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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 17/04 20060101AFI20231128BHJP
   A47C 20/04 20060101ALI20231128BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20231128BHJP
   A61G 7/008 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
A47C17/04 C
A47C20/04 B
A47C27/00 E
A61G7/008
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019187812
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021061981
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】若林 尚之
(72)【発明者】
【氏名】田中 史記
(72)【発明者】
【氏名】杉本 潤
(72)【発明者】
【氏名】平田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】大村 優華
(72)【発明者】
【氏名】日下部 華苗
【審査官】五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-084010(JP,A)
【文献】特開2002-360641(JP,A)
【文献】特開2005-261455(JP,A)
【文献】特表2008-529651(JP,A)
【文献】特開2010-125280(JP,A)
【文献】実開昭52-160501(JP,U)
【文献】実開平05-041534(JP,U)
【文献】実開平06-075460(JP,U)
【文献】米国特許第05699566(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0262635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 17/00-23/34
A61G 7/00ー 7/16
A47C 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能な可動板と、前記可動板を回動させるためのアクチュエータとを含む可動部と、
前記可動部の上方に設けられた第1マットレス部と、前記第1マットレス部と別体に設けられ、平面視において前記第1マットレス部を囲むように配置され回動しないように構成されている第2マットレス部とを含む、マットレス本体とを備え、
前記第1マットレス部は、前記可動部により所定の回動軸線回りに上方に回動されるように構成されるとともに、
回動する前記第1マットレス部の回動前においては、回動しない前記第2マットレス部の上表面と前記第1マットレス部の上表面とは面一になるように構成されている、マットレス。
【請求項2】
前記マットレス本体は、短手方向と長手方向とを有する矩形形状を有し、
前記第2マットレス部は、平面視において前記第1マットレス部を挟むように前記マットレス本体の短手方向の両端側に配置されている、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記可動板は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、
前記可動板は、平面視において前記可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して傾斜する回動中心軸を有している、請求項1または2のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項4】
前記可動板は、第1回動中心軸と第2回動中心軸とを含み、
前記第1回動中心軸は、平面視において、前記可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して一方方向に傾斜し、
前記第2回動中心軸は、平面視において、前記可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して他方方向に傾斜している、請求項1~のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記第1回動中心軸は、平面視において前記中心線に対して一方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜し、
前記第2回動中心軸は、平面視において前記中心線に対して他方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜している、請求項に記載のマットレス。
【請求項6】
前記可動板は、第1板状部材と、
前記第1板状部材の下方に配置され、前記第1板状部材が前記第1回動中心軸により回動可能に接続された第2板状部材とを有している、請求項またはに記載のマットレス。
【請求項7】
前記第2板状部材の下方に配置され、前記第2板状部材が前記第1回動中心軸と異なる前記第2回動中心軸により回動可能に接続された第3板状部材をさらに有し、
前記第1板状部材、前記第2板状部材、および前記第3板状部材は、平面視において、重なるように配置されている、請求項に記載のマットレス。
【請求項8】
前記第1マットレス部は、前記マットレス本体の短手方向の中心を通る、前記マットレス本体の長手方向に延びる中心線上に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項9】
前記第1マットレス部は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、
前記第1マットレス部の長手方向の長さは、前記マットレス本体の長手方向の長さの半分以下であり、前記第1マットレス部は、前記マットレス本体の長手方向における人の頭部が載置される側に配置されている、請求項1~のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項10】
前記第1マットレス部は、短手方向の最大長さが前記マットレス本体の短手方向の長さの3分の2以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項11】
前記第1マットレス部は、短手方向の最大長さが200mm以上450mm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項12】
前記アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋を含み、
前記可動板は、前記第1膨張収縮袋への気体の給気および排気により回動する角度が調整されるように構成されている、請求項1~11のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項13】
前記第1マットレス部の最大傾斜角度は、水平面に対して20度以上60度以下である、請求項12に記載のマットレス。
【請求項14】
前記可動板の回動する角度を測定する角度センサと、
前記第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記角度センサで測定された角度に基づいて前記第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御するように構成されている、請求項12または13に記載のマットレス。
【請求項15】
前記第1膨張収縮袋内の圧力を測定する圧力センサと、
前記第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記圧力センサにより測定された前記第1膨張収縮袋内の圧力が所定の上限値を上回った場合に、前記第1膨張収縮袋への気体の給気を停止させるとともに、前記圧力センサにより測定された前記第1膨張収縮袋内の圧力が所定の下限値を下回った場合に、前記第1膨張収縮袋からの気体の排気を停止させる制御を行うように構成されている、請求項1214のうちいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項16】
気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋をさらに備え、
前記第2膨張収縮袋は、前記マットレス本体の長手方向における人の足が載置される側に前記第1マットレス部に対して隣接して配置されるとともに、前記第2マットレス部の下方に設けられ、前記第1マットレス部の回動時に給気されるように構成されている、請求項1~15のいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項17】
回動可能な可動板と、前記可動板を回動させるためのアクチュエータとを含む可動部と、前記可動部の上方に設けられた第1マットレス部と、前記第1マットレス部と別体に設けられ、平面視において前記第1マットレス部を囲むように配置され回動しないように構成されている第2マットレス部とを含む、マットレス本体とを備え、回動する前記第1マットレス部の回動前においては、回動しない前記第2マットレス部の上表面と前記第1マットレス部の上表面とは面一になるように構成されている、マットレスの回動方法であって、
前記アクチュエータにより前記可動板を回動し、前記第1マットレス部を回動させる、マットレスの回動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットレスに関し、特に人の体位の変換が可能なマットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人の体位の変換が可能なマットレスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、マットレスが載置される床面を側方に傾斜させる傾斜機構を備えた可動ベッドが開示されている。特許文献1のベッドでは、傾斜機構によってマットレス全体を傾斜させることにより、人を傾斜させて体位の変換が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-310668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のマットレスでは、マットレス全体を傾斜させて人の体位を変換するため、マットレス上の人が傾斜されたマットレスに沿って滑り落ちやすいという不都合がある。このため、体位の変換が行いにくいという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、マットレスを傾斜させた場合に人が滑り落ちることを抑制して、体位の変換を容易に行うことが可能なマットレスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面によるマットレスは、回動可能な可動板と、可動板を回動させるためのアクチュエータとを含む可動部と、可動部の上方に設けられた第1マットレス部と、第1マットレス部と別体に設けられ、平面視において第1マットレス部を囲むように配置され回動しないように構成されている第2マットレス部とを含む、マットレス本体とを備え、第1マットレス部は、可動部により所定の回動軸線回りに上方に回動されるように構成されるとともに、回動する第1マットレス部の回動前においては、回動しない第2マットレス部の上表面と第1マットレス部の上表面とは面一になるように構成されている。
【0008】
この発明の第1の局面によるマットレスでは、第2マットレス部に囲まれて配置された第1マットレス部が可動部により所定の回動軸線回りに上方に回動されるように構成されている。これにより、第1マットレス部だけを回動させることにより、人を傾斜させた場合に、回動しない水平の第2マットレス部により人を支持することができるので、第1マットレス部の傾斜に沿って人が滑り落ちることを抑制することができる。その結果、人が滑り落ちることを抑制することができるので、体位の変換を容易に行うことができる。また、マットレス全体を回動させる場合と異なり、マットレスの上下動(上下移動量)が大きくなることを抑制することができるので、横たわっている人および周囲の人に不安感が生じることを抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、マットレス本体は、短手方向と長手方向とを有する矩形形状を有し、第2マットレス部は、平面視において第1マットレス部を挟むようにマットレス本体の短手方向の両端側に配置されている。このように構成すれば、マットレス本体の短手方向の両端に第2マットレス部を配置することができる。これにより、第1マットレス部がマットレス本体の短手方向の一方端側または他方端側のいずれの方向に回動した場合でも回動しない水平の第2マットレス部により人の一部を支持することができるので、平面視の左右どちらでも体位変換が可能となる。
また、第2マットレス部は、回動しないように構成されている。これにより、第1マットレス部を回動させたときに第2マットレス部が水平に維持されて回動しないので、体位を変換させる際の体を支持するスペースを確保することができる。
【0011】
上記第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、可動板は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、可動板は、平面視において可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して傾斜する回動中心軸を有している。このように構成すれば、回動中心軸が平面視において可動板の長手方向に延びる中心線に対して傾斜しているので、可動板を長手方向に延びる中心線に対して斜めに回動させることができる。
【0012】
上記第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、可動板は、第1回動中心軸と第2回動中心軸とを含み、第1回動中心軸は、平面視において、可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して一方方向に傾斜し、第2回動中心軸は、平面視において、可動板の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線に対して他方方向に傾斜している。このように構成すれば、第1回動中心軸または第2回動中心軸は平面視において可動板の長手方向に延びる中心線に対して一方方向または他方方向に傾斜しているので、人を可動板の長手方向に沿って第1マットレス部に横たえたときに、平面視で傾斜した第1回動中心軸または第2回動中心軸周りに回動させることにより、人を前に傾斜させながら横に傾斜させることができる。これにより、人の肩の位置を腰の位置よりも高くすることができるので、左右いずれの方向に回動させた場合でも体位の変換を容易に行うことができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第1回動中心軸は、平面視において中心線に対して一方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜し、第2回動中心軸は、平面視において中心線に対して他方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜している。このように構成すれば、傾斜角を10度以上15度以下にすることにより、人を適度に前に傾斜させながら横に傾斜させることができる。
【0014】
上記可動板が、第1回動中心軸と第2回動中心軸とを含む構成において、好ましくは、可動板は、第1板状部材と、第1板状部材の下方に配置され、第1板状部材が第1回動中心軸により回動可能に接続された第2板状部材とを有している。このように構成すれば、第1板状部材または第2板状部材の一方をマットレス本体が載置される部材に固定し、他方を第1マットレス部に固定させることができる。この結果、第2板状部材を基準として第1板状部材を回動させることができる。
【0015】
この場合、好ましくは、第2板状部材の下方に配置され、第2板状部材が第1回動中心軸と異なる第2回動中心軸により回動可能に接続された第3板状部材をさらに有し、第1板状部材、第2板状部材、および第3板状部材は、平面視において、重なるように配置されている。このように構成すれば、第1板状部材と第2板状部材との回動する方向を異ならせることができるので、たとえば、人の体位を左右両方に変換させることができる。また、平面視において、第1板状部材、第2板状部材、および第3板状部材が重なるように配置されていることにより、可動板を配置する平面視におけるスペースを小さくすることができる。
【0016】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、第1マットレス部は、マットレス本体の短手方向の中心を通る、マットレス本体の長手方向に延びる中心線上に配置されている。このように構成すれば、第1マットレス部を人の中心線上に配置させることができるので、第1マットレス部が背骨に沿って人を押し上げて、体位を変換させることができる。その結果、たとえば、脇腹のような人の側部を押し上げる場合と比べて、容易に体位を変換させることができる。
【0017】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、第1マットレス部は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、第1マットレス部の長手方向の長さは、マットレス本体の長手方向の長さの半分以下であり、第1マットレス部は、マットレス本体の長手方向における人の頭部が載置される側に配置されている。このように構成すれば、たとえば、人の上体を起こす背上げ機能が付いているベッドに用いた場合に、第1マットレス部が背上げ機能により折れ曲がる位置にまたがって配置されることを抑制することができる。
【0018】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、第1マットレス部は、短手方向の最大長さがマットレス本体の短手方向の長さの3分の2以下である。このように構成すれば、第2マットレス部の短手方向の長さが3分の1以上となるため、第2マットレス部の長さを十分確保することができる。その結果、体位を変換させるためのスペースを確保することができる。
【0019】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、第1マットレス部は、短手方向の最大長さが200mm以上450mm以下である。このように構成すれば、短手方向の最大長さを200mm以上とすることにより、第1マットレス部の短手方向の長さを十分に確保することができるので、個体差がある場合でも人を回動させることができる。また、短手方向の最大長さを450mm以下とすることにより、第1マットレス部の短手方向の長さが人の肩幅よりも大きくなることを抑制することができるため、第1マットレス部から人が滑り落ちることを抑制することができる。
【0020】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、アクチュエータは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋を含み、可動板は、第1膨張収縮袋への気体の給気および排気により回動する角度が調整されるように構成されている。このように構成すれば、気体の給気および排気によって回動角度を調整することができるので、マットレスの構成を簡素化することができる。
【0021】
この場合、好ましくは、第1マットレス部の最大傾斜角度は、水平面に対して20度以上60度以下である。このように構成すれば、第1マットレス部の最大傾斜角度を60度以下にすることにより回動角度が過度に大きくなることを抑制することができる。また、第1マットレス部の最大傾斜角度を20度以上にすることにより、十分に人を傾けることができるので、体位の変換を行う場合に作業が容易となる。
【0022】
上記アクチュエータが第1膨張収縮袋を含む構成において、好ましくは、可動板の回動する角度を測定する角度センサと、第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御する制御部とをさらに備え、制御部は、角度センサで測定された角度に基づいて第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御するように構成されている。このように構成すれば、第1マットレス部が所定の角度になった場合に給気を停止させることができるため、所定の角度以上になることを抑制することができる。また、第1マットレス部が所定の角度になった場合に排気を停止させることができるので、所定角度をたとえば0度に設定することにより第1マットレス部が水平状態に戻ったときに排気を停止させることができる。
【0023】
上記アクチュエータが第1膨張収縮袋を含む構成において、好ましくは、第1膨張収縮袋内の圧力を測定する圧力センサと、第1膨張収縮袋への空気の供給および排気を制御する制御部とをさらに備え、制御部は、圧力センサにより測定された第1膨張収縮袋内の圧力が所定の上限値を上回った場合に、第1膨張収縮袋への気体の給気を停止させるとともに、圧力センサにより測定された第1膨張収縮袋内の圧力が所定の下限値を下回った場合に、第1膨張収縮袋からの気体の排気を停止させる制御を行うように構成されている。このように構成すれば、第1マットレス部が所定の圧力になった場合に給気を停止させて第1膨張収縮袋の過度な膨張を抑制することができるとともに、圧力が所定の下限値を下回った場合に第1マットレス部の排気を停止させることにより、第1マットレス部の回動を停止させることができる。
【0024】
この発明の第1の局面によるマットレスにおいて、好ましくは、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋をさらに備え、第2膨張収縮袋は、マットレス本体の長手方向における人の足が載置される側に第1マットレス部に対して隣接して配置されるとともに、第2マットレス部の下方に設けられ、第1マットレス部の回動時に給気されるように構成されている。このように構成すれば、第1マットレス部と第2マットレス部との間に段差が生じることを抑制することができるので、腰付近が沈みこんで横たわっている人に違和感が生じることを抑制することができる。また、第2マットレス部が第1マットレス部との間に段差が生じることを抑制することにより、横たわっている人の沈み込んでいる体の一部に集中して力がかかることを抑制することができるので、褥瘡(床ずれ)が発生することを抑制することができる。
【0025】
この発明の第2の局面によるマットレスの回動方法は、回動可能な可動板と、可動板を回動させるためのアクチュエータとを含む可動部と、可動部の上方に設けられた第1マットレス部と、第1マットレス部と別体に設けられ、平面視において第1マットレス部を囲むように配置され回動しないように構成されている第2マットレス部とを含む、マットレス本体とを備え、回動する第1マットレス部の回動前においては、回動しない第2マットレス部の上表面と第1マットレス部の上表面とは面一になるように構成されている、マットレスの回動方法であって、アクチュエータにより可動板を回動し、第1マットレス部を回動させる。
【0026】
この発明の第2の局面によるマットレスの回動方法では、上記の通り、アクチュエータにより可動板を回動し、第1マットレス部を回動させる。これにより、第1マットレス部だけを回動させることにより、人を傾斜させた場合に、回動しない水平の第2マットレス部により人を支持することができるので、第1マットレス部の傾斜に沿って人が滑り落ちることを抑制することができる。その結果、人が滑り落ちることを抑制することができるので、体位の変換を容易に行うことができる。また、マットレス全体を回動させる場合と異なり、マットレスの上下動(上下移動量)が大きくなることを抑制することができるので、横たわっている人および周囲の人に不安感が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、傾斜させた場合に人が滑り落ちることを抑制して、体位の変換を容易に行うことが可能なマットレスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態によるマットレスの構成を示す図である。
図2】第1実施形態によるマットレス本体に人が横たわっている状態を示す図である。
図3】第1実施形態による可動板が折りたたまれた状態を示す模式図である。
図4】第1実施形態による流路のブロック図である。
図5】第1実施形態による操作部の一例を示す図である。
図6】第1実施形態による気体を供給する流路を説明するための図である。
図7】第1実施形態による気体を排気する流路を説明するための図である。
図8】第1実施形態によるマットレス本体を示す図である。
図9】第1実施形態による可動板の構成について説明するための図である。
図10】第1実施形態による第1マットレス部を一方方向に傾けた様子を示す模式図である。
図11】第1実施形態による第1マットレス部を他方方向に傾けた様子を示す模式図である。
図12】第1実施形態による可動板の第1回動中心軸および第2回動中心軸を説明するための図である。
図13】第1実施形態の第1のマットレス部の回動処理を説明するためのフローチャート図である。
図14】第2実施形態によるマットレス本体の模式図である。
図15】気体を供給する流路の変形例を説明するための図である。
図16】気体を排気する流路の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
[第1実施形態]
図1図12を参照して、本発明の第1実施形態による構成について説明する。
【0031】
第1実施形態におけるマットレス100は、図1に示すように、可動部1と、マットレス本体2とを備えている。
【0032】
図2に示すように、第1実施形態におけるマットレス100は、マットレス本体2に人50が横たわる。また、マットレス100は、マットレス本体2に横たわっている人50の体位の変換または着衣の交換ができるように、第1マットレス部21が回動する機能を有している。
【0033】
図3に示すように、可動部1は、可動板11とアクチュエータ12とを含む。可動板11は、第1板状部材110、第2板状部材111、および第3板状部材112を有する。アクチュエータ12は、第1膨張収縮袋120を含む。
【0034】
第1板状部材110、第2板状部材111および第3板状部材112は、ハニカム構造体と、ハニカム構造体を挟み込む一対のアルミニウム材とを含む板状の部材を含む。なお、板状部材は、厚さに比べて、平面上に十分に大きい長さを有する外形形状の部材であればよい。
【0035】
第1膨張収縮袋120は、気体(空気)の給気および排気により、膨張および収縮されるように構成されている。なお、給気および排気される気体は、酸素、二酸化炭素、窒素および水蒸気でもよいし、ヘリウム、ネオンおよびアルゴンなどの希ガスでもよい。また、給気および排気される気体は、上記の気体の混合気体でもよい。
【0036】
第1実施形態のアクチュエータ12は、第1膨張収縮袋120を複数備えている。膨張または収縮させる第1膨張収縮袋120(第1膨張収縮袋120a、第1膨張収縮袋120b)を変更することにより、可動板11の回動する方向が変更される。可動板11の回動については、詳細は後述する。
【0037】
図3に示すように、マットレス本体2は、可動部1の上方に配置される第1マットレス部21と、第1マットレス部21と別体に設けられ、第1マットレス部21を囲むように配置された第2マットレス部22とを含む。第1マットレス部21は、可動部1により所定の回動軸線回りに上方に回動される。第2マットレス部22は、回動しないように構成されている。マットレス本体2の具体的な構成は後述する。
【0038】
図1および図4に示すように、第1実施形態におけるマットレス100は、制御部3と、角度センサ4と、圧力センサ5と、操作部6と、ポンプ7と、流路切替手段8とをさらに備える。
【0039】
制御部3は、操作部6から信号を受信することが可能に構成されている。制御部3は、操作部6からの操作を受け付けるとともに、第1膨張収縮袋120への気体の供給および排気を制御するように構成されている。操作部6からの操作に基づき、制御部3は、流路切替手段8を制御し、気体を供給または排気する第1膨張収縮袋120への流路を切り替える。
【0040】
制御部3は、ポンプ7を制御して、第1膨張収縮袋120を膨張および収縮させ、第1板状部材110、第2板状部材111および第3板状部材112を回動軸線回りに回動させるように構成されている。第1実施形態では、第1膨張収縮袋120は、第1板状部材110と第2板状部材111との間に設けられる第1膨張収縮袋120aと、第2板状部材111と第3板状部材112との間に設けられる第1膨張収縮袋120bとを含む。
【0041】
角度センサ4は、第1板状部材110に設けられる。角度センサ4は、可動板11の回動する角度を測定するための多軸のセンサである。角度センサ4は制御部3に接続されており、角度センサ4は、測定した可動板11の傾斜角を制御部3に送信するように構成されている。可動板11の回動する角度は、操作部6を介して入力される。角度センサ4は、測定した角度を制御部3に送信する。制御部3は、受信した角度が所定の角度になった場合に、ポンプ7を制御して、第1膨張収縮袋120への気体の供給を停止する。
【0042】
圧力センサ5は、第1膨張収縮袋120aおよび第1膨張収縮袋120bにそれぞれ設けられる。圧力センサ5は、第1膨張収縮袋120内の圧力を測定するためのセンサである。圧力センサ5は、制御部3に接続されており、圧力の測定結果を制御部3に送信するように構成されている。
【0043】
図5に示すように、操作部6は、可動板11を回動させて第1マットレス部21を回動させるために用いられる。図5では、操作部6は、給気および排気を操作するスイッチを含む押圧式のスイッチを示す。たとえば、右の給気または排気ボタンを押すことにより、第1膨張収縮袋120aが膨張または収縮し、左の給気または排気ボタンを押すことにより、第1膨張収縮袋120bが膨張または収縮する。なお、操作部6は、回転式のスイッチ、フットスイッチなどでもよい。操作部6によって受け付けられた操作は、制御部3に送信される。
【0044】
操作部6は、第1膨張収縮袋120の圧力の上限値と下限値とを設定するために使用される。第1膨張収縮袋120の圧力の上限値は、たとえば、大気圧(約100kPa)よりも50kPa高い150kPaに設定される。また、第1膨張収縮袋120の圧力の下限値は、負圧の値であり、たとえば、大気圧(約100kPa)よりも20kPa低い80kPaに設定される。
【0045】
ポンプ7は、第1膨張収縮袋120への気体(空気)の給気および排気を行うように構成されている。たとえば、ポンプ7はダイアフラムポンプである。
【0046】
第1膨張収縮袋120に、ポンプ7から気体が供給される場合、制御部3は、圧力センサ5から受信した圧力の値が、上限値を超えた場合、ポンプ7を制御し、気体の供給を停止させる制御を行う。第1膨張収縮袋120に、ポンプ7により第1膨張収縮袋120から空気が排気される場合、制御部3は、圧力センサ5から受信した圧力が、下限値を超えた場合、ポンプ7を制御し、気体の排気を停止させる制御を行う。
【0047】
流路切替手段8は、第1膨張収縮袋120への気体(空気)の給気および排気を行うための流路の切り替えを行うように構成されている。流路切替手段8は、電磁弁を含み、制御部3に接続されている。
【0048】
図6および図7に示すように、給気用のポンプ7と第1膨張収縮袋120とを結ぶ流路には、給気用の電磁弁8aおよび電磁弁8cが設けられる。また、第1膨張収縮袋120から排気する流路には、排気用の電磁弁8bおよび電磁弁8dが設けられる。図6では、給気時の空気の流れを実線で表す。たとえば、第1膨張収縮袋120aに給気をする場合、制御部3は、電磁弁8aを開き、電磁弁8b、電磁弁8cおよび電磁弁8dを閉じる制御を行う。これにより、ポンプ7から気体が第1膨張収縮袋120aに給気される。また、第1膨張収縮袋120bに給気をする場合、制御部3は、電磁弁8cを開き、電磁弁8a、電磁弁8bおよび電磁弁8dを閉じる制御を行う。これにより、ポンプ7から気体が第1膨張収縮袋120bに給気される。
【0049】
図7では、排気時の空気の流れを破線で表す。たとえば、第1膨張収縮袋120aから排気をする場合、制御部3は、電磁弁8bを開き、電磁弁8a、電磁弁8cおよび電磁弁8dを閉じる制御を行う。これにより、第1膨張収縮袋120aから気体が排気される。また、第1膨張収縮袋120bから排気をする場合、制御部3は、電磁弁8dを開き、電磁弁8a、電磁弁8bおよび電磁弁8cを閉じる制御を行う。これにより、第1膨張収縮袋120bから気体が排気される。
【0050】
(マットレス本体の構成)
図2および図8に示すように、マットレス本体2は、短手方向と長手方向とを有する矩形形状であり、本実施形態では、長方形である。マットレス本体2の長手方向は、人50が横たわったときの頭足方向であるX方向とし、X1側を頭部側、X2側を足側とする。短手方向は平面視でX方向に直交する方向であり、人50の左右方向をY方向とする。Z方向は、X方向およびY方向に直交する上下方向とし、人50が横たわる載置面がある側をZ1側とする。
【0051】
図8に示すように、第1マットレス部21は、長手方向と短手方向とを有する形状である六角形である。第1実施形態では、第1マットレス部21の短手方向および長手方向は、マットレス本体2の短手方向および長手方向と同じである。第1マットレス部21の短手方向とマットレス本体2の短手方向とを一致させることにより、第1マットレス部21をマットレス本体2に横たわった人50の頭足方向の広い範囲に接触させることができる。第1マットレス部21は、マットレス本体2の長手方向(X方向)における人50の頭部が載置される側(X1側)に配置されている。
【0052】
第2マットレス部22は、マットレス本体2から、第1マットレス部21をくりぬいた形状をしている。第2マットレス部22は、第1マットレス部21を挟むように、マットレス本体2の短手方向(Y方向)の両端部(Y1側およびY2側)およびX2側に配置される。
【0053】
第1マットレス部21は、マットレス本体2の短手方向(Y方向)の中心を通るマットレス本体2の長手方向(X方向)に延びる中心線C1上に配置されている。第1マットレス部21の短手方向(Y方向)の中心を通るマットレス本体2の長手方向(X方向)に延びる中心線C2と、中心線C1とを一致させると、第1マットレス部21を挟むようにマットレス本体2の短手方向(Y方向)の両端(Y1側およびY2側)に配置された第2マットレス部22の面積の大きさを同じにすることができる。
【0054】
第1マットレス部21の長手方向(X方向)の長さL1は、マットレス本体2の長手方向(X方向)の長さL2の半分以下である。たとえば、一般的な病院のベッドは、長手方向の長さが191cmであるため、第1マットレス部21の長手方向に長さは、95.5cm以下となる。また、人50の上体を起こす背上げ機能が付いたベッドにマットレス100を用いる場合は、背上げ機能と干渉しない第1マットレス部21の長手方向の長さとする。
【0055】
第1マットレス部21は、短手方向(Y方向)の最大長さL3は、マットレス本体2の短手方向(Y方向)の長さL4の3分の2以下である。たとえば、一般的な病院のベッドは、短手方向の長さが830mmであるため、第1マットレス部21の短手方向の最大長さは、553mm以下となる。また、成人の平均的な肩幅を考慮して、第1マットレス部21の短手方向(X方向)の最大長さL3を200mm以上450mm以下に設定してもよい。
【0056】
(板状部材および膨張収縮袋の構成)
図3および図9に示すように、可動板11は、第1マットレス部21の下(Z2側)に設けられる。可動板11は、第1マットレス部21が配置される側(Z1側)に設けられた第1板状部材110と、第1板状部材110の下方に配置され、第1板状部材110が第1回動中心軸R1により回動可能に接続された第2板状部材111と、第1板状部材110と第2板状部材111との間に配置され、気体(空気)の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋120aと、第2板状部材111の下方に配置される、第2板状部材111が第1回動中心軸R1と異なる第2回動中心軸R2により回動可能に接続された第3板状部材112と、第2板状部材111と第3板状部材112との間に配置される、気体(空気)の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋120bとを備える。
【0057】
第1板状部材110、第2板状部材111および第3板状部材112を接続する方法としては、それぞれをシートで包み、シート同士を接合してもよく、または、丁番などにより、直接接続されるようにしてもよい。
【0058】
また、第1板状部材110、第1膨張収縮袋120a、第2板状部材111、第1膨張収縮袋120bおよび第3板状部材112は、平面視において、重なるように配置されている。第1膨張収縮袋120(第1膨張収縮袋120a、第1膨張収縮袋120b)を膨張させることにより、第1板状部材110は押し上げられ、回動軸線を中心に斜めに回動する。
【0059】
図10および図11に示すように、第1膨張収縮袋120aが膨張する場合は、第1板状部材110が回動することにより、第1マットレス部21が第1回動中心軸回りに回動する。第1膨張収縮袋120bが膨張する場合は、第2板状部材111および第1板状部材110が、第2回動中心軸回りに回動する。このとき、第1マットレス部21の最大傾斜角度は、水平面に対して20度以上60度以下であるのが好ましく、より好ましくは40度以上50度以下である。
【0060】
図10に示すように、第1板状部材110と第2板状部材111との間に配置された第1膨張収縮袋120aに空気を供給した場合、第1板状部材110が、上方(Z1方向)に押し上げられて第1回動中心軸R1を中心に回動する。第1マットレス部21が、回動することにより第2マットレス部22に食い込む。そうすると、第2マットレス部22のZ1側の面に人50が接触し、滑り落ちることを抑制することができる。
【0061】
図11に示すように、第2板状部材111と第3板状部材112との間に配置された第1膨張収縮袋120に空気を供給した場合、第2板状部材111が、上方(Z1方向)に押し上げられて第2回動中心軸R2を中心に回動する。第1マットレス部21は、斜めに回動することにより第2マットレス部22に食い込む。そうすると、第2マットレス部22のZ1側の面に人50が接触し、滑り落ちることを抑制することができる。
【0062】
図12に示すように、第1回動中心軸R1および第2回動中心軸R2は、平面視において可動板11の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線C2に対してθ度傾斜している。中心線C2に対する傾斜角は、10度以上15度以下が好ましい。なお、第1実施形態では、X1方向からX2方向にかけて、Y1側に傾斜している回動中心軸を第1回動中心軸R1とし、Y2側に傾斜している回動中心軸を第2回動中心軸R2とする。
【0063】
第1実施形態では、第1板状部材110、第2板状部材111および第3板状部材112は、平面視において、第1マットレス部21と略同じ形状を有する。また、第1実施形態では、第1板状部材110、第2板状部材111および第3板状部材112は同じ大きさである。
【0064】
図13に基づいて、第1膨張収縮袋120aへの給気について説明する。まず、ステップS1としては、制御部3は、ポンプ7を制御し、第1膨張収縮袋120aへの給気を開始する。ステップS2では、制御部3は、角度センサ4によって測定された可動板11の回動角度を受信する。ステップS3では、角度センサ4から送信された可動板11の回動角度が所定の大きさに達したか否かで次のステップが異なる。可動板11の回動角度が、所定の角度に達した場合、ステップS6に進む。所定の角度に達していない場合は、気体の供給が続けられ、ステップS4に進む。
【0065】
ステップS4では、制御部3は、圧力センサ5が測定した第1膨張収縮袋120a内の圧力の値を受信する。ステップS5では、圧力センサ5が測定した圧力が上限値に達したか否かにより進むステップが異なる。圧力センサ5が測定した圧力が上限値に達した場合、ステップS6として、制御部3は、ポンプ7を制御し、第1膨張収縮袋120aへの気体の供給を停止する。上限値に達していない場合は、気体の供給が続けられ、ステップS2に戻る。なお、ステップS3とステップS5とは、同時に行われてもよい。
【0066】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0067】
第1実施形態では、上記のように、マットレス100は、可動部1と、可動部1の上方に設けられた第1マットレス部21と、第1マットレス部21と別体に設けられ、平面視において第1マットレス部21を囲むように配置された第2マットレス部22とを含む、マットレス本体2とを備え、第1マットレス部21は、可動部1により所定の回動軸線回りに上方に回動されるように構成されている。これにより、第1マットレス部21だけを回動させることにより、人50を傾斜させた場合に、回動しない水平の第2マットレス部22により人50を支持することができるので、第1マットレス部21の傾斜に沿って人50が滑り落ちることを抑制することができる。その結果、人50が滑り落ちることを抑制することができるので、体位の変換を容易に行うことができる。また、マットレス100全体を回動させる場合と異なり、マットレス100の上下動(上下移動量)が大きくなることを抑制することができるので、横たわっている人50および周囲の人50に不安感が生じることを抑制することができる。
【0068】
第1実施形態では、上記のように、マットレス本体2は、短手方向と長手方向とを有する矩形形状を有し、第2マットレス部22は、平面視において第1マットレス部21を挟むようにマットレス本体2の短手方向の両端側に配置されている。これにより、マットレス本体2の短手方向の両端に十分に第2マットレス部22を配置することができる。これにより、第1マットレス部21がマットレス本体2の短手方向の一方端側または他方端側のいずれの方向に回動した場合でも回動しない水平の第2マットレス部22により人50の一部を支持することができるので、平面視の左右どちらでも体位変換が可能となる。
【0069】
第1実施形態では、上記のように、第2マットレス部22は、回動しないように構成されている。これにより、第1マットレス部21を回動させたときに第2マットレス部22が水平に維持されて回動しないので、体位を変換させる際の体を支持するスペースを確保することができる。
【0070】
第1実施形態では、上記のように、可動板11は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、可動板11は、平面視において可動板11の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線C2に対して傾斜する回動中心軸を有している。これにより、回動中心軸が平面視において可動板11の長手方向に延びる中心線C2に対して傾斜しているので、可動板11を長手方向に延びる中心線C2に対して斜めに回動させることができる。
【0071】
第1実施形態では、上記のように、可動板11は、第1回動中心軸R1と第2回動中心軸R2とを含み、第1回動中心軸R1は、平面視において、可動板11の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線C2に対して一方方向に傾斜し、第2回動中心軸R2は、平面視において、可動板11の短手方向の中心を通るとともに長手方向に延びる中心線C2に対して他方方向に傾斜している。これにより、第1回動中心軸R1または第2回動中心軸R2は平面視において可動板11の長手方向に延びる中心線C2に対して一方方向または他方方向に傾斜しているので、人50を可動板11の長手方向に沿って第1マットレス部21に横たえたときに、平面視で傾斜した第1回動中心軸R1または第2回動中心軸R2周りに回動させることにより、人50を前に傾斜させながら横に傾斜させて回動させることができる。これにより、人50の肩の位置を腰の位置よりも高くすることができるので、左右いずれの方向に回動させた場合でも体位の変換を容易に行うことができる。
【0072】
第1実施形態では、上記のように、第1回動中心軸R1は、平面視において中心線C2に対して一方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜し、第2回動中心軸R2は、平面視において中心線C2に対して他方方向に10度以上15度以下の傾斜角で傾斜している。これにより、傾斜角を10度以上15度以下にすることにより、人50を適度に前に傾斜させながら横に傾斜させることができる。
【0073】
第1実施形態では、上記のように、可動板11は、第1板状部材110と、第1板状部材110の下方に配置され、第1板状部材110が第1回動中心軸R1により回動可能に接続された第2板状部材111とを有している。これにより、第1板状部材110または第2板状部材111の一方をマットレス本体2が載置される部材に固定し、他方を第1マットレス部21に固定させることができる。この結果、第2板状部材111を基準として第1板状部材110を回動させることができる。
【0074】
第1実施形態では、上記のように、第2板状部材111の下方に配置され、第2板状部材111が第1回動中心軸R1と異なる第2回動中心軸R2により回動可能に接続された第3板状部材112をさらに有し、第1板状部材110、第2板状部材111、および第3板状部材112は、平面視において、重なるように配置されている。これにより、第1板状部材110と第2板状部材111との回動する方向を異ならせることができるので、たとえば、人50の体位を左右に変換させることができる。また、平面視において、第1板状部材110、第2板状部材111、および第3板状部材112が重なるように配置されていることにより、可動板11を配置する平面視におけるスペースを小さくすることができる。
【0075】
第1実施形態では、上記のように、第1マットレス部21は、マットレス本体2の短手方向の中心を通る、マットレス本体2の長手方向に延びる中心線C1上に配置されている。これにより、第1マットレス部21を人50の中心線上に配置させることができるので、第1マットレス部21は、背骨に沿って人50を押し上げて、体位を変換させることができる。その結果、たとえば、脇腹のような人50の側部を押し上げる場合と比べて、容易に体位を変換させることができる。
【0076】
第1実施形態では、上記のように、第1マットレス部21は、短手方向と長手方向とを有する形状であり、第1マットレス部21の長手方向の長さは、マットレス本体2の長手方向の長さの半分以下であり、第1マットレス部21は、マットレス本体2の長手方向における人50の頭部が載置される側に配置されている。これにより、たとえば、人50の上体を起こす背上げ機能が付いているベッドに用いた場合に、第1マットレス部21が背上げ機能により折れ曲がる位置にまたがって配置されることを抑制することができる。
【0077】
第1実施形態では、上記のように、第1マットレス部21は、短手方向の最大長さがマットレス本体2の短手方向の長さの3分の2以下である。これにより、第2マットレス部22の短手方向の長さが3分の1以上となるため、第2マットレス部22の長さを十分確保することができる。その結果、体位を変換させるためのスペースを確保することができる。
【0078】
第1実施形態では、上記のように、第1マットレス部21は、短手方向の最大長さが200mm以上450mm以下である。これにより、短手方向の最大長さを200mm以上とすることにより、第1マットレス部21の短手方向の長さを十分に確保することができるので、個体差がある場合でも人50を回動させることができる。また、短手方向の最大長さを450mm以下とすることにより、第1マットレス部21の短手方向の長さが人50の肩幅よりも大きくなることを抑制することができるので、第1マットレス部21から人50が滑り落ちることを抑制することができる。
【0079】
第1実施形態では、上記のように、アクチュエータ12は、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第1膨張収縮袋120を含み、可動板11は、第1膨張収縮袋120への気体の給気および排気により回動する角度が調整されるように構成されている。これにより、気体の給気および排気によって、回動角度を調整できるので、マットレス100の構成を簡素化することができる。
【0080】
第1実施形態では、上記のように、第1マットレス部21の最大傾斜角度は、水平面に対して20度以上60度以下である。これにより、第1マットレス部21の最大傾斜角度を60度以下にすることにより回動角度が過度に大きくなることを抑制することができる。また、第1マットレス部21の最大傾斜角度を20度以上にすることにより、十分に人50を傾けることができるので、体位の変換を行う場合に作業が容易となる。
【0081】
第1実施形態では、上記のように、可動板11の回動する角度を測定する角度センサ4と、第1膨張収縮袋120への空気の供給および排気を制御する制御部3とをさらに備え、制御部3は、角度センサ4で測定された角度に基づいて第1膨張収縮袋120への空気の供給および排気を制御するように構成されている。これにより、第1マットレス部21が所定の角度になった場合に給気を停止させることができるので、所定の角度以上になることを抑制することができる。また、第1マットレス部21が所定の角度になった場合に排気を停止させることができるため、所定角度をたとえば0度に設定することにより第1マットレス部21が水平状態に戻ったときに排気を停止させることができる。
【0082】
第1実施形態では、上記のように、第1膨張収縮袋120内の圧力を測定する圧力センサ5と、第1膨張収縮袋120への空気の供給および排気を制御する制御部3とをさらに備え、制御部3は、圧力センサ5により測定された第1膨張収縮袋120内の圧力が所定の上限値を上回った場合に、第1膨張収縮袋120への気体の給気を停止させるとともに、圧力センサ5により測定された第1膨張収縮袋120内の圧力が所定の下限値を下回った場合に、第1膨張収縮袋120からの気体の排気を停止させる制御を行うように構成されている。これにより、第1マットレス部21が所定の圧力になった場合に給気を停止させて第1膨張収縮袋120の過度な膨張を抑制することができるとともに、圧力が所定の下限値を下回った場合に第1マットレス部21の排気を停止させることにより、第1マットレス部21の回動を停止させることができる。
【0083】
[第2実施形態]
次に、図14を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えてマットレス本体2は、さらに第2膨張収縮袋220を備えている。なお、第1実施形態と同じ部分は、同様の符号を付する。
【0084】
第2膨張収縮袋220は、マットレス本体2の長手方向における人50の足が載置される側に第1マットレス部21に対して隣接して配置されるとともに第2マットレス部22の下方に設けられる。第2膨張収縮袋220は、たとえば、人50の臀部あたりに配置される。
【0085】
第2膨張収縮袋220は、第1マットレス部21の回動時に給気されるように構成されている。第2膨張収縮袋220は、第1膨張収縮袋120と同様にポンプ7に接続されている。第2膨張収縮袋220に気体を供給する場合、所定の時間の間、気体が供給されると停止するように構成されている。第2膨張収縮袋220が膨張することにより、第2マットレス部22の一部が持ち上がり、第1マットレス部21と第2マットレス部22との間の段差を小さくすることができる。第2膨張収縮袋220は、ポンプ7からの排気により収縮する。
【0086】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0087】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0088】
第2実施形態では、上記第1実施形態と同様に、第1マットレス部21だけを回動させることにより、人50を傾斜させた場合に、回動しない水平の第2マットレス部22により人50を支持することができるので、第1マットレス部21の傾斜に沿って人50が滑り落ちることを抑制することができる。その結果、人50が滑り落ちることを抑制することができることにより、体位の変換を容易に行うことができる。また、マットレス100全体を回動させる場合と異なり、マットレス100の上下動(上下移動量)が大きくなることを抑制することができるので、横たわっている人50および周囲の人50に不安感が生じることを抑制することができる。
【0089】
第2実施形態では、上記のように、気体の給気および排気によって膨張および収縮可能な第2膨張収縮袋220をさらに備え、第2膨張収縮袋220は、マットレス本体2の長手方向における人50の足が載置される側に第1マットレス部21に対して隣接して配置されるとともに、第2マットレス部22の下方に設けられ、第1マットレス部21の回動時に給気されるように構成されている。これにより、第1マットレス部21と第2マットレス部22との間に段差が生じることを抑制することができるため、腰付近が沈みこんで横たわっている人50に違和感が生じることを抑制することができる。また、第2マットレス部22が第1マットレス部21との間に段差が生じることを抑制することにより、横たわっている人50の沈み込んでいる体の一部に集中して力がかかることを抑制することができるので、褥瘡(床ずれ)が発生することを抑制することができる。
【0090】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0091】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0092】
たとえば、上記第1実施形態および第2実施形態では、可動板は、第1板状部材と第2板状部材と第3板状部材とを含む例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、第1板状部材および第2板状部材のみから構成されていてもよい。この場合、第1膨張収縮袋は、第1板状部材および第2板状部材の間と、第2板状部材およびマットレスを載置する面の間とに設けてもよい。
【0093】
また、上記第1および第2実施形態では、第1マットレス部が六角形である例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、第1マットレス部が他の多角形であってもよい。
【0094】
また、上記第1および第2実施形態では、第1板状部材と、第2板状部材と、第3板状部材とは、同じ大きさである例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、第1板状部材と、第2板状部材と、第3板状部材とは、大きさが異なっていてもよく、第2板状部材が、第1板状部材よりも小さくてもよい。
【0095】
また、上記第1および第2実施形態では、マットレスが、角度センサと圧力センサとを備える例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、マットレスが、角度センサと圧力センサとのいずれか一方を備える構成であってもよい。
【0096】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、制御部は、操作部の操作により設定された数値に基づき制御を行う例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、予め設定された設定値に基づいて制御部が制御を行ってもよい。
【0097】
また、上記第1および第2実施形態では、第1回動中心軸および第2回動中心軸が平面視において中心線に対して傾斜している例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1回動中心軸および第2回動中心軸は平面視において中心線に対して傾斜していなくともよい。
【0098】
また、上記第1および第2実施形態では、第1回動中心軸および第2回動中心軸がX方向に沿って延びている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1回動中心軸および第2回動中心軸はY方向に沿って延びていてもよい。
【0099】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、アクチュエータは、第1膨張収縮袋を備える例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、アクチュエータは、第1膨張収縮袋以外のたとえばジャッキなどの昇降装置を備えていてもよい。
【0100】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、給気に電磁弁を1つ用いる例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、給気に電磁弁を複数用いてもよい。たとえば、図15に示すように、第1膨張収縮袋に給気をする場合、制御部は、電磁弁8aと電磁弁8eを開き、電磁弁8b、電磁弁8c、電磁弁8dおよび電磁弁8fを閉じる制御を行う。これにより、より強力にポンプ7から気体が第1膨張収縮袋に給気される。
【0101】
また、上記第1実施形態および第2実施形態では、給気可能なポンプの例を示したが、本発明は、これに限られない。本発明では、吸排気可能なポンプを用いてもよい。たとえば、図16に示すように、第1膨張収縮袋から排気する場合、制御部は、電磁弁8bと電磁弁8fを開き、電磁弁8a、電磁弁8c、電磁弁8d、および電磁弁8eを閉じる制御を行う。これにより、ポンプ7による第1膨張収縮袋からの排気が、より強力にすることができる。
【0102】
また、上記第1実施形態では、説明の便宜上、本発明の制御部の第1マットレス部の回動を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、制御部による処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 可動部
2 マットレス本体
3 制御部
4 角度センサ
5 圧力センサ
11 可動板
12 アクチュエータ
21 第1マットレス部
22 第2マットレス部
52 第2板状部材
100 マットレス
110 第1板状部材
111 第2板状部材
112 第3板状部材
111a 第1回動中心軸
111b 第2回動中心軸
120 第1膨張収縮袋
C1 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
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図16