(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/24 20060101AFI20231128BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20231128BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231128BHJP
【FI】
H05K3/24 A
H05K3/18 E
H01L21/92 602D
H01L21/92 602M
H01L21/92 604Q
(21)【出願番号】P 2020018318
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中林 陽子
(72)【発明者】
【氏名】坂口 勇太
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195382(JP,A)
【文献】特開2014-241320(JP,A)
【文献】特開2005-268374(JP,A)
【文献】特開平1-108749(JP,A)
【文献】特開2006-5322(JP,A)
【文献】特開2007-335629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 3/18
H05K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
前記絶縁層の上面に形成された接続端子とを有し、
前記接続端子は、
前記絶縁層の上面に積層された第1の金属層と、
前記第1の金属層の上面に積層された第2の金属層と、
前記第2の金属層の上面に積層された金属のパッドと、
前記パッドの上面及び側面を被覆し、前記絶縁層の上面に接触する表面処理層とを有し、
前記第2の金属層の端部は、前記表面処理層に接触し、
前記第1の金属層の端部は、前記第2の金属層の端部よりも前記パッドの中央側に位置し、前記表面処理層との間に空隙を形成する
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第2の金属層は、前記パッドと同じ金属の層であり、
前記第1の金属層は、前記第2の金属層と異なる金属の層である
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記第2の金属層の端部は、前記パッドの側面と同じ位置まで延び、
前記表面処理層は、前記パッドの側面とともに前記第2の金属層の端部を被覆する
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項4】
前記第2の金属層の端部は、前記パッドの側面よりも中央側に位置し、
前記パッドは、当該パッドの側面と前記第2の金属層の端部とを接続する斜面を有し、
前記表面処理層は、前記パッドの側面とともに前記斜面及び前記第2の金属層の端部を被覆する
ことを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項5】
絶縁層の上面に第1の金属層を積層する第1積層工程と、
前記第1の金属層の上面に第2の金属層を積層する第2積層工程と、
前記第2の金属層の上面に金属のパッドを形成するパッド形成工程と、
前記第2の金属層の前記パッドに覆われていない部分を除去する第1除去工程と、
前記第1の金属層の前記パッドに覆われていない部分を除去する第2除去工程と、
前記パッドの上面及び側面を被覆する表面処理層を形成する表面処理層形成工程とを有し、
前記第2除去工程は、
前記第1除去工程後の前記第2の金属層の端部よりも前記パッドの中央側まで前記第1の金属層を除去し、
前記表面処理層形成工程は、
前記第2除去工程後の前記の第1の金属層の端部との間に空隙を有する前記表面処理層を形成する
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記第2除去工程は、フッ酸をエッチング液として用いるウェットエッチングにより前記第1の金属層を除去する
ことを特徴とする請求項5記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子産業の発達に伴い、電子部品の高性能化、高機能化及び小型化が要求されている。このため、例えば半導体チップを実装する配線基板においても、高集積化、薄型化及び微細回路パターン化が要求されている。
【0003】
一般に、半導体チップなどの電子部品は、配線基板の表面に形成された接続端子に、はんだを用いて接合される。具体的には、配線基板を形成する絶縁層の表面に、例えば銅などの金属のシード層が形成され、シード層の上面に例えば銅などの金属からなるパッドが形成されることにより、接続端子が形成される。そして、この接続端子にはんだが供給され、はんだを介して配線基板の接続端子と半導体チップの接続端子とが接合される。必要に応じて、半導体チップの接続端子にはんだが供給される場合もある。
【0004】
なお、はんだの濡れ性向上等の目的により、配線基板の接続端子の表面には、ニッケル/パラジウム/金めっき等により表面処理層(金めっき層が表面側)が形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した配線基板の接続端子においては、シード層及びパッドの材料となる銅などの金属が拡散し、電子部品を接合するためのはんだにクラックを発生させることがあるという問題がある。すなわち、シード層及びパッドは、例えば銅を材料として形成されるため、銅原子が拡散して半導体チップを接合するはんだまで移動し、はんだ内部において銅を含む合金層が形成される。この結果、はんだと合金層との界面では破断が生じやすくなり、クラックが発生することがある。そして、はんだにクラックが発生すると、導通抵抗が上昇し、電子部品の接続信頼性が低下する。
【0007】
配線基板の接続端子の表面に表面処理層が形成される場合には、シード層及びパッドからの銅電子の拡散が抑制されるが、はんだにおけるクラックの発生頻度を十分に低減するまでには至らない。特に、配線基板上の配線の微細化が進行すると、配線基板上の単位面積当たりの銅の量が多くなることから、銅原子の拡散量が多くなり、はんだにおけるクラックの発生頻度が上昇する。
【0008】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、はんだにおけるクラックの発生を抑制することができる配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願が開示する配線基板は、1つの態様において、絶縁層と、前記絶縁層の上面に形成された接続端子とを有し、前記接続端子は、前記絶縁層の上面に積層された第1の金属層と、前記第1の金属層の上面に積層された第2の金属層と、前記第2の金属層の上面に積層された金属のパッドと、前記パッドの上面及び側面を被覆し、前記絶縁層の上面に接触する表面処理層とを有し、前記第2の金属層の端部は、前記表面処理層に接触し、前記第1の金属層の端部は、前記第2の金属層の端部よりも前記パッドの中央側に位置し、前記表面処理層との間に空隙を形成する。
【発明の効果】
【0010】
本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の1つの態様によれば、はんだにおけるクラックの発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施の形態に係る配線基板の構造を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態に係る配線基板の製造方法を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、ビルドアップ工程の具体例を示す図である。
【
図4】
図4は、ビアホール形成工程の具体例を示す図である。
【
図5】
図5は、密着層形成工程の具体例を示す図である。
【
図6】
図6は、シード層形成工程の具体例を示す図である。
【
図7】
図7は、レジスト層形成工程の具体例を示す図である。
【
図8】
図8は、電解めっき工程の具体例を示す図である。
【
図9】
図9は、レジスト層除去工程の具体例を示す図である。
【
図10】
図10は、シード層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図11】
図11は、密着層エッチング工程の具体例を示す図である。
【
図12】
図12は、表面処理層形成工程の具体例を示す図である。
【
図13】
図13は、一実施の形態に係る配線基板の変形例を説明する図である。
【
図14】
図14は、一実施の形態に係る配線基板の他の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願が開示する配線基板及び配線基板の製造方法の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
図1は、一実施の形態に係る配線基板100の構成を示す図である。
図1(a)は、配線基板100の表面近傍の部分断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のAの部分の拡大図である。以下の説明においては、
図1(a)の接続端子130が形成される面を配線基板100の「上面」というとともに、これに準じて上下方向を規定するが、配線基板100は、例えば上下反転して製造及び使用されても良く、任意の姿勢で製造及び使用されて良い。
【0014】
配線基板100は、絶縁層110、120、配線層111及び接続端子130を有する。
図1においては図示を省略しているが、絶縁層110の下方には、他の絶縁層及び配線層が形成されても良く、例えばガラスなどを材料とするコア層が形成されても良い。
【0015】
絶縁層110は、例えばエポキシ系樹脂又はポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いて形成される。絶縁性樹脂としては、例えば、熱硬化性の絶縁性樹脂又は感光性の絶縁性樹脂を用いることができる。絶縁層110の厚さは、例えば20~45μm程度とすることができる。絶縁層110は、シリカ(SiO2)などのフィラーを含んでいても良い。
【0016】
配線層111は、絶縁層110の上面110aに、所定の平面形状にパターニングされる。配線層111の材料としては、例えば銅(Cu)などを用いることができる。配線層111の厚さは、例えば10~20μm程度とすることができる。配線層111は、絶縁層110を貫通する図示しないビア配線等を介して、絶縁層110の下方の図示しない配線層と接続されていても良い。
【0017】
絶縁層120は、絶縁層110の上面110aに、配線層111を覆うように形成される。絶縁層120は、配線基板100の上面側の最外絶縁層である。絶縁層120の材料や厚さは、例えば絶縁層110と同様とすることができる。絶縁層120も絶縁層110と同様に、シリカ(SiO2)などのフィラーを含んでいても良い。
【0018】
絶縁層120には、絶縁層120を貫通し、底部から配線層111の上面を露出させるビアホール120aが形成されている。ビアホール120aは、絶縁層120の上面120b側に開口する開口部の径が配線層111の上面を露出させる底部の開口部の径よりも大きい逆円錐台状の貫通孔であっても良い。
【0019】
接続端子130は、絶縁層120の上面120bから突起するように形成された突起電極であり、例えば半導体チップなどの電子部品と電気的に接続することができる。接続端子130は、パッド131及び表面処理層132を有する。
【0020】
パッド131は、接続端子130の本体となる電極であり、例えば銅(Cu)の電解めっきにより形成される。具体的には、
図1(b)に示すように、絶縁層120の上面120bに密着層121が形成され、密着層121の上面にシード層122が形成され、パッド131は、シード層122の上面に電解めっきによって形成される。パッド131は、例えばセミアディティブ法又はサブトラクティブ法により形成することができる。パッド131の厚さ(ビアホール120a内は含まず、シード層122の上面より上側の部分のみの厚さ)は、例えば2~15μm程度とすることができる。また、パッド131のピッチは、例えば20~50μm程度とすることができる。
【0021】
表面処理層132は、パッド131の上面及び側面を被覆する金属層である。具体的には、
図1(b)に示すように、表面処理層132は、パッド131に近い側から順にニッケル(Ni)層132a、パラジウム(Pd)層132b及び金めっき(Au)層132cを有する。Ni層132a、Pd層132b及びAu層132cは、それぞれ例えば電解めっき法又は無電解めっき法により形成することができる。表面処理層132としては、Ni/Pd/Au層の代わりに、Ni/Au層を用いても良い。また、Ni層132aの代わりに、ニッケル合金層を用いても良い。ニッケル合金の例としては、ニッケルリン(Ni-P)及びニッケルボロン(Ni-B)などが挙げられる。
【0022】
図1(b)を参照して、接続端子130の下方端部の構成について、具体的に説明する。
【0023】
絶縁層120のビアホール120a内面及び上面120bには、密着層121及びシード層122が形成され、パッド131は、シード層122の上面に形成される。密着層121は、例えばチタン(Ti)又はクロム(Cr)などを材料とし、スパッタ法又は無電解めっき法により形成される。密着層121が形成されることにより、シード層122の絶縁層120の上面120bへの密着性が向上する。密着層121の厚さは、例えば10~500nm程度とすることができる。
【0024】
シード層122は、例えば銅(Cu)を材料とし、スパッタ法又は無電解めっき法により密着層121の上面に積層される。シード層122の厚さは、例えば100~300nm程度であり、通常は密着層121よりも厚い。シード層122の材料としては、例えばニッケル(Ni)又は銅ニッケル合金(Cu-Ni)などを用いることも可能であるが、ここでは銅(Cu)が用いられるものとする。
【0025】
図1(b)に示すように、シード層122の側方端部は、パッド131の側面と同じ位置まで延び、表面処理層132の最内層であるNi層132aに接触する。一方、密着層121の側方端部は、パッド131の側面よりも中央側に位置し、Ni層132aに接触せず空隙133が形成されている。すなわち、密着層121の端部がシード層122の端部よりもパッド131の中央側に位置するため、密着層121の端部付近では、密着層121の端部、シード層122の下面、絶縁層120の上面120b及びNi層132aによって囲まれる空隙133が形成される。この空隙133の幅(密着層121の端部からNi層132aまでの距離)は、例えば300nm程度である。
【0026】
空隙133が形成されることにより、シード層122の下面と表面処理層132(Ni層132a)との間が分断され、シード層122からの銅原子の拡散を抑制することができる。すなわち、密着層121の端部がNi層132aに接触する場合には、シード層122の銅原子がシード層122の下面から密着層121を経由して、表面処理層132及び接続端子130と電子部品を接合するはんだへ拡散可能である。これに対して、空隙133が形成される場合には、シード層122の下面から表面処理層132への密着層121を経由する銅原子の拡散経路が分断される。結果として、銅原子の拡散を抑制することができ、接続端子130と電子部品を接合するはんだにおけるクラックの発生を抑制することができる。
【0027】
特に、シード層122を形成する銅の結晶粒は、パッド131を形成する銅の結晶粒に比べて小さく拡散しやすい。このため、シード層122の下面からの銅原子の拡散を抑制することにより、シード層122からはんだへ拡散する銅の量を効果的に低減し、はんだ内部での合金層形成によるクラックの発生を抑制することができる。
【0028】
次いで、上記のように構成された配線基板100の製造方法について、
図2に示すフロー図を参照しながら具体的に説明する。
【0029】
まず、絶縁層110、配線層111及び絶縁層120を積層するビルドアップ法により、配線基板100の本体が形成される(ステップS101)。具体的には、例えば
図3に示すように、絶縁層110が図示しない他の配線層や絶縁層又はコア層などの上面に形成され、絶縁層110の上面110aに配線層111が形成される。配線層111は、例えばセミアディティブ法により、例えば銅(Cu)を所定の平面形状にパターニングすることにより形成される。そして、絶縁層110の上面110aには、配線層111を覆うように絶縁層120が積層される。絶縁層120は、配線基板100の上面側の最外絶縁層である。
【0030】
絶縁層110、配線層111及び絶縁層120が積層されると、絶縁層120にビアホール120aが形成される(ステップS102)。すなわち、例えば
図4に示すように、絶縁層120を貫通し、底部から配線層111の上面が露出するビアホール120aが形成される。ビアホール120aは、例えばCO
2レーザを用いたレーザ加工法などにより形成することができる。ビアホール120aがレーザ加工法によって形成される場合には、デスミア処理が行われてビアホール120aの底部から露出する配線層111の上面に付着した樹脂残渣が除去される。ただし、後述する密着層121の形成工程でスパッタ法が用いられる場合には、密着層121の形成時に樹脂残渣が除去されるため、ビアホール120aのデスミア処理は不要である。
【0031】
また、ビアホール120aは、例えばフォトリソグラフィ法により形成されても良い。すなわち、絶縁層120の材料として感光性の絶縁性樹脂が用いられる場合には、フォトリソグラフィ法によりビアホール120aを形成することが可能であり、この場合には、ビアホール120aの上面120b側の開口部の径を小さくすることができる。結果として、ビアホール120aの直上に接続端子130が形成される場合に、接続端子130を小型化することができる。
【0032】
ビアホール120aの形成後、絶縁層120の上面120bに密着層121が形成される(ステップS103)。具体的には、例えば
図5に示すように、絶縁層120の上面120bと、ビアホール120aの内面と、ビアホール120aの底部において露出する配線層111の上面とを連続的に被覆する密着層121が、例えばスパッタ法又は無電解めっき法により形成される。密着層121の材料としては、例えばチタン(Ti)又はクロム(Cr)などを用いることができる。密着層121の厚さは、例えば10~500nm程度とすることができる。
【0033】
そして、密着層121の上面にシード層122が形成される(ステップS104)。具体的には、例えば
図6に示すように、密着層121の上面を被覆するシード層122が、例えばスパッタ法又は無電解めっき法により形成される。シード層122の材料としては、例えば銅(Cu)、ニッケル(Ni)又は銅ニッケル合金(Cu-Ni)などを用いることが可能であるが、ここでは銅(Cu)が用いられるものとする。シード層122の厚さは、例えば100~300nm程度とすることができる。なお、シード層122の下層に例えばチタンからなる密着層121が形成されているため、絶縁層120とシード層122との密着性が良好となる。
【0034】
シード層122の形成後、シード層122の上面にレジスト層が形成される(ステップS105)。すなわち、例えば
図7に示すように、ビアホール120aの位置に開口部を有するレジスト層140が形成される。ここでは、ビアホール120aの位置に接続端子130が形成されるため、レジスト層140の開口部がビアホール120aの位置に設けられるが、他にも接続端子が形成される場合には、この接続端子に対応する位置にもレジスト層140の開口部が設けられる。
【0035】
そして、シード層122を給電層として利用する電解めっき法により、レジスト層140の開口部にパッド131が形成される(ステップS106)。具体的には、例えば
図8に示すように、ビアホール120aの内部とレジスト層140の開口部内部とに、例えば銅(Cu)が析出し、パッド131が形成される。パッド131が形成されると、例えばアルカリ性の剥離液により、レジスト層140が除去される(ステップS107)。これにより、例えば
図9に示すように、絶縁層120の上面120bにおいて、パッド131がシード層122から上方へ突起する構造体が得られる。
【0036】
そして、パッド131をマスクとして、パッド131に覆われていない部分のシード層122がエッチングにより除去される(ステップS108)。具体的には、例えば
図10に示すように、パッド131に覆われていない部分では、密着層121を除去せずにシード層122のみが選択的に除去される。すなわち、例えば硫酸-過酸化水素や過硫酸塩などのエッチング液を用いたウェットエッチングにより、チタン(Ti)からなる密着層121は除去されずに銅(Cu)からなるシード層122のみが除去される。また、例えばプラズマ処理等のドライプロセスにより、シード層122が除去されても良い。
【0037】
続いて、パッド131及び残存するシード層122をマスクとして、パッド131に覆われていない部分の密着層121がエッチングにより除去される(ステップS109)。具体的には、例えば
図11(a)に示すように、パッド131に覆われていない部分の密着層121が除去される。すなわち、例えば苛性アルカリ一過酸化水素などのエッチング液を用いたウェットエッチングにより、銅(Cu)からなるパッド131及びシード層122は除去されずにチタン(Ti)からなる密着層121のみが除去される。
【0038】
さらに、例えばエッチング液に浸漬する時間を調整することにより、シード層122の側方端部の下側の密着層121が除去される。すなわち、
図11(a)のBの部分を拡大して示す
図11(b)のように、密着層121の側方端部がシード層122の側方端部よりもパッド131の中央側に位置するようになるまで密着層121が除去される。この結果、シード層122の側方端部の下面と絶縁層120の上面120bとの間には、空隙133が形成される。シード層122の側方端部から密着層121の側方端部までの距離(すなわち空隙133の幅)は、例えば300nm程度とすることができる。
【0039】
そして、例えば無電解めっき法により、パッド131の上面及び側面を被覆する表面処理層132が形成される(ステップS110)。具体的には、例えば
図12(a)に示すように、パッド131の上面及び側面を被覆し、絶縁層120の上面120bまで到達する表面処理層132が形成される。これにより、パッド131及び表面処理層132を備える接続端子130が完成する。
【0040】
表面処理層132の形成の際には、
図12(a)のCの部分を拡大して示す
図12(b)のように、シード層122の下面と絶縁層120の上面120bとの間の空隙133を残すように、Ni層132a、Pd層132b及びAu層132cがパッド131の上面及び側面に積層される。換言すれば、表面処理層132が形成されることにより、密着層121の端部、シード層122の下面、絶縁層120の上面120b及びNi層132aによって囲まれる空隙133が形成される。表面処理層132としては、Ni/Pd/Au層の代わりに、Ni/Au層が形成されても良い。
【0041】
パッド131の表面に無電解めっき法によって表面処理層132のNi層132aを形成するためには、例えばパラジウム(Pd)が触媒として用いられる。触媒のパラジウム(Pd)は、パッド131の上面及び側面に付着するとともに、空隙133に接するシード層122の下面にも付着する。しかし、シード層122の下面と絶縁層120の上面120bとの間の距離(すなわち空隙133の高さ)は、密着層121の厚さと等しく10~500nm程度であり、非常に小さい。このため、シード層122の下面に付着する触媒は不活性であり、空隙133にはニッケルが析出しない。さらに、空隙133が小さいことから、めっき液の表面張力によってめっき液が空隙133にまで進入しづらく、空隙133にはニッケルが析出しない。結果として、Ni層132aが形成される場合にも、シード層122の下面と絶縁層120の上面120bとの間の空隙133が残る。
【0042】
このようにして空隙133を有する接続端子130が形成された配線基板100には、例えば半導体チップなどの電子部品が搭載される。このとき、配線基板100の接続端子130と電子部品の接続端子とがはんだによって接合される。したがって、接続端子130の表面処理層132のAu層132c表面には、はんだバンプが形成される。本実施の形態においては、接続端子130の下部外周に空隙133が形成されているため、シード層122の下面から表面処理層132へ銅原子が拡散する経路が分断されている。この結果、はんだバンプへの銅原子の拡散を抑制することができ、はんだ内部におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、パッドが表面処理層によって被覆される接続端子の下部において、シード層の側方端部はパッドの側面と同じ位置まで延びるのに対し、シード層の下層の密着層の側方端部はパッドの側面よりも中央側に位置し、密着層の端部、シード層の下面、絶縁層の上面及び表面処理層によって囲まれる空隙が形成される。このため、結晶粒が小さく銅原子が拡散しやすいシード層の下面から表面処理層に接合するはんだまでの経路が分断され、銅原子の拡散が抑制される。結果として、はんだ内部において銅を含む合金層が形成されることがなく、はんだにおけるクラックの発生を抑制することができる。
【0044】
なお、上記一実施の形態においては、シード層122の側方端部がパッド131の側面と同じ位置まで延びるものとしたが、シード層122の側方端部の位置はこれに限定されない。すなわち、例えばシード層122のエッチング工程において、エッチング液に浸漬する時間を調整することにより、シード層122の側方端部がパッド131の側面よりも中央側に位置するようにしても良い。具体的には、例えば
図13に示すように、シード層122がパッド131の側面よりも中央側まで除去されるようにしても良い。
【0045】
このとき、パッド131とシード層122は、いずれも銅(Cu)を材料としているため、例えば硫酸-過酸化水素や過硫酸塩などのエッチング液によるエッチングが行われると、シード層122とともにパッド131も溶解される。したがって、パッド131の側面の下端には、斜め下方を向く斜面131aが形成される。そして、表面処理層132が形成される際には、斜面131aにも触媒が付着して、例えばNi層132aを形成するニッケルが斜面131aから析出する。この結果、斜面131aから絶縁層120の上面120bへ向かう方向にNi層132aが成長し、表面処理層132の下端を絶縁層120の上面120bまで確実に到達させることができる。
【0046】
シード層122の側方端部がパッド131の側面よりも中央側に位置する場合には、パッド131に斜面131aが形成されるのに伴い、表面処理層132の下端には括れ132dが形成される。すなわち、表面処理層132は、パッド131の側面とともに、斜面131a及びシード層122の端部を被覆するため、斜面131a及びシード層122の端部の位置に応じて、表面処理層132の下端がパッド131の中央側に向かって括れる。
【0047】
この場合でも、シード層122の側方端部は、表面処理層132の最内層である例えばNi層132aに接触する。一方、密着層121の側方端部は、シード層122の側方端部よりもさらにパッド131の中央側に位置する。このため、表面処理層132に括れ132dが形成される場合でも、密着層121の端部、シード層122の下面、絶縁層120の上面120b及び表面処理層132によって囲まれる空隙133が形成される。したがって、シード層122の下面から表面処理層132までの銅原子の拡散経路が分断され、はんだにおけるクラックの発生を抑制することができる。
【0048】
上記一実施の形態においては、絶縁層120に形成されたビアホール120aの位置に接続端子130が設けられるものとしたが、接続端子は、必ずしもビアホールの位置に設けられなくても良い。具体的には、例えば絶縁層120の上面120bの平坦な部分に接続端子が形成されても良い。このような場合でも、例えば
図14に示すように、シード層122aの側方端部が表面処理層132に接触する一方、密着層121aの側方端部は表面処理層132よりもパッド131の中央側に位置し、空隙133が形成される。
【符号の説明】
【0049】
110 絶縁層
111 配線層
120 絶縁層
120a ビアホール
120b 上面
121、121a 密着層
122、122a シード層
130 接続端子
131 パッド
131a 斜面
132 表面処理層
132a Ni層
132b Pd層
132c Au層
133 空隙
140 レジスト層