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  • 特許-シーリング材用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2024-01-29
(54)【発明の名称】シーリング材用組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/10 20060101AFI20240122BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240122BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240122BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20240122BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20240122BHJP
   C09J 201/00 20060101ALN20240122BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09K3/10 E
C09K3/10 G
C09K3/10 Q
C08K3/26
C08L33/14
C08L71/02
C08L101/10
C09J201/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016187077
(22)【出願日】2016-09-26
(65)【公開番号】P2018053007
(43)【公開日】2018-04-05
【審査請求日】2019-09-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】長澤 智三
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】亀ヶ谷 明久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/192842(WO,A1)
【文献】特開2014-25001(JP,A)
【文献】特開2012-229398(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050592(WO,A1)
【文献】特開平1-272654(JP,A)
【文献】国際公開第2009/154205(WO,A1)
【文献】特開2008-115255(JP,A)
【文献】エッセンシャル高分子科学、中浜 精一 等著、株式会社 講談社 発行、1988年、150~153頁
【文献】POLYMER HANDBOOK、FOURTH EDITION、 J.BRUNDRUP編、JOHN WILEY & SONS,INC.発行、1999年、VI/199頁、VI/203~204頁
【文献】Solvay社より販売されるWinnofilSPMの製品情報[令和3年11月1日検索]<URL:https://www.atamanchemicals.com/winnofil-spm_u24246>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10- 3/12
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/10
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋性シリル基Aを有する変性重合体と、反応性可塑剤と、充填剤と、硬化触媒とを含有し、
前記反応性可塑剤が、架橋性シリル基B及び主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーを有し、前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上であり、前記反応性可塑剤の数平均分子量が7,000~9,500であり、前記架橋性シリル基Bが下記一般式(1)で表される基であり、
前記変性重合体の数平均分子量が10,000~50,000であり、
前記架橋性シリル基Aの数が前記変性重合体1分子あたり1個を超え3個以下であり、
前記変性重合体1分子あたりの架橋性シリル基Aの数に対する前記反応性可塑剤1分子あたりの架橋性シリル基Bの数(B/A)が0.1より大きく0.5以下である、シーリング材用組成物。ただし、前記変性重合体は前記反応性可塑剤を含まない。
【化1】
一般式(1)中、
Yは、メトキシ基を示し、
およびRは、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基または(RSiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、RまたはRが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよく、Rは炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個のRは同一であってもよく、異なっていてもよく、
aは、0、1、2または3を示し、
bは、0、1または2をそれぞれ示し、
tは、0~19の整数を示し、
a、b、tは、a+t×b≧1を満足する。
【請求項2】
前記変性重合体1分子あたりの架橋性シリル基Aの数に対する前記反応性可塑剤1分子あたりの架橋性シリル基Bの数(B/A)が0.35より大きく0.5以下であり、
前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上0.8個以下である請求項1に記載のシーリング材用組成物
【請求項3】
前記反応性可塑剤のガラス転移温度が-30℃以下であり、
前記充填剤が、表面処理されたコロイダル炭酸カルシウムを含み、
前記硬化触媒が、4価の錫触媒を含み、
下地とタイルとの間にシーリング材層を形成し、
前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり1.0個以下であり、
前記変性重合体の主鎖が、ポリオキシアルキレンであり、
前記充填剤の含有量は、前記変性重合体100質量部に対して、100~300質量部である請求項1または2に記載のシーリング材用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシーリング材用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁等は例えばタイル貼り工法等によって形成されている。添付の図面を用いて、タイル貼り工法によって形成された外壁について以下に説明する。
図1は、タイル貼り工法によって形成された外壁の一例を模式的に表す断面斜視図である。
図1において、外壁10は、下地12、14と、下地12、14間の目地16と、下地12、14及び目地16の上のシーリング材層18と、シーリング材層18の上のタイル用接着剤層20と、タイル用接着剤層20の上のタイル22、24と、タイル22、24間の目地26とを有する。
【0003】
タイル貼り工法においては、まず下地12、14(例えば、ボード)が貼り合される。目地16にはいわゆる変成シリコーン系硬化性樹脂組成物を塗布することができる。
次いで、下地12、14及び目地16の上に変成シリコーン系硬化性樹脂組成物を塗布し、変成シリコーン系硬化性樹脂組成物の上に更にタイル用接着剤を塗布する。
次に、タイル用接着剤の上にタイル22、24を貼り合せ、外壁10が形成される。タイル22、24間の目地26はシーリング材でシールされていてもよい。硬化後、下地12、14及び目地16の上に塗布した変成シリコーン系硬化性樹脂組成物がシーリング材層18となり、上記タイル用接着剤がタイル用接着剤層20となる。
【0004】
このように、上記の変成シリコーン系硬化性樹脂組成物は、下地間の目地(図1における目地16)、又は、下地とタイル用接着剤との間(図1におけるシーリング材層18)に使用されている。また、変性シリコーン系シーリング材用組成物から形成されるシーリング材層は、タイル用接着剤層及びタイルで覆われているため、上記シーリング材層(図1におけるシーリング材層18)が外部に露出することはない。
【0005】
上記のような変成シリコーン系硬化性樹脂組成物は、通常、変成シリコーンポリマーを含有する。
変成シリコーンポリマーは、主鎖としてポリエーテルや(メタ)アクリル系ポリマーを有し、さらに、架橋可能な架橋性シリル基を有する重合体である。変成シリコーンポリマーは、硬化触媒と併用することができ、この場合、密封下では長期間安定であるが、湿気にさらすと急速に硬化してゴム状物質に変わることができる。このように変成シリコーンポリマーは湿気で硬化できるため、変成シリコーン系硬化性樹脂組成物を1液型組成物とすることができる。
【0006】
加水分解性シリル基を有するポリマーを含有するシーリング材組成物としては、例えば、特許文献1が提案されている。
特許文献1は、低温貯蔵安定性に優れ、かつ、硬化後に優れた耐久性、塗料適性を示す、ノンブリード性のシーリング材組成物を提供することを目的とし、(A)分子中に平均して1.2以上の加水分解性シリル基を有するポリマーと、(B)分子中に平均して0.5以上1.2未満の加水分解性シリル基を有する数平均分子量300以上8,000未満のポリマーと、(C)炭素数16~30のエポキシ化オレフィンとを含んでなる、シーリング材組成物が記載されている。また、特許文献1において、反応性可塑剤の主鎖はポリアルキレンエーテルが好ましいことが記載されている[0015]。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-106063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このようななか、本発明者が特許文献1を参考にして変成シリコーンポリマー及び反応性可塑剤を含有するシーリング材用組成物を調製し、このような組成物を下地とタイルとの間に適用した場合を想定して評価したところ、タイルに濡れのような汚れが生じる場合があることが明らかとなった。
そこで、本発明はタイルに生じる濡れのような汚れを抑制することができるシーリング材用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、
架橋性シリル基Aを有する変性重合体と、反応性可塑剤と、充填剤と、硬化触媒とを含有し、
前記反応性可塑剤が、架橋性シリル基B及び主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーを有し、前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上であり、前記反応性可塑剤の数平均分子量が15,000以下である、シーリング材用組成物によれば、所定の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0010】
1. 架橋性シリル基Aを有する変性重合体と、反応性可塑剤と、充填剤と、硬化触媒とを含有し、
前記反応性可塑剤が、架橋性シリル基B及び主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーを有し、前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上であり、前記反応性可塑剤の数平均分子量が15,000以下である、シーリング材用組成物。ただし、前記変性重合体は前記反応性可塑剤を含まない。
2. 前記反応性可塑剤のガラス転移温度が-30℃以下である、上記1に記載のシーリング材用組成物。
3. 前記充填剤が、表面処理されたコロイダル炭酸カルシウムを含む、上記1又は2に記載のシーリング材用組成物。
4. 前記硬化触媒が、4価の錫触媒を含む、上記1~3のいずれかに記載のシーリング材用組成物。
5. 下地とタイルとの間にシーリング材層を形成する、上記1~4のいずれかに記載のシーリング材用組成物。
6. 前記反応性可塑剤の数平均分子量が3,000~10,000である、上記1~5のいずれかに記載のシーリング材用組成物。
7. 前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり1.0個以下である、上記1~6のいずれかに記載のシーリング材用組成物。
8. 前記変性重合体の主鎖が、ポリオキシアルキレンである、上記1~7のいずれかに記載のシーリング材用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシーリング材用組成物は、タイルに濡れのような汚れが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、タイル貼り工法によって形成された外壁の一例を模式的に表す断面斜視図である。
図2図2は、本明細書の実施例においてノンブリード性を評価するために作製された評価用積層体を模式的に表す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルはアクリロイルまたはメタクリロイルを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、成分が2種以上の物質を含む場合、上記成分の含有量とは、2種以上の物質の合計の含有量を指す。
【0014】
[シーリング材用組成物]
本発明のシーリング材用組成物(本発明の組成物)は、
架橋性シリル基Aを有する変性重合体と、反応性可塑剤と、充填剤と、硬化触媒とを含有し、
前記反応性可塑剤が、架橋性シリル基B及び主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーを有し、前記架橋性シリル基Bの数が前記反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上であり、前記反応性可塑剤の数平均分子量が15,000以下である、シーリング材用組成物である。ただし、前記変性重合体は前記反応性可塑剤を含まない。
【0015】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
上記のように下地とタイルとの間に配置されるタイル用接着剤が可塑剤(例えば、フタル酸系可塑剤)を含有する場合、経時で、タイルが目地に接する部分に、濡れたような現象が生じる問題がある。上記の濡れたような現象は、図1において、タイル22、24が目地26に接するタイル部分29、27で示されている。
【0016】
また、下地間の目地に使用される変成シリコーン系硬化性樹脂組成物が可塑剤(例えば、フタル酸系可塑剤)を含有する場合、下地間の目地の上のタイル部分が濡れたような現象が生じる問題がある。上記の濡れたような現象は、図1において、下地12、14間の目地16の上のタイル部分28で示されている。
【0017】
このようなタイルにおける濡れたような現象が生じる原因は、変成シリコーン系硬化性樹脂組成物(目地16もしくはシーリング材層18)またはタイル用接着剤(タイル用接着剤層20)に含有される低分子可塑剤がブリードすることによるものと考えられる。
この問題を解決するために本発明者はまず、下地とタイルとの間に使用されるシーリング材用組成物をノンブリードタイプにすることに想到した。
【0018】
本発明においては、変性重合体が有する架橋性シリル基Aと、反応性可塑剤が有する架橋性シリル基Bとが反応することによって、反応性可塑剤が変性重合体のネットワークに強固に組み込まれ、反応性可塑剤がシーリング材からブリードすることを抑制すると考えられる。
また、下地間のシーリング材が可塑剤を含有したとしても、下地とタイル間のシーリング材層のネットワークが強固であることによって、下地間のシーリング材の可塑剤がタイルへ移行することを防ぐことができると考えられる。
また、下地とタイル間のシーリング材層は所定の反応性可塑剤以外の可塑剤を更に含有したとしても、上記シーリング材層のネットワークが強固であるため、上記シーリング材層中の可塑剤がタイルへ移行することを防ぐことができると考えられる。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0019】
<<変性重合体>>
本発明の組成物に含有される変性重合体は、架橋性シリル基Aを有する、変性された重合体である。変性重合体は、架橋性シリル基Aで変性された重合体であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0020】
(変性重合体の主鎖)
変性重合体の主鎖としては、例えば、(メタ)アクリル系重合体のような炭化水素の骨格を有する重合体;ポリエーテルが挙げられる。なかでも、変性重合体の主鎖が、ポリエーテルであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
変性重合体の主鎖の骨格は、直鎖状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0021】
・ポリエーテル
変性重合体の主鎖としてのポリエーテルとしては、例えば、ポリオキシアルキレンが挙げられる。ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレンとしては例えば、オキシエチレン、オキシプロピレンが挙げられる。
【0022】
・(メタ)アクリル系重合体
変性重合体の主鎖としての(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体による繰り返し単位を有する重合体であれば特に制限されない。
【0023】
上記(メタ)アクリル系重合体の主鎖を形成するアクリル酸エステル単量体としては、例えば、
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、第3ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n-ヘプチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ウンデシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ミリスチルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレートのようなアクリル酸アルキルエステルまたはこれに対応するメタクリル酸アルキルエステル;
フェニルアクリレート、トルイルアクリレート、ベンジルアクリレート、ビフェニルアクリレートのような芳香族炭化水素を有するアクリル酸エステルまたはこれに対応するメタクリル酸エステル;
ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ポリオキシアルキレンジオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)のモノ(メタ)アクリレートのようなヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
アルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル(例えば、上記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシ基がアルコキシ基に置換された(メタ)アクリル酸エステル);
グリシジルアクリレートのようなエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
2-アミノエチルアクリレートのようなアミノ基及び/又はイミノ基を有するアクリル酸エステルまたはこれに対応するメタクリル酸エステル;
ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートのような第3級アミンを有するアクリル酸エステルまたはこれに対応するメタクリル酸エステル;
トリフルオロメチルメチルアクリレート、2-トリフルオロメチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、パーフルオロエチルアクリレート、パーフルオロメチルアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルアクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレート、2-パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレートのようなハロゲンを有するアクリル酸エステル等のアクリル酸エステルまたはこれに対応するメタクリル酸エステルが挙げられる。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
また、上記(メタ)アクリル系重合体の主鎖が有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の繰り返し単位の量は、入手性および得られる硬化物の耐候性や低温での柔軟性がという理由から、主鎖を構成する繰り返し単位全量の50質量%を越えることが好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0025】
更に、上記(メタ)アクリル重合体の主鎖は、上記繰り返し単位のほかに、これらと共重合性を有する単量体による繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシ基を含有する単量体単位;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド等のアミド基を含有する単量体単位;アミノエチルビニルエーテル;ポリオキシエチレンアクリレート、ポリオキシエチレンメタクリレート等は、湿分硬化性および内部硬化性の点で共重合効果を期待することができる。
そのほかに、アクリロニトリル、スチレン、α-メチルスチレン、アルキルビニルエーテル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、エチレン等に起因する単量体単位が挙げられる。
【0026】
上記(メタ)アクリル重合体の単量体組成は、用途、目的等により適宜選択することができる。
【0027】
<架橋性シリル基A>
本発明において、架橋性シリル基Aは縮合反応を起こす基を意味する。架橋性シリル基Aは、例えば湿気等の存在下で又は高温条件下で硬化触媒等を使用することにより、縮合反応することができる。
架橋性シリル基Aとしては、例えば、ケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基、シラノール基が挙げられる。より具体的には例えば、下記一般式(1)で表される基が挙げられる。
【0028】
【化1】
【0029】
一般式(1)中、R6およびR7は、それぞれ独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基または(R83SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R6またはR7が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
ここで、R8は炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個のR8は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
上記一般式(1)におけるR6およびR7の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの脂環式炭化水素基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基;R8がメチル基やフェニル基などである(R83SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基;等が挙げられる。R6、R7、R8としてはメチル基が特に好ましい。
【0031】
上記一般式(1)において、Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
上記Yで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうち、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基であることが好ましく、加水分解性が穏やかで取り扱いやすいという理由からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0033】
上記一般式(1)において、aは0、1、2または3を示す。
上記一般式(1)において、bは0、1または2をそれぞれ示す。
上記一般式(1)において、tは0~19の整数を示す。
ただし、上記一般式(1)において、a+t×b≧1を満足するものとする。
【0034】
なお、tが複数である場合、t個の繰り返し単位数を有する繰り返し単位(下記一般式(2)で表される基)において、bは同じでも異なっていてもよい。
【0035】
【化2】
【0036】
なかでも、架橋性シリル基Aは、下記一般式(3)で表される架橋性シリル基が、入手容易の点から好ましい。下記一般式(3)中、R7、Y、aは上述のR7、Y、aと同義である。
【0037】
【化3】
【0038】
架橋性シリル基Aは、変性重合体の主鎖の末端および側鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種に結合することができる。架橋性シリル基Aは、変性重合体の主鎖の両末端に結合することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
変性重合体において、主鎖と架橋性シリル基Aとは直接又は有機基を介して結合することができる。有機基は特に制限されない。
【0039】
上記変性重合体の合成は特に限定されず、公知の方法により合成することができる。
【0040】
上記変性重合体の数平均分子量は、本発明の効果により優れ、重合時の難易度、相溶性、取扱い粘度の点から、1,000~100,000が好ましい。
また、上記数平均分子量は、本発明の効果により優れ、強度と粘度とのバランスの点から、10,000~50,000が好ましい。
上記数平均分子量は、本発明の効果により優れ、作業性等取扱いの容易さ、接着性等の点から、10,000~30,000が好ましい。
上記数平均分子量は、15,000を超える値であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記変性重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算での数平均分子量である。
【0041】
変性重合体が1分子あたりに有する架橋性シリル基Aの数は、本発明の効果により優れ、ノンブリード性に優れるという観点から、0.2個以上が好ましく、1個以上がより好ましく、1個を超え3個以下が更に好ましく、2個以下が特に好ましい。
なお、本発明において、変性重合体が1分子あたりに有する架橋性シリル基Aの数は、平均値である。
【0042】
変性重合体としては、例えば、カネカ社製のカネカテレケリックポリアクリレート-SA100S、SA110S、SA120S、SA310S、SA802S等のような変性(メタ)アクリル重合体;MSP-S203Hのような変性ポリエーテルが挙げられる。
【0043】
上記変性重合体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なお、本発明において、上記変性重合体は後述する反応性可塑剤を含まない。
【0044】
<<反応性可塑剤>>
本発明の組成物に含有される反応性可塑剤は、架橋性シリル基B及び主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーを有する。
本発明において、反応性可塑剤は、架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。また、架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーは、主鎖の骨格が直鎖状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0045】
<主鎖骨格>
反応性可塑剤は主鎖骨格として(メタ)アクリル系ポリマーを有する。上記(メタ)アクリル系ポリマーは、変性重合体が主鎖として有する(メタ)アクリル系重合体と同様である。
【0046】
<架橋性シリル基B>
本発明の組成物に含有される反応性可塑剤は、架橋性シリル基Bを有する。
架橋性シリル基Bは架橋性シリル基Aと同様である。
本発明の効果がより優れる点で、変性重合体の架橋性シリル基Aがケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基であり、反応性可塑剤の架橋性シリル基Bがケイ素原子と結合した加水分解性基を有するケイ素含有基又はシラノール基である組合せが好ましい。
【0047】
架橋性シリル基Bは、(メタ)アクリル系ポリマーの末端および側鎖からなる群から選ばれる少なくとも1種に結合することができる。
反応性可塑剤において、主鎖骨格としての(メタ)アクリル系ポリマーと架橋性シリル基Bとは直接又は有機基を介して結合することができる。有機基は特に制限されない。
【0048】
架橋性シリル基Bの数は、反応性可塑剤1分子あたり0.2個以上であり、本発明の効果がより優れ、物性又はノンブリード性に優れる点で、0.2~1.0個が好ましく、0.4~0.8個がより好ましい。
なお、本発明において、反応性可塑剤が1分子あたりに有する架橋性シリル基Bの数は、平均値である。
【0049】
反応性可塑剤の数平均分子量は15,000以下である。
反応性可塑剤の数平均分子量は、本発明の効果がより優れ、粘度に優れる点で、3,000~10,000が好ましく、7,000~9,500がより好ましい。
反応性可塑剤の数平均分子量はテトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算での数平均分子量である。
【0050】
反応性可塑剤は室温において液状であることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
また、反応性可塑剤のガラス転移温度(Tg)は、本発明の効果がより優れ、低温時のゴム物性に優れる点で、-30℃以下が好ましく、-40~-60℃がより好ましい。本発明において、反応性可塑剤のガラス転移温度は、JIS K7121に基づき測定できる。
【0051】
反応性可塑剤はその製造方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0052】
反応性可塑剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、反応性可塑剤は、架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーと、上記ポリマーと主鎖の種類が共通するが架橋性シリル基Bを有さない(メタ)アクリル系ポリマーとの混合物であってもよい。上記混合物に含有される上記架橋性シリル基Bを有さない(メタ)アクリル系ポリマーは、架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーを製造する際に使用された原料の未反応物であってもよい。
反応性可塑剤としては、例えば、1つ又は複数の架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーと、上記ポリマーと主鎖の種類が共通するが、架橋性シリル基Bを有さないポリマーとの混合物が挙げられる。
反応性可塑剤は、1つの架橋性シリル基Bで変性された(メタ)アクリル系ポリマーと、上記ポリマーと主鎖の種類が共通するが、架橋性シリル基Bを有さないポリマーとの混合物が好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0053】
反応性可塑剤の含有量は、本発明の効果がより優れ、ノンブリード性に優れる点で、変性重合体100質量部に対して、20~200質量部であることが好ましく、50~150質量部がより好ましい。
【0054】
<充填剤>
本発明の組成物に含有される充填剤は、シーリング材用組成物に含有できる充填剤であれば特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、カーボンブラックなどが挙げられる。
なかでも、炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムがより好ましい。
【0055】
また、充填剤は表面処理されたものであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。表面処理剤としては、例えば、脂肪酸が挙げられる。
充填剤を表面処理する方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
充填剤は、表面処理されたコロイダル炭酸カルシウムが好ましい。
充填剤はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
充填剤の含有量は、本発明の効果がより優れ、作業性に優れる点で、変性重合体100質量部に対して、100~300質量部であることが好ましく、150~250質量部がより好ましい。
【0057】
<硬化触媒>
本発明の組成物に含有される硬化触媒は、架橋性シリル基を加水分解及び/又は縮合させうる化合物であれば特に制限されない。
【0058】
硬化触媒が錫触媒を含むことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0059】
錫触媒は特に制限されない。例えば、オクタン酸錫、ブタン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫のような2価の錫触媒(カルボン酸金属塩);4価の錫触媒が挙げられる。
【0060】
硬化触媒は、本発明の効果がより優れ、硬化性又は貯蔵安定性に優れる点で、4価の錫触媒を含むことが好ましい。
4価の錫触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、酸化ジブチル錫、酸化ジブチル錫とフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫(トリエトキシシロキシ)のような有機錫化合物が挙げられる。
【0061】
なかでも、ジブチル錫ジアセテートが好ましい。
硬化触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0062】
硬化触媒の含有量は、本発明の効果がより優れ、可使時間が適切な長さとなり硬化性に優れる点で、変性重合体100質量部に対して、0.01~5.0質量部であることが好ましく、0.1~2.0質量部がより好ましい。
【0063】
本発明の組成物は上記成分の他に更に添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、所定の変性重合体以外の変性重合体、所定の反応性可塑剤以外の可塑剤、シランカップリング剤、チクソ付与剤、脱水剤、減粘剤(例えば、炭化水素系溶剤)が挙げられる。
【0064】
本発明の組成物は、発明の効果がより優れ、低温作業性に優れる点で、炭化水素系溶剤を実質的に含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。炭化水素系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、イソパラフィン系炭化水素系溶剤が挙げられる。本発明において、炭化水素系溶剤を実質的に含有しないとは、炭化水素系溶剤の含有量が本発明の組成物全量に対して0~1質量%であることを意味する。
【0065】
本発明の組成物はその製造方法について特に制限されない。例えば、上記所定の成分、及び、必要に応じて含有することができる添加剤を混合することによって製造することができる。
本発明の組成物を1液型組成物として製造することができる。
【0066】
本発明の組成物はシーリング材用組成物として使用することができる。
本発明の組成物はシーリング材層を形成することができる。また、本発明の組成物は例えば下地(例えば、ボード)とタイルとの間のシーリング材層を形成することができる。
【0067】
本発明の組成物を適用することができる基材(下地を含む)は特に制限されない。例えば、ガラス、プラスチック、ゴム、木材、金属、アスファルト、石、多孔質部材(例えば、モルタル)、コンクリート、タイルが挙げられる。
本発明の組成物を下地としてのサイディングボードに適用することが好ましい態様の1つとして挙げられる。サイディングボードは特に制限されない。
本発明の組成物を基材に適用する方法は特に制限されない。
【0068】
本発明の組成物は、例えば、空気中の湿気などによって硬化することができる。
硬化の際の温度は特に制限されない。硬化の際の温度は、例えば、5~40℃とすることができる。
空気中の湿度が低い場合であっても、本発明の組成物は、例えば70℃以上の温度条件下で硬化することができる。
【0069】
本発明の組成物によって形成されたシーリング材層の上に接着剤(例えば、タイル用接着剤)を打ち継ぐことができる。接着剤は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
接着剤によって接着させる被着体は特に制限されない。例えば、上記基材と同様のものが挙げられる。
【0070】
本発明の組成物によれば、例えば、基材(下地)の上に本発明の組成物によって形成されるシーリング材層を有し、シーリング材層の上に接着剤層を有し、接着剤層の上にタイルを有する積層体を得ることができる。
【0071】
また、本発明の組成物によって形成されたシーリング材層の上に、例えば、塗料を塗布することができる。この場合、例えば、基材(下地)の上に本発明の組成物によって形成されるシーリング材層を有し、シーリング材層の上に塗料層を有する積層体を得ることができる。
【実施例
【0072】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。本明細書において、実施例4を参考例4と読み替えるものとする。
(反応性可塑剤1~3の調製)
・反応性可塑剤1の調製
1L3口フラスコにトルエン200g、V-MTG97.6g(メトキシトリエチレングリコールアクリレート、大阪有機化学工業社製)、KBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:2.1g、及び、アゾビスイソブチロニトリル(ABN-R)1.4gを、各々入れ、系内を窒素置換した。その後、80℃に加熱攪拌し、3時間後更にアゾビスイソブチロニトリル0.7g加え、80℃の条件下で6時間加熱攪拌した。その後、エバポレーターでトルエンを除去して反応性可塑剤1を得た。
反応性可塑剤1は、主鎖がポリアクリル酸エステルであり、架橋性シリル基Bとしてトリメトキシシリル基を有する。反応性可塑剤1のガラス転移温度は-50℃である。反応性可塑剤1の数平均分子量は9000であり、反応性可塑剤1は1分子中に架橋性シリル基Bを0.7個(平均値)有する。
【0073】
・反応性可塑剤2の調製
1L3口フラスコにトルエン200g、V-MTG97.6g(メトキシトリエチレングリコールアクリレート、大阪有機化学工業社製)、KBM503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:3.1g、及び、アゾビスイソブチロニトリル(ABN-R)1.4gを、各々入れ、系内を窒素置換した。その後、80℃に加熱攪拌し、3時間後更にアゾビスイソブチロニトリル0.7g加え、80℃の条件下で6時間加熱攪拌した。その後、エバポレーターでトルエンを除去して反応性可塑剤2を得た。
反応性可塑剤2は、主鎖がポリアクリル酸エステルであり、架橋性シリル基Bとしてトリメトキシシリル基を有する。反応性可塑剤2のガラス転移温度は-50℃である。反応性可塑剤2の数平均分子量は9000であり、反応性可塑剤2は1分子中に架橋性シリル基Bを1個(平均値)有する。
【0074】
・反応性可塑剤3の調製
1L3口フラスコにトルエン200g、V-MTG97.6g(メトキシトリエチレングリコールアクリレート、大阪有機化学工業社製)、KBM502(3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン:2.0g、及び、アゾビスイソブチロニトリル(ABN-R)1.4gを、各々入れ、系内を窒素置換した。その後、80℃に加熱攪拌し、3時間後更にアゾビスイソブチロニトリル0.7g加え、80℃の条件下で6時間加熱攪拌した。その後、エバポレーターでトルエンを除去して反応性可塑剤3を得た。
反応性可塑剤3は、主鎖がポリアクリル酸エステルであり、架橋性シリル基Bとしてジメトキシシリル基を有する。反応性可塑剤3のガラス転移温度は-50℃である。反応性可塑剤3の数平均分子量は9000であり、反応性可塑剤3は1分子中に架橋性シリル基Bを0.7個(平均値)有する。
【0075】
<組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを撹拌機で混合し、組成物を製造した。
【0076】
<評価>
上記のとおり製造された組成物を用いて以下に示すノンブリード性の評価を行った。結果を第1表に示す。
(評価用積層体の作製)
・評価用積層体の構成
添付の図面を用いて、本明細書の実施例においてノンブリード性を評価するために作製された評価用積層体を以下に説明する。
図2は、本明細書の実施例においてノンブリード性を評価するために作製された評価用積層体を模式的に表す断面斜視図である。
図2において、評価用積層体30は、下地としてのボード32、34を有し、ボード32、34間にシーリング材層36を有し、ボード32、34及びシーリング材層36の上にタイル用接着剤層38を有する。
ボード32、34として、商品名モエンサイディング(ニチハ社製。奥行き10cm、幅10cm、高さ5cm)を使用した。
シーリング材層36として、上記のとおり製造された組成物を使用した。
タイル用接着剤層38として、タイル用アクリル接着剤(商品名ペアフィットDY、TOTO社製)を使用した。
【0077】
・評価用積層体30の調製
まず、ボード32、34を幅10cm開けて並行に置いた。
次いで、ボード32、34の間にできた上記幅の空間に上記のとおり製造された組成物を、奥行き及び高さがボード32、34と同じとなるように充填し、シーリング材層36とした。
次に、ボード32、34及びシーリング材層36の上に上記タイル用接着剤を硬化後のタイル用接着剤層38の厚さが2mmとなるように塗布して、評価用積層体30を調製した。
【0078】
・評価用積層体30の硬化
(硬化条件1)
上記のとおり調製された評価用積層体30を、100℃、Dry(相対湿度0%。以下同等)の条件下に3日間置いて、評価用積層体30を硬化させた。
(硬化条件2)
上記のとおり調製された評価用積層体30を、80℃、Dryの条件下に14日間置いて、評価用積層体30を硬化させた。
(硬化条件3)
上記のとおり調製された評価用積層体30を、70℃、Dryの条件下に28日間置いて、評価用積層体30を硬化させた。
【0079】
・ノンブリード性の評価基準
上記の各硬化条件で硬化させたあとの評価用積層体30のタイル用接着剤層38を目視で観察した。
観察の結果、タイル用接着剤層38に全く異常がなかった場合、タイルに生じる濡れのような汚れの抑制に非常に優れると評価して、これを◎と表示した。
タイル用接着剤層38に濡れた感じが認められなかった場合、タイルに生じる濡れのような汚れの抑制に優れると評価して、これを〇と表示した。
タイル用接着剤層38にうっすら濡れた様子が認められた場合、タイルに生じる濡れのような汚れの抑制がやや悪いと評価して、これを△と表示した。
タイル用接着剤層38にはっきり濡れた様子が認められた場合、タイルに生じる濡れのような汚れの抑制が悪いと評価して、これを△△と表示した。
タイル用接着剤層38の表面に液体が明らかに生じた場合、タイルに生じる濡れのような汚れの抑制ができなかったと評価して、これを×と表示した。
【0080】
【0081】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
【表2】

なお、反応性可塑剤1~3は架橋性シリル基Bを末端又は側鎖に有する。
反応性可塑剤4において、架橋性シリル基Bは主鎖の末端に結合する。
【0082】
第1表に示す結果から明らかなように、所定の反応性可塑剤を含有せず代わりにこれ以外の可塑剤を含有する比較例1~5はタイルに生じる濡れのような汚れを抑制しなかった。
【0083】
これに対して、本発明の組成物は所望の効果を得ることができた。
【0084】
実施例2、3及び5と比較例6とを硬化条件3について比較すると、実施例2、3及び5はノンブリード性において比較例6よりも優れていた。
【符号の説明】
【0085】
10 外壁
12、14 下地
16、26 目地
18、36 シーリング材層
20、38 タイル用接着剤層
22、24 タイル
27、28、29 タイル部分
30 評価用積層体
32、34 ボード
図1
図2