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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-11-27
(45)【発行日】2023-12-05
(54)【発明の名称】難燃性の熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20231128BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20231128BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20231128BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20231128BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20231128BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20231128BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20231128BHJP
   C08K 5/51 20060101ALI20231128BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20231128BHJP
   C09D 5/18 20060101ALI20231128BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20231128BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231128BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20231128BHJP
   H01B 13/24 20060101ALN20231128BHJP
【FI】
C08L75/04
C08G18/44
C08G18/32 003
C08G18/48 054
C08G18/73
C08G18/76
C08K3/22
C08K5/51
C08K5/521
C09D5/18
C09D175/04
C09D7/61
H01B3/30 B
H01B13/24 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020572635
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019066618
(87)【国際公開番号】W WO2020002200
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】18179577.4
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ミューレン,オリファー
(72)【発明者】
【氏名】ニッツ,ビルテ
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,タンヤ
(72)【発明者】
【氏名】メラー,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ベルテルス,アルフォンス
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535126(JP,A)
【文献】特開2014-065892(JP,A)
【文献】国際公開第2018/050498(WO,A1)
【文献】特表2018-509485(JP,A)
【文献】特表2013-544921(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0310494(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00-75/16
C08G 18/00-18/87
C08K 3/22
C08K 5/51
C08K 5/521
C09D 5/18
C09D 175/04
C09D 7/61
H01B 3/30
H01B 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
前記組成物中のメラミンポリホスフェートの割合が、前記組成物全体に対して5質量%~20質量%の範囲にあり、前記組成物中の前記難燃剤(F2)の割合が、前記組成物全体に対して10質量%~35質量%の範囲にあり、
前記組成物が、2質量%~10質量%の範囲の量のさらなるリン含有難燃剤を含み、且つ
前記さらなるリン含有難燃剤が、21℃で液体であるリン酸エステルから成る群から選ばれる、組成物。
【請求項2】
三価、四価、五価および六価アルコールを含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン含有難燃剤(F2)がホスフィネートである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ホスフィネートが、ホスフィン酸アルミニウムまたはホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記メラミンポリホスフェートが7質量%~20質量%の範囲のリン含有量を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記メラミンポリホスフェートが0.1~100μmの範囲の粒径を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタン、ならびに少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよびポリテトラヒドロフランポリオールに基づく熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
脂肪族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-1および芳香族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-2を含む混合物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタンを製造するための鎖延長剤として、1,4-ブタンジオールとさらなる鎖延長剤との混合物が用いられる、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物中の前記熱可塑性ポリウレタンの割合が前記組成物全体に対して60質量%~93質量%の範囲である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物全体に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量の二酸化チタンを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
ケーブルシースの製造のための、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、およびホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、メラミンシアヌレートを含まない組成物、ならびにケーブルシースの製造のためのそのような組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PVCから製造されたケーブルには、燃焼すると有毒ガスを放出するという欠点がある。したがって、低い煙ガス毒性を有し、良好な機械的性質、耐摩耗性および可撓性を有する、熱可塑性ポリウレタンに基づく製品が開発されている。燃焼性性能が不十分なため、様々な難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンに基づく組成物が開発されている。
【0003】
難燃性の熱可塑性ポリウレタンは、特にケーブル製造においてケーブルシースとして使用される。ここでの共通の必要条件は、また関連する火炎試験(例えばVW1)に合格するだけでなく適切な機械的性質を有する、細いケーブルシースを有する細いケーブルに対するものである。
【0004】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、含ハロゲン難燃剤または無ハロゲン難燃剤のいずれと混合されてもよい。無ハロゲン難燃剤を含む熱可塑性ポリウレタンは、一般に燃えた場合にそれほど有毒でなくより腐食性の少ない煙ガスを放出するという利点を持つ。無ハロゲン難燃性のTPUは、例えば、EP0617079A2、WO2006/121549A1またはWO03/066723A2に記載されている。US2013/0059955A1も、ホスフェート系難燃剤を含む無ハロゲンTPU組成物を開示している。
【0005】
US2013/0081853A1は、TPUポリマーおよびポリオレフィン、ならびにまたリン系難燃剤およびさらなる添加剤を含む、無ハロゲン難燃剤組成物に関する。US2013/0081853A1によると、組成物は良好な機械的性質を有する。
【0006】
メラミンシアヌレートも、エンジニアリングプラスチック用の難燃剤として長く知られている。例えば、WO97/00916Aは、脂肪族ポリアミド用の難燃剤としてタングステン酸/タングステン酸塩と組み合わせたメラミンシアヌレートを記載している。EP0019768A1は、メラミンシアヌレートおよび赤リンの混合物を用いるポリアミドの防炎性を開示している。
【0007】
WO03/066723A1によると、難燃剤としてメラミンシアヌレートのみを含む材料は、例えば、薄い壁厚の場合のUL94試験における性能によって決定された、良好な限界酸素指数(LOI)も良好な難燃性も有しない。WO2006/121549A1は、また、難燃剤としてメラミンポリホスフェート、ホスフィネートおよびボレートの組合せを含む材料を記載している。これらの材料は薄い壁厚において高いLOI値を達成するが、UL94試験では良好な結果に至らない。
【0008】
例えば、難燃剤としてメラミンシアヌレートとリン酸エステルおよびホスホン酸エステルとの組合せを含む材料は、UL94V試験で良好な結果を有するが、LOI値は、例えば<25%と非常に低い。リン酸エステルおよびホスホン酸エステルとメラミンシアヌレートとのそのような組合せは、特に細いケーブルのシースの場合には難燃剤として不十分である。高いLOI値は、様々な難燃性用途のための規格、例えばDIN EN 45545によって規定されている。
【0009】
TPU材料には、温度が上がるとウレタン結合が開裂するため流動する傾向がある。垂直火炎試験で、TPUが流動すると、火炎に面する材料層は下方へ流動し、火炎に新しい材料が露出する結果となる。したがって、安定な保護層の形成は、一般に高い難燃剤の充足レベルを伴ってのみ達成可能である。しかし、このような高いレベルは、性能の低下、例えば著しく低い引張強度をもたらす。
【0010】
したがって、先行技術から公知の組成物は、十分な機械的性質を示さないか、またはUL94Vの試験における燃焼性特性、例えば難燃性および性能が不十分であるかのいずれかである。
【0011】
PCT/EP2015/053192は、熱可塑性ポリウレタン、メラミンシアヌレートおよびリン含有難燃剤の組合せを含む組成物を開示している。PCT/EP2015/053192によると、これらの組成物は、良好な機械的性質および良好な耐薬品性と良好な難燃性の長所を組み合わせている。
【0012】
高い引張強度、高い破断時伸びおよび低い摩耗値を有する熱可塑性ポリウレタンに基づく材料もしばしば必要とされる。そのような材料は、極めて種々様々の応用分野、例えばホース、フィルムおよびケーブルまた射出成形品に必要とされる。例えば、VDE標準EN 50363-10-2は、DIN EN ISO 527に従って決定された少なくとも25MPaの引張強度を有するケーブルシース用材料を規定している。
【0013】
低い煙ガス密度を有する熱可塑性ポリウレタンに基づく材料も、特に製品が閉鎖空間で使用される場合、必要とされる。煙ガスの腐食性が低い材料は、火災の場合に原因となる損害もこれによって低減されるので有利である。
【0014】
良好なUV耐性を有する材料も必要であることが多い。これは、物品が直射日光に晒される場合、特にそうである。例えば、高い耐光性は、例えば電線、ヘッドホーン用ケーブルまたはデータ伝送ケーブルなどの日常使用における有色のケーブルに要求される。
【0015】
TPU材料の加工に関しては非常に大きな要求も設けられる。例えば、材料が、押出によって均質に一様に加工可能であることである。低い金型摩耗性はここで特に重要である。
【0016】
TPU材料はさらに、加水分解に対して良好な老化耐性および低い感受性を有する必要がある。
【0017】
最後に、材料は、良好な媒体耐性を有する必要がある。例えば、自動車部門に使用するために様々なオイルに対する高い耐性が要求される。対照的に、コンピューター部門では、例えばケチャップおよび日焼け止めクリーム剤に対する良好な耐性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】EP0617079A2
【文献】WO2006/121549A1
【文献】WO03/066723A2
【文献】US2013/0059955A1
【文献】US2013/0081853A1
【文献】WO97/00916A
【文献】EP0019768A1
【文献】WO03/066723A1
【文献】WO2006/121549A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
先行技術から出発して、本発明は、それに応じて、その目的のために、良好な機械的性質および良好な難燃性の性質を有し、しかも同時に良好な機械的耐性および耐薬品性を有し、UV照射下で、有ったとしても、変色をほとんど受けない難燃性の熱可塑性ポリウレタンを提供しなければならない。本発明は、特にその目的のために、良好な機械的性質および良好な難燃性の性質を有し、しかも同時に良好な機械的耐性および耐薬品性および高い可撓性を示す難燃性の熱可塑性ポリウレタンを提供しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によると、この目的は、少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まない、組成物によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、および2種のリン含有難燃剤(F1)および(F2)の組合せを含み、メラミンシアヌレートを含まない。
【0022】
驚いたことに、本発明の組成物は、本発明の成分の組合せの結果として、特にケーブルシースとして使用するために性質の最適化プロフィルを有することが見いだされた。驚いたことに、本発明による組成物は、先行技術から知られる組成物と比較して、性質を改善し、例えば、難燃性を高め、特にUV照射の下の変色を、たとえあったとしてもごくわずかな程度にしたことが見いだされた。
【0023】
ホスフィン酸の誘導体およびメラミンポリホスフェートの組合せの低い割合でさえ例えば35%未満で良好な難燃性が達成可能であることが見いだされた。この難燃剤の組合せは、安定な保護層を非常に速く形成する。
【0024】
驚いたことに、少量のメラミンポリホスフェートおよびホスフィン酸の誘導体と、150000ダルトンを超える質量平均分子量を有するTPUとの組合せは、垂直火炎試験において非常に有利な性質をもたらすことが見いだされた。外側の材料層の下方への流動が、難燃剤混合物の高い変形しやすい傾向だけでなく高分子量TPUの高い粘度によっても防止される。
【0025】
明示されるように、本発明による組成物は成分(i)として熱可塑性ポリウレタン、成分(ii)としてメラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および成分(iii)としてホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む。本発明によると、組成物はメラミンシアヌレートを含まない。本発明の文脈において、「メラミンシアヌレートを含まない」とは、組成物が50ppm未満のメラミンシアヌレート、好ましくは20ppm未満のメラミンシアヌレートを含むことを意味すると理解されるべきである。好ましい実施形態において、組成物は0ppmのメラミンシアヌレートを含む。
【0026】
本出願の文脈において、メラミンシアヌレートは、とりわけすべての通例通りの市販の製品品質の意味として理解されるべきである。
【0027】
さらに、本発明による組成物は、好ましくは、例えば、三価、四価、五価および六価アルコールなどの多価アルコールを少量しか含まない。本発明による組成物は、より好ましくは多価アルコールを含まず、特に三価、四価、五価および六価アルコールを含まない。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明はしたがって、例えば糖類の、三価、四価、五価および六価アルコールを含まない、上記の組成物に関する。
【0029】
本発明の文脈において「三価、四価、五価および六価アルコールを含まない」とは、組成物は50ppm未満の多価アルコール、好ましくは20ppm未満の多価アルコールを含むことを意味すると理解されるべきである。好ましい実施形態において、組成物は0ppmの多価アルコールを含む。
【0030】
本発明によると、難燃剤(F1)はメラミンポリホスフェートからなる群から選択される。本出願の文脈において、メラミンポリホスフェートは、とりわけすべての通例通りの市販の製品品質の意味として理解されるべきである。
【0031】
本発明の文脈において、それ自体公知のメラミンポリホスフェート、例えば、7質量%~20質量%の範囲、好ましくは10質量%~17質量%の範囲、より好ましくは12質量%~14質量%の範囲のリン含有量を有するものが使用可能である。
【0032】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、メラミンポリホスフェートが7質量%~20質量%の範囲のリン含有量を有する、上記の組成物に関する。
【0033】
本発明による適切なメラミンポリホスフェートは、好ましくは典型的には0.1μm~100μm、好ましくは0.5μm~60μm、特に好ましくは1μm~10μmの範囲の平均粒径D50を有する粒子からなる。粒子は、好ましくは100μm未満、より好ましくは90μm未満の平均粒径D99を有する。本発明の文脈において、粒子は、好ましくは0.1μm~100μmの範囲の平均粒径D50および100μm未満の平均粒径D99を有する。本発明の文脈において、粒度分布は、単峰性であってよく、そうでなければ多峰性、例えば二峰性であってよい。
【0034】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、メラミンポリホスフェートが0.1~100μmの範囲の粒径を有する、上記の組成物に関する。
【0035】
さらなる実施形態は、好ましくは、それぞれの場合においてISO 976に従って決定された、水溶液中に3~7の範囲、より好ましくは3.5~6.5の範囲、特に好ましくは4~6の範囲のpHを有するメラミンポリホスフェートを用いる。
【0036】
メラミンポリホスフェートは適切な量で本発明の組成物中に存在する。例えば、組成物中のメラミンポリホスフェートの割合は、組成物全体に対して2質量%~35質量%の範囲、組成物全体に対して特に3質量%~30質量%の範囲、好ましくは組成物全体に対して4質量%~25質量%の範囲、特に組成物全体に対して5質量%~20質量%の範囲である。
【0037】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物中のメラミンポリホスフェートの割合が組成物全体に対して2質量%~35質量%の範囲である、上記の組成物に関する。
【0038】
組成物の成分の合計は各事例において100質量%である。
【0039】
ホスフィン酸の誘導体から選択される難燃剤(F2)が有機もしくは無機カチオンを含む塩から、または有機エステルから選択される場合が、好ましい。有機エステルは、リンに直接に結合した少なくとも1個の酸素原子が有機ラジカルとエステル化された、ホスフィン酸の誘導体である。好ましい実施形態において、有機エステルはアルキルエステルであり、別の好ましい実施形態において、アリールエステルである。ホスフィン酸のヒドロキシル基がすべてエステル化された場合が、特に好ましい。
【0040】
ホスフィン酸エステルは、一般式R(P=O)OR[式中、3個の有機基R、RおよびRはすべて同一でも異なっていてもよい]を有する。ラジカルR、RおよびRは、脂肪族または芳香族であり、1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する。好ましくは、ラジカルの少なくとも1つは脂肪族であり、好ましくは、ラジカルはすべて脂肪族であり、とりわけ好ましくは、RおよびRはエチルラジカルである。Rがまたエチルラジカルまたはメチルラジカルである場合が、より好ましい。好ましい実施形態において、R、RおよびRは同時にエチルラジカルまたはメチルラジカルである。
【0041】
また、ホスフィネート、すなわちホスフィン酸の塩が好ましい。RおよびRのラジカルは脂肪族または芳香族であり、1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有する。好ましくは、ラジカルの少なくとも1つは脂肪族であり、好ましくは、ラジカルはすべて脂肪族であり、とりわけ好ましくはRおよびRはエチルラジカルである。ホスフィン酸の好ましい塩はアルミニウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩、より好ましくは、アルミニウム塩または亜鉛塩である。好ましい実施形態はホスフィン酸ジエチルアルミニウムである。
【0042】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、リン含有難燃剤(F2)がホスフィネートである、上記の組成物に関する。
【0043】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、ホスフィネートが、ホスフィン酸アルミニウムまたはホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、上記の組成物に関する。
【0044】
本発明による組成物中の難燃剤(F2)の割合は、例えば組成物全体に対して5質量%~45質量%の範囲、特に組成物全体に対して7質量%~40質量%、好ましくは組成物全体に対して8質量%~38質量%の範囲、特に組成物全体に対して10質量%~35質量%の範囲、より好ましくは組成物全体に対して12質量%~32質量%の範囲、特に好ましくは組成物全体に対して15質量%~30質量%の範囲である。
【0045】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物中の難燃剤(F2)の割合が、組成物全体に対して5質量%~45質量%の範囲である、上記の組成物に関する。
【0046】
組成物中の、リン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合は、各事例において組成物全体に対して、好ましくは組成物全体に対して7質量%~40質量%の範囲、より好ましくは10質量%~35質量%の範囲、特に好ましくは15質量%~30質量%の範囲である。
【0047】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して7質量%~40質量%の範囲である、上記の組成物に関する。
【0048】
本発明の文脈において、粒子が0.1μm~100μm、好ましくは0.5μm~60μm、特に好ましくは20μm~40μmの範囲の平均粒径D50を有する難燃剤(F1)および/または(F2)を用いることは好ましい。粒子は、好ましくは100μm未満、より好ましくは90μm未満の平均粒径D99を有する。本発明の文脈において、粒子は、好ましくは0.1μm~100μmの範囲の平均粒径D50および100μm未満の平均粒径D99を有する。本発明の文脈においては、粒度分布は、単峰性であってよく、そうでなければ多峰性、例えば二峰性であってよい。
【0049】
本発明によると、組成物はまたさらなる難燃剤、例えばリン酸エステルなどのさらなるリン含有難燃剤を含んでもよい。組成物は、好ましくは2質量%~10質量%の範囲の量でさらなるリン含有難燃剤を含む。
【0050】
適切な例としては、リン酸の誘導体、ホスホン酸の誘導体またはホスフィン酸の誘導体またはこれらの誘導体の2種以上の混合物が含まれる。適切なさらなる難燃剤は例えば21℃で液体であってもよい。
【0051】
リン酸、ホスホン酸またはホスフィン酸の誘導体が、有機もしくは無機カチオンを有する塩、または有機エステルである場合が、好ましい。有機エステルは、リンに直接に結合した少なくとも1個の酸素原子が有機ラジカルとエステル化された、リン含有酸の誘導体である。好ましい実施形態において、有機エステルはアルキルエステルであり、別の好ましい実施形態において、アリールエステルである。対応するリン含有酸のヒドロキシル基がすべてエステル化された場合が、特に好ましい。好ましいリン酸エステルの例としては、1,3-フェニレンビス(ジフェニル)ホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェートおよびn=3~6の平均オリゴマー度を有する対応するオリゴマーの生成物が含まれる。好ましいレゾルシノールは、典型的にはオリゴマーの形態のレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)である。
【0052】
さらなる好ましいリン含有難燃剤は、典型的にはオリゴマーの形態であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(BDP)、およびジフェニルクレジルホスフェート(DPC)である。
【0053】
本発明の組成物は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンをさらに含む。熱可塑性ポリウレタンは原則として知られている。製造は、典型的には成分(a)イソシアネートおよび(b)イソシアネート反応性化合物、ならびに任意に(c)鎖延長剤の反応によって、任意に少なくとも1種の(d)触媒および/または(e)通例の助剤および/または添加剤の存在下で達成される。成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、(c)鎖延長剤はまた個々にまたは総体として構成要素成分とも称される。
【0054】
本発明の文脈においては、典型的には用いられるイソシアネートおよびイソシアネート反応性化合物は、原則として適切である。
【0055】
好ましくは用いられる有機イソシアネートとしては、(a)脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネート、より好ましくはトリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/またはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-および/または2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、および/または4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-,2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、および/またはフェニレンジイソシアネートが含まれる。4,4’-MDIを用いることが特に好ましい。
【0056】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンがジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)に基づく、上記の組成物に関する。
【0057】
使用可能なイソシアネート反応性成分(b)は、原則として当業者に知られているすべての適切な化合物を含む。本発明によると、少なくとも1種のジオールがイソシアネート反応性化合物(b)として使用される。
【0058】
本発明の文脈において、任意の適切なジオール、例えば、ポリエーテルジオールもしくはポリエステルジオールまたはそれらの2種以上の混合物が用いられてもよい。
【0059】
任意の適切なポリエステルジオールは、原則として本発明に従って用いられてもよく、本発明の文脈において、ポリエステルジオールという用語がポリカーボネートジオールも含む。
【0060】
本発明の一実施形態は、ポリカーボネートジオールまたはポリテトラヒドロフランポリオールを用いる。適切なポリテトラヒドロフランポリオールは、例えば500~5000g/mol、好ましくは500~2000g/mol、特に好ましくは800~1200g/molの範囲の分子量を有する。
【0061】
適切なポリカーボネートジオールは、例えばアルカンジオールをベースとするポリカーボネートジオールを含む。適切なポリカーボネートジオールは、厳密に二官能性のOH官能性ポリカーボネートジオール、好ましくは、厳密に二官能性のOH官能性脂肪族ポリカーボネートジオールである。適切なポリカーボネートジオールは、例えば1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオールまたは1,6-ヘキサンジオール、特に1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオールまたはその混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたはその混合物に基づく。好ましくは本発明の文脈において、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオールおよびこれらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物が用いられる。
【0062】
本発明による組成物は好ましくは、少なくとも1種のジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタン、ならびに少なくとも1種のジイソシアネートおよびポリテトラヒドロフランポリオールに基づく熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。本発明による組成物中に存在するポリウレタンの製造は、それに応じて、成分(b)として少なくとも1種のポリカーボネートジオールまたはポリテトラヒドロフランポリオールを用いる。
【0063】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタン、ならびに少なくとも1種のジイソシアネートおよびポリテトラヒドロフランポリオールに基づく熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、上記の組成物に関する。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタン、ならびに少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよびポリテトラヒドロフランポリオールに基づく熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、上記の組成物に関する。
【0064】
したがって、さらなる実施形態において、本発明はまた、熱可塑性のポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタンである、上記の組成物に関する。用いられるポリカーボネートジオールが、GPCによって決定された500~4000g/molの範囲、好ましくはGPCによって決定された650~3500g/molの範囲、特に好ましくはGPCによって決定された800~2500g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する場合が、好ましい。
【0065】
したがって、さらなる実施形態において、本発明はさらに、熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種のジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタンであり、少なくとも1種のポリカーボネートジオールが、1,4-ブタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、1,6-ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、およびこれらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物からなる群から選択される、上記の組成物に関する。また、ジオール、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づき、好ましくは約2000g/molの分子量Mnを有するコポリカルボネートジオールも好ましい。
【0066】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、ポリカーボネートジオールが、GPCによって決定された500~5000g/molの範囲、好ましくはGPCによって決定された650~3500g/molの範囲、より好ましくはGPCによって決定された800~2500g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、上記の組成物に関する。
【0067】
好ましくは、使用可能な鎖延長剤(c)は、0.05kg/mol~0.499kg/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物、好ましくは二官能性化合物、例えば、ジアミンおよび/またはアルキレンラジカル中に2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-および/またはデカアルキレングリコール、特に1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、好ましくは対応するオリゴ-および/またはポリプロピレングリコールを含み、鎖延長剤の混合物が用いられてもよい。化合物(c)は、好ましくは、第一級ヒドロキシル基のみを有し、1,4-ブタンジオールまたは1,3-プロパンジオールおよび1,4-ブタンジオールの混合物がとりわけ好ましい。
【0068】
また、本発明に従って、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られた、多価アルコール、例えばプロパンジオールおよび/またはさらなるジオールを用いることが可能である。多価アルコールが再生可能な原料から部分的にまたは完全に得られることは可能である。本発明によると、用いられる多価アルコールの少なくとも1つは、再生可能な原料から少なくとも部分的に得られることもある。
【0069】
いわゆるバイオ-1,3-プロパンジオールは、例えば、トウモロコシおよび/または糖類から得ることができる。さらなる可能性は、バイオディーゼル油製造からのグリセリン廃棄物の変換である。本発明のさらなる好ましい実施形態において、多価アルコールは再生可能な原料から少なくとも部分的に得られた1,3-プロパンジオールである。
【0070】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンが再生可能な原料に少なくとも30%の程度まで基づく、上記の組成物に関する。決定の1つの適切な方法は例えばC14法である。
【0071】
好ましい実施形態において、特にジイソシアネート(a)のNCO基、イソシアネート反応性化合物(b)のヒドロキシル基および鎖延長剤(c)の間の反応を加速する触媒(d)は、第三級アミン、特にトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノール、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンであり;別の好ましい実施形態において、これらは金属有機化合物、例えば、チタン酸エステル、鉄化合物、好ましくは、鉄(III)アセチルアセトナート、スズ化合物、好ましくは二酢酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸スズまたは脂肪族カルボン酸のジアルキルスズ塩、好ましくはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、またはビスマスが好ましくは2または3、特に3の酸化状態であるビスマス塩である。カルボン酸の塩が好ましい。用いられるカルボン酸は、好ましくは6~14個の炭素原子を有する、特に好ましくは8~12個の炭素原子を有するカルボン酸である。適切なビスマス塩の例は、ネオデカン酸ビスマス(III)、2-エチルヘキサン酸ビスマスおよびオクタン酸ビスマスである。
【0072】
触媒(d)は、好ましくは100質量部のイソシアネート反応性化合物(b)につき0.0001~0.1質量部の量で使用される。スズ触媒、特にジオクタン酸スズを用いることが好ましい。
【0073】
触媒(d)だけでなく通例の助剤(e)も合成成分(a)~(c)に添加されてもよい。例としては、界面活性物質、充填剤、さらなる難燃剤、核形成剤、酸化安定剤、潤滑および脱型助剤、染料および顔料、任意に、例えば加水分解、光、熱または変色に対する安定剤、無機および/または有機充填剤、補強剤および可塑剤が含まれる。適切な助剤および添加剤は、例えば、Kunststoffhandbuch、VII巻、ViewegおよびHoechtlen編、Carl Hanser Verlag、Munich 1966 (103~113ページ)に見いだすことができる。
【0074】
熱可塑性ポリウレタンの製造方法は、例えばEP0922552A1、DE10103424A1またはWO2006/072461A1に開示されている。製造は、典型的にはベルト装置で、または反応性押出機中で達成されるが、しかし実験室規模、例えば手を用いるキャスティング法でも達成することができる。成分の物理的性質に応じて、これらはすべて、互いに直接に混合されるか、または、個々の成分が予備混合されて、および/または、例えば、プレポリマーを得るために前もって反応させて、次に初めて重付加が施される。さらなる実施形態において、熱可塑性ポリウレタンは、まず構成要素成分から、任意に触媒と一緒に製造され、これに助剤も組み入れられてよい。その場合において、少なくとも1種の難燃剤がこの材料に導入され、均質的に分布させられる。均質な分布は、好ましくは押出機、好ましくは二軸押出機で達成される。TPUの硬度を調節するために、構成要素成分(b)および(c)の使用量を、相対的に広い範囲のモル比内で変えることができ、典型的には、鎖延長剤(c)の含有量が増加するにつれて、硬度は上昇する。
【0075】
熱可塑性ポリウレタン、例えば、95未満のショアA硬度、好ましくは95~80、特に好ましくは約85AのショアAを有するものを製造するために、実質上二官能性ポリヒドロキシル化合物(b)および鎖延長剤(c)は、有利には、構成要素成分(b)および(c)の結果として得られた混合物が、200を超える、特に230~450のヒドロキシル当量を有するように1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5のモル比で用いられてもよいが、一方、例えば98を超えるショアA硬度を有するもの、好ましくは55~75のショアDを有するより硬質のTPUを製造するためには、(b)および(c)の得られた混合物が110~200、好ましくは120~180のヒドロキシル当量を有するように(b):(c)のモル比は1:5.5~1:15、好ましくは1:6~1:12の範囲である。
【0076】
本発明に従って用いられる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、DIN ISO 7619-1(ショア硬度試験A(3s))に従って決定された68A~100Aの範囲、好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された70A~98Aの範囲、より好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された75A~95Aの範囲、特に好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された75A~90Aの範囲、特にDIN ISO 7619-1に従って決定された78A~85Aの範囲の硬度を有する。代替実施形態において、用いられる熱可塑性ポリウレタンは、好ましくはDIN ISO 7619-1(ショア硬度試験A(3s))に従って決定された70A~80Aの範囲の硬度を有する。
【0077】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンがDIN 53505に従って決定された80A~100Aの範囲のショア硬度を有する、上記の組成物に関する。
【0078】
本発明に従って用いられる熱可塑性ポリウレタンを製造するために、構成要素成分(a)、(b)および(c)は、好ましくは触媒(d)、および任意に助剤および/または添加剤(e)の存在下で、典型的には、ジイソシアネート(a)のNCO基と構成要素成分(b)および(c)のヒドロキシル基の合計との当量比が0.9~1.1:1、好ましくは0.95~1.05:1、特に約1.0~1.04:1となるような量で反応させられる。
【0079】
本発明による組成物は、組成物全体に対して60質量%~93質量%の範囲、特に組成物全体に対して65質量%~92質量%の範囲、好ましくは68質量%~90質量%の範囲、より好ましくは70質量%~88質量%の範囲、特に好ましくは各事例において組成物全体に対して70質量%~85質量%の範囲の量の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0080】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物中の熱可塑性ポリウレタンの割合が、組成物全体に対して60質量%~93質量%の範囲である、上記の組成物に関する。
【0081】
組成物中のすべての成分の合計は、各事例において100質量%になる。
【0082】
好ましくは、50000~500000ダルトンの範囲の平均分子量(M)を有する熱可塑性ポリウレタンが本発明に従って用いられる。熱可塑性ポリウレタンの平均分子量(M)の上限は、一般に加工性に、ならびに所望の性質のスペクトルによって決定される。熱可塑性ポリウレタンが100,000~300,000Daの範囲、より好ましくは120,000~250,000Daの範囲、特に好ましくは150,000~250,000Daの範囲の平均分子量(M)を有する場合が、より好ましい。
【0083】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンが100000~300000Daの範囲の平均分子量(M)を有する、上記の組成物に関する。
【0084】
本発明によると、特に、100000~300000Daの範囲の分子量(M)を有する熱可塑性ポリウレタンの使用は、性質の特に有利な組合せを有する組成物をもたらすことが見いだされた。
【0085】
また、本発明によると、組成物が、例えば平均分子量または化学組成が異なる2種以上の熱可塑性ポリウレタンを含むことも可能である。例えば、本発明による組成物は、第1の熱可塑性ポリウレタンTPU-1および第2の熱可塑性ポリウレタンTPU-2、例えば、脂肪族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-1および芳香族ジイソシアネートに基づくさらなるTPU-2を含んでもよい。
【0086】
脂肪族イソシアネートはTPU-1を製造するために使用されるが、芳香族イソシアネートがTPU-2の製造のために使用される。
【0087】
好ましくはTPU-1を製造するために用いられる有機イソシアネート(a)は、脂肪族または脂環式イソシアネート、より好ましくは、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/または、オクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートおよび/または4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートである。
【0088】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-1が、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタンからなる群から選択される少なくとも1種の脂肪族ジイソシアネートに基づく、上記の組成物に関する。
【0089】
好ましくは、TPU-2を製造するために用いられる有機イソシアネート(a)は、芳香脂肪族および/または芳香族イソシアネート、より好ましくは、2,2’-,2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、1,2-ジフェニルエタンジイソシアネート、および/またはフェニレンジイソシアネートである。4,4’-MDIを使用することが特に好ましい。
【0090】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-2がジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)に基づく、上記の組成物に関する。
【0091】
好ましくは、TPU-1およびTPU-2のためのイソシアネート反応性化合物(b)として用いられるのは、ポリカーボネートジオールまたはポリテトラヒドロフランポリオールである。適切なポリテトラヒドロフランポリオールは、例えば500~5000、好ましくは500~2000、特に好ましくは800~1200の範囲の分子量を有する。
【0092】
本発明によると、好ましくは少なくとも1種のポリカーボネートジオール、好ましくは脂肪族ポリカーボネートジオールが、TPU-1およびTPU-2の製造のために使用される。適切なポリカーボネートジオールは、例えばアルカンジオールに基づくポリカーボネートジオールを含む。適切なポリカーボネートジオールは、厳密に二官能性のOH官能性ポリカーボネートジオール、好ましくは、厳密に二官能性のOH官能性脂肪族ポリカーボネートジオールである。適切なポリカーボネートジオールは、例えばブタンジオール、ペンタンジオールまたはヘキサンジオール、特に、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール3-メチルペンタン-(1,5)-ジオールまたはその混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたはその混合物に基づく。好ましくは、本発明の文脈において、ブタンジオールおよびヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、ヘキサンジオールに基づくポリカーボネートジオール、およびこれらのポリカーボネートジオールの2種以上の混合物が用いられる。
【0093】
TPU-1およびTPU-2の製造のために使用されるポリカーボネートジオールがGPCによって決定された500~4000の範囲、好ましくはGPCによって決定された650~3500の範囲、特に好ましくはGPCによって決定された800~3000の範囲の数平均分子量Mnを有する場合が、好ましい。
【0094】
好ましくはTPU-1およびTPU-2を製造するための使用可能な鎖延長剤(c)は、0.05kg/mol~0.499kg/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物、好ましくは二官能性化合物、例えば、ジアミンおよび/または、アルキレンラジカル中2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、3~8個の炭素原子を有するジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-および/またはデカアルキレングリコール、特に1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、好ましくは対応するオリゴ-および/またはポリプロピレングリコールを含み、鎖延長剤の混合物も用いられてよい。化合物(c)は、好ましくは第一級ヒドロキシル基のみを有し、とりわけ優先的に、1,4-ブタンジオールと、上に記述した化合物から選択されるさらなる鎖延長剤との混合物、例えば100:1~1:1の範囲、好ましくは95:1~5:1の範囲、特に好ましくは90:1~10:1の範囲のモル比で1,4-ブタンジオールおよび第2の鎖延長剤を含む混合物が用いられる。
【0095】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンを製造するための鎖延長剤として、1,4-ブタンジオールおよびさらなる鎖延長剤の混合物が用いられる、上記の組成物に関する。
【0096】
TPU-1またはTPU-2の硬度を調節するために、構成要素成分(b)および(c)の用いられる量は、比較的広い範囲のモル比にわたって変わってよく、硬度は典型的には鎖延長剤(c)の含有量が増加するにつれて増加する。
【0097】
本発明によると、TPU-1は、好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された85A~70Dの範囲、好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された95A~70Dの範囲、より好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された55D~65Dの範囲の硬度を有する。
【0098】
本発明によると、TPU-2は、好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された70A~70Dの範囲、より好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された80A~60Dの範囲、特に好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された80A~90Aの範囲の硬度を有する。
【0099】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-1が、DIN ISO 7619-1に従って決定された85A~65Dの範囲のショア硬度を有する、上記の組成物に関する。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-2が、DIN ISO 7619-1に従って決定された70A~65Dの範囲のショア硬度を有する、上記の組成物に関する。
【0100】
TPU-1は、好ましくは100000Daを超える分子量を有し、TPU-2は、好ましくは150000~300000Daの範囲の分子量を有する。熱可塑性ポリウレタンの数平均分子量の上限は、一般に加工性およびまた性質の所望のスペクトルによって決定される。
【0101】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-1が100000Da~400000Daの範囲の分子量を有する、上記の組成物に関する。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、熱可塑性ポリウレタンTPU-2が150000Da~300000Daの範囲の分子量を有する、上記の組成物に関する。
【0102】
本発明による組成物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンTPU-1および少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンTPU-2を、組成物全体に対して60質量%~93質量%の範囲、特に組成物全体に対して68質量%~92質量%の範囲、好ましくは70質量%~88質量%の範囲、より好ましくは各事例において組成物全体に対して70質量%~85質量%の範囲の合計量で含む。
【0103】
本発明の文脈において、用いられる熱可塑性ポリウレタンの比は広い範囲内で変えられてもよい。例えば、熱可塑性ポリウレタンTPU-1および熱可塑性ポリウレタンTPU-2は、2:1~1:5の範囲の比で用いられる。熱可塑性ポリウレタンTPU-1および熱可塑性ポリウレタンTPU-2は、好ましくは1:1~1:5の範囲、より好ましくは1:2~1:4の範囲、特に好ましくは1:2.5~1:3の範囲の比で用いられる。
【0104】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、脂肪族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-1および芳香族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-2を含む混合物を含む、上記の組成物に関する。
【0105】
一実施形態において、本発明による組成物は、熱可塑性ポリウレタンならびに難燃剤(F1)および(F2)を1工程で加工することにより製造される。他の好ましい実施形態において、本発明による組成物は、最初に反応押出機、ベルト組立体または他の適切な装置を使用して、熱可塑性ポリウレタンを、好ましくは顆粒として製造し、次いで、それに難燃剤(F1)および(F2)を少なくとも1つのさらなる工程で、またはそうでなければ複数の工程で導入することによって製造される。
【0106】
熱可塑性ポリウレタンを他の成分と混合することは、好ましくは内部混練機または押出機、好ましくは二軸押出機である混合ユニット中で達成される。好ましい実施形態において、少なくとも1つのさらなる工程で混合ユニットへ導入される少なくとも1種の難燃剤は、液体、すなわち21℃の温度で液体である。押出機の使用の別の好ましい実施形態において、導入される難燃剤は、押出機中の材料の流動方向において充填場所より下流に及ぶ温度では、少なくとも部分的に液体である。
【0107】
本発明によると、組成物は、また例えばリン含有難燃剤を含むさらなる難燃剤を含んでもよい。例えば、組成物はさらなるリン含有難燃剤(F3)、例えばリン酸エステルを含んでもよい。
【0108】
しかし、代替実施形態において、本発明による組成物は、リン含有難燃剤(F1)および(F2)に加えて、さらなる難燃剤を含まない。
【0109】
本発明の文脈において、本発明による組成物の硬度は広い範囲内で変えられてもよい。組成物の硬度は、例えばDIN ISO 7619-1(ショア硬度試験A(3s))に従って決定された68A~100Aの範囲、好ましくはDIN ISO 7619-1に従って決定された70A~98Aの範囲にあってもよい。
【0110】
機械的性質および難燃性の性質は、様々な難燃剤の組合せによって本発明に従って最適化される。
【0111】
本発明によると、組成物はまたさらなる構成成分、例えば熱可塑性ポリウレタン用の標準的な助剤および添加物を含んでもよい。組成物が、少なくとも1種のリン含有難燃剤(F1)および少なくとも1種のリン含有難燃剤(F2)に加えてさらなる難燃剤を含まない場合が好ましい。本発明による組成物が、メラミンポリホスフェートからなる群から選択される、正確に1種のリン含有難燃剤(F1)、およびホスフィン酸の誘導体からなる群から選択される、正確に1種のリン含有難燃剤(F2)を含む場合がより好ましい。
【0112】
本発明による組成物は、例えば充填剤または染料を好ましくは組成物全体に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量で含んでもよい。したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物全体に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量の二酸化チタンを含む、上記の組成物に関する。
【0113】
本発明はまた、コーティング、減衰素子、ベロー、フィルムまたは繊維、成形品、建物および輸送用の床、不織布、好ましくはシール、ローラー、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルコネクター、ケーブルシース、クッション、ラミネート、プロフィール、ベルト、サドル、発泡体、プラグコネクター、垂下ケーブル、太陽電池モジュール、自動車のトリムの製造のための、少なくとも1種の難燃性の熱可塑性ポリウレタンを含む本発明による上記の組成物の使用方法に関する。ケーブルシースの製造のための使用方法が好ましい。製造は、好ましくは顆粒から射出成形、カレンダー加工、粉末焼結または押出によっておよび/または本発明による組成物の追加の発泡によって達成される。
【0114】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、およびホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、メラミンシアヌレートを含まない上記の組成物の、ケーブルシースの製造のための使用方法に関する。
【0115】
本発明による組成物は、特に細いケーブル、例えば2mm未満の外径および0.5mm未満の壁厚を有するケーブルの製造を可能にする。さらなる実施形態において、本発明はしたがってまた、0.1~0.5mmの範囲の壁厚を有するケーブルシースの製造のための、上記の組成物の使用方法に関する。
【0116】
本発明のさらなる実施形態は特許請求の範囲および実施例から明白である。本発明による主題/方法の特色、または上述した、および以下に説明する本発明による使用の特色は、各場合において明示した組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱しない限り他の組合せでも使用することができることは言うまでもない。したがって、例えば、好ましい特色と特に好ましい特色との組合せ、または別に特徴付けされていない特徴と特に好ましい特徴との組合せなどは、この組合せが明示的に記載されていない場合であっても、暗黙には含まれる。
【0117】
本発明の例示の実施形態が以下に記載されているが、本発明を限定するようには意図されない。特に、本発明は、従属の参照、したがって下記に特定される組合せから生じる実施態様も含む。
【0118】
1. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まない、組成物。
【0119】
2.三価、四価、五価および六価アルコールを含まない、実施形態1に記載の組成物。
【0120】
3. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
三価、四価、五価および六価アルコールを含まない、組成物。
【0121】
4. リン含有難燃剤(F2)がホスフィネートである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0122】
5. ホスフィネートが、ホスフィン酸アルミニウムまたはホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、実施形態4に記載の組成物。
【0123】
6. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
リン含有難燃剤(F2)がホスフィネートであり
ホスフィネートが、ホスフィン酸アルミニウムまたはホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、組成物。
【0124】
7. 組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して7質量%~40質量%の範囲である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0125】
8. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して7質量%~40質量%の範囲である、組成物。
【0126】
9. メラミンポリホスフェートが7質量%~20質量%の範囲のリン含有量を有する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0127】
10. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
三価、四価、五価および六価アルコールを含まず、
組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して7質量%~50質量%の範囲であり、
メラミンポリホスフェートが7質量%~20質量%の範囲のリン含有量を有する、組成物。
【0128】
11.メラミンポリホスフェートが0.1~100μmの範囲の粒径を有する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0129】
12. 熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよび少なくとも1種のポリカーボネートジオールに基づく熱可塑性ポリウレタン、ならびに少なくとも1種の芳香族ジイソシアネートおよびポリテトラヒドロフランポリオールに基づく熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
【0130】
13. 脂肪族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-1および芳香族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-2を含む混合物を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0131】
14. 少なくとも成分(i)~(iii):
(i) 熱可塑性ポリウレタン、
(ii) メラミンポリホスフェートからなる群から選択される第1のリン含有難燃剤(F1)、および
(iii) ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択されるさらなるリン含有難燃剤(F2)を含む組成物であって、
メラミンシアヌレートを含まず、
三価、四価、五価および六価アルコールを含まず、
組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して7質量%~40質量%の範囲であり、
メラミンポリホスフェートが7質量%~20質量%の範囲のリン含有量を有し、
組成物が、脂肪族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-1および芳香族ジイソシアネートに基づく熱可塑性ポリウレタンTPU-2を含む混合物を含む、組成物。
【0132】
15. 熱可塑性ポリウレタンが再生可能な原料に少なくとも30%の程度まで基づく、実施形態1~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0133】
16. 熱可塑性ポリウレタンを製造するための鎖延長剤として、1,4-ブタンジオールとさらなる鎖延長剤との混合物が用いられる、実施形態1~15のいずれか1つに記載の組成物。
【0134】
17.組成物中の熱可塑性ポリウレタンの割合が、組成物全体に対して60質量%~93質量%の範囲である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の組成物。
【0135】
18. 組成物全体に対して0.1質量%~5質量%の範囲の量の二酸化チタンを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
【0136】
19. DIN ISO 7619-1(ショア硬度試験A(3s))に従って決定された68A~100Aの範囲のショア硬度を有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の組成物。
【0137】
20.組成物中のリン含有難燃剤(F1)およびリン含有難燃剤(F2)の合計の割合が、組成物全体に対して10質量%~20質量%の範囲である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物。
【0138】
21. 組成物中のリン含有難燃剤(F1)の割合が、組成物全体に対して2質量%~15質量%の範囲である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物。
【0139】
22. 組成物中のリン含有難燃剤(F2)の割合は、組成物全体に対して5質量%~45質量%の範囲である、実施形態1~21のいずれか1つに記載の組成物。
【0140】
23. ケーブルシースの製造のための、実施形態1~22のいずれか1つに記載の組成物の使用方法。
【0141】
以下の実施例は、本発明を説明するように意図されるが、しかし、本発明の主題を限定するように意図するものでは決してない。
【実施例
【0142】
1. 投入材料
Elastollan A:BASF Polyurethanes GmbH, Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfoerdeからのショア硬度85AのTPU、1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートに基づく。
【0143】
Elastollan B:BASF Polyurethanes GmbH, Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfoerdeからのショア硬度90AのTPU、2000g/molの分子量を有する、Ubeからのポリカルボネートポリオール(Eternacoll PH-200D、1,5-ペンタンジオールおよび1,6-ヘキサンジオールに基づく)、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートに基づく。
【0144】
Elastollan C:BASF Polyurethanes GmbH, Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfoerdeからのショア硬度60DのTPU、1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、1,4-ブタンジオール、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンに基づく。
【0145】
TPU 1:BASF Polyurethanes GmbH, Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfoerdeからのショア硬度85AのTPU、1000g/molの分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、3:1のモル比の1,4-ブタンジオールおよびプロパンジオール、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートに基づく。
【0146】
Melapur MC 15 ED:メラミンシアヌレート(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン(1:1)を含む化合物)、CAS #:37640-57-6、BASF SE, 67056 Ludwigshafen,ドイツ、粒径D99%≦50μm、平均粒径D50%≦ 4.5μm、含水率%(w/w)<0.2。
【0147】
Melapur MC 200/70:メラミンポリホスフェート(窒素含有量42~44質量%、リン含有量12~14質量%)、CAS #:218768-84-4、BASF SE, 67056 Ludwigshafen,ドイツ、粒径D99%≦70μm、平均粒径D50%≦10μm、含水率%(w/w)<0.3。
【0148】
Fyrolflex RDP:レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、CAS #:125997-21-9、Supresta Netherlands B.V., Office Park De Hoef, Hoefseweg 1, 3821 AE Amersfoort, the Netherlands、25℃での粘度=700mPas、酸価<0.1mgKOH/g、含水率%(w/w)<0.1。
【0149】
Disflamoll DPK:クレジルジフェニルホスフェート、CAS #:026444-49-5、LANXESS Deutschland GmbH, 51369 Leverkusen,ドイツ、酸価<0.1mgKOH/g、含水率%(w/w)<0.1。
【0150】
Exolit OP 1230:アルミニウムジエチルホスフィネート、CAS#:225789-38-8、Clariant Produkte (Deutschland) GmbH, Chemiepark Knapsack, 50351 Huerth、含水率%(w/w)<0.2、粒径D99%≦90μm、平均粒径D50=20~40μm。
【0151】
Chisorb 622 LT:ジメチルブタンジオエート、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールを含むポリマー、CAS #:65447-77-0、BASF Polyurethanes GmbH, Postfach 1140, 49440 Lemfoerde,ドイツ。
【0152】
Tinuvin 234:2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-エチル-1-フェニルエチルフェノールCAS #:70321-86-17、BASF SE, 67056 Ludwigshafen,ドイツ。
【0153】
Hombitan Lw-S:表面処理のないアナターゼ微結晶、CAS #:1317-70-0、Sachtleben Chemie GmbH, Duisburg,ドイツ、TiO2割合99.2%;平均粒径0.3μm。
【0154】
2. 混合物の製造
以下の表1a、1bおよび1cは、組成物をリストにし、個々の構成成分を質量部(pbw)で報告する。混合物は、各事例において10バレルに分割された35Dスクリューを有するBerstorff ZE 40 A二軸押出機を用いて製造した。
【0155】
用いた熱可塑性ポリウレタンまたは異なるポリウレタンの混合物はすべて、150000Daを超える平均分子量を有する。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
3. 機械的性質
混合部(スクリュー比1:3)を含む3ゾーンスクリューを有するArenz単軸押出機を用いて混合物を押し出して厚さが1.6mmのフィルムを得た。対応する試験片の密度、ショア硬度、引張強度、引裂伝播抵抗、摩耗および破断時伸びを測定した。すべての組成物は良好な機械的性質を有する。結果を以下の表2a、2bおよび2cに要約する。
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
【表8】
【0165】
【表9】
【0166】
4. 難燃性
難燃性を評価するために、ケーブル絶縁およびケーブルシースの従来の押出ライン(平滑チューブ押出機、押出機直径45mm)を使用してケーブルを製造した。2.5:1の圧縮比を有する従来の3ゾーンスクリューを用いた。
【0167】
初めに、ホース法によって0.1mmのそれぞれの混合物を用いてコア(4本からなる撚り線)を絶縁した。絶縁したコアの直径は0.7mmであった。これらのコアのうちの3つを紐にし、シース(シース厚さ0.3mm)をホース法によって押出にかけた。ケーブル全体の外径は2mmであった。
【0168】
次いで、ケーブル上でVW 1試験(UL標準1581、§1080 - VW-1(垂直試料)火炎試験)を行った。各事例において3本のケーブルについて試験を行った。以下の表4に結果を要約する。
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
結果は、本発明の材料が改善された難燃性の性質を示すことを示す。比較実験13および15としての個別の試験でも同様にポジティブな燃焼試験(VW 1試験)の結果が得られたが、これは、組成物中に大量の難燃剤を必要とした。
【0172】
本発明による組成物に対する、Fyroflex RDP(または室温で液体の別のP含有可塑剤)のさらなる添加の利点は、第1に(組成物17~24と比較して)難燃性の性質を損失しない可塑化効果である。RDPの添加はさらに、かなりケーブル押出を単純化し、ノズル摩耗がはるかに少ない材料が形成される。
【0173】
5. UV照射による変色
混合部(スクリュー比1:3)を有する3ゾーンスクリューを有するArenz単軸押出機を用いて混合物を押し出して厚さが1.6mmであるフィルムを得た。ASTM G155 Cy4法に従って異なる照射時間の後に対応する試験片のデルタE値(ASTM E313)を測定した。以下の表5に結果を要約する。
【0174】
デルタE値が小さいと、試験によって引き起こされた変色が相対的に低いレベルであることを表す。試験における変色のレベルが低いほど、実用性において、例えば日光の影響下で予想される変色のレベルが低い。
【0175】
結果は、本発明の材料は改善された性質、特に良好な長期安定性を示すことを示している。
【0176】
【表12】
【0177】
MPPとホスフィネートとの本発明の組合せ(本発明の実施例4、8、10、12、14、16および17~23)は、MCとホスフィネートとの組合せよりも良好な難燃性の結果が得られた。
【0178】
実施例18、19および23は、非常に低い粘着性に加えて良好なUV耐性が達成されるので有利である。実施例23は、良好な機械的性質(引張強度)が良好な難燃性、良好なUV耐性および低い弾性と組み合わされているので、特に有利である。
【0179】
6. 測定の方法:
密度:DIN EN ISO 1183-1, A。
ショアA硬度:DIN ISO 7619-1、ショア硬度試験A(3s)
引張強度:DIN EN ISO 527
破断時伸び:DIN EN ISO 527
引裂伝播抵抗:DIN ISO 34-1, B (b)
摩耗:DIN 53516
燃焼試験:VW 1試験
色差デルタE:ASTMG 155 Cy 4 - 光沢のある場合/ない場合
【0180】
引用文献
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WO03/066723A2
US2013/0059955A1
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Kunststoffhandbuch、VII巻、ViewegおよびHoechtlen編、Carl Hanser Verlag、Munich 1966(103~113ページ)