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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】脂肪族有機化合物のアルキル化の方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 2/58 20060101AFI20231127BHJP
   C01B 39/46 20060101ALI20231127BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20231127BHJP
   C07C 9/16 20060101ALI20231127BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231127BHJP
【FI】
C07C2/58
C01B39/46
B01J29/70 Z
C07C9/16
C07B61/00 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020534890
(86)(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018086229
(87)【国際公開番号】W WO2019122147
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】17209768.5
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マクガイア,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】パルフレスク,アンドレイ-ニコラエ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】デ ヴォス,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】トムキンス,パトリク
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表平04-502756(JP,A)
【文献】特表2014-523399(JP,A)
【文献】特表2012-530035(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104557393(CN,A)
【文献】特表2000-500485(JP,A)
【文献】米国特許第05824835(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07B、B01J、C01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族有機化合物のアルキル化のための方法であって、
(a)BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む触媒を提供することであって、BEA骨格構造が、SiO及びAlを含むことと、
(b)1種以上のアルキル化有機化合物を得るための1つ以上の反応容器中で、1種以上のアルキル化剤の存在下、触媒を1種以上の脂肪族有機化合物と接触させることと
を含み、
1種以上のゼオライト材料が、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成プロセスから得られたものであり、
1種以上のゼオライト材料の1つ以上のSi:Alモル比が、4.1~10の範囲であり、
1種以上のゼオライト材料のうちの1つ以上が、少なくとも以下:
【表1】


の反射を含むX線回折パターンを有し、100%が、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関するものであり、
1種以上のゼオライト材料が、1種以上のゼオライト材料の骨格に対する対イオンとしてHを含有し、
1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるH以外に、1種以上のゼオライト材料は、100質量%のSiOに対して5質量%以下の非骨格元素を含有し、
前記1種以上の脂肪族有機化合物が任意に分枝鎖の(C2~C20)炭化水素であり、
前記1種以上のアルキル化剤が1種以上のオレフィンを含み、その1種以上のオレフィンが任意に分枝鎖の(C2~C20)アルケンを1種以上含む、方法。
【請求項2】
1種以上のゼオライト材料が、非焼成である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種以上のゼオライト材料の1つ以上のSi:Alモル比が、4.3~8の範囲である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1種以上のゼオライト材料の1つ以上のSi:Alモル比が、4.1~6の範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
1種以上のゼオライト材料の1つ以上のSi:Alモル比が、4.3~5.5の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるH以外に、1種以上のゼオライト材料は、100質量%のSiOに対して3質量%以下の非骨格元素を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるH以外に、1種以上のゼオライト材料は、100質量%のSiOに対して0.5質量%以下の非骨格元素を含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1種以上の脂肪族有機化合物が、任意に分枝鎖の(C2~C16)炭化水素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
種以上の分枝鎖炭化水素が、次式
【化1】
[式中、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に分枝鎖の(C1~C8)アルキルである]を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
1種以上の脂肪族有機化合物が、炭素原子および水素原子からなる非置換炭化水素である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
1種以上のアルキル化剤が、1種以上のオレフィンを含み、その1種以上のオレフィンが(C2~C16)アルケンを1種以上含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
1種以上の脂肪族有機化合物と前記1種以上のアルキル化剤とのモル比が、10~250の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
回分式または連続式で実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む触媒を使用して脂肪族有機化合物をアルキル化する方法であって、ゼオライト材料が、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成方法で得られる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高度分枝CおよびCアルカンは、優れた燃料特性を示し、プロペンまたはブテンを使用したイソブタンのアルキル化によって製造することができる(図1参照)。工業規模で、このアルキル化は現在、フッ化水素酸または硫酸をベースとし、これまで固体触媒が液体酸に置き換わることは判明していない。いくつかの活性固体触媒は公知であるが、安定性は依然として主要課題である。これまでのところ、最も有望な触媒は、LaおよびCe交換FAU型ゼオライトおよび種々のH型ゼオライトであり、ゼオライトベータは良好な結果を示す。したがって、Feller、A.ら、Journal of Catalysis,2004、第224巻、80~93頁は、酸性型のゼオライトXおよびYを用いたブテンによるイソブタンのアルキル化に関する。一方、Dalla Costa,B.O.ら、Applied Catalysis A2010、第385巻、144~152頁およびCorma,A.ら、Applied Catalysis A 1994、第119巻、83~96頁は、それぞれ、ゼオライトベータをベースとした固体触媒を用いたブテンによるイソブタンのアルキル化に関する。しかしながら、過度に強い酸性部分は亀裂を促進するが、過度に弱い酸性部分はオレフィンの二量化を誘発するという問題もあるため、酸強度のバランスをとる問題が進行中である。
【0003】
ゼオライトベータ触媒は、芳香族有機化合物のアルキル化で使用されることも知られている。この点において、国際公開第2012/137133(A)号は、有機鋳型を使用しない合成方法から得られたゼオライトベータを固体触媒として使用する方法に関する。特に、結果は、鋳型合成から得られる市販のゼオライトベータと比較して、ゼオライトはより低い活性を示すが、モノアルキル化生成物に対する選択率はより高い。さらに、モノアルキル化生成物に関しては、市販のゼオライトベータと比べて位置選択率の向上が観察される。
【0004】
脂肪族有機化合物のアルキル化に関しては、特に上述の触媒安定性の問題および現在の固体触媒で観察される副反応の問題を考慮して改善された触媒が依然として必要とされている。
【0005】
米国特許第4992616(A)号および米国特許第5824835(A)号は、それぞれ、イソパラフィンによるオレフィンのアルキル化のための不均一触媒作用のプロセスに関する。Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 2000、第35~36巻、75~87頁は、ゼオライトベータによって触媒される反応における軟質オレフィンによるイソブタンのアルキル化に関する。一方、Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 1998、第22巻、1~3、379~388頁は、軟質オレフィンによるイソブタンのゼオライトベータ触媒反応に与える酸性度の影響に関する。Yuki Katoら、Journal of the Japan Petroleum Institute 2013、第56巻、5、349~355頁は、H型のゼオライトベータを用いた1-ブテンによるイソブタンのアルキル化に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2012/137133(A)号
【文献】米国特許第4992616(A)号
【文献】米国特許第5824835(A)号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Feller、A.ら、Journal of Catalysis,2004、第224巻、80~93頁
【文献】Dalla Costa,B.O.ら、Applied Catalysis A2010、第385巻、144~152頁
【文献】Corma,A.ら、Applied Catalysis A 1994、第119巻、83~96頁
【文献】Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 2000、第35~36巻、75~87頁
【文献】Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 1998、第22巻、1~3、379~388頁
【文献】Yuki Katoら、Journal of the Japan Petroleum Institute 2013、第56巻、5、349~355頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、脂肪族有機化合物をアルキル化するための改善された方法を提供することであった。したがって、驚くべきことに、BEA骨格構造を有するゼオライト材料、特にゼオライトベータを含む触媒の使用を要する該方法は、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成方法から得られるゼオライト材料をその中で使用することによって大きく改善することができることが判明した。特に、かなり驚くべきことに、このようなゼオライト材料を使用することによって、アルキル化触媒の活性が、鋳型合成法から得られるBEA骨格構造を有する市販のゼオライト材料の活性を考慮しても予測できないほど増加し得ることが判明した。したがって、本出願の実験の項で実証するように、活性の増加は、後者の骨格構造のSi:Alモル比の低下に伴って観察され得るが、特に骨格構造のSi:Alモル比が低い状態で、有機鋳型を使用しない合成方法から得られるBEA骨格を有するゼオライト材料を使用するときに達成され得る活性の増加は、市販のBEA骨格構造を有するゼオライトで観察され得る傾向を大きく上回る。さらに、またさらにより意外なことに、有機鋳型を使用しない合成方法から得られる、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を用いたアルキル化反応の、アルキル化剤および脂肪族有機化合物の炭素原子の合計数と同じ数の炭素原子を有する反応生成物に対する選択率は、市販のBEA骨格構造を有するゼオライト材料を用いたときより有意に高いことが驚くべきことに判明した。特に、本出願の実験の項で実証されるように、この現象は、特に低いSi:Alモル比とは関係しないが、より高いSi:Alモル比でも同様に観察され得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、
(a)BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む触媒を提供することであって、該BEA骨格構造が、YOを含み、任意にXを含み、式中、Yは四価の元素であり、Xは三価の元素であることと、
(b)1種以上のアルキル化有機化合物を得るための1つ以上の反応器中で、1種以上のアルキル化剤の存在下、触媒を1種以上の脂肪族有機化合物と接触させることと
を含む、脂肪族有機化合物をアルキル化する方法であって、
1種以上のゼオライト材料が、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成方法から得られる、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、用語「有機鋳型」および「有機構造指向剤」は、同意語として使用され、用語「有機鋳型」または「有機構造指向剤」は、任意の有機化合物、好ましくは構造指向剤としてBEA骨格構造を有するゼオライト材料を調製するための合成方法に添加され得る有機陽イオンを含む任意の有機化合物を指す。さらに、用語「有機鋳型非含有」は、本出願で使用する場合、構造指向剤として有機鋳型を使用しない(すなわち、有機鋳型を含まない)合成方法を指し、前記用語は、そのプロセス中のいずれの時点でも、反応混合物中に含まれる100質量%のYOに対して1質量%超の有機構造指向剤、好ましくは反応混合物中に含まれる100質量%のYOに対して0.5質量%超、より好ましくは0.1質量%超、より好ましくは0.05質量%超、より好ましくは0.01質量%超、より好ましくは0.005質量%超、より好ましくは0.001質量%超、より好ましくは0.0005質量%超、より好ましくは0.0001質量%超の有機構造指向剤を含まない、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を調製する合成方法を定義する。
【0011】
本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として提供されるゼオライト材料の数および/または種類には特に制限がないが、ただし、BEA骨格構造を有し、少なくともYOを含み、本発明の各実施形態および/または好ましい実施形態で定義する脂肪族有機化合物のアルキル化を触媒する上で適するものとする。したがって、例として、1種以上のゼオライト材料は、ゼオライトベータ、[B-Si-O]-BEA、[Ga-Si-O]-BEA、[Ti-Si-O]-BEA、Al富化ベータ、CIT-6、ツァーニック沸石、および純シリカベータからなる群から選択される1種以上のゼオライトを含んでもよく、好ましくは、1種以上のゼオライト材料は、ゼオライトベータを含む。ここでも、好ましくは1種以上のゼオライト材料中に含まれるゼオライトベータのうち、使用できるその特定の種類には特に制限はないが、ただし有機鋳型を用いない合成方法から得られるものとする。
【0012】
しかしながら、本発明によれば、本発明の方法の触媒に含まれる1種以上のゼオライト材料は、本発明の特定のまたは好ましい実施形態のいずれかによるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料からなることがさらに好ましく、より好ましくは、本発明の方法の触媒に含まれる1種以上のゼオライト材料は、本発明の特定のまたは好ましい実施形態のいずれかによるゼオライトベータからなる。本発明によれば、本発明の方法の触媒は、本発明の特定のまたは好ましい実施形態のいずれかによるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料からなることが、それよりさらに好ましく、より好ましくは、本発明の方法の触媒は、本発明の特定のまたは好ましい実施形態のいずれかによるゼオライトベータからなる。
【0013】
したがって、本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料は、ゼオライトベータを含むことが好ましく、好ましくは、1種以上のゼオライト材料はゼオライトベータであり、より好ましくは、ゼオライトベータは、1種以上のゼオライト材料として使用される。
【0014】
原則として、本発明の方法において用いられるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、考えられる任意の合成方法によって得ることができるが、ただし構造指向剤として有機鋳型を使用しない方法から同様に得ることができるものとする。好ましくは、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成方法から得られる。Xiaoら、Chem.Mater.2008、20、4533~4535頁および支援情報には、例えば、ゼオライトベータ種晶を使用してアルミノケイ酸塩ゲルの結晶化を実施する、ゼオライトベータの合成方法が記載されている。この点において、BEA骨格構造を有するゼオライト材料の有機鋳型を使用しない合成、具体的にはゼオライトベータの有機鋳型を使用しない合成に関する、国際公開第2010/146156(A)号も言及することができる。一方、Majanoら、Chem.Mater.2009、21、4184~4191頁には、有機鋳型の不在下で播種を用いる反応から得ることができる、3.9と同等に低いSi/Al比を有するAl富化ゼオライトベータ材料が考察されている。
【0015】
本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料は、好ましくは、BEA骨格構造を有するゼオライト材料、具体的には特定のテトラアルキルアンモニウム塩および/または関連の有機鋳型、例えばテトラエチルアンモニウム塩および/またはジベンジルメチルアンモニウム塩、ならびにジベンジル-1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンの合成において典型的に使用される有機構造指向剤の不純物を複数含まない。このような不純物は、例えば、好ましい合成方法で使用される種晶中に依然として存在する有機構造指向剤によって生じ得る。本発明によれば、有機鋳型または有機構造指向剤の不純物は、1種以上のゼオライト材料に含まれる100質量%のYOに対して1質量%以下の量、好ましくは、1種以上のゼオライト材料に含まれる有機構造指向剤の0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の量を占める。
【0016】
さらに、本発明によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、非焼成であることが好ましく、これは、焼成工程を経ていないことを意味する。本発明の趣旨の範囲内で、焼成工程は、一般的に、1種以上のゼオライト材料を、500℃を超える温度で加熱することを要するプロセスを示す。しかしながら、より好ましくは、本発明による非焼成ゼオライト材料は、450℃、より好ましくは350℃、より好ましくは300℃、より好ましくは250℃、より好ましくは200℃を超える温度、さらにより好ましくは150℃以下の温度にさらされていなかった材料を示す。一般的に、焼成工程は、本発明の方法において使用されるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料の合成において用いることができる任意の工程を示してよい。しかしながら、本発明によれば、焼成工程は、好ましくは、BEA骨格構造を有さない1種以上の前駆体化合物からの、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料の結晶化(その中で用いられ得る任意の種晶は例外とする)を完成させた後に行われる工程のみを指す。本発明のこれよりさらに好ましい実施形態によれば、焼成工程は、通常または適宜、骨格構造から有機鋳型を除去する、1種以上のゼオライト材料の完了した結晶化の後に行われる工程のみを指す。
【0017】
したがって、本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料は、非焼成であることが好ましい。
【0018】
本発明の趣旨の範囲内で、1種以上のゼオライト材料のBEA骨格構造に含まれるYOおよび任意のXは、構造構築要素としてその中に含まれ、概してゼオライト材料には典型的な、骨格構造によって形成される細孔およびキャビティ中に存在することができる非骨格元素とは対照を成す。
【0019】
本発明によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料に含まれるYは、想定される任意の四価元素を表し、Yは、1つ以上の四価元素である。本発明による好ましい四価元素としては、Si、Sn、Ti、Zr、およびGe、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、Yは、Si、Ti、もしくはZr、または前記四価元素の任意の組み合わせ、より好ましくはSiおよび/またはSnを表す。本発明によれば、YがSiを表すことが特に好ましい。
【0020】
したがって、本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料に含まれるYは、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、Yは、好ましくは、Siである。
【0021】
本発明によれば、BEA構造を有する1種以上のゼオライト材料の骨格は、さらにXを含むことが好ましく、Xは、任意の想定される三価元素を表し、Xは、1つ以上の三価元素である。本発明による好ましい三価元素としては、Al、B、In、およびGa、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、Yは、Al、B、もしくはIn、または前記三価元素の任意の組み合わせ、さらにより好ましくはAlおよび/またはBを表す。本発明によれば、XはAlを表すことが特に好ましい。
【0022】
したがって、本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料に任意に含まれるXは、Al、B、In、Ga、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましく、Xは、好ましくは、Alである。
【0023】
本発明によれば、工程(a)で触媒として提供されるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、YOに加えて、Xも含むことが好ましい。原則として、前記好ましい実施形態に対して、1種以上のゼオライト材料によって示されるY:Xモル比には特に制限がなく、したがって、原則として、任意の想定可能かつ実現可能なY:Xモル比のゼオライト材料を使用してよい。したがって、例として、1種以上のゼオライト材料は、1~100の範囲のY:Xモル比を示し得、好ましくは、Y:Xモル比は、2~50、より好ましくは2.5~30、より好ましくは3~20、より好ましくは3.5~15、より好ましくは3.7~10、より好ましくは3.9~8、より好ましくは4.1~6の範囲、さらにより好ましくは4.3~5.5の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料のY:Xモル比は、4・5~5の範囲に含まれる。
【0024】
したがって、Xが、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料に含まれる、本発明の実施形態によれば、そのY:Xモル比は、好ましくは1~100、好ましくは2~50、より好ましくは2.5~30、より好ましくは3~20、より好ましくは3.5~15、より好ましくは3.7~10、より好ましくは3.9~8、より好ましくは4.1~6、より好ましくは4.3~5.5の範囲、より好ましくは4.5~5の範囲である。
【0025】
本発明によれば、本発明の方法の触媒中に含まれるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料に含まれ得る任意のさらなる元素または化合物には特に制限がない。
【0026】
これは、1種以上のゼオライト材料の骨格中に含まれる元素、ならびに1種以上のゼオライト材料の微細孔中に含まれ得る非骨格元素または化合物、例えば1種以上のゼオライト材料の微細孔中の非骨格元素として含まれる骨格構造に対する対イオンに関しての両方に該当する。本発明によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、1種以上のゼオライト材料の骨格に対する対イオンとしてのHを含むことが好ましく、さらに好ましくは、本発明によれば、1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるH以外に、1種以上のゼオライト材料は、100質量%のYOに対して5質量%以下の非骨格元素、好ましくは100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の非骨格元素を含有する。
【0027】
本発明の方法の触媒に含まれる1種以上のゼオライト材料が、非骨格元素または化合物を含み、好ましくは、非骨格元素が、1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるHを含む、本発明の特定の好ましい実施形態によれば、特に、好ましくは1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるHに加えて、その中に含まれ得る非骨格元素または化合物には特に制限がない。しかしながら、本発明によれば、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下のNaおよび/またはK、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のNaおよび/またはKを含有することが好ましい。さらに、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下のLi、Na、およびK、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のLi、Na、およびKを含有することが好ましい。さらに、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下のアルカリ金属、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のアルカリ金属を含有することが好ましい。さらに、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下のアルカリ金属およびアルカリ土類金属、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のアルカリ金属およびアルカリ土類金属を含有することが好ましい。さらに、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下のアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属を含有することが好ましい。さらに、1種以上のゼオライト材料は、非骨格元素として、100質量%のYOに対して5質量%以下の金属、好ましくは非骨格元素として、100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の金属を含有することが好ましい。
【0028】
本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料の結晶構造には特に制限がないが、ただしこれらはBEA骨格構造を示し、具体的には、1種以上のゼオライト材料は、BEA骨格構造に特有の反射を含むX線回折パターンをもたらす。本発明の趣旨の範囲内で、BEA骨格構造に特有のX線パターンは、主に、2θ回折角がBEA骨格構造に特有であり、好ましくは個々の反射の相対強度もBEA骨格構造に特有である、X線ディフラクトグラムに含まれる反射パターンを示す。本発明の特に好ましい実施形態によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、少なくとも以下の反射を含むX線回折パターンを示す。
【0029】
【表1】
【0030】
ここで、100%は、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関する。
【0031】
より好ましくは、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、少なくとも以下の反射を含むX線回折パターンを示す。
【0032】
【表2】
【0033】
ここで、100%は、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関する。
【0034】
本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として提供されるBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、少なくとも以下の反射を含むX線回折パターンを示すことがさらに好ましい。
【0035】
【表3】
【0036】
ここで、より好ましくは、X線回折パターンは、少なくとも以下の反射を含む。
【0037】
【表4】
【0038】
ここで、100%は、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関する。
【0039】
したがって、本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料は、少なくとも以下の反射を含むX線回折パターンを有することが特に好ましい。
【0040】
【表5】
【0041】
ここで、100%は、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関し、さらにより好ましくは、X線回折パターンは、以下の反射をさらに含む。
【0042】
【表6】
【0043】
本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料の表面積には特に制限がないが、ただしBEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料は、脂肪族有機化合物のアルキル化を触媒する上で適しているものとする。したがって、DIN 66135、好ましくはISO 9277に従って決定された1種以上のゼオライト材料のBET表面積に関して、例として、これらは200~700m/gの範囲であってもよく、好ましくは、BET表面積は、250~675m/g、より好ましくは300~650m/g、より好ましくは350~625m/g、より好ましくは400~600m/g、さらにより好ましくは450~575m/gの範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、DIN 66135に従って決定されるBET表面積は、500~550m/gの範囲である。
【0044】
本発明によれば、工程(a)で触媒として提供される1種以上のゼオライト材料は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料の有機鋳型非含有合成の合成方法に従って得ることができ、好ましくは得られ、前記合成方法は、
(1)種晶および1つ以上のYO源を含む混合物を調製する工程と、
(2)混合物を結晶化する工程と、
を含み、BEA骨格が、好ましくは、Xを含むとき、工程(1)による混合物は、1つ以上のX源をさらに含む。
【0045】
工程(a)で1種以上のゼオライト材料を生成するための前記好ましい合成によれば、工程(1)で生成され、工程(2)で結晶化される混合物は、いずれの時点でも、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料の合成において特に使用される有機構造指向剤の不純物、特に特異的なテトラアルキルアンモニウム塩および/または関連の有機鋳型(テトラエチルアンモニウム塩および/またはジベンジルメチルアンモニウム塩、ならびにジベンジル-1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなど)をより多く含有することはない。このような不純物は、例えば、好ましい合成において使用される種晶中に依然として存在する有機構造指向剤によって生じ得る。しかしながら、種晶材料中に含まれる有機鋳型は、種晶構造中に捕捉され、本発明の趣旨の範囲内の構造指向剤として作用できないため、結晶化プロセスに加わることができない。
【0046】
本発明によれば、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、好ましい合成方法の工程(2)で結晶化される。この目的のために、工程(1)でYOを任意の想定される形態で生成することができるが、ただし、YOを含むBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化できるものとする。好ましくは、YOは、それ自体でおよび/または化学的部分としてYOを含む化合物としておよび/または本発明の方法中にYOに(部分的にもしくは全体的に)化学的に変換される化合物として提供される。YがSiまたはSiと1つ以上のさらなる四価元素との組み合わせを表す、本発明の好ましい実施形態において、工程(1)で生成されるSiO源は、任意の想定される源であってもよい。したがって、例えば、全種類のシリカおよびシリケート、好ましくはヒュームドシリカ、シリカヒドロゾル、反応性非晶質固体シリカ、シリカゲル、ケイ酸、水ガラス、メタケイ酸ナトリウム水和物、セスキケイ酸ナトリウムもしくはニケイ酸ナトリウム、コロイド状シリカ、焼成シリカ、ケイ酸エステル、もしくはテトラアルコキシシラン、またはこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を使用することができる。
【0047】
工程(1)による混合物が1つ以上のSiO源を含む、好ましい合成方法の好ましい実施形態によれば、前記源は、好ましくは、シリカおよびシリケート、好ましくはシリケート、より好ましくはアルカリ金属シリケートからなる群から選択される1種以上の化合物を含む。好ましいアルカリ金属シリケートのうち、1つ以上の源は、好ましくは、水ガラス、より好ましくはケイ酸ナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはケイ酸ナトリウムを含む。本発明の特に好ましい実施形態において、SiO源は、ケイ酸ナトリウムである。さらに、シリカを含む実施形態において、ヒュームドシリカが好ましい。
【0048】
BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料がXを含む、本発明の好ましい実施形態によれば、1つ以上のX源が、好ましい合成方法の工程(1)で生成される。一般的に、Xは、任意の想定される形態で生成してもよいが、ただし、Xを含むBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化できるものとする。好ましくは、Xは、それ自体でおよび/または化学的部分としてXを含む化合物としておよび/または本発明の方法中にXに(部分的にもしくは全体的に)化学的に変換される化合物として提供される。
【0049】
XがAlまたはAlと1つ以上のさらなる三価元素との組み合わせを表す、好ましい合成方法の好ましい実施形態によれば、工程(1)で生成されるAl源は、任意の想定される源であってもよい。例えば、任意の種類のアルミナおよびアルミン酸塩、例えば、アルカリ金属アルミン酸塩などのアルミニウム塩、例えば、アルミニウムトリイソプロピレートなどのアルミニウムアルコラート、もしくは例えば、アルミナ三水和物などの水和アルミナ、またはこれらの混合物を使用することができる。好ましくは、Al源は、アルミナおよびアルミン酸塩、好ましくはアルミン酸塩、より好ましくはアルカリ金属アルミン酸塩からなる群から選択される1種以上の化合物を含む。好ましいアルカリ金属アルミン酸塩のうち、1つ以上の源は、好ましくは、アルミン酸ナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはアルミン酸ナトリウムを含む。好ましい合成方法の特に好ましい実施形態において、Al源はアルミン酸ナトリウムである。
【0050】
工程(1)の混合物が、1種以上のホウ素化合物を含めた、1つ以上のX源をさらに含む場合、例えば遊離ホウ酸および/またはホウ酸塩および/またはホウ酸エステル、例えば、ホウ酸トリエチルまたはホウ酸トリメチルなどを出発物質として使用することができる。
【0051】
好ましい合成方法によれば、工程(1)による混合物は、YO源としての1種以上のケイ酸塩、およびX源としての1種以上のアルミン酸塩、より好ましくは1種以上のアルカリ金属ケイ酸塩および/または1種以上のアルカリ金属アルミン酸塩、さらにより好ましくは1種以上の水ガラス化合物および/または1種以上のアルカリ金属アルミン酸塩を含み、前記好ましい実施形態のアルカリ金属は、好ましくは、ナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはナトリウムを含み、アルカリ金属は、さらにより好ましくは、ナトリウムである。
【0052】
工程(1)による混合物が、1つ以上のX源を含む、好ましい合成方法の好ましい実施形態において、混合物のYO:Xモル比は、任意の想定される値とすることができるが、ただし、YOおよびXの両方を含むBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。一般的に、モル比は、1~100、好ましくは5~85、より好ましくは10~60、より好ましくは20~55、より好ましくは25~50、より好ましくは35~45、特に好ましくは38~42の範囲である。
【0053】
好ましい合成方法によれば、好ましい合成方法によって得られるおよび/もしくは得ることができるゼオライト材料ならびに/または本発明の材料自体は、1つ以上のアルカリ金属M、好ましくはナトリウムおよび/またはカリウム、より好ましくはナトリウムを含むことがさらに好ましい。アルカリ金属は、好ましい合成方法の想定される任意の段階で添加することができ、好ましくは、工程(1)でも添加される。より好ましくは、BEA骨格構造を有するゼオライト材料に含まれるアルカリ金属の全量を、好ましい合成方法の工程(1)で添加する。好ましい合成方法の特に好ましい実施形態において、アルカリ金属は、工程(1)で供給される1つ以上のYO源および/またはX源に部分的または全体的に含まれ、好ましくは、アルカリ金属は、さらなる源によって部分的に供給される。1つ以上のアルカリ金属Mが、1つ以上のさらなる源によって部分的に供給される、前記特に好ましい実施形態によれば、使用され得る源の種類には概して制限はないが、ただし、それ自体で、および/または、その中に含まれる1つ以上のアルカリ金属Mを少なくとも部分的に置換する工程を経た後に得られるBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、有機化合物のアルキル化を触媒する上で適しているものとする。好ましくは、1種以上のアルキル金属のうち1つ以上を生成するための1つ以上のさらなる源は、1種以上のアルカリ金属ハロゲン化物および/または1種以上のアルキル金属水酸化物を含み、ハロゲン化物は、好ましくは、フッ化物、塩化物、および臭化物からなる群から選択される。好ましい合成方法の特に好ましい実施形態によれば、1つ以上のさらなる源は、1種以上のアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/またはカリウム、さらにより好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0054】
一般的に、アルカリ金属Mは、任意の想定される量で、好ましい合成方法の工程(1)による混合物中に含まれ得るが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。好ましくは、工程(1)による混合物中のM:YOモル比は、0.1~2、より好ましくは0.2~1.5、より好ましくは0.3~1.2、より好ましくは0.4~1、より好ましくは0.5~0.9、より好ましくは0.55~0.8、より好ましくは0.6~0.75の範囲である。好ましい合成方法の特に好ましい実施形態によれば、工程(1)による混合物中のM:YOモル比は、0.65~0.7の範囲である。
【0055】
好ましい合成方法によれば、工程(1)による混合物は、1つ以上のX源および1つ以上のアルカリ金属Mを含むことが好ましい。一般的に、これらの成分は、任意の想定される量で混合物中に含まれ得るが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。好ましくは、工程(1)による混合物中のYO:X:Mモル比は、(1~100):1:(2~90)、より好ましくは(5~85):1:(5~70)、より好ましくは(10~60):1:(8~50)、より好ましくは(20~55):1:(13~35)、より好ましくは(25~50):1:(15~30)、より好ましくは(35~45):1:(20~29)、さらにより好ましくは(38~42):1:(25~28)の範囲である。
【0056】
BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を得るための好ましい合成方法によれば、工程(1)で生成される混合物は、1つ以上の水酸化物陰イオンOH源を含有する。一般的に、任意の想定されるOH源を使用することができ、1つ以上の源は、好ましくは、金属水酸化物、より好ましくはアルカリ金属Mの水酸化物、より好ましくは水酸化ナトリウムおよび/またはカリウム、さらにより好ましくは水酸化ナトリウムを含む。
【0057】
一般的に、好ましい合成方法の工程(1)による混合物のOH:YOモル比は、任意の想定される値を有し得るが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。好ましくは、前記モル比は、0.1~1、より好ましくは0.4~0.65、より好ましくは0.43~0.62、より好ましくは0.57~0.6、さらにより好ましくは0.55~0.61の範囲に含まれる。
【0058】
好ましい合成方法によれば、種晶は工程(1)で供給され、前記種晶は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を含むことがさらに好ましい。一般的に、前記種晶は、任意のBEA骨格構造を有するゼオライト材料を含み得るが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。好ましくは、種晶中に含まれるBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、好ましい合成方法に従って得ることができる、好ましくは得られるゼオライト材料である。より好ましくは、種晶中に含まれるBEA骨格構造を有するゼオライト材料は、次いで工程(2)で結晶化されるBEA骨格構造を有するゼオライト材料と同じである。特に好ましいのは、ゼオライトベータ、より好ましくは、好ましい合成方法に従って得ることができる、または好ましくは得られたゼオライトベータを含む種晶である。特に好ましい実施形態において、種晶は、ゼオライトベータ結晶、好ましくは、好ましい合成方法に従って得ることができる、または好ましくは得られたゼオライトベータ結晶である。
【0059】
好ましい合成方法によれば、好適な量の種晶を工程(1)による混合物中に生成することができるが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(2)で結晶化されるものとする。一般的に、工程(1)による混合物中に含まれる種晶の量は、1つ以上のYO源中の100質量%のYOに対して0.1~50質量%、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~35質量%、より好ましくは2~25質量%、より好ましくは3~20質量%、より好ましくは5~15質量%、さらにより好ましくは8~12質量%の範囲である。
【0060】
好ましい合成方法による工程(1)において、混合物は、任意の想定される手段(攪拌による混合が好ましい)、好ましくは攪拌手段によって調製することができる。
【0061】
好ましい合成方法によれば、工程(1)による混合物は、溶媒をさらに含むことが好ましい。任意の想定される溶媒を、任意の想定される量で使用することができるが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、好ましい合成方法の工程(2)で結晶化できるものとする。好ましくは、溶媒は、水を含み、混合物のHO:YOモル比は、1~100、好ましくは2~60、より好ましくは5~50、より好ましくは7~45、より好ましくは10~30、特に好ましくは15~25の範囲である。好ましい合成方法によれば、混合物のHO:YOモル比は、15~45、より好ましくは20~40、さらにより好ましくは25~35の範囲である。特に好ましい実施形態において、工程(1)で提供される溶媒は蒸留水である。
【0062】
一般的に、好ましい合成方法の工程(1)の混合物を生成するための単一成分を任意の順序で添加することができるが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、好ましい合成方法の工程(2)で混合物から結晶化されるものとする。これは、例えば、任意の溶媒ならびに任意の1つ以上のX源および/または1つ以上のOH源の添加と、それに後続する1つ以上のYO源の添加を要し得、種晶のみは、後で混合物に添加される。あるいは、任意の溶媒ならびに任意の1つ以上のX源および/または1つ以上のOH源の添加をまず添加した後、種晶を添加してよく、1つ以上のYOのみ、後で添加する。
【0063】
一般的に、好ましい合成方法による工程(2)は、任意の想定される仕方で実施してよいが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、工程(1)による混合物から結晶化されるものとする。混合物は、任意のタイプの容器中で結晶化することができ、攪拌手段を任意に利用し、前記攪拌は、好ましくは、容器の回転および/または攪拌によって、より好ましくは混合物を攪拌することによって達成される。
【0064】
好ましい合成方法によれば、混合物は、好ましくは、工程(2)における少なくとも一部の結晶化プロセスの間に加熱する。一般的に、混合物は、任意の想定される結晶化温度まで加熱してもよいが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料は、混合物から結晶化されるものとする。好ましくは、混合物は、80~200℃、より好ましくは90~180℃、より好ましくは95~170℃、より好ましくは100~160℃、より好ましくは110~150℃、さらにより好ましくは115~145℃の範囲の結晶化温度に加熱する。
【0065】
好ましい合成方法の工程(2)における好ましい加熱は、BEA骨格構造を有するゼオライト材料の結晶化に適した任意の想定される仕方で実施することができる。一般的に、加熱は、一結晶化温度でまたは種々の温度間で変動する温度で実施してもよい。好ましくは、結晶化温度に達するように熱勾配を用い、例として、加熱速度は、10~100℃/h、より好ましくは20~70℃/h、より好ましくは25~60℃/h、より好ましくは30~50℃/h、さらにより好ましくは35~45℃/hの範囲であってもよい。
【0066】
好ましい合成方法によれば、工程(1)による混合物は、工程(2)で、標準圧力に対して上昇する圧力を受けることが好ましい。用語「標準圧力」は、本発明との関係において用いられる場合、理論的な場合における101,325Paの圧力に関する。しかしながら、この圧力は、当業者に公知の範囲内で変動し得る。例として、この圧力は、95,000~106,000または96,000~105,000または97,000~104,000または98,000~103,000または99,000~102,000Paの範囲であってもよい。
【0067】
溶媒が工程(1)による混合物中に存在する、好ましい合成方法の好ましい実施形態において、工程(2)における加熱は、ソルボサーマル条件下で実施されることがさらに好ましく、混合物が、例えばオートクレーブまたはソルボサーマル条件を作るのに適した他の結晶化用容器中で加熱を実施することによって使用される溶媒の自己圧力(autogenous pressure)下で結晶化されることを意味する。したがって、溶媒が水、好ましくは蒸留水を含むまたはそれからなる、特に好ましい実施形態において、工程(2)における加熱は、好ましくは、熱水条件下で実施される。
【0068】
結晶化に好ましい合成方法において使用することができる装置は、特に限定されないが、ただし、結晶化プロセスの所望のパラメーターは、特に特定の結晶化条件を要する好ましい実施形態に対して実現することができる。ソルボサーマル条件下で実施される好ましい実施形態において、任意の種類のオートクレーブまたは分解容器を使用することができ、テフロン(登録商標)加工装置が好ましい。
【0069】
一般的に、好ましい合成方法の工程(2)における結晶化プロセスの継続時間は、特に限定されない。工程(1)による混合物の加熱を要する好ましい実施形態において、前記結晶化プロセスは、10~200時間、より好ましくは30~150時間、より好ましくは100~140時間、さらにより好ましくは110~130時間の時間範囲で実施される。好ましい合成方法によれば、結晶化は、5~100時間、10~80時間、より好ましくは20~70時間、より好ましくは30~60時間、より好ましくは40~55時間、さらにより好ましくは45~50時間の時間範囲で実施されることがさらに好ましい。
【0070】
混合物を工程(2)で加熱する、好ましい合成方法の好ましい実施形態によれば、前記加熱は、結晶化プロセス全体の間、またはそのごく一部またはそれ以上の間、実施してもよいが、ただし、BEA骨格構造を有するゼオライト材料が結晶化されるものとする。好ましくは、加熱は、結晶化の全継続時間の間、実施される。
【0071】
一般的に、好ましい合成方法のプロセスは、任意に、仕上げならびに/または工程(2)で、工程(1)で生成される混合物から結晶化されたBEA骨格構造を有するゼオライト材料のさらなる物理的および/もしくは化学的変換のさらなる工程を含むことができる。結晶化材料を、例えば、任意の順序の単離および/または洗浄手順に供してもよく、工程(2)における結晶化から得られるゼオライト材料を、好ましくは1つ以上の単離および1つ以上の洗浄手順に供する。
【0072】
結晶化生成物の単離は、任意の想定される手段によって達成することができる。好ましくは、結晶化生成物の単離は、濾過、限外濾過、血液透析濾過、遠心分離および/またはデカンテーション法の手段によって達成することができ、濾過法は、吸引および/または加圧濾過工程を要し得る。
【0073】
1つ以上の任意の洗浄手順に関して、任意の想定される溶媒を使用してもよい。使用可能な洗浄剤は、例えば、水、アルコール(メタノール、エタノールもしくはプロパノールなど)、またはこれらの2つ以上の混合物である。混合物の例は、2種以上のアルコールの混合物(メタノールおよびエタノールもしくはメタノールおよびプロパノールもしくはエタノールおよびプロパノールもしくはメタノールおよびエタノールおよびプロパノール)、または水と1種以上のアルコールとの混合物(水およびメタノールもしくは水およびエタノールもしくは水およびプロパノールもしくは水およびメタノールおよびエタノールもしくは水およびメタノールおよびプロパノールもしくは水およびエタノールおよびプロパノールもしくは水およびメタノールおよびエタノールおよびプロパノールなど)である。水または水と1種以上のアルコールとの混合物、好ましくは水とエタノールが好ましく、蒸留水は、唯一の洗浄剤として極めて特に好ましい。
【0074】
好ましくは、洗浄剤、好ましくは洗浄水のpHが、標準ガラス電極によって決定した場合に6~8、好ましくは6.5~7.5の範囲になるまで、分離したゼオライト材料を洗浄する。
【0075】
さらに、好ましい合成方法は、1つ以上の乾燥工程を任意に含んでもよい。一般的に、任意の想定される乾燥手段を使用してよい。乾燥手順は、好ましくは、BEA骨格構造を有するゼオライト材料に加熱および/または真空を施すことを含む。好ましい合成方法の想定される実施形態において、1つ以上の乾燥工程は、噴霧乾燥、好ましくはゼオライト材料の噴霧造粒を要し得る。
【0076】
1つ以上の乾燥工程を含む実施形態において、乾燥温度は、好ましくは、25℃~150℃の範囲、より好ましくは60~140℃、より好ましくは70~130℃、さらにより好ましくは75~125℃の範囲である。乾燥の継続時間は、好ましくは、2~60時間の範囲、より好ましくは6~48時間の範囲、さらにより好ましくは12~24時間の範囲である。
【0077】
好ましい合成方法によれば、工程(2)で結晶化するゼオライト材料は、好ましくは、1つ以上のイオン交換手順を受ける。一般的に、全ての可能なイオン元素および/または分子を用いた任意の想定されるイオン交換手順を、ゼオライト材料で実施することができる。好ましくは、イオン元素として、1つ以上の陽イオンおよび/または陽イオン元素を用い、好ましくはHおよびNH から選択される1つ以上の陽イオンおよび/または陽イオン元素を含み、より好ましくは1つ以上の陽イオンおよび/または陽イオン元素は、HおよびNH であり、好ましくはHである。好ましい合成方法によれば、工程(2)で結晶化したゼオライト材料を、まずNH でイオン交換し、後続して焼成してアンモニウム陽イオンをHに変換し、それによって工程(2)で結晶化したゼオライト材料のH型を得ることが特に好ましい。
【0078】
一般的に、好ましい合成方法に含まれる任意の洗浄および/または単離および/またはイオン交換手順を、任意の想定される順序で実施してよく、所望の頻度で繰り返してもよい。
【0079】
したがって、好ましい合成方法は、以下の工程:
(3)好ましくは濾過によって、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を単離する工程、および/または
(4)BEA骨格構造を有するゼオライト材料を洗浄する工程、および/または
(5)BEA骨格構造を有するゼオライト材料を乾燥する工程、および/または
(6)BEA骨格構造を有するゼオライト材料をイオン交換手順に供する工程
のうちの1つ以上を任意に含み、工程(3)および/または(4)および/または(5)および/または(6)は、任意の順序で実施してもよく、前記工程のうちの1つ以上は、好ましくは、少なくとも1回繰り返される。
【0080】
好ましくは、好ましい合成方法は、工程(2)に従って結晶化したゼオライト材料を、より好ましくはそれを濾過することによって単離する1つ以上の工程を含む。好ましい合成方法によれば、1つ以上の単離工程の後、ゼオライト材料を、1つ以上の乾燥工程に供し、より好ましくは、この1つ以上の乾燥工程に先立って、ゼオライト材料を1つ以上の洗浄工程に供することがさらに好ましい。特に好ましい実施形態において、工程(2)に従って結晶化したゼオライト材料を、1つ以上の単離工程に供した後、1つ以上の洗浄工程、後続して1つ以上の乾燥工程に供する。
【0081】
好ましい合成方法によれば、工程(2)で結晶化したゼオライト材料を、予め単離、洗浄、または乾燥することなく、1つ以上の乾燥工程、好ましくは噴霧乾燥および/または噴霧造粒に直接供することが、さらに好ましい。好ましい合成方法の工程(2)から得られた混合物を直接、噴霧乾燥または噴霧造粒段階に供することは、単離および乾燥を一段階で行うという利点がある。
【0082】
好ましい合成方法によれば、工程(2)における結晶化から得られたゼオライト材料を、1つ以上のイオン交換手順に先立って1つ以上の単離工程に供すること、好ましくは1つ以上の単離工程の後に1つ以上の洗浄工程、より好ましくは1つ以上の単離工程の後に1つ以上の洗浄工程、後続して1つ以上の乾燥工程に供することが、さらに好ましい。
【0083】
好ましい合成方法は、好ましくは、一般的に工程(2)に従って結晶化したゼオライト材料を500℃超の温度に加熱することを要する焼成工程を含まない。より好ましくは、焼成工程を含まない、BEA骨格構造を有するゼオライト材料を製造するための好ましい合成方法は、工程(2)に従って結晶化したゼオライト材料を、450℃、より好ましくは350℃、より好ましくは300℃、より好ましくは250℃、より好ましくは200℃、さらにより好ましくは150℃を超える温度に供しない合成方法を指す。好ましい合成方法によれば、結晶化したゼオライト材料が周囲温度にある、好ましい合成方法の工程(2)の完了後、前記材料を後続していずれの加熱プロセスにも供しないことが、特に好ましい。
【0084】
したがって、本発明によれば、本発明の方法の工程(a)で触媒として生成される1種以上のゼオライト材料は、好ましくは、上述の好ましい合成方法および特に好ましい合成方法の1つ以上に従って得ることができる、さらにより好ましくは得られる。
【0085】
本発明の方法の工程(b)で触媒と接触させる1種以上の脂肪族有機化合物に関しては、1種以上の脂肪族有機化合物として使用可能な有機化合物の種類への制限は特にないが、ただし、前記工程で用いられる1種以上のアルキル化剤によってアルキル化され得るものとする。この点において、本発明の趣旨の範囲内において、工程(b)で得られる1種以上のアルキル化有機化合物は、1種以上の脂肪族有機化合物と1種以上のアルキル化剤との反応のアルキル化生成物である1種以上のアルキル化有機化合物を含むことに留意されたい。したがって、原則としては、脂肪族有機化合物は、工程(b)で使用する1種以上のアルキル化剤の少なくとも1種と反応することができる任意の脂肪族有機化合物であってもよく、反応の経過中、脂肪族有機化合物の炭素原子と1種以上のアルキル化剤の1つ以上の炭素原子との間に少なくとも1つの共有結合が形成される。脂肪族有機化合物とアルキル化剤との間に形成される共有結合のタイプについても、特に限定されない。したがって、1種以上のアルキル化剤の炭素原子と共有結合を形成する脂肪族有機化合物の1個以上の炭素原子の原子価に応じて、1つ以上の単結合、二重結合、および/または三重結合が形成され得、好ましくは1つ以上の単結合および/または二重結合が形成される。しかしながら、本発明の方法によれば、1つ以上の単結合が、脂肪族有機化合物の1個以上の炭素原子と1種以上のアルキル化剤の1個以上の炭素原子との間に形成されることが、さらにより好ましい。
【0086】
本発明の方法によれば、1種以上の脂肪族有機化合物は、好ましくは、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C2~C20)炭化水素およびそれらの2種以上の混合物、好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C14)炭化水素、より好ましくは(C2~C12)炭化水素、より好ましくは(C2~C10)炭化水素、より好ましくは(C2~C8)炭化水素、より好ましくは(C2~C6)炭化水素、より好ましくは(C3~C5)炭化水素、より好ましくはC4炭化水素、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0087】
本発明の方法によれば、1種以上の任意に置換されたかつ/または任意に環状の炭化水素が分枝鎖であることがさらに好ましく、好ましくは1種以上の分枝鎖炭化水素は、次式を有する:
【化1】
[式中、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C8)アルキル、好ましくは(C1~C6)アルキル、より好ましくは(C1~C5)アルキルであり、より好ましくは、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C4)アルキル、好ましくは(C1~C3)アルキルであり、より好ましくは、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたメチルまたはエチル、好ましくは任意に置換されたメチルである]。したがって、本発明によれば、上述の特定の好ましい実施形態のいずれかによる次式
【化2】
の好ましい分枝鎖炭化水素は、任意に置換されたかつ/または任意に環状の(C2~C20)炭化水素およびこれらの2種以上の混合物、好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C14)炭化水素、より好ましくは(C2~C12)炭化水素、より好ましくは(C2~C10)炭化水素、好ましくは(C2~C8)炭化水素、より好ましくは(C2~C6)炭化水素、より好ましくは(C3~C5)炭化水素、より好ましくはC4-炭化水素、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
1種以上の脂肪族有機化合物が置換され得る官能基に関しては、原則として、1種以上の脂肪族有機化合物が任意の好適な官能基と置換され得るように特に限定されない。したがって、例として、1種以上の脂肪族化合物は、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、炭酸エステル、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、ホスフィノ、ホスホノ、およびホスフェートからなる群から選択される1つ以上の官能基で置換されてもよい。しかしながら、本発明によれば、1種以上の脂肪族有機化合物と置換され得る1つ以上の官能基は、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C1~C3)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、(C1~C2)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、メトキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。本発明によれば、1種以上の脂肪族有機化合物と置換され得る1つ以上の官能基はヒドロキシルであることが特に好ましい。
【0089】
本出願の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかの1種以上の脂肪族有機化合物と置換し得る官能基の量については、例として、その数は、1~10の範囲であってもよく、好ましくは、好ましい脂肪族有機化合物は、1~5つの官能基、より好ましくは1~4つ、より好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの官能基と置換される。
【0090】
しかしながら、本発明によれば、本出願の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかによる本発明の方法において用いられる1種以上の脂肪族有機化合物は、炭素原子および水素原子からなる非置換炭化水素であることが好ましく、好ましくは、1種以上の脂肪族有機化合物は、イソブタンを含み、より好ましくは、1種以上の脂肪族有機化合物は、イソブタンであり、より好ましくは、1種以上の脂肪族有機化合物としてイソブタンが使用される。
【0091】
本発明の方法の工程(b)における脂肪族有機化合物の実際のアルキル化に関して、1種以上の脂肪族有機化合物がアルキル化される位置(複数可)について特に限定されないが、ただし、1つ以上の共有結合が、1種以上の脂肪族有機化合物の炭素原子と1種以上のアルキル化剤の1つ以上の炭素原子との間に形成されるものとする。本発明の方法において使用される1種以上のアルキル化剤については、主に、この趣旨で使用され得る化合物の種類には制限がないが、ただし、1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上をアルキル化するために適宜使用できるものとする。これに応じて同じことが、アルキル化剤に含まれるアルキル部分の種類に対しても当てはまり、したがって、原則として、任意の置換または非置換の環状、直鎖、または分枝鎖アルキル部分がその中に含まれ得、1種以上のアルキル化剤のアルキル部分と置換され得る好ましいおよび特に好ましい官能基は、好ましい脂肪族有機化合物について上述した中から選択される1つ以上の官能基を含むことが好ましい。本発明の方法の特に好ましい実施形態によれば、アルキル部分は、非置換の好ましくは直鎖および非分枝鎖のアルキル部分である。
【0092】
本発明の趣旨の範囲内において、用語「アルキル部分」は、好ましくは、本発明の方法のアルキル化反応中に1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上と結合するアルキル化剤に含まれる部分を指す。1種以上のアルキル化剤に含まれるアルキル部分のサイズに関しては、ここでも、本発明の方法によれば、この点において一般的な制限はなく、したがって、原則として、任意の好適なアルキル部分が、1種以上のアルキル化剤に含まれ得るが、ただし、前記アルキル部分は、本発明の方法の工程(b)におけるアルキル化反応中に1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上と共有結合し得るものとする。したがって、例として、置換または非置換の環状、直鎖、および/または分枝鎖アルキル部分のサイズは、C~C22の範囲を占め得、好ましくはC~C20の範囲、より好ましくはC~C18の範囲、より好ましくはC~C16、より好ましくはC~C14、より好ましくはC~C10、より好ましくはC~C、より好ましくはC~C、より好ましくはC~Cの範囲を占め、さらにより好ましくは、アルキル部分はCアルキル部分である。
【0093】
例として、本発明の方法の工程(b)で使用する1種以上のアルキル化剤に関して、オレフィン、アルコール、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される1種以上の化合物がその中に含まれていてもよく、好ましくは、1種以上のアルキル化剤は、オレフィン、アルコール、ハロゲン化アルキル、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群、より好ましくはオレフィン、アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、さらにより好ましくは1種以上のアルキル化剤は、1種以上のオレフィンを含む。
【0094】
1種以上のアルキル化剤が1種以上のオレフィンを含む、本発明の好ましい実施形態に関して、使用可能なオレフィンに対する制限は特にないが、ただし、1種以上の脂肪族有機化合物が、本発明の方法の工程(b)でアルキル化され得るものとする。したがって、原則として、任意の想定される数の二重結合がその中に存在し得、好ましくは1~4つの二重結合がその中に含まれ、より好ましくは1~3つの二重結合、さらにより好ましくは1つまたは2つの二重結合がその中に含まれる。本発明によれば、1種以上のアルキル化剤は、1つの単一の二重結合を含むオレフィンを1種以上含むことが特に好ましい。さらに、好ましくは1種以上のアルキル化剤のうちに含まれるオレフィンのサイズに関して、ここでも特に限定されないが、ただし、本発明の方法の工程(b)で1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上をアルキル化する上で好適であるものとする。したがって、例として、オレフィンは、2~20個の範囲内の炭素原子を有し得、好ましくは2~18個の炭素原子、より好ましくは2~16個の炭素原子、より好ましくは2~14個の炭素原子、より好ましくは2~12個の炭素原子、より好ましくは2~10個の炭素原子、より好ましくは2~8個の炭素原子、より好ましくは2~6個の炭素原子、より好ましくは3~5個の炭素原子を有し、さらにより好ましくは、1種以上のアルキル化剤に含まれるオレフィンは、4個の炭素原子を有する。さらに、好ましくは1種以上のアルキル化剤に含まれるオレフィンの構造に関しても特に限定されないが、1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上をアルキル化する上で好適であるとものとする。したがって、オレフィンは、直鎖、環状、および/または分枝鎖であってもよく、分枝鎖オレフィンおよび直鎖オレフィンの一部自体が環状であってもよい。特に好ましい実施形態によれば、1種以上のアルキル化剤は、1種以上の直鎖および非分枝鎖オレフィンを含み、前記オレフィンは、好ましくは、非環状である。
【0095】
したがって、本発明によれば、1種以上のアルキル化剤は、1種以上のオレフィンを含むことが好ましく、1種以上のオレフィンは、好ましくは、1種以上のアルケンを含み、より好ましくは1種以上のアルケンは、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C2~C20)アルケンならびにこれらの2つ以上の混合物、好ましくは(C2~C18)アルケン、より好ましくは(C2~C16)アルケン、より好ましくは(C2~C14)アルケン、より好ましくは(C2~C12)アルケン、より好ましくは(C2~C10)アルケン、より好ましくは(C2~C8)アルケン、より好ましくは(C2~C6)アルケン、より好ましくは(C3~C5)アルケン、より好ましくはC4アルケン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。さらに、本発明の前記特定のおよび好ましい実施形態のいずれかによれば、1つ以上のアルケンは、1~4つのC=C二重結合、好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、より好ましくは1つのC=C二重結合を含有することが好ましい。
【0096】
1種以上のアルキル化剤が1種以上のオレフィンを含む、本発明の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかにおける1つ以上のC=C二重結合の位置に関して、特に制限を設けず、したがって、これらは、主に、1種以上のオレフィン中の末端および/または内部C=C結合として含まれ得る。しかしながら、本発明によれば、1種以上のオレフィンは、少なくとも1つの末端C=C二重結合および/または少なくとも1つの内部C=C二重結合、好ましくは少なくとも1つの末端C=C二重結合を含有することが好ましい。
【0097】
したがって、本発明によれば、1種以上のアルキル化剤は、1種以上のオレフィンを含むことが好ましく、1種以上のオレフィンは、好ましくは、1種以上のアルケンを含み、1種以上のアルケンは、少なくとも1つの末端C=C二重結合および/または少なくとも1つの内部C=C二重結合、好ましくは少なくとも1つの末端C=C二重結合を含有する。
【0098】
したがって、本発明によれば、1種以上のアルキル化剤が、1種以上のオレフィンを含むことが特に好ましく、1種以上のオレフィンは、好ましくは、1種以上のアルケンを含み、1種以上のアルケンは、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖のエテン、プロペン、ブテン、ペンテン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、1種以上のアルケンは、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖のプロペンおよび/またはブテンを含み、より好ましくは、1種以上のアルケンは、ブテンを含み、より好ましくは、1種以上のアルケンは、ブテンであり、より好ましくは、1種以上のアルケンとしてブテンを使用する。1種以上のアルキル化剤がブテンを含む、好ましくは本発明の方法の工程(b)におけるアルキル化剤としてブテンが使用される、本発明の特に好ましい実施形態によれば、ブテンが、ブタ-1-エン、(2Z)-ブタ-2-エン、(2E)-ブタ-2-エン、2-メチルプロパ-1-エン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群、好ましくはブタ-1-エン、(2Z)-ブタ-2-エン、(2E)-ブタ-2-エン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択されることがさらに好ましく、より好ましくは、ブテンは、ブタ-1-エンを含み、より好ましくは、ブテンはブタ-1-エンである。
【0099】
1種以上のアルケンが置換され得る官能基に関して特に制限は設けられず、したがって、原則として、1種以上のアルケンは、任意の好適な官能基で置換され得る。したがって、例として、1種以上のアルケンは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、炭酸エステル、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、ホスフィノ、ホスホノ、およびホスフェートからなる群から選択される1つ以上の官能基で置換され得る。しかしながら、本発明によれば、1種以上のアルケンを置換し得る1つ以上の官能基は、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群、より好ましくはヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群、より好ましくはヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C1~C3)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、(C1~C2)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群、より好ましくはヒドロキシル、フルオロ、クロロ、メトキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。本発明によれば、1種以上のアルケンを置換し得る1つ以上の官能基がヒドロキシルであることが特に好ましい。
【0100】
本出願の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかによる1種以上のアルケンと置換し得る官能基の量については、例として、その数は、1~10の範囲であってもよく、好ましくは、好ましいアルケンは、1~5つの官能基と置換され、より好ましくは1~4つ、より好ましくは1~3つ、より好ましくは1つまたは2つ、さらにより好ましくは1つの官能基と置換される。
【0101】
しかしながら、本発明によれば、本出願の特定のおよび好ましい実施形態のいずれかによる本発明の方法で用いられる1種以上のアルケンは、非置換であることが好ましく、好ましくは、1種以上のアルキル化剤は、1種以上の非置換アルケンからなる。
【0102】
本発明の特定の実施形態によれば、アルキル化剤は、軽質オレフィンの混合物を含む。前記実施形態によれば、このような混合物の種類および組成については特に限定されないが、ただし、1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上は、適宜、アルキル化され得るものとする(例として、エチレン、プロピレン、(直鎖および/または分枝鎖)ブテン、および/または(直鎖および/または分枝鎖)ペンテンの混合物)。このような混合物は、任意の想定される源から生成することができ、例として、このような混合物は、例えば、燃料ガス、ガス工場の排ガス(エチレンおよび/またはプロピレンを含む排ガスなど)、ナフサ分解装置の排ガス(軽質オレフィンを含む排ガスなど)などの製油所流から得ることができ、例えば、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、イソブタン、n-ブタン、(直鎖および/もしくは分枝鎖)ブテン、ならびに/または(直鎖および/もしくは分枝鎖)ペンタンの混合物、ならびにプロパンおよびプロピレンを含む製油所FCC流である。
【0103】
アルキル化反応のための本発明の方法の工程(b)で接触させる化合物については、本発明によれば、その中に使用される1種以上のアルキル化剤を考慮した1種以上の脂肪族有機化合物の選択についても、または逆の場合も同様で、その中に使用される1種以上の脂肪族有機化合物を考慮した1種以上のアルキル化剤の選択についても特に制限がないが、ただし、その中に使用される1種以上のアルキル化剤の1つ以上は、1種以上のゼオライト材料を含む触媒の存在下で、1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上をアルキル化できるものとする。本発明の方法によれば、1種以上の脂肪族有機化合物が、次式の1種以上の分枝鎖炭化水素を含むことが特に好ましく、
【化3】
式中、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C4)アルキルであり、1種以上のアルキル化剤は、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C2~C6)アルケンならびにこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアルケンを含む。本発明の方法によれば、1種以上の脂肪族有機化合物は、次式の1種以上の分枝鎖炭化水素を含むことがさらに好ましく、
【化4】
式中、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C3)アルキルであり、1種以上のアルキル化剤は、任意に置換されたかつ/または任意に環状のおよび/または任意に分枝鎖の(C3~C5)アルケンならびにこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアルケンを含む。本発明の方法によれば、1種以上の脂肪族有機化合物は、次式の1種以上の分枝鎖炭化水素を含むことがさらに好ましく、
【化5】
式中、R、R、およびRは、互いに独立して、任意に置換されたメチルまたはエチルであり、好ましくは任意に置換されたメチルであり、1種以上のアルキル化剤は、C4アルケンおよびこれらの混合物を含む。
【0104】
本発明の方法の工程(b)で実施するアルキル化反応に関して、本発明によれば、その中で使用可能な1種以上の脂肪族有機化合物および1種以上のアルキル化剤の各量および比率は特に限定されず、反応条件およびパラメーターに対する制限も特にないが、ただし、これらは、1種以上のゼオライト材料を含む触媒の存在下で、1種以上の脂肪族有機化合物のうちの1つ以上と1種以上のアルキル化剤のうちの1つ以上とを反応させる上で好適であるものとする。したがって、工程(b)で1つ以上の反応容器のうちの1つ以上の中で用いられる温度に関しては、例として、50~250℃の範囲内であってもよい。工程(b)で2つ以上の反応容器を用いる場合、個々の反応容器中で用いられる温度は、互いに同じであっても、異なっていてもよい。好ましい実施形態によれば、1つ以上の反応器のうちの1つ以上の中で用いられる温度は、60~200℃、より好ましくは70~150℃、さらにより好ましくは80~120℃の範囲である。特に好ましい実施形態によれば、1つ以上の反応容器のうちの1つ以上の中で使用される温度は、90~110℃の範囲である。
【0105】
したがって、本発明の方法によれば、工程(b)は50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは70~150℃、より好ましくは80~120℃、さらにより好ましくは90~110℃の範囲の温度で実施することが好ましい。
【0106】
さらに、本発明の方法の工程(b)におけるアルキル化反応の実施下での圧力については、ここでも、この点における制限は特にないが、ただし、1つ以上の反応容器中で用いられる圧力は、アルキル化を実施する上で好適であるものとする。温度についてと同様、2つ以上の反応容器を用いる場合、反応容器中で使用される圧力は、同じであっても異なっていてもよい。したがって、例として、1つ以上の反応容器のうちの1つ以上の中の圧力は、1~50バールの範囲内に含まれ得、好ましくは、1つ以上の反応容器中の圧力は、4~40バール、より好ましくは8~35バール、より好ましくは12~30バール、より好ましくは14~29バール、より好ましくは16~28バール、より好ましくは18~27バール、より好ましくは20~26バールの範囲を占め、さらにより好ましくは、1つ以上の反応容器中の圧力は、22~25バールの範囲に含まれる。
【0107】
これに応じて、本発明の方法によれば、工程(b)は、1~50バール、好ましくは4~40バール、より好ましくは8~35バール、より好ましくは12~30バール、より好ましくは14~29バール、より好ましくは16~28バール、より好ましくは18~27バール、より好ましくは20~26バール、さらにより好ましくは22~25バールの範囲に含まれる圧力で実施することが好ましい。
【0108】
本発明の方法によれば、アルキル化反応は、一般的に、1つ以上の反応容器それぞれの1つ以上の中で、有機反応物質、すなわち、1種以上の脂肪族有機化合物および1種以上のアルキル化剤を、好適な反応帯におけるアルキル化触媒と接触させて実施される。この点において、反応様式に概して制限はないが、ただし、1種以上のアルキル化化合物を得る上で好適であるものとする。これに応じて、本発明の方法は、主に、回分反応として、もしくは連続プロセスとして、または回分反応と連続プロセスとの組み合わせとして実施してもよく、好ましくは、連続プロセスとして実施する。
【0109】
したがって、本発明によれば、アルキル化の方法は、回分または連続様式で、好ましくは連続様式で実施される。
【0110】
本発明の方法を回分反応として実施する、本発明の好ましい実施形態によれば、上記および下記の任意の好ましいおよび特に好ましい反応パラメーターに加えて、用いる反応時間には特に制限はないが、ただし、1種以上のアルキル化有機化合物は、工程(b)で得ることができるものとする。したがって、例として、回分反応の継続時間は、0.5~100時間の範囲を占めてよく、好ましくは、回分反応は、1~80時間、より好ましくは4~50時間、より好ましくは8~35時間、より好ましくは12~30時間、より好ましくは15~26時間、さらにより好ましくは18~22時間の範囲の継続時間の間に実施される。
【0111】
したがって、本発明によれば、好ましくは、本発明の方法を回分反応として実施するさらに好ましい実施形態によれば、工程(b)は、0.5~100時間、好ましくは1~80時間、より好ましくは4~50時間、より好ましくは8~35時間、より好ましくは12~30時間、より好ましくは15~26時間、さらにより好ましくは18~22時間の継続時間の間、実施することが好ましい。
【0112】
本発明によれば、本発明の方法は、連続様式で実施されることが代替的に好ましい。前記さらなる好ましい実施形態によれば、1種以上のゼオライト材料を含む触媒の状態には特に制限がなく、したがって、例として、固定床と流動床技術との組み合わせに加えて、固定床または流動床技術を用いてもよく、固定床および流動床の両技術を用いる場合、工程(b)で2つ以上の反応容器を用いることが好ましく、固定床および流動床技術は、好ましくは、別の反応容器それぞれに限定される。しかしながら、連続様式を用いる特に好ましい実施形態によれば、1つ以上の反応器のうちの1つ以上の中で、本発明の方法の触媒を固定床として維持することが好ましい。
【0113】
さらに、本発明の方法を連続反応として実施する、本発明のさらなる好ましい実施形態によれば、上記および下記の任意の好ましいおよび特に好ましい反応パラメーターに加えて、連続プロセスにおいて使用される1つ以上の反応容器のうちの1つ以上の中で用いられる毎時供給質量空間速度(WHSV)は特に限定されないが、ただし、1種以上のアルキル化有機化合物は、工程(b)で得ることができるものとする。したがって、例として、1つ以上の反応容器のうちの1つ以上の中で用いられるWHSVは、0.1~500h-1の範囲内に含まれ得、WHSVは、好ましくは、0.5~100h-1、より好ましくは0.1~20h-1、さらにより好ましくは1~6h-1の範囲に含まれる。
【0114】
したがって、本発明によれば、本発明の方法の工程(b)は、連続プロセスとして実施されることが好ましい。
【0115】
さらに、本発明によれば、工程(b)で用いる1つ以上の反応容器は、固定床および/または流動床の形態の触媒を含有することがさらに好ましく、好ましくは、1つ以上の反応容器のうちの1つ以上は、固定床の形態の触媒を含有する。
【0116】
したがって、さまざまなタイプの反応容器を、本発明の方法において使用することができる。例えば、方法は、触媒および脂肪族有機化合物原料を、攪拌されたオートクレーブに添加し、好適な反応温度で加熱し、次いでアルキル化剤原料を添加することによって、回分式で実施してもよい。熱伝導流体をオートクレーブのジャケットに通して循環させてよい、または冷却器を設けて、反応の熱を除去し、一定の温度を維持してもよい。方法は、触媒蒸留様式で実施することもできる。
【0117】
さらに、例として、大規模な産業プロセスでは、上流もしくは下流様式で動作する固定床反応容器または並流もしくは向流の触媒および炭化水素流で動作する流動床反応容器を用いることができる。これらの反応容器は、単一の触媒床または複数の触媒床を含有してもよく、1種以上のアルキル化剤の中間添加および中間冷却にために備えられ得る。1種以上のアルキル化剤の中間添加および/または等温操作を用いて、生成物の品質および触媒寿命を強化することができる。さらに、流動床反応容器を使用して、再生および新しい触媒または再生した触媒と置き換えるために、使用済み触媒を継続的に除去してもよい。
【0118】
使用する1種以上の脂肪族有機化合物および1種以上のアルキル化剤の比率に関して、本発明によれば特に限定されないが、ただし、1種以上の脂肪族有機化合物は、工程(b)で得られるものとする。本発明の方法によれば、少なくとも等モル量の1種以上の脂肪族有機化合物および1種以上のアルキル化剤を用いることが好ましく、好ましくは、1種以上のアルキル化剤の量に対してモル過剰の1種以上の脂肪族有機化合物を使用する。したがって、例として、本発明の方法によれば、1種以上の脂肪族有機化合物と1種以上のアルキル化剤とのモル比は、10~250、好ましくは20~150の範囲に含まれることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、モル比は、30~100、より好ましくは35~80、より好ましくは40~60、さらにより好ましくは45~55の範囲に含まれる。
【0119】
したがって、本発明によれば、工程(b)で使用する1種以上の脂肪族有機化合物と1種以上のアルキル化剤のモル比は、10~250、好ましくは20~150、より好ましくは30~100、より好ましくは35~80、より好ましくは40~60、さらにより好ましくは45~55の範囲である。
【0120】
本発明によれば、工程(a)で生成される触媒は、原則として、任意の好適な形態で使用してよいが、ただし、アルキル化反応を触媒することができるものとする。したがって、工程(a)で生成される、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含むアルキル化触媒をそれ自体で、例えば粉末、噴霧粉末または噴霧顆粒の形態などで、用いることができる。
【0121】
しかしながら、本発明の方法を工業規模で用いるとき、成形の形態ではなく、粉末または噴霧材料とするゼオライト材料を含むアルキル化触媒を使用しないことが好ましい。
【0122】
したがって、本発明の方法によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト座利用を含む触媒を、成形形態で提供することが好ましい。
【0123】
一般的に、粉末または噴霧材料は、例えば好適な圧縮などによって、他の化合物を一切用いずに、形づくって成形品を形成して、錠剤、円柱、および/または球体などの形態の所望の形状の成形品を得ることができる。しかしながら、成形品は、触媒に含まれる1種以上のゼオライト材料に加えて、全ての想定されるさらなる化合物を含んでもよいが、ただし、結果として得られる成形品は、工程(b)におけるアルキル化反応を触媒できることを確証するものとする。前記好ましい実施形態によれば、少なくとも1種の好適なバインダー材料が、成形品の製造において使用されることが、さらに好ましい。この好ましい実施形態との関係において、より好ましくは、1種以上のゼオライト材料を含む触媒と1種以上のバインダーとの混合物を調製する。好適なバインダーは、一般的に、特にバインダーなしで存在し得る物理吸着を超えて結合する1種以上のゼオライト材料間に接着および/または凝集を付与する全ての化合物である。このようなバインダーの例としては、SiO、Al、TiO、ZrOもしくはMgOなどの金属酸化物または粘土、またはこれらの化合物の2つ以上の混合物がある。Alバインダーとしては、粘土鉱物および天然または合成アルミナ、例えばα、β、γ、δ、η、κ、χまたはθ-アルミナおよびこれらの無機または有機金属前駆体化合物、例えばギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、擬ベーマイト、またはトリアルコキシアルミネート、例えばアルミニウムトリイソプロピレートが特に好ましい。さらに好ましいバインダーは、極性および非極性部分を有する両親媒性化合物ならびに黒鉛である。さらなるバインダーは、例えば、モンモリロナイト、カオリン、ベントナイト、ハロイサイト、ディッカイト、ナクライトまたはアナキサイト(anaxites)などの粘土である。
【0124】
本発明によれば、成形品を製造するためにバインダー自体を使用することができる。しかしながら、本発明との関係においては、成形品の製造における少なくとも1つのさらなる工程でバインダーを形成するための化合物を使用することも可能である。このようなバインダー前駆体の例には、テトラアルコキシシラン、テトラアルコキシチタネート、テトラアルコキシジルコネート、または2種以上の異なるテトラアルコキシシランの混合物もしくは2種以上の異なるテトラアルコキシチタネートの混合物もしくは2種以上の異なるテトラアルコキシジルコネートの混合物または少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートとの混合物もしくは少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物もしくは少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物または少なくとも1種のテトラアルコキシシランと少なくとも1種のテトラアルコキシチタネートと少なくとも1種のテトラアルコキシジルコネートとの混合物がある。本発明との関係においては、SiOから完全にもしくは部分的になるまたはSiOの前駆体であるバインダーであって、成形品の製造における少なくとも1つのさらなる工程でSiOを形成するためのバインダーが挙げられる。この関係において、コロイド状シリカと「湿式」シリカおよび「乾式」シリカの両方を使用することができる。これらは、非常に特定的に好ましい非晶質シリカであり、シリカ粒子のサイズは、例えば、5~100nmの範囲であり、シリカ粒子の表面は、50~500m/gの範囲である。好ましくはアルカリ性および/またはアンモニア性溶液の形態、より好ましくはアンモニア性溶液の形態のコロイド状シリカは、例えば、とりわけ、Ludox(登録商標)、Syton(登録商標)、Nalco(登録商標)、またはSnowtex(登録商標)として市販されている。「湿式」シリカは、例えば、とりわけ、Hi-Sil(登録商標)、Ultrasil(登録商標)、Vulcasil(登録商標)、Santocel(登録商標)、Valron-Estersil(登録商標)、Tokusil(登録商標)またはNipsil(登録商標)として市販されている。「乾式」シリカは、例えば、とりわけ、Aerosil(登録商標)、Reolosil(登録商標)、Cab-O-Sil(登録商標)、Fransil(登録商標)またはArcSilica(登録商標)として市販されている。バインダーは、好ましくは、最終的に得られる成形品のバインダー含有率が、いずれの場合においても最終的に得られる成形品の総質量に対して、最大80質量%、より好ましくは5~80質量%の範囲、より好ましくは10~70質量%の範囲、より好ましくは10~60質量%の範囲、より好ましくは15~50質量%の範囲、より好ましくは15~45質量%の範囲、特に好ましくは15~40質量%の範囲になる量で使用される。
【0125】
原則として、本発明のアルキル化触媒を含む成形品は、任意の好適な手順に従って得ることができるが、ただし、成形品は、本発明の方法の工程(b)におけるアルキル化を触媒し得るものとする。本発明の好ましい実施形態によれば、成形品は、
(I)1種以上のゼオライト材料を含むアルキル化触媒および任意の少なくとも1種のバインダーを含有する混合物を調製する工程、
(II)混合物を任意に混練する工程、
(III)混練した混合物を成形して、少なくとも1つの成形品を得る工程、
(IV)少なくとも1つの成形品を任意に乾燥する工程、ならびに/または
(V)少なくとも1つの乾燥成形品を任意に焼成する工程
を含む、成形品を製造するプロセスに従って得ることができ、好ましくは得られる。
【0126】
用語「最終的に得られる成形品」は、本発明との関係において使用する場合、任意の乾燥および/または焼成工程(IV)および/または(V)から得ることができる、好ましくは得られる成形品、特に好ましくは工程(IV)から得ることができる、好ましくは得られる成形品に関する。
【0127】
したがって、バインダーまたはバインダーの前駆体と1種以上のゼオライト材料を含む触媒との混合物を、さらなる処理およびプラスチック材料の形成のための少なくとも1種のさらなる化合物と混合することができる。ここでは、とりわけ、好ましくは細孔形成剤を上げることができる。本発明の方法において、完成成形品で特定の細孔径および/または特定の細孔径分布および/または特定の細孔容積を与える全ての化合物を、細孔形成剤として使用することができる。本発明の方法において使用することが好ましい細孔形成剤は、水または水性溶媒混合物中で分散性、懸濁性または乳化性のポリマーである。ここで好ましいポリマーは、高分子ビニル化合物、例えばポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリエステル、炭水化物、例えばセルロースもしくはセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、または糖もしくは天然繊維である。さらに好適な細孔形成剤は、例えば、パルプまたは黒鉛である。(I)による混合物の調製において細孔形成剤を使用する場合、細孔形成剤の含有率、好ましくは(I)による混合物のポリマー含有率は、いずれの場合にも(I)による混合物中の1種以上のゼオライト材料の量に対して、好ましくは5~90質量%の範囲、好ましくは15~75質量%の範囲、特に好ましくは25~55質量%の範囲である。達成しようとする細孔径分布の要望に応じて、2種以上の細孔形成剤の混合物も使用可能である。本発明の方法の好ましい実施形態において、工程(V)で焼成によって細孔形成剤を除去し、多孔質成形品が得られる。しかしながら、本発明によれば、工程(III)で得られる成形品は、後続して、焼成工程に供しないことが、特に好ましい。本発明の方法において好ましくは使用される成形品の焼成に関して、用語「焼成」は、1種以上のゼオライト材料に関して上述した焼成工程を指す。したがって、工程(III)で得られた成形品を後続して焼成工程に供しない、本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記実施形態に従って、細孔形成剤を使用しないか、あるいは、本発明の趣旨の範囲内で焼成工程ではない加熱工程によって適宜除去できる、および/または1種以上細孔形成剤を含む好ましい成形品の好適な加熱以外の他の手段によって除去できる1種以上の細孔形成剤を使用することがそれ相応に好ましい。
【0128】
本発明の同様に好ましい実施形態との関係において、(I)による混合物の調製において、少なくとも1種のペースト化剤を添加する。使用可能なペースト化剤は、この目的に適した全ての化合物である。これらは、好ましくは、有機、特に親水性ポリマー、例えばセルロース、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、デンプン、例えばジャガイモデンプン、壁紙ペースト、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリイソブテンまたはポリテトラヒドロフランである。これに応じて、細孔形成剤としても作用する特定化合物をペースト化剤として使用することができる。下記の本発明の方法の特に好ましい実施形態において、これらのペースト化剤は、工程(V)で焼成によって除去し、多孔質成形品が得られる。しかしながら、本発明によれば、工程(III)で得られた成形品を、後続して焼成工程に供しないことが特に好ましい。したがって、工程(III)で得られた成形品を後続して焼成工程に供しない、本発明の特に好ましい実施形態によれば、前記実施形態に従って、ペースト化剤を使用しないか、あるいは、本発明の趣旨の範囲内で焼成工程ではない加熱工程によって適宜除去できる、および/または1種以上のペースト化剤を含む好ましい成形品の好適な加熱以外の他の手段によって除去できる1種以上のペースト化剤を使用することがそれ相応に好ましい。
【0129】
本発明のさらなる実施形態によれば、(I)による混合物の調製中に少なくとも1種の酸性添加剤を添加してもよい。この点において、任意の焼成工程(V)で除去できる有機酸性化合物が好ましい。カルボン酸、例えばギ酸、シュウ酸および/またはクエン酸は特に好ましい。また、これらの酸性化合物のうちの2種以上を使用することも可能である。しかしながら、上述の細孔形成剤およびペースト化剤に関しては、1種以上の酸性添加剤、好ましくは本発明の趣旨の範囲内で焼成工程ではない加熱工程によって除去できるおよび/または1種以上の酸性添加剤、好ましくは1種以上の有機酸性化合物を含む好ましい成形品の好適な加熱以外の他の手段によって除去できる1種以上の有機酸性化合物を使用することが好ましい。
【0130】
BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含むアルキル化触媒を含む、(I)による混合物の成分を添加する順序は、重要ではない。具体的には、まず少なくとも1種のバインダー、次いで少なくとも1種の細孔形成剤および少なくとも1種の酸性化合物、最後に少なくとも1種のペースト化剤を添加することと、少なくとも1種のバインダー、少なくとも1種の細孔形成剤、少なくとも1種の酸性化合物、および少なくとも1種のペースト化剤の順序を入れ替えることの両方が可能である。
【0131】
適切な場合に、既に上述の少なくとも1種の化合物を添加した、ゼオライト材料を含むアルキル化触媒に、バインダーを添加した後、(I)による混合物を10~180分間、正常に均一化する。とりわけ、ニーダー、エッジミルまたは押出機を均一化のために使用することが特に好ましい。混合物を好ましくは練る。工業規模で、エッジミルにおける処理が、好ましくは、均一化のために用いられる。均一化は、通常、約10℃からペースト化剤の沸点までの範囲の温度および標準圧力またはやや過圧で実施される。その後、適宜、上述の少なくとも1種の化合物を添加してもよい。こうして得られた混合物を、押し出し可能なプラスチック材料が形成されるまで、均一化する、好ましくは練る。
【0132】
成形品の製造のための本発明の好ましいプロセスによれば、均一化した混合物を後続して成形する。本発明との関係において、従来の押出機で押し出すことによって成形が達成され、例えば、好ましくは1~10mm、特に好ましくは2~5mmの直径を有する押出品が得られるプロセスが、成形プロセスに好ましい。このような押出装置は、例えば、Ullmann‘s Enzyklopaedie der Technischen Chemie,第4版、2巻、295頁(以下参照)、1972年に記載されている。スクリュー式押出機の使用に加えて、プランジャー式押出機も、成形に使用することが好ましい。しかしながら、原則として、全ての公知のおよび/または好適な混練および成形の装置およびプロセスを成形用に使用してよい。これらの例としては、とりわけ、ブリケッティング、すなわち追加のバインダー材料を添加するまたは添加しない機械的圧縮、ペレッティング、すなわち円および/または回転運動による圧密、焼結、すなわち成形しようとする材料を熱処理に供することである。本発明に従って製造された成形品の形状は、所望に応じて選択することができる。具体的には、とりわけ、球形、楕円形、円柱または錠剤が可能である。
【0133】
本発明との関係において、好ましくは、工程(III)の後に少なくとも1つの乾燥工程が続く。原則として、任意の好適な乾燥工程を使用してもよいが、ただし、乾燥成形品が得られるものとする。しかしながら、本発明によれば、乾燥工程は、本発明の趣旨の範囲内における焼成工程において使用される温度を要しないことが好ましい。
【0134】
本発明との関係において、任意に、いずれかの乾燥工程(IV)の後に、少なくとも1つの焼成工程(V)が続く。特定の実施形態によれば、焼成工程(V)を、成形工程(III)の後に直接実施する。しかしながら、本発明によれば、BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含むアルキル化触媒を含有する好ましい成形品を、任意の乾燥工程(IV)後、焼成工程(V)に供しないことが好ましく、焼成工程(V)を要しない前記特に好ましい実施形態によれば、製造プロセスは、成形工程(III)後に1つ以上の乾燥工程(IV)を含むことが好ましい。
【0135】
好ましい成形品が、1つ以上の焼成工程(V)を含む成形品を製造するための上述の好ましい方法に従って得ることができる、好ましくは得られる、実施形態によれば、焼成は、一般的に、本発明の趣旨の範囲内で規定された任意の温度で実施することができ、好ましくは、300~700℃、より好ましくは400~600℃の範囲の温度で実施される。前記実施形態によれば、焼成は、任意の好適なガス雰囲気下で達成することができ、空気および/または希薄空気が好ましい。さらに、焼成は、好ましくは、マッフル炉、ロータリーキルンおよび/またはベルト焼成オーブンで実施する。焼成工程中の温度は、一定のままにしておくことも、連続的にまたは断続的に変化させることも可能である。焼成を2回またはそれ以上頻繁に実行した場合、焼成温度は、個々の工程で異なっていても、同一であってもよい。
【0136】
任意の乾燥工程(IV)の前および/もしくは後ならびに/または任意の焼成工程(V)の前および/もしくは後、少なくとも1種の成形品を、濃縮または希薄ブレンステッド酸または2種以上のブレンステッド酸の混合物で、適宜、処理することができる。好適な酸は、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸またはカルボン酸、ジカルボン酸またはオリゴもしくはポリカルボン酸、例えばニトリロ三酢酸、スルホサリチル酸またはエチレンジアミン四酢酸である。適切な場合に、少なくとも1種のブレンステッド酸によるこの少なくとも1つの処理の後に、少なくとも1つの乾燥工程(IV)および/または少なくとも1つの焼成工程(V)が続く。
【0137】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、好ましくは工程(a)で生成され、工程(b)で使用される成形品は、より良好に硬化するために、水蒸気処理に供することができ、その後、好ましくは、乾燥を少なくとも1回繰り返し、かつ/または焼成を少なくとも1回繰り返す。例えば、少なくとも1つの乾燥工程および少なくとも1つの後続する焼成工程の後、焼成した成形品を水蒸気処理に供し、次いで乾燥を少なくとも1回繰り返し、かつ/または焼成を少なくとも1回繰り返す。
【0138】
本発明を、示される従属関係および後方参照から得られる、以下の一連の実施形態および実施形態の組み合わせによってさらに例示する。特に、「実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法」などの用語との関係にある様々な実施形態が挙げられる各例において、この範囲内の全ての実施形態は、当業者に明らかであるように開示されることを意味し、すなわち、この用語の表現は、「実施形態1、2、3および4のいずれか1つの方法」と同義であるものと当業者に理解されるべきである。
【0139】
1. 脂肪族有機化合物のアルキル化のための方法であって、
(a)BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む触媒を生成することであって、該BEA骨格構造が、YOを含み、任意にXを含み、式中、Yは四価元素であり、Xは三価元素であることと、
(b)1種以上のアルキル化有機化合物を得るための1つ以上の反応容器中で、1種以上のアルキル化剤の存在下、触媒を1種以上の脂肪族有機化合物と接触させることと
を含み、
1種以上のゼオライト材料が、構造指向剤として有機鋳型を使用しない合成プロセスから得ることができる、方法。
【0140】
2. 1種以上のゼオライト材料が、非焼成である、実施形態1に記載の方法。
【0141】
3. Yが、Si、Sn、Ti、Zr、Ge、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Yが、好ましくはSiである、実施形態1または2に記載の方法。
【0142】
4. Xが、Al、B、In、Ga、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、Xが、好ましくはAlである、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
【0143】
5. 1種以上のゼオライト材料の1つ以上のY:Xモル比が、1~100、好ましくは2~50、より好ましくは2.5~30、より好ましくは3~20、より好ましくは3.5~15、より好ましくは3.7~10、より好ましくは3.9~8、より好ましくは4.1~6、より好ましくは4.3~5.5の範囲、より好ましくは4.5~5の範囲である、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
【0144】
6. 1種以上のゼオライト材料が、1種以上のゼオライト材料の骨格に対する対イオンとしてHを含有し、好ましくは、1種以上のゼオライト材料中の対イオンとして含まれるH以外に、1種以上のゼオライト材料が、100質量%のYOに対して5質量%以下の非骨格元素、好ましくは100質量%のYOに対して3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下の非骨格元素を含有する、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
【0145】
7. 非骨格元素が、Naおよび/またはKであり、好ましくはLi、Na、およびK、より好ましくはアルカリ金属、より好ましくはアルカリ金属およびアルカリ土類金属、より好ましくはアルカリ金属、アルカリ土類金属、および遷移金属、より好ましくは金属である、実施形態6に記載の方法。
【0146】
8. 1種以上のゼオライト材料の1つ以上が、少なくとも以下:
【表7】
の反射を含むX線回折パターンを有し、100%が、X線粉末回折パターン中の最大ピークの強度に関する、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
【0147】
9. X線回折パターンが、以下:
【表8】
の反射をさらに含む、実施形態8に記載の方法。
【0148】
10. 1種以上のゼオライト材料の1つ以上のISO9277に従って決定したBET表面積が、200~700m/g、好ましくは250~675m/g、より好ましくは300~650m/g、より好ましくは350~625m/g、より好ましくは400~600m/g、より好ましくは450~575m/g、さらにより好ましくは500~550m/gの範囲である、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
【0149】
11. 1種以上のゼオライト材料が、ゼオライトベータを含み、好ましくは1種以上のゼオライト材料が、ゼオライトベータであり、より好ましくは、ゼオライトベータが、1種以上のゼオライト材料として使用される、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
【0150】
12. 1種以上の脂肪族有機化合物が、任意に置換されたかつ/または任意に環状のおよび/または任意に分枝鎖の(C2~C20)炭化水素およびこれらの2つ以上の混合物、好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C16)炭化水素、より好ましくは(C2~C14)炭化水素、より好ましくは(C2~C12)炭化水素、より好ましくは(C2~C10)炭化水素、より好ましくは(C2~C8)炭化水素、より好ましくは(C2~C6)炭化水素、より好ましくは(C3~C5)炭化水素、より好ましくはC4-炭化水素ならびにこれらの混合物からなる群から選択される、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
【0151】
13. 1種以上の任意に置換されたかつ/または任意に環状の炭化水素が分枝鎖であり、好ましくは、1種以上の分枝鎖炭化水素が、次式
【化6】
[式中、R、R、およびRが、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C8)アルキル、好ましくは(C1~C6)アルキル、より好ましくは(C1~C5)アルキルであり、より好ましくは、R、R、およびRが、互いに独立して、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖の(C1~C4)アルキル、好ましくは(C1~C3)アルキルであり、より好ましくは、R、R、Rが、互いに独立して、任意に置換されたメチルまたはエチル、好ましくは任意に置換されたメチルである]を有する、実施形態12に記載の方法。
【0152】
14. 1種以上の脂肪族有機化合物が、1つ以上の官能基で置換され、1つ以上の官能基が、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、炭酸エステル、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、ホスフィノ、ホスホノ、およびホスフェートからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C1~C3)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、(C1~C2)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、メトキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、より好ましくは、1種以上の脂肪族化合物が、1つ以上のヒドロキシル基で置換される、実施形態12または13に記載の方法。
【0153】
15. 1種以上の脂肪族有機化合物が、非置換炭化水素であり、好ましくは、1種以上の脂肪族有機化合物が、イソブタンを含み、より好ましくは、1種以上の脂肪族有機化合物が、イソブタンであり、より好ましくは、イソブタンが、1種以上の脂肪族有機化合物として使用される、実施形態12または13に記載の方法。
【0154】
16. 1種以上のアルキル化剤が、オレフィン、アルコール、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、好ましくは、オレフィン、アルコール、ハロゲン化アルキル、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、より好ましくは、オレフィン、アルコール、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の化合物を含み、さらにより好ましくは1種以上のアルキル化剤が、1種以上のオレフィンを含む、実施形態1から15のいずれかに記載の方法。
【0155】
17. オレフィンが、1種以上のアルケン、より好ましくは、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖の(C2~C20)アルケンおよびこれらの2つ以上の混合物、好ましくは(C2~C18)アルケン、より好ましくは(C2~C16)アルケン、より好ましくは(C2~C14)アルケン、より好ましくは(C2~C12)アルケン、より好ましくは(C2~C10)アルケン、より好ましくは(C2~C8)アルケン、より好ましくは(C2~C6)アルケン、より好ましくは(C3~C5)アルケン、より好ましくはC4-アルケンならびにこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のアルケンを含む、実施形態16に記載の方法。
【0156】
18. 1種以上のアルケンが、1~4つのC=C二重結合、好ましくは1~3つの、より好ましくは1つまたは2つの、より好ましくは1つのC=C二重結合を含有する、実施形態17に記載の方法。
【0157】
19. 1種以上のアルケンが、少なくとも1つの末端C=C二重結合および/または少なくとも1つの内部C=C二重結合、好ましくは少なくとも1つの末端C=C二重結合を含有する、実施形態17から18のいずれかに記載の方法。
【0158】
20. 1種以上のアルケンが、任意に置換されたかつ/または任意に環状のかつ/または任意に分枝鎖のエテン、プロペン、ブテン、ペンテン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、1種以上のアルケンが、任意に置換されたかつ/または任意に分枝鎖のプロペンおよび/またはブテンを含み、より好ましくは、1種以上のアルケンが、ブテンを含み、より好ましくは、1種以上のアルケンが、ブテンであり、より好ましくはブテンが1種以上のアルケンとして使用される、実施形態17から19のいずれかに記載の方法。
【0159】
21. ブテンが、ブタ-1-エン、(2Z)-ブタ-2-エン、(2E)-ブタ-2-エン、2-メチルプロパ-1-エン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、ブタ-1-エン、(2Z)-ブタ-2-エン、(2E)-ブタ-2-エン、およびこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、ブテンが、ブタ-1-エンを含み、より好ましくは、ブテンがブタ-1-エンである、実施形態20に記載の方法。
【0160】
22. 1種以上のアルケンが、1つ以上の官能基で置換され、1つ以上の官能基が、好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、炭酸エステル、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、スルフィド、スルフィニル、スルホニル、スルフィノ、スルホ、チオシアネート、イソチオシアネート、ホスフィノ、ホスホノ、およびホスフェートからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、カルボキサミド、アミン、イミン、シアネート、イソシアネート、ニトレート、ニトリル、イソニトリル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルデヒド、カルボキシレート、カルボキシル、エステル、エーテル、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、ハロゲン、カルボニル、アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、ブロモ、(C1~C3)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、(C1~C2)アルコキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、ヒドロキシル、フルオロ、クロロ、メトキシ、およびこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され、
より好ましくは、1種以上のアルキル化剤が、1つ以上のヒドロキシル基で置換される、実施形態17から21のいずれかに記載の方法。
【0161】
23. 1種以上のアルケンが、非置換であり、好ましくは、1種以上のアルキル化剤が、1種以上の非置換アルケンからなる、実施形態16から21に記載の方法。
【0162】
24. 1種以上の脂肪族有機化合物と1種以上のアルキル化剤とのモル比が、10~250、好ましくは20~150、より好ましくは30~100、より好ましくは35~80、より好ましくは40~60、さらにより好ましくは45~55の範囲である、実施形態1から23のいずれかに記載の方法。
【0163】
25. 工程(b)が、50~250℃、好ましくは60~200℃、より好ましくは70~150℃、より好ましくは80~120℃、さらにより好ましくは90~110℃の範囲の温度で実施される、実施形態1から24のいずれかに記載の方法。
【0164】
26. 工程(b)が、1~50バール、好ましくは4~40バール、より好ましくは8~35バール、より好ましくは12~30バール、より好ましくは14~29バール、より好ましくは16~28バール、より好ましくは18~27バール、より好ましくは20~26バール、さらにより好ましくは22~25バールの範囲に含まれる圧力で実施される、実施形態1から25のいずれかに記載の方法。
【0165】
27. 工程(b)が、0.5~100時間、好ましくは1~80時間、より好ましくは4~50時間、より好ましくは8~35時間、より好ましくは12~30時間、より好ましくは15~26時間、さらにより好ましくは18~22時間の継続時間の間、実施される、実施形態1から26のいずれかに記載の方法。
【0166】
28. 回分式または連続式、好ましくは連続式で実施される、実施形態1から27のいずれかに記載の方法。
【0167】
29. 1つ以上の反応容器が、固定床および/または流動床の形態の触媒を含有し、好ましくは1つ以上の反応容器の1つ以上が、固定床の形態の触媒を含有する、実施形態1から28のいずれかに記載の方法。
【0168】
30. BEA骨格構造を有する1種以上のゼオライト材料を含む触媒が、成形品の形態で提供される、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1】イソブタンと直鎖ブテンとの反応およびその直接反応生成物を概略的に示す図である。
図2】比較例2による有機鋳型非含有合成から得られたゼオライト材料のX線回折(XRD)パターン(Cu Kアルファ-1放射線を使用して測定)を示す図である。図中、回折角2θ°を横座標に示し、強度を縦座標にプロットする。図2は、鋳型介在合成から得られたゼオライトベータと比較のためのモルデナイトの各線パターンをさらに含む。
図3】比較例2によって得られたゼオライト材料の窒素吸着等温線を示す図である。図中、横座標に相対応力p/pをプロットし、縦座標に、77KでDIN66134に従って決定したSTP(標準圧力および温度)の細孔容積(cm/g)をプロットする。吸着の値を記号(◆)で示し、脱着の値を記号(▲)で示す。
図4】実施例1によって得られたブタ-1-エンによるイソブタンのアルキル化における比較例2、4、5、7、および9の触媒試料の実験的試験の結果を示す図である。図中、各試料のSi:Alモル比を横座標にプロットし、触媒の量(g)に対するアルキル化生成物の収率(mg)(mg生成物/g触媒)を縦座標にプロットする。比較例2、4および5で得られた値を記号(◆)で示し、比較例7および9の脱アルミニウム化試料で得られた値を記号(●)で示し、市販のゼオライトベータ試料で得られた値を記号(▲)で示す。
図5】実施例1によって得られたブタ-1-エンによるイソブタンのアルキル化における比較例2、4、5、7、および9の触媒試料の実験的試験の結果を示す図である。図中、各試料のSi:Alモル比を横座標にプロットし、100%のアルキル化生成物に対して%で表す、C-アルキル化生成物に向けた各触媒試料の選択率を縦座標にプロットする。比較例2、4および5で得られた値を記号(◆)で示し、比較例7および9の脱アルミニウム化試料で得られた値を記号(●)で示し、市販のゼオライトベータ試料で得られた値を記号(▲)で示す。
図6】比較例10によって得られたゼオライト材料のX線回折(XRD)パターン(Cu Kアルファ-1放射線を使用して測定)を示す図である。図中、回折角2θ°を横座標に示し、強度を縦座標にプロットする。図6は、ゼオライトベータおよび斜方沸石の各線パターンをさらに含む。
【実施例
【0170】
[比較例1]有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの調製
23.95gのNaAlOを812.35gのHOに溶解した後、9.01gのAl-ベータゼオライト種晶(Zeolyst International製のCP814Cゼオライトベータ;使用前に500℃で5時間焼成してH型を得た)を添加した。次いで、攪拌しながら、1154.69gのナトリウム-水ガラス溶液(Fa.Woellnerからの26質量%のSiOおよび8質量%のNaO)を混合物にゆっくり添加し、ゲルが最初に生成され、溶液をさらに添加した後、次いでこれを溶解した。
【0171】
次いで、混合物を2.5Lのオートクレーブに移し、攪拌せずに、3時間にわたって120℃まで加熱し、次いでその温度で117時間結晶化させた。反応混合物を室温に冷却させた後、それを濾過し、固体の残留物を蒸留水で繰り返し洗浄して中和させ、その後、120℃で16時間乾燥して、85gの白色の結晶性生成物を得た。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して90%の結晶度グレードを示した。
【0172】
図2において、結晶性生成物のXRDを示す。特にXRDパターンは、25~26°の2θ範囲で観察された2つの特徴的な反射を考慮して、有機鋳型非含有合成から得られたBEA骨格構造に典型的である。
【0173】
結晶性生成物の元素分析は、4.8:1のSi:Alモル比を提供した。試料のエネルギー分散X線(EDX)組成分析は、4.9:1のSi:Alモル比を提供した。
【0174】
次いで、1gの結晶性生成物を、80℃で10質量%の硝酸アンモニウム水溶液を使用する2つの後続するイオン交換段階に供し、イオン交換した材料を350℃で5時間焼成した。
【0175】
図3において、イオン交換した生成物を使用して得られた窒素等温線を示す。特に、微孔質固体に典型的なI型吸着等温線の階段状の曲線が明らかであり(DIN66135参照)、合成したままの(as-synthesized)ゼオライト材料が、通気微孔を有することを示す。データの評価により、ラングミュア法に従って681m/gの等価表面および521m/gのBET表面積が得られた。
【0176】
[比較例2]比較例1の生成物からのH型のゼオライトベータの調製
比較例1のイオン交換していない結晶性生成物を、それぞれ0.5Mの硝酸アンモニウム溶液を用いた3つの後続するイオン交換工程に供し、その後、450℃で6時間焼成した。
【0177】
[比較例3]有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの調製
332.1gのNaAlOを7578.8gのHOに溶解した後、62.8gのAl-ベータゼオライト種晶(Zeolyst International製のCP814Cゼオライトベータ;H型)を添加し、その後、200rpmで攪拌しながら363.6gのヒュームドシリカ(Degussa製のAerosil(登録商標)200)をゆっくり添加した。次いで、混合物を20Lのオートクレーブに移し、8062.6gのナトリウム-水ガラス溶液(Fa.Woellner製の26質量%のSiOおよび8質量%のNaO)を、攪拌しながら混合物にゆっくり添加し、ゲルが最初に生成され、溶液をさらに添加した後、次いでこれを溶解した。
【0178】
次いで、混合物を、攪拌せずに、3時間にわたって120℃まで加熱し、次いでその温度で117時間結晶化させた。反応混合物を室温に冷却させた後、それを濾過し、固体の残留物を蒸留水で繰り返し洗浄して中和させ、その後、120℃で16時間乾燥して、1330gの白色の結晶性生成物を得た。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して90%の結晶度グレードを示した。
【0179】
結晶性生成物の元素分析は、4.5:1のSi:Alモル比を提供した。
【0180】
比較例1についてと同様、結晶性生成物のXRDは、25~26°の2θ範囲で観察された2つの特徴的な反射を考慮して、有機鋳型非含有合成から得られたBEA骨格構造に典型的なXRDパターンを示した。
【0181】
[比較例4]比較例3の生成物からのH型のゼオライトベータの調製
比較例3の結晶性生成物を、それぞれ0.5Mの硝酸アンモニウム溶液を用いた3つの後続するイオン交換工程に供し、その後、450℃で6時間焼成した。
【0182】
[比較例5]有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの調製
18.28kgのAl-ベータゼオライト種晶(Zeolyst International製のCP814Cゼオライトベータ;そのH型を得るために使用前に焼成した)を、100kgの蒸留水中で懸濁させ、次いで溶液を100rpmで30分間さらに攪拌した。別の容器中で、24.75kgのNaAlOを399.6kgの蒸留水に溶解し、次いで溶液を50rpmで30分間さらに攪拌した。次いで種晶の水性懸濁液を、攪拌下で、アルミン酸ナトリウム溶液に添加し、次いで空の容器を20Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。次いで、555.27kgのナトリウム-水ガラス溶液(Fa.Woellner製の26質量%のSiOおよび8質量%のNaO)を、25rpmでの攪拌下で、1時間にわたって連続的に混合物に添加し、次いで空の容器を10Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。次いで96.21kgのコロイド状シリカ(40%;Grace製のLudox AS40)水溶液を、攪拌下で混合物に添加し、次いで空の容器を5Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。
【0183】
次いで混合物を、25rpmで攪拌しながら、3時間にわたって120℃まで加熱し、次いでその温度で84時間結晶化させた。反応混合物を室温に冷却させた後、それを濾過し、固体の残留物を蒸留水で繰り返し洗浄して中和させ、その後、120℃で乾燥して、122.523kgの白色の結晶性生成物を得た。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して71%の結晶度グレードを示した。
【0184】
比較例1および3についてと同様、結晶性生成物のXRDは、25~26°の2θ範囲で観察された2つの特徴的な反射を考慮して、有機鋳型非含有合成から得られたBEA骨格構造に典型的なXRDパターンを示した。
【0185】
結晶性生成物の元素分析は、0.9:0.2:0.2のSi:Al:Naモル比を提供した。生成物のSi:Alモル比は、したがって、4.5:1であった。
【0186】
DIN66135に準拠した窒素等温線を決定し、データの評価により、ラングミュア法に従って643m/gの等価表面および471m/gのBET表面積が得られた。
【0187】
次いで、100gの結晶性生成物を1kgの10質量%硝酸アンモニウム水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いでイオン交換工程を繰り返し、その後、生成物を120℃で終夜乾燥し、90gのイオン交換した結晶性生成物を得た。
【0188】
イオン交換した生成物の元素分析により、1.17:0.22:0.002のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、5.3:1であった。
【0189】
[比較例6]有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの調製
332.1gのNaAlOを7578.8gのHOに溶解した後、62.8gのAl-ベータゼオライト種晶(Zeolyst International製のCP814Cゼオライトベータ;H型)を添加し、その後、200rpmで攪拌しながら363.6gのヒュームドシリカ(Degussa製のAerosil(登録商標)200)をゆっくり添加した。次いで、混合物を20Lのオートクレーブに移し、8062.6gのナトリウム-水ガラス溶液(Fa.Woellner製の26質量%のSiOおよび8質量%のNaO)を、200rpmで攪拌しながら混合物にゆっくり添加し、ゲルが最初に生成され、溶液をさらに添加した後、次いでこれを溶解した。
【0190】
次いで、混合物を、攪拌せずに、3時間にわたって120℃まで加熱し、次いでその温度で117時間結晶化させた。反応混合物を室温に冷却させた後、それを濾過し、固体の残留物を蒸留水で繰り返し洗浄して中和させ、その後、120℃で16時間乾燥して、1370gの白色の結晶性生成物を得た。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して82%の結晶度グレードを示した。
【0191】
イオン交換した生成物の元素分析により、1.07:0.24:0.23のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、4.5:1であった。
【0192】
比較例1、3および5についてと同様、結晶性生成物のXRDは、25~26°の2θ範囲で観察された2つの特徴的な反射を考慮して、有機鋳型非含有合成から得られたBEA骨格構造に典型的なXRDパターンを示した。
【0193】
次いで、650gの結晶性生成物を6.5kgの10質量%硝酸アンモニウム水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いでイオン交換工程を繰り返し、その後、生成物を120℃で16時間乾燥した。次いで、1℃/分のランプを使用して、生成物を450℃まで加熱し、次いでその温度で5時間焼成することによって、575gの焼成およびイオン交換した結晶性生成物を得た。
【0194】
焼成およびイオン交換した生成物の元素分析により、1.1:0.25:0.004のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、4.4:1であった。
【0195】
焼成およびイオン交換した生成物は、18°~25°の2θ範囲での初期合成で用いた種晶の結晶度と比較して86%の結晶度グレードを示した。
【0196】
次いで、60gの焼成およびイオン交換した結晶性生成物を300gの2%HNO溶液に添加し、60℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いで、生成物を120℃で16時間乾燥し、次いで1℃/分のランプを使用して450℃まで加熱し、その温度で5時間焼成することによって、白色の結晶性生成物を得た。
【0197】
最終生成物の元素分析により、1.25:0.19:0.01のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、6.6:1であった。
【0198】
焼成およびイオン交換した生成物は、18°~25°の2θ範囲での初期合成で用いた種晶の結晶度と比較して52%の結晶度グレードを示した。
【0199】
[比較例7]酸処理による比較例6のゼオライトベータの脱アルミニウム化
比較例6で得た45gのゼオライトベータを、次いで、225mLの2%HNO溶液に添加し、60℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いで、生成物を120℃で16時間乾燥し、次いで1℃/分のランプを使用して450℃まで加熱し、その温度で5時間焼成することによって、44gの白色の結晶性生成物を得た。
【0200】
最終生成物の元素分析により、1.35:0.16:0.001のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、8.4:1であった。
【0201】
焼成およびイオン交換した生成物は、18°~25°の2θ範囲での初期合成で用いた種晶の結晶度と比較して52%の結晶度グレードを示した。
【0202】
[比較例8]有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの調製
19.91kgのAl-ベータゼオライト種晶(Zeolyst International製のCP814Cゼオライトベータ;焼成したもの)を、100kgの蒸留水中で懸濁させ、次いで溶液を100rpmで30分間さらに攪拌した。別の容器中で、26.96kgのNaAlOを443.15kgの蒸留水に溶解し、次いで溶液を50rpmで30分間さらに攪拌した。次いで種晶の水性懸濁液を、攪拌下で、アルミン酸ナトリウム溶液に添加し、次いで空の容器を20Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。次いで、620.15kgのナトリウム-水ガラス溶液(Fa.Woellner製の26質量%のSiOおよび8質量%のNaO)を、25rpmでの攪拌下で、1時間にわたって連続的に混合物に添加し、次いで空の容器を10Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。次いで94.78kgのコロイド状シリカ(40%;Grace製のLudox AS40)水溶液を、攪拌下で混合物に添加し、次いで空の容器を5Lの蒸留水ですすぎ、次いで水洗液を混合物に添加した。
【0203】
次いで混合物を、25rpmで攪拌しながら、3時間にわたって120℃まで加熱し、次いでその温度で79時間結晶化させた。反応混合物を室温に冷却させた後、それを濾過し、固体の残留物を蒸留水で繰り返し洗浄して中和させ、その後、120℃で乾燥して、117kgの白色の結晶性生成物を得た。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して72%の結晶度グレードを示した。
【0204】
比較例1、3、5および6についてと同様、結晶性生成物のXRDは、25~26°の2θ範囲で観察された2つの特徴的な反射を考慮して、有機鋳型非含有合成から得られたBEA骨格構造に典型的なXRDパターンを示した。
【0205】
生成物の元素分析により、1.07:0.23:0.22のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、4.7:1であった。
【0206】
DIN66135に準拠した窒素等温線を決定し、データの評価により、ラングミュア法に従って611m/gの等価表面が得られた。
【0207】
次いで、25kgの結晶性生成物を250kgの10質量%硝酸アンモニウム水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いでイオン交換工程を繰り返し、その後、生成物を120℃で16時間乾燥した。次いで、1℃/分のランプを使用して、乾燥した生成物を500℃まで加熱し、その温度で5時間焼成した。生成物は、18°~25°の2θ範囲での合成で用いた種晶の結晶度と比較して74%の結晶度グレードを示した。
【0208】
イオン交換した生成物の元素分析により、1.28:0.22:0.001のSi:Al:Naモル比が決定された。生成物のSi:Alモル比は、したがって、5.8:1であった。
【0209】
イオン交換した生成物の窒素等温線は、DIN66135に従って決定し、データの評価により、ラングミュア法に従って636m/gの等価表面が得られた。
【0210】
[比較例9]水蒸気および酸処理による比較例8からのゼオライトベータの脱アルミニウム化
比較例8の生成物を、10%HOを含有する窒素雰囲気下、700℃で1時間、水蒸気処理に供した。次いで、水蒸気処理した材料を、2%のHNO溶液を使用する3つの後続する酸処理工程に供し、それぞれの該工程において、60℃で2時間攪拌し、次いで固形物を濾過により取り出し、濾液に硝酸塩が含まれなくなるまで蒸留水で洗浄した。次いで生成物を120℃で16時間乾燥し、次いで1℃/分のランプを使用して450℃に加熱し、その温度で5時間焼成することによって、17.9:1のSi:Alモル比を示す白色の結晶性生成物を得た。
【0211】
[比較例10]米国特許第5824835(A)号によるゼオライトベータの合成
513.23グラムのコロイド状シリカ(30質量%、Ludox SM-30)、574.77グラムの水酸化テトラエチルアンモニウム(35質量%)、24.61グラムの水酸化アルミニウムおよび0.68グラムの水を容器に添加し、700rpmで1時間攪拌した。得られた混合物をオートクレーブに移し、2℃/分の速度で100℃まで加熱した。混合物を100℃、60rpmで48時間攪拌した。オートクレーブを室温まで冷却させ、開けて、538.9グラムの水性水酸化バリウム(5質量%)を添加した後、47.94グラムの水性水酸化カリウム(10質量%)を添加した。次いで、オートクレーブを密閉し、得られた混合物を2℃/分の速度で150℃まで加熱した。混合物を150℃および60rpmで168時間攪拌した。次いで、生成物を濾過し、110℃で終夜乾燥した。
【0212】
乾燥したゼオライト材料を、60℃で1時間、pHを8に調整した1M塩化アンモニウムで処理した。イオン交換を2回繰り返した。次いで遠心分離により生成物を集め、水で洗浄し、遠心分離により再度集めた。洗浄/遠心分離を1回繰り返した。得られたゼオライト材料を110℃で16時間乾燥した。乾燥およびイオン交換した生成物を、2℃/分の乾燥窒素流中で最大538℃まで加熱し、3時間保持した。温度を250℃まで下げ、雰囲気を空気に切り替えた後、再度、2℃/分で温度を538℃まで上げ、3時間保持した。得られた焼成材料の結晶度は76%であることが判明し、生成物は、少量のCHAゼオライト材料を含有しており、XRDから明らかになった(比較例10のXRDについては図6を参照)。
【0213】
イオン交換した生成物の元素分析により、Si:Al:K:Ba:Cモル比は、1:0.123:0.00378:0.0014:0.006であることが判明した。生成物のSi:Alモル比は、したがって、8.1:1であった。
【0214】
[実施例1]ブタ-1-エンによるイソブタンのアルキル化
比較例2、4、5、7および9の触媒(500mg)それぞれを250℃で活性化し、後続して、100mLのパール反応容器に入れ、即座に密閉し、窒素でパージした。比較例として、2つの市販のゼオライトベータ試料を用いたが、両方とも有機鋳型を用いた合成法で得られ、第1の試料のSi:Alモル比は12.5を示し(PQ Corporation製のCP811)、第2の試料のSi:Alモル比は30を示した(Suedchemie製のH-ベータ)。反応容器を氷で冷却し、イソブタンの液体状態を確保するために15℃に冷却しておいた31.4mLの圧縮空気駆動型プランジャーを介して液体イソブタンを添加した。後続して、冷却されていない49.1mLのプランジャーを使用して、ガス状1-ブテンを添加した。後続してラインを窒素でパージして、オレフィン全体を確実に反応容器に移動させた。スラリーを攪拌しながら、70℃~100℃で反応を実施した。反応の完了後、反応容器を氷で冷却し、ガスを放出させた。後続して、n-デカンを反応容器に添加して、反応生成物を希釈した。標準液としてテトラデカンを使用したGC-FID機器を使用して、反応を分析した。
【0215】
1-ブテンによるイソブタンのアルキル化を、まず1/50のオレフィン/パラフィン比で試験し、市販のゼオライトベータ試料を試験したところ、最良の触媒は、42%のC選択率で149mg生成物/g触媒をもたらした。図4から分かるように、Si:Al比が4.5~5.3の範囲である、比較例2、4および5で得られた有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータは、鋳型合成からの市販試料と比較して最大407mg生成物/g触媒で有意に高い活性をもたらした。さらに、図5から分かるように、比較例2、4および5から得られた有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータは、最高のC選択率をさらにもたらした。比較例7および9で達成した有機鋳型非含有合成からのゼオライトの脱アルミニウム化は、比較例2、4および5の未処理ゼオライトより低活性かつ低C選択率の両方をもたらした。
【0216】
図4における結果からさらに分かるように、ゼオライトベータ触媒のSi:Al比と活性との間の明確な関係を観察することができ、ゼオライトが鋳型合成から得られたか、もしくは有機鋳型非含有合成から得られたか、またはそのSi:Al比が、ゼオライトベータの合成後に後続するゼオライトベータの脱アルミニウム化によって達成したかに関係なく、活性は、Si:Al比の減少に伴って低減する。しかしながら、かなり驚くべきことに、各触媒のC選択率については、図5における結果で同様の関係が観察されるが、有機鋳型非含有合成から得られたゼオライトベータは、同等のSi:Al比の鋳型合成から得られた触媒、特に低Si:Alモル比を示す試料より実質的に高い選択率を示すことが判明した。特に、かなり意外なことに、実際的にC選択率の変化に非感受性の鋳型合成から得られる市販のゼオライトベータ試料と比較して、有機鋳型非含有合成から得られる触媒試料は、実質的に高い選択率のみではなく、試料のSi:Alモル比とC選択率との間の強力な関係も示すことが判明した。特に、Si:Alモル比が4~5の範囲の比較例2および4の試料は、鋳型合成から得られる市販のゼオライトベータで観察されるもののほぼ2倍の高さのC選択率をもたらす。
【0217】
さらに、従来技術文献の米国特許第5824835(A)号の教示を表す比較例10も、実施例1によるブタ-1-エンによるイソブタンのアルキル化において評価し、その結果を、比較例2による有機鋳型非含有合成のゼオライトを使用して得られた結果と共に、以下の表1に挙げた。
【0218】
【表9】
【0219】
したがって、表1における結果から分かるように、本発明の結果も、特にブテン-2によるイソブタンのアルキル化における従来の(鋳型)合成のゼオライトベータの使用を教示する従来技術文献の米国特許第5824835(A)号を考慮して確定した。特に、C選択率に関する結果から分かるように、有機鋳型非含有合成から得られるゼオライトベータである比較例2を使用する本発明の方法は、図5に示す結果および一般的傾向を確定する比較例10で達したC選択率と比較して顕著に高い選択率を達成する。
【0220】
これに応じて、驚くべきことに、1-ブテンによるイソブタンのアルキル化のための方法における有機鋳型非含有合成からのゼオライトベータの使用が、特にC-アルカン生成物に対する活性および選択率の両方に関して、市販のゼオライトベータより顕著に良い結果をもたらすことが判明した。さらに、かなり意外なことに、これは、有機鋳型非含有合成法を使用して得ることができる低Si:Alモル比のみで決まるものではなく、特に所望のC-アルカン生成物に関して達成され得る優れたかつ完全に意外な選択率を考慮して、前記方法で得られるゼオライトベータ材料の特異構造にもさらに起因することが判明した。
【0221】
引用される従来技術文献:
- Feller,A.ら、Journal of Catalysis,2004、第224巻、80~93頁
- Dalla Costa,B.O.ら、Applied Catalysis A 2010,第385巻、144~152頁
- Corma,A.ら、Applied Catalysis A 1994,第119巻、83~96頁
- 国際公開第2012/137133(A)号
- Xiaoら、Chem.Mater.2008,20、4533~4535頁
- 国際公開第2010/146156(A)号
- Majanoら、Chem.Mater.2009、21、4184~4191頁
- 米国特許第4992616(A)号
- 米国特許第5824835(A)号
- Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 2000、35~36巻、75~87頁
- Nivarthy,G.S.ら、Microporous and Mesoporous Materials 1998、22巻、No.1~3、379~388頁
-Yuki Katoら、Journal of the Japan Petroleum Institute 2013、56巻、No.5、349~355頁
図1
図2
図3
図4
図5
図6