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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】コット用使い捨てシート
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/02 20060101AFI20231128BHJP
【FI】
A47G9/02 Q
A47G9/02 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020029616
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021132752
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】那須 紀行
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】実開平07-030837(JP,U)
【文献】米国特許第05003649(US,A)
【文献】寝具技能士の店「菅波ふとん店」,保育園お昼寝用コットカバー(コットシーツ)のお仕立て例,寝具技能士の店 菅波ふとん店 ブログ,日本,寝具技能士の店「菅波ふとん店」,2016年06月28日,https://suganamifuton.jp/blog/?p=609
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/02
A47D 7/00~ 7/04
A47C 19/00~19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部と、前記フレーム部によって周囲を支持されたメッシュシートと、前記フレーム部の長手方向及び短手方向における四隅にそれぞれ設けられた脚部と、を備えたコットに取り付けて使用されるコット用使い捨てシートであって、
不織布製のトップシートと、
前記脚部に引っ掛けることにより、前記コット用使い捨てシートを前記コットに取り付けるための引っ掛け部と、
有し、
前記引っ掛け部は、
前記コット用使い捨てシートを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が、前記コット用使い捨てシートの表面の所定の方向に沿って断続的に並んだミシン目、
若しくは、前記コット用使い捨てシートの厚さ方向の所定の深さまで切り込みが形成されたハーフカットである、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項2】
請求項1に記載のコット用使い捨てシートであって、
高吸収性ポリマーを含んでいない、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のコット用使い捨てシートであって、
液不透過性のシート部材を有していない、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記引っ掛け部は、前記長手方向及び前記短手方向に所定の長さを有しており、
前記引っ掛け部の前記短手方向における長さが、前記引っ掛け部の前記長手方向における長さよりも長い、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記引っ掛け部は、前記長手方向における一方側の端部に一対設けられ、前記長手方向における他方側の端部の異なる位置に複数対設けられている、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記コット用使い捨てシートを折り畳むための折り目を有しており、
前記折り目と前記引っ掛け部とが重複する部分を有していない、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記コット用使い捨てシートを折り畳むための折り目を有しており、
前記折り目と前記引っ掛け部とが重複する部分を有している、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記トップシートを厚さ方向に圧搾する複数の圧搾部を有している、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のコット用使い捨てシートであって、
上下方向を有し、
前記トップシートよりも前記上下方向の下側にバックシートを有している、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項10】
請求項9に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記上下方向において、前記トップシートと前記バックシートとの間に、パルプ繊維を含んだ中層シートを有している、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項11】
請求項9または10に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記トップシートと前記バックシートとが、複数の圧搾部によって前記上下方向に接合されている、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【請求項12】
請求項11に記載のコット用使い捨てシートであって、
前記長手方向に隣り合って設けられた異なる2つの前記圧搾部の間の領域において、前記トップシートの面積は、前記バックシートの面積よりも大きい、ことを特徴とするコット用使い捨てシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コット用使い捨てシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、保育園等で園児(幼児)がお昼寝をする際に、「コット」と呼ばれる簡易ベッドが使用されることがある。このようなコットを使用する場合、園児の各々が自宅から持参したシーツや市販のベッドシートをコットに敷いて使うことが一般的である。コットに使用されるベッドシートの例としては、介護用のベッドシートを挙げることができる。例えば、特許文献1には、寝たきり患者用のベッドに敷く使い捨てシーツに、切り離し可能な切り込みを設け、使用後のシーツを切り離すことによって患者が寝たままでも交換が可能なシーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-238920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の介護用ベッドシート等はコットに取り付けて使用することを前提としていないため、サイズが合わなかったり、使用時に位置ずれが生じやすくなったりする場合があった。例えば、特許部文献1の使い捨てシーツには、コットに敷く際に位置を固定する手段が設けられていないため、当該シーツをコットに取り付けにくく、使用時に幼児が寝返りを打つとシーツがずれたりコットから外れたりするおそれがある。また、介護用ベッドシートには高吸水性ポリマー等の吸収材が設けられている場合があり、シート自体のコストが高くなったり、シート全体としての通気性が低下したりするおそれがある。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、コットに取り付けて使用する際に、位置ずれが生じ難い簡易な使い捨てシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
フレーム部と、前記フレーム部によって周囲を支持されたメッシュシートと、前記フレーム部の長手方向及び短手方向における四隅にそれぞれ設けられた脚部と、を備えたコットに取り付けて使用されるコット用使い捨てシートであって、
不織布製のトップシートと、
前記脚部に引っ掛けることにより、前記コット用使い捨てシートを前記コットに取り付けるための引っ掛け部と、
有し、
前記引っ掛け部は、
前記コット用使い捨てシートを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が、前記コット用使い捨てシートの表面の所定の方向に沿って断続的に並んだミシン目、
若しくは、前記コット用使い捨てシートの厚さ方向の所定の深さまで切り込みが形成されたハーフカットである、ことを特徴とするコット用使い捨てシートである。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コットに取り付けて使用する際に、位置ずれが生じ難い簡易な使い捨てシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】お昼寝コット10の斜視図である。
図2図2Aは、お昼寝コット10を上下方向の上側から見たときの概略平面図である。図2Bは、お昼寝コット10を短手方向の一方側から見たときの概略側面図である。
図3図3Aは、コットシート20の概略平面図である。図3Bは、コットシート20の概略断面図である。
図4】お昼寝コット10にコットシート20を取り付けた状態を表す斜視図である。
図5図5A図5Cは、お昼寝コット10にコットシート20を取り付ける方法について説明する図である。
図6】コットシート20を製造する製造装置100の一例を表す概略説明図である。
図7】コットシート20の表面に形成される圧搾部30の配置の一例について説明する拡大平面図である。
図8】コットシート20の断面構造について説明する断面模式図である。
図9】コットシート20の変形例について表す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
フレーム部と、前記フレーム部によって周囲を支持されたメッシュシートと、前記フレーム部の長手方向及び短手方向における四隅にそれぞれ設けられた脚部と、を備えたコットに取り付けて使用されるコット用使い捨てシートであって、不織布製のトップシートと、前記脚部に引っ掛けることにより、前記コット用使い捨てシートを前記コットに取り付けるための引っ掛け部と、を有することを特徴とするコット用使い捨てシート。
【0010】
このようなコット用使い捨てシートによれば、コットの四隅に設けられた脚部のそれぞれに引っ掛け部を引っ掛けることで、コットに対してコット用使い捨てシート(コットシート)を容易に取り付けることが可能であり、また、取り付け後にコットシートの位置ずれを生じ難くすることができる。したがって、位置ずれが生じ難い簡易な使い捨てコットシートを提供することができる。
【0011】
かかるコット用使い捨てシートであって、高吸収性ポリマーを含んでいない、ことが望ましい。
【0012】
このようなコット用使い捨てシートによれば、高吸収性ポリマーを含まないことにより、コットシートがゴワゴワして肌触りが悪化してしまうことを抑制できる。また、余計な材料費や製造に要する工数を削減できるため、全体として製造コストを削減することができる。
【0013】
かかるコット用使い捨てシートであって、液不透過性のシート部材を有していない、ことが望ましい。
【0014】
このようなコット用使い捨てシートによれば、防漏フィルム等の液不透過性シートを備えていないため、従来のベッドシート等と比較して通気性が高くなり、使用者(幼児等)に不快感を生じさせ難くすることができる。また、余計な材料費や製造に要する工数を削減できるため、全体として製造コストを削減することができる。
【0015】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記引っ掛け部は、前記コット用使い捨てシートを厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が、前記コット用使い捨てシートの表面の所定の方向に沿って断続的に並んだミシン目、若しくは、前記コット用使い捨てシートの厚さ方向の所定の深さまで切り込みが形成されたハーフカットである、ことが望ましい。
【0016】
このようなコット用使い捨てシートによれば、ユーザーがミシン目若しくはハーフカットを破ることによってコットシートに線状の貫通溝を形成し、当該貫通溝をお昼寝コットの脚部に通して引っ掛けることで、お昼寝コットに対してコットシートを簡単に取り付けることができる。その際、ミシン目等を破る長さを調整することで、貫通溝の大きさを変更できるので、より簡単に取り付けやすくすることができる。
【0017】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記引っ掛け部は、前記長手方向及び前記短手方向に所定の長さを有しており、前記引っ掛け部の前記短手方向における長さが、前記引っ掛け部の前記長手方向における長さよりも長い、ことが望ましい。
【0018】
このようなコット用使い捨てシートによれば、コットシートの取り付け時に、引っ掛け部を脚部に引っ掛けた状態で長手方向に引っ張った際に、引っ掛け部が短手方向に長く延びているため、長手方向端部において破れ起点が形成されにくくなる。したがって、引っ掛け部が長手方向に長く延びている場合と比較して、コットシートを破れにくくすることができる。
【0019】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記引っ掛け部は、前記長手方向における一方側の端部に一対設けられ、前記長手方向における他方側の端部の異なる位置に複数対設けられている、ことが望ましい。
【0020】
このようなコット用使い捨てシートによれば、お昼寝コットにコットシートを取り付ける際に、先ず、長手方向の一方側端部に設けられた引っ掛け部を脚部に引っ掛けてから、長手方向の他方側端部の異なる位置に設けられた複数の引っ掛け部のうち、適当な位置の引っ掛け部を選択して、脚部に引っ掛けることができる。これにより、長手方向における長さ(サイズ)の異なるお昼寝コットに対して、共通のコットシートを取り付けることが可能となる。
【0021】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記コット用使い捨てシートを折り畳むための折り目を有しており、前記折り目と前記引っ掛け部とが重複する部分を有していない、ことが望ましい。
【0022】
このようなコット用使い捨てシートによれば、折り目が起点となって引っ掛け部(ミシン目等)が自然に破れてしまったり、ミシン目を超えてコットシートが裂けてしまったりすることを抑制できる。
【0023】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記コット用使い捨てシートを折り畳むための折り目を有しており、前記折り目と前記引っ掛け部とが重複する部分を有している、ことが望ましい。
【0024】
このようなコット用使い捨てシートによれば、例えば、コットシートを構成するシート部材の生地が厚く、ユーザーが引っ掛け部(ミシン目)を破るのに大きな力が必要な場合であっても、折り目を起点として小さな力でミシン目を破ることができるようになる。
【0025】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記引っ掛け部は、前記長手方向及び前記短手方向の四隅からそれぞれ外側に突出するように設けられた、伸縮性を有するリング状の部材である、ことが望ましい。
【0026】
このようなコット用使い捨てシートによれば、引っ掛け部が伸縮性を有しているため、引っ掛け部のリングを広げながら脚部に引っ掛ける動作を行うことが可能となり、お昼寝コットに対してコットシートを簡単に取り付けることができる。また、ユーザーがミシン目を破る等の動作を行う必要がないため、コットシート取り付け時の動作を容易に行うことができる。
【0027】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記トップシートを厚さ方向に圧搾する複数の圧搾部を有している、ことが望ましい。
【0028】
このようなコット用使い捨てシートによれば、圧搾部が設けられていることによってトップシート自体の強度が高まるため、コット用使い捨てシートを破れ難くすることができる。
【0029】
かかるコット用使い捨てシートであって、上下方向を有し、前記トップシートよりも前記上下方向の下側にバックシートを有している、ことが望ましい。
【0030】
このようなコット用使い捨てシートによれば、トップシートの上下方向(厚さ方向)に重ねてバックシートが設けられていることにより、コットシート全体の強度が高くなり、コットシートを破れ難くすることができる。
【0031】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記上下方向において、前記トップシートと前記バックシートとの間に、パルプ繊維を含んだ中層シートを有している、ことが望ましい。
【0032】
このようなコット用使い捨てシートによれば、トップシート及びバックシートに加えて中層シートが積層されることにより、コットシート全体の強度をより高めることができる。また、パルプ繊維が含まれた中層シートを備えていることにより、コットシートの吸汗性を高めることができる。
【0033】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記トップシートと前記バックシートとが、複数の圧搾部によって前記上下方向に接合されている、ことが望ましい。
【0034】
このようなコット用使い捨てシートによれば、トップシートとバックシート(及び中層シート)とが圧搾部によって強固に接合されるので、コットシートの強度を高めることができる。また、接着剤を全面に塗布する場合等と比較して、コットシートの表面積に占める圧搾部(接合部)の面積の割合が小さく抑えられるため、コットシートの表面が過度に硬くならず、肌触りが悪化したり使用者に不快感を生じさせたりすることが抑制される。
【0035】
かかるコット用使い捨てシートであって、前記長手方向に隣り合って設けられた異なる2つの前記圧搾部の間の領域において、前記トップシートの面積は、前記バックシートの面積よりも大きい、ことが望ましい。
【0036】
このようなコット用使い捨てシートによれば、長手方向に隣り合う2つの圧搾部の間の領域で、バックシートと比較してトップシートの生地が多くなり、多くなった分の生地が上下方向の上側に凸変形して、トップシートの表面に凹凸が形成される。これにより、トップシートの表面がキルティング加工されたようになり、より柔らかな風合いを有するようになる。したがって、コットシートの表面におけるクッション性が高まり、肌触りをより向上させることができる。
【0037】
===実施形態===
本実施形態に係るコット用使い捨てシートとして、コットシート20を例に挙げて説明する。コットシート20は、お昼寝コット10に取り付けて使用される。
【0038】
<基本的構成>
(お昼寝コット10)
先ず、コットシート20を取り付ける対象であるお昼寝コット10について説明する。図1は、お昼寝コット10の斜視図である。図2Aは、お昼寝コット10を上下方向の上側から見たときの概略平面図である。図2Bは、お昼寝コット10を短手方向の一方側から見たときの概略側面図である。また、図1及び図2A,2Bのように、お昼寝コット10の長手方向に沿った方向を長手方向、長手方向と直交する方向を短手方向、長手方向及び短手方向と直交する方向を上下方向と定義する。
【0039】
お昼寝コット10(以下、単に「コット10」とも呼ぶ)は、床等の平面に設置して使う簡易型のベッド(コット)であり、例えば、保育園や家庭で幼児がお昼寝をする際に使用される。本実施形態のコット10は、図1に示されるようにフレーム部11と、脚部12と、シート13とを備えている。
【0040】
フレーム部11は、長手方向及び短手方向にそれぞれ沿うように配置されたパイプ等からなる骨格部材であり、アルミ等の金属や繊維強化プラスチック等、軽量で強度の高い部材によって構成されている。本実施形態のコット10で、長手方向における寸法をL1、短手方向における寸法をW1とすると、L1=100cm、W1=58cm程度となるように、フレーム部11の長さが調整されている。また、使用者(幼児等)の身体の大きさに応じて長手方向における寸法を長くしても良い。例えば、長手方向の寸法L2=130cm程度であっても良い。
【0041】
脚部12は、長手方向及び短手方向の四隅に設けられ、フレーム部11を図2Aのような長方形状に連結させつつ、床面(コット10を設置する平面)から所定の高さH1の位置で支持する部材である。本実施形態において、高さH1=15cm程度である。脚部12は、樹脂等によって構成され、その外縁部は面取りされて曲面状となっている。これにより、コット10の使用時に使用者(幼児等)の肌が接触した場合でも怪我をしにくくなるようにしている。
【0042】
また、脚部12の上面には、上下方向に所定の深さを有する略楕円形状の窪み12hが設けられており、この窪み12hに他のコット10の脚部12を挿入することが可能となっている。これにより、コット10を使用しないときには、複数のコット10を上下方向に重ねて収納しておくことが可能となり、スペースを有効に使うことができる。
【0043】
シート13は、フレーム部11によって周囲を支持されたシート部材であり、使用者(幼児等)はこのシート13の上に身体を横たえて寝ることができる。本実施形態におけるシート13は、例えば、ポリエステルやナイロン製のメッシュシートである。これにより、良好な通気性や弾力性が確保され、幼児等がお昼寝をする際に、快適な睡眠を実現しやすくなっている。但し、シート13はメッシュシートには限られず、他のシート部材によって構成されていても良い。
【0044】
このように、本実施形態のコット10は、簡易且つ軽量な構造を有しているため、持ち運びや収納を行い易い。そのため、多数の幼児を寝かしつける必要のある保育園等での使用に適している。
【0045】
(コットシート20)
続いて、コットシート20について説明する。図3Aは、コットシート20の概略平面図である。図3Bは、コットシート20の概略断面図である。図4は、お昼寝コット10にコットシート20を取り付けた状態を表す斜視図である。図3及び図4における長手方向,短手方向,上下方向は、それぞれ、図1及び図2で説明した長手方向,短手方向,上下方向とそれぞれ共通する方向である。また、以下では、コットシート20の上下方向を「厚さ方向」とも呼ぶ場合がある。
【0046】
コットシート20は、図4のようにコット10のシート13(メッシュシート)の上側に重ねて使用する使い捨てのシート部材であり、不織布等によって形成される。本実施形態においてコットシート20は、図3Aに示されるような長方形状であり、その長手方向における長さは、コット10の長手方向における長さL1(L2)よりも長い。一方、コットシート20の短手方向における長さは、コット10の短手方向における長さW1とほぼ等しい長さである。
【0047】
コットシート20は、図3Bのように、厚さ方向(上下方向)の上側に設けられたトップシート21と、厚さ方向(上下方向)の下側に設けられたバックシート22と、トップシート21とバックシート22との間に設けられた中層シート23とを有している。これらのシート部材21,22,23が厚さ方向に積層された状態で、所定の接合手段を用いて互いに接合されることにより、コットシート20が形成されている。本実施形態では、後述する複数の圧搾部30によってシート部材21,22,23が厚さ方向に溶着されているが、ホットメルト接着剤等の接合材を用いて接合されるのであっても良い。また、シート部材21,22,23の大きさ(長手方向及び短手方向における長さ)はそれぞれ異なっていても良い。
【0048】
なお、コットシート20は、少なくともトップシート21を備えていれば良く、バックシート22及び中層シート23は、必ずしも備えていなくても良い。すなわち、コットシート20はトップシート21のみからなる単層のシート部材であっても良い。本明細書中では、コットシート20が3層のシート部材21,22,23を備えているものとして説明を行う。
【0049】
トップシート21は、不織布製のシート部材であり、コットシート20をコット10に取り付けて使用する際に、使用者(幼児等)の身体と直接接触する部材である。したがって、トップシート21はなるべく強度が高く破れにくい不織布によって構成されることが望ましい。本実施形態のトップシート21としては、例えば、スパンレース不織布を使用することができる。一般に、スパンレース不織布は、高圧水流によってウェブ内の繊維を交絡させることによって形成されるため、強度が高く柔軟性に優れている。したがって、コットシート20の使用時に、お昼寝中の使用者(幼児等)が寝返りを打ったりした場合であってもトップシート21が破れにくい。また、柔軟な肌触りで使用者に不快感を生じさせにくい。さらに、トップシート21が不織布(スパンレース不織布)で構成されることによって、良好な通気性や吸汗性が確保されやすくなる。
【0050】
バックシート22は、不織布製のシート部材である。バックシート22は、トップシート21(及び中層シート23)と厚さ方向に接合されることによって、コットシート20全体としての強度を高めるために設けられる。本実施形態のバックシート22としては、例えば、SMS(スパンボンド‐メルトブローン‐スパンボンド)不織布や、エアレイド不織布等を使用することができる。
【0051】
なお、従来の介護用ベッドシート等の吸収性物品では、尿等の液体が厚さ方向に透過して寝具を汚してしまうことを抑制するために、バックシートとして液不透過性の防漏フィルムが用いられることが一般的であった。しかしながら、本実施形態のコットシート20は、保育園等でのお昼寝時に使用することを想定しており、お昼寝時には幼児におむつを履かせて寝かせることが多いため、液不透過性のフィルムを設けなくても尿漏れ等の問題は生じ難い。そこで、本実施形態のコットシート20では、バックシート22として、液不透過性のフィルム部材ではなく不織布を用いている。これにより、コットシート20は従来のベッドシート等と比較して通気性が高くなり、幼児等がお昼寝時に使用する際に不快感を生じさせ難くすることができる。また、フィルム部材を使用しないことにより、余計な材料費や製造に要する工数等を削減できるため、全体としてコットシート20の製造コストを削減することができる。
【0052】
中層シート23は、主にパルプ繊維を含んだシート部材(パルプシート)であり、コットシート20全体としての強度を高めると共に、吸汗性を向上させることができる。なお、従来の介護用ベッドシート等の吸収性物品では、トップシートとバックシートとの間に尿等の液体を吸収するために高吸水性ポリマー(所謂、SAP)等の高分子吸収剤を含んでいることが一般的であった。しかしながら、上述のように本実施形態のコットシート20の使用態様において、尿漏れ等は生じ難いため、コットシート20が過度な吸水性を備えている必要な無い。そこで、本実施形態のコットシート20は、高吸水性ポリマー等の高分子吸収剤を含まずに構成されている。高吸水性ポリマーを含まないことにより、コットシート20がゴワゴワして肌触りが悪化してしまうことを抑制できる。また、高吸水性ポリマーを使用しないことにより、製造コストを削減することができる。
【0053】
これらのシート部材21~23が厚さ方向に積層されることにより、コットシート20は、良好な肌触りや通気性を有しつつ、十分な強度を確保しやすくなる。
【0054】
コットシート20には、図4のようにコット10に取り付けて使用する際に、脚部12に引っ掛けることでコットシート20の位置ずれを抑制するための引っ掛け部25が設けられている。本実施形態における引っ掛け部25は、図3Aに示されるように、所定の方向に所定の長さを有して設けられるミシン目である。すなわち、引っ掛け部25(ミシン目)は、コットシート20を構成するシート部材21~23を厚さ方向に貫通する複数の貫通孔が、所定の方向に断続的に並ぶことによって形成されている。脚部12に引っ掛ける際には、ユーザー(例えば育児者)がミシン目に沿ってシート部材21~23を破ることによってコットシート20に線状の貫通溝を形成し、当該貫通溝に脚部12を通す(引っ掛ける)ことによって、コットシート20の位置を固定することができる。また、ミシン目を破る長さを調整することで、貫通溝の大きさを変更することができる。これにより、コット10の脚部12の大きさに応じて、引っ掛け部25の大きさを調整することが可能となり、コット10にコットシート20を取り付けやすくすることができる。
【0055】
なお、引っ掛け部25は、ミシン目以外の構造であっても良い。例えば、所定の方向に所定の長さを有しつつ、コットシート20を構成するシート部材の厚さ方向の所定の深さまで切り込みが設けられたハーフカットとしても良い。この場合もミシン目と同様に、ユーザーがハーフカットを破って、コット10の脚部12の形状や大きさに応じて線状の貫通溝を形成することで、コット10の脚部12に引っ掛け部25を引っ掛けやすくすることができる。
【0056】
また、引っ掛け部25は、コット10の長手方向及び短手方向の四隅に設けられた脚部12の各々対して設けられている。本実施形態では、図3Aのように、長手方向の一方側の端部に、一対の引っ掛け部25a,25aが設けられている。そして、長手方向の他方側には、一対の引っ掛け部25b,25bが設けられている。これにより、コット10の4本の脚部12の各々に引っ掛け部25を引っ掛けることができる。さらに、本実施形態のコットシート20には、長手方向の他方側端部において、一対の引っ掛け部25b,25bとは異なる位置に、もう一対の引っ掛け部25c,25cが設けられている。この理由については、後で説明する。
【0057】
各々の引っ掛け部25は、コットシート20の長手方向における長さがl25、短手方向における長さがw25であり、図3Aのように短手方向における長さw25の方が、長手方向における長さl25よりも長くなっている(w25>l25)。すなわち、引っ掛け部25(ミシン目等)は、長手方向よりも短手方向が長くなるように設けられている。なお、図3Aでは、引っ掛け部25(ミシン目)が直線的に形成さているが、引っ掛け部25は曲線状に形成されていても良い。
【0058】
<コットシート20の取り付け方法>
続いて、コットシート20の取り付け方法について説明する。図5A図5Cは、お昼寝コット10にコットシート20を取り付ける方法について説明する図である。
【0059】
コットシート20をコット10に取り付ける際には、先ず、コットシート20に設けられた引っ掛け部25のミシン目を破って(図3A参照)、厚さ方向に貫通する貫通溝を形成する。そして、長手方向における一方側の端部に設けられた一対の引っ掛け部25a,25aの貫通溝を、コット10の長手方向における一方側の脚部12,12にそれぞれ引っ掛ける。具体的には、図5Aのように、引っ掛け部25aの貫通溝を上下方向の下側から脚部12に通して引っ掛ける。
【0060】
次いで、コット10の長手方向における一方側の端にて、コットシート20を長手方向の他方側に折り返しつつ、長手方向の他方側に引っ張りながら、コット10(シート13)の上面側に重ねるように配置する。上述したように、コットシート20を構成するシート部材21~23は不織布等であり、いずれも長手方向に沿って伸長させることが可能である。したがって、図5Aにおいて、コットシート20は、長手方向に多少伸長した状態となっている。
【0061】
また、コット10の長手方向における一方側の端にてコットシート20が折り返される位置を第1折り返し位置F1とする(図3A及び図5A参照)。ユーザーがコットシート20の取り付け動作を行いやすいように、あらかじめ第1折り返し位置F1の位置に折り返し基準線を印刷しておく等、第1折り返し位置F1が視認可能となっていても良い。
【0062】
次いで、コット10の長手方向における他方側の端にて、コットシート20を長手方向の一方側に折り返しつつ、折り返された部分をコット10の下側に回しこみ、一対の引っ掛け部25b,25bを、コット10の長手方向における他方側の脚部12,12にそれぞれ引っ掛ける。すなわち、図5Bのように、引っ掛け部25bの貫通溝を上下方向の下側から脚部12に通して引っ掛ける。そして、コットシート20の引っ張りを開放すると、長手方向に伸長していたコットシート20が収縮し、曲がったり撓んだりすることなくコット10に対してしっかりと取り付けられる。ここで、コット10の長手方向における他方側の端にてコットシート20が折り返される位置を第2折り返し位置F2とすると(図3A及び図5B参照)、第1折り返し位置F1と第2折り返し位置F2との間の距離が、コット10の長手方向における長さL1とほぼ等しくなる。
【0063】
このように本実施形態では、コットシート20に引っ掛け部25を設けることで、コットシート20をコット10に取り付けて使用する際に、コットシート20の位置ずれを生じ難くすることができる。また、引っ掛け部25は、ミシン目等の簡易な構造で形成することができるため、製造コストが低く抑えられ、使い捨てしやすいコットシート20を実現することができる。
【0064】
また、長手方向における長さ(サイズ)が異なるコット10にコットシート20を取り付ける場合も上述と同様の動作にて行うことができる。例えば、コット10の長手方向における長さがL2(>L1)である場合には以下のようにする。先ず、図5Aの場合と同様にコット10の長手方向における一方側の脚部12,12に引っ掛け部25a,25aを引っ掛けて、第1折り返し位置F1にてコットシート20を折り返す。次いで、第2折り返し位置F2よりも長手方向の他方側に位置する第3折り返し位置F3(図3A参照)にてコットシート20を長手方向に一方側に折り返して、図5Cのようにコット10の長手方向における他方側の脚部12,12に引っ掛け部25c,25cを引っ掛ける。この場合、第1折り返し位置F1と第3折り返し位置F3との間の距離が、コット10の長手方向における長さL2とほぼ等しくなる。
【0065】
このように、コットシート20は、長手方向における一方側の端部に一対の引っ掛け部25aが設けられ、長手方向における他方側の端部の異なる位置に2対の引っ掛け部25b,25cが設けられている。そして、長手方向の一方側端部に設けられた引っ掛け部25aを脚部12に引っ掛けてから、長手方向の他方側端部の異なる位置に設けられた引っ掛け部25b,25cのうち、適切な位置に設けられている方の引っ掛け部25を選択して、脚部12に引っ掛けることができる。これにより、長手方向における長さ(サイズ)の異なるコット10に対して、共通のコットシート20を取り付けることが可能となる。したがって、コット10のサイズに応じて異なるサイズのコットシートを選択しなければならない等の問題が生じず、ユーザーの利便性が高くなる。なお、長手方向における他方側の端部に設けられる引っ掛け部25は、コット10のサイズに応じて2対以上設けられていても良い。
【0066】
また、図3Aで説明したように、引っ掛け部25のミシン目は、コットシート20の長手方向よりも短手方向に長く形成されている(w25>l25)。これにより、コット10に取り付ける動作において、コットシート20を長手方向に引っ張って伸長させる際に、引っ掛け部25のミシン目(貫通溝)が破れてしまうことが抑制される。仮に、引っ掛け部25が長手方向に長く延びていた場合、図5Aのように引っ掛け部25aを脚部12に引っ掛けて長手方向に引っ張ると、貫通溝の長手方向端部に引っ張り力が作用した際に、該貫通溝の端部が破れ起点となってコットシート20が長手方向に沿って裂けてしまうおそれがある。これに対して、引っ掛け部25の貫通溝が短手方向に長く延びていれば、長手方向端部において破れ起点が形成されにくくなる。したがって、引っ掛け部25の貫通溝が長手方向に長く延びている場合と比較して、コットシート20を破れにくくすることができる。
【0067】
<コットシート20の製造方法>
次に、コットシート20の製造方法について説明する。図6は、コットシート20を製造する製造装置100の一例を表す概略説明図である。製造装置100は、コットシート20を構成するシート部材21,22,23がそれぞれ長手方向に連なって連続したシート部材連続体(基材)21r,22r,23rを、搬送方向(コットシート20の長手方向に沿った方向)に搬送しつつ、所定の加工を加えることにより、コットシート20を製造する。図6の製造装置100は、搬送機構110と、接合機構120と、引っ掛け部形成機構130とを備えている。
【0068】
搬送機構110は、シート部材連続体21r,22r,23rをそれぞれ搬送方向に所定の搬送速度で搬送する(搬送工程)。搬送工程では、トップシート21が長手方向に連なって連続したトップシート連続体21rが、原反ロールR21から繰り出され、搬送機構110の搬送ローラ111によって、速度V1で搬送方向の上流側から下流側に搬送される。同様に、バックシート22が長手方向に連なって連続したバックシート連続体22rが、原反ロールR22から繰り出され、搬送機構110の搬送ローラ112によって、速度V2で搬送方向の上流側から下流側に搬送される。また、中層シート23が長手方向に連なって連続した中層シート連続体23rが、原反ロールR23から繰り出され、搬送機構110の搬送ローラ113によって、速度V3で搬送方向の上流側から下流側に搬送される。なお、中層シート23は、連続体ではなく、あらかじめ所定の長さにカットされた状態で搬送されるのであっても良い。
【0069】
搬送工程において、バックシート連続体22rの搬送速度V2と、中層シート連続体23rの搬送速度V3とは、ほぼ同一の速度である(V2=V3)。一方、トップシート連続体21rの搬送速度V1は、他の基材の搬送速度よりも早い速度である(V1>V2,V3)。したがって、トップシート連続体21rの単位時間当たりの搬送量は、バックシート連続体22r及び中層シート連続体23rの単位時間当たりの搬送量よりも多くなる。
【0070】
次いで、厚さ方向(上下方向)に積層された状態で搬送されるシート部材連続体(基材)21r,22r,23rを互いに接合する接合工程が実施される。接合工程は接合機構120によって実施される。接合機構120は、シート部材連続体21r,22r,23rを厚さ方向に挟みこみつつ回転する一対の接合ローラ121,122を有している。一対の接合ローラ121,122のうち、一方側のローラの外周面には、半径方向の外側に突出する複数の凸部(不図示)が点在しており、他方側のローラの外周面には、凸部を受けるアンビル(不図示)が設けられている。そして、基材21r,22r,23rを挟み込んだ状態で凸部から超音波振動を発振しつつ、基材21r,22r,23rwを厚さ方向に圧搾することにより、当該基材の表面に複数の圧搾部30,30…を形成する。これにより、基材21r,22r,23rが互いに接合(溶着)される。
【0071】
図7は、コットシート20の表面に形成される圧搾部30の配置の一例について説明する拡大平面図である。図7では、コットシート20の表面には、矩形状の圧搾部30が長手方向及び短手方向に所定の間隔g30を空けて複数配置されている。矩形状の圧搾部30の一辺の長さは、例えば1~2mm程度であり、間隔g30は、例えば5~10mm程度である。但し、圧搾部30配置は図7の例に限られず、隣り合う圧搾部30の大きさが異なっていても良いし、長手方向と短手方向とで圧搾部30の間隔が異なっていても良い。
【0072】
このように、コットシート20の全体に亘って細かい圧搾部30が分散して形成されていることにより、基材21r,22r,23r同士が強固に接合され、コットシート20の強度を全体的に高めつつ、圧搾部30が設けられていない場合と比較して、各々の基材を破れにくくすることができる。また、図7から明らかなように、コットシート20の表面積に占める圧搾部30の割合(接合部の面積の割合)は大きくない。したがって、接着剤を全面に塗布することによってシート部材同士を接合する場合等と比較して、コットシート20に形成される接合部の面積の合計が小さく抑えられる。これにより、コットシート20の表面が過度に硬くならず、肌触りが悪化したり使用者(幼児等)に不快感を生じさせたりすることが抑制される。
【0073】
なお、コットシート20が、一層のトップシート21のみによって構成されているような場合であっても、該トップシート21を厚さ方向に圧搾する圧搾部が複数設けられていることが望ましい。この圧搾部は、トップシート21とバックシート22(及び中層シート23)とを接合する上述の圧搾部30であっても良いし。圧搾部30とは異なる圧搾部であっても良い。このような圧搾部が設けられていることにより、トップシート21自体の強度が高まり、コットシート20をより破れ難くすることができる。したがって、シート部材同士を厚さ方向に接合する必要がない場合でも圧搾部を形成することは有効である。
【0074】
また、基材21r,22r,23rが複数の圧搾部30によって厚さ方向に接合されていることにより、コットシート20の上下方向の上側面(すなわち、トップシート21側の面)に凹凸が形成される。図8は、コットシート20の断面構造について説明する断面模式図である。上述したように、基材21r,22r,23rが搬送方向に搬送される際に、トップシート連続体21rの搬送量は、バックシート連続体22r及び中層シート連続体23rの搬送量よりも多くなっている。この状態で3層のシート部材が接合された後、搬送方向(長手方向)の伸長状態が解除されると、長手方向に隣り合う2つの圧搾部30,30の間で、バックシート22及び中層シート23に対するトップシート21の面積が大きくなる。そのため、圧搾部30,30の間で、バックシート22の生地と比較してトップシート21の生地が多くなり、多くなった分の生地が図8のように上下方向の上側に凸変形して、トップシート21の表面に凸部21qが形成される。このような凸部21qが並ぶことにより、トップシート21の表面がキルティング加工されたようになり、コットシート20がより柔らかな風合いを有するようになる。これにより、コットシート20の表面におけるクッション性が高まり、肌触りをより向上させることができる。
【0075】
なお、シート部材の接合方法は上述のような超音波溶着には限られず、例えば熱溶着等、他の接合手段を用いても良い。また、圧搾部を形成することによって基材同士を溶着するのではなく、積層された基材と基材との間に接着剤を塗布して基材同士を接着(接合)するのであっても良い。また、シート部材を接合する工程と、圧搾部を形成する工程とを分けて実施するのであっても良い。
【0076】
次いで、引っ掛け部25を形成する引っ掛け部形成工程が実施される。引っ掛け部形成工程は引っ掛け部形成機構130よって実施される。引っ掛け部形成機構130は、シート部材連続体21r,22r,23rを厚さ方向に挟みこみつつ回転する一対のカッターローラ131,132を有している(図6参照)。一対のカッターローラ131,132のうち、一方側のローラ(図6ではカッターローラ131)の外周面には、シート部材にミシン目やハーフカット等の切り込みを形成するためのカッター刃135が設けられ、他方側のローラの外周面には、カッター刃135を受けるアンビル(不図示)が設けられている。そして、基材21r,22r,23rを挟み込んだ状態でカッター刃135によって、基材の所定位置に図3Aのようなミシン目等の切り込みが入れられ、引っ掛け部25が形成される。
【0077】
引っ掛け部形成工程の後、必要に応じて、搬送方向の所定位置にてシート部材連続体21r,22r,23rを切断して、個々のコットシート20とする切断工程、コットシート20をパッケージングするために小さく折り畳む折り畳み工程、折り畳まれたコットシート20を包装材に梱包する梱包工程等が行われ(図6では何れも不図示)、コットシート20が市場に流通可能な状態となる。
【0078】
なお、上述の折り畳み工程にて、コットシート20を折り畳む際には、引っ掛け部25(ミシン目等)と重複しない位置にてコットシート20を折り畳むようにすると良い。すなわち、梱包状態においてコットシート20に設けられた折り目と、引っ掛け部25とが重複する部分を有していないことが望ましい。当該折り目が設けられる部分ではコットシート20に折り癖が付きやすくなるため、そのような折り癖が起点となって、引っ掛け部25のミシン目が自然に破れてしまったり、ユーザーがミシン目を破る際にミシン目を超えてコットシート20が裂けてしまったりするおそれがある。そこで、引っ掛け部25と梱包用の折り目とが重複しないようにすることで、引っ掛け部25が過度に破れやすくなってしまうことを抑制できる。
【0079】
一方、梱包状態においてコットシート20に設けられた折り目と、引っ掛け部25とが重複するようにしても良い。例えば、コットシート20を構成するシート部材の生地が厚く、ユーザーが引っ掛け部25のミシン目を破る際に大きな力が必要な場合、ミシン目と重複するように折り癖を付けておくことで、ミシン目を破れやすくすることができる。このようにすれば、ユーザーは、当該折り癖を破れ起点として弱い力で簡単にミシン目を破ることができるようになる。
【0080】
<変形例>
コットシート20に設けられる引っ掛け部25は、以下のように変形することもできる。図9は、コットシート20の変形例について表す概略平面図である。変形例のコットシート20は、長手方向及び短手方向の四隅からそれぞれ外側に突出した、リング状の引っ掛け部26を備えている。引っ掛け部26は、例えば帯状の弾性不織布によって形成され、リングの周方向に沿った伸縮性を有している。
【0081】
変形例のコットシート20をコット10に取り付ける際には、先ず、長手方向の一方側においてコット10の脚部12に引っ掛け部26を引っ掛け、図5で説明した動作と略同様にして長手方向の他方側の脚部12に引っ掛け部26を引っ掛ける。本変形例では、引っ掛け部26自体が伸縮性を有しているため、該引っ掛け部26のリングを広げながら脚部12に引っ掛ける動作を行うことができるので、ユーザーは、コット10に対してコットシート20を簡単に取り付けることができる。また、引っ掛け部26は最初からリング状に形成されており、ユーザーがミシン目を破る等の動作を行う必要がないため、取り付け時の動作をより容易に行うことができる。
【0082】
===その他の実施の形態===
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10 コット(お昼寝コット)、
11 フレーム部、
12 脚部、12h 窪み、
13 シート(メッシュシート)、
20 コットシート(コット用使い捨てシート)、
21 トップシート、21r トップシート連続体(基材)、21q 凸部、
22 バックシート、22r バックシート連続体(基材)、
23 中層シート、23r 中層シート連続体(基材)、
25 引っ掛け部、
25a~25c 引っ掛け部(ミシン目)、
26 引っ掛け部、
30 圧搾部、
100 製造装置、
110 搬送機構、111 搬送ローラ、112 搬送ローラ、113 搬送ローラ、
120 接合機構、121 接合ローラ、122 接合ローラ、
130 引っ掛け部形成機構、131 カッターローラ、132 カッターローラ、
135 カッター刃、
F1 第1折り返し位置、F2 第2折り返し位置、F3 第3折り返し位置、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9