(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-24
(45)【発行日】2023-12-04
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20231127BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20231127BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
(21)【出願番号】P 2021047313
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2022-03-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正紘
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-088172(JP,A)
【文献】特開平09-186086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/24
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の
ドーパントがドープされていない膜である第1シリコン膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1シリコン膜上に、前記第1シリコン膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の
ドーパントがドープされた膜である第2シリコン膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2シリコン膜を除去する工程と
、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第1シリコン膜および前記第2シリコン膜のうちドーパントが存在する部分を改質させる工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
(c)では、前記第2シリコン膜中のドーパントの一部が前記第1シリコン膜中へ拡散し、
(d)では、前記第1シリコン膜のうち前記第2シリコン膜中のドーパントが拡散した部分をも除去する請求項
1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(d)では、前記第1シリコン膜のうちドーパントを含まない表面を露出させる請求項
2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(e)
では、前記第1シリコン膜および前記第2シリコン膜のうちドーパントが存在する部分を酸化させ
る請求項
1~3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(c)では、前記第2シリコン膜の結晶化を、前記第1シリコン膜の結晶化よりも先に、開始させる請求項1~
4のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(c)では、前記第2シリコン膜の結晶化を、前記第1シリコン膜の結晶化よりも先に、完了させる請求項1~
5のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(c)では、前記第2シリコン膜の結晶粒を起点として、前記第1シリコン膜を結晶化させる請求項
5または
6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(c)では、前記第2シリコン膜の結晶状態を、前記第1シリコン膜に引き継がせる請求項
5~
7のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(c)では、前記基板の温度を550℃以上650℃以下とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)では、(d)を行った後に得られる前記第1シリコン膜の膜厚よりも、(c)において前記第2シリコン膜中から前記第1シリコン膜中へドーパントが拡散する深さ分以上、厚く前記第1シリコン膜を形成する請求項
2~
9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(a)では、(d)を行った後に得られる前記第1シリコン膜の膜厚よりも、(c)において前記第2シリコン膜中から前記第1シリコン膜中へドーパントが拡散する深さ分だけ、厚く前記第1シリコン膜を形成する請求項
2~
9のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項12】
前記第2シリコン膜の厚さを前記第1シリコン膜の厚さ以上とする請求項
1~
11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態のドーパントがドープされていない膜である第1シリコン膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1シリコン膜上に、前記第1シリコン膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態のドーパントがドープされた膜である第2シリコン膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2シリコン膜を除去する工程と、
を有し、
前記第2シリコン膜の厚さを前記第1シリコン膜の厚さよりも厚くす
る基板処理方法。
【請求項14】
前記基板の表面には酸化膜が形成されており、(a)では前記酸化膜上に、前記第1シリコン膜を形成する請求項1~
13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(a)を行う前に、前記酸化膜上に、アモルファス状態のシリコンシード層を形成する工程を、さらに有し、
(a)では、前記酸化膜上に形成した前記シリコンシード層上に、前記第1シリコン膜を形成する請求項
14に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(a)を行う前に、前記基板上に、アモルファス状態のシリコンシード層を形成する工程を、さらに有し、
(a)では、前記シリコンシード層上に、前記第1シリコン膜を形成する請求項1~
13のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記シリコンシード層を形成する工程では、前記基板に対して、クロロシラン系ガス、フルオロシラン系ガス、ブロモシラン系ガス、およびヨードシラン系ガスのうち少なくとも何れかと、還元ガスと、を供給する請求項
15または
16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の
ドーパントがドープされていない膜である第1シリコン膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1シリコン膜上に、前記第1シリコン膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の
ドーパントがドープされた膜である第2シリコン膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2シリコン膜を除去する工程と、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第1シリコン膜および前記第2シリコン膜のうちドーパントが存在する部分を改質させる工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
基板に対して第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、
基板に対して第2処理ガスを供給する第2処理ガス供給系と、
基板に対して改質ガスを供給する改質ガス供給系と、
基板を加熱するヒータと、
基板をエッチング剤に曝露するエッチング剤曝露系と、
(a)基板に対して前記第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の
ドーパントがドープされていない膜である第1シリコン膜を形成する処理と、
(b)前記基板に対して前記第2処理ガスを供給することで、前記第1シリコン膜上に、前記第1シリコン膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の
ドーパントがドープされた膜である第2シリコン膜を形成する処理と、
(c)前記基板上に形成された前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを加熱することで結晶化させる処理と、
(d)前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面を前記エッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2シリコン膜を除去する処理と、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記基板に対して前記改質ガスを供給することで、前記第1シリコン膜および前記第2シリコン膜のうちドーパントが存在する部分を改質させる処理と、
を行わせるように、前記第1処理ガス供給系、前記第2処理ガス供給系、
前記改質ガス供給系、前記ヒータ、および前記エッチング剤曝露系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理システム。
【請求項20】
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の
ドーパントがドープされていない膜である第1シリコン膜を形成する手順と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1シリコン膜上に、前記第1シリコン膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の
ドーパントがドープされた膜である第2シリコン膜を形成する手順と、
(c)前記基板上に形成された前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを加熱することで結晶化させる手順と、
(d)前記第1シリコン膜と前記第2シリコン膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2シリコン膜を除去する手順と、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第1シリコン膜および前記第2シリコン膜のうちドーパントが存在する部分を改質させる手順と、
をコンピュータによって、基板処理システムに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理システム、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、基板上に高品質な膜を形成することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1膜上に、前記第1膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の第2膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1膜と前記第2膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1膜と前記第2膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2膜を除去する工程と、
を行う技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に高品質な膜を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の各態様で好適に用いられる基板処理システムの縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の各態様で好適に用いられる基板処理システムの縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の各態様で好適に用いられる基板処理システムのコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4(a)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、成膜処理を行う前におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(b)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、シード層形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(c)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、第1膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(d)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、第2膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(e)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、結晶化後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(f)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、改質後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図4(g)は、本開示の第1態様における基板処理シーケンスの、エッチング後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、成膜処理を行う前におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図5(b)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、シード層形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図5(c)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、第1膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図5(d)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、第2膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図5(e)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、結晶化後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図5(f)は、本開示の第1態様の変形例における基板処理シーケンスの、エッチング後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
【
図6】
図6(a)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、成膜処理を行う前におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(b)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、シード層形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(c)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、第1膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(d)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、第2膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(e)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、結晶化後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(f)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、改質後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図6(g)は、本開示の第2態様における基板処理シーケンスの、エッチング後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
【
図7】
図7(a)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、成膜処理を行う前におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図7(b)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、シード層形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図7(c)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、第1膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図7(d)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、第2膜形成後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図7(e)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、結晶化後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
図7(f)は、本開示の第2態様の変形例における基板処理シーケンスの、エッチング後におけるウエハ表面の部分断面拡大図である。
【
図8】
図8(a)は、バッチ式の基板処理装置を用いる場合の基板処理システムの一態様を示す模式図である。
図8(b)は、バッチ式の基板処理装置を用いる場合の基板処理システムの他の態様を示す模式図である。
【
図9】
図9は、枚葉式のクラスタ型の基板処理装置を用いる場合の基板処理システムの一態様を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施例1および比較例1における評価結果をそれぞれ示す図である。
【
図11】
図11は、実施例2および比較例2における評価結果をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の第1態様>
以下、本開示の第1態様について、主に、
図1~
図3、
図4(a)~
図4(g)を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整器(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249b,249cのそれぞれは、ノズル249aに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232gが接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232hが接続されている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232f,232iが接続されている。ガス供給管232d~232iには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241iおよびバルブ243d~243iがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232iは、例えばSUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249aは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249b,249cは、ノズル249aと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249aとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249bと反対側に設けられているということもできる。ノズル249b,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素(所定元素)を含む原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0015】
ガス供給管232bからは、シードガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232cからは、ウエハ200上に形成される膜に添加されるドーパント(不純物)を含むドーパントガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232dからは、還元ガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232eからは、エッチング剤が、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232fからは、改質ガスが、MFC241f、バルブ243f、ガス供給管232c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232g~232iからは、不活性ガスが、それぞれMFC241g~241i、バルブ243g~243i、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、シードガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、ドーパントガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、還元ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、エッチング剤供給系(エッチング剤暴露系)が構成される。主に、ガス供給管232f、MFC241f、バルブ243fにより、改質ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232g~232i、MFC241g~241i、バルブ243g~243iにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0022】
なお、原料ガス、シードガス、ドーパントガス、還元ガス、改質ガスのうち少なくともいずれかを、処理ガス(第1処理ガス、第2処理ガス)とも称し、原料ガス供給系、シードガス供給系、ドーパントガス供給系のうち少なくともいずれかを、処理ガス供給系(第1処理ガス供給系、第2処理ガス供給系)とも称する。
【0023】
上述の各種ガス供給系のうち、いずれか、或いは、全てのガス供給系は、バルブ243a~243iやMFC241a~241i等が集積されてなる集積型ガス供給システム248として構成されていてもよい。集積型ガス供給システム248は、ガス供給管232a~232iのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232i内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243iの開閉動作やMFC241a~241iによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型ガス供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232i等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型ガス供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0024】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0025】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0026】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0027】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0028】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0029】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0030】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0031】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241i、バルブ243a~243i、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0032】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241iによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243iの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0033】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0034】
以上述べたバッチ式の基板処理装置により、本態様における基板処理システムを構成することができる。
【0035】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に膜を形成する処理シーケンス例について、主に、
図4(a)~
図4(g)を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0036】
第1態様における処理シーケンスは、
(a)ウエハ200に対して第1処理ガスを供給することで、ウエハ200上に、アモルファス状態の第1膜を形成するステップAと、
(b)ウエハ200に対して第2処理ガスを供給することで、第1膜上に、第1膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の第2膜を形成するステップBと、
(c)ウエハ200上に形成された第1膜と第2膜とを加熱することで結晶化させるステップCと、
(d)第1膜と第2膜とを結晶化させた後に、ウエハ200の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも第2膜を除去するステップDと、
を含む。
【0037】
この場合において、第1膜を、ドーパントがドープされていない膜とし、第2膜を、ドーパントがドープされた膜とすることができる。ドーパントは、リン(P)、ボロン(B)、ヒ素(As)のうち少なくともいずれか1つを用いることができる。
【0038】
ステップAでは、第1膜を形成する前に、シード層を形成することが好ましい。この場合、ウエハ200の表面上にシード層が形成され、シード層上に、第1膜が形成されることとなる。
【0039】
ステップAにおいて、第1膜として、ドーパントがドープされていない第1シリコン膜を形成する場合、第1処理ガスとしてシラン系ガス等の原料ガスを用いることができる。
【0040】
ステップBにおいて、第2膜として、ドーパントがドープされた第2シリコン膜を形成する場合、第2処理ガスとしてシラン系ガス等の原料ガスとドーパントガスとを用いることができる。
【0041】
ステップCにおいて、第2膜中のドーパントの一部が第1膜中へ拡散する場合、ステップDでは、第1膜のうち第2膜中のドーパントが拡散した部分をも除去することが好ましい。この場合、ステップDでは、第1膜のうちドーパントを含まない表面を露出させることが好ましい。
【0042】
第1態様における処理シーケンスは、さらに、
(e)ステップCを行った後、ステップDを行う前に、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を改質させるステップEを含むことが好ましい。この場合において、ステップEでは、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を酸化させることが好ましい。これにより、ステップCを行った後における第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を、ステップDにおいて除去し易く(エッチング剤によりエッチングされ易く)することが可能となる。
【0043】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の態様や変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0044】
シード層形成→第1膜形成→第2膜形成→結晶化→改質→エッチング
【0045】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0046】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。なお、
図4(a)に示すように、ウエハ200の表面には、酸化膜として、例えば、シリコン酸化膜(SiO膜)が予め形成されている。
【0047】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される(温度調整)。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0048】
(ステップA)
その後、ステップAを行う。本ステップでは、次のシード層形成、第1膜形成を順に行う。
【0049】
〔シード層形成〕
シード層形成では、次のステップ1,2を順次実行する。
【0050】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された酸化膜の表面に対して、シードガスを供給する。
【0051】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へシードガスを流す。シードガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気管231より排気される。このとき、ウエハ200に対してシードガスが供給される(シードガス供給)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0052】
シードガス供給における処理条件としては、
シードガス供給流量:0.1~1slm
シードガス供給時間:0.5~2分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度:350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:277~1200Pa、好ましくは667~1200Pa
が例示される。
【0053】
なお、本明細書における「277~1200Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「277~1200Pa」とは「277Pa以上1200Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とは、ウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは、ウエハ200が存在する空間である処理室201内の圧力のことを意味する。また、ガス供給流量:0slmとは、そのガスを供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0054】
シードガスとして例えばクロロシラン系ガスを用い、上述の処理条件下でウエハ200に対してシードガスを供給することにより、ウエハ200の表面に、シードガスに含まれるシリコン(Si)を吸着させ、シード(核)を形成することが可能となる。上述の処理条件下では、ウエハ200の表面に形成される核には、所定量の塩素(Cl)が含まれることとなる。また、上述の処理条件下では、ウエハ200の表面に形成される核の結晶構造は、アモルファス(非晶質)となる。
【0055】
ウエハ200の表面に核が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのシードガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243g~243iを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。
【0056】
シードガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。シードガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。
【0057】
シードガスとしては、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることができる。シードガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。
【0058】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0059】
[ステップ2]
その後、処理室201内のウエハ200、すなわち、酸化膜の表面に形成された核に対して、還元ガスを供給する。
【0060】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へ還元ガスを流す。還元ガスは、MFC241dにより流量調整され、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して還元ガスが供給される(還元ガス供給)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0061】
還元ガス供給における処理条件としては、
還元ガス供給流量:2~10slm
還元ガス供給時間:2~5分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理圧力:1333~13332Pa
が例示される。他の処理条件は、シードガス供給における処理条件と同様とすることができる。
【0062】
上述の処理条件下でウエハ200に対して還元ガスを供給することにより、ウエハ200の表面に形成されている核から、Clを脱離させることが可能となる。核から脱離させたClは、Clを含むガス状物質を生成し、処理室201内から排出される。なお、本態様では、還元ガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)を、シードガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)よりも高くする。このようにすることで、還元ガス供給において、核からのClの脱離を促進させることが可能となる。結果として、ウエハ200上に形成されるシード層を、Cl濃度の低い層とすることが可能となる。
【0063】
ウエハ200の表面に形成された核からClを脱離させた後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への還元ガスの供給を停止する。そして、ステップ1におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0064】
還元ガスとしては、例えば、水素(H2)ガス、重水素(D2)ガス、モノシランガス(SiH4)ガス等の水素(H)含有ガスを用いることができる。D2ガスを2H2ガスと表記することもできる。還元ガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。
【0065】
[所定回数実施]
上述のステップ1,2を交互に、すなわち、同期させることなく非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、
図4(b)に示すように、ウエハ200上、すなわち、ウエハ200の表面に形成された酸化膜上に、上述の核が高密度に形成されてなるシード層、すなわち、シリコンシード層を形成することが可能となる。本態様では、ステップ1,2を交互に行うことで、すなわち、シードガス供給を行うたびに還元ガス供給を行いウエハ200の表面に形成された核からClを脱離させることで、ウエハ200上に形成されるシード層を、Cl濃度が低い層とすることが可能となる。上述の処理条件下では、ウエハ200上に形成されるシード層の結晶構造を、アモルファスとすることが可能となる。
【0066】
ウエハ200上へのアモルファス状態のシード層の形成が完了した後、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、シード層形成におけるウエハ200の温度よりも高い温度へ変更させるように、ヒータ207の出力を調整する。ウエハ200の温度が所望の温度に到達して安定するまでの間、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給し、排気口231aより排気して、処理室201内をパージする。
【0067】
〔第1膜形成〕
シード層形成が終了した後、第1膜形成を行う。本ステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたアモルファス状態のシード層の表面に対して、第1処理ガスとして、原料ガスを供給する。
【0068】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0069】
第1膜形成における処理条件としては、
原料ガス供給流量:0.01~5slm
原料ガス供給時間:1~300分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度:450~550℃
処理圧力:30~400Pa
が例示される。
【0070】
原料ガスとしてシラン系ガスを用い、上述の処理条件下でウエハ200に対して原料ガスを供給することにより、原料ガスを気相中で分解させて、ウエハ200の表面上、すなわち、ウエハ200上に形成されたシード層上に、Siを吸着(堆積)させることができる。これにより、
図4(c)に示すように、ウエハ200上、すなわち、ウエハ200上に形成されたシード層上に、第1膜として、第1シリコン膜を形成することが可能となる。原料ガスとして、Clを含まないシラン系ガスを用いる場合、ウエハ200上に形成される第1膜は、Clを含まない膜となる。また、上述の処理条件下では、ウエハ200上に形成される第1膜の結晶構造は、アモルファスとなる。また、ウエハ200上に形成されているシード層の結晶構造も、アモルファスのまま維持される。
【0071】
ウエハ200上へのアモルファス状態の第1膜の形成が完了した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、シード層形成におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0072】
原料ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH4ガス)、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、テトラシラン(Si4H10)ガス、ペンタシラン(Si5H12)ガス、ヘキサシラン(Si6H14)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることができる。原料ガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。なお、第1膜形成の終了時における第1膜の結晶状態を確実にアモルファスとするには、原料ガスとして、モノシランガスのような低次の水素化ケイ素ガスを用いることが好ましい。
【0073】
(ステップB)
ステップAが終了した後、ステップBとして、第2膜形成を行う。本ステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成された第1膜の表面に対して、第2処理ガスとして、原料ガスおよびドーパントガスを供給する。
【0074】
具体的には、バルブ243a,243cを開き、ガス供給管232a,232c内へ原料ガス、ドーパントガスをそれぞれ流す。原料ガス、ドーパントガスは、それぞれ、MFC241a,241cにより流量調整され、ノズル249a,249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスおよびドーパントガスがそれぞれ供給される(原料ガス+ドーパントガス供給)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0075】
第2膜形成における処理条件としては、
原料ガス供給流量:0.01~5slm
ドーパントガス供給流量:0.01~5slm
各ガス供給時間:1~300分
処理温度:450~550℃
処理圧力:30~400Pa
が例示される。他の処理条件は、第1膜形成における処理条件と同様とすることができる。
【0076】
原料ガスとしてシラン系ガスを、ドーパントガスとしてリン(P)含有ガスを用い、上述の処理条件下でウエハ200に対してこれらのガスを供給することにより、原料ガス、ドーパントガスを気相中でそれぞれ分解させて、ウエハ200の表面上、すなわち、ウエハ200上に形成されたアモルファス状態の第1膜上に、Siを吸着(堆積)させることができる。これにより、
図4(d)に示すように、ウエハ200上、すなわち、ウエハ200上に形成された第1膜上に、第2膜として、ドーパントとしてのPがドープされた第2シリコン膜を形成することが可能となる。原料ガスとして、Clを含まないシラン系ガスを用いる場合、ウエハ200上に形成される第2膜は、Clを含まない膜となる。また、上述の処理条件下では、ウエハ200上に形成される第2膜の結晶構造は、アモルファスとなる。また、ウエハ200上に形成されているシード層、および、第1膜の結晶構造も、それぞれ、アモルファスのまま維持される。
【0077】
ウエハ200上へのアモルファス状態の第2膜の形成が完了した後、バルブ243a,243cを閉じ、処理室201内への原料ガス、ドーパントガスの供給をそれぞれ停止する。そして、シード層形成におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0078】
原料ガスとしては、第1膜形成で例示した各種水素化ケイ素ガスのうち1以上を用いることができる。なお、第2膜形成の終了時における第2膜の結晶状態を確実にアモルファスとするには、原料ガスとして、モノシランガスのような低次の水素化ケイ素ガスを用いることが好ましい。
【0079】
ドーパントガスとしては、例えば、ホスフィン(PH3)ガス等のリン(P)含有ガスの他、ジボラン(B2H6)ガス等のボロン(B)含有ガス、アルシン(AsH3)ガス等のヒ素(As)含有ガスを用いることができる。ドーパントガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0080】
(ステップC)
ステップBが終了した後、ステップCとして、結晶化を行う。
【0081】
具体的には、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、上述の第2膜形成におけるウエハ200の温度よりも高い温度へ変更させるように、ヒータ207の出力を調整し、シード層、第1膜、第2膜をそれぞれ熱処理(アニール)する。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0082】
結晶化における処理条件としては、
不活性ガス供給流量(各ガス供給管):0~20slm
処理時間:60~600分
処理温度:550~650℃
処理圧力:1~101325Pa
が例示される。
【0083】
上述の処理条件下でアニールを行うことにより、
図4(e)に示すように、シード層、第1膜および第2膜のそれぞれを、ポリ化(結晶化、すなわち、多結晶化)させた状態とすることができる。上述のように、第1膜はドーパントがドープされていないアモルファス状態の膜であり、第2膜はドーパントがドープされたアモルファス状態の膜である。これにより、本ステップでは、第2膜の結晶化を、第1膜の結晶化よりも先に、開始させることができる。また、本ステップでは、第2膜の結晶化を、第1膜の結晶化よりも先に、完了させることができる。これらにより、本ステップでは、第2膜の結晶粒(グレイン)を起点として、第1膜を結晶化させることができる。すなわち、第2膜の結晶状態を、第1膜に引き継がせることができる。
【0084】
また、ドーパントがドープされていないアモルファス状態の膜よりも、ドーパントがドープされたアモルファス状態の膜の方が、結晶化させた際に、結晶粒径(グレインサイズ)を大きくすることができる。本ステップでは、第2膜の結晶化を、第1膜の結晶化よりも先に、開始させ、第1膜の結晶化よりも先に、完了させることから、先に結晶化させる方の膜である第2膜のグレインサイズを大きくすることができ、その大きくした第2膜のグレインサイズを、遅れて結晶化させる方の膜である第1膜に引き継がせることができる。結果として、第1膜を結晶化させる際に、第1膜のクレインサイズを拡大させることが可能となる。
【0085】
上述のように、第1膜は、第2膜の結晶状態を引き継ぐことから、第1膜のグレインサイズをより大きくするには、第2膜のグレインサイズをより大きくすることが有効である。ここで、アモルファス状態の第2膜の厚さを、アモルファス状態の第1膜の厚さ以上としておくことで、結晶化させた第2膜のグレインサイズをより大きくすることができ、結果として、第1膜のグレインサイズをより大きくすることが可能となる。また、アモルファス状態の第2膜の厚さを、アモルファス状態の第1膜の厚さよりも厚くすることで、結晶化させた第2膜のグレインサイズをさらに大きくすることができ、結果として、第1膜のグレインサイズをさらに大きくすることが可能となる。
【0086】
なお、上述の処理条件下でアニールを行うことにより、第2膜中のドーパントの一部が、第1膜中へと拡散することがある。これにより、第1膜のうち、例えば、第2膜との界面近傍の領域には、ドーパントが所定の濃度で添加された状態となることがある。
【0087】
(ステップE)
ステップCが終了した後、ステップEとして、改質を行う。本ステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、結晶化させた第2膜の表面に対して、改質ガスを供給する。
【0088】
具体的には、バルブ243fを開き、ガス供給管232f内へ改質ガスを流す。改質ガスは、MFC241fにより流量調整され、ガス供給管232c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して改質ガスが供給される(改質ガス供給)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0089】
改質における処理条件としては、
改質ガス供給流量:1~10slm
改質ガス供給時間:1~5分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度:500~800℃
処理圧力:1~101325Pa
が例示される。
【0090】
改質ガスとして例えばO含有ガス(酸化ガス)を用い、上述の処理条件下でウエハ200に対して改質ガスを供給することにより、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を、酸化させることができる。これにより、
図4(f)に示すように、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を、後述するエッチングにおいてエッチングされやすい酸化膜(第1膜、第2膜としてシリコン膜を形成する場合は、シリコン酸化膜)へと改質させることが可能となる。
【0091】
第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分の改質が完了した後、バルブ243fを閉じ、処理室201内への改質ガスの供給を停止する。そして、シード層形成におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0092】
改質ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、過酸化水素(H2O2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等のO含有ガスを用いることができる。改質ガスとしては、これらの他、O含有ガス+H含有ガスを用いることもできる。H含有ガスとしては、H2ガスの他、2H2ガスを用いることもできる。例えば、改質ガスとしては、O2ガス+H2ガス、O3ガス+H2ガス等を用いることができる。また、改質ガスとしては、これらのうち少なくともいずれかをプラズマ状態に励起したガスを用いることもできる。改質ガスとしては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。
【0093】
なお、本明細書において「O含有ガス+H含有ガス」というような2つのガスの併記記載は、O含有ガスとH含有ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0094】
(ステップD)
ステップEが終了した後、ステップDとして、エッチングを行う。本ステップでは、処理室201内のウエハ200の表面、すなわち、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分か改質されてなる酸化膜の表面を、エッチング剤に暴露する。
【0095】
具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へエッチング剤を流す。エッチング剤は、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200の表面がエッチング剤に暴露される(エッチング剤暴露)。このとき、バルブ243g~243iを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0096】
エッチングにおける処理条件としては、
エッチング剤供給流量:1~10slm
エッチング剤供給時間:1~10分
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度:室温(25℃)~1000℃
処理圧力:133~50000Pa
が例示される。
【0097】
上述の処理条件下でウエハ200に対してエッチング剤を供給することにより、結晶化させた第1膜および第2膜のうち、酸化膜へと改質させた部分、すなわち、ドーパントが存在する部分を、エッチング(除去)することができる。これにより、
図4(g)に示すように、第1膜のうち、ドーパントを含まない表面を露出させることが可能となる。エッチングを行った後に得られる第1膜は、ドーパントがドープされていないノンドープ膜となる。
【0098】
なお、上述のように、結晶化では、第2膜中のドーパントの一部が第1膜中へ拡散することがある。その場合、エッチングでは、少なくとも第2膜を除去するとともに、第1膜のうち第2膜中のドーパントが拡散した部分をも除去する。すなわち、エッチングを行った後の第1膜の膜厚は、第1膜形成を行った直後における第1膜の膜厚よりも、少なくとも、結晶化において第2膜中から第1膜中へドーパントが拡散する深さ分だけ薄くなることがある。したがって、この場合において、エッチングを行った後に得られる第1膜の膜厚、すなわち、最終的に得られる第1膜の膜厚を所望の厚さとするには、第1膜形成において、エッチングを行った後に得られる第1膜の膜厚よりも、結晶化において第2膜中から第1膜中へドーパントが拡散する深さ分以上、厚く第1膜を形成することが好ましい。例えば、第1膜形成において、エッチングを行った後に得られる第1膜の膜厚よりも、結晶化において第2膜中から第1膜中へドーパントが拡散する深さ分だけ、厚く第1膜を形成することが好ましい。
【0099】
第1膜および第2膜のうち、酸化膜へと改質させた部分、すなわち、ドーパントが存在する部分を除去した後、バルブ243eを閉じ、処理室201内へのエッチング剤の供給を停止する。そして、シード層形成におけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0100】
エッチング剤としては、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素(ClF3)ガス、フッ化塩素ガス(ClF)ガス、フッ素(F2)ガス、三フッ化窒素(NF3)ガス、フッ化ニトロシル(FNO)ガス、塩化水素(HCl)ガス、塩素(Cl2)ガス等のエッチングガス、或いは、これらの混合ガスを用いることができる。エッチング剤としては、ここで例示した各種ガスのうち1以上を用いることができる。なお、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を、酸化膜へと改質させる場合は、エッチング剤として、HFガス等のフッ素系ガス(フッ素含有ガス)を用いることが好ましい。HFガス等のフッ素系ガスを用いる場合、結晶化後のシリコン膜、すなわち、多結晶シリコン膜のうち、酸化させた膜厚分のみ選択的にエッチングすることができ、酸化させていない膜厚分をエッチングすることなく残すことができる。すなわち、HFガス等のフッ素系ガスを用いる場合、多結晶シリコン膜を酸化させた膜厚分のみエッチングさせ、所定の膜厚の多結晶シリコン膜を得ることができる。
【0101】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
エッチングが終了した後、ノズル249a~249cのそれぞれから、パージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0102】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0103】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0104】
(a)第1膜形成、第2膜形成、結晶化、エッチングを順に行うことにより、最終的に得られる第1膜のグレインサイズを拡大させることができ、最終的に得られる第1膜における結晶粒界の密度を低減させることができる。結果として、最終的に得られる第1膜における電子の移動度を高くすることが可能となる。
【0105】
(b)第1膜をドーパントがドープされていないアモルファス状態の膜とし、第2膜をドーパントがドープされたアモルファス状態の膜とすることにより、結晶化において、第2膜の結晶化を、第1膜の結晶化よりも先に、開始させることが可能となる。これにより、先に結晶化させる方の膜である第2膜のグレインサイズを大きくすることができ、そのグレインサイズを、遅れて結晶化させる方の膜である第1膜に引き継がせる(承継させる)ことが可能となる。すなわち、結晶化により得られる第1膜のグレインサイズを、拡大させることが可能となる。
【0106】
(c)結晶化において、第2膜中のドーパントの一部が第1膜中へと拡散した場合に、エッチングにおいて、第1膜のうち第2膜中のドーパントが拡散した部分をも除去することにより、第1膜のうちドーパントがドープされていない部分を残すことができる。これにより、第1膜のうちドーパントがドープされていない部分、すなわち、第1膜のうちドーパントを含まない部分を露出させることができる。結果として、エッチングを行った後に得られる第1膜を、ドーパントがドープされていないノンドープ膜とすることが可能となる。
【0107】
(d)結晶化を行った後、エッチングを行う前に、改質を行うことにより、結晶化を行った後における第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を、エッチングにおいて除去し易く(エッチング剤によりエッチングされ易く)することが可能となる。これにより、エッチングにおいて、第1膜および第2膜のうちドーパントが存在する部分を選択的にエッチングすることが可能となる。
【0108】
(e)結晶化では、ウエハ200の温度を550℃以上650℃以下とすることにより、第2膜を、第1膜よりも先に、適正に結晶化させることができ、第2膜中のドーパントの一部の第1膜中への拡散を抑制することが可能となる。
【0109】
(f)第1膜形成において、エッチングを行った後に得られる第1膜の膜厚よりも、結晶化において第2膜中から第1膜中へドーパントが拡散する深さ分以上、例えば、深さ分だけ、厚く第1膜を形成することにより、エッチングを行った後に得られる第1膜の膜厚が、必要な膜厚よりも薄くなることを防止することが可能となる。
【0110】
(g)第2膜形成において、第2膜の厚さを、第1膜の厚さ以上、例えば、第1膜の厚さよりも厚くすることにより、結晶化において、第2膜のグレインサイズを、より大きくすることができ、そのグレインサイズを、第1膜に引き継がせ、第1膜のグレインサイズを、より拡大させることが可能となる。
【0111】
(h)本態様の手法は、成膜前のウエハ200の表面に酸化膜が形成されている場合に特に有効である。酸化膜上に膜を形成する場合、この膜のグレインサイズが小さくなることがあるが、本手法によれば、酸化膜上に膜を形成する場合であっても、この膜のグレインサイズを大きくすることができる。すなわち、本手法によれば、酸化膜上に、グレインサイズを拡大させた膜を形成することが可能となる。
【0112】
(i)上述の効果は、上述の各種シードガスを用いる場合や、上述の各種還元ガスを用いる場合や、上述の各種原料ガスを用いる場合や、上述の各種改質ガスを用いる場合や、上述の各種エッチング剤を用いる場合や、上述の各種不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0113】
(4)変形例
なお、上述の態様では、結晶化させた後の第1膜と第2膜とのうち、ドーパントが存在する部分を、改質させた後に、ドライエッチングにより除去する例について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0114】
例えば、結晶化させた後の第1膜と第2膜とのうち、ドーパントが存在する部分を、改質させた後に、ウェットエッチングにより除去するようにしてもよい。この場合、エッチング剤として、エッチングガスの代わりに、例えば、HF水溶液を用い、ウエハ200の表面をHF水溶液に曝露することで、上述のエッチングと同様のエッチングを行うことができる。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0115】
また例えば、上述の態様では、
図4(a)~
図4(g)に示すように、結晶化させた後の第1膜と第2膜とのうち、ドーパントが存在する部分を、改質させた後に、エッチングする例について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0116】
例えば、以下の処理シーケンスや
図5(a)~
図5(f)に示すように、結晶化させた後の第1膜と第2膜とのうち、ドーパントが存在する部分を、改質させることなく、エッチングするようにしてもよい。すなわち、改質を省略するようにしてもよい。この場合、エッチング剤としては、HClガスやCl
2ガス等の塩素系ガス(塩素含有ガス)を用いることが好ましい。
【0117】
シード層形成→第1膜形成→第2膜形成→結晶化→エッチング
【0118】
この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0119】
また上述の態様では、ウエハ200上に、第1膜、第2膜として、それぞれシリコン膜を形成する例について説明したが、本態様はこれに限定されるものではない。例えば、ウエハ200上に、第1膜、第2膜として、ゲルマニウム膜(Ge膜)を形成する場合や、シリコンゲルマニウム膜(SiGe膜)を形成する場合にも、本態様の手法を適用することができる。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0120】
<本開示の第2態様>
上述の第1態様では、ステップB(第2膜形成)において、第1膜上に、第1膜よりも結晶化温度が低い第2膜、すなわち、ドーパントがドープされた第2膜を形成する例について説明した。しかしながら、ステップBにおいて、第2膜として、ドーパントがドープされていない第2膜を形成するようにしてもよい。
【0121】
第2態様における処理シーケンスは、
(a)ウエハ200に対して第1処理ガスを供給することで、ウエハ200上に、アモルファス状態の第1膜を形成するステップAと、
(b)ウエハ200に対して第2処理ガスを供給することで、第1膜上に、アモルファス状態の第2膜を形成するステップBと、
(c)ウエハ200上に形成された第1膜と第2膜とを加熱することで結晶化させるステップCと、
(d)第1膜と第2膜とを結晶化させた後に、ウエハ200の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも第2膜を除去するステップDと、
を含む。
【0122】
第2態様では、第1膜を、ドーパントがドープされていない膜とし、第2膜を、ドーパントがドープされていない膜とする。すなわち、第2態様では、第1膜および第2膜の両方を、ドーパントがドープされていない膜とする。
【0123】
第2態様においても、第1態様と同様、ステップAでは、第1膜を形成する前に、シード層として、シリコンシード層を形成することが好ましい。この場合、ウエハ200の表面上にシード層が形成され、シード層上に、第1膜が形成されることとなる。
【0124】
ステップAにおいて、第1膜として、ドーパントがドープされていない第1シリコン膜を形成する場合、第1処理ガスとしてシラン系ガス等の原料ガスを用いることができる。
【0125】
ステップBにおいて、第2膜として、ドーパントがドープされていない第2シリコン膜を形成する場合、第2処理ガスとしてシラン系ガス等の原料ガスを用いることができる。
【0126】
第2態様における処理シーケンスは、さらに、
(e)ステップCを行った後、ステップDを行う前に、第2膜を改質させるステップEを含むことが好ましい。この場合において、ステップEでは、第2膜を酸化させることが好ましい。これにより、ステップCを行った後における第2膜を、ステップDにおいて除去し易く(エッチング剤によりエッチングされ易く)することが可能となる。
【0127】
第2態様が第1態様と異なるのは、ステップBにおいて形成する第2膜がドーパントを含まないことだけ(ステップBにおいてドーパントガスを供給しないことだけ)であり、その他は、第1態様と同様である。第2態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件は、上述の第1態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0128】
本態様においても、第1態様と同様の効果が得られる。
【0129】
なお、本態様においても、結晶化させ、改質させた第2膜を、ドライエッチングおよびウェットエッチングのいずれかにより、除去することができる。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0130】
また、本態様においても、第1態様と同様、
図6(a)~
図6(g)に示すように、結晶化させ、改質させた第2膜を、エッチングすることもできる。また、
図7(a)~
図7(f)に示すように、結晶化させた後の第2膜を、改質させることなく、エッチングすることもできる。すなわち、結晶化を行った後、エッチングを行う前に、改質を行うようにしてもよく、改質を行わないようにしてもよい。いずれの場合も、第1態様と同様のエッチング剤を用いることが好ましい。すなわち、結晶化させ、酸化膜へと改質させた第2膜をエッチングする場合は、エッチング剤として、HFガス等のフッ素系ガス(フッ素含有ガス)やHF水溶液を用いることが好ましい。また、結晶化させた後の第2膜を、改質させることなく、エッチングする場合は、エッチング剤として、HClガスやCl
2ガス等の塩素系ガス(塩素含有ガス)を用いることが好ましい。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0131】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の種々の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0132】
上述の態様では、シード層形成からエッチングに至る一連のステップを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、一連のステップのうち、シード層形成から一部のステップまでを同一の処理室内で行い、その後のステップを他の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。
【0133】
例えば、シード層形成、第1膜形成および第2膜形成と、結晶化と、エッチングとを、それぞれ、異なるスタンドアローン型の装置(第1基板処理装置、第2基板処理装置、第3基板処理装置)を用いて行うようにしてもよい。この場合、
図8(a)に示すような、第1基板処理装置、第2基板処理装置、第3基板処理装置により、基板処理システムを構成することができる。
【0134】
また例えば、シード層形成、第1膜形成、第2膜形成、結晶化までの一連のステップと、エッチングとを、それぞれ、異なるスタンドアローン型の装置(第1基板処理装置、第2基板処理装置)を用いて行うようにしてもよい。この場合、
図8(b)に示すような、第1基板処理装置、第2基板処理装置により、基板処理システムを構成することができる。
【0135】
また例えば、シード層形成、第1膜形成および第2膜形成と、結晶化と、エッチングとを、それぞれ、クラスタ装置における異なる処理室(第1処理室、第2処理室、第3処理室)内で行うようにしてもよい。この場合、
図9に示すような、第1処理室、第2処理室、第3処理室を有するクラスタ装置により、基板処理システムを構成することができる。なお、
図9における第4処理室は、他の処理を行う処理室として用いることができる。
【0136】
また例えば、シード層形成、第1膜形成、第2膜形成、結晶化までの一連のステップと、エッチングとを、それぞれ、クラスタ装置における異なる処理室(第1処理室、第2処理室)内で行うようにしてもよい。この場合、
図9に示すような、第1処理室、第2処理室を有するクラスタ装置により、基板処理システムを構成することができる。なお、
図9における第3処理室、第4処理室は、他の処理を行う処理室として用いてもよく、また、第3処理室内、第4処理室内においても、第1膜形成、第2膜形成、結晶化までの一連のステップと、エッチングとを、それぞれ、行うようにしてもよい。
【0137】
これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。なお、上述の種々の場合において、一連のステップをin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部のステップをex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0138】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0139】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0140】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0141】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、これらと同様の効果が得られる。
【0142】
また、上述の態様や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0143】
実施例1として、
図1に示す基板処理装置を用い、第1態様の処理シーケンス(シード層形成、第1膜形成、第2膜形成、結晶化、改質、エッチング)により、表面にシリコン酸化膜が形成されたウエハ上に、シリコン膜を形成して、評価サンプルを作製した。各ステップにおける処理条件は、第1態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理条件範囲内の所定の条件とした。第1膜としてのアモルファスシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとし、第2膜としてのアモルファスシリコン膜(Pドープ)の厚さを15nmとし、エッチングを行うことで最終的にウエハ上に形成されるシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとした。
【0144】
比較例1として、
図1に示す基板処理装置を用い、第1態様の処理シーケンスのうち、シード層形成、第1膜形成、結晶化を行うことにより、表面にシリコン酸化膜が形成されたウエハ上に、シリコン膜を形成して、評価サンプルを作製した。各ステップにおける処理条件は、実施例1の各ステップにおける処理条件と同様とした。なお、結晶化を行うことで最終的にウエハ上に形成されるシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとした。
【0145】
そして、実施例1および比較例1のそれぞれの評価サンプルにおけるシリコン膜のグレインサイズを測定した。その結果を
図10に示す。
図10に示すように、実施例1の方が、比較例1よりも、シリコン膜のグレインサイズを拡大させることができることを確認した。
【0146】
実施例2として、
図1に示す基板処理装置を用い、第2態様の処理シーケンス(シード層形成、第1膜形成、第2膜形成、結晶化、改質、エッチング)により、表面にシリコン酸化膜が形成されたウエハ上に、シリコン膜を形成して、評価サンプルを作製した。各ステップにおける処理条件は、第2態様の処理シーケンスの各ステップにおける処理条件範囲内の所定の条件とした。第1膜としてのアモルファスシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとし、第2膜としてのアモルファスシリコン膜(ノンドープ)の厚さを15nmとし、エッチングを行うことで最終的にウエハ上に形成されるシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとした。
【0147】
比較例2として、
図1に示す基板処理装置を用い、第2態様の処理シーケンスのうち、シード層形成、第1膜形成、結晶化を行うことより、表面にシリコン酸化膜が形成されたウエハ上に、シリコン膜を形成して、評価サンプルを作製した。各ステップにおける処理条件は、実施例2の各ステップにおける処理条件と同様とした。なお、結晶化を行うことで最終的にウエハ上に形成されるシリコン膜(ノンドープ)の厚さを30nmとした。
【0148】
そして、実施例2および比較例2のそれぞれの評価サンプルにおけるシリコン膜のグレインサイズを測定した。その結果を
図11に示す。
図11に示すように、実施例2の方が、比較例2よりも、シリコン膜のグレインサイズを拡大させることができることを確認した。
【0149】
なお、実施例1と実施例2とを比較すると、実施例1の方が実施例2よりも、すなわち、第1態様の処理シーケンスの方が第2態様の処理シーケンスよりも、シリコン膜のグレインサイズを拡大させることができることを確認した。
【0150】
<本開示の好ましい態様>
以下、好ましい態様について付記する。
【0151】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1膜上に、前記第1膜よりも結晶化温度が低いアモルファス状態の第2膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1膜と前記第2膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1膜と前記第2膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2膜を除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0152】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
前記第1膜は、ドーパントがドープされていない膜であり、
前記第2膜は、ドーパントがドープされた膜である。
【0153】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、
(c)では、前記第2膜中のドーパントの一部が前記第1膜中へ拡散し、
(d)では、前記第1膜のうち前記第2膜中のドーパントが拡散した部分をも除去する。
【0154】
(付記4)
付記3に記載の方法であって、
(d)では、前記第1膜のうちドーパントを含まない表面を露出させる。
【0155】
(付記5)
付記2~4のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第1膜および前記第2膜のうちドーパントが存在する部分を改質させる工程を、さらに有する。
【0156】
(付記6)
付記2~5のいずれか1項に記載の方法であって、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第1膜および前記第2膜のうちドーパントが存在する部分を酸化させる工程を、さらに有する。
【0157】
(付記7)
付記1~6、17のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記第2膜の結晶化を、前記第1膜の結晶化よりも先に、開始させる。
【0158】
(付記8)
付記1~7、17のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記第2膜の結晶化を、前記第1膜の結晶化よりも先に、完了させる。
【0159】
(付記9)
付記7、8、17のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記第2膜の結晶粒を起点として、前記第1膜を結晶化させる。
【0160】
(付記10)
付記7~9、17のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記第2膜の結晶状態を、前記第1膜に引き継がせる。
【0161】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)では、前記基板の温度を550℃以上650℃以下とする。
【0162】
(付記12)
付記3~11のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)では、(d)を行った後に得られる前記第1膜の膜厚よりも、(c)において前記第2膜中から前記第1膜中へドーパントが拡散する深さ分以上、厚く前記第1膜を形成する。好ましくは、(a)では、(d)を行った後に得られる前記第1膜の膜厚よりも、(c)において前記第2膜中から前記第1膜中へドーパントが拡散する深さ分だけ、厚く前記第1膜を形成する。
【0163】
(付記13)
付記2~12、17のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2膜の厚さを前記第1膜の厚さ以上とする。
【0164】
(付記14)
付記2~13、17のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第2膜の厚さを前記第1膜の厚さよりも厚くする。
【0165】
(付記15)
付記1~14のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第1膜は、ドーパントがドープされていないアモルファスシリコン膜であり、
前記第2膜は、ドーパントがドープされたアモルファスシリコン膜である。
【0166】
(付記16)
付記1~15、17のいずれか1項に記載の方法であって、
前記基板の表面には酸化膜が形成されており、(a)では前記酸化膜上に、前記第1膜を形成する。
【0167】
(付記17)
本開示の他の態様によれば、
(a)基板に対して第1処理ガスを供給することで、前記基板上に、アモルファス状態の第1膜を形成する工程と、
(b)前記基板に対して第2処理ガスを供給することで、前記第1膜上に、アモルファス状態の第2膜を形成する工程と、
(c)前記基板上に形成された前記第1膜と前記第2膜とを加熱することで結晶化させる工程と、
(d)前記第1膜と前記第2膜とを結晶化させた後に、前記基板の表面をエッチング剤に曝露することで、少なくとも前記第2膜を除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0168】
(付記18)
付記17に記載の方法であって、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第2膜を改質させる工程を、さらに有する。
【0169】
(付記19)
付記17または18に記載の方法であって、
(e)(c)を行った後、(d)を行う前に、前記第2膜を酸化させる工程を、さらに有する。
【0170】
(付記20)
本開示のさらに他の態様によれば、
基板に対して第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、
基板に対して第2処理ガスを供給する第2処理ガス供給系と、
基板を加熱するヒータと、
基板をエッチング剤に曝露するエッチング剤曝露系と、
付記1、17の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1処理ガス供給系、前記第2処理ガス供給系、前記ヒータ、および前記エッチング剤曝露系を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理システムが提供される。
【0171】
(付記21)
本開示の更に他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理システムに実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0172】
200 ウエハ(基板)
201 処理室