31が安定して固定される。これにより、切削加工中に被加工物100がずれることによる、チップ107の外形のずれや欠けが抑制されるという効果も奏する。また、凹部51の底面に支持された硬質板20に、保持面31を形成するラバープレート30が支持されているので、本体部11がねじ43を締められることによって固定されても保持面31が歪みにくいという効果も奏する。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 切削装置
10 チャックテーブル
11、11-1、11-2 本体部
20 硬質板
21 裏面
30 ラバープレート
31 保持面
32 切削ブレード用逃げ溝
33 吸引穴
40 枠体部
50 テーブルベース
52 負圧伝達室
70 切削ユニット
71 切削ブレード
100 被加工物
104 分割予定ライン
107 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6