IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧 ▶ タイガー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図1
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図2
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図3
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図4
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図5
  • 特許-野生動物捕獲用罠に用いる筐体 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】野生動物捕獲用罠に用いる筐体
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/20 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A01M23/20
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019177113
(22)【出願日】2019-09-27
(65)【公開番号】P2021052617
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】平成31年度農林水産省「野生鳥獣被害拡大への対応技術の開発委託事業」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】391024722
【氏名又は名称】タイガー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】江口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】赤井 克己
(72)【発明者】
【氏名】小林 一木
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3102045(JP,U)
【文献】特開2011-024446(JP,A)
【文献】特開2016-202042(JP,A)
【文献】特開2018-130051(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133079(JP,U)
【文献】登録実用新案第3144159(JP,U)
【文献】特開2008-011813(JP,A)
【文献】特開2003-092973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を格子状に配設して箱状に形成すると共に、一側壁が開放面とされた野生動物捕獲用罠に用いる筐体において、
底部の開放面側端縁に、前記筐体内に侵入した動物の体全体が該筐体内に入った状態で、当該動物の後ろ足が地面に触れている形状となる切欠き部を設けた、野生動物捕獲用罠に用いる筐体。
【請求項2】
切欠き部の形状が円弧状である請求項1に記載の野生動物捕獲用罠に用いる筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捕獲対象動物の警戒心からくる行動特性を考慮した野生動物捕獲用罠に用いる筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農地や山間部、更には市街地近郊においてもイノシシや鹿、アライグマ等の野生動物による農業被害が深刻化している。そこで、動物捕獲用罠を用いて、これら野生動物の駆除が行われることがある。
【0003】
係る動物捕獲用罠として、箱罠が広く利用されている。人への危険性が少なく、且つ、動物を傷つけることなく生け捕りできるといったことがその理由である。
【0004】
一般的な箱罠は、地面に置いた侵入口のある箱状の構造物(筐体)に動物が入り込むと、作動装置の働きにより侵入口が閉じて動物が閉じ込められ生け捕りにされるものである。作動装置としては侵入した動物が踏み板を踏むと侵入口の扉が落ちるものが一般的で、扉には返しが付いていて中からは開けることができない構造となっている。
【0005】
特許文献1には、側面、天井部を開放することで、捕獲対象動物が容易に箱罠内に侵入可能とすることで、捕獲対象動物があまり警戒心を抱かさないようにした動物捕獲用罠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-250718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
野生動物、殊にイノシシは警戒心が強く、なかなか箱罠内に入ろうとしない。また、身体全体が箱罠内に入らない状態で侵入口の扉が落ちても、自力で箱罠から脱出してしまう。そこで本発明は、野生動物の警戒心を利用して、捕獲効率を高めることが可能な動物捕獲用罠に用いる筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
(1) 請求項1に記載の発明は、鉄筋を格子状に配設して箱状に形成すると共に、一側壁が開放面とされた野生動物捕獲用罠に用いる筐体を、底部の開放面側端縁に切欠き部を設けて構成した。
【0010】
(2) 請求項2に記載の発明は、請求項1記載の野生動物捕獲用罠に用いる筐体において、切欠き部を円弧状に形成した。
【発明の効果】
【0011】
本願出願人は野生動物の捕獲実験を鋭意行った結果、野生動物、殊にイノシシはその警戒心から、後ろ足が完全に檻の中に入る状態までは筐体内に入ってこない場合が多いという知見を得た。つまり、後ろ足が地面についている状態までしか、箱罠の中に入ってこないのである。
【0012】
ところが、後ろ足が筐体内に入っていない状態では、侵入口の扉が落ちても臀部に扉が引っ掛かり、イノシシやその他の野生動物は後退しながら筐体外に逃れてしまう。
【0013】
しかるに、本発明の筐体では、図1に示すように、侵入口である開放面11側の底部13には切欠き部12が設けてある。この切欠き部12の存在故に、筐体10内に侵入した動物は、その後ろ足が切欠き部12に存する状態、すなわち後ろ足が地面に触れている状態でも、身体全体が筐体10内に入ってしまう。かかる状態で開放面11を扉で閉めれば、もはや捕獲された動物は筐体10外に脱出することができなくなるのである。
【0014】
かように本発明によれば警戒心が強い野生動物でも効率的に捕獲することが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の斜視図
図2】底部の正面図
図3】側部あるいは天部の正面図
図4】後部の正面図
図5】扉の斜視図
図6】他の実施形態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい本発明の構成要素の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。なお、図中Fは前方を、Bは後方を、Uは上方を、Dは下方を、Rは右方を、Lは左方を指すものである。
【0017】
図1において10は本願にかかる筐体であって、この筐体10は底部13、左側部14、右側部15、天部16及び後部17より成るものである。
【0018】
図2は底部13を示すものである。底部13は、複数の鋼材30・・を格子状に組成したものである。
【0019】
底部13の前方には、鋼材30を短くすることで切欠き部12が現れるよう構成されている。この切欠き部12の形状は図示される円弧状の他、略コ字状や多角形状その他筐体10の中に侵入したイノシシの後ろ足が地面に触れる形状であれば任意の形状を採用できる。
【0020】
底部13の前方には金属製の板材20,20が、後方には金属製の板材21が設けられており、鋼材30と溶接その他方法で固定されている。
【0021】
図3は左側部14あるいは右側部15あるいは天部16を示すものである。左側部14、右側部15、天部16はそれぞれ複数の鋼材30・・を格子状に組成したものである。
【0022】
左側部14、右側部15、天部16それぞれの前方には金属製の板材22が、後方には金属製の板材23が設けられており、鋼材30と溶接その他方法で固定されている。
【0023】
図4は後部17を示すものである。後部17は複数の鋼材30・・を格子状に組成したものである。
【0024】
後部17の左右端には金属製の板材24が、上下端には金属製の板材25が設けられており、鋼材30と溶接その他方法で固定されている。
【0025】
底部13、左側部14、右側部15、天部16及び後部17は、それぞれの縁部同士を金属製のリングで連結して組み立て、筐体10を形成しても構わないし、それぞれの板材同士を溶接して筐体10を形成しても構わない。
【0026】
上記の実施形態はむろん一例であり、枠体で骨組みを形成し、該枠体に鋼材を格子状に溶接することで箱罠状の筐体を形成しても構わない。
【0027】
また、図1においては侵入口である開放面11に扉が記載されていないが、使用時には開放面11を閉鎖可能な扉が設置されるものである。例えば開放面11に沿って上下方向に移動することで開放面11を閉鎖可能な扉を設け、該扉を侵入したイノシシ等が餌を引っ張ったり踏み板を踏むとと係止状態が解放され扉が落下し開放11を閉鎖するといったものである。
【0028】
あるいは、図6に示すように開放面11に筐体10の内部側には揺動可能であるが、外部側には揺動出来ない扉40を設け、イノシシが自ら扉を押して侵入することは可能であるが、いったん筐体10の内部に侵入し、扉が閉じると脱出できない形態の扉40を設けることも可能である。係る形態の扉40は、イノシシは自らこじ開けて侵入する場合には、警戒心が低減することから、より捕獲効率が高まるものである。
【0029】
図5は上記扉40を示すものであり、板材26で形成した方形の枠体に鋼材30・・を格子状に溶接したものである。左右の板材26,26には円柱状の揺動軸41,41が設けてある。この揺動軸41は、図6における要部拡大図に示すように左右の板材22,22にそれぞれ設けられた係止凸部22a,22aの孔部22b,22bに回転自在に嵌まり込むものである。かかる構成ゆえに扉40は揺動自在となるものである。
【0030】
図6に示すように左右の板材22,22には、それぞれ邪魔板22aが設けられており、扉41に当接することで、扉40が筐体10の内部側には揺動可能であるが、外部側には揺動出来ない構造となっている。
【符号の説明】
【0031】
10・・筐体
11・・開放面
12・・切欠き部
13・・底部
14・・左側部
15・・右側部
16・・天部
17・・後部
30・・鋼材
図1
図2
図3
図4
図5
図6