(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20231127BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20231127BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20231127BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20231127BHJP
A61F 13/539 20060101ALI20231127BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61F13/511 300
A61F13/47 300
A61F13/49 100
A61F13/49 312A
A61F13/51
A61F13/511 100
A61F13/511 200
A61F13/511 400
A61F13/539
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2020085458
(22)【出願日】2020-05-14
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 菜緒子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-51232(JP,A)
【文献】特開2018-7886(JP,A)
【文献】特開2015-188737(JP,A)
【文献】国際公開第2020/075653(WO,A1)
【文献】特表2005-524444(JP,A)
【文献】国際公開第2018/186318(WO,A1)
【文献】特開平10-280260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液を吸収する吸収コアと、
前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、
前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートは、コットン繊維100%の上層と
、熱融着性繊維を有し、前記上層よりも非肌面側に位置する下層と、の積層シートであり、
前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、
前記汗移行値を2回連続して測定した際の2回目の汗移行値は、1回目の汗移行値よりも高い、吸収性物品。
【請求項2】
前記1回目の汗移行値は、0.43以上である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記1回目の汗移行値の測定における前記吸収性物品に移行した汗の重量に対する前記トップシートの肌面側に液戻りした汗の重量の比率は、0.22以下である、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
体液を吸収する吸収コアと、
前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、
前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える吸収性物品であって、
前記トップシートは、コットン繊維100%の上層と
、熱融着性繊維を有し、前記上層よりも非肌面側に位置する下層と、の積層シートであり、
前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、
1回目の汗移行値は、0.43以上であり、
前記1回目の汗移行値の測定における前記吸収性物品に移行した汗の重量に対する前記トップシートの肌面側に液戻りした汗の重量の比率は、0.22以下である、吸収性物品。
【請求項5】
前記汗移行値を2回連続して測定した際の2回目の汗移行値は、0.49以上である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収コアが配置されたコア配置領域には、前記吸収性物品を折り曲げる基点となる折曲基点部が複数設けられており、
前記複数の折曲基点部は、前後方向に間隔を空けて設けられており、
前記折曲基点部同士の前記前後方向における間隔のうち最も広い間隔は、20mm以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記トップシートの非肌面には、接着剤が塗布された接着領域が設けられており、
前記接着領域は、前後方向に間隔を空けて設けられており、
前記接着領域同士の前記前後方向における平均間隔は、前記折曲基点部の前記前後方向における間隔のうち最も広い間隔以下である、請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品の非肌面には、前記吸収性物品を着用物品に接合するための粘着部が設けられており、
前記粘着部は、前後方向に間隔を空けて設けられており、
前記粘着部同士の前記前後方向における平均間隔は、前記折曲基点部の前記前後方向における間隔のうち最も広い間隔以下である、請求項6又は請求項7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品には、前記トップシートから前記吸収コアへの汗の移行を促進する移行促進部が設けられており、
前記移行促進部は、少なくとも前記トップシートを厚み方向に圧縮したシート圧搾部と、前記トップシートに形成されたシート開口部と、のうち少なくとも一方によって構成されている、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記移行促進部としての前記シート圧搾部が設けられている、請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記吸水性繊維は、コットン繊維であって、
前記吸収性物品は、植物由来の香り成分又は植物を想起させる香り成分を有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記トップシートは、前記トップシートの外側縁において非肌面側に折り返された折り返し部を有し、
前記折り返し部の非肌面には、接着剤が付された接合部が設けられており、
前記接合部は、前記トップシートの外側縁よりも幅方向の内側に配置されている、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収コア、前記トップシート及び前記バックシートを含む吸収性本体と、
前記吸収性本体の非肌面側に配置され、着用者の胴回りを覆う胴回り部材と、を有しており、
前記胴回り部材は、着用者の肌に接する胴回り肌側シートを有し、
前記胴回り肌側シートは、弾性シートと非弾性シートとが、多数のシート接合部を介して互いに接合されて積層される積層シートである、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性繊維を含むトップシートを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トップシートに、吸水性繊維としてのコットン繊維を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1のトップシートには、撥水剤が塗布されている。特許文献1の吸収性物品は、コットン繊維による肌触り向上と、吸収した排泄液がトップシートの表面側に戻るリウェット抑制と、を両立できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コットン繊維を有するトップシートは、肌触りを向上できる一方、トップシート自体が高い保液性を有し、表面にべたつき感が残り易い、という問題があった。特に、生理用ナプキンやおりものシート等の吸収性物品は、着用物品を介して肌に密着するため、トップシートのべたつき感を顕著に感じることがあった。加えて、吸収性物品によっては、連続的に長時間使用されることがあり、更なる装着感の向上が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様に係る吸収性物品は、体液を吸収する吸収コアと、前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える。前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、前記汗移行値を2回連続して測定した際の2回目の汗移行値は、1回目の汗移行値よりも高い。
【0006】
他の態様に係る吸収性物品は、体液を吸収する吸収コアと、前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える。前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、1回目の汗移行値は、0.43以上である。前記1回目の汗移行値の測定における前記吸収性物品に移行した汗の重量に対する前記トップシートの肌面側に液戻りした汗の重量の比率は、0.22以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の肌面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る吸収性物品の非肌面側から見た平面図である。
【
図4】
図4は、トップシートの接着領域を示した図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る吸収性物品の展開状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
一態様に係る吸収性物品は、体液を吸収する吸収コアと、前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える。前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、前記汗移行値を2回連続して測定した際の2回目の汗移行値は、1回目の汗移行値よりも高い。本態様によれば、トップシート上に排出された汗を引き込む力が、1回目よりも2回目の方が高く、連続的に汗を取り込むことができる。コットン繊維などの吸水性繊維をトップシートに使用することによる肌触りの向上に加えて、汗を連続して引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。
【0009】
好ましい一態様によれば、前記1回目の汗移行値は、0.43以上である。本態様によれば、1回目の汗移行値が0.43以上であり、汗の引き込み性が高いため、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。
【0010】
好ましい一態様によれば、前記2回目の汗移行値の測定における前記吸収性物品に移行した汗の重量に対する前記トップシートの肌面側に液戻りした汗の重量の比率は、0.22以下である。本態様によれば、一旦引き込んだ汗の液戻りを抑制できる。リウェットを抑制することにより、装着感をより向上できる。
【0011】
他の態様に係る吸収性物品は、体液を吸収する吸収コアと、前記吸収コアよりも肌面側に配置され、吸水性繊維を有するトップシートと、前記吸収コアよりも非肌面側に配置され、液不透過性のバックシートと、を備える。前記トップシートの肌対向面から前記吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する汗移行値を、前記トップシートの肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の前記吸収性物品に移行した汗の重量の比率と規定すると、1回目の汗移行値は、0.43以上であり、前記1回目の汗移行値の測定における前記吸収性物品に移行した汗の重量に対する前記トップシートの肌面側に液戻りした汗の重量の比率は、0.22以下である。1回目の汗移行値が0.43以上であり、汗の引き込み性が高いため、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。また、一旦引き込んだ汗の液戻りを抑制できる。リウェットを抑制することにより、装着感をより向上できる。
【0012】
好ましい一態様によれば、前記汗移行値を2回連続して測定した際の前記2回目の汗移行値は、0.49以上である。本態様によれば、2回目の汗移行値が0.49以上であり、汗の引き込み性が高いため、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。
【0013】
好ましい一態様によれば、前記吸収コアが配置されたコア配置領域には、前記吸収性物品を折り曲げる基点となる折曲基点部が複数設けられており、前記複数の折曲基点部は、前後方向に間隔を空けて設けられており、前記折曲基点部同士の間隔のうち最も広い間隔は、20mm以下である。本態様によれば、コア配置領域は、吸収性物品の中で比較的剛性が高い吸収コアが配置されており、身体に沿い難いおそれがある。しかし、折曲基点部が設けられていることにより、折曲基点部を介して変形やすい。折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔は、20mm以下であり、比較的短い間隔で折曲基点部が配置されているため、前後方向に沿った断面において吸収性物品を身体に沿わせ易い。吸収性物品が身体に沿って配置されることにより、吸収性物品の全体に亘ってトップシートを身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。
【0014】
好ましい一態様によれば、前記トップシートの非肌面には、接着剤が塗布された接着領域が設けられており、前記接着領域は、前後方向に間隔を空けて設けられており、前記接着領域同士の平均間隔は、前記折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔以下である。本態様によれば、接着領域では、トップシートが非肌面側に位置する部材に接着されるため、トップシートが浮き上がることを抑制し、吸収コアと共に身体に沿って配置されやすい。接着領域同士の平均間隔が、平均間隔が折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔以下であるため、折曲基点部同士の最も広い間隔内においてトップシートを吸収コアと共に身体に沿わせることができ、吸収性物品の全体に亘ってトップシートを身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。
【0015】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品の非肌面には、前記吸収性物品を着用物品に接合するための粘着部が設けられており、前記粘着部は、前後方向に間隔を空けて設けられており、前記接着領域同士の平均間隔は、前記折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔以下である。本態様によれば、粘着部では、吸収性物品が着用物品に接合されるため、吸収性物品が身体に沿って配置されやすい。粘着部同士の平均間隔が、平均間隔が折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔以下であるため、折曲基点部同士の最も広い間隔内においてトップシートを身体に沿わせることができ、吸収性物品の全体に亘ってトップシートを身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。
【0016】
好ましい一態様によれば、前記吸収性物品には、前記トップシートから前記吸収コアへの汗の移行を促進する移行促進部が設けられており、前記移行促進部は、少なくとも前記トップシートを厚み方向に圧縮したシート圧搾部と、前記トップシートに形成されたシート開口部と、のうち少なくとも一方によって構成されている。本態様によれば、移行促進部によってトップシートから吸収コアへの汗の移行を促進でき、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。
【0017】
好ましい一態様によれば、前記移行促進部としての前記シート圧搾部が設けられており、前記トップシートは、コットン繊維を主に含む上層と、熱融着性繊維を主に有し、前記上層よりも非肌面側に位置する下層と、の積層シートである。本態様によれば、下層は、熱融着性繊維を有しており、シート圧搾部が形成された際に繊維同士が融着し、その形状を維持し易い。よって、コットン繊維を主に含む上層によって肌触りを向上させつつ、移行促進部によって体液の引き込み性も向上できる。
【0018】
好ましい一態様によれば、前記吸水性繊維は、コットン繊維であって、前記吸収性物品は、植物由来の香り成分又は植物を想起させる香り成分を有する。本態様によれば、着用者は、コットン繊維による肌触りのよさ等の触感の効果を実感しつつ、植物由来の香り成分による肌に優しい安心感を得ることができる。また、汗の引き込み性等の実機能による装着感の向上効果を実感する際に、コットン繊維及び植物由来の香り成分によって心証面に好適な影響を付与し、機能面と心証面の両方の相乗効果によって使用者の装着感をより向上できる。
【0019】
好ましい一態様によれば、前記トップシートは、前記トップシートの外側縁において非肌面側に折り返された折り返し部を有し、前記折り返し部の非肌面には、接着剤が付された接合部が設けられており、前記接合部は、前記トップシートの外側縁よりも前記幅方向の内側に配置されている。本態様によれば、トップシートの折り返し部の接合部は、トップシートの外側縁よりも幅方向の内側に位置している。そのため。折り返し部の外側縁(トップシートの外側縁)は、接合部を基点として肌面側に立ち上がり易い。立ち上がった部分が鼠蹊部に密着しやすくなることで汗を効果的に吸収することができ、装着感向上につながる。
【0020】
好ましい一態様によれば、前記吸収コア、前記トップシート及び前記バックシートを含む吸収性本体と、前記吸収性本体の非肌面側に配置され、着用者の胴回りを覆う胴回り部材と、を有しており、前記胴回り部材は、着用者の肌に接する胴回り肌側シートを有する。前記胴回り肌側シートは、弾性シートと非弾性シートとが、多数の接合部を介して互いに接合されて積層される積層シートである。本態様によれば、胴回り肌側シートには、シート接合部によって構成される凹条部と、接合部間の凸条部と、が形成される。当該凹条部と凸条部によって身体と胴回り肌側シートの間に空間が形成され、当該空間に汗を保持できる。よって、吸収性本体のトップシートによる汗の引き込み性のみならず、胴回り部材によっても汗を引き込み、腰周り及び股下の全体に亘って装着感を向上できる。
【0021】
(2)吸収性物品の構成
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る吸収性物品ついて説明する。吸収性物品は、生理用ナプキン、パンティライナー、軽失禁ライナー、母乳パッド、大人用失禁パッド、糞便パッド又は汗取りシートのような吸収性物品であってよい。特に、吸収性物品は、使用者の下着のような着用物品の内側に取り付けられて使用される物品であってよい。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0022】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品1の肌面側から見た平面図である。ここで、「肌面側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌面側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。
図2は、第1実施形態に係る吸収性物品1の非肌面側から見た平面図である。
図3は、
図1に示すA-A線に沿った断面図であり、
図4は、トップシートの接着領域を示した図である。
【0023】
吸収性物品1は、前後方向L及び幅方向Wを有する。前後方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lと直交する方向である。吸収性物品1は、着用者の肌面側T1と非肌面側T2に延びる厚み方向Tを有する。吸収性物品1は、前側領域R1と、後側領域R2と、中央領域R3と、を含む。中央領域R3は、吸収性物品の前後方向の中心を跨いで配置されており、着用者の排泄口(例えば膣口)に対向する排泄口当接部を含む。吸収性物品1が下着に装着されたときに、中央領域R3は、下着の股下部に位置し、着用者の股下、すなわち着用者の両足の間に配置される領域である。前側領域R1は、中央領域R3よりも前側に位置する。前側領域R1の前端縁は、吸収性物品1の前端縁を規定する。後側領域R2は、中央領域R3よりも後側に位置する。後側領域R2の後端縁は、吸収性物品1の後端縁を規定する。
【0024】
中央領域R3には、ウイング3が設けられていてよい。また、後側領域R2には、幅方向Wの外側に膨らんだヒップフラップが設けられていてもよい。ウイング3の前端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、前側に位置する部分に相当する。ウイング3の前端縁は、中央領域R3と前側領域R1との境界を規定していてもよい。ウイング3の後端縁は、ウイング3の付け根によって規定されており、最も幅方向Wの内側に窪んだ2つの部分のうち、後側に位置する部分に相当する。ウイング3の後端縁は、中央領域R3と後側領域R2との境界を規定していてもよい。
【0025】
吸収性物品1は、体液を吸収する吸収コア31と、吸収コア31よりも肌面側T1に配置され、かつ吸水性繊維を有するトップシート10と、吸収コア31よりも非肌面側T2に配置され、液不透過性のバックシート20と、を含む。トップシート10は、着用者の肌に向けられ、バックシート20は、着用者の肌とは反対側に向けられる。吸収コア31は、トップシート10とバックシート20との間に設けられる。
【0026】
トップシート10は、幅方向Wにおける吸収コア31の中央部を覆ってよい。トップシート10は、前側領域R1から後側領域R2まで前後方向Lに延びていてよい。トップシート10は、センターシート11と、センターシート11よりも幅方向Wの外側に配置されたセカンドシート12と、を有してよい。セカンドシート12は、センターシート11よりも非肌面側に配置されてよい。なお、トップシート10は、センターシート11のみによって構成されていてもよい。
【0027】
トップシート10は、吸水性繊維を有する。吸水性繊維は、コットン繊維を例示できる。吸水性繊維は、センターシート11及びセカンドシート12の少なくとも一方に設けられてよい。好適には、肌に触れる面積が比較的大きいセンターシート11が吸水性繊維を有してよい。コットン繊維の繊維長は、5~35mmであってよい。センターシート11は、コットン不織布を例示できる。コットン不織布の坪量は、30g/m2であってよい。また、センターシート11は、2層構造であってもよい。より詳細には、コットン繊維を主に含む(50%より多く含む)上層11Aと、コットン繊維と熱融着性繊維(疎水性繊維に親水性油剤をコーティングした親水性繊維であるが非吸水性の繊維を含む)を混合した下層11Bと、の積層シートによって構成されてよい。すなわち、センターシート11の上層11Aは、本発明の上層を構成し、センターシート11の下層11Bは、熱融着性繊維を有し、本実施の形態のセンターシート11は、上層と下層の積層シートである。センターシート11の破断伸度は、繊維の配向方向に沿った強度が30~70N/25mmであってよく、繊維の配向方向と直交方向の強度が5~10N/25mmであってよい。
【0028】
セカンドシート12は、熱融着性繊維を含んでよい。セカンドシート12は、非肌面側T2に折り返されていない非折り返し部12Aと、セカンドシート12の外側縁12Eにおいて非肌面側T2に向かって折り返された折り返し部12Bと、を有する。セカンドシート12の折り返し部12Bは、後述する延出シート13に接合部15において接合されている。接合部15は、ホットメルト型接着剤等の接着剤によって、トップシート10の非肌面に当接する部材に接合している。
【0029】
図4に示すように、トップシート10の非肌面には、接着剤が塗布された接着領域RAが設けられている。
図4は、
図1に示すB部分のトップシート10の非肌面を模式的に示した図である。接着領域RAは、トップシート10の非肌面と当接する部材(例えば、コアラップ)に接着される領域である。接着領域RAは、接着剤が付された部分である。接着領域RAは、幅方向Wに延びており、前後方向Lに間隔を空けて設けられている。なお、接着領域RAの少なくとも一部が前後方向Lに間隔を空けて設けられていればよく、接着領域RAが前後方向に連続した部分であってよい。また、接着領域RA同士の前後方向の間隔RAGは、一定であってもよいし、不規則であってもよい。
【0030】
バックシート20は、液不透過性のシートである。バックシート20は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。バックシート20の非肌面には、吸収性物品1を着用物品(下着等)に接合するための粘着部70が設けられていてよい。粘着部70は、ホットメルト型接着剤等の接着剤が付された部分であってもよいし、メカニカルファスナ等の係合部材が設けられた部分であってよい。粘着部70の前後方向の外端縁は、後述する折曲基点部を構成する。粘着部70は、幅方向Wに延びており、前後方向Lに間隔を空けて配置されてよい。前後方向Lに間隔を空けて複数の粘着部が配置された形態にあっては、各粘着部70の前後方向の外端縁が折曲基点部を構成する。また、粘着部70同士の前後方向の間隔70Gは、一定であってもよいし、不規則であってもよい。
【0031】
吸収コア31は、少なくとも中央領域R3及び後側領域R2に配置される。また、吸収コア31は、中央領域R3から前側領域R1まで延びていてもよい。吸収コア31は、液体を吸収する吸収材料を含む。吸収コア31は、コアラップによって包まれていてもよい。吸収コア31を構成する吸収材料は、例えば、パルプ及び高吸水性ポリマー(SAP)から形成できる。吸収コア31には、吸収材料の坪量が周囲よりも高い高坪量部26や、吸収材料の坪量が周囲よりも低い低坪量部(スリットを含む)25が形成されていてもよい。コアラップは、例えば不織布やティッシュシートから構成することができる。
【0032】
吸収コア31が配置されたコア配置領域R31には、吸収性物品1を折り曲げる基点となる折曲基点部80が複数設けられてよい。コア配置領域R31は、平面視にて吸収コア31が配置された領域である。折曲基点部80は、折曲基点部80は、吸収コア31を前後方向Lに折り曲げる際の基点となる。折曲基点部80は、剛性差、厚み差、坪量差等によって吸収性物品1を折り曲げ易くする。折曲基点部80は、少なくともコア配置領域R31に配置されていればよく、コア配置領域R31とコア配置領域R31以外の領域(コア配置領域R31よりも外側の領域)とに跨がっていてもよい。
【0033】
折曲基点部80は、少なくとも吸収コア31を厚み方向Tに圧縮したコア圧搾部61(
図3参照)を含んでよい。より詳細には、コア圧搾部61の前端縁及び後端縁は、折曲基点部80を構成する。また、複数の圧搾部が前後方向にずれて配置されている構成にあっては、それぞれの圧搾部の前端縁及び後端縁が折曲基点部80を構成する。コア圧搾部61は、コア圧搾部61が形成されていない領域と比較して剛性が高く、かつ厚みが薄い。コア圧搾部61が折曲基点部80を構成する形態では、厚み差及び剛性差によって吸収性物品1が変形し易い。好適には、コア圧搾部61は、肌面側T1から非肌面側T2に向かって凹んでいてよい。肌面側T1から非肌面側T2に向かってコア圧搾部61が凹んでいるため、肌面側T1が近づくように変形し易く、着用者の身体に吸収性物品1が沿い易い。なお、コア圧搾部61は、後述するトップシート10に形成されたシート圧搾部60と一体的に設けられていてもよい。また、コア圧搾部61は、後述する移行促進部を構成してもよい。
【0034】
折曲基点部80は、坪量変化部を含んでよい。坪量変化部は、前後方向Lにおいて隣接する領域に対して吸収コア31の吸収材料の坪量が異なる部分である。具体的には、吸収コア31の前端縁及び後端縁は、坪量変化部を構成する。高坪量部26の前端縁及び後端縁も、坪量変化部を構成する。低坪量部25は、前後方向の長さによって異なる。低坪量部25の前後方向の長さが20mm未満の場合には、当該低坪量部の前後方向の中心は、坪量変化部を構成する。低坪量部の前後方向の長さが20mm以上の場合には、当該低坪量部の前端縁及び後端縁が坪量変化部を構成する。また、前後方向に離れて複数の低坪量部が設けられ、かつ当該複数の低坪量部が連なっている場合には、前後方向に離れた低坪量部のそれぞれが坪量変化部を構成する。このように構成された坪量変化部は、前後方向に隣接する領域と吸収材料の坪量が異なっており、吸収コア31の厚さ及び剛性が異なる。当該坪量変化部が折曲基点部80を構成することにより、厚み差及び剛性差によって吸収性物品1が変形し易い。好ましくは、坪量変化部は、幅方向Wに沿って設けられてよい。
【0035】
折曲基点部80は、吸収コア31に形成されたコア開口部32(
図3参照)を含んでよい。コア開口部32は、少なくとも吸収コア31を厚み方向Tに貫通してよい。本実施の形態のコア開口部32は、点状であり、前後方向L及び幅方向Wに間隔を空けて複数形成されていてよい。コア開口部32は、後述する移行促進部を構成してもよい。
【0036】
折曲基点部80は、吸収性物品1の肌対向面が向き合うように折り畳む折り目FL1及びFL2を含んでよい。折り目が前後方向Lに一定の長さを有している構成にあっては、折り目FL1及びFL2の前端縁及び後端縁が、折曲基点部80を構成する。折り目FL1及びFLS2の折り癖によって肌面側T1が近づくように変形し易く、着用者の身体に吸収性物品1が沿い易い。
【0037】
折曲基点部80は、粘着部70を含んでよい。より詳細には、粘着部70の前端縁及び後端縁は、折曲基点部80を構成する。粘着部70は、着用物品に接合され、粘着部が設けられていない領域は、着用物品に対して浮き上がる。粘着部70の前端縁及び後端縁は、着用物品に対する接合状態が異なる境界となり、折曲基点部80を構成する。すなわち、折曲基点部80は、コア開口部32、コア圧搾部61、粘着部70、低坪量部25、高坪量部26及び折り目FL1、FL2の少なくともいずれかによって構成されてよい。このように折曲基点部80が設けられていることにより、吸収性物品1が着用者の前後方向に延びる身体の丸みに沿い易く、吸収性物品が肌に密着し、体液をより吸収しやすくなる。
【0038】
折曲基点部80の間隔G80は、前後方向Lに隣接する折曲基点部80どうしの前後方向の距離であってよい。なお、折曲基点部80が前後方向に間隔を空けて複数設けられている構成にあっては、それぞれが折曲基点部80として機能する。ただし、折曲基点部80同士の前後方向の間隔が5mm以下の場合には、一体化した変形基点として機能するため、5mm以下の間隔で設けられた複数の折曲基点部80全体が1個の折曲基点部を構成する。また、幅方向Wに沿う同一ライン上に同一形状の折曲基点部が複数設けられている構成にあっては、同一ライン上の折曲基点部のうち1個のみを選択し、前後方向の間隔を測定する。
【0039】
前述したように、吸収性物品1は、ウイング3を有する。ウイング3は、中央領域R3における吸収コア31の外側縁よりも幅方向Wの外側に延出している。ウイング3は、延出シート13とバックシート20との積層によって構成されていてよい。延出シート13は、セカンドシート12の非肌面側に配置され、セカンドシート12よりも幅方向の外側に延出してよい。ウイング3は、バックシート20側に折り返し可能に構成されている。ウイング3は、使用時に下着のクロッチ部の非肌面側に折り返される。
【0040】
図1に示すように、吸収性物品1は、少なくともトップシート10を厚み方向に圧縮したシート圧搾部60を有してよい。シート圧搾部60は、少なくともトップシート10が圧縮されていればよく、トップシート10と吸収コア31が圧縮されていてもよいし、これら以外のシート(例えば、コアラップ)も圧縮されていてもよい。
図3に示すように、本実施の形態のシート圧搾部60は、コア圧搾部61と共に形成されており、コア圧搾部61に重なっている。また、吸収性物品1は、少なくともトップシート10に形成されたシート開口部65を有してよい。シート開口部65は、トップシート10を厚み方向Tに貫通してよい。シート開口部65は、少なくともトップシート10に形成されていれば、トップシート10共に他の部材(例えば、コアラップ、吸収コア)にも形成されていてもよい。シート圧搾部60及びシート開口部65は、本発明の移行促進部を構成してよい。移行促進部は、トップシート10から吸収コア31への汗の移行を促進する。
図3に示すように、本実施の形態のシート開口部65は、コア開口部32と共に形成されており、コア開口部32と重なっている。
【0041】
本実施の形態の吸収性物品1は、連続的に長時間使用された際にも装着感を向上できるように構成されている。より詳細には、吸収性物品1は、汗の引き込み性を向上できるように構成されている。次いで、汗の引き込み性を向上させる構成について詳細に説明する。吸収性物品の汗の引き込み性は、汗移行値によって評価できる。汗移行値は、トップシート10の肌対向面から吸収性物品の内部に汗が移行する量を指標する値であり、トップシート10の肌対向面上の汗の重量に対する120秒経過時の吸収性物品に移行した汗の重量の比率である。汗移行値が高いほど、吸収性物品の汗の引き込み性が高く、汗移行値が低いほど、吸収性物品の汗の引き込み性が低いと評価できる。また、汗の引き込み性は、汗移行値の測定における吸収性物品に移行した汗の重量に対するトップシート10の肌面側に液戻りした汗の重量の比率、すなわちリウェット率によっても評価できる。リウェット率が低いほど、一旦引き込んだ汗が着用者に戻り難く、吸収性物品の汗の引き込み性が高く、リウェット率が低いほど、一旦引き込んだ汗が着用者側に戻り易く、吸収性物品の汗の引き込み性が低いと評価できる。
【0042】
汗移行値は、以下の方法によって測定できる。(1)40g/m2のエアレイド不織布を30mm×50mmの寸法のシート片に切断する。エアレイド不織布は、王子キノクロス株式会社のKS-40を使用した。(2)当該切断したエアレイド不織布を5枚重ねた積層体を作製し、当該積層体に対して1mlの模擬汗を吸収させる。模擬汗は、イオン交換水10Lに、塩化ナトリウム(純度99.0%以上)80g、硫酸マグネシウム・7水和物(MgSO4・7H2O)8g、塩化カルシウム・2水和物(CaCl2・2H2O)3g、色素:青色1号 1g を溶解させることにより調製した。(3)汗移行値の測定対象の吸収性物品の重量を測定する。(4)測定対象の吸収性物品のトップシート10上に積層体を載せ、積層体の上から525gの重りを乗せる。(5)重りを乗せてから120秒経過した後に積層体を外し、吸収性物品の重量を測定する。重量の差分を、1回目の汗移行値とする。(6)次いで、新たな積層体を作製し、当該積層体に対して1mlの疑似汗を吸収させる。(7)測定対象の吸収性物品のトップシート10上に積層体を載せ、積層体の上から525gの重りを乗せる。(8)重りを乗せてから120秒経過した後に積層体を外し、吸収性物品の重量を測定する。2回目の試験と1回目の試験の重量の差分を、2回目の汗移行値とする。
【0043】
リウェット率は、以下の方法によって測定できる。1回目のリウェット率は、汗移行値と同様の模擬汗を使用し、上記汗移行値の測定方法の(1)から(5)を実施した後、濾紙(アドバンテック社製のろ紙No.2)10枚をトップシート10上に重ね、その上から525gの重りを乗せる。60秒経過した後に、吸収性物品の重量を測定する。(5)にて測定した重量と、リウェット試験後の重量と、差分を1回目のリウェット値とする。実施例1から実施例3に係る吸収性物品と、比較例1から比較例3に係る吸収性物品と、の汗移行値及びリウェット率の測定結果について表1に示す。加えて、実施例1から実施例3に係る吸収性物品と、比較例1から比較例3に係る吸収性物品と、を用いて、10人の試験者に装着感についての感応評価を実施した。感応評価は、非生理期間もしくは生理期後半の経血量が少ない期間の使用者に吸収性物品を着用してもらった装着感を評価した。汗によるベタつき・貼り付き・蒸れを感じた場合は、「不良」とし、汗によるベタつき・貼り付き・蒸れを感じなかった場合は、「良」とし、「良」と判断した人が8人以上の場合を「◎」とし、「良」と判断した人が6人以上8人以下の場合を「○」とし、「良」と判断した人が5人以下の場合を「×」とした。
【表1】
【0044】
一態様に係る吸収性物品は、汗移行値を2回連続して測定した際の2回目の汗移行値は、1回目の汗移行値よりも高い。トップシート10上に排出された汗を引き込む力が、1回目よりも2回目の方が高く、連続的に汗を取り込むことができる。水分を吸収体へ移行して吸収することで、水分の表面拡散を抑え、身体と水の接する面積を小さくするので身体を冷やすことを抑制できる。また、コットン繊維などの吸水性繊維をトップシート10に使用することによる肌触りの向上に加えて、汗を連続して引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。
【0045】
当該一態様に係る吸収性物品において、1回目の汗移行値は、0.43以上であってよい。1回目の汗移行値が0.43以上であり、汗の引き込み性が高いため、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。加えて、1回目の汗移行値が、0.52以上であることにより、官能評価において8割を超える人が好適に感じている。8割を超える人が良さ感じることができるとことは、製品に対する関心度が低いユーザーであっても、使用時にその良さを感じることができるレベルである。よって、好適には、1回目の汗移行値は0.52以上であってよい。当該一態様に係る吸収性物品において、1回目の汗移行値の測定における吸収性物品に移行した汗の重量に対するトップシート10の肌面側に液戻りした汗の重量の比率であるリウェット率は、0.22以下であってよい。一旦引き込んだ汗の液戻りを抑制できる。リウェットを抑制することにより、装着感をより向上できる。加えて、リウェット率が、0.12以下であることにより、官能評価において8割を超える人が好適に感じている。よって、好適には、リウェット率は0.12以下であってよい。
【0046】
また、他の態様の吸収性物品は、1回目の汗移行値が0.43以上であり、1回目のリウェット率が0.22以下である。1回目の汗移行値が0.43以上であり、汗の引き込み性が高いため、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。また、一旦引き込んだ汗の液戻りを抑制できる。リウェットを抑制することにより、装着感をより向上できる。
【0047】
2回目の汗移行値は、0.49以上であってよい。2回目の汗移行値が0.49以上であり、2回目も汗移行量がより多く、トップシート10の肌対向面上の汗の約半分を引き込むことができる。汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。加えて、1回目の汗移行値が、0.66以上にあることにより、官能評価において8割を超える人が好適に感じている。よって、好適には、2回目の汗移行値は0.66以上であってよい。
【0048】
吸収性物品は、着用時に身体に沿い易く構成されている。着用時に吸収性物品が身体に沿うことにより、体液である汗をより吸収し易い。より詳細には、吸収コア31が配置されたコア配置領域R31には、折曲基点部80が設けられている。折曲基点部80同士の間隔のうち最も広い間隔は、20mm以下であってよい。コア配置領域R31は、吸収性物品1の中で比較的剛性が高い吸収コア31が配置されており、身体に沿い難いおそれがある。しかし、折曲基点部80が設けられていることにより、折曲基点部80を介して変形やすい。折曲基点部80の間隔のうち最も広い間隔は、20mm以下である。すなわち、折曲基点部80の間隔は、全て20mm以下である。比較的短い間隔で折曲基点部80が配置されているため、前後方向Lに沿った断面において吸収性物品1を身体に沿わせ易い。吸収性物品1が身体に沿って配置されることにより、吸収性物品の全体に亘ってトップシート10を身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。折曲基点部80の間隔は、コア圧搾部61とコア開口部32の間隔等、いずれかの折曲基点部80の間隔であってよい。折曲基点部80の間隔は、一定でなく、不規則であってよい。身体の前後方向に層丸みは、一定の曲率でなく、不規則の間隔にて配置された折曲基点部80によって身体の丸みにより沿い易くなる。
【0049】
トップシート10の非肌面の接着領域RA同士の平均の間隔RAGは、折曲基点部80の間隔のうち最も広い間隔以下であってよい。接着領域RAでは、トップシート10が非肌面側に位置する部材に接着されるため、トップシート10が浮き上がることを抑制し、吸収コア31と共に身体に沿って配置されやすい。接着領域RA士の平均間隔RAGが、折曲基点部80の間隔のうち最も広い間隔以下であるため、折曲基点部80同士の最も広い間隔内においてトップシート10を吸収コア31と共に身体に沿わせることができ、吸収性物品1の全体に亘ってトップシート10を身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。
【0050】
粘着部70同士の平均の間隔70Gは、折曲基点部80の間隔のうち最も広い間隔以下であってよい。なお、粘着部70自体が折曲基点部80を構成するため、粘着部70同士の平均の間隔70Gが、粘着部70以外の折曲基点部80の間隔のうち最も広い間隔以下であってよい。粘着部70では、吸収性物品が着用物品に接着されるため、吸収性物品が身体に沿って配置されやすい。粘着部70同士の平均間隔70Gが、平均間隔が折曲基点部の間隔のうち最も広い間隔以下であるため、折曲基点部80同士の最も広い間隔内においてトップシートを身体に沿わせることができ、吸収性物品の全体に亘ってトップシートを身体に当接させ易い。汗を引き込む面積を広く設けることができ、装着感をより向上できる。
【0051】
トップシート10としてのセカンドシート12の非肌面の接合部15は、トップシート10であるセカンドシート12の外側縁12Eよりも幅方向の内側に配置されてよい。トップシート10の折り返し部12Bの接合部15は、トップシート10の外側縁よりも幅方向の内側に位置している。そのため、折り返し部の外側縁(トップシートの外側縁)は、接合部15を基点として肌面側に立ち上がり易い。立ち上がった部分が鼠蹊部に密着しやすくなることで汗を効果的に吸収することができ、装着感をより向上できる。
【0052】
セカンドシート12の幅方向Wの長さは、センターシート11の幅方向Wの長さよりも長くてよい。セカンドシート12の吸汗性は、センターシート11の吸汗性よりも高くてよい。セカンドシート12及びセンターシート11は、共に吸水性であってよい。吸収性物品としての生理用ナプキンの幅方向Wの中央寄り位置は、体に密着し続ける。一方、生理用ナプキンの幅方向Wの外側よりの位置は、足の動きに合わせて肌に接触したり離れたりを繰り返す。最も肌側のセンターシート11の幅を狭くし、比較的吸汗性が低いセカンドシートの幅を広くすることで、着用者の動きが発生するときの汗のべたつきを感じさせ難くできる。
【0053】
吸収性物品1は、汗を引き込み易く構成されている。より詳細には、トップシート10から吸収コア31への汗の移行を促進する移行促進部が設けられてよい。移行促進部は、シート圧搾部60及びシート開口部65の少なくとも一方によって構成されてよい。移行促進部によってトップシート10から吸収コアへの汗の移行を促進でき、汗を引き込むことによるべたつき感を抑制でき、装着感をより向上できる。また、他の形態において、移行促進部は、コア圧搾部61及びコア開口部32のいずれかによっても構成されてよい。
【0054】
トップシート10であるセンターシート11は、コットン繊維及びレーヨン繊維等の吸水性繊維(疎水性繊維に親水性油剤をコーティングして親水性繊維であるが非吸水性の繊維を除く)を主として構成されている。ここでいう主とは、トップシートの繊維における吸水性繊維の繊維比率が50%以上であることを指す。当該トップシートによれば、肌からトップシートへの汗の移行性と、装着感と、をバランスよく向上できる。より好ましくは、トップシートは、実質的に吸水性繊維のみから構成されてよい。実質的に吸水性繊維のみから構成されたトップシートは、10%未満の繊維比率にて熱可塑性樹脂繊維やバインダーとなる繊維を含んでいてよい。当該トップシートによれば、肌からトップシートへの汗の移行性と、装着感と、をより向上できる。
【0055】
また、トップシート10は、コットン繊維を主に含む上層11Aと、熱融着性繊維を主に有し、上層11Aよりも非肌面側T2に位置する下層11Bと、の積層シートであってよい。当該トップシートによれば、肌からトップシートへの汗の移行性、トップシートの表面に移行した汗をトップシート内で非肌面側へと引き込む引き込み性、肌への安心感、及び肌触りを向上できる。更に好適には、コットン繊維100%の上層11Aと、熱融着性繊維を有し、上層よりも非肌面側に位置する下層11Bと、の積層シートであってよい。当該トップシートによれば、肌からトップシートへの汗の移行性、トップシートの表面に移行した汗をトップシート内で非肌面側へと引き込む引き込み性、肌への安心感、及び肌触りをより向上できる。上層と下層を有するトップシートを備える吸収性物品には、移行促進部としてのシート圧搾部60が設けられてよい。下層は、熱融着性繊維を有しており、圧搾部が形成された際に繊維同士が融着し、その形状を維持し易い。よって、コットン繊維を有する上層によって肌触りの向上と、肌にとって安心、肌触りが良いという印象も与えつつ、移行促進部によって体液の引き込み性も向上できる。
【0056】
吸収性物品は、汗の引き込み性及び肌触り以外に、装着感を向上させる他の構成を有してよい。より詳細には、吸水性繊維は、コットン繊維であって、吸収性物品は、植物由来の香り成分又は植物を想起させる香り成分を有してよい。着用者は、コットン繊維による肌触りのよさ等の触感の効果を実感しつつ、植物由来の香り成分による肌に優しい安心感を得ることができる。また、汗の引き込み性等の実機能による装着感の向上効果を実感する際に、コットン繊維及び植物由来の香り成分によって心証面に好適な影響を付与し、機能面と心証面の両方の相乗効果によって使用者の装着感をより向上できる。
【0057】
バックシート20は、通気性を有するシートによって構成されてよい。すなわち、吸収性物品1は、肌面側の通気性のみならず、非肌面側の通気性も有する。吸収性物品の非肌面側における通気性を確保することにより、吸収性物品の蒸れを抑制でき、装着感を向上できる。吸収コア31は、吸収材料としての高吸収性ポリマーを有してよく、より好適には、高吸収性ポリマーをシートによって挟んだ高吸収性シートであってもよい。吸収コア31内において吸湿することができ、吸収性物品の蒸れを抑制でき、装着感を向上できる。
【0058】
吸収性物品1は、使用前に個包装シートによって個別に包装されていてよい。個包装シートによって包装されていることにより、使用前に吸収性物品が吸湿し難く、使用時における吸湿性を確保できる。好適には、個包装シートは、フィルムであってよい。
【0059】
次いで、
図5に基づいて、第2実施形態に係る吸収性物品1Xについて説明する。第2実施形態の係る吸収性物品1Xは、予めパンツ型に形成されたショーツ型の生理用ナプキンである。なお、第2実施形態に係る吸収性物品は、なお、本発明に係る吸収性物品は、ショーツ型ナプキンに限られず、使い捨ておむつであってもよい。
図5は、パンツ型の吸収性物品の正面図である。以下の第2実施形態の説明において、上述の実施形態と同様の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
【0060】
吸収性物品1Xは、前胴周り域S1と、後胴周り域S2と、股下域S3と、を有する。前胴周り域S1は、使用時に着用者の身体前側に対向する。後胴周り域S2は、使用時に着用者の身体後側に対向する。股下域S3は、前胴周り域S1と後胴周り域S2との間に位置し、使用時に着用者の股下に配置される。吸収性物品1Xを前後に二分する股下折り線FW1が股下域S3を通っている。股下折り線FW1は、幅方向Wに沿って延びている。吸収性物品1Xは、股下折り線FW1を基点に前胴周り域S1と後胴周り域S2とが重なるように折り畳まれている。また、幅方向Wにおける前胴周り域S1の外側部と幅方向Wにおける後胴周り域S2の外側部とが互いに接合されたサイド接合部59が形成されている。吸収性物品1Xには、着用者の腰周りが挿入される腰周り開口部5と、着用者の脚がそれぞれ挿入される一対の脚周り開口部6と、が形成される。
【0061】
吸収性物品1Xは、吸収性本体58と、胴回り部材50と、を備える。吸収性本体58は、少なくとも股下域S3に設けられている。吸収性本体58は、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート20と、トップシート10とバックシート20の間に配置される吸収コア31と、を少なくとも備える。胴回り部材50は、吸収性本体58よりも非肌面側T2に配置されており、着用者の肌に接する胴回り肌側シート51を有する。胴回り肌側シート51は、弾性シート52と非弾性シート53とが、多数のシート接合部54を介して互いに接合されて積層される積層シートである。
【0062】
図6は、積層シートの模式断面図である。積層シートは、弾性シート52と非弾性シート53とが、多数のシート接合部54を介して互いに接合されて積層される。シート接合部54は、例えば、超音波装置によって繊維を溶着することによって形成することができる。弾性シート52は、弾性繊維を含み、この実施形態においては、弾性繊維と非弾性繊維とによって形成され、幅方向Wにおいて弾性的に伸縮可能である。すなわち、弾性シート52は、幅方向Wへ100%伸長させ、その伸長状態から解放されたときの残留歪みが30%以下、好ましくは20%以下とされる。
【0063】
弾性繊維は、熱可塑性エラストマーのみによって形成することもできるし、熱可塑性エラストマーと他の樹脂とを混合して形成することもできる。非弾性繊維は、熱可塑性樹脂を含むものが好ましい。非弾性シート53としては、例えばエアスルー繊維不織布、ポイントボンド繊維不織布(ヒートロール繊維不織布)、スパンレース繊維不織布、スパンボンド繊維不織布、メルトブローン繊維不織布等の各種製法による繊維不織布を用いることができる。また、繊維不織布のほか、織布、編布、または樹脂フィルム等を用いることもできる。
【0064】
図6を参照すれば、弾性シート52には、シート接合部54に重なるとともに幅方向Wへ延びる多数の凹条部56と、凹条部56に隣接し幅方向Wへ延びる多数の凸条部55とが形成される。凸条部55は、その内部が弾性シート52を構成する繊維によって満たされた畝とされる。ただし、凸条部55の全てが繊維によって満たされている必要はなく、後述するシートの嵩を維持できる程度に存在していればよい。凸条部55における繊維は、屈曲または捲縮され(図示せず)、これら繊維が伸長することによって弾性シート52全体が前後方向Lおよび幅方向Wへと伸長可能にされる。特に、幅方向Wにおいては、弾性的に伸縮可能とされる。胴回り肌側シート51の当該凸条部55と凹条部56とによって身体と胴回り肌側シート51の間に空間が形成され、当該空間に汗を保持できる。よって、吸収性本体のトップシート10による汗の引き込み性のみならず、胴回り部材によっても汗を引き込み、腰周り及び股下の全体に亘って装着感を向上できる。
【0065】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0066】
1、1X :吸収性物品
10 :トップシート
11 :センターシート
11A :上層
11B :下層
12 :セカンドシート
12B :折り返し部
12E :外側縁
15 :接合部
20 :バックシート
23 :吸収コア
25 :低坪量部(折曲基点部)
31 :吸収コア
50 :胴回り部材
51 :胴回り肌側シート
52 :弾性シート
53 :非弾性シート
54 :シート接合部
58 :吸収性本体
60 :シート圧搾部(移行促進部)
61 :コア圧搾部(折曲基点部)
65 :シート開口部(移行促進部)
70 :粘着部(折曲基点部)
80 :折曲基点部
FL1、FL2 :折り目(折曲基点部)
L :前後方向
R31 :コア配置領域
RA :接着領域
T :厚み方向
T1 :肌面側
T2 :非肌面側
W :幅方向