(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-06
(54)【発明の名称】野生動物の捕獲装置
(51)【国際特許分類】
A01M 23/18 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A01M23/18
(21)【出願番号】P 2019177114
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-09-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】平成31年度農林水産省「野生鳥獣被害拡大への対応技術の開発委託事業」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】391024722
【氏名又は名称】タイガー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】江口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】赤井 克己
(72)【発明者】
【氏名】小林 一木
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-110897(JP,A)
【文献】特開2018-000153(JP,A)
【文献】特開2016-093139(JP,A)
【文献】特開2014-204707(JP,A)
【文献】登録実用新案第3133079(JP,U)
【文献】特開2004-229559(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188488(JP,U)
【文献】実開昭62-094783(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
檻体に侵入開口部が形成され、該檻体に該侵入開口部を開閉可能な扉体が形成された野生動物の動物捕獲装置において、
扉体を、その上端を支点として、檻体に対して揺動可能に設けたこと、
扉体が檻体内部方向に対して揺動すると
後記クリップを弾き飛ばすことで後記紐材の後記トリガー部材への固定が解放されることで作動すると共に、後記紐材と連結された後記板材が回動することで後記ストッパ部材に該板材が当接し、もって該板材により前記扉体が檻体外部方向に対して揺動出来なくする閉塞機構を設けたこと、
該閉塞機構を、檻体の侵入開口部外側に回動可能に取り付けられた板材と、檻体の侵入開口部外側に設けられ、上記板材の回動を板材が扉体の揺動を止める位置で抑止するストッパ部材と、ブラケットと挟持板と緊締具とクリップとにより成るトリガー部材と、トリガー部材と板材とを連結する紐材とで構成したこと、
上記閉塞機構を構成するトリガー部材を任意高さに設置可能にしたこと、
を特徴とする野生動物の動物捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有害動物の捕獲装置に関し、特に目的とする大きな個体だけを確実に捕獲することを目的とした野生動物の捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な野生のイノシシや鹿等の有害動物捕獲装置は、捕獲檻体に侵入開口部が形成され、捕獲檻体に侵入開口部を開閉可能な落戸体が昇降自在に設けられ、侵入開口部を介して捕獲檻体内に動物が侵入したとき侵入開口部を閉塞すべく落戸体を落下させる作動機構を設けた構造のものが一般的である。
【0003】
上記一般的な捕獲装置では、捕獲目的獣の体格にかかわらず、すべての個体が捕獲される。
【0004】
ところが、有害動物の捕獲作業においては、小さな個体の捕獲は避けて、大きな個体だけを捕獲することが行われることがあるが、上記捕獲装置では、かかる要請に対応することができない。
【0005】
そこで、特許文献1に記載されるような、捕獲システムが提案されている。この野生動物捕獲システムは、囲いワナの内部や周辺を撮影できる現場側の監視カメラと、その撮影画像を遠く離れた監視者側に表示する表示装置と、その監視者側と現場側との無線通信可能なトランシーバと備えており、その表示装置を監視しながら、囲いワナ内へ目的とする大きな個体の野生動物が侵入した時に、監視者が無線通信での遠隔操作を行って、囲いワナの閉塞部を作動させることができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に記載の発明は、常時監視する必要があり、実用性の点で問題がある。本発明は、監視する必要もなく、しかも簡易な構造で目的とする大きな個体だけを確実に捕獲することが可能な動物捕獲装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0009】
(1) 請求項1に記載の発明は、檻体に侵入開口部が形成され、該檻体に該侵入開口部を開閉可能な扉体が形成された野生動物の動物捕獲装置において、扉体を、その上端を支点として、檻体に対して揺動可能に設け、扉体が檻体内部方向に対して揺動すると作動し、扉体が檻体外部方向に対して揺動出来なくする閉塞機構を設け、上記閉塞機構を構成するトリガー部材を任意高さに設置可能に構成した。
【0010】
(2) 請求項2に記載の発明は、請求項1記載の野生動物の動物捕獲装置において、閉塞機構を、檻体の侵入開口部外側に回動可能に取り付けられた板材と、檻体の侵入開口部外側に設けられ、上記板材の回動を、板材が扉体の揺動を止める位置で、抑止するストッパ部材と、ブラケットと挟持板と緊締具とクリップとにより成るトリガー部材と、トリガー部材と板材とを連結する紐材とにより構成した。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。なお、各図におけるUとは上方を、Dは下方を、Rは右方向を、Lは左方向を意味するものである。
【0012】
本発明においては、
図4に示すように扉体20は、檻体10の侵入開口部50に対して揺動可能に取り付けられている。そして扉体20が揺動し、トリガー部材40に接触すると閉塞機構30が作動し、扉体20の檻体10外部に向けた揺動、
図4でいえば侵入開口部50を超えて左側に揺動することが抑止される。
【0013】
しかも、トリガー部材40の檻体10への取り付け高さは任意に設定できることから、扉体20が揺動しトリガー部材40と接触する際の、扉体20と地面GLまでの高さH1を任意に設定できることになる。かかる構造故に本発明によれば、小さな個体の捕獲は避けて、大きな個体だけを捕獲することが可能となるのである。
【0014】
すなわち、檻体10内に侵入してくる動物の足元から頭頂までの高さがH1より低ければ、扉体20は高さH1に至るまで揺動せず、トリガー部材40に接触せず閉塞機構は作動しない。つまり檻体10内に侵入した動物であっても、扉体20を檻体10外に揺動させることで檻体10外に脱出することが可能となる。
【0015】
他方で檻体10内に侵入してくる動物の足元から頭頂までの高さがH1より高ければ、扉体20はトリガー部材40に接触し、閉塞機構が作動し動物は檻体10内に閉じ込められることになる。
【0016】
かように捕獲したい個体の大きさに応じてトリガー部材40の取り付け位置を変えることで、捕獲したい大きさの動物のみを捕獲することが可能となるのである。
【0017】
また、本発明によれば、扉体20を揺動させるという構造故に、捕獲効率が高まるという効果も有するものである。すなわち本件発明者が動物の捕獲効率について鋭意研究してきた結果、野生動物は自らの動作で扉を開ければ、箱罠等の檻体内に警戒心少なく侵入するという知見を得た。これに対し、従来一般的な侵入開口部を閉める扉を侵入開口部から上部に向けて引き上げておき、檻体内に侵入した動物がトリガー部材に触れることで、扉を落下させるという箱罠では、上方高くに存する扉に圧迫され、しかも自らの動作で扉を開けるという動作もないため、野生動物は警戒してに檻体内には容易には侵入しないのである。
【0018】
本発明によれば、動物は自ら扉体20を押すことで揺動させ、檻体10内に侵入することから、警戒心を抱くことが少なくなり、捕獲効率が高まるのである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好ましい本発明の構成要素の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。
【0021】
本発明にかかる動物捕獲装置1は、檻体10、扉体20及び閉塞機構30を主な構成要素とする。
【0022】
檻体10は、
図1や
図2に示すように、底部11、左側部12、右側部13、天部14及び後部15より成るものである。
【0023】
底部11、左側部12、右側部13、天部14及び後部15は、それぞれ複数の鋼材60・・を枠材16に溶接して、格子状に組成したものである。
【0024】
檻体10の侵入開口部50には、扉体20が、枠材16に取り付けられた揺動軸21を中心に、揺動可能に取り付けられている。
【0025】
扉体20は
図1乃至
図4に示すように、侵入開口部50の下部を開閉する形態で取り付けてある。むろんこれは一例であり、侵入開口部50全体を開閉する形態で取り付けても構わない。あるいは上下二段に分け、上段の扉体は檻体10の上部に揺動可能に取り付け、下段の扉体を上段の扉体に対して揺動可能に取り付けてもよい。
【0026】
扉体20は複数の鋼材60・・を枠材22に溶接して、格子状に組成したものである。
【0027】
請求項2に記載の発明において、閉塞機構30は、檻体10の侵入開口部50の外側に回動可能に取り付けられた板材31と、檻体10の侵入開口部50の外側に設けられ、上記板材31の回動を、板材31が扉体20の揺動を止める位置で、抑止するストッパ部材33と、ブラケット41と挟持板42と緊締具43とクリップ44とにより成るトリガー部材40と、トリガー部材40と板材31とを連結する紐材70とにより構成した。
【0028】
図5及び
図6はトリガー部材40を示すものである。トリガー部材40は檻体10を構成する鋼材60を挟持することで、檻体10に取り付けるものである。
【0029】
具体的には
図6に示すように、ブラケット41と挟持板42とで鋼材60を挟み、緊締具43で固定するものである。ここに緊締具43は蝶ねじ43aとナット43bとにより成るものである。この際、鋼材60はブラケット41に設けた上部孔41aと下部孔41bとの間、挟持板42に設けた上部孔42aと下部孔42bとの間に位置せしめ、上部孔41aと上部孔42a、下部孔41bと下部孔42bに蝶ねじ43a,43aを貫通させて固定するものである。この際、鋼材60はどの高さのものでも選択可能であることから、トリガー部材40の取り付け高さは任意に設定することが可能となるのである。
【0030】
上記のようにして鋼材60に固定されたトリガー部材40のブラケット41上部に、
図6に示すように、クリップ44を用いて紐材70を固定するものである。このクリップ44に扉体20が接触することで、クリップ44が弾き飛ばされ、これにより紐材70のトリガー部材40への固定が解放されるものである。
【0031】
紐材70のトリガー部材40への固定が解放されると、閉塞機構30を構成する板材31が回動し、扉体20の檻体10の外部への揺動が抑止される。すなわち
図3に示すように、板材31は枠材16に設けられた回動軸32を中心に回動可能なものであり、
図3に示す板材31を上方に回動させ、板材31が扉体20の檻体20の外部への揺動を妨げていない状態で紐材70を介してトリガー部材40と板材31を連結しておく。かかる状態から紐材70のトリガー部材40への固定が解放されると、板材31は下方に回動し、ストッパ部材33に当接することで回動が抑止される。かかる状態では、扉体20の檻体10の外側に向かった揺動が止められるものである。
【0032】
図1、
図2はトリガー部材40を、檻体10を構成する右側部13に取り付けた状態を示すものである。
【0033】
図1においてはトリガー部材40に紐材70の一方端が固定され、該紐材70の他方端は板材31に固定されている。かかる状態は、動物の侵入を待っている段階である。
【0034】
これに対し
図2はトリガー部材40のブラケット41からクリップ44が弾き飛ばされた状態を示すものであり、紐材70の一方端はフリーになり、他方端は板材31に固定されている状態を示すものである。これは動物が檻体10内に侵入し、閉塞機構30が作動して動物(不図示)が捕獲された状態を示すものである。この状態では、紐材70の一方端がブラケット41に固定されていないことから、板材31が自重で回動軸32を中心に回動し、ストッパ部材33で止められ、扉体20の檻体10の外側への揺動が抑止されるものである。
【符号の説明】
【0035】
10・・檻体
20・・扉体
21・・揺動軸
22・・枠材
30・・閉塞機構
31・・板材
32・・回動軸
33・・ストッパ部材
40・・トリガー部材
41・・ブラケット
42・・挟持板
43・・緊締具
44・・クリップ
50・・侵入開口部
60・・鋼材
70・・紐材