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特許7390985トイレトレーニング用インジケータ及びその使用、並びに吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】トイレトレーニング用インジケータ及びその使用、並びに吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/42 20060101AFI20231127BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61F13/42 B
A61F13/514 400
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020097617
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186534
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】丹治 浩之
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】河井 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】岩永 甲午郎
(72)【発明者】
【氏名】花岡 信太朗
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-018183(JP,A)
【文献】特表2011-526520(JP,A)
【文献】特開平05-196616(JP,A)
【文献】特開2020-078552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータの、前記トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するための使用であって、
前記トイレトレーニング用インジケータが、尿比重の値に応じて異なる応答を示す、
使用。
【請求項2】
幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータを含むトイレトレーニング用インジケータ資材の、前記トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するための使用であって、
前記トイレトレーニング用インジケータが、尿比重の値に応じて異なる応答を示し、
前記トイレトレーニング用インジケータ資材は、吸収性物品を構成する資材と、前記資材に適用された前記トイレトレーニング用インジケータと、を含む
使用。
【請求項3】
前記トイレトレーニング用インジケータ資材は、吸収性物品を構成する資材と、前記資材に適用された前記トイレトレーニング用インジケータを含有する担体と、を含む、
請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記資材がシート状基材であり、前記シート状基材が、可視スペクトル領域における30%以上80%以下の可視光透過率を有する、請求項2又は3に記載の使用。
【請求項5】
前記尿への前記応答が呈色反応である、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記トイレトレーニング用インジケータが、pH緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記トイレトレーニング用インジケータが、高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するための方法であって、
幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータを用いて、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することを含み、
前記トイレトレーニング用インジケータが、尿比重の値に応じて異なる応答を示す、
方法。
【請求項9】
トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するための方法であって、
幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータを含むトイレトレーニング用インジケータ資材を用いて、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することを含み、
前記トイレトレーニング用インジケータが、尿比重の値に応じて異なる応答を示し、
前記トイレトレーニング用インジケータ資材は、吸収性物品を構成する資材と、前記資材に適用された前記トイレトレーニング用インジケータと、を含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレトレーニング用インジケータ及びその使用、並びにトイレトレーニング用インジケータを備える吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿の排せつや、着用者の健康状態の変化を検知可能な吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、排せつ物を受け入れて収容する吸収性物品であって、幼児の健康状態を検知するセンサと、当該センサを視認可能な窓部とを備える吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2009-543652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
満一歳から小学校就学の始期に達するまでの者を指す幼児が、オムツを常用する状態から自分の意志で一般のトイレで排泄できる状態になるまでに行われる排泄訓練であるトイレトレーニングは、通常、幼児の歩行能力、会話能力、排尿間隔等に応じ、監護者の判断により行われる。しかしながら、幼児によってトイレトレーニングを開始すべき月齢は異なる上、オムツを常用する状態で、監護者が幼児の排尿間隔を把握することは容易でない場合がある。
【0005】
ここで、特許文献1の吸収性物品に備えられたセンサは、健康状態の良好な幼児の生育状態に応じて尿への応答が異なるものではないため、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するために使用可能ではない。
【0006】
したがって、本発明は、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握可能なトイレトレーニング用インジケータ、特に幼児の生育状態に応じてトイレトレーニングの開始時期の目安を把握可能なトイレトレーニング用インジケータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができ、特に、幼児の生育状態に応じてトイレトレーニングの開始時期の目安を把握可能な、トイレトレーニング用インジケータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るトイレトレーニング用インジケータ資材1の平面図を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について説明する。
【0011】
[態様1]
(構成)
幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示す、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータ。
【0012】
(効果)
トイレトレーニングを開始するには、脳機能や泌尿機能など幼児の心身の発達程度が一定以上となることが必要であるが、心身の発達程度には個人差があるため、容易には把握しづらい。本発明の第1の態様によれば、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータが尿に応答するとともに、幼児の生育状態に応じて、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が異なるので、このトイレトレーニング用インジケータを、例えば吸収性物品に使用したときに、当該幼児におけるトイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0013】
[態様2]
(構成)
上記尿への上記応答が呈色反応である、第1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ。
【0014】
(効果)
本発明の第2の態様によれば、トイレトレーニングの開始時期の目安を視覚的に把握することができる。
【0015】
[態様3]
尿比重の値に応じて異なる応答を示す、第1又は第2の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ。
【0016】
(効果)
幼児の心身の発達過程では、膀胱機能等が発達するとともに、腎機能が発達するため、尿濃縮機能の変化に伴って尿比重が変化する。したがって、本発明の第3の態様に係るトイレトレーニング用インジケータを、例えば吸収性物品に使用することによって、幼児におけるトイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0017】
[態様4]
(構成)
pH緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせを含む、第3の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ。
【0018】
(効果)
本発明の第4の態様に係るトイレトレーニング用インジケータによれば、尿比重を呈色反応によって比較的感度よく測定することができる。したがって、本発明の態様4によれば、トイレトレーニングの開始時期の目安を、比較的簡便に、比較的感度よく、かつ視覚的に把握することができる。
【0019】
[態様5]
(構成)
高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせを含む、第3の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ。
【0020】
(効果)
本発明の第5の態様に係るトイレトレーニング用インジケータによれば、呈色反応によって比較的簡便に尿比重を測定することができる。したがって、本発明の態様5によれば、トイレトレーニングの開始時期の目安を視覚的に把握することができる。
【0021】
[態様6]
(構成)
吸収性物品を構成する資材と、
上記資材に適用された、第1から第5の態様のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータと、
を含む、トイレトレーニング用インジケータ資材。
【0022】
(効果)
本発明の第6の態様によれば、上記トイレトレーニング用インジケータが、吸収性物品を構成する資材に適用されている。本発明の第6の態様によれば、トイレトレーニング用インジケータ資材の保管、運搬が容易となるとともに、吸収性物品の製造過程における上記トイレトレーニング用インジケータの適用工程を省略することができ、吸収性物品の製造過程がさらに簡略化される。
【0023】
[態様7]
吸収性物品を構成する資材と、
上記資材に適用された、第1から第5のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータを含有する担体と、を含む、トイレトレーニング用インジケータ資材。
【0024】
(効果)
本発明の第7の態様によれば、上記トイレトレーニング用インジケータが、インジケータを含有する担体に含有された形態で、吸収性物品を構成する資材に適用されている。本発明の第7の態様によれば、資材におけるトイレトレーニング用インジケータの適用をより簡便かつより正確に行うことができる。
【0025】
[態様8]
(構成)
吸収性物品を構成する上記資材がシート状基材であり、上記シート状基材が、可視スペクトル領域における30%以上80%以下の可視光透過率を有する、第6又は第7の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ資材。
【0026】
(効果)
本発明の第8の態様によれば、吸収性物品を構成する資材がシート状基材であり、このシート状基材が、可視スペクトル領域における30%以上80%以下の可視光透過率を有するので、シート状基材に適用されたインジケータの変化を、シート状基材を介して検知可能な一方で、糞便や尿がシート状基材を介して視認できないように構成することができる。
【0027】
[態様9]
(構成)
少なくとも吸収体を備え、
第1から第5の態様のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ、又は第6~第8のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ資材を備える、吸収性物品。
【0028】
(効果)
本発明の第9の態様に記載の態様によれば、吸収性物品が、上記トイレトレーニング用インジケータ、又は上記トイレトレーニング用インジケータ資材を備えるので、この吸収性物品を使用することにより、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0029】
[態様10]
(構成)
上記尿への応答が呈色反応であり、
着用者が、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又は
着用者が、トイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を更に備える、第9の態様に記載の吸収性物品。
【0030】
(効果)
本発明の第10の態様によれば、尿への応答が呈色反応であり、着用者がトイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又は着用者がトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を、吸収性物品が備えているので、監護者が、トイレトレーニングの開始時期を、速やかに判断することができる。
【0031】
[態様11]
(構成)
第9又は第10の態様に記載の吸収性物品を複数個収容し、
着用者がトイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又は
着用者がトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本が表示された、包装体。
【0032】
(効果)
本発明の第11の態様によれば、トイレトレーニング用インジケータを備えた吸収性物品が複数提供されるので、トイレトレーニングの開始時時期の目安を、日ごとの変動によらず、より正確に把握できるとともに、着用者がトイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又は着用者がトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を、包装体が備えているので、監護者が、トイレトレーニングの開始時期を、速やかに判断することができる。
【0033】
[態様12]
(構成)
第1から第5の態様のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ、又は第6~第8のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ資材の、吸収性物品への使用。
【0034】
(効果)
本発明の第12の態様によれば、上記トイレトレーニング用インジケータ又は上記トイレトレーニング用インジケータ資材を吸収性物品の製造に使用するので、トイレトレーニングの開始時期の目安を表示可能な吸収性物品を提供することができる。
【0035】
[態様13]
(構成)
第1から第5の態様のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ、又は第6~第8のうちのいずれか1の態様に記載のトイレトレーニング用インジケータ資材の、上記トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するための使用。
【0036】
(効果)
本発明の第13の態様によれば、上記トイレトレーニング用インジケータ又は上記トイレトレーニング用インジケータ資材を、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握するために使用するので、吸収性物品を使用して、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0037】
《トイレトレーニング用インジケータ》
本発明のトイレトレーニング用インジケータは、吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータであって、幼児の生育状態による尿への応答が異なり、トイレトレーニングの開始時期を示すものである。
【0038】
〈呈色反応〉
本開示に係る1つの実施態様では、トイレトレーニング用インジケータが、幼児の生育状態によって尿への異なる呈色反応を示す。この態様では、例えば、トイレトレーニング用インジケータを含有する担体が吸収性物品を構成する資材に適用されており、当該担体に含有されるインジケータが、幼児の生育状態に応じて異なる色調を示す。呈色の度合いは、肉眼で判定してもよく、又は光学的に反射率で測定してもよい。肉眼で呈色の度合いを判定する場合には、例えば、あらかじめ作成した標準色調表(色見本)などの色調と比較することによって、肉眼判定を行ってよい。あるいは、呈色の度合いを測定する場合には、スマートフォンなどによって撮影したインジケータの画像を、スマートフォンなどにインストールされた画像処理プログラムによって処理することによって、インジケータの呈色の度合いを判定してもよい。
【0039】
〈尿比重〉
【0040】
本発明の1つの実施形態に係るトイレトレーニング用インジケータは、尿比重の値に応じて異なる応答を示すインジケータである。
【0041】
尿比重は、尿比重の値に応じて異なる呈色反応を示す試薬(検出用化合物又は検出用組成物)を用いて計測してもよく(試験紙法など)、屈折計を用いて尿屈折率を計測することによって計測してもよく、又は浸透圧を利用した方法によって計測してもよい。
【0042】
尿比重の値に応じて異なる反応を示すトイレトレーニング用インジケータを用いてトイレトレーニングの開始時期の目安を把握するためには、特定の尿比重値をしきい値として設定することが好ましい。例えば、尿比重値が当該しきい値以上になったことを、トイレトレーニングの開始時期の目安とすることができる。尿比重値の検出範囲が例えば1.0000~1.0400である場合には、尿比重値が1.0250以上、1.0260以上、1.0270以上、1.0280以上、1.0290以上、1.0300以上、1.0310以上、1.0320以上、1.0330以上、1.0340以上、又は1.0350以上である場合を、トイレトレーニングの開始時期の目安として設定してよい。尿比重の値は、幼児の健康状態、水分摂取、食事制限、運動負荷、発汗、季節などの要因によって変動する場合がある。したがって、このような尿比重の変動を考慮してしきい値を設定することが好ましく、特には、尿比重の変動を考慮して、しきい値を場合に応じて複数設定すること、及び/又は、尿比重の変動に応じてしきい値を補正することが好ましい。なお、同様のことは、尿比重以外の原理を用いたインジケータについても当てはまる。
【0043】
≪緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせから構成される検出用組成物》
本開示に係る好ましい実施態様では、尿比重の値に応じて異なる応答を示すインジケータが、pH緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせから構成される検出用組成物を含んでいる。pH緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせを含む検出用組成物については、特開平05-196616号公報の記載を参照することができる。
【0044】
理論によって限定する意図はないが、このような検出用組成物を含むインジケータでは、界面活性剤が可溶化、湿潤効果を示すだけではなく、通常は塩の添加で促進されるpH指示薬の解離を逆に抑制する作用も示すため、結果として、塩の添加による緩衝剤のpH変化に伴うpH指示薬の吸光度(OD)変化が増大すると考えられる。
【0045】
緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤の組み合わせから構成される検出用組成物は、例えば、緩衝剤、pH指示薬、及び界面活性剤を、蒸留水などの溶媒に溶解させて溶液を調製し、この溶液を吸収性物品を構成する資材に適用することによって、用いてよい。
【0046】
(pH緩衝剤)
pH緩衝剤は、通常、pH3.0~10.0の範囲、好ましくはpH4.0~9.0の範囲で使用されるものであって、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の塩化物や硫酸塩等の強電解質の添加による濃度の変化でpHが変動するものを用いることができる。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンーマレイン酸緩衝剤〔トリス-マレイン酸緩衝剤〕、及びビス(2-ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン緩衝剤〔ビストリス緩衝剤〕が挙げられる。
【0047】
なお、本発明に係るpH緩衝剤として、リン酸塩、ビストリス緩衝剤等にホウ酸、クエン酸等の弱酸又はその塩を含んで成るものを併用すると、pH調整時にNaCl等の塩が生ずるのを防止できるので好ましい。
【0048】
pH緩衝剤として、MES(2-モルホリノエタンスルホン酸)、ADA(N-2(アセトアミド)イミノ二酢酸)、PIPES(ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸))、ACES(N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸)、BES(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸)、TES(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸)、HEPES(2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-エタンスルホン酸)、コラミン塩酸、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、若しくはビシン、又はこれらの混合物を用いることもできる。これらのうち、pH緩衝剤として、TES、BES及びACESがより好ましい。
【0049】
(pH指示薬)
pH指示薬は、使用するpH緩衝剤のpH変動幅内に変色域があるものであれば特に限定されない。pH指示薬としては、具体的には、ゲンチアナバイオレット、マラカイトグリーン、チモールブルー、メチルイエロー、ブロモフェノールブルー、コンゴーレッド、メチルオレンジ、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、リトマス、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ナフトールフタレイン、クレゾールレッド、クレゾールフタレイン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、及びアリザリンイエローR等を挙げることができる。
【0050】
好ましいpH指示薬としては、ブロモチモールブルー、ブロムクレゾールパープル、チモールブルー、フェノールレッド、クロルフェノールレッド、ブロムクレゾールグリーン等が挙げられ、これらのpH指示薬は、イオン強度の増強で解離が促進されるため好ましい。また、他の好ましいpH指示薬としては、メチルレッドを挙げることができる。なお、これらの指示薬は単独で使用しても、併用しても良い。例えば、ブロモチモールブルーを他のpH指示薬と併用した場合には呈色色調変化を大きくでき、また変色域も拡張することができるのでより実用的であり、より好ましい。ブロモチモールブルーと併用し得る他のpH指示薬としては、例えば、チモールブルー、フェノールレッド、メチルレッド等が好ましく挙げられる。
【0051】
(界面活性剤)
界面活性剤は、イオン強度の増強で促進されるpH指示薬の解離を抑制する作用を有するものを用いることができ、例えば、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン界面活性剤を挙げることができる。
【0052】
陰イオン界面活性剤の例としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシル硫酸リチウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、1ードデカンスルホン酸ナトリウム、ジイソオクチルスルホ琥珀酸ナトリウム(SDOSS)、オクチル硫酸ナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩が挙げられる。これらの陰イオン界面活性剤は、好ましくは、中性~アルカリ性(pH6~10)のpH緩衝剤とともに用いられる。
【0053】
陽イオン界面活性剤の例としては、例えば炭素原子数7以上のアルキル基を1以上有する第4級アンモニウム塩が挙げられ、具体的には臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム(MTAB)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、及び塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。また、陽イオン界面活性剤として、特には、フェニル基を有する第4級アンモニウム塩、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルジメチルベンジルアンモニウム等やピリジル基を有する第4級アンモニウム塩、例えば塩化ラウリルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ステアリルアミドメチルピリジニウム等を挙げることができる。これらの第4級アンモニウム塩は、比較的広い範囲のpH領域で使用することができる。
【0054】
両性界面活性剤の例としては、例えばラウリルジメチルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン、及び2ーラウリルーNーカルボキシルメチルーNーヒドロキシルエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられ、これらは好ましくは、中性領域(pH6~8)のpH緩衝剤とともに用いられる。
【0055】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(8)オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、及びソルビタンモノラウレートを挙げることができる。これらの非イオン界面活性剤は、好ましくは、中性領域(pH6~8)のpH緩衝剤とともに用いられる。
【0056】
本開示に係る検出用組成物に含有される各成分の量及び濃度は、特に限定されないが、呈色反応の視認性などを考慮して適宜設定することができる。検出用組成物に含有される各成分の量及び濃度については、例えば、特開平05-196616号公報の記載を参照することができる。
【0057】
本発明の検出用組成物を溶液の形態で資材等に適用する場合、当該溶液中のpH指示薬の濃度は、例えば、0.01w/v%~5.0w/v%若しくは0.01w/v%~2.5w/v%であってよく、0.05w/v%~2.0w/v%であってよく、又は0.1w/v%~1.0w/v%であってよい。pH指示薬の濃度が当該範囲内である場合、吸収性物品におけるインジケータの応答の良好な視認性を確保することができる。
【0058】
また、例えばpH指示薬としてブロモチモールブルーを使用する場合、トイレトレーニング用インジケータにおける1cm2あたりのpH指示薬の塗布量を5.0μg以上とすることができる。pH指示薬の塗布量を5.0μg以上とすることにより、トイレトレーニング用インジケータの応答の視認性がさらに高まる場合がある。
【0059】
本発明の検出用組成物を溶液の形態で資材等に適用する場合、当該溶液中のpH緩衝剤の濃度は、例えば、1~900mMであってよく、好ましくは5~300mMであってよい。
【0060】
本発明の検出用組成物を溶液の形態で資材等に適用する場合、当該溶液中の界面活性剤の濃度は、例えば、0.01w/v%~5.0w/v%若しくは0.01w/v%~2.5w/v%であってよく、0.05w/v%~2.0w/v%であってよく、又は0.1w/v%~1.0w/v%であってよい。
【0061】
〈高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせから構成される検出用組成物〉
本開示に係る別の実施態様では、尿比重の値に応じて異なる呈色反応を示すインジケータが、高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせを含む検出用組成物を含んでいる。理論によって限定する意図はないが、当該検出用組成物をインジケータとして用いた場合には、尿中に含まれる陽イオンが、高分子電解質によってプロトンに交換され、このプロトンがpH指示薬を変色させると考えられる。尿中に含まれる陽イオンの濃度は尿比重に比例すると考えられるため、高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせによって得られる呈色反応によって、尿比重を測定することができる。
【0062】
(高分子電解質)
高分子電解質としては、酸基を有する水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、例えば、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸、及びポリビニル硫酸等を挙げることができる。
【0063】
(pH指示薬)
pH指示薬については、上記の記載を参照することができる。
【0064】
〈陽イオン〉
本発明のさらに別の実施形態では、尿中の陽イオンを検出対象とすることもできる。幼児においては、腎機能の発達に伴い、尿中の陽イオンの濃度が変化するので、陽イオンを検出対象物質とすることにより、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。また、トイレトレーニング用インジケータの検出対象物質への応答として、呈色反応を利用することにより、トイレトレーニングの開始時期の目安を視覚的に把握することができる。
【0065】
ここで、本実施形態のトイレトレーニング用インジケータが検知する陽イオンとしては、主として、ナトリウムイオン及びカリウムイオン等の1価の陽イオンを挙げることができる。尿における陽イオンの濃度を計測する方法は、特に限定されないが、上述の高分子電解質及びpH指示薬の組み合わせを含む試薬組成物を用いた呈色反応によって計測する方法が挙げられる。
【0066】
本発明の実施形態におけるトイレトレーニング用インジケータは、所定濃度以上の尿中物質に応答するように、検出用化合物又は検出用組成物等の種類や適用量が調整されていることが好ましい。
【0067】
〈SAP〉
トイレトレーニング開始時期の目安の把握方法については、上述の検出用組成物以外にも、例えば、吸収体に用いられる高吸水性高分子(SAP)の崩壊を利用したインジータを利用してもよい。例えば、アスコルビン酸や鉄によってSAPの崩壊が発生しやすくなること、及び、アスコルビン酸や鉄が乳幼児の年齢(月齢)が高くなるほど増加することを利用して、尿中のアスコルビン酸や鉄が所定値より高い場合に崩壊するSAPをインジケータの試薬として使用することにより、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0068】
そのようなインジケータとしては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムなどの特定のSAPが挙げられる。ポリアクリル酸ナトリウムは、発達がある程度進行した幼児の尿に接触すると、ゲル状構造が不安定化し、少なくとも部分的に液状化する。したがって、ポリアクリル酸ナトリウムをトイレトレーニング用インジケータとして使用することによって、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。
【0069】
また、SAPは、幼児用オムツにおいて吸収性物品として使用することができるため、専用のインジケータを別途用意する必要がないという観点からも、SAPをトイレトレーニング用インジケータとして使用することは、特に有利である。
【0070】
理論によって限定する意図はないが、上述のSAPが幼児の生育状態によって尿への反応が異なるメカニズムは、尿中におけるアスコルビン酸及び鉄の量変化に関係していると考えられる。すなわち、低月齢児(乳幼児)では、母乳に含まれる鉄の含有量が低い上に造血が盛んであることに起因して、鉄の排出が抑制されており、一方で、高月齢児では、摂食の質及び量の変化に伴って鉄の排出量が増加していると考えられる。非ヘム鉄の吸収に関与するアスコルビン酸についても、同様に、低月齢児では排出量が低く、高月齢児では排出量が高くなっていると考えられる。したがって、上述のSAPは、低月齢児の尿と接触しても構造がほとんど変化しないが、高月齢児の尿に比較的多量に含まれるアスコルビン酸及び鉄によって、ゲル構造が不安定化すると考えられる。
【0071】
〈その他の検出対象物質と作用する検出反応物質を含むトイレトレーニング用インジケータ〉
本発明のトイレトレーニング用インジケータは、上記以外の検出用試薬(検出用化合物又は検出用組成物)であってもよい。そのような検出用試薬としては、例えば、pH指示薬(尿の水素イオンやたんぱく質に応答)、スルファニルアミド(尿中の亜硝酸塩に応答)、ニトロブルシドナトリウム水和物(尿中のケトン体に応答)、グルコースオキシダーゼとペルオキシダーゼと還元性色原体の組み合わせ(尿中のブドウ糖に応答)、ジアゾニウム塩(尿中のビリルビンに応答)等を含む。このような検出用試薬を含むトイレトレーニング用インジケータも、本発明の範囲内に含まれるものである。
【0072】
≪トイレトレーニング用インジケータ資材≫
本開示は、トイレトレーニング用インジケータ資材にも関する。トイレトレーニング用インジケータ資材は、吸収性物品を構成する資材と、この資材に適用されたトイレトレーニング用インジケータとを含む。
【0073】
トイレトレーニング用インジケータが吸収性物品を構成する資材に適用されている場合には、トイレトレーニング用インジケータ資材の保管、運搬が容易となるとともに、吸収性物品を製造する際にトイレトレーニング用インジケータの適用工程を省略することができるため、吸収性物品の製造過程がより簡略化される。
【0074】
図1は、本発明の実施形態に係るトイレトレーニング用インジケータ資材1の平面図を示す図面である。本実施形態において、トイレトレーニング用インジケータ資材1は、バックシート3と、バックシート3に適用されたトイレトレーニング用インジケータ2とを含む。トイレトレーニング用インジケータ2は、例えば検出用組成物の溶液を塗布したものであり、好ましくは乾燥した状態/固化した状態で保持されている。なお、本発明の別の実施態様として、トイレトレーニング用インジケータ資材1が、バックシート3、及び、当該バックシート3に適用された、トイレトレーニング用インジケータを含有する担体2′を含んでいてもよい。
【0075】
本発明の実施形態において、上記のバックシート3に代表されるシート状基材は、可視スペクトル範囲における光線透過率が30%以上80%以下であることが好ましい。上記のシート状基材が、上記光線透過率を有することにより、シート状基材に適用されたトイレトレーニング用インジケータの呈色反応が、上記シート状基材を介した状態でも容易に視認可能であるとともに、糞便や尿の色味が、この反対面から視認しにくいものとすることができる。なお、可視スペクトル範囲における光線透過率は、透過率測定器によって計測することができる。
【0076】
取扱いが比較的簡便であり、かつ例えば吸収性物品を構成する資材への適用が容易であることから、トイレトレーニング用インジケータは、本開示に係る溶液状の検出用組成物を不織布にしみ込ませて乾燥させたインジケータ含有担体として資材に適用されていることが好ましい。
【0077】
(資材)
吸収性物品を構成する資材としては、例えば、液透過性のトップシートを構成するシート状資材(例えば、不織布、フィルム等)、液不透過性のバックシートを構成するシート状資材(例えば、不織布、フィルム等)、吸収層を構成する資材(パルプ繊維、高吸収性ポリマー、コアラップシート等)、セカンドシート、キャリアシート、中間シート、及び外装シート等、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。なお、トップシートは、吸収性物品の着用時に、バックシートよりも肌側に位置する資材である。バックシートとして、少なくとも一部の表面を親水化した液不透過性のシート状基材を用いてもよい。
【0078】
トップシート及び/又はバックシートとして不織布を用いる場合、不織布を構成する繊維としては、天然繊維、化学繊維等が挙げられ、より具体的には、粉砕パルプ、コットン等のセルロース繊維;レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース;アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース;熱可塑性疎水性化学繊維;親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維などが挙げられる。熱可塑性疎水性化学繊維としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる単繊維、PE及びPPのグラフト重合体からなる繊維などが挙げられる。
【0079】
不織布の例としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS等)等が挙げられる。
【0080】
不織布は、親水化処理されていてもよい。この親水化処理の方法としては、特に制限されないが、不織布の表面に親水化剤をコーティングする方法、不織布を構成する繊維の表面に親水化剤をコーティングする方法、及び不織布を構成する繊維の原料である合成樹脂に親水化剤を含有させる方法などが挙げられる。
【0081】
吸収層に用いることができる吸収体は、尿などの排泄液を吸収及び保持することができるものであれば特に制限されず、公知の吸収体を用いることができる。吸収体としては、例えば、吸収性材料によって構成される吸収コアを、親水性を有するティッシュ等のコアラップシートで覆ったものなどが挙げられる。吸収コアを構成する吸収性材料としては、例えば、親水性繊維や高吸収性ポリマーなどが挙げられ、より具体的には、粉砕パルプ、コットン、レーヨン、及びアセテート等のセルロース系繊維、アクリル酸ナトリウムコポリマー等の高吸収性ポリマー、並びにこれらを組み合わせた混合物などが挙げられる。
【0082】
液不透過性のバックシートとしては、PE、PP等を含むフィルム、通気性を有する樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に通気性を有する樹脂フィルムを貼り合わせた積層体、SMS等の複層不織布などが挙げられる。
【0083】
〈トイレトレーニング用インジケータを含有する担体〉
本開示の1つの実施態様では、トイレトレーニング用インジケータが、担体に含有された形態で、トイレトレーニング用資材に適用されている。すなわち、トイレトレーニング用インジケータ資材が、吸収性物品を構成する資材と、この資材に適用された、トイレトレーニング用インジケータを含有する担体(インジケータ含有担体)とを、含む。
【0084】
トイレトレーニング用インジケータが担体に含有された形態である場合には、資材におけるトイレトレーニング用インジケータの適用をより簡便かつより正確に行うことができる。
【0085】
トイレトレーニング用インジケータ資材の好ましい実施態様では、バックシートに、上記のインジケータ含有担体が適用されている。
【0086】
(トイレトレーニング用インジケータを含有する担体)
本開示に係るトイレトレーニング用インジケータを含有する担体は、上述の検出用化合物又は検出用組成物を、吸収性担体等の担体に、塗布、印刷、浸漬、練り込み、注入、分散、散布、若しくは積層して得られる塗布物、被膜、混合物、分散物、又は積層物であってよい。本開示に係るトイレトレーニング用インジケータを含有する担体は、上述の検出用化合物又は検出用組成物を含有する溶液、分散液、接着性組成物、ホットメルト接着剤等を、吸収性担体又は担持フィルムなどの担体に適用して乾燥/固化することによって作製してもよい。
【0087】
例えば、本発明に係る検出用化合物又は検出用組成物及びバインダーを、溶媒に溶解して試薬溶液を調製し、この試薬溶液を吸収性担体に1~数回含浸し、又は、担持フィルム上に1~数回コーティング又は塗布したのち乾燥させて試験片を作製し、これをインジケータ含有担体としてもよい。バインダーとしては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、及びエチルセルロースが挙げられる。上記の溶媒としては、水及び有機溶剤並びにこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0088】
インジケータを含有させる担体のうち、吸収性担体としては、例えば、セルロース繊維濾紙、布、不織布、紙、合成繊維濾紙等の多孔性担体が挙げられる。また、担持フィルムとしては、合成紙、及びアルミラミネートフィルム等が挙げられる。
【0089】
吸収性担体及び担持フィルムの大きさ、寸法等については特に制限はない。
【0090】
(資材へのインジケータ含有担体の適用)
インジケータ含有担体を資材に適用する方法は、特に限定されない。例えば、吸収性担体又は担持フィルムに検出用組成物等を適用したインジケータ含有担体の場合には、接着剤又は接着テープによって、インジケータ含有担体を資材に接着してよい。
【0091】
トイレトレーニング用インジケータが、トイレトレーニング用インジケータ資材に、直接、適用されていてもよい。このようなトイレトレーニング用資材は、例えば、蒸留水などの溶媒に溶解した溶液状の検出用組成物を、資材に塗布することによって製造することができる。あるいは、上述の検出用化合物又は検出用組成物を、トイレトレーニング用資材に、塗布、印刷、浸漬、練り込み、注入、分散、散布、若しくは積層によって、適用してもよい。この場合、トイレトレーニング用インジケータの性状は、検出用化合物又は検出用組成物の溶液又は分散液であってもよく、液状の接着剤成分に検出用化合物又は検出用組成物を混合して液状の接着性組成物としたものであってもよく、常温で固体状態にある熱可塑性樹脂(ホットメルト接着剤等)に検出用化合物又は検出用組成物を混合(例えば、混錬や粉体/粒体/ペレットとして分散)したものであってもよい。
【0092】
≪吸収性物品》
本発明の吸収性物品は、少なくとも吸収体を備えるとともに、本発明のトイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を備える。吸収性物品が、トイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を備えているため、吸収性物品を使用することにより、トイレトレーニングの開始時期の目安を把握することができる。特には、本発明の吸収性物品は、少なくとも吸収体を備えるとともに、トイレトレーニング用インジケータ資材を備える。
【0093】
本発明の1つの実施形態によれば、吸収性物品が、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された吸収体(吸収層)とを有しており、かつ、バックシートに、本発明のトイレトレーニング用インジケータが適用されている。
【0094】
このような吸収性物品は、例えば、バックシート用連続シートの一方面にトイレトレーニング用インジケータを適用し、この一方面に吸収層を配置し、この吸収層にトップシート用連続シートを配置して積層体を形成し、かつ、ヒートシール接着剤等の接着手段を用いてこの積層体を一体化したのちに、一体化された連続積層体から吸収性物品を切り出して個別化することによって、製造することができる。
【0095】
なお、本発明において、トイレトレーニング用インジケータは、バックシートに適用される態様に限定されず、例えば、吸収体に適用されていてもよい。この場合、監護者が、着用者から吸収性物品を取り外す際に、トップシートを介して、吸収体におけるトイレトレーニング用インジケータの呈色反応等を視認することができる。
【0096】
本開示に係る1つの実施形態では、吸収性物品が、着用者がトイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又は、着用者がトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を更に備えている。これにより、監護者が、トイレトレーニングの開始時期を、速やかに判断することができる。
【0097】
本開示に係る別の実施態様においては、pH指示薬としてブロモチモールブルーを使用する場合、例えば、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本として黄色の色見本を用い、かつ/又は、トイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本として青色又は緑色の色見本を用いることができる。
【0098】
≪包装体》
なお、本発明は、吸収性物品を複数個収容した包装体にも関する。トイレトレーニング用インジケータを備えた吸収性物品が複数提供されるので、トイレトレーニングの開始時時期の目安を、日ごとの変動によらず、より正確に把握できる。
【0099】
本発明の別の実施形態においては、吸収性物品が、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本及びトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を備えておらず、上記包装体が、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本、及び/又はトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本を備えている。このような実施形態によれば、監護者が、トイレトレーニングの開始時期を、速やかに判断することができる。色見本としては、例えば、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色見本として黄色の色見本を挙げることができ、かつ/又はトイレトレーニングに適した生育状態ではないことを示す色見本として青色又は緑色の色見本を挙げることができる。
【0100】
また、本発明の別の実施形態においては、上記包装体に、着用者のトイレトレーニングの開始時期を示す目安として、上記の呈色反応において、トイレトレーニングに適した生育状態であることを示す色が生じる頻度を記載してもよい。
【0101】
≪トイレトレーニング用インジケータを用いたトイレトレーニング開始時期の目安の把握方法》
本発明は、本発明のトイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を用いた、トイレトレーニング開始時期の目安の把握方法にも関する。
【0102】
本開示に係るトイレトレーニング開始時期の目安の把握方法は、尿と接した吸収性物品において、トイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材における呈色反応を検知して、トイレトレーニング開始時期の目安を把握する工程を含む。
【0103】
本開示に係るトイレトレーニング開始時期の目安の把握方法では、トイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を備える吸収性物品において、トイレトレーニング用インジケータが、吸収性物品の着用者である幼児の生育状態によって、尿への異なった応答を異示すので、監護者(母親、家族等)が、トイレトレーニング開始時期の目安を把握することができる。
【0104】
本発明のトイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を用いた、トイレトレーニング開始時期の目安の把握方法においては、着用者により尿が排泄された後、好ましくは1分以内に、トイレトレーニング用インジケータが応答し、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が、好ましくは1時間以上継続し、より好ましくは3時間以上継続し、さらに好ましくは12時間以上継続する。監護者は、トイレトレーニング用インジケータが尿に応答している間に、着用者が装着する吸収性物品を取り換えることが好ましい。
【0105】
本発明のトイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を用いた、トイレトレーニング開始時期の目安の把握方法においては、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が継続する間にわたって、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が、着用者である幼児の生育状態に応じて異なるものであることが好ましい。よって、本発明のトイレトレーニング用インジケータ又はトイレトレーニング用インジケータ資材を用いた、トイレトレーニング開始時期の目安の把握方法においては、好ましくは1時間以上の間、より好ましくは3時間以上の間、更に好ましくは12時間以上の間にわたって、トイレトレーニング用インジケータの尿への応答が、着用者である幼児の生育状態に応じて異なるものであることが好ましい。
【0106】
次に、本発明を以下の実施例、比較例により更に具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が制限されるものではない。
【実施例
【0107】
≪実施例1~6及び比較例1~5≫
トイレトレーニング用インジケータとして、尿比重値に対して異なる応答を示す検出用組成物を用いて、インジケータの尿への応答、及びトイレトレーニングの成否を評価した。
【0108】
〈トイレトレーニングの成否の評価方法〉
トイレトレーニングの成否は、トイレトレーニングの結果、少なくとも日中の間にオムツなしで過ごせる状態になった場合(日中の間にわたってオムツを卒業することができた場合)、及び夜間を含めて通日オムツなしで過ごせる状態になった場合(オムツを卒業することができた場合)を、トイレトレーニングが成功した場合として評価した。なおオムツを卒業した状態とは、自分の意志で一般的なトイレで排泄できる状態になったことを示している。
【0109】
〈オムツ〉
実施例及び比較例で使用したオムツは、吸収性物品を有しており、この吸収性物品は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシートとバックシートとの間に配置された、吸収体としての吸収層とを有しており、かつ、トイレトレーニング用インジケータ資材としてのバックシートに、本開示に係るトイレトレーニング用インジケータが適用されていた。具体的には、トイレトレーニング用インジケータをバックシートに直接塗布し乾燥したものをトイレトレーニング用インジケータ資材として用いたか、又は、トイレトレーニング用インジケータを担体に保持したものをバックシートに接着して、これをトイレトレーニング用インジケータ資材として用いた。
【0110】
〈尿への応答の評価方法〉
トイレトレーニング用インジケータとしては、尿比重を計測することができるインジケータを用いた。具体的には、pH指示薬としてのブロモチモールブルー及びメチルレッド、界面活性剤としてのポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート(Tween20)、並びにpH緩衝剤としてのTESを含む試薬組成物を用いた。尿を吸収したオムツの吸収性物品におけるトイレトレーニング用インジケータの呈色の度合いを、色見本に対して参照することによって、尿の比重を測定した。尿の比重は、1.0000~1.0350の範囲で数値化し、評価期間中に計測した尿比重の平均値を、平均尿比重値とした。
【0111】
〈実施例1~6及び比較例1~5〉
上述のオムツを着用した2才2ヶ月(26月齢)~3才4ヶ月(40月齢)の幼児について、それぞれ、2~4日間の評価期間にわたって尿比重の計測を行った。同時に、トイレトレーニングを行い、トイレトレーニングの成否を評価した。
【0112】
評価結果を下記の表1に示す。表1では、幼児の月齢、トイレトレーニングを行った期間における平均尿比重値、及びトイレトレーニングの結果を示している。トレーニングの結果は、トレーニングが成功した場合(オムツを卒業できた場合)を「〇」とし、失敗した場合(オムツを卒業できなかった場合)を「×」として示した。
【0113】
【表1】
【0114】
表1で見られるように、平均尿比重値が1.0292~1.0333であった実施例1~6の場合には、トイレトレーニングを行うことによって、オムツを卒業することができた。一方で、平均尿比重が1.0258~1.0283であった比較例1~5の場合には、トイレトレーニングを行っても、オムツを卒業することができなかった。
【0115】
特に、比較例1と実施例1は、同じ幼児についての結果を示している。平均尿比重が1.0261であった時点(比較例1)では、トイレトレーニングを行ってもオムツを卒業することができなかったが、平均尿比重が1.0306であった時点(実施例1)では、トイレトレーニングを行うことによってオムツを卒業できたことがわかる。なお、比較例3と実施例2も、同じ幼児についての結果を示しており、同様のことがいえる。
【0116】
なお、尿比重値は腎機能の発達とともに増加するため、年齢(月齢)と尿比重との間には、ある程度の相関があると考えられる。しかしながら、年齢と尿比重との相関は弱いものであり、実際、上記の表1を見ても、年齢が比較的低いにもかかわらず尿比重値が比較的高い場合(実施例6など)がある一方で、年齢が比較的高くても尿比重値が比較的低い場合(比較例2、3など)場合がある。したがって、年齢と尿比重値との間にある程度の相関関係があるからといって、尿比重値の代わりに年齢のみを指標としてトイレトレーニングの開始時期を判断できるものではないことが、上記の結果から明らかである。むしろ、尿比重値は、幼児がトイレトレーニングに適した発達段階になっていることを判断するうえで、年齢からは読み取ることのできない指標を与えるものである。
【0117】
上述の実施例及び比較例から、幼児の生育状態による尿への応答が異なる吸収性物品用のトイレトレーニング用インジケータを用いることによって、トイレトレーニングの開始時期を的確に把握することができることがわかった。
【符号の説明】
【0118】
1 トイレトレーニング用インジケータ資材
2 トイレトレーニング用インジケータ
2′ トイレトレーニング用インジケータを含有する担体
3 バックシート
図1