(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】キノリン-4-カルボキサミドおよびベンゾナフチリジン誘導体の抗マラリア複合薬としての組み合わせ。
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20231127BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20231127BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20231127BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231127BHJP
A61P 33/06 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61K31/4375
A61K31/357
A61P43/00 121
A61P33/06
(21)【出願番号】P 2020555331
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2019058881
(87)【国際公開番号】W WO2019197367
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-08
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュパンゲンベルク,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ヨーフレイ,クロード
(72)【発明者】
【氏名】アブラ,ナダ
【審査官】愛清 哲
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-512930(JP,A)
【文献】田畑英嗣,複雑なライフサイクルを克服してマラリアの撲滅を目指す,ファルマシア,vol.52, no.1,2016年,p.71
【文献】Artemisinin-based combination therapy in the treatment of uncomplicated malaria: review of recent regulatory experience at the European Medicines Agency,Int Health,2015年,vol.7,pp.239-246,doi:10.1093/inthealth/ihv017
【文献】BEATRIZ BARAGANA; ET AL,A NOVEL MULTIPLE-STAGE ANTIMALARIAL AGENT THAT INHIBITS PROTEIN SYNTHESIS,NATURE,2015年06月,VOL.522, NO.7556,P315-320,https://www.nature.com/articles/nature14451
【文献】Pharmacokinetic Interactions between Primaquine and Pyronaridine- Artesunate in Healthy Adult Thai Subjects,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2015年,vol.59, no.1,pp.505-513,doi:10.1128/AAC.03829-14
【文献】Pyronaridine, a novel modulator of P-glycoprotein-mediated multidrug resistance in tumor cells in vitro and in vivo,Biochemical and Biophysical Research Communications,2004年,319,pp.1124-1131,doi:10.1016/j.bbrc.2004.05.099
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61P 33/06
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の活性成分として、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドまたは
その薬学的に許容し得る塩、および第2の活性成分として、ピロナリジンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、
マラリアの処置および/または予防における使用のための組み合わせ物。
【請求項2】
第3の活性成分として、アルテミシニンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、請求項1に記載の組み合わせ物。
【請求項3】
アルテミシニ
ンが、ジヒドロアルテミシニンおよびアルテメテル、アルテスネイトからなる群から選択される、請求項2に記載の組み合わせ物。
【請求項4】
第3の活性成分が、アルテスネイトまたはその薬学的に許容し得る塩である、請求項3に記載の組み合わせ物。
【請求項5】
アルテスネイトの薬学的に許容し得る塩が、ナトリウム塩およびカリウム塩からなる群から選択される、請求項4に記載の組み合わせ物。
【請求項6】
組み合わせが、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、ピロナリジンテトラホスファート、およびアルテスネイトナトリウムを含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項7】
活性成分が、同時にまたは連続して投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組み合わせ物。
【請求項8】
活性成分として、治療的に活性な用量の、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドまたはその薬学的に許容し得る塩と、ピロナリジンまたはその薬学的に許容し得る塩と、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤もまた含む、マラリアの処置および/または予防のための医薬組成物。
【請求項9】
さらなる活性成分として、治療的に活性な用量のアルテミシニンまたはその薬学的に許容し得る塩を含む、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第1に、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドまたはその薬学的に活性な塩、および第2に、ピロナリジンまたはその薬学的に活性な塩を含む、マラリアの処置のためのキット。
【請求項11】
アルテミシニンまたはその薬学的に許容し得る塩をさらに含む、請求項1
0に記載のキット。
【請求項12】
マラリアの処置および/または予防を、これを必要とする患者においてするための組み合わせ物であって、ここで前記マラリアの処置および/または予防が、治療的に活性な量の、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドおよびピロナリジン、またはいずれの前述のうちいずれかの薬学的に許容し得る塩、ならびにあらゆる比率におけるそれらの混合物を含む前記組み合わせ物をかかる患者へ投与することを含む、前記組み合わせ物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の活性成分として6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、第2の活性成分としてピロナリジンまたはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩を含む組み合わせに関する。本発明はまた、3つの抗マラリア活性成分の、つまり、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、ピロナリジンまたはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、アルテミシニン、またはその誘導体または薬学的に許容し得る塩の組み合わせにも関する。本発明はさらに、かかる組み合わせを含む組成物、およびそのマラリアの処置および/または予防における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
抗マラリア薬への耐性は、進化的現象に引き起こされ、創薬にとって絶え間ない挑戦であり、および、クロロキン、プログアニル、ピリメタミン、スルファドキシン-ピリメタミン、およびメフロキンなどの第一選択治療薬(first line treatment)の連続的な終焉をもたらし、それらが集中的に展開される多くのエリアにおいて、90%の臨床反応を生み出すことはできない(Mita T, Tanabe K, Kita K: Spread and evolution of Plasmodium falciparum drug resistance. Parasitol Int. 2009, 58: 201-209; World Health Organization: Global report on antimalarial drug efficacy and drug resistance: 2000-2010. 2010, WHO, Geneva, 121)。以来、アルテミシニンベースの治療法(ACT)が展開され、および、アルテメテル-ルメファントリンの承認をもち、標準治療となった。すべてのACTは3日間にわたって毎日され、および、患者のコンプライアンスについての問題はすでにすべての地域において観察されている。アルテミシニンベースの併用療法の開発の背後にある理論的根拠は、最初の24時間以内に寄生体の80%以上を殺す(症状を急速に低減する)極めて速効性の化合物(アルテミシニン誘導体)を、4-アミノキノリンなどの長時間作用型化合物と組み合わせることであったところ、再感染に対するいくつかの保護を提供するであろう(治療後の予防)。目下、東南アジアにおけるアルテミシニンに対する耐性の出現は比較的遅い。当面は、例えばタイで報告されているとおり、これは寄生体駆除時間の減少と解釈(translate)される(Phyo AP, Nkhoma S, Stepniewska K, Ashley EA, Nair S, McGready R, Ler Moo C, Al-Saai S, Dondorp AM, Lwin KM, Singhasivanon P, Day NPJ, White NJ, Anderson TJC, Nosten F: Emergence of artemisinin-resistant malaria on the western border of Thailand: a longitudinal study. Lancet. 2012, 379: 1960-1966)。
【0003】
WHOの推奨に従って、新しい抗マラリア剤は、固定用量の組み合わせとして開発されるべきである。マラリアなどの寄生体疾患のための薬物併用療法の目標は、より高い治癒率を提供することにより、治療に追加の利点を提供しながら、耐性の出現を防ぐことである。組み合わせの一方の構成要素に耐性のあるいずれの生物も、他方の構成要素によって排除されるはずである(ただし両方とも違った作用機序を有する)という理論的根拠はある。したがって、次いで寄生体が両方の耐性を同時に獲得しなければならないであろうから、耐性の障壁が高くなる。これは、突然変異の事象が確率的であると仮定すると、非常に起こりそうにないシナリオである(White N, Olliaro PL: Strategies for the prevention of antimalarial drug resistance: Rationale for combination chemotherapy for malaria. Parasitol Today. 1996, 12: 399-401)。薬剤耐性の出現に影響を与える注目に値する他の因子、例として、配偶子母細胞形成および配偶子母細胞の生存率、薬物半減期、臨床寄生体減少率または薬物投薬量などの他の寄生体ライフサイクルステージへの薬物の効果を考慮に入れるべきである(Xavier C Ding, David Ubben and Timothy NC Wells, A framework for assessing the risk of resistance for anti-malarials in development, Malaria Journal 2012, 11:292)。
【0004】
過去10年間で、ハイスループット表現型スクリーニングキャンペーンは、新しいクラスの抗マラリア薬の発見を可能にし、マラリア治療のための潜在的な新しい併用治療の数が増え、最も有望な合理的な選択および優先順位付けプロセス、2つの化学物質の有益な抗マラリア効果および各化合物および各組み合わせに関連する耐性を発現するリスクの早期評価を包含するがこれらに限定されない、との必要性が高まった(Canfield C.J., Pudney M., Gutteridge W.E. Interactions of atovaquone with other antimalarial drugs against Plasmodium falciparum in vitro. Exp Parasitol. 1995, 80:373-81; Fivelman, Q.L., Adagu I.S., Warhurst, D.C. Modified fixed-ratio isobologram method for studying in vitro interactions between atovaquone and proguanil or dihydroartemisinin against drug-resistant strains of Plasmodium falciparum. Antimicrob Agents Chemother. 2004, 48:4097-4102)。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、第1の活性成分として6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、第2の活性成分としてピロナリジンまたはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩を含む、好ましくはマラリアの処置および/または予防における使用のための組み合わせを提供する。
【0006】
かかる組み合わせにおいて、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドは、遊離塩基(下に表されるとおり)の形態でも、また薬学的に許容し得る塩(とりわけコハク酸塩など)の形態であってもよい。
【化1】
【0007】
さらにまた、かかる組み合わせにおいて、ピロナリジンは、遊離塩基(下に表されるとおり)の形態でも、またとりわけピロナリジンテトラホスファートなどの薬学的に許容し得る塩の形態であってもよい。
【化2】
本発明に従って、上に記載の組み合わせは、付加的な寄生体特性を表し、およびこれに加え、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(およびその任意の塩)はP-gpにより排出され、および、P-gpインヒビターであるピロナリジンは、(多くの他の抗マラリアの剤と異なり)(Qi J, Yang CZ, Wang CY, Wang SB, Yang M, Wang JH. Function and mechanism of pyronaridine: a new inhibitor of P-glycoprotein-mediated multidrug resistance. Acta Pharmacol Sin. 2002, 23:544-50.)6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(およびその任意の塩)壁の腸壁を、より低い用量にて通過すること(crossing)に肯定的に影響し、それによって治療濃度域に肯定的に影響することを驚くべきことに見出した。
【0008】
本発明はまた、第3の活性成分としてアルテミシニン、またはその誘導体または薬学的に許容し得る塩をさらに含む組み合わせにも関する。
本発明に従って、かかる組み合わせの極めて重要な態様において、アルテミシニン誘導体は、ジヒドロアルテミシニン、アルテメテル、およびアルテスネイトからなる群から選択される。
本発明の目的で、用語「アルテスネイト」は、アルテスニン酸のために使用される。
【化3】
本発明の特定の態様において、第3の活性成分は、アルテスネイトまたはアルテスネイトの薬学的に許容し得る塩(好ましくはアルテスネイトナトリウムまたはアルカリ金属炭酸塩、例として炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムが形成される)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
医薬の塩および他の形態
組み合わせにおいて包含される上に記載の化合物は、それらの最終的な非塩の形態で使用されてもよい。他方、本発明はまた、当該技術分野において知られている手順により、様々な有機および無機酸に由来し得るそれらの薬学的に許容し得る塩の形態におけるこれら化合物の使用にも関する。組み合わせにおいて包含される化合物の薬学的に許容し得る塩の形態は、大部分は、従来の方法により調製される。組み合わせにおいて包含される化合物が、カルボキシル基などの酸性中心(例としてアルテスニン酸など)を含有する場合、対応する塩基付加塩を与えるために、化合物を好適な塩基と反応させることにより、その好適な塩の1つが形成されてもよい。かかる塩基は、例えば、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムを包含するアルカリ金属水酸化物;マグネシウム水酸化物およびカルシウム水酸化物などのアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムなど);および、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびN-メチルグルカミン(メグルミン)、ベンザチン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、ベネタミン、ジエチルアミン、ピペラジン、リシン、L-アルギニン、アンモニア、トリエタノールアミン、ベタイン、エタノールアミン、モルホリンおよびトロメタミンなどの様々な有機塩基である。
組み合わせにおいて包含される化合物が、塩基性中心(例として6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドおよびピロナリジンなど)を含有する場合、これら化合物を、薬学的に許容し得る有機および無機酸、例えば塩化水素または水素臭化物水素などのハロゲン化物、他の鉱酸および対応するそれらの塩で処理することにより、酸付加塩が形成されてもよい。
【0010】
本発明の特定の態様において、組み合わせ、医薬組成物(下に記載)および/またはマラリアの処置および/または予防のための方法(下に記載)において使用され得るピロナリジンの薬学的に活性な塩は、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩、カンシラート塩、カーボネート塩、クエン酸塩、塩化物塩、エジシラート塩、エストラート塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコナート塩、グルクロナート塩、馬尿酸塩、ヨウ化物塩、イセチオナート塩、ラクタート塩、ラクトビオナート塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチルスルファート塩、ナプシラート塩、ニトラート塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩など)、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファート塩、酒石酸塩、およびトシル酸塩からなる群から選択され;ピロナリジンの薬学的に活性な塩は、好ましくは、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、エジシラート塩、フマル酸塩、ラクタート塩(とりわけL-ラクタート塩など)、リンゴ酸塩(とりわけL-リンゴ酸塩など)、マレイン酸塩、メシル酸塩、ナプシラート塩、シュウ酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩を包含する)、コハク酸塩、スルファート塩、酒石酸塩(とりわけL-酒石酸塩を包含する)、およびトシル酸塩からなる群から選択され;および、ピロナリジンの薬学的に活性な塩は、なおより好ましくは、塩化物塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩など)、スルファート塩、およびトシル酸塩からなる群から選択される。
本発明の別の特定の態様において、組み合わせ、医薬組成物(下に記載)および/またはマラリアの処置および/または予防のための方法(下に記載)において使用され得る6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドの薬学的に活性な塩は、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物塩、カンシラート塩、カーボネート塩、クエン酸塩、塩化物塩、エジシラート塩、エストラート塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコナート塩、グルクロナート塩、馬尿酸塩、ヨウ化物塩、イセチオナート塩、ラクタート塩、ラクトビオナート塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチルスルファート塩、ナプシラート塩、ニトラート塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩など)、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファート塩、酒石酸塩、およびトシル酸塩からなる群から選択され;ピロナリジンの薬学的に活性な塩は、好ましくは、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、エジシラート塩、フマル酸塩、ラクタート塩(とりわけL-ラクタート塩など)、リンゴ酸塩(とりわけL-リンゴ酸塩など)、マレイン酸塩、メシル酸塩、ナプシラート塩、シュウ酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩を包含する)、コハク酸塩、スルファート塩、酒石酸塩(とりわけL-酒石酸塩を包含する)、およびトシル酸塩からなる群から選択され;および、ピロナリジンの薬学的に活性な塩は、なおより好ましくは、塩化物塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、ホスファート塩(とりわけテトラホスファート塩など)、スルファート塩、およびトシル酸塩からなる群から選択される。
【0011】
本発明の別の特定の態様において、組み合わせ、医薬組成物(下に記載)および/またはマラリアの処置および/または予防のための方法(下に記載)において使用され得るアルテスネイトの薬学的に活性な塩は、ナトリウム塩およびカリウム塩からなる群から選択される塩である。
本発明の具体的な態様は、(a)6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(遊離塩基)または6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドスクシナート、および、(b)ピロナリジンテトラホスファートまたはピロナリジン(遊離塩基)を含む組み合わせに関する。さらにいっそう特定の態様において、組み合わせは、(a)6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(遊離塩基)または6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドスクシナートおよび(b)ピロナリジンテトラホスファートを含む。
【0012】
別の態様において、組み合わせは、a)6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(遊離塩基)または6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドスクシナート、b)ピロナリジン(遊離塩基)またはピロナリジンテトラホスファート、および、c)アルテスネイトまたはアルテスネイトナトリウムを含む。
極めて特定の態様において、組み合わせは、a)6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(遊離塩基)または6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドスクシナート、b)ピロナリジンテトラホスファート、および、c)アルテスネイトナトリウムを含む。
【0013】
本発明に従う組み合わせの活性成分は、同時にまたは連続して(経時的に拡散)投与される。
活性成分の投与が、同時に行われる場合、2つまたは3つの活性成分が、単一の医薬形態内で組み合わせられてもよい(例として錠剤またはサシェなどの固定された組み合わせ)。活性成分の投与が同時または非同時であるかに独立して、または、3つの活性成分が部分的に同時である場合、2つまたは3つの活性成分が、別個の医薬形態において存在してよい。この場合において、本発明に従う組み合わせは、キットの形態でもよい。
本発明の別の側面は、本明細書に開示される医薬としての組み合わせに関する。さらにまた本発明は、本明細書に記載される組み合わせの、マラリアの処置および/または予防における使用に関する。本発明はまた、医薬の製造のために本明細書に記載される組み合わせの、マラリアの処置および/または予防のための医薬の製造のための使用も網羅する。
【0014】
医薬組成物
本発明はまた、第1の活性成分として6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、第2の活性成分としてピロナリジンまたは活性成分としてそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩を活性成分として含む、好ましくは両活性成分は治療的に活性な用量である、好ましくはマラリアの処置および/または予防における使用のための医薬組成物にも関する。
本発明はさらに、第1の活性成分として6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、第2の活性成分としてピロナリジンまたは活性成分としてそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、第3の活性成分としてアルテミシニンまたはその誘導体を含む、好ましくはマラリアの処置および/または予防における使用のための医薬組成物に関する。好ましくは、かかる組成物は、3つのすべての活性成分を、治療的に有効な量において含む。好ましい態様において第3の活性成分は、アルテスネイトまたはその薬学的許容し得る塩(例としてアルテスネイトナトリウムなど)である。
【0015】
本発明はまた、活性成分として、治療的に活性な用量の、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドまたはそのプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩、および、ピロナリジンまたはその薬学的に許容し得る塩、およびまた、少なくとも1つの薬学的に許容し得る賦形剤を含む、マラリアの処置および/または予防のための医薬組成物にも関する。かかる医薬組成物の特定の態様は、さらなる活性成分として、治療的に活性な用量のアルテミシニン、またはその誘導体または薬学的に許容し得る塩を含む。
医薬組成物は、投薬量ユニットごとに予め決められた量の活性成分を含む投薬量ユニットの形態で投与されてもよい。かかるユニットは、本発明に従う組み合わせの異なる用量を、処置される病的状態、投与方法、患者の重量および年齢に応じて含んでもよく、または、投薬量ユニットごとに予め決められた量の活性成分を含む投薬量ユニットの形態で投与されてもよい。好ましい投薬量ユニット製剤は、上記に示唆されるとおりの、毎日の用量または部分用量、または、その活性成分の対応する画分を含むものである。さらにまた、このタイプの医薬組成物は、薬学分野で一般に知られているプロセスを使用して調製されてもよい。
医薬組成物は、例えば経口(口腔内または舌下を包含する)、直腸、経鼻、局所(口腔内、舌下または経皮的な包含する)または非経口(皮下の、筋肉内、静脈内、または皮内を包含する)の方法による任意の所望の適切な方法による投与に適合されてもよい。かかる組成物は、例えば、活性成分を賦形剤またはアジュバントと組み合わせることによって、薬学分野で知られているすべてのプロセスを使用して調製されてもよい。
【0016】
経口投与のために適合された医薬組成物は、別々のユニット、例えばカプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性のまたは非水性の液体における溶液または懸濁物;可食性のフォーム剤(edible foam)または泡状食品(foam food);または水中油の液体エマルションまたは油中水の液体エマルションなどとして投与されてもよい。よって、例えば、錠剤またはカプセルの形態での経口投与の場合、活性成分の構成要素は、例えば、エタノール、グリセロール、水等などの、経口の、非毒性のおよび薬学的に許容し得る不活性な賦形剤と組み合わせられてもよい。粉末は、化合物を好適な微細なサイズに粉砕し、および同様の方法で粉砕された医薬賦形剤、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物と混合することによって調製される。フレーバー、防腐剤、分散剤および染料も同様に存在してもよい。
【0017】
カプセルは、上に記載のとおりの粉末混合物を調製し、およびそれを成形ゼラチンシェルに充填することにより生産される。充填操作の前に、例えば、高度に分散したケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムステアリン酸、または固体形態のポリエチレングリコールなどの滑剤および潤滑剤は粉末混合物に添加されてもよい。カプセルを摂取した後の薬剤の利用可能性を改善するために、例えば、寒天、炭酸カルシウム、または炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤は同様に添加されてもよい。さらに、所望されるまたは必要な場合、好適な結合剤、潤滑剤、崩壊剤、および染料は同様に混合物に組み込まれてもよい。好適な結合剤は、デンプン、ゼラチン、例えばグルコースまたはベータラクトースなどの天然糖、トウモロコシから作られた甘味料、例えばアカシア、トラガカントまたはナトリウムアルギナートなどの天然および合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどを包含する。これらの薬物の形態において使用される潤滑剤は、ナトリウムオレアート、ナトリウムステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムベンゾアート、ナトリウム酢酸塩化ナトリウム等を包含する。崩壊剤は、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを包含するが、これらに限定されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、混合物を造粒またはドライプレスし、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体をプレスして錠剤を与えることによって配合される。粉末混合物は、好適なやり方で粉砕された化合物を、上に記載されるとおり希釈剤または塩基と混合し、および任意に、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギナート、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン、などの結合剤、例えば、パラフィンなどの溶解遅延剤、例えば、第四級塩などの吸収促進剤、および/または、例えば、ベントナイト、カオリン、またはリン酸二カルシウムなどの吸収剤と混合することによって調製される。粉末混合物は、例えば、シロップ、デンプンペースト、アカディア粘液またはセルロースまたはポリマー材料の溶液などの結合剤でそれを湿らせ、およびそれをふるいに通して圧搾することによって造粒されてもよい。造粒の代替手段として、粉末混合物を打錠機に通し、非一様な形状の塊を与え、それは砕かれ、顆粒を形成してもよい。顆粒は、錠剤鋳造型への付着を防ぐために、ステアリン酸、ステアホスファート塩、タルクまたは鉱油を添加することによって潤滑されてもよい。次いで、潤滑された混合物はプレスされ、錠剤を与える。活性成分はまた、自由流動性の不活性な賦形剤と組み合わされ、および次いで直接圧搾され、造粒または乾式圧搾ステップを行わずに錠剤を与えられてもよい。シェラックシーリング層、砂糖またはポリマー材料の層、およびワックスの光沢層からなる透き通ったまたは不透明の保護層が存在してもよい。異なる投薬量ユニットの間で区別できるようにするために、これらのコーティングに染料が添加されてもよい。
【0018】
例えば、溶液、シロップおよびエリキシル剤などの経口液体は、与えられた分量が所定の(pre-specified)量の化合物を含むように、投薬量ユニットの形態で調製されてもよい。シロップは、化合物を好適なフレーバーの水溶液に溶解することによって調製されてもよい一方、エリキシル剤は、非毒性のアルコールビヒクルを使用して調製される。懸濁物は、非毒性のビヒクルに化合物を分散させることによって配合されてもよい。例えば、エトキシル化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなどの可溶化剤および乳化剤、防腐剤、例えばペパーミント油または天然甘味料またはサッカリンなどのフレーバー添加剤、または他の人工甘味料などは、同様に添加されてもよい。経口投与のための投薬量ユニット製剤は、所望される場合、マイクロカプセルにカプセル化されてもよい。製剤はまた、例えば、ポリマー、ワックスなどに微粒子材料をコーティングまたは包埋することによって、放出が延長または遅延されるような方法で調製されてもよい。
【0019】
本発明に従う組み合わせの活性成分、およびその塩、溶媒和物および生理学的に機能的な誘導体、および他の活性成分はまた、例えば、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクル、および多層ベシクルなどのリポソーム送達システムの形態で投与されてもよい。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なホスホ脂質から形成されてもよい。
経皮投与のために適合された医薬組成物は、レシピエントの表皮に、広げられ密接に接触する独立した膏薬(plaster)として投与されてもよい。よって例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)に一般的に記載されているとおり、イオントフォレシスによって貼り薬から送達されてもよい。局所投与のために適合された医薬化合物は、軟膏、クリーム、懸濁物、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、スプレー、エアゾールまたは油として配合されてもよい。直腸投与のために適合された医薬組成物は、坐剤または浣腸の形態で投与されてもよい。処方箋に従って調製された注射液および懸濁物は、滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製されてもよい。
言うまでもなく、上記の具体的に言及された構成物質に加えて、組成物もまた、具体的なタイプの製剤に関して、当該技術分野において通常の他の剤を含んでもよいということは言うまでもなく、よって例えば、経口投与のために好適な組成物は、フレーバーを含んでもよい。
本発明に従う医薬組成物/製剤は、ヒトおよび獣医学の薬において、医薬として使用されてもよい。
【0020】
本発明に従う組み合わせの活性成分および他の活性成分の各々の治療的に有効な量または治療的に活性な用量は、例えば、動物の年齢および重量、治療を必要とする正確な病的状態、およびその重症度、製剤の性質および投与方法を包含する数多の因子に依存し、および、最終的には処置をする医者または獣医により決定される。
本発明に従う、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドコハク酸塩およびピロナリジンテトラホスファート塩を活性成分として含有する組み合わせの経口投与のための、これら2つの活性成分の毎日の用量は、以下のとおりである:
6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドコハク酸塩:個体あたり1日あたり(単回用量)、30mgと1000mgとの間、好ましくは100mgと700mgとの間、なおより好ましくは300mgと600mgとの間。
ピロナリジンテトラホスファート塩:個体あたり1日あたり(単回用量)、180mgと1000mgとの間、好ましくは300と800mgとの間、なおより好ましくは400mgと600mgとの間。
【0021】
本発明に従う、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドコハク酸塩、ピロナリジンテトラホスファート塩およびアルテスネイトを活性成分として含有する組み合わせの経口投与のための、これら3つの活性成分の毎日の用量は、以下のとおりである:
6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドコハク酸塩:個体あたり1日あたり(単回用量)、30mgと1000mgとの間、好ましくは100mgと700mgとの間、なおより好ましくは300mgと600mgとの間。
ピロナリジンテトラホスファート塩:個体あたり1日あたり(単回用量)、180mgと1000mgとの間、好ましくは300と800mgとの間、なおより好ましくは400mgと600mgとの間。
アルテスネイト:個体あたり1日あたり(単回用量)、20と200mgとの間、好ましくは100と200mgとの間、なおより好ましくは150mgと180mgとの間。
【0022】
本発明に従う組み合わせ/医薬組成物は、ヒトおよび獣医学の薬において医薬として使用されてもよい。
別の側面において、本発明は、マラリアの処置および/または予防を、これを必要とする患者においてする方法であって、治療的に活性な量の、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド(第1の活性成分)およびピロナリジン(第2の活性成分)、またはいずれの前述のうちいずれかのプロドラッグもしくは薬学的に許容し得る塩ならびにあらゆる比率におけるそれらの混合物をかかる患者へ投与することを含む、前記方法に関する。本発明に従うかかる方法の特定の態様において、アルテミシニンまたはその誘導体または薬学的に許容し得る塩もまた、(第3の活性成分として)投与されてもよい。
さらなる側面において、本発明は、第1に、6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミド、またはその薬学的に活性な塩、および第2に、ピロナリジン、またはその薬学的に活性な塩を含む、マラリアの処置のための(別々のパックからなる)キットに関する。
別の態様は、上に記載のキットに関し、ここでキットは、第3に、アルテミシニンまたはその誘導体または薬学的に許容し得る塩(好ましくはキットは、アルテスニン酸のアルテスネイト(好ましくはナトリウムアルテスネイト)をさらに含む)含む。
【0023】
本発明の提案のために、表現「有効な量」は、組織、システム、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医者に求められるまたは所望される生物学的または医学的応答を引き起こす医薬のまたは医薬活性成分の量を示す。
加えて、表現「治療的に有効な量」は、この量を受け取っていない対応する対象と比較して、以下の結果:疾患(disease)、症候群(syndrome)、疾病(condition)、愁訴(complaint)、障害(disorder)、もしくは副作用の改善された処置(treatment)、治癒(healing)、予防(prevention)、または排除(elimination)、あるいは、疾患、愁訴、または障害の進行における低減をもまたもたらす量を意味する。表現「治療的に有効な量」はまた、正常な生理学的機能を増加させるために有効な量も包含する。
【0024】
本明細書に使用されるとき、および特段明記されない限り、用語「プロドラッグ」は、生物学的条件下(インビトロまたはインビボ)で加水分解、酸化、または他の方法で反応して活性化合物を提供し得る活性成分の誘導体を意味する。プロドラッグの例は、生体加水分解性アミド、生体加水分解性エステル、生体加水分解性カルバマート、生体加水分解性カーボネート、生体加水分解性ウレイド、および生体加水分解性ホスファート類似体などの生体加水分解性部分を包含する活性成分の誘導体および代謝産物を包含するが、これらに限定されない。ある態様において、カルボキシル官能基をもつ化合物のプロドラッグは、カルボン酸の低級アルキルエステルである。カルボキシラートエステルは、分子上に存在するカルボン酸部分の任意をエステル化することによって都合よく形成される。プロドラッグは典型的には、Burger’s Medicinal Chemistry and Drug Discovery 6th ed.、および、Design and Application of Prodrugs (H.Bundgaard ed., 1985, Harwood Academic Publishers Gmfh)に記載される方法などの周知の方法を使用して調製され得る。
【0025】
例
そのように特定されない限り、すべての出発材料は、商業的供給者から得られ、および、さらなる精製はせずに使用される。そのように特定されない限り、すべての温度は℃において表現され、すべての実験はRTにて実行される。
略語
ACT アルテミシニンベースの治療
Ci キュリー
Cpm カウント毎分
CsA シクロスポリンA
DMEM Dulbeccoの改良イーグル培地
DMS ジメチルスルホキシド
HBSS Hankの緩衝塩溶液
HEPES 4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸
HESI 加熱エレクトロスプレーイオン化
LC 液体クロマトグラフィー
M1 6-フルオロ-2-(4-モルホリン-4-イルメチル-フェニル)-キノリン-4-カルボン酸(2-ピロリジン-1-イル-エチル)-アミドコハク酸塩
MS 質量分析
P.falciparum 熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)
P-gp P-糖タンパク質
Po 口から(経口の)
PYRO ピロナリジンテトラホスファート塩
RT 室温
RPMI ロズウェルパーク記念研究所培地
SCID 重症複合免疫不全症。
以下の実施例に記載の特定の実施形態を参照することにより、本発明を説明する(ただし限定されない)。
【0026】
I.インビトロのアイソボログラム
化合物を、Desjardins, R. E., Canfield, C. J., Haynes, J. D. & Chulay, J. D. Quantitative assessment of antimalarial activity in vitro by a semiautomatic microdilution technique. Antimicrob. Agents Chemother. 1979, 16: 710-718 and Matile, H. and Pink, J.R.L. Plasmodium falciparum malaria parasite cultures and their use in immunology. Immunological Methods IV, 221-234 Academia Press (1990)において記載されるとおり、0.5%ALBUMAX(登録商標)II、25mM HEPES、25mM NaHCO3(pH 7.3)、0.36mMヒポキサンチン、100μg/mlネオマイシンを添加したRPMI1640からなる混合物を培地として使用して、実験室株NF54(起源不明のスキポール空港株)の非同期ストック培養に由来する熱帯熱マラリア原虫の赤血球内形態に対して試験する。ヒトA型+赤血球は宿主細胞として機能する。培養物を、加湿されたモジュラーチャンバー内で3%O2、4%CO2、および93%N2の雰囲気で37℃に保つ。個々の薬物のテストを、96ウェルマイクロタイタープレートにおいて行なう。化合物をDMSO(10mg/ml)に溶解させ、ヒポキサンチンフリーの培地において前希釈し、64倍の範囲で100μlで二重に滴定する。2.5%赤血球懸濁物中の0.3%の寄生体血症を伴う等量の寄生体培養物を添加した後、試験プレートを上記の条件下で24h、48hまたは72hインキュベートする。寄生体の成長は、放射線ラベルした[3H]ヒポキサンチン(50μlのヒポキサンチンフリーの培地の容量に0.25μCi)を8h(24hのアッセイ期間)または24h(48hおよび72hのアッセイ期間)導入することにより、試験の終止に先立ち測定する。培養物をグラスファイバーフィルターに回収し、蒸留水で洗浄する。MicroBetaplate液体シンチレーションカウンター(Wallac、チューリッヒ、スイス)を使用して放射能をカウントし、結果を各薬物濃度でのウェルあたりの1分あたりのカウントとして記録し、および未処理のコントロールのパーセンテージとして表す。50%の阻害濃度(IC50)を、線形補間によって決定する(Huber, W., Hurt, N., Mshinda, H., Jaquet, C., Koella, J.C., Tanner, M. Sensitivity of Plasmodium falciparum field-isolates from Tanzania to chloroquine, mefloquine and pyrimethamine during in vitro cultivation. Acta Trop. 1993, 52: 313-6)。薬物相互作用研究を、Canfield C.J., Pudney M., Gutteridge W.E. Interactions of atovaquone with other antimalarial drugs against Plasmodium falciparum in vitro. Exp Parasitol. 1995, 80:373-81 and Fivelman, Q.L., Adagu I.S., Warhurst, D.C. Modified Fixed-ratio isobologram method for studying in vitro interactions between atovaquone and proguanil or dihydroartemisinin against drug-resistant strains of Plasmodium falciparum. Antimicrob Agents Chemother. 2004, 48: 4097-4102.において記載されるとおりに実施する。最初に、試験薬物単独でIC50を決定する(上記を参照)。続いて、薬物溶液をヒポキサンチンフリーの培地で、予め決められたIC50の10倍の初期濃度に希釈する。溶液(すべて10xIC50)を、1+3、1+1、または3+1の比率で組み合わせる。次に、単一のおよび組み合わせの薬液を96ウェルプレートに導入し、二重に列を与える。残りの手順は上記のとおりである。データの解釈のために、組み合わせた薬物のIC50を、薬物単独のIC50の割合として表す。これらの画分を、それぞれ薬剤Aおよび薬剤Bの「画分阻害濃度」(FIC)と呼ぶ。
【0027】
【数1】
相互作用の数値を得て、およびFICAとFICBの合計として表現する。合計FIC値は、以下のように相互作用の種類を示す。
ΣFIC>4.0のとき拮抗作用、ΣFIC>0.5~4.0のとき有害な相互作用なし(Odds, F.C., Antimicrob Agents Chemother. 2003, 52:1)。
【0028】
【0029】
M1をPYROと個々に組み合わせる。3つの異なるアッセイ期間(24h、48h、および標準72h)のNF54熱帯熱マラリア原虫株について、ΣFIC50値を3回以上の独立した実験から計算した。それらは1.3~1.7の範囲であり、特定の試験条件下でのM1とPYRO間の相互作用が有害ではないことを示唆する(表1)。
【0030】
II.インビボのSCIDマウスモデル
化合物の有効性を、熱帯熱マラリア原虫株Pf3D70087/N9に対してインビボにおいて評価した。マウスを、0日目に寄生赤血球に静脈内感染している。実験マウスを、通常、感染後3、4、5、および6日目に、化合物の経口投与(1日または4日の経口投与レジメン)で治療する。7日目の寄生体血症の減少について感染したコントロール群と比較する(Maria Belen Jimenez-Diaz, Teresa Mulet, Sara Viera, Vanessa Gomez, Helen Garuti, Javier Ibanez, Angela Alvarez-Doval, Leonard D. Shultz, Antonio Martinez, Domingo Gargallo-Viola, and Inigo Angulo-Barturen, Improved Murine Model of Malaria Using Plasmodium falciparum Competent Strains and Non-Myelodepleted NOD-scid IL2Rgammanull Mice Engrafted with Human Erythrocytes, Antimicrob Agents Chemother. 2009, 53:4533)。
【0031】
ビヒクル
PYROおよびM1を、70%Tween-80と30%エタノールからなるビヒクルに可溶化させ、これに続きH2Oで10倍に希釈した。すべての調製物は、黄色の液体で透明な溶液をもたらした。
【0032】
薬物動態分析
試験化合物の血中レベルを、有効性研究の個体における標準的な薬物動態パラメータを決定するために評価する。末梢血サンプル(20μl)をさまざまな時間に採取し(以下のプロトコルを参照)、20μlのH2OMilliQと混合し、および即時にすぐにドライアイスで凍結する。凍結サンプルを分析まで-80℃で保存する。コントロールマウスからの血液を、キャリブレーションとQCの目的で使用する。血液サンプルを、標準的な液液抽出条件下で処理し、LC-MS/MS(陽イオンモードでのHESIイオン化による定量化)によって分析する。
【0033】
【0034】
表2から、感染後7日目にて9mg/kg経口(po)のピロナリジンは>99.9%の活性を表し、および7日目にて寄生体フリーであった。3mg/kgは99.6%の活性を表し、および1mg/kgの残存する用量は、未処理のコントロールマウスと比較したわずかな活性(17%)を表した。PYROは、極めて同じ実験システムにおいて、50mg/kgのクロロキンに匹敵する末梢血からの寄生体のクリアランスを誘導した。ED90(すなわち、感染後7日目の寄生体血症を未治療のコントロールマウスと比較して90%減少させるM1の用量(mg/kg))は、用量数が限られているため的確に決定されなかったが、1~3mg/kgの範囲であった。
【0035】
【0036】
表3から、感染後7日目に、1.2mg/kg経口(po)のM1は>99.9%の活性を表した。未処理のコントロールマウスと比較して、0.6および0.4mg/kgは、それぞれ99.7%および94.9%の活性を表し、0.2mg/kgの残存する用量はわずかな活性(28.3%)を表した。
M1は、同じ実験システムにおいて50mg/kgのクロロキンに匹敵する(しかしより遅い)寄生体のクリアランスを誘導した。ED90は、0.37mg/kg(遊離塩基)と計算された(Maria Belen Jimenez-Diaz, Teresa Mulet, Sara Viera, Vanessa Gomez, Helen Garuti, Javier Ibanez, Angela Alvarez-Doval, Leonard D. Shultz, Antonio Martinez, Domingo Gargallo-Viola, and Inigo Angulo-Barturen, Improved Murine Model of Malaria Using Plasmodium falciparum Competent Strains and Non-Myelodepleted NOD-scid IL2Rgammanull Mice Engrafted with Human Erythrocytes, Antimicrob Agents Chemother. 2009, 53:4533)。
【0037】
【0038】
表4は、M1とピロナリジンを同じ実験的インビボ系において組み合わせたときの薬力学的データ(%寄生体血症)を概説する。
エントリー1は、未治療(コントロール)のグループは、感染後7日目に全赤血球の12%に到達することを可能にするときの寄生体血症の割合を表す。エントリー2は、最大寄生体濃度(MPC)でのM1の寄生体血症の割合を表し、寄生体クリアランスが10日目にLLQに到達するのに有効になる前に、48hの遅滞期を観察することができた。
PYROエントリー3&4、5&6および7&8に示されているように、組み合わせと単独との寄生体血症の比率に基づくと、M1は、寄生体の迅速な殺害が必要な4日目と5日目にPYROによって誘導される寄生体の除去に影響を与えないようである。
【0039】
III.Caco-2細胞におけるインビトロの透過性
Caco-2細胞を、8.5%CO2の雰囲気のDMEMに維持する。輸送実験では、0.125×106細胞/ウェルをポリカーボネートフィルターインサートに播種し、および細胞単層を実験に使用する前に14±1日間増殖および分化させる。薬物輸送実験は、4次元設定でカクテルアプローチを使用して行う。見かけの透過係数は、トランスポーターインヒビターとしてのCsAの存在の有無にかかわらず、A(頂端)→B(基底外側)およびB→A方向に対して決定される。5つのテスト項目までおよび参照化合物をpH7.4のHankの平衡塩類溶液に溶解させ、最終濃度を1μMにする。25mM HEPES(pH7.4)を含むHBSSで、37℃の5%CO2の雰囲気でアッセイを実行する。研究の前に、単層を、予熱されたHBSSで洗浄する。実験の開始にて、試験項目を含む予熱されたHBSSが単層のドナー側に添加され、および試験項目のないHBSSがレシーバー側に添加される。実験中、プレートを150rpm、37℃で振とうさせる。2h後、単層を含むTranswellインサートを注意深く取り外し、新しいプレートに配置し、レシーバー側とドナー側の両方のアリコートを取り、内部標準を含む等量のアセトニトリルで希釈した。混合物を遠心分離し、LC-MS/MSで上清を分析する。見かけの透磁率係数(Papp)は、次の式を使用して計算される。
Papp = [Vrec/(A × C0,donor)](dCrec/dt) × 106
式中、dCrev/dtは、時間にともなうレシーバーコンパートメント内の濃度の変化であり、Vrecは、レシーバーコンパートメント内のサンプルの体積であり、C0,donorは、時間0にてのドナーコンパートメント内の濃度であり、Aは細胞のあるコンパートメントの面積である。
【0040】
【0041】
Caco-2単層細胞では、M1はP-gpトランスポーターによって18.2の比率で排出される(表7)。透過性は、CsAなどのP-gpインヒビターによって、比率が1.53に低下するにつれて回復し、M1がCaco-2単層の頂端から基底外側および基底外側から頂端側に交差するのと同様の速度を可能にする。
【0042】
【0043】
M1の透過性は、PYROの増加する濃度にともない、PYROなしでPappA-B=2.00から100μMPYROで19.3まで増加した。排出率は、PYROなしで15.44から100μMのピロナリジンありで2.42に減少した。PYROは、10μMを超える濃度でPgpを介したM1の流出を阻害した。