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  • 特許-切削装置の使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】切削装置の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20231128BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231128BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231128BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 F
B24B49/12
B24B47/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019148718
(22)【出願日】2019-08-14
(65)【公開番号】P2021030316
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】神垣 政圭
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114294(JP,A)
【文献】特開2019-057525(JP,A)
【文献】特開2015-188027(JP,A)
【文献】特開2013-074242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/301
B24B 49/12
B24B 47/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持し回転可能な保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該保持手段をX軸方向に加工送りするX軸移動手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動手段と、該切削手段のX軸方向に隣接して配設され該保持手段に保持された被加工物を撮像する撮像手段と、を備え、
該撮像手段が該保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが該回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設されている切削装置の使用方法であって、
該保持手段に保持された被加工物を該撮像手段の直下に位置付ける位置付け工程と、
該第一領域に位置付けられた被加工物を撮像して第一の画像を取得する第一の画像取得工程と、
該保持手段を180°回転して、該第二領域にあった被加工物を該第一領域に位置付けて被加工物を撮像して第二の画像を取得する第二の画像取得工程と、
を含み、
該第一の画像及び該第二の画像に基づいて被加工物上の分割予定ラインを検出する切削装置の使用方法。
【請求項2】
該被加工物は、複数の分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスを有する基板であって、少なくとも第一の基板及び第二の基板を備えており、
該第一の画像取得工程において、該第一領域に位置付けられた該第一の基板を撮像して取得した該第一の画像に基づいて該第一の基板の分割予定ラインの位置を検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施し、
該第二の画像取得工程において、該第一領域に位置付けられた該第二の基板を撮像して取得した該第二の画像に基づいて該第二の基板の分割予定ラインの位置を検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施する請求項1に記載の切削装置の使用方法。
【請求項3】
該第一の基板及び該第二の基板は、分割予定ラインに対応した特徴パターンを備えており、
該第一の画像取得工程において、該第一の画像を参照して該特徴パターンに基づくパターンマッチングによって該第一の基板の分割予定ラインを検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施し、
該第二の画像取得工程において、該第二の画像を参照して該特徴パターンを180度回転させた特徴パターンに基づくパターンマッチングによって該第二の基板の分割予定ラインを検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施する請求項に記載の切削装置の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像手段が、保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設されている切削装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画され、表面に形成されたウエーハは、切削ブレードを備えた切削装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、分割予定ラインによって区画された配線基板に複数のデバイスチップが配設されデバイス側にモールド樹脂を被覆したパッケージ基板も切削装置によって個々のパッケージデバイスに分割される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-196328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
切削装置を使用して大型のパッケージ基板を個々のデバイスチップに分割してパッケージデバイスを大量に生産する場合は、大型の切削装置が選択されるが、小さなパッケージ基板を個々のデバイスチップに分割して少量生産するような場合は、小型の切削装置が選択される。このような小型の切削装置は、狭いスペースに配置することができるように、より小型化が望まれる。しかし、切削装置の小型化を追求した結果、パッケージ基板の分割予定ラインを検出するための撮像手段の取付位置が制限され、撮像領域がパッケージ基板を保持するために配設される保持手段のチャックテーブル上の一部の領域(例えば2/3領域)しかカバーできず、ダイシングフレーム内に複数のパッケージ基板を保持した場合に、全領域を一度に撮像することができないという問題が発生した。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、撮像手段が、保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設されている場合であっても、被加工物の全域を撮像することを可能にして分割予定ラインを検出することができる切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持し回転可能な保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該保持手段をX軸方向に加工送りするX軸移動手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動手段と、該切削手段のX軸方向に隣接して配設され該保持手段に保持された被加工物を撮像する撮像手段と、を備え、該撮像手段が該保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが該回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設されている切削装置の使用方法であって、該保持手段に保持された被加工物を該撮像手段の直下に位置付ける位置付け工程と、該第一領域に位置付けられた被加工物を撮像して第一の画像を取得する第一の画像取得工程と、該保持手段を180°回転して、該第二領域にあった被加工物を該第一領域に位置付けて被加工物を撮像して第二の画像を取得する第二の画像取得工程と、を含み、該第一の画像及び該第二の画像に基づいて被加工物上の分割予定ラインを検出する切削装置の使用方法が提供される。
【0008】
該被加工物は、複数の分割予定ラインによって区画された領域に複数のデバイスを有する基板であって、少なくとも第一の基板及び第二の基板を備えており、該第一の画像取得工程において、該第一領域に位置付けられた該第一の基板を撮像して取得した該第一の画像に基づいて該第一の基板の分割予定ラインの位置を検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施し、該第二の画像取得工程において、該第一領域に位置付けられた該第二の基板を撮像して取得した該第二の画像に基づいて該第二の基板の分割予定ラインの位置を検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施するものであってよい。また、該第一の基板及び該第二の基板は、分割予定ラインに対応した特徴パターンを備えており、該第一の画像取得工程において、該第一の画像を参照して該特徴パターンに基づくパターンマッチングによって該第一の基板の分割予定ラインを検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施し、該第二の画像取得工程において、該第二の画像を参照して該特徴パターンを180度回転させた特徴パターンに基づくパターンマッチングによって該第二の基板の分割予定ラインを検出して該切削ブレードとの位置合わせを実施することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の切削装置の使用方法は、被加工物を保持し回転可能な保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該保持手段をX軸方向に加工送りするX軸移動手段と、該切削手段をX軸方向と直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動手段と、該切削手段のX軸方向に隣接して配設され該保持手段に保持された被加工物を撮像する撮像手段と、を備え、該撮像手段が該保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが該回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設されている切削装置の使用方法であって、該保持手段に保持された被加工物を該撮像手段の直下に位置付ける位置付け工程と、該第一領域に位置付けられた被加工物を撮像して第一の画像を取得する第一の画像取得工程と、該保持手段を180°回転して、該第二領域にあった被加工物を該第一領域に位置付けて被加工物を撮像して第二の画像を取得する第二の画像取得工程と、を含み、該第一の画像及び該第二の画像に基づいて被加工物上の分割予定ラインを検出するので、小型化を優先して撮像手段を配設し、そのままでは、撮像手段が保持手段上の回転中心を含む第一領域を撮像できるが、回転中心を含まない第二領域を撮影できない位置に配設された場合であっても、保持手段上の被加工物の全域を撮像手段によって捉えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】切削装置の全体斜視図である。
図2図1の切削装置を用いて第一の画像取得工程を実施する際の態様を示す斜視図である。
図3図1の切削装置を用いて第二の画像取得工程を実施する際の態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される切削装置の使用方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態の切削装置の使用方法を実現すべく構成された切削装置1の斜視図が示されている。切削装置1は、被加工物を保持する保持手段20と、該保持手段20を図中矢印Xで示すX軸方向に加工送りするX軸移動手段30と、被加工物を切削する切削手段40と、切削手段40を該X軸方向と直交する図中矢印Yで示すY軸方向に割り出し送りするY軸移動手段50と、切削手段40のX軸方向に隣接して配設され保持手段20に保持された被加工物を撮像する撮像手段6と、を備えている。
【0013】
保持手段20は、図1に示すように、X軸方向において移動自在に基台2に搭載された矩形状のX軸方向可動板21と、X軸方向可動板21の上面に固定された円筒状の支柱22と、支柱22の上端に固定された矩形状のカバー板23とを含む。カバー板23にはカバー板23上に形成された円形の穴を通って上方に延びるチャックテーブル24が配設されている。チャックテーブル24は、粘着テープTを介して被加工物を保持した環状のフレームFを保持し、支柱22内に収容された図示しない回転駆動手段により矢印R1で示す方向に回転可能に構成される。チャックテーブル24の上面は、通気性を有する多孔質材料から形成され、実質上水平に延在する保持面を構成する。チャックテーブル24は、支柱22内を通る図示しない流路によって吸引手段(図示は省略)に接続されている。チャックテーブル24の外側には、チャックテーブル24に保持されるフレームFを把持するクランプ25が間隔をおいて複数配設される。
【0014】
X軸方向移動手段30は、モータ31の回転運動を、ボールねじ32を介して直線運動に変換してX軸方向可動板21に伝達し、基台2上のX軸案内レール2A、2Aに沿ってX軸方向可動板21をX軸方向において進退させる。
【0015】
切削手段40は、保持手段20のY軸方向に隣接した後方位置に配設されている。切削手段40はスピンドルユニット41を備えている。スピンドルユニット41は、回転スピンドル42の先端部に固定され外周に切り刃を有する切削ブレード43と、切削ブレード43を保護するブレードカバー44とを備えている。切削ブレード43は、回転スピンドル42と共に回転可能に構成されている。ブレードカバー44には、切削ブレード43に隣接する位置に切削水供給手段45が配設されており、ブレードカバー44を介して導入される切削水を切削位置に向けて供給する。スピンドルユニット41の他端側にはモータ等の回転駆動源が収容されており、該モータは回転スピンドル42を回転させることで切削ブレード43を回転させる。
【0016】
上記した切削手段40は、切削手段支持部47によって支持されている。基台2上には、Y軸方向に平行な一対のY軸案内レール2B、2Bが配設されており、Y軸案内レール2B、2Bには切削手段支持部47がスライド可能に取り付けられている。切削手段支持部47は、Y軸移動手段50によってY軸方向に沿って移動可能に構成されている。Y軸移動手段50は、モータ51の回転運動を、ボールねじ52を介して直線運動に変換して、切削手段支持部47に伝達し、基台2上のY軸案内レール2B、2Bに沿って切削手段支持部47をY軸方向において進退させる。
【0017】
切削手段支持部47の上部側面には、矢印Zで示すZ軸方向(上下方向)に平行な一対のZ軸案内レール48が設けられている。Z軸案内レール48には、スピンドルユニット41を支持するZ軸移動基台46がスライド可能に取り付けられている。切削手段支持部47には、モータ49が配設されており、モータ49の回転を図示しないボールねじを介して直線運動に変換し、Z軸移動基台46に伝達する。該モータ49を回転させることにより、Z軸移動基台46を介して切削手段40をZ軸方向において進退させる。
【0018】
切削手段40を構成する切削ブレード44のX軸方向に隣接する位置には、保持手段20のチャックテーブル24上を撮像する撮像手段6が配設されている。撮像手段6は、被加工物を切削加工する際に、被加工物を撮像して画像を取得してアライメントを実施し、切削すべき被加工物の分割予定ラインの位置を検出する。
【0019】
切削装置1は、後述するように、制御手段100を備えている(図2図3を参照)。制御手段100は、コンピュータにより構成され、制御プログラムに従って演算処理する中央演算処理装置(CPU)と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)と、撮像手段6が撮像した画像、検出した検出値、及び演算結果等を一時的に格納するための読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース、及び出力インターフェースとを備えている(詳細についての図示は省略)。制御手段100は、切削装置1の各作動部を制御すると共に、撮像手段6によって撮像された画像を含む適宜の情報を記録すると共に、撮像手段6によって撮像され取得された画像に基づいてパターンマッチング等を行うことで分割予定ラインの位置を検出する制御プログラムを備える。
【0020】
本実施形態の切削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、以下のその作用について、詳細に説明する。
【0021】
本実施形態の被加工物は、例えば、図2、3に記載されているように、長方形の第一の基板10A、及び第二の基板10Bであり、分割予定ライン14によって区画された配線基板上に複数のデバイスチップ12が配設されデバイス側にモールド樹脂を被覆して構成されたパッケージ基板である。なお、上記した第一の基板10A、第二の基板10Bは、設計上同一の基板である。図2に示すように、第一の基板10A、及び第二の基板10Bの角部には、それぞれ特徴パターン16a、16b、及び特徴パターン16c、16dが形成されている。特徴パターン16a~16dを形成する位置、及びその形状は任意であるが、例えば、第一の基板10A、及び第二の基板10Bのデバイスチップ12が形成されていない外周枠部の上辺側であって、右方側に頂点が方向付けられた正三角形である。本実施形態では、開口部を有する環状のフレームFに外周が貼着された粘着テープT上に、第一の基板10A、及び第二の基板10Bが、所定の位置、所定の方向になるように貼着されている。特徴パターン16a~16dは、チャックテーブル24を180度回転させた際に、回転させる前の特徴パターンとは異なる形状となる図形であることが好ましい。以下に、切削加工を施す際に実施される分割予定ラインを検出する切削装置1の使用方法についてより具体的に説明する。
【0022】
(位置付け工程)
図2には、チャックテーブル24(図示は省略されている)に粘着テープTを介して保持された第一の基板10A、及び第二の基板10Bが示されている。そして、チャックテーブル24に保持された第一の基板10A、及び第二の基板10Bは、上記したX軸方向移動手段30を作動させることにより、撮像手段6の直下の撮像位置に位置付けられる(位置付け工程)。チャックテーブル24が該撮像位置に位置付けられた状態では、第一の基板10A、及び第二の基板10Bは、X軸方向に並べられた状態であり、一方の分割予定ライン14がX軸方向に沿うように位置付けられている。該撮像位置は、図1においてチャックテーブル24が位置付けられている位置であり、最も撮像手段6側に移動させた状態である。
【0023】
(第一の画像取得工程)
本実施形態の切削装置1は、小型化を優先して設計されており、撮像手段6を配設する位置が制限された結果、上記した位置付け工程によって撮像位置にチャックテーブル24を移動した際に撮像することが可能な範囲は、図2の2点鎖線LのX軸方向で見て右側にVaで示される第一領域に限定される。より具体的には、第一領域Vaには、チャックテーブル24を回転させる際の回転中心Pは含まれているものの、X軸方向において回転中心Pが含まれない2点鎖線Lの左側に、チャックテーブル24上であるにも関わらず、撮像できない第二領域Vbが存在しており、第一領域Vaと、第二領域Vbとにより規定されるチャックテーブル24の上面の面積比は、例えば2:1程度の割合である。本実施形態においては、まず、この第一領域Vaを撮像できる状態で、撮像手段6により第一の画像を取得する(第一の画像取得工程)。なお、図2に示すように、第一領域Vaには、第一の基板10Aの全域が含まれている。
【0024】
(第二の画像取得工程)
上記したように、本実施形態では、小型化を優先して撮像手段6を配設した結果、チャックテーブル24を最も撮像手段6の直下側の撮像位置に移動させたとしても、撮像可能な領域に位置付けることができない領域(第二領域Vb)が存在しており、その状態では、上記の第一の画像に、第二の基板10Bの全域を含むことができない。そこで、本実施形態では、保持手段20のチャックテーブル24の回転中心Pを中心に、図2の矢印R2で示す方向に180°回転して、図3に示すように、第二領域Vbにあった第二の基板10Bを撮像手段6によって撮像可能な第一領域Vaに位置付ける。これにより、第一の画像において全域を捉えることができなかった第二の基板10Bを第一領域Vaに位置付けて撮像し、第二の画像を取得する(第二の画像取得工程)。
【0025】
本実施形態では、上記したように、第一の画像取得工程、及び第二の画像取得工程を実施することにより、小型化を優先して撮像手段6を配設し、そのままでは、撮像手段6が、保持手段20上の回転中心Pを含む第一領域Vaを撮像できるが回転中心Pを含まない第二領域Vbを撮影できない位置に配設した場合であっても、チャックテーブル24上の全域を撮像手段6によって捉えることができる。したがって、チェックテーブル24上に2枚(第一の基板10A、及び第二の基板10B)、又はそれ以上の基板を保持した場合であっても、各基板の分割予定ライン14を、切削装置1のモニター(図示は省略)上に形成されたヘアーラインH(図2図3を参照)に位置付けることができ、切削ブレード44を分割予定ライン14上に正確に位置付けて切削加工を施すことができる。
【0026】
次に、上記した第一の画像取得工程、及び第二の画像取得工程と、第一の基板10A、及び第二の基板10Bに形成された特徴マーク16a~16dとを利用して、各基板の分割予定ライン14の位置を制御手段100によって検出する方法について以下に説明する。
【0027】
上記した第一の画像取得工程、及び第二の画像取得工程を実施しながら、第一の基板10A、及び第二の基板10Bに形成された特徴マーク16a~16dを利用して、分割予定ライン14の位置を検出するためには、まず、制御手段100に対し、加工する第一の基板10A、第二の基板10Bに形成された特徴パターンと、該特徴パターン及び基板上に形成された分割予定ラインの位置情報を予め記憶しておく(準備工程)。
【0028】
この準備工程は、例えば、第一の基板10A、第二の基板10Bと同一のモデル基板を予め用意して撮像し、モデル基板上の2つの特徴パターンの形状及び位置関係と、2つの特徴パターンと分割予定ラインとの位置関係を分割予定ラインの位置情報として制御手段100に記憶することで実現される。なお、2つの特徴パターンを基準にして位置が記憶される分割予定ラインは、少なくとも、所定の方向の分割予定ラインと、該所定の方向に直交する方向に形成された分割予定ラインである。また、2つの特徴パターンを基準にして位置が記憶される分割予定ラインは、モデル基板上の全ての分割予定ラインであってもよいし、所定間隔で選択されるいくつかの分割予定ラインであってもよいし、直交する2つの分割予定ラインのみであってもよい。
【0029】
上記した準備工程によって予め制御手段100に記憶された特徴パターンと、該特徴パターン及び分割予定ラインの位置関係との情報を用いて、上記した実施形態の如くチャックテーブル24に保持された第一の基板10A、第二の基板10Bの分割予定ライン14を検出する場合の手順は以下のとおりである。
【0030】
上記した実施形態の位置付け工程を実施した後、第一の画像取得工程を実施する。図2に示す第一領域Vaを撮像することで、第一の基板10Aを含む第一の画像が取得される。ここで、制御手段100に備えられた制御プログラミングにより、該第一の画像を参照しながら、制御手段100に記憶された特徴パターンに基づくパターンマッチングを実施して、第一の基板10A上の特徴パターン16a、16bを捉える。これにより、予め記憶されている特徴パターン16a、16bと分割予定ライン14との位置情報により、第一の基板10A上の分割予定ライン14の位置が検出され、分割予定ライン14とヘアーラインHとを一致させ、チャックテーブル24の回転角度、及び分割予定ライン14のY座標を制御手段100に記憶する。そして、第一の基板10A上の分割予定ラン14の位置情報が制御手段100に記憶されたならば、切削加工を実施する際に、検出された分割予定ライン14の位置情報に基づいて、切削ブレード44を正確に分割予定ライン14に位置付けることが可能になる。
【0031】
また、第二の基板10Bの分割予定ライン14を検出する際には、上記した第二の画像取得工程を実施する。図3に示すチャックテーブル24を180度回転させた後の第一領域Vaを撮像することで、第二の基板10Bを含む第二の画像が取得される。ここで、第一の基板10Aの分割予定ライン14を検出したのと同様に、制御手段100に備えられた制御プログラムによりパターンマッチングを実施する。ここで、上記したように、第二の基板10Bは、チャックテーブル24を180度回転させた状態で撮像されるものであることから、パターンマッチングを実施する際には、第一の基板10Aの分割予定ライン14を検出する際に用いた特徴パターンを180度回転させた特徴パターンで実施される。これにより、図3に示した第一領域Vaで示される第二の画像に基づいて特徴パターン16c、16dを捉えることができる。さらに、この第二の画像によって捉えられた特徴パターン16c、16dに基づいて分割予定ライン14を検出する場合、上記したように、第二の基板10Bはチャックテーブル24を180度回転させた状態で捉えられていることから、特徴パターンと分割予定ライン14との位置関係についても、準備工程において記憶された分割予定ラインの位置情報を180度座標変換して適用する。これにより、第二の画像を参照し、180度回転させた特徴パターンに基づくパターンマッチングによって、第二の基板10Bの分割予定ライン14が検出され、分割予定ライン14とヘアーラインHとを一致させ、チャックテーブル24の回転角度、及び分割予定ライン14のY座標を制御手段100に記憶する。そして、第二の基板10B上の分割予定ライン14が検出されたならば、第二の基板10Bに対する切削加工を実施する際に、検出された分割予定ライン14の位置情報に基づいて、切削ブレード44を正確に分割予定ライン14に位置付けることが可能になる。
【0032】
上記した実施形態では、チャックテーブル24上に保持されるパッケージ基板が2枚である例に基づいて本実施形態の作用を説明したが、本発明はこれに限定されず、パッケージ基板が3枚以上ある場合であってもよい。
【0033】
なお、上記した説明では、本発明が、切削装置の小型化を追求した結果、パッケージ基板の分割予定ラインを検出するための撮像手段の取付位置が制限され、撮像領域がパッケージ基板を保持するために配設される保持手段のチャックテーブル上の一部の領域しかカバーできず、ダイシングフレーム内に複数のパッケージ基板を保持した場合に、全領域を一度に撮像することができないという問題が発生したことを解決するものであると説明したが、逆に言えば、本発明の技術思想を適用することによって、切削装置の小型化をより高いレベルで実現することが可能であるということもできる。
【符号の説明】
【0034】
1:切削装置
2:基台
2A:X軸案内レール
2B:Y軸案内レール
6:撮像手段
10A:第一のパッケージ基板
10B:第二のパッケージ基板
20:保持手段
21:X方向可動板
22:支柱
23:カバー板
24:チャックテーブル
30:X軸方向移動手段
31:モータ
32:ボールねじ
40:切削手段
41:スピンドルユニット
42:回転スピンドル
43:切削ブレード
44:ブレードカバー
45:切削水供給手段
46:Z軸移動基台
47:切削手段支持部
48:Z軸案内レール
49:モータ49
50:Y軸方向移動手段
51:モータ
52:ボールねじ
100:制御手段
図1
図2
図3