IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

<>
  • 特許-研削方法 図1
  • 特許-研削方法 図2
  • 特許-研削方法 図3
  • 特許-研削方法 図4
  • 特許-研削方法 図5
  • 特許-研削方法 図6
  • 特許-研削方法 図7
  • 特許-研削方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】研削方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231128BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231128BHJP
   B24B 5/06 20060101ALI20231128BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231128BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B7/04 A
B24B5/06
B24B41/06 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020045924
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021150347
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳一
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-315103(JP,A)
【文献】特開2010-194680(JP,A)
【文献】特開2017-92344(JP,A)
【文献】特開2016-46490(JP,A)
【文献】特開2018-41915(JP,A)
【文献】特開2018-120916(JP,A)
【文献】特開2018-60873(JP,A)
【文献】特開2019-75408(JP,A)
【文献】特開2014-127618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0020854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 7/04
B24B 5/06
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域の周囲を囲む外周余剰領域とを表面側に有する円盤状の被加工物の裏面側を、円環状のホイール基台と該ホイール基台の一面側に環状に配置された砥石部とを有する研削ホイールの該砥石部で研削する被加工物の研削方法であって、
該被加工物の該表面側を保護部材で覆う表面保護ステップと、
第1の回転軸の周りで回転可能な円盤状のチャックテーブルで、該被加工物の該表面側を吸引して保持する保持ステップと、
該保持ステップの後、第2の回転軸の下端部に装着され、該チャックテーブルの直径よりも小さな直径を有し、且つ、該チャックテーブルの上方に配置された該研削ホイールを該第2の回転軸の周りで回転させ、且つ、該研削ホイールのうち該チャックテーブルの外周部側の上方に位置する第1部分の底部が該チャックテーブルの中心部側の上方に位置する第2部分の底部よりも高くなる様に、該第1の回転軸に対して該第2の回転軸を傾けた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとが該第1の回転軸に平行な方向に沿って互いに近づく様に両者を相対的に移動させることにより、該被加工物の厚さ方向で該デバイス領域に対応する該被加工物の該裏面側の中央部を研削して、研削が施された円形の被研削部と該被研削部の周囲を囲み且つ研削が施されていないリング状補強部と、で構成される円盤状の凹部を該裏面側に形成する傾斜研削ステップと、
該傾斜研削ステップの後、該第2の回転軸が該第1の回転軸と平行になる様に該第2の回転軸の傾きを徐々に変化させながら該裏面側を研削する、傾き変化及び研削ステップと、を備えることを特徴とする研削方法。
【請求項2】
該傾き変化及び研削ステップの後に、該研削ホイールの該第2の回転軸と該チャックテーブルの該第1の回転軸とを平行にした状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとが該第1の回転軸に平行な方向に沿って互いに近づく様に両者を相対的に移動させることで該被研削部を研削する、通常研削ステップを更に備えることを特徴とする請求項1記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の裏面側の中央部を研削することにより、研削が施された円形の被研削部と、被研削部の周囲を囲み且つ研削が施されていないリング状補強部と、で構成される円盤状の凹部を、被加工物の裏面側に形成する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに交差する複数の分割予定ラインで区画される複数の領域が表面側に設定され、各領域にIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成された被加工物は、研削、切削等を経て複数のデバイスチップに分割される。被加工物の研削方法として、例えば、複数のデバイスが配置されている円形のデバイス領域に、被加工物の厚さ方向で対応する裏面側の円形の中央部のみを研削する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
裏面側の円形の中央部のみを研削することにより、研削が施された円形の被研削部と、被研削部の周囲を囲み且つ研削が施されていないリング状補強部と、で構成される円盤状の凹部が、被加工物の裏面側に形成される。この様に、リング状補強部を残すことで、裏面側が薄化されても、被加工物の搬送等の取り扱いが容易になるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-19461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、研削工程において、研削砥石が裏面側に接触する際の衝撃や、研削砥石の外側側面とリング状補強部の内周側面との接触により、リング状補強部の裏面側に多数のチッピング(欠け)が形成されて、リング状補強部の強度が低下することがある。
【0006】
また、研削工程の後にウェットエッチングが施される場合、リング状補強部に形成された欠け部分がエッチングされることで、リング状補強部の裏面側に凹凸が形成される。凹凸が形成されると、後続の工程で更に他の問題が生じる。例えば、裏面側に蒸着された金属膜が、凹凸部分を起点として剥離され易くなる。また、例えば、裏面側にダイシングテープを貼り付けるときに、凹凸部分により貼り付け不良が生じる。
【0007】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、リング状補強部の裏面側に生じる欠けの量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と該デバイス領域の周囲を囲む外周余剰領域とを表面側に有する円盤状の被加工物の裏面側を、円環状のホイール基台と該ホイール基台の一面側に環状に配置された砥石部とを有する研削ホイールの該砥石部で研削する被加工物の研削方法であって、該被加工物の該表面側を保護部材で覆う表面保護ステップと、第1の回転軸の周りで回転可能な円盤状のチャックテーブルで、該被加工物の該表面側を吸引して保持する保持ステップと、該保持ステップの後、第2の回転軸の下端部に装着され、該チャックテーブルの直径よりも小さな直径を有し、且つ、該チャックテーブルの上方に配置された該研削ホイールを該第2の回転軸の周りで回転させ、且つ、該研削ホイールのうち該チャックテーブルの外周部側の上方に位置する第1部分の底部が該チャックテーブルの中心部側の上方に位置する第2部分の底部よりも高くなる様に、該第1の回転軸に対して該第2の回転軸を傾けた状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとが該第1の回転軸に平行な方向に沿って互いに近づく様に両者を相対的に移動させることにより、該被加工物の厚さ方向で該デバイス領域に対応する該被加工物の該裏面側の中央部を研削して、研削が施された円形の被研削部と該被研削部の周囲を囲み且つ研削が施されていないリング状補強部と、で構成される円盤状の凹部を該裏面側に形成する傾斜研削ステップと、該傾斜研削ステップの後、該第2の回転軸が該第1の回転軸と平行になる様に該第2の回転軸の傾きを徐々に変化させながら該裏面側を研削する、傾き変化及び研削ステップと、を備える研削方法が提供される。
【0009】
研削方法は、該傾き変化及び研削ステップの後に、該研削ホイールの該第2の回転軸と該チャックテーブルの該第1の回転軸とを平行にした状態で、該研削ホイールと該チャックテーブルとが該第1の回転軸に平行な方向に沿って互いに近づく様に両者を相対的に移動させることで該被研削部を研削する、通常研削ステップを更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る研削方法の傾斜研削ステップでは、研削ホイールを第2の回転軸の周りで回転させ、且つ、研削ホイールのうちチャックテーブルの外周部側の上方に位置する第1部分の底部がチャックテーブルの中心部側の上方に位置する第2部分の底部よりも高くなる様に、第1の回転軸に対して第2の回転軸を傾けた状態で、被加工物の裏面側の中央部を研削して円盤状の凹部を裏面側に形成する。
【0011】
これにより、研削砥石の外周側面がリング状補強部の上面の内周縁に接触して生じる、リング状補強部の裏面側の欠けを無くすことができる。それゆえ、リング状補強部の裏面側に生じる欠けの量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】研削装置の一部断面側面図である。
図2】被加工物等の斜視図である。
図3図3(A)は被加工物ユニット等の一部断面側面図であり、図3(B)は傾斜研削ステップでの研削ホイール等の一部断面側面図である。
図4図4(A)は研削時の研削ホイール等の一部断面側面図であり、図4(B)は図4(A)の部分拡大図である。
図5】傾き変化及び研削ステップを示す図である。
図6】通常研削ステップを示す図である。
図7】研削方法のフロー図である。
図8】比較例に係る研削ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。まず、図1を用いて、研削装置2について説明する。図1は、研削装置2の一部断面側面図である。研削装置2は、複数の構成要素を支持する略直方体状の基台4を有する。
【0014】
基台4上には、円盤状のチャックテーブル6が設けられている。チャックテーブル6は、セラミックス製の枠体6aを有する。枠体6a内には流路(不図示)が設けられており、この流路の一端はエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続している。
【0015】
枠体6aは、円盤状の空間から成る凹部を上面側に有する。この凹部には、円盤状のポーラス板6bが固定されている。なお、凹部及びポーラス板6bの直径と、後述する被加工物11(図2参照)の直径とは、略同じ(例えば、200mm)に設定される。
【0016】
ポーラス板6bには、枠体6aの流路の他端が接続している。吸引源を動作させると、ポーラス板6bの上面には負圧が生じ、当該上面は、被加工物11を吸引して保持する保持面6cとして機能する。
【0017】
チャックテーブル6の下面側には、モーター等の第1の回転駆動源(不図示)が配置されている。第1の回転駆動源の出力軸(第1の回転軸)8は、Z軸方向(高さ方向、鉛直方向)と略平行に配置されている。
【0018】
出力軸8は、チャックテーブル6の下面側に連結されている。第1の回転駆動源を動作させると、チャックテーブル6は出力軸8の周りで回転する。基台4の後方側には、直方体状のコラム10が設けられている。
【0019】
コラム10の前方側には、研削送りユニット12が設けられている。研削送りユニット12は、高さ方向に略平行な態様で、コラム10の前方側面に固定された一対のガイドレール12aを有する。なお、図1では、紙面奥側に位置する1つのガイドレール12aを示す。
【0020】
一対のガイドレール12aには、移動プレート12bがスライド可能な態様で取り付けられている。移動プレート12bの裏面(後方)側には、ナット部12cが設けられている。ナット部12cには、高さ方向に略平行に配置されたボールネジ12dが回転可能な態様で連結されている。
【0021】
ボールネジ12dの上端部には、パルスモーター12eが連結されている。パルスモーター12eでボールネジ12dを回転させれば、移動プレート12bは、ガイドレール12aに沿って移動する。
【0022】
移動プレート12bの表面(前方)には、研削ユニット14を構成する円筒状の保持部材14aが固定されている。保持部材14aの内側の空間には、円筒状のスピンドルハウジング14bが配置されている。
【0023】
スピンドルハウジング14bの下部には、それぞれブロック状の複数のスペーサ14c(14c1、14c2)が環状に配置されている。各スペーサ14cの上面はスピンドルハウジング14bの下面に接しており、各スペーサ14cの下面は、保持部材14aの底板の上面側に配置されている。
【0024】
図1では、コラム10に最も近い位置に配置された(即ち、後方の)スペーサ14c1と、コラム10に最も遠い位置に配置された(即ち、前方の)スペーサ14c2とを示す。スペーサ14c2の下部側には、ネジ穴が形成されている。
【0025】
また、ネジ穴の下部に位置する保持部材14aの底板には、貫通孔が形成されている。当該貫通孔を介して、ネジ穴には雄ネジ14dの軸部が締結されている。雄ネジ14dの頭部は、保持部材14aの底板よりも下方に露出しており、雄ネジ14dの頭部にはモーター等の駆動機構(不図示)の出力軸が連結されている。
【0026】
例えば、駆動機構を動作させて雄ネジ14dを一方に回転させれば、スペーサ14c2は上方に移動し、スペーサ14c2の下面は、保持部材14aの底板の上面から僅かに離れる。これに対して、雄ネジ14dを他方に回転させれば、スペーサ14c2は下方に移動し、スペーサ14c2の下面は、保持部材14aの底板の上面に接する。
【0027】
スピンドルハウジング14bの内部には、円柱状のスピンドル14eが配置されている。スピンドル14eは、回転可能な態様でスピンドルハウジング14bに支持されている。スピンドル14eの上端部には、サーボモーター等の第2の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0028】
スピンドル14eは、保持部材14aの底板の中央部に形成された開口を貫通する様に配置されている。スピンドル14eの下端は、保持部材14aの底板の下面よりも下方に位置している。スピンドル14eの下端部には、円盤状のホイールマウント16の上面の中央部が連結されている。
【0029】
ホイールマウント16の下面側には、アルミニウム合金等で形成された円環状のホイール基台18aの上面側が装着されている。つまり、ホイール基台18aは、ホイールマウント16を介してスピンドル14eの下端部に装着されている。
【0030】
ホイール基台18aは、チャックテーブル6の上方に配置されている。ホイール基台18aの直径は、チャックテーブル6の直径よりも小さい。例えば、ホイール基台18aの直径は、保持面6cの直径(本例では、約200mm)よりも小さい所定の長さに設定される。
【0031】
ホイール基台18aの下面(一面)18b側には、それぞれブロック状の複数の研削砥石18c(砥石部)が環状に配置されている(セグメント配列)。なお、複数の研削砥石18cに代えて、円環状の1つの研削砥石(砥石部)が設けられてもよい(コンティニュアス配列)。
【0032】
ホイール基台18a及び複数の研削砥石18cは、研削ホイール18を構成する。第2の回転駆動源を動作させると、スピンドル14eが回転し、研削ホイール18は、スピンドル(第2の回転軸)14eの周りに回転する。
【0033】
なお、スピンドル14e及びホイール基台18aの内部には、純水等の研削水を研削砥石18cに供給するための所定の流路(不図示)が形成されており、研削時には研削水供給源(不図示)から研削砥石18cへ研削水が供給される。
【0034】
次に、研削対象となる被加工物11について説明する。図2は、被加工物等の斜視図である。本実施形態の被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料で形成された円盤状のウェーハである。被加工物11は、例えば、100μm以上800μm以下の所定の厚さを有する。
【0035】
被加工物11の表面11a側は、互いに交差する複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の領域に区画されており、各領域には、IC、LSI等のデバイス15が形成されている。
【0036】
なお、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、シリコン以外の他の半導体材料でなる基板を被加工物11として用いることもできる。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0037】
被加工物11の表面11a側を見た場合に、複数のデバイス15は、円形のデバイス領域17aの内側に配置されている。デバイス領域17aの外側には、デバイス領域17aの周囲を囲む様に、デバイス15を有さない外周余剰領域17bが配置されている。
【0038】
図2では、円形のデバイス領域17aと環状の外周余剰領域17bとの境界線を破線で示す。但し、この境界線は、仮想線であり、実際には被加工物11に付されていない。なお、表面11a側及び裏面11b側における各外周部には、角部が面取りされたベベル部(図3(A)等参照)が形成されている。
【0039】
次に、図2から図7を用いて、被加工物11の研削方法について説明する。なお、図7は、研削方法のフロー図である。まず、図2に示す様に、樹脂で形成された円形の保護部材19を表面11a側に貼り付ける。これにより、表面11a側が保護部材19で覆われた被加工物ユニット21を形成する(表面保護ステップ(S10))。
【0040】
保護部材19は、表面11aに加えて、表面11a側のベベル部も覆う様に貼り付けられる。保護部材19は、樹脂で形成された円盤状のシートであり、基材層と、基材層の一面に設けられた糊層(粘着層)とを有する。
【0041】
糊層は、例えば、紫外線硬化樹脂で構成されるが、熱硬化性樹脂や自然硬化性樹脂で構成されてもよい。なお、基材層には必ずしも糊層が設けられなくてもよい。例えば、保護部材19は、基材層のみで構成され、熱圧着等で表面11a側に貼り付けられてもよい。
【0042】
表面保護ステップ(S10)の後、チャックテーブル6の保持面6cで、被加工物11の表面11a側(即ち、保護部材19の一面とは反対側に位置する他面)を吸引して保持する(保持ステップ(S20))。図3(A)は、被加工物ユニット21等の一部断面側面図である。
【0043】
保持ステップ(S20)の後、研削装置2を用いて研削ホイール18で裏面11b側を研削する。本実施形態では、まず、駆動機構を動作させて、雄ネジ14dを一方に回転させて、スペーサ14c2を僅かに上方に移動させる。
【0044】
スピンドル14eの下端は、保持面6cの外周部6c1と、保持面6cの中心部6c2との間に位置する様に配置されている。スペーサ14c2が僅かに上方に移動すると、スピンドル14eは、保持面6cの中心部6c2側に所定角度θだけ傾けられる。
【0045】
所定角度θ(度(arc degree)で表す)は、例えば、0度より大きく2度以下(0度<θ≦2度)である。図3(B)に示す様に、出力軸8に平行な直線(破線)に対して、スピンドル14e(一点鎖線)を所定角度θだけ傾けることで、複数の研削砥石18cのうち外周部6c1側の上方に位置する第1部分18c1の底部は、中心部6c2側の上方に位置する第2部分18c2の底部よりも僅かに高くなる。
【0046】
この状態で、研削ホイール18をスピンドル14eの周りで回転させ、チャックテーブル6を出力軸8の周りで回転させる。例えば、スピンドル14eの回転数を3000rpmとし、出力軸8の回転数を300rpmとする。
【0047】
次いで、パルスモーター12eを動作させて、研削ホイール18とチャックテーブル6とが互いに近づく様に、出力軸8に平行な方向に沿って研削ホイール18及びチャックテーブル6を相対的に移動させる。
【0048】
例えば、1.0μm/秒で研削ユニット14をZ軸方向に沿って下方に研削送りする。これにより、裏面11b側を研削する(傾斜研削ステップ(S30))。図3(B)は、傾斜研削ステップ(S30)での研削ホイール18等の一部断面側面図である。
【0049】
研削砥石18cが裏面11b側に接すると、裏面11b側は研削されて除去される。本実施形態では、外周余剰領域17bに対応する裏面11b側の外周部11b1を研削せず、被加工物11の厚さ方向でデバイス領域17aに対応する裏面11b側の中央部11b2を研削する。
【0050】
図4(A)は、研削時の研削ホイール18等の一部断面側面図である。中央部11b2は、研削が施されて円形の被研削部11c2となる。この被研削部11c2の周囲は、研削が施されていないリング状補強部11c1となる。
【0051】
被研削部11c2と、被研削部11c2を囲む様に配置されたリング状補強部11c1とにより、裏面11b側の中央部には、円盤状の凹部11cが形成される。図4(B)は、被研削部11c2とリング状補強部11c1との境界近傍における図4(A)の部分拡大図である。
【0052】
傾斜研削ステップ(S30)では、出力軸8に対してスピンドル14eを所定角度θだけ傾けている。それゆえ、研削砥石18cの外周側面が、リング状補強部11c1の上面(即ち、裏面11bの外周部11b1)の内周縁から離れた状態で研削が行われる。つまり、研削時には、研削砥石18cの外周側面と、リング状補強部11c1の上面の内周縁との間に隙間23が形成される。
【0053】
例えば、リング状補強部11c1の内周側面の深さが600μmの場合、θ=1.9度とすると、リング状補強部11c1の上面の内周縁から研削砥石18cの外周側面までの距離は、20μmとなる。それゆえ、研削砥石18cの外周側面における砥粒の突出量が10μmである場合、研削砥石18cの砥粒は、リング状補強部11c1の上面の内周縁に接しない。
【0054】
本実施形態の傾斜研削ステップ(S30)では、この様に隙間23が形成されるので、研削砥石18cの外周側面がリング状補強部11c1の上面の内周縁に接触して生じるリング状補強部11c1の裏面11b側の欠けを無くすことができる。従って、リング状補強部11c1の裏面11b側に生じる欠けの量を低減できる。
【0055】
傾斜研削ステップ(S30)の後、研削ユニット14の研削送りを停止した状態で、駆動機構を動作させて、雄ネジ14dを他方に回転させる。これにより、傾斜研削ステップ(S30)で傾ける向きとは反対方向にスピンドル14eの傾きを徐々に変化させる。
【0056】
本実施形態では、傾斜研削ステップ(S30)で形成された所定角度θを相殺する様にスピンドル14eの傾きを調整し、スピンドル14eを出力軸8と平行にする。但し、この傾き変化中にも、裏面11b側の研削を継続する(傾き変化及び研削ステップ(S40))。
【0057】
図5は、被研削部11c2とリング状補強部11c1との境界近傍の部分拡大図であり、傾き変化及び研削ステップ(S40)を示す図である。なお、図5では、傾斜研削ステップ(S30)での研削砥石18cを二点鎖線で示し、傾き変化及び研削ステップ(S40)で傾きを無くした状態の研削砥石18cを実線で示す。
【0058】
傾き変化及び研削ステップ(S40)では、スピンドル14eを出力軸8と平行にすることにより、傾斜研削ステップ(S30)だけで研削を完了する場合に比べて、被研削部11c2を平坦にできる。
【0059】
なお、傾き変化及び研削ステップ(S40)では、スピンドル14eの傾き変化の動作に起因して、リング状補強部11c1の内周側面の底部と、被研削部11c2との境界近傍に、環状の曲面11dが形成される。
【0060】
ところで、本実施形態の傾き変化及び研削ステップ(S40)では、研削ユニット14を下方に研削送りしないが、傾斜研削ステップ(S30)と同様に、1.0μm/秒で研削送りをしながらスピンドル14eを出力軸8に平行にしてもよい。
【0061】
そして、傾き変化及び研削ステップ(S40)の後、スピンドル14eと出力軸8とを平行にした状態で、被研削部11c2を更に研削する(通常研削ステップ(S50))。図6は、通常研削ステップ(S50)を示す図である。
【0062】
通常研削ステップ(S50)では、研削ホイール18とチャックテーブル6とが出力軸8に平行な方向に沿って互いに近づく様に、研削ホイール18及びチャックテーブル6を相対的に移動させる。例えば、1.0μm/秒で研削ユニット14を下方に研削送りする。
【0063】
なお、本実施形態の研削方法において、通常研削ステップ(S50)は必須ではない。つまり、表面保護ステップ(S10)から傾き変化及び研削ステップ(S40)までで、被加工物11の研削を終了してもよい。
【0064】
次に、比較例について説明する。図8は、比較例に係る研削ステップを示す図である。比較例では、表面保護ステップ(S10)及び保持ステップ(S20)の後、スピンドル14eを出力軸8に対して平行にした状態で、スピンドル14e及び出力軸8を回転させて、研削送りを行う。
【0065】
この場合、研削砥石18cの外周側面が、リング状補強部11c1の上面の内周縁に接触する(図8において一点鎖線の丸で示した領域25参照)。それゆえ、上述の実施形態に比べて、リング状補強部11c1の裏面11b側の欠けの量が多くなる。
【0066】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、本実施形態の研削方法は、粗研削及び仕上げ研削のいずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
2:研削装置
4:基台
6:チャックテーブル、6a:枠体、6b:ポーラス板
6c:保持面、6c1:外周部、6c2:中心部
8:出力軸
10:コラム
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、11b1:外周部、11b2:中央部
11c:凹部、11c1:リング状補強部、11c2:被研削部
11d:曲面
12:研削送りユニット、12a:ガイドレール、12b:移動プレート
12c:ナット部、12d:ボールネジ、12e:パルスモーター
13:分割予定ライン
14:研削ユニット
14a:保持部材
14b:スピンドルハウジング
14c,14c1,14c2:スペーサ
14d:雄ネジ
14e:スピンドル
15:デバイス
16:ホイールマウント
17a:デバイス領域、17b:外周余剰領域
18:研削ホイール、18a:ホイール基台、18b:下面
18c:研削砥石、18c1:第1部分、18c2:第2部分
19:保護部材
21:被加工物ユニット
23:隙間
25:領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8